(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096233
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】角質剥離増進用の化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240705BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q19/00
A61K8/34
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071804
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2021502856の分割
【原出願日】2019-06-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0083069
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0063704
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ビョン-ジュン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ネ-ギュ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジン-ヒョン・キム
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、角質剥離増進の効能が十分発揮されると共に、刺激のない化粧料を提供することである。
【解決手段】本発明は、セリンまたはカルニチンを含むと共に、ポリオール基を有する保湿剤成分を実質的に含まないか、または一定の濃度以下に含む角質剥離増進用の化粧料組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリン及びカルニチンからなる群より選択される一つ以上の角質剥離剤を含む角質剥離を増進させるための組成物であって、
前記組成物が、ポリオール保湿剤を含まないか、または0超過10重量%以下の含量で含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記角質剥離剤が、トロポロン及びその誘導体から選択した一種または二種以上を有効成分として含有する場合を除く、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、化粧料組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、ポリオール保湿剤を0超過2重量%以下の含量で含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、ポリオール保湿剤を0超過0.5重量%以下の含量で含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオール保湿剤が、グリセリン、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセレス-26、メチルグルセス-20及びペンチレングリコールからなる群より選択された一種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記角質剥離剤が、組成物の総重量に対して0.001~20重量%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物が、pH5~8であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物を含む、製品。
【請求項10】
セリン及びカルニチンからなる群より選択される一つ以上の角質剥離剤を含む化粧料組成物を皮膚に適用することを含む、角質剥離増進方法であって、
前記化粧料組成物が、ポリオール保湿剤を含まないか、または0超過10重量%以下の含量で含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記角質剥離剤が、トロポロン及びその誘導体から選択した一種または二種以上を有効成分として含有する場合を除く、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角質剥離増進用の化粧料組成物に関する。
【0002】
本出願は、2018年7月17日出願の韓国特許出願第10-2018-0083069号及び2019年5月30日出願の韓国特許出願第10-2019-0063704号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
角質層は、皮膚の最外郭に存在する層であって、大きく、角質細胞とセラマイドを含むラメラ構造の脂質層からなる。角質層は、外部物質からの保護効果を奏すると共に、内部の水気離脱などを防止する防御膜として機能する。正常な角質層の場合、約15~20層からなり、角質層の外部で活性化するセリンプロテアーゼの作用でコニオデスモソームの分解が進み、結局、皮膚から完全に離脱する過程を経る。この過程は、正常細胞の場合、15~20日程度がかかる。魚鱗癬(ichthyosis)のような遺伝的な疾患の外にも、老化、乾癬、にきびの肌などは、上記の角質離脱過程の期間が正常期間よりも長くなり、角質層が厚くなる角質重層化現象を示すようになる。
【0004】
角質重層化は、通常、皮膚保湿力の減少、セリンプロテアーゼの発現量の減少または活性減少、紫外線、細胞活性低下などの要因によって誘発されると知られている。このような角質重層化を解消するためには、通常、スクラブ製剤などによる物理的な角質剥離、化学的な製剤による角質剥離、生理的な細胞活性の増加などの方法が用いられている。このような方式の角質剥離方式は、外部の角質細胞を人為的に除去して、内部からの新しい角質細胞が最外郭の角質層を代替することによって角質の重層化を解消し、肌荒れやくすみのように外観的な問題を解決することにその目的がある。
【0005】
角質剥離の増進による角質重層化の解消は、小じわおよび黒ずみ除去、荒れ肌の改善などの付加的な効果も得られることから、多様な製品として活用されており、特に、αヒドロキシ酸(Alpha hydroxy acid,AHA)、βヒドロキシ酸(Beta hydroxy acid,BHA)またはポリヒドロキシ酸(Poly hydroxy acid,PHA)が代表的に使用されている。しかし、このようなAHA、BHA、PHAの作用方式は、角質層内へ挿入されて水素イオンを放出してコニオデスモソーム結合を弱化させることで角質剥離に至ることであって、低いpHで適用時、角質層への挿入が容易になり、水素イオンの伝達度が高いため、低いpHが必須に要求される。したがって、低いpHによって、ひりつき、痒み、紅斑などの副作用を招来するようになり、このような副作用を克服するために研究が進んでいる。しかし、このような皮膚刺激による副作用を緩和させるために、弱酸性-中性のpHに調節するようになると、その活性が80%以上減少してしまい、また、化学的変形を経るようになると、その効能が相殺されて実質的な角質剥離による利点が得られにくいという問題を有することから、弱酸性または中性においても酸性条件のAHAのような角質剥離効能を示す新しい角質剥離剤に対する必要性が高まっている。
【0006】
そこで、本発明者は、先行研究による韓国特許出願第10-2017-0165268号で、中性または弱酸性の条件で同一の濃度に対してAHA以上の効能を示すセリンとカルニチンを含む組成物を確認し、且つ、相対的に刺激が少ないか、または刺激がないことを確認し、優秀な新規の角質剥離素材として提供した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願第10-2018-0083069号
【特許文献2】韓国特許出願第10-2019-0063704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、角質剥離剤の角質結合タンパク質への接近性が維持されるように化粧料の組成を選択し、これによって、付加された角質剥離増進の効能が十分発揮されると共に、刺激のない化粧料を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、弱酸性-中性のpHで角質剥離効能を有する既存の原料の効能よりも優秀な効果を奏するセリンまたはカルニチンを実際に化粧料剤形に適用したとき、角質剥離の効能が減少する問題点を解決することを他の目的とする。
【0010】
より具体的に、本発明は、セリンまたはカルニチンを含むと共に、ポリオール基を有する保湿剤成分を実質的に含まないか、または一定の濃度以下に含む角質剥離増進用の化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するために、本発明は、角質剥離剤を含むと共に、ポリオール(polyol)保湿剤を含まないか、または組成物の総重量に対して10重量%以下の含量で含む皮膚角質剥離増進用の化粧料組成物を提供する。
【0012】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物の角質剥離剤はは、セリン及びカルニチンのいずれか一つ以上である。
【0013】
発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物のポリオール保湿剤は、グリセリン(Glycerine)、ジプロピレングリコール(Dipropylene glycol)、ブチレングリコール(Butylene Glycol)、グリセレス-26(Glycereth-26)、メチルグルセス-20(methyl gluceth-20)及びペンチレングリコール(Pentyleneglycol)からなる群より選択された一種以上である。
【0014】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物の角質剥離剤は、組成物の総重量に対して0.001~20重量%で含まれる。
【0015】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物は、ポリオール保湿剤を含まないか、または組成物の総重量に対して10重量%以下に含まれる。
【0016】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物は、pH5~8である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、角質剥離剤の角質結合タンパク質への接近性が維持されることによって角質剥離増進の効能が十分発揮できる。特に、弱酸性-中性pHで既存の原料の効能よりも優秀な角質剥離効果を刺激なく奏するセリンまたはカルニチンを含む角質剥離用の化粧料組成物であって、セリンまたはカルニチンの角質剥離効能が減少することなく優秀に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】セリン5%とグリセリンとの組合せによる豚皮膚角質剥離の評価結果である。
【
図2】カルニチン5%とグリセリンとの組合せによる豚皮膚角質剥離の評価結果である。
【
図3】セリンと、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールとの組合せによる豚皮膚角質剥離の評価結果である。
【
図4】セリン5%溶液と、多様な濃度のDPGとの組合せによる豚皮膚角質剥離の評価結果である。
【
図5】カルニチンと、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールとの組合せによる豚皮膚角質剥離の評価結果である。
【
図6】保湿剤の混合使用による角質剥離効果の阻害を確認した結果である。
【
図7】セリンとグリセリンとの組合せ濃度による角質剥離能の相対比較値である。
【
図8】カルニチン(5%)とグリセリンとの組合せにおいて、角質剥離能の相対比較値を測定した結果である。
【
図9】セリン(5%)とグリセリンと組合せにおいて、角質剥離能の相対比較値を測定した結果。
【
図10】カルニチン(0.5%)とグリセリンとの組合せにおいて、角質剥離能の相対比較値を測定した結果である。
【
図11】セリン(0.5%)とグリセリンとの組合せにおいて、角質剥離能の相対比較値を測定した結果である。
【
図12】DHA染色法による実験10日経過後の変化を示した写真である。
【
図13】セリンとグリセリンとの組合せによるTT100%測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記の課題を達成するための本発明は、角質剥離剤を含み、かつ、ポリオール(polyol)保湿剤は含まないか、または組成物の総重量に対して10重量%以下に含む皮膚角質剥離増進用の化粧料組成物を提供する。以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。
【0020】
本発明は、界面活性剤、香料、防腐剤、保湿剤、増粘剤、酸化防止剤など多様な添加剤を含む化粧料組成物に角質剥離剤を含ませて角質剥離増進機能を付与した、市販可能な化粧品を製造しようとしたが、角質剥離剤の濃度に応じて予想される角質剥離増進能よりも効率が著しく低下するという問題があることを確認し、これについての研究中、角質剥離機能低下の原因が、各種化粧料添加剤のうち保湿剤成分、特に、ポリオール基を有する保湿剤によって角質剥離成分の角質結合タンパク質への接近性が低下し、結果的に、角質同士の結合タンパク質に影響を与えないことから角質剥離能力が低下することを明らかにして、これを解決するための方案を提示することで本発明を完成した。
【0021】
本発明は、角質剥離剤、特に、セリンまたはカルニチンがその効果を維持できる組成の化粧料組成物を提供する。より具体的に、本発明は、弱酸性-中性のpHで既存の原料の効能よりも優秀な角質剥離効果を刺激なく奏するセリンまたはカルニチンの化粧料を提供しようとした。
【0022】
しかし、これを剤形に適用する場合、セリンまたはカルニチンの角質剥離効能が減少するという問題点を確認し、本発明においては、セリンまたはカルニチンにポリオール基を有する保湿剤、例えば、グリセリン(Glycerin)、ジプロピレングリコール(Dipropylene glycol,DPG)及び1,3-ブチレングリコール(Butylene glycol,BG)のいずれか一種以上のようなポリオールを特定の濃度以上に含有すると、角質剥離効能が急減することを見い出した。したがって、本発明は、セリンまたはカルニチンにポリオール保湿剤成分を実質的に含まないか、その効果を有意義に減少させない範囲内で提供する。
【0023】
一具現例において、本発明は、角質剥離剤を含み、かつポリオール保湿剤を実質的に含まない皮膚角質剥離増進用の化粧料組成物を提供する。
【0024】
本明細書で使用された「実質的に含まない」という用語は、組成物の総重量に対して2重量%以下、望ましくは1重量%以下、より望ましくは0.5重量%以下、さらに望ましくは0.3重量%以下、さらに0.1重量%以下、最も望ましくは一切含まないことを意味する。
【0025】
一方、ポリオール基を有する保湿剤は、精製水ほど化粧料組成物によく使用される原料であって、特に、角質剥離製品の場合、通常の場合よりも保湿がさらに求められるという点で、ポリオール保湿剤を含む角質剥離増進用の化粧料組成物を提供することは課題である。
【0026】
そこで、他の具現例において、本発明は、角質剥離剤と共にポリオール保湿剤を含む皮膚角質剥離増進用の化粧料組成物を提供する。このように本発明の組成物が前記ポリオール保湿剤を含む場合、0超過10重量%以下、望ましくは0超過2重量%以下、より望ましくは0超過0.5重量%以下の含量で含み、ポリオール保湿剤の含量が、前記数値範囲から外れる場合、角質剥離効果が大幅減少するため、前記含量範囲には臨界的意義がある。
【0027】
本明細書で使用された、「角質剥離」という用語は、肌の角質層に積もっている角質が肌の角質層から脱落または除去されることを意味する。物理的な力を加えて除去される場合のみならず、別の力を加えることなく化粧用組成物の処理だけで肌の角質層から脱落する場合も共に含む概念である。
【0028】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物の角質剥離剤は、セリン及びカルニチンのいずれか一つ以上であり得る。
【0029】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物の角質剥離剤は、組成物の総重量に対して0.001~20重量%で含まれ得、望ましくは0.01~17重量%、より望ましくは0.05~15重量%で含まれ得る。これらの含量が0.001重量%よりも少ないと、目的とする効果が得られにくく、20重量%を超過する場合、含量の増加による効果が微々であり得る。
【0030】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物のポリオール保湿剤は、グリセリン、ジプロピレングリコール(Dipropylene glycol,DPG)、ブチレングリコール(Butylene Glycol,BG)、グリセレス-26(Glycereth-26)、メチルグルセス-20(methyl gluceth-20)及びペンチレングリコール(Pentyleneglycol)からなる群より選択された一種以上であり得る。具体的に、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールからなる群より選択された一種以上であり得る。
【0031】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物のポリオール保湿剤は含まれないか、または組成物の総重量に対して10重量%以下で含まれ得、望ましくは5重量%以下、より望ましくは2重量%以下、さらに望ましくは1重量%以下、さらに望ましくは0.5重量%以下、さらに望ましくは0.3重量%以下、さらに望ましくは0.1重量%以下で含まれ得る。これらの含量が10重量%よりも多ければ、目的とする角質剥離剤の十分な角質剥離効果が得られにくい。
【0032】
本発明の一態様によれば、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物はpH5~8であり得、望ましくはpH5~7.5、より望ましくはpH5.5~7であり得る。
【0033】
本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物は、前記成分に加え、化粧料に通常含まれる成分を、化粧料の剤形または使用目的などに応じて任意に選定してさらに配合し得る。また、各剤形の組成は、その剤形の製剤化に必要かつ適切な各種の基剤と添加物を含み得、その効果を低下させない範囲で、防腐剤、増粘剤、界面活性剤、シリコーンポリマー、酸化剤、有機溶媒、酸化防止剤、エモリエント、色素、香料など、公知の化合物を含んで製造され得る。
【0034】
本発明による化粧料組成物がポリオールを有する保湿剤を含む剤形の中でも優秀な角質除去効果を示すことを豚皮膚角質剥離評価法によるスクリーニング方式とDHA染色法による人体試験法によって確認した。
【0035】
具体的に、豚皮膚角質剥離評価法によって、セリンまたはカルニチンが、中性または弱酸性のpH5~7範囲でその活性がpH4のグルコノラクトン(PHA)または乳酸(AHA)の効果と同等または同等以上の水準であることを確認し、ポリオール保湿剤成分の素材別・濃度別の組合せによってその効果を確認した。
【0036】
セリンまたはカルニチンと、ポリオール保湿剤成分であるグリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールとを含む化粧料組成物の角質剥離効果を豚皮膚角質剥離評価法で評価したとき、ポリオール保湿剤の含有量0.1重量%以上から角質剥離の効能が急減し、10重量%を超過すると、陰性対照群である水の能力0%として角質剥離効能が残らず、これは、人体試験においても角質剥離能が有意義に現れないことを意味する。
【0037】
また、セリンまたはカルニチンと、ポリオール保湿剤成分であるグリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールと、を含む化粧料組成物の角質剥離効果を、DHA染色による人体試験によって評価した結果、ポリオール保湿剤の含有量が10%、50%である場合には、角質のターンオーバー日数(TT100)が非塗布の20日と有意義な差異が現われなかったが、本発明の角質剥離増進用の化粧料組成物は、角質ターンオーバー日数が、非塗布の20日に対して17日以下、望ましくは14日に減少することを確認した。
【0038】
したがって、本発明は、角質剥離剤であるセリンまたはカルニチンが、ポリオール保湿剤である、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールによってその活性が無意義な水準に減少するため、ポリオール保湿剤成分を実質的に含まないか、またはその効果を有意義に減少させない範囲内で提供する。即ち、本発明で使用される角質剥離組成物は、セリンまたはカルニチンを含み、かつポリオール保湿剤である、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールの一種以上を実質的に含まないか、またはその効果を有意義に減少させない範囲内で選択される場合を意味する。
【0039】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、これらは、本発明をより詳しく説明するためのことであるだけで、本発明の権利範囲がこれらに限定されることではない。
【0040】
1.組合せ構成
本発明の効果を確認するための実験のために、セリンまたはカルニチンと、ポリオール基を有する保湿剤成分との組合せを下記の表1のように構成した。
【0041】
【0042】
実施例1.豚皮膚角質剥離評価
既存の臨床評価法によっては、時間が長くかかり、多様な原料の多様な濃度とpH条件の全ての実験を行いにくく、また、各原料から組み合わせられる組成物の全ての場合に対して実験を行いにくいため、非臨床の角質剥離評価法の必要性が高くなってきた。
【0043】
そこで、本発明においては、Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology,2014,28,415~423で言及された角質剥離評価法を用いた。詳しくは、豚皮膚を生体組織診断(バイオプシー)して、テストしようとする試料を添加した。その後、脱落した角質の数をセルカウンターで測定し、水のみを入れたサンプルを陰性対照群にし(0%)、10%グルコノラクトン(pH4)を陽性対照群(100%)にして、図式化した。
【0044】
(1)セリン5%溶液に、グリセリンを下記の表2のように多様に組み合わせて(組合せA、B)、その実験結果を
図1に示した。
【0045】
【0046】
実験結果、セリンの効能がグリセリンの添加によって急激に減少し、10%以上であるとき、効能が現れない0%以下の範囲まで至った。これによって、グリセリンの濃度増加によるセリンの効能減少を確認することができ、角質剥離剤の効能を発揮するためには、10%以下のグリセリンを使用する必要があることが分かった(
図1)。
【0047】
(2)カルニチン5%の溶液に、グリセリンを下記の表3のように多様に組み合わせて(組合せE、F)、その豚皮膚角質剥離の実験結果を
図2に示した。
【0048】
【0049】
実験結果、グリセリン5%以上から角質除去の効果が急減し、10重量%超過時、角質剥離効能が、陰性対照群である水の以下に減少し、角質剥離効能がないことを確認した(
図2)。
【0050】
(3)セリン5%に、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールを各々10%と12%の組成物とした場合(表4;組合せA、B、C、D)の結果を
図3に示した。また、セリン5%溶液にDPGをさらに多様な濃度で組み合わせた組合せDに対する実験結果を
図4に示した。
【0051】
【0052】
実験結果、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールを含む場合にもグリセリンと同様に角質剥離効能が減少することを確認しており、このことから、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールを10%超過して組み合わせる場合、角質剥離活性の程度が陰性対照群である水の以下に減少し、非塗布群に対して有意義な差異を示さないことを確認した。したがって、セリンとの組合せにおいて、ポリオール基を有する保湿剤である、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールより選択される一種以上は、10%以下の範囲で角質剥離の効能を示すことをさらに確認した(
図3及び
図4)。
【0053】
(4)カルニチン5%に、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールが各々、10%、12%の組成物をなす場合(組合せE、F、G、H)の結果は、
図5に示した。
【0054】
【0055】
実験結果、カルニチンの場合にも、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールを含む場合、いずれも角質剥離効能活性が人体試験的に無意義な程度に減少することを確認した(
図5)。
【0056】
(5)また、セリン5%溶液に保湿剤混合物(グリセリン:DPG:1,3-BG=1:1:1)を添加した組合せ(組合せI)に対する結果を
図6に示した。
【0057】
これによって、角質剥離剤の角質剥離効能が、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールを混合して使用する場合でも、各々を使用する場合と類似に減少することを確認した。即ち、ポリオール基を有する保湿剤の混合物を含む場合にも、10%以下の含有範囲で角質剥離効能を示すことが確認された(
図6)。
【0058】
したがって、セリンまたはカルニチンとの組合せにおいて、ポリオール基を有する保湿剤である、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールより選択される一種以上は、10重量%以下の範囲で含まれる場合、角質剥離効能を示すので、このような保湿剤成分を実質的に含まないか、または特定の濃度以下、望ましくは10重量%以下を使用する場合、有意義な角質剥離効果を奏する。
【0059】
(6)また、セリンの濃度を変更して、0.5%セリン実験群と、5%セリン実験群において、セリンの単独使用の場合を陽性対照群(100%)として各々換算し、グリセリンの濃度による角質剥離効能の減少数値を比較した結果を図 7に示した。
【0060】
実験結果、0.5%セリン実験群(
図7の破線)及び5%セリン実験群(
図7の実線)のいずれも、グリセリンの濃度増加に応じて角質剥離効能の水準が類似な傾向で減少することが分かり、このことから、セリンまたはカルニチンの濃度に関わらず、ポリオール基を有する保湿剤成分の組成物内の濃度が角質剥離効能の減少に主な役割を果たすことが確認できた。これは、結論的にセリンまたはカルニチンが、ポリオール基を有する保湿剤成分を実質的に含まないか、または特定の濃度、望ましくは10%以下を含むことが望ましいということを意味する。
【0061】
上記結果を総合すれば、セリンとカルニチンの角質剥離能は、ポリオール基を有する保湿剤である、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールの濃度に依存し、これによって、ポリオール基を有する保湿剤成分の実質的な使用がないか、または10%以下で使用するとき、使用者が体感できる効果を奏することを確認した。
【0062】
(7)カルニチン(5%)とグリセリンとの組合せにおいて、グリセリンの濃度をより細分して角質剥離能の相対比較値を測定する実験を行い、その結果を下記の表6及び
図8に示した。
【0063】
【0064】
実験結果、グリセリンを1重量%から2重量%に二倍増加させた場合、角質剥離能力はほぼ同一に維持されたが、グリセリンの含量を3重量%に増加させた場合、角質剥離能力が大幅低下することが確認された。また、グリセリンを0.1重量%から0.5重量%に5倍増加させた場合、角質剥離能力はかえって増加したが、グリセリンの含量を1重量%に増加させた場合、角質剥離能が顕著に低下して、含量数値範囲の臨界的な意義が確認された。
【0065】
(8)セリン(5%)とグリセリンと組合せにおいて、グリセリンの濃度をより細分して角質剥離能力の相対比較値を測定する実験を行い、その結果を下記の表7及び
図9に示した。
【0066】
【0067】
実験結果、グリセリンを1重量%から2重量%に二倍増加させた場合、角質剥離能はほぼ同一に維持されたが、グリセリンの含量を3重量%に増加させた場合、角質剥離能が大幅低下することが確認された。また、グリセリンを0.1 重量%から0.5重量%に5倍増加させた場合、角質剥離能力はかえって増加したが、グリセリンの含量を1重量%に増加させた場合、角質剥離能が顕著に低下して、含量数値範囲の臨界的な意義が確認された。
【0068】
(9)カルニチン(0.5%)の場合、既存の5%濃度に比べてポリオール組合せによる角質剥離能の阻害がどのように変わるかを確認するために、グリセリンの濃度を細分して角質剥離能力の相対比較値を測定する実験を行い、その結果を下記の表8及び
図10に示した。
【0069】
【0070】
実験結果、グリセリン含量が0.5重量%である場合、グリセリンを含まない場合に匹敵するほどの優秀な角質剥離能を示したが、グリセリンの含量を1重量%に増加させた場合、角質剥離能力が顕著に低下して、含量数値範囲の臨界的な意義が確認された。
【0071】
(10)セリン(0.5%)の場合、既存の5%濃度と比較して、ポリオールの組合せによる角質剥離能力の阻害がどのように変わるかを確認するために、グリセリンの濃度を細分して角質剥離能の相対比較値を測定する実験を行い、その結果を下記の表9及び
図11に示した。
【0072】
【0073】
実験結果、グリセリンの含量が0.5重量%である場合、グリセリンを含まない場合に匹敵するほどの優秀な角質剥離能を示したが、グリセリンの含量を1重量%に増加させた場合、角質剥離能が顕著に低下して、含量数値範囲の臨界的な意義が確認された。
【0074】
実施例2.DHA染色法による角質のターンオーバー増進評価法
角質のターンオーバー速度評価のためのDHA染色法は、Dermatology 1993,186,133~137で言及された方法を用いて、被験者として20~40歳の健康な男性10人を対象にして行った。試料を塗布する前、被験者の腕の下膊部及び上膊部の内側の色をクロマメーター(Chroma meter)で測定した後、10%濃度のジヒドロキシアセトン(Dihydroxy acetone:DHA)約0.4mlを1.5×1.5cmのガーゼにつけて腕の上・下膊部の内側に8時間付着した。48時間経過後、DHAによって茶色に着色された部位の色を測定し、試料塗布前との色差を比較した。その後、1日に2回ずつ試料を塗布して毎日脱色される程度をクロマメーターで測定し、元の皮膚色へ戻るのにかかる時間を測定した。TT(Turnover Time)100%とは、既存の角質層が新しい角質層に100%代替されるのにかかる時間を意味し、本実験においては、DHAによって着色された皮膚が100%元の状態に戻るのにかかる時間を回帰分析法による相対比較分析によって示した。陰性対照群の結果を20日に算定し、相対値を比較した。
【0075】
非処理群の結果を20日に算定したとき、塗布10日後に現われる視覚的な変化を
図12に示した。目視で判別するとき、グリセリンの濃度が10%または50%である場合に非塗布群と大きい差を示しておらず、セリンを単独で使用する場合に0.5%と5%濃度でいずれも効果が現われることを確認することができた。
【0076】
これをクロマメーターによって定量的な数値に変換すると、
図13のようである。セリン5%使用時、TT100%が非塗布の20日から14日に6日ほど減少することを確認することができ、グリセリンの濃度が10%または50%である場合には、非塗布群に対して有意義な変化がないことが分かる。
【0077】
全ての組合せ群は、実験期間以後、紅斑、かゆみ、痛みなどの副作用を起こさなかった。このことから、豚皮膚角質剥離評価法によって選択された濃度範囲における角質剥離能の阻害は、人体実験においても確認された。結論的に、セリンまたはカルニチンの角質剥離効果のためには、ポリオール基を有する保湿剤である、グリセリン、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールの実質的な使用がないか、または特定の濃度である10%以下で使用することで、使用者が体感できる角質剥離増進効果を奏することを確認した。
【0078】
以上、本発明の望ましい実施例を説明したが、このような実施例は本発明の技術的思想を具現する一実施例であるだけで、本発明の技術的思想を具現する限り、如何なる変形例または修正例も、本発明の範囲に属すると解釈すべきである。
【外国語明細書】