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特開2024-96239導電層付き偏光フィルムおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096239
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】導電層付き偏光フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240705BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240705BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/1333
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072070
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2019039937の分割
【原出願日】2019-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟士
(72)【発明者】
【氏名】木村 智之
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
(57)【要約】
【課題】湿熱環境に曝された場合であっても、例えばタッチセンサの誤作動を生じないような安定した導電性を保持し得る導電層付き偏光フィルムを提供すること。
【解決手段】導電層付き偏光フィルムが提供される。この導電層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと、偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置された粘着剤層と、を備え、さらに導電層を備える。また、偏光フィルムは、次式(1)で表される湿熱導電性変化比FHTが2以下である。
HT=ΔC(B)/ΔC(A)・・・・・(1)
(式(1)中、ΔC(B)は、湿熱試験後の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分であり、ΔC(A)は、湿熱試験前の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分である。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムと、該偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置された粘着剤層と、を備え、さらに導電層を備える導電層付き偏光フィルムであって、
前記偏光フィルムは、次式(1)で表される湿熱導電性変化比FHTが2以下である、導電層付き偏光フィルム。
HT=ΔC(B)/ΔC(A)・・・・・(1)
(式(1)中、ΔC(B)は、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分であり、ΔC(A)は、前記湿熱試験前の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分である。)
【請求項2】
偏光フィルムと、該偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置された粘着剤層と、を備え、さらに導電層を備える導電層付き偏光フィルムであって、
前記導電層は、湿熱表面抵抗変化比S/Pが条件:0.05≦S/P≦10;を満足する、ここでSは、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後における導電層の表面抵抗値[Ω/□]であり、Pは、前記湿熱試験前における導電層の表面抵抗値[Ω/□]である、導電層付き偏光フィルム。
【請求項3】
偏光フィルムと、該偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置された粘着剤層と、を備え、さらに導電層を備える導電層付き偏光フィルムであって、
前記導電層は、導電性ポリマーと、沸点が180℃以上である高沸点化合物とを含む導電性組成物から形成されたものである、導電層付き偏光フィルム。
【請求項4】
前記導電層は、湿熱表面抵抗変化比S/Pが条件:0.05≦S/P≦10;を満足する、ここでSは、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後における導電層の表面抵抗値[Ω/□]であり、Pは、前記湿熱試験前における導電層の表面抵抗値[Ω/□]である、請求項1または3に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項5】
前記導電性組成物における前記高沸点化合物の含有量は0.1~10重量%である、請求項3に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項6】
前記導電層は、導電性ポリマーとしてチオフェン系ポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項7】
前記導電層はバインダを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項8】
前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項9】
前記アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアミド基含有モノマーを含む、請求項8に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項10】
前記導電層は、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けられており、
前記粘着剤層は、前記導電層上に配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項11】
インセル型液晶パネルに用いられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項12】
偏光フィルムの少なくとも一方の面に導電層を形成する工程と;
前記導電層上に粘着剤層を設ける工程と;
を備えており、
前記導電層は、導電性ポリマーと、沸点が180℃以上である高沸点化合物とを含む導電性組成物から形成する、導電層付き偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層付き偏光フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板とも称される偏光フィルムは、液晶表示装置や光学センサ等の構成要素として広く用いられている。例えば、液晶表示装置に用いられる偏光フィルムは、通常、粘着剤を介して液晶セル等の液晶パネル部品に接合されている。典型的な態様では、上記偏光フィルムは、液晶表示装置の製造工程において、その少なくとも一方の面に粘着剤層を有する形態で取り扱われる。そのような形態の偏光フィルムは、当該粘着剤層を保護する剥離ライナーを除去し、その露出した粘着面を被着体に貼り付けるだけで液晶パネルに配置され得るので、取扱い性、生産性の点で有利である。その一方で、上記のように剥離ライナーを除去する場合等には静電気が生じ得る。かかる静電気は、液晶セル内の液晶の配向に影響し、例えば液晶の表示ムラ(以下「静電気ムラ」ともいう。)の原因となる。そのため、粘着剤層を備える偏光フィルムには、帯電防止層を設けるなどの対策が講じられている。この種の従来技術を開示する先行技術文献として、特許文献1が挙げられる。なお、特許文献2は、各種電子機器の液晶駆動用の透明電極等に用いられ得る導電性樹脂組成物を開示しており、透明導電膜に導電性向上剤を含ませることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/057097号
【特許文献2】特開2015-117367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような静電気対策について、単に導電性を高めるような手法は、装置構成によっては採用し難い。例えば、導電性の向上は、タッチセンシング機能内蔵液晶表示装置では、タッチセンサ感度に悪影響を及ぼし得る。タッチセンシング機能内蔵液晶表示装置で採用されている静電容量方式は、タッチパネルへの指の接触によって生じる静電容量の変化を検出し駆動する入力装置であるため、検出すべき静電容量の変化が、帯電防止層の存在に起因する電界の乱れで不安定化すると、タッチパネル感度の低下を引き起こす。そのため、タッチセンシング機能内蔵型に用いられる帯電防止層は、静電気ムラの発生防止とタッチセンサ感度とを両立し得る導電性を有するよう構成されている(特許文献1)。この導電性は、様々な環境で使用されても、その導電性を安定的に維持できることが、装置の耐久性や長寿命化の点から望ましい。しかし、本発明者らの検討の結果、従来の導電層付き偏光フィルムは、高温高湿度環境で使用すると表面抵抗値が減少し、タッチセンサの誤作動を生じるおそれがあることが明らかになった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、湿熱環境に曝された場合であっても、例えばタッチセンサの誤作動を生じないような安定した導電性を保持し得る導電層付き偏光フィルムを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、導電層付き偏光フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によると、導電層付き偏光フィルムが提供される。この導電層付き偏光フィルムは、該偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置された粘着剤層と、を備え、さらに導電層を備える。また、いくつかの態様において、前記偏光フィルムは、次式(1)で表される湿熱導電性変化比FHTが2以下である。
HT=ΔC(B)/ΔC(A)・・・・・(1)
(式(1)中、ΔC(B)は、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分であり、ΔC(A)は、前記湿熱試験前の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分である。)
【0007】
上記導電層付き偏光フィルムは、導電層を有することにより良好な導電性を示す。導電層を偏光フィルムとの積層体の形態とすることで、目標とする導電性を生産性よく被着体(典型的には液晶パネル)に付与することができ、また被着体(典型的には液晶パネル)に固定された後は、導電層は剥がれ難く、優れた耐久性を発揮し得る。また、導電層付き偏光フィルムは、その粘着剤層を貼り付けたタッチパネルの電流値差分から求められる湿熱試験前後の湿熱導電性変化比FHTが2以下であるので、湿熱環境に曝された場合であっても、安定した導電性を保持し得る。具体的には、上記導電層付き偏光フィルムを、例えばタッチセンシング機能内蔵液晶表示装置に用いた場合には、タッチセンサの誤作動を生じるような導電性の変化(より具体的には表面抵抗値の低下)を防止または抑制することができる。
【0008】
また、本明細書によると、異なる側面から、導電層付き偏光フィルムが提供される。この導電層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと、該偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置された粘着剤層と、を備え、さらに導電層を備える。また、いくつかの態様において、前記導電層は、湿熱表面抵抗変化比S/Pが条件:0.05≦S/P≦10;を満足する。ここでSは、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後における導電層の表面抵抗値[Ω/□]であり、Pは、前記湿熱試験前における導電層の表面抵抗値[Ω/□]である。上記導電層付き偏光フィルムは、導電層を有することにより良好な導電性を示し、かつ耐久性よく被着体(典型的には液晶パネル)に固定され得る。また、導電層は、湿熱試験前後の表面抵抗変化比が特定の範囲内であるので、湿熱環境に曝された場合であっても、安定した導電性を保持し、耐久性(湿熱耐久性)に優れたものとなり得る。
【0009】
また、本明細書によると、異なる側面から、導電層付き偏光フィルムが提供される。この導電層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと、該偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置された粘着剤層と、を備え、さらに導電層を備える。いくつかの態様において、前記導電層は、導電性ポリマーと、沸点が180℃以上である高沸点化合物とを含む導電性組成物から形成されたものであり得る。上記導電層付き偏光フィルムは、導電層を有することにより良好な導電性を示し、かつ耐久性よく被着体(典型的には液晶パネル)に固定され得る。また、沸点が180℃以上の高沸点化合物を用いて形成した導電層によると、湿熱環境に曝された後の導電安定性(すなわち湿熱導電安定性)が向上するので、湿熱環境に曝された場合であっても安定した導電性を保持し得る。つまり、ここに開示される技術では、高沸点化合物は、導電性向上のために用いられるのではなく、タッチセンサが長期に亘って誤作動なく機能するような湿熱導電安定性のために用いられる。この点で、特許文献2における導電性向上剤を用いた導電性向上とは本質的に異なる。なお、ここに開示される技術では、目標とする導電性は、導電性ポリマーの種類、使用量等により調節可能である。
【0010】
ここに開示される技術(導電層付き偏光フィルム、液晶パネル、タッチセンシング機能内蔵型液晶パネル、インセル型液晶パネル、液晶表示装置およびそれらの製造方法を包含する。以下同じ。)のいくつかの態様では、前記導電層は、湿熱表面抵抗変化比S/Pが条件:0.05≦S/P≦10;を満足する。ここでSは、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後における導電層の表面抵抗値[Ω/□]であり、Pは、前記湿熱試験前における導電層の表面抵抗値[Ω/□]である。上記導電層付き偏光フィルムが備える導電層は、湿熱試験前後の表面抵抗変化比が特定の範囲内であるため、改善した湿熱導電安定性を発揮し得る。
【0011】
いくつかの好ましい態様では、前記導電性組成物における前記高沸点化合物の含有量は0.1~10重量%である。導電層における高沸点化合物の含有量を特定の範囲とすることにより、良好な湿熱導電安定性を好ましく得ることができる。また、偏光フィルムと粘着剤層との間に導電層を配置する構成では、湿熱導電安定性と粘着剤層の投錨性とを好ましく両立することができる。なお、粘着剤層の投錨性が優れることは、上記導電層付き偏光フィルムが適用される構造体(例えば液晶パネル、ひいては液晶表示装置)製造時における加工性、リワーク性の改善をもたらし、当該導電層付き偏光フィルムが貼り付けられた構造が優れた耐久性を有することにも通じる。
【0012】
いくつかの好ましい態様では、前記導電層は、導電性ポリマーとしてチオフェン系ポリマーを含む。導電性ポリマーとしてチオフェン系ポリマーを用いる構成において、ここに開示される技術による湿熱導電安定性改善効果は好ましく発揮される。
【0013】
いくつかの好ましい態様では、前記導電層はバインダを含む。これによって、導電層の膜形成性が向上するとともに、偏光フィルム上に導電層を形成する態様においては偏光フィルムと導電層との密着性が好ましく向上し、偏光フィルムと粘着剤層との間に導電層を配置する態様では粘着剤層の投錨性が好ましく向上し得る。
【0014】
いくつかの好ましい態様では、前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む。アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を用いることで、例えば液晶装置構成部材等の被着体に偏光フィルムを良好に接着固定しやすい。そのようなアクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアミド基含有モノマーを含むものであることがより好ましい。アミド基含有モノマーを重合したアクリル系ポリマーによると、投錨性が向上する傾向がある。
【0015】
いくつかの好ましい態様では、前記導電層は、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けられている。また、前記粘着剤層は前記導電層上に配置されている。このような構成において、ここに開示される技術による効果は好ましく発揮される。また、導電層を偏光フィルムと粘着剤層との間に配置することにより、導電層を、粘着剤層の投錨性を向上させるアンカー層としても機能させ得る。
【0016】
ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、湿熱導電安定性が向上しているので、インセル型液晶パネルに好ましく用いられる。インセル型液晶パネルは、オンセル型と異なり、ITO層等の導電性の層がパネルの表面に設けられていないため、導電層付き偏光フィルムとしては、より低抵抗なものが用いられる。抵抗値水準の低いものほど、タッチセンサ感度の不具合を解消しにくい傾向があるため、オンセル型と比べて、インセル型液晶パネルでは抵抗値安定性の重要度が高い。したがって、ここに開示される技術を利用して、湿熱導電安定性を含む導電安定性を向上することの利点はインセル型において特に大きい。ここに開示される導電層付き偏光フィルムをインセル型液晶パネルに用いることで、その湿熱導電安定性向上効果を利用して、タッチセンサの感度を長期に亘って耐久性よく安定的に保持し、インセル型液晶表示装置におけるタッチセンサ感度安定性、ひいては装置の耐久性向上、長寿命化が実現され得る。ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、各種の液晶パネルのなかでインセル型液晶パネル用途に特に適したものであり得る。
【0017】
また、本明細書によると、導電層付き偏光フィルムの製造方法が提供される。この方法は:偏光フィルムの少なくとも一方の面に導電層を形成する工程と;前記導電層上に粘着剤層を設ける工程と;を備える。また、前記導電層は、導電性ポリマーと、沸点が180℃以上である高沸点化合物とを含む導電性組成物から形成する。この方法によると、沸点が180℃以上の高沸点化合物を用いて導電層を形成することにより、改善した湿熱導電安定性を有する導電層付き偏光フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施態様に係る導電層付き偏光フィルムを示す模式的断面図である。
図2】一実施態様に係るインセル型液晶パネルを示す模式的断面図である。
図3】他の一実施態様に係るインセル型液晶パネルを示す模式的断面図である。
図4】他の一実施態様に係るインセル型液晶パネルを示す模式的断面図である。
図5】他の一実施態様に係るインセル型液晶パネルを示す模式的断面図である。
図6】他の一実施態様に係るインセル型液晶パネルを示す模式的断面図である。
図7】一実施態様に係るセミインセル型液晶パネルを示す模式的断面図である。
図8】一実施態様に係るオンセル型液晶パネルを示す模式的断面図である。
図9】導電層付き偏光フィルムを貼り付けたタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分の測定方法を模式的に示す説明図である。
図10】導電層付き偏光フィルムを貼り付けたときのΔC(Cooked Data(Max-Min))と導電層の表面抵抗値[Ω/□]との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品および部品のサイズや縮尺を正確に表したものではない。
【0020】
<導電層付き偏光フィルム>
ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと、粘着剤層と、導電層と、を備える。これら各構成要素(各層)の配置は特に限定されず、例えば、粘着剤層は、偏光フィルムの第一面側および第二面(第一面とは反対側の面)側の少なくとも一方に配置され得る。導電層も偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置され得る。
【0021】
ここに開示される導電層付き偏光フィルムの構成例を図1に模式的に示す。この導電層付き偏光フィルム10は、偏光フィルム11と導電層13と粘着剤層12とをこの順で有する。具体的には、偏光フィルム11の一方の面(第一面)11Aには導電層13が設けられており、導電層13の一方の面(偏光フィルム11側とは反対側の面)上に粘着剤層12が配置されている。また、導電層付き偏光フィルム10は、偏光フィルム11の他方の面(第二面、背面ともいう。)11Bに表面処理層14を有し得る。導電層付き偏光フィルム10は、その粘着剤層12の粘着面12Aを被着体(例えば液晶セルの視認側の透明基板等の光学部品)の表面に貼り付けて使用される。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の導電層付き偏光フィルム10は、粘着剤層12の粘着面(被着体への貼付面)12Aが、少なくとも粘着剤層12側が剥離面となっている剥離ライナー(図示せず)によって保護された形態であり得る。なお、導電層付き偏光フィルム10の背面(表面処理層14の外表面、表面処理層14を有しない場合には偏光フィルム11の背面)には表面保護フィルム(図示せず)を設けることができる。
【0022】
導電層付き偏光フィルムの積層構造は、上記構成例に限定されない。例えば、偏光フィルムの一方の面(第一面)に導電層が設けられ、偏光フィルムの他方の面(第二面)に粘着剤層が設けられたものであってもよい。この変形例において、導電層は偏光フィルムの背面層であり得る。また、他の変形例として、偏光フィルムの一方の面に粘着剤層が設けられ、その粘着剤層の一方の面(偏光フィルム側とは反対側の面)上に導電層が配置されたものが挙げられる。この変形例において、導電層は粘着剤層と部分的に融合し、導電層表面は所定の粘着力を有し得る。そのような融合は、具体的には、粘着剤層構成成分の導電層への移行や、導電層構成成分の粘着剤層への移行による融合であり得る。あるいは、上記と同じ層構成において、導電層は、粘着剤層表面に部分的に配置されたものであり得る。この構成によっても、導電層付き偏光フィルムの導電層側表面は所定の粘着力を有するものとなり得る。この態様において、粘着剤層表面における導電層の形状(パターン)は特に限定されず、ストライプ状、格子状など、導電層付き偏光フィルムの一外表面において、少なくとも一方向に連続した形状であり得る。
【0023】
なお、上記構成例や変形例は組み合わせることができる。例えば、導電層は偏光フィルムの両面に配置されており、その一方が偏光フィルムの背面層であり、他方が偏光フィルムと粘着剤層との間に配置されているか、あるいは、粘着剤層上(具体的には偏光フィルム側とは反対側の面)に配置されている構成とすることができる。また、偏光フィルムと粘着剤層との間に導電層が配置され、さらに粘着剤層の偏光フィルム側とは反対側の面にも他の導電層が配置されたものであってもよい。したがって、ここに開示される導電層付き偏光フィルムにおいて、導電層は一層に限定されず、分離して配置され得る二層または三層であり得る。
【0024】
<湿熱導電性変化比FHT
ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、いくつかの態様において、次式(1)で表される湿熱導電性変化比FHT(Hygro-thermal factor)が2以下であることを特徴とするものであり得る。
HT=ΔC(B)/ΔC(A)・・・・・(1)
上式(1)中、ΔC(B)は、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分であり、ΔC(A)は、前記湿熱試験前の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分である。この特性を満足する導電層付き偏光フィルムは、湿熱環境に曝された場合であっても、安定した導電性を保持することができる。そのような観点から、上記FHTは、好ましくは凡そ1.7以下、より好ましくは凡そ1.5以下、さらに好ましくは凡そ1.3以下、特に好ましくは凡そ1.1以下(例えば1.0以下)である。ここに開示される技術は、湿熱環境に曝した場合における表面抵抗減少(導電性上昇)抑制に関するものであり得るので、湿熱試験後の導電性低下(すなわちFHTの減少)については特に限定されないが、上記FHTは、通常は凡そ0.1以上(例えば凡そ0.3以上)であり、凡そ0.5以上が適当であり、好ましくは凡そ0.6以上、より好ましくは凡そ0.7以上、さらに好ましくは凡そ0.8以上、特に好ましくは凡そ0.9以上(典型的には0.95以上、例えば0.99以上)である。上記FHTは、後述の実施例に記載の方法で測定される。なお、本明細書に開示される導電層付き偏光フィルムは、上記湿熱導電性変化比FHTの制限のない態様を包含し、そのような態様において、導電層付き偏光フィルムは上記特性を有するものに限定されない。
【0025】
<偏光フィルム>
ここに開示される偏光フィルムは偏光板ともいい、通常、偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の面(好ましくは両面)に配置された透明保護フィルムとを備えるものであり得る。偏光子としては、特に限定されず、例えば、親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したものが用いられる。親水性高分子フィルムとしては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。偏光子として、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等を用いることもできる。なかでも、PVA系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好ましい。
【0026】
偏光子の厚さは特に制限されず、一般的に凡そ80μm以下である。また、薄厚化の観点から、厚さ凡そ10μm以下(好ましくは凡そ1~7μm)の薄厚の偏光子を用いることもできる。薄厚の偏光子は、厚みムラが少なく視認性に優れ、また寸法変化が少ないため耐久性にも優れる。薄厚の偏光子を用いることは、偏光フィルムの薄厚化にも通じる。
【0027】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シクロオレフィン系樹脂(典型的にはノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、PVA樹脂、および、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。好ましい態様では、偏光子の一方の面に、例えばTAC等の熱可塑性樹脂からなる透明保護フィルムを配置し、他方の面に、シクロオレフィン系樹脂(典型的にはノルボルネン系樹脂)や、あるいは(メタ)アクリル樹脂からなる透明保護フィルムを配置する構成が採用され得る。他の好ましい態様では、偏光子の一方の面に、例えばTAC等の熱可塑性樹脂からなる透明保護フィルムを配置し、他方の面に、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。これら透明保護フィルムは、PVA系等の接着剤を介して偏光子に積層され得る。透明保護フィルムには、目的に応じて、任意の適切な添加剤が1種類以上含まれ得る。
【0028】
偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤は、光学的に透明であれば特に制限されず、水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型、カチオン硬化型の各種形態のものを用いることができる。なかでも、水系接着剤またはラジカル硬化型接着剤が好ましい。
【0029】
また、偏光フィルムの背面(すなわち導電層が設けられる側とは反対側の面)には表面処理層を設けてもよい。表面処理層は、偏光フィルムに用いられる上述の透明保護フィルムに設けることができる他、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして、偏光フィルム上に設けることもできる。
【0030】
表面処理層の好適例としては、ハードコート層が挙げられる。ハードコート層の形成材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱または放射線により硬化する材料を用いることができる。用いられる材料としては、熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化性樹脂が挙げられる。なかでも、紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂は、紫外線照射による硬化処理により、効率よく硬化樹脂層を形成し得るので、加工性に優れる。硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、メラミン系等の1種または2種以上を用いることができ、これらは、モノマー、オリゴマー、ポリマー等を含む形態であり得る。熱(基材損傷の原因となり得る。)を必要とせず、加工速度に優れることから、放射線硬化型樹脂(典型的には紫外線硬化型樹脂)が特に好ましい。
【0031】
表面処理層の他の例としては、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層が挙げられる。上記ハードコート層上に、防眩処理層や反射防止層を設けてもよい。防眩処理層の構成材料は特に限定されず、例えば放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられ得る。反射防止層は、複数の層からなる多層構造を有するものであり得る。表面処理層のその他の例としては、スティッキング防止層等が挙げられる。
【0032】
ここに開示される技術が表面処理層を備える態様で実施される場合、表面処理層に導電剤を含有させて導電性を付与することができる。導電剤としては後述の導電剤や導電成分を特に制限なく用いることができる。
【0033】
ここに開示される偏光フィルムの厚さ(複数の層から構成される場合は、それらの総厚)は、特に限定されず、例えば凡そ1μm以上であり、通常は凡そ10μm以上であり、凡そ20μm以上が適当である。例えば、透明保護フィルムを設ける場合、保護性等の観点から、偏光フィルムの厚さは、好ましくは凡そ30μm以上、より好ましくは凡そ50μm以上、さらに好ましくは凡そ70μm以上である。偏光フィルムの上限は特に制限されず、例えば凡そ1mm以下であり、通常は凡そ500μm以下であり、凡そ300μm以下が適当である。光学特性や薄厚化の観点から、上記厚さは、好ましくは凡そ150μm以下、より好ましくは凡そ120μm以下、さらに好ましくは凡そ100μm以下である。
【0034】
<導電層>
ここに開示される導電層は、偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置されて、導電層付き偏光フィルムの導電性を高める層である。導電層は、例えば、有機または無機の導電性物質等の各種導電剤を含む導電性組成物から形成され得る。導電層の表面に粘着剤層が配置される態様においては、導電層は粘着剤層と偏光フィルムとの密着を高めるアンカー層としても機能し得る。
【0035】
導電性組成物に(したがって導電層にも。特に断りがない限り以下同じ。)含まれ得る有機導電性物質としては、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有するカチオン型導電剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型導電剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体等の両性イオン型導電剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体等のノニオン型導電剤;上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基(例えば、4級アンモニウム塩基)を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;が挙げられる。このような導電剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
導電層に含まれ得る無機導電性物質の例としては、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)等が挙げられる。このような無機導電性物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
(導電性ポリマー)
いくつかの好ましい態様では、導電剤として導電性ポリマーを用いる。導電性ポリマーを用いることにより、光学特性、外観、帯電防止効果に優れた導電層が好ましく得られる。また、ここに開示される技術による湿熱導電安定性向上効果は、導電性ポリマーを含む導電層において、好ましく発揮される傾向がある。導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリマーが挙げられる。このような導電性ポリマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
導電性ポリマーの好適例として、ポリチオフェン(チオフェン系ポリマー)およびポリアニリン(アニリン系ポリマー)が挙げられる。なお、本明細書中においてポリチオフェンとは、無置換または置換チオフェンの重合体をいう。ここに開示される技術における置換チオフェン重合体の一好適例として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が挙げられる。
【0039】
上記導電性ポリマーとしては、有機溶剤可溶性や水溶性、水分散性のものを特に制限なく使用することができる。いくつかの好ましい態様では、導電性ポリマーは、水溶液または水分散液の形態で導電層形成に用いられる。この態様では、導電性組成物からなる塗布液を水性液(水と他の溶媒とを含んでよい水溶液または水分散液)の形態とし得るので、有機溶剤による偏光フィルム変質のリスクを軽減することができる。ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性ポリマーは、水溶液または水分散液の形態にしやすいので、好ましく使用される。なかでも、ポリチオフェンがより好ましい。いくつかの好ましい態様では、導電性組成物の調製にポリチオフェン水溶液を使用する。なお、水溶液または水分散液は、水のほかに水系の溶媒を含み得る。例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類の1種または2種以上を、水との混合溶媒(水系溶媒)の形態で用いることができる。
【0040】
上記導電性ポリマーの水溶液や水分散液は、例えば、親水性官能基を有する導電性ポリマー(分子内に親水性官能基を有するモノマーを共重合させる等の手法により合成され得る。)を水に溶解または分散させることにより調製することができる。上記親水性官能基としては、スルホ基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシ基、四級アンモニウム基、硫酸エステル基(-O-SOH)、リン酸エステル基(例えば-O-PO(OH))等が例示される。かかる親水性官能基は塩を形成していてもよい。
【0041】
いくつかの好ましい態様では、導電性組成物の調製にドーパント(具体的には、チオフェン系ポリマーのドーパント)としてポリアニオンを用いる。この態様では、導電層はポリアニオンを含み得る。ポリアニオンとしては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸類や、ポリスチレンスルホネート(PSS)等のポリスルホン酸類の1種または2種以上を用いることができる。特に好ましい態様では、PSSを含むポリチオフェン水溶液(ポリチオフェンにPSSがドーパントとして添加された形態であり得る。)を使用する。かかる水溶液は、ポリチオフェン:PSSを1:1~1:10の重量比で含有するものであり得る。上記水溶液におけるポリチオフェンとPSSとの合計含有量は、例えば1~5重量%程度であり得る。
【0042】
上記ポリチオフェン水溶液の市販品としては、ナガセケムテック社製の商品名「デナトロン」シリーズ、ヘレウス社製の商品名「Clevios」シリーズが例示される。また、ポリアニリンスルホン酸水溶液の市販品としては、三菱レイヨン社製の商品名「aqua-PASS」が例示される。
【0043】
導電性組成物における導電剤(好適には導電性ポリマー)の含有量は、帯電防止の観点から、凡そ0.005重量%以上が適当であり、好ましくは凡そ0.01重量%以上である。導電性組成物における導電剤(好適には導電性ポリマー)の含有量の上限は、例えば凡そ5重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ3重量%以下、より好ましくは凡そ1重量%以下、さらに好ましくは凡そ0.7重量%以下である。上記導電性組成物を用いて得られる導電層において、導電剤(好適には導電性ポリマー)の含有量は、帯電防止の観点から、凡そ1重量%以上が適当であり、好ましくは凡そ3重量%以上、より好ましくは凡そ5重量%以上、さらに好ましくは凡そ7重量%以上、特に好ましくは凡そ10重量%以上である。導電層における導電剤(好適には導電性ポリマー)の含有量の上限は、凡そ90重量%以下であることが好ましい。
【0044】
導電性ポリマーを含む導電層を用いる態様において、導電層には、導電性ポリマー以外の導電成分を含ませてもよい。そのような導電成分としては、上述の有機または無機の導電性物質として例示したもの(導電性ポリマー以外)や、後述の粘着剤層に含まれる導電成分が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術において、導電層における導電性ポリマー以外の導電成分の含有量は、発明の効果を損なわない範囲で設定され得る。その含有量は、導電層中、通常は凡そ5重量%以下であり、凡そ3重量%以下(例えば凡そ1重量%以下、典型的には0.3重量%以下)とすることが適当である。ここに開示される技術は、導電層が導電性ポリマー以外の導電成分を実質的に含まない態様で好ましく実施することができる。
【0045】
(高沸点化合物)
ここに開示される導電層は、典型的には、沸点が180℃以上である高沸点化合物を含む導電性組成物から形成されたものであり得る。上記高沸点化合物を用いて形成した導電層は、改善した湿熱導電安定性を示す。高沸点化合物は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。高沸点化合物は導電層形成時に揮発により残存しないものであり得るが、形成された導電層は、湿熱表面抵抗変化比や湿熱表面抵抗減少率を好ましく満足し、当該導電層を含む導電層付き偏光フィルムは、湿熱導電性変化比FHTを好ましく満足し得る。上記高沸点化合物は、沸点が180℃以上である化合物であり、常温(23℃)で固体または液体である。常温で固体である高沸点化合物は、後述する導電性組成物の溶媒(例えば水)に対して、溶解しやすいものを用いることが好ましい。そのような高沸点化合物は、例えば溶媒(例えば水)100mLへの溶解度が常温で凡そ1g以上(典型的には凡そ3g以上、例えば凡そ10g以上、さらには凡そ20g以上)であり得る。また、導電層形成性の観点から、高沸点化合物は温度20~50℃で液状(したがって融点が20℃以下)の化合物であることが好ましい。そのような化合物は高沸点溶媒ともいう。なお、ここでいう溶媒とは、導電性組成物に含まれる液状媒体をいい、便宜上溶媒というが、溶媒および分散媒を包含する概念である。
【0046】
高沸点化合物の使用によって湿熱導電安定性が向上する理由としては、次のことが考えられる。例えば、導電性組成物の溶媒として、水等の低沸点溶媒(沸点180℃未満の溶媒)を使用した場合、導電層は、薄厚(例えば厚さ1μm未満)であるため、組成物中の溶媒は速やかに揮発し乾燥する。このとき、同じく組成物に含まれる導電剤(好適には導電性ポリマー)の導電層での配置(配向であり得る。)は、この乾燥プロセスの影響を受ける。高沸点化合物は、導電層形成時の乾燥プロセスにおける溶媒の揮発挙動を適度に制御し、その結果、導電層中の導電剤の配置を良好なものにする。しかしそれだけでなく、本発明者らの検討の結果、所定以上の沸点を有する高沸点化合物は、乾燥プロセスにおいて、導電層中の導電剤の配置を、環境変化等の外的要因で変化し難い安定したものにもしていると考えられる。本発明者らは、TOF/MS(飛行時間型質量分析計)を用いて、水とジエチレングリコール(沸点:約244℃)との混合溶媒、水とN-メチルピロリドン(沸点:約204℃)との混合溶媒をそれぞれ50℃で加熱し、そのときの揮発成分量を経時で測定し、特定(具体的には沸点180℃以上)の高沸点化合物を使用した混合溶媒では、乾燥プロセスの初期を過ぎると、プロセスの主要な期間において、上記高沸点化合物が緩やかに揮発することを確認している。高沸点化合物使用による上記揮発挙動が導電剤の配置の安定保持に寄与し、湿熱環境に曝されても、安定した導電性をもたらしていると考えられる。この作用は、特にπ-πスタッキングの作用で電子伝導を行うチオフェン系ポリマーやアニリン系ポリマーを導電剤(より好適にはチオフェン系ポリマー、例えばチオフェン系ポリマーと、PSS等のドーパント)を用いる態様において特に有意義と考えられる。なお、ここに開示される技術は、上記の考察に限定されるものではない。
【0047】
ここに開示される導電性組成物に含まれる高沸点化合物は、その湿熱導電安定化作用から、導電性安定化剤ともいう。上記導電性安定化剤は、湿熱環境(例えば、温度50℃以上相対湿度80%以上、典型的には温度85℃85%RH)に所定時間(例えば24時間)曝した場合において、その剤を使用しなかった場合と比べて、導電層の導電性(表面抵抗値等から評価され得る。)の変化を抑制する剤、すなわち上記環境にて導電層の導電性の安定化に寄与する剤として定義され得る。
【0048】
いくつかの態様では、導電性組成物に含まれる高沸点化合物の沸点は、湿熱導電安定性の観点から、好ましくは凡そ200℃以上、より好ましくは凡そ210℃以上、さらに好ましくは凡そ220℃以上、特に好ましくは凡そ230℃以上(例えば凡そ240℃以上)である。上記高沸点化合物の沸点の上限は、導電層の成膜性、乾燥効率等を考慮して適切に設定され、特定の範囲に限定されない。高沸点化合物の沸点は、通常は凡そ400℃以下であり、凡そ320℃以下が適当であり、導電層の成膜性の観点から、好ましくは凡そ300℃以下(例えば凡そ290℃以下)、より好ましくは凡そ280℃以下、さらに好ましくは凡そ260℃以下、特に好ましくは凡そ250℃以下である。沸点180℃以上の範囲から相対的に低い沸点の高沸点化合物を用いることにより、偏光フィルム上に導電層を形成する態様においては偏光フィルムと導電層との密着性が向上し、偏光フィルムと粘着剤層との間に導電層を配置する態様では粘着剤層の投錨性が向上する傾向がある。
【0049】
高沸点化合物としては、例えば、N-メチルピロリドン等のラクタム系化合物(ラクタム系溶媒であり得る。);エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール類(1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等)、ペンタンジオール類(1,5-ペンタンジオール等)、ヘキサンジオール類(1,6-ヘキサンジオール等)、ネオペンチルグリコール、カテコール等のグリコール系化合物(グリコール系溶媒であり得る。);ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系化合物(グリコールエーテル系溶媒であり得る。);β-チオジグリコール等のチオグリコール系化合物(チオグリコール系溶媒であり得る。);グリセリン;マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール系化合物;2-フェノキシエタノール等の芳香族アルコール系化合物;N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N-エチルアセトアミド、ベンズアミド等のアミド系化合物(アミド系溶媒であり得る。);ピラゾール等のアミン系化合物(典型的には環状アミン);ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系化合物(スルホキシド系溶媒であり得る。); 等のなかで、沸点が180℃以上のものを特に制限なく用いることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、沸点が180℃以上であるグリコール系化合物、グリコールエーテル系化合物、グリセリンが好ましく、沸点が180℃以上であるグリコールエーテル系化合物(典型的にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール)がより好ましい。
【0050】
特に限定するものではないが、上記高沸点化合物としては、水酸基を有する化合物が好ましく用いられる。水酸基を有する高沸点化合物は、溶媒(典型的には水系溶媒)に相溶しやすく、例えば水系溶媒に添加した場合に、湿熱導電安定性向上をもたらす良好な揮発挙動をとり得ると考えられる。いくつかの好ましい態様では、上記高沸点化合物に含まれる水酸基の数は2以上であり、例えば3以上であってもよい。また例えば、エーテル構造を含むものを好ましく用いることができる。
【0051】
ここに開示される導電性組成物における高沸点化合物の含有量は、目的とする湿熱導電安定性を達成するよう適切に設定され、特定の範囲に限定されない。導電性組成物における高沸点化合物の含有量は、湿熱導電安定性向上効果を得る観点から、凡そ0.1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.5重量%以上、より好ましくは凡そ1重量%以上、さらに好ましくは凡そ2重量%以上であり、凡そ5重量%以上(例えば凡そ8重量%以上)であってもよい。また、導電性組成物における高沸点化合物の含有量の上限は、例えば凡そ50重量%以下とすることができ、凡そ30重量%以下(例えば凡そ25重量%以下)が適当であり、好ましくは凡そ15重量%以下、より好ましくは凡そ10重量%以下、さらに好ましくは凡そ7重量%以下、特に好ましくは凡そ5重量%以下(典型的には4重量%以下)である。高沸点化合物の使用量を所定の範囲に制限することにより、偏光フィルム上に導電層を形成する態様においては偏光フィルムと導電層との密着性が向上し、偏光フィルムと粘着剤層との間に導電層を配置する態様では粘着剤層の投錨性が向上する傾向がある。
【0052】
導電層を形成するための導電性組成物は、典型的には溶媒や分散媒(便宜上、以下まとめて「溶媒」という。)を含む。溶媒としては、特に限定されず、導電層形成成分を安定して溶解または分散し得るものが好ましく用いられ得る。かかる溶媒は、有機溶剤、水、またはこれらの混合溶媒であり得る。上記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族または脂環族アルコール類;アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)等のグリコールエーテル類;等から選択される1種または2種以上を用いることができる。なお、上記溶媒は、常温で液体であり、沸点は180℃未満である。
【0053】
いくつかの好ましい態様では、上記溶媒は水系溶媒である。ここで水系溶媒とは、水または水を主成分とする混合溶媒(例えば、水と、メタノール、エタノール等の低級アルコールとの混合溶媒)をいう。ここに開示される技術においては、偏光フィルムの変質防止の観点から、水系の溶媒が好ましく用いられる。水系溶媒に占める水の割合は凡そ30重量%以上が適当であり、好ましくは凡そ50重量%以上(典型的には50重量%超)であり、凡そ70重量%以上でもよく、凡そ80重量%以上(例えば凡そ90~100重量%)でもよい。
【0054】
(バインダ)
いくつかの態様において、導電層はバインダを含む。導電層がバインダを含むことにより、導電層の膜形成性が向上する。また、偏光フィルム上に導電層を形成する態様においては偏光フィルムと導電層との密着性が向上し、偏光フィルムと粘着剤層との間に導電層を配置する態様では粘着剤層の投錨性が向上する傾向がある。バインダとしては、特に限定されず、オキサゾリン基含有ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、エポキシ基含有ポリマー、ビニルピロリドン系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等の1種または2種以上が用いられ得る。好適例としては、オキサゾリン基含有ポリマー、ウレタン系ポリマー(典型的にはポリウレタン)が挙げられる。
【0055】
いくつかの好ましい態様において、バインダとしてオキサゾリン基含有ポリマーが用いられる。オキサゾリン基含有ポリマーを用いることにより、偏光フィルム表面に対する濡れ性が得られやすい。また、偏光フィルムと粘着剤層との間に導電層を配置する態様では粘着剤層の投錨性が向上する傾向がある。オキサゾリン基含有ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。水に溶解または分散可能なオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。オキサゾリン基は、2-オキサゾリン基、3-オキサゾリン基、4-オキサゾリン基のいずれであってもよく、例えば2-オキサゾリン基を有するものが好ましく用いられ得る。オキサゾリン基含有ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル骨格またはスチレン骨格を主鎖に含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているものが用いられ得る。いくつかの好ましい態様に係るオキサゾリン基含有ポリマーは、(メタ)アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有するオキサゾリン基含有(メタ)アクリル系ポリマーであり得る。
【0056】
オキサゾリン基含有ポリマーの分子量は、目的や要求特性等に基づいて適切に設定され得る。オキサゾリン基含有ポリマーの分子量の上限は、塗工性等の観点から、凡そ100×104以下であることが適当であり、好ましくは凡そ50×104以下、より好ましくは凡そ10×104以下、さらに好ましくは凡そ5×104以下である。上記分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)である。
【0057】
いくつかの態様において、バインダとしてウレタン系ポリマーが用いられる。ウレタン系ポリマーを用いることにより、偏光フィルムと粘着剤層との間に導電層を配置する態様では粘着剤層の投錨性が向上する傾向がある。ウレタン系ポリマーとしては、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン;ウレタン(メタ)アクリレートや、アルキル(メタ)アクリレートが共重合されたアクリル-ウレタン共重合体;等が挙げられる。ウレタン系ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様では、バインダとしてオキサゾリン基含有ポリマーとウレタン系ポリマーと併用することが好ましい。
【0058】
導電層中におけるバインダの含有量は、特に限定されず、例えば凡そ凡そ3重量%以上であることが適当である。偏光フィルムとの密着性や投錨性等の観点から、バインダの含有量は、好ましくは凡そ10重量%以上、より好ましくは凡そ30重量%以上、さらに好ましくは凡そ50重量%以上であり、特に好ましくは凡そ60重量%以上であり、凡そ70重量%以上(例えば凡そ80重量%以上)であってもよい。バインダの含有量の上限は、導電性ポリマー等の他の成分の作用を考慮して、通常は凡そ99重量%以下であり、凡そ95重量%以下が適当であり、例えば凡そ90重量%以下(例えば凡そ80重量%以下)であってもよい。
【0059】
導電層には、必要に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、酸化防止剤等が挙げられる。これら添加剤の割合は、通常、導電層中凡そ50重量%以下であり、凡そ30重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが適当であり、凡そ3重量%以下(例えば1重量%未満)であってもよい。
【0060】
(導電層の形成方法)
上記導電層は、上記導電剤や高沸点化合物、必要に応じて使用される添加剤が適当な溶媒に分散または溶解した液状の導電性組成物を偏光フィルムに付与するか、あるいは偏光フィルムに設けられた粘着剤層表面に付与するなどの手法によって好適に形成され得る。例えば、上記導電性組成物を偏光フィルムの第一面に塗布して乾燥させ、必要に応じて硬化処理(熱処理、紫外線処理等)を行う手法を好ましく採用し得る。上記導電性組成物の固形分濃度(NV)は、例えば5重量%以下(典型的には0.05~5重量%)とすることができ、通常は3重量%以下(典型的には0.10~3重量%)とすることが適当である。薄厚の導電層を形成する場合には、上記導電性組成物のNVを例えば0.05~0.50重量%(例えば0.10~0.30重量%)とすることが好ましい。このように低NVの導電性組成物を用いることにより、より均一な導電層が形成され得る。
【0061】
(表面抵抗値)
導電層の表面抵抗値は、帯電防止等の観点から、凡そ1×1012Ω/□以下であることが適当である。表面抵抗値が所定値以下に制限された導電層を液晶パネル(例えばインセル型液晶パネル)用途に適用すると、導電層の導電性に基づき静電気ムラの発生が防止される。また、タッチセンサ感度の観点から、上記表面抵抗値の下限は、凡そ1×106Ω/□以上とすることが好ましい。導電層の表面抵抗値の範囲は、導電層付き偏光フィルムが有する粘着剤層が導電性であるか否か、液晶セルの種類、携帯電子機器用途や車載用途等によって異なり得る。例えば、携帯電子機器用のインセル型液晶セルに適用する場合には、上記表面抵抗値は、凡そ1×108Ω/□~1×1010Ω/□であることが好ましく、帯電防止の観点から、凡そ1×108Ω/□~1×109Ω/□であることがより好ましい。車載用のインセル型液晶セルに適用する場合には、凡そ1×106Ω/□~1×109Ω/□であることが好ましく、帯電防止の観点から、凡そ1×107Ω/□~5×108Ω/□であることがより好ましい。また、オンセル型液晶セルに適用する場合には、上記表面抵抗値は、凡そ1×1010Ω/□~1×1012Ω/□であることが好ましい。また、セミインセル型液晶セルに適用する場合には、上記表面抵抗値は、凡そ1×109Ω/□~1×1012Ω/□であることが好ましい。導電層の表面抵抗値は、後述の実施例に記載の方法(初期表面抵抗値)で測定される。
【0062】
(湿熱表面抵抗変化比)
ここに開示される導電層は、いくつかの態様において、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後における導電層の表面抵抗値S[Ω/□]と上記湿熱試験前における導電層の表面抵抗値P[Ω/□]との比(湿熱表面抵抗変化比S/P)が、条件:0.05≦S/P≦10;を満足することを特徴とするものであり得る。上記湿熱表面抵抗変化比S/Pを満足する導電層は、改善された湿熱導電安定性を示す。上記湿熱表面抵抗変化比S/Pは、好ましくは凡そ0.1以上、より好ましくは凡そ0.5以上、さらに好ましくは凡そ0.8以上(例えば凡そ1以上)である。また上記S/Pは、好ましくは凡そ3以下、より好ましくは凡そ1.5以下、さらに好ましくは凡そ1.2以下、特に好ましくは1.1以下である。湿熱表面抵抗変化比S/Pは、後述の実施例に記載の方法で測定される。なお、本明細書に開示される導電層付き偏光フィルムは、上記湿熱表面抵抗変化比S/Pの制限のない態様を包含し、そのような態様において、導電層付き偏光フィルムは上記特性を有するものに限定されない。
【0063】
(湿熱表面抵抗減少率)
いくつかの態様において、導電層は、湿熱表面抵抗減少率が所定値以下に抑制されたものであり得る。具体的には、導電層は、式:(1-S/P)×100;から求められる湿熱表面抵抗減少率が95%以下であり得る。ここでSは、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後における導電層の表面抵抗値[Ω/□]であり、Pは、上記湿熱試験前における導電層の表面抵抗値P[Ω/□]であり、SおよびPは、後述の実施例に記載の方法で測定される。上記湿熱表面抵抗減少率を満足する導電層は、湿熱環境に曝された場合における表面抵抗値の減少をよく抑制するものであり得る。上記湿熱表面抵抗減少率は、好ましくは凡そ90%以下、より好ましくは凡そ50%以下、さらに好ましくは凡そ20%以下、特に好ましくは凡そ0%またはそれ以下である。ここに開示される技術は、湿熱環境に曝した場合における表面抵抗減少抑制に関するものであり得るので、湿熱試験後の表面抵抗値の増大については特に限定されないが、例えば、式:(S/P-1)×100;から求められる湿熱表面抵抗増加率は、凡そ200%以下であることが適当であり、150%未満であってもよく、130%未満(例えば120%以下)であり得る。上式中のSおよびPは上記湿熱表面抵抗減少率のSおよびPとそれぞれ同義である。
【0064】
(導電層の厚さ)
ここに開示される技術における導電層の厚さは、帯電防止性、投錨性等の要求特性に応じて適切に設定され得る。導電層の厚さは、通常は、凡そ10nm以上であり、10nm超とすることが適当である。帯電防止性向上や、均一な厚みを得る観点から、導電層の厚さは、好ましくは12nm以上、より好ましくは14nm以上、さらに好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上(典型的には25nm以上、例えば30nm以上)である。また、導電層の厚さは凡そ500nm以下とすることが適当である。導電層の厚さを凡そ500nm以下に抑制することにより、良好な光学特性(全光線透過率等)が得られやすい。そのような観点から、導電層の厚さは、好ましくは凡そ100nm以下、より好ましくは凡そ70nm以下である。薄厚の導電層を備える構成において、ここに開示される高沸点化合物使用の効果(湿熱導電安定性改善効果)は好ましく発揮され得る。
【0065】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着剤層を構成する粘着剤は、例えば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、ビニルアルキルエーテル系、ビニルピロリドン系、アクリルアミド系、セルロース系等の各種粘着剤から選択される1種または2種以上を含んで構成された粘着剤層であり得る。したがって、粘着剤層を構成するポリマーは、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、ビニルピロリドン系ポリマー、アクリルアミド系ポリマー、セルロース系ポリマー等であり得る。なかでも、透明性、適度の濡れ性、凝集性や接着性等の粘着特性、耐候性、耐熱性等の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。以下、上記粘着剤層がアクリル系粘着剤層である構成を主な例として、ここに開示される技術をより詳しく説明するが、上記粘着剤層をアクリル系粘着剤からなるものに限定する意図ではない。
【0066】
(アクリル系粘着剤)
いくつかの好ましい態様で採用されるアクリル系粘着剤とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(該粘着剤に含まれるポリマー成分のなかの主成分、すなわち50重量%よりも多く含まれる成分)とする粘着剤をいう。また、「アクリル系ポリマー」とは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下、これを「アクリル系モノマー」ということがある。)を主構成単量体成分(モノマーの主成分、すなわちアクリル系ポリマーを構成するモノマーの総量のうち50重量%以上を占める成分)とするポリマーを指す。上記「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。
【0067】
(アクリル系ポリマー)
上記アクリル系粘着剤のベースポリマーたるアクリル系ポリマーは、典型的には、アルキル(メタ)アクリレートを主構成単量体成分とするポリマーである。上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素原子数1~20のアルキル基である(鎖状アルキル基および脂環式アルキル基を包含する意味である。)。粘着特性に優れた粘着剤が得られやすいことから、Rが炭素原子数1~18(以下、このような炭素原子数の範囲をC1-18と表わすことがある。)の鎖状アルキル基(直鎖状アルキル基および分岐状アルキル基を包含する意味である。)であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、C1-14の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。C1-14の鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基等が挙げられる。Rとして選択し得る脂環式アルキル基としては、シクロヘキシル基、イソボルニル基等が挙げられる。
【0068】
いくつかの好ましい態様では、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量(以下「全原料モノマー」ともいう。)のうち凡そ50重量%以上、より好ましくは凡そ60重量%以上、例えば凡そ70重量%以上が、上記式(1)におけるRがC1-18の鎖状アルキル(メタ)アクリレート(より好ましくはC1-14、さらに好ましくはC4-10の鎖状(メタ)アルキルアクリレート、例えばn-ブチルアクリレート(BA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)のうち一方または両方)から選択される1種または2種以上により占められる。このようなモノマー組成から得られたアクリル系ポリマーによると、ここに開示される用途に適した粘着特性を示す粘着剤が形成されやすいので好ましい。上記モノマー総量に占めるC1-18(例えばC1-14、典型的には好ましくはC4-10)の鎖状アルキル(メタ)アクリレートの割合は、官能基aの導入や、位相差調整、屈折率調整等の観点から、凡そ95重量%以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ90重量%以下、より好ましくは85重量%以下(例えば80重量%以下)である。
【0069】
また、粘着特性、耐久性、位相差の調整、屈折率の調整等の点から、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーとして、芳香環構造を有する(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。芳香環構造を有する(メタ)アクリレートの芳香環構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環等が挙げられる。なかでも、ベンゼン環、ナフタレン環を有する(メタ)アクリレートが好ましい。芳香環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、各種のアリール(メタ)アクリレート、アリールアルキル(メタ)アクリレート、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0070】
芳香環構造を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、チオフェニル(メタ)アクリレート、ピリジル(メタ)アクリレート、ピロリル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を有するものを用いることもできる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0071】
芳香環構造を有する(メタ)アクリレートを用いる場合、その含有量は、粘着特性、光学特性等に基づいて適切に設定される。芳香環構造を有する(メタ)アクリレートは、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち、凡そ5重量%以上とすることが適当であり、芳香環構造を有する(メタ)アクリレートによる効果(耐久性向上や液晶表示ムラ改善等)を良好に発揮する観点から、好ましくは凡そ10重量%以上、より好ましくは凡そ15重量%以上(例えば凡そ20重量%以上)である。芳香環構造を有する(メタ)アクリレートの使用量の上限は、凡そ30重量%以下が適当であり、粘着特性や粘着剤層の投錨性等を考慮して、好ましくは凡そ30重量%未満、より好ましくは凡そ25重量%未満(例えば22重量%未満)である。
【0072】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーとしては、官能基含有モノマーが共重合されたものを好ましく用いることができる。官能基含有モノマーの好適例としては、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマーが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。上記官能基含有モノマーは、粘着剤層内において架橋点となったり、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得る。また、粘着剤層と導電層とを隣接させる態様においては、導電層と粘着剤層の密着性を高め得る。官能基含有モノマーを適当量用いることにより、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)を調整し、粘着特性を調整することも可能である。
【0073】
カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;が例示される。
酸無水物基含有モノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、上記エチレン性不飽和ジカルボン酸等の酸無水物が挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の不飽和アルコール類;等が挙げられる。
これら官能基含有モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、上記以外の官能基含有モノマーが共重合されていてもよい。かかるモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのTg調整、粘着性能の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいはガラス等の被着体との密着力の向上に寄与し得るモノマーとして、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、ケト基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。なかでも、下記に例示するようなアミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマーが好ましく用いられる。
【0075】
アミド基含有モノマー:例えば、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
アミノ基含有モノマー:例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えばN-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン。
【0076】
上記官能基含有モノマーの含有量は特に限定されず、通常は、ベースポリマー(典型的にはアクリル系ポリマー)の合成に使用するモノマーの総量のうち凡そ40重量%以下であり、凡そ30重量%以下が適当であり、粘着特性等の観点から、好ましくは凡そ20重量%以下、より好ましくは凡そ15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下(例えば5重量%以下)である。ベースポリマーの合成に使用するモノマーの総量に占める官能基含有モノマーの含有量の下限は、通常は凡そ0.001重量%以上であり、凡そ0.01重量%以上が適当であり、官能基含有モノマー共重合の効果を好ましく発揮する観点から、好ましくは凡そ0.1重量%以上、より好ましくは凡そ0.5重量%以上、さらに好ましくは凡そ1重量%以上である。
【0077】
いくつかの好ましい態様では、ベースポリマー(典型的にはアクリル系ポリマー)のモノマー成分として、カルボキシ基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーのうち少なくとも一方(好ましくは両方)を用いる。アクリル系ポリマーのモノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、ベースポリマーの合成に使用するモノマーの総量に占めるカルボキシ基含有モノマーの量は、粘着剤の凝集性、投錨性等の観点から、通常は凡そ0.001重量%以上であり、凡そ0.01重量%以上が適当であり、好ましくは凡そ0.1重量%以上、より好ましくは凡そ0.2重量%以上であり、例えば1重量%以上であってもよく、3重量%以上であってもよい。カルボキシ基含有モノマーの使用量の上限は、所望の粘着特性が得られるよう適切に設定され、ベースポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち凡そ10重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ8重量%以下、より好ましくは凡そ6重量%以下であり、例えば凡そ3重量%以下であってもよく、凡そ1重量%以下であってもよい。
【0078】
ベースポリマー(典型的にはアクリル系ポリマー)のモノマー成分として水酸基含有モノマーを用いる場合、ベースポリマーの合成に使用するモノマーの総量に占める水酸基含有モノマーの量は、粘着剤の凝集性、投錨性等の観点から、通常は凡そ0.001重量%以上であり、凡そ0.01重量%以上が適当であり、好ましくは凡そ0.1重量%以上である。水酸基含有モノマーの使用量の上限は、所望の粘着特性が得られるよう適切に設定され、ベースポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち凡そ5重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ3重量%以下、より好ましくは凡そ1重量%以下(例えば凡そ0.5重量%以下)である。
【0079】
上記官能基含有モノマー以外で使用し得るその他の共重合性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の非芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなその他の共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に制限されず、通常は、ベースポリマー(典型的にはアクリル系ポリマー)の合成に使用するモノマーの総量の凡そ30重量%以下(例えば0~30重量%)とすることが適当であり、好ましくは凡そ10重量%以下(例えば凡そ3重量%以下)である。ここに開示される技術は、ベースポリマーの合成に使用するモノマー成分が、上記その他の共重合性モノマーを実質的に含まない態様でも実施することができる。
【0080】
ベースポリマー(典型的にはアクリル系ポリマー)を構成し得る共重合性モノマーの他の例として、多官能モノマーが挙げられる。多官能モノマーの具体例としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。多官能モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。このような多官能モノマーを使用する場合、その使用量は特に制限されず、通常は、ベースポリマーの合成に使用するモノマーの総量の凡そ2重量%以下(より好ましくは凡そ1重量%以下)とすることが適当である。
【0081】
重合に用いる開始剤は、公知ないし慣用の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過酸化物系開始剤(過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等);フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤が挙げられる。かかるレドックス系開始剤の例としては、過酸化物とアスコルビン酸との組合せ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組合せ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組合せ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組合せ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ等が挙げられる。
【0082】
このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全原料モノマー100重量部に対して0.005~1重量部(典型的には0.01~1重量部)程度の範囲から選択することができる。
【0083】
かかるモノマー組成を有するベースポリマー(典型的にはアクリル系ポリマー)を得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の各種の重合方法が用いられ得る。あるいは、UV等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。)や、β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合等の活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。透明性や粘着性能等の観点から、溶液重合法を好ましく採用することができる。重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃~170℃(典型的には40℃~140℃)程度とすることができる。また、合成されるベースポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体、グラフト共重合体等であってもよい。生産性等の観点から、通常はランダム共重合体が好ましい。
【0084】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0085】
ここに開示される技術におけるベースポリマー(アクリル系ポリマー)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、凡そ10×10以上であることが適当であり、耐久性、耐熱性等の観点から、好ましくは凡そ50×10以上、より好ましくは凡そ80×10以上、さらに好ましくは凡そ120×10以上(例えば凡そ150×10以上)である。また、上記Mwは、凡そ500×10以下であることが適当であり、粘着剤層形成時に塗工性等の観点から、好ましくは凡そ300×10以下、より好ましくは凡そ250×10以下、さらに好ましくは凡そ200×10以下である。
【0086】
上記Mwは、具体的には、GPC測定装置として商品名「HLC-8120GPC」(東ソー社製)を用いて、下記の条件で測定することができる。
[GPCの測定条件]
サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:100μL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量(流速):0.8mL/分
カラム温度(測定温度):40℃
カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
【0087】
(導電成分)
ここに開示される技術は、粘着剤層が導電成分を含む態様で好ましく実施され得る。上記帯電防止成分としては、イオン性化合物が例示される。上記導電層に含まれ得る導電剤を用いてもよい。これらの導電成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。いくつかの好ましい態様では、粘着剤層はイオン性化合物を含む。イオン性化合物は、導電成分として粘着剤層の導電性を好ましく向上させる。例えば、アルカリ金属塩や有機カチオン-アニオン塩等から選択される1種または2種以上が好ましく用いられる。投錨性の観点から、有機カチオン-アニオン塩がより好ましい。
【0088】
(アルカリ金属塩)
アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の有機塩および無機塩を用いることができる。アルカリ金属塩のカチオン部を構成するアルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムの各イオンが挙げられる。これらアルカリ金属イオンのなかでもリチウムイオンが好ましい。
【0089】
アルカリ金属塩のアニオン部は有機物で構成されていてもよく、無機物で構成されていてもよい。有機塩を構成するアニオン部としては、例えば、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(CFSO、CSO 、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、(FSOS(CFSO 、PF 、CO 2-や、下記一般式(1)~(4):
(1) (C2n+1SO (ただし、nは1~10の整数);
(2) CF(C2mSO (ただし、mは1~10の整数);
(3) S(CFSO (ただし、lは1~10の整数);
(4) (C2p+1SO)N(C2q+1SO) (ただし、p、qは1~10の整数);で表わされるもの等が挙げられる。アニオン部がフッ素原子を含むイオン性化合物は、イオン解離性がよいため好ましく用いられる。無機のアニオン部としては、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、(CN)等が用いられる。アニオン部としては、(CFSO、(CSO等の(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドが好ましく、(CFSOで表わされる(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが特に好ましい。
【0090】
アルカリ金属の有機塩としては、具体的には、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON、Li(CFSOC、KOS(CFSOK、LiOS(CFSOK等が挙げられる。なかでも、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON、Li(CFSOC等が好ましく、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON等のフッ素含有リチウムイミド塩がより好ましく、(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩が特に好ましい。
アルカリ金属の無機塩としては、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。
上記アルカリ金属塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
(有機カチオン-アニオン塩)
ここに開示される技術において使用される「有機カチオン-アニオン塩」とは、有機塩であって、そのカチオン成分が有機物で構成されているものを示し、アニオン成分は有機物であってもよく、無機物であってもよい。
【0092】
有機カチオン-アニオン塩を構成するカチオン成分としては、具体的には、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0093】
有機カチオン-アニオン塩のアニオン成分としては、例えば、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、(CN)、CSO 、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、(FSOS(CFSO や、下記一般式(1)~(4):
(1) (C2n+1SO (ただし、nは1~10の整数);
(2) CF(C2mSO (ただし、mは1~10の整数);
(3) S(CFSO (ただし、lは1~10の整数);
(4) (C2p+1SO)N(C2q+1SO) (ただし、p、qは1~10の整数);で表わされるもの等が挙げられる。アニオン成分がフッ素原子を含むイオン性化合物は、イオン解離性がよいため好ましく用いられる。上記アニオン成分が有するパーフルオロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~3、より好ましくは1または2である。これらのイオン性化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
(その他のイオン性化合物)
また、イオン性化合物として、上述のアルカリ金属塩、有機カチオン-アニオン塩の他に、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム等の無機塩を用いることもできる。また、ここに開示されるイオン性化合物は、一般にイオン性界面活性剤と称されるものを包含する。イオン性界面活性剤としては、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ピリジニウム塩、アミノ基等のカチオン性官能基を有するカチオン性界面活性剤;カルボン酸、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、ホスファイト等のアニオン性官能基を有するアニオン性界面活性剤;スルホベタインおよびその誘導体、アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アルキルイミダゾリウムベタインおよびその誘導体等の両性イオン性界面活性剤;等が挙げられる。有機カチオン-アニオン塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
イオン性化合物としては、イオン性固体およびイオン性液体が挙げられ、イオン性液体が好ましく用いられる。イオン性液体は、粘着剤層内を移動しやすく、層内で均一分散しやすい。イオン性化合物としてイオン性液体を用いた場合に、ここに開示される技術による効果が好ましく発揮される傾向がある。
【0096】
なお、「イオン性液体」とは、40℃以下で液状を呈する溶融塩を指す。イオン性液体は、液状を呈する温度領域において、固体の塩に比べて、粘着剤への添加、分散または溶解を容易に行うことができる。さらにイオン性液体は蒸気圧がない(不揮発性)ため、経時で消失することもなく、帯電防止性が継続して得られる特徴を有する。ここに開示される技術において用いられるイオン性液体は、室温(25℃)以下で液状の溶融塩であることが好ましい。上述したイオン性化合物のなかでも、40℃以下で液状を呈する有機カチオン-アニオン塩(有機カチオン-アニオン塩のイオン性液体)が好ましく、室温(25℃)以下で液状を呈する有機カチオン-アニオン塩(有機カチオン-アニオン塩のイオン性液体)がより好ましい。
【0097】
粘着剤層におけるイオン性化合物(好適には有機カチオン-アニオン塩)の含有量は、特に限定されず、粘着剤層に所定の導電性を付与し得る適当量が添加され得る。ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)100重量部に対するイオン性化合物の量は、凡そ0.01重量部以上(例えば凡そ0.05重量部以上)とすることが適当であり、導電性向上の観点から、好ましくは凡そ0.1重量部以上、より好ましくは凡そ0.3重量部以上、さらに好ましくは凡そ0.5重量部以上、特に好ましくは凡そ0.7重量部以上である。またイオン性化合物の量の上限は、ベースポリマー100重量部に対して凡そ20重量部以下とすることが適当であり、耐久性や粘着特性等を考慮して、好ましくは凡そ10重量部以下、より好ましくは凡そ5重量部以下、さらに好ましくは凡そ3重量部以下(例えば凡そ2重量部以下)である。
【0098】
粘着剤層における導電成分の含有量(イオン性化合物を含む導電成分の総量)は、特に限定されず、粘着剤層に所定の導電性を付与し得る適当量が添加され得る。ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)100重量部に対する導電成分の量は、凡そ0.01重量部以上とすることが適当であり、導電性向上の観点から、好ましくは凡そ0.1重量部以上、より好ましくは凡そ0.5重量部以上である。また導電成分の量の上限は、ベースポリマー100重量部に対して凡そ30重量部以下とすることが適当であり、耐久性や粘着特性等を考慮して、好ましくは凡そ10重量部以下、より好ましくは凡そ5重量部以下、さらに好ましくは凡そ3重量部以下である。導電成分としてイオン性化合物を用いる態様において、粘着剤層は、イオン性化合物に加えて、イオン性化合物以外の導電成分を任意に含んでもよく、実質的に含まなくてもよい。なお、ここに開示される技術は、粘着剤層がイオン性化合物以外の導電成分を実質的に含まない態様で実施することができる。
【0099】
(粘着剤組成物)
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物の形態は特に限定されない。例えば、有機溶媒中に粘着成分を含む形態の粘着剤組成物(溶剤型粘着剤組成物)、粘着成分が水性溶媒に分散した形態の粘着剤組成物(水分散型粘着剤組成物、典型的には水性エマルション型粘着剤組成物)、無溶剤型粘着剤組成物(例えば、紫外線や電子線等のような活性エネルギー線の照射により硬化するタイプの粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物)等であり得る。ここに開示される技術は、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。上記溶剤型粘着剤組成物に含まれる有機溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンおよびイソプロピルアルコールのいずれかからなる単独溶媒であってもよく、これらのいずれかを主成分とする混合溶媒であってもよい。
【0100】
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物(好ましくは、溶剤型粘着剤組成物)としては、該組成物に含まれるベースポリマー(典型的にはアクリル系ポリマー)を適宜架橋させ得るように構成されたものを好ましく採用し得る。具体的な架橋手段としては、適当な官能基(水酸基、カルボキシ基等)を有するモノマーを共重合させることによりベースポリマーに架橋基点を導入しておき、その官能基と反応して架橋構造を形成し得る化合物(架橋剤)をベースポリマーに添加して反応させる方法を好ましく採用し得る。
【0101】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤、イミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤(例えばベンゾイルパーオキサイド)、金属キレート系架橋剤(典型的には多官能性金属キレート)、金属アルコキシド系架橋剤、金属塩系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤が好ましい。例えば、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを用いる場合には、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤と過酸化物系架橋剤との併用がより好ましい。
【0102】
架橋剤の使用量は、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)の組成および構造(分子量等)や、導電層付き偏光フィルムの使用形態等に応じて適宜選択することができる。通常は、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、凡そ0.01重量部以上であることが適当であり、粘着剤の凝集力を高める観点から、好ましくは凡そ0.02重量部以上、より好ましくは凡そ0.03重量部以上(例えば0.1重量部以上)である。架橋剤の使用量の上限は、通常、ベースポリマー100重量部に対して凡そ10重量部以下であることが適当であり、被着体への濡れ性等の観点から、好ましくは凡そ5重量部以下、より好ましくは凡そ3重量部以下、さらに好ましくは凡そ1重量部以下である。
【0103】
上記粘着剤組成物には、さらに各種添加剤を必要に応じて配合することができる。かかる添加剤の例としては、表面潤滑剤、レベリング剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、酸化防止剤、防腐剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、架橋促進剤、シランカップリング剤等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤組成物において公知ないし慣用の粘着付与樹脂や剥離調節剤を配合してもよい。さらに、エマルション重合法により粘着性ポリマーを合成する場合には、乳化剤や連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤ともいう。)が好ましく使用される。これら任意成分としての添加剤の含有量は、使用目的に応じて適切に決定され得る。上記任意添加剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、通常は凡そ5重量部以下であり、凡そ3重量部以下(例えば凡そ1重量部以下)とすることが適当である。
【0104】
(粘着剤層の形成方法)
粘着剤層は、例えば、上記のような粘着剤組成物を、偏光フィルムに直接付与するか、あるいは偏光フィルムに設けられた導電層上に直接付与して乾燥または硬化させる方法(直接法)により形成することができる。あるいは、上記粘着剤組成物を剥離ライナーの表面(剥離面)に付与して乾燥または硬化させることで該表面に粘着剤層を形成し、この粘着剤層を、偏光フィルム表面に貼り合わせるか、あるいは偏光フィルムに設けられた導電層表面に貼り合わせて該粘着剤層を転写する方法(転写法)により形成してもよい。粘着剤組成物の付与(典型的には塗布)に際しては、ロールコート法、グラビアコート法等の各種方法を適宜採用することができる。粘着剤組成物の乾燥は、必要に応じて加熱下で行うことができる。粘着剤組成物を硬化させる手段としては、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線等を適宜採用することができる。
【0105】
(粘着剤層の表面抵抗値)
粘着剤層の表面抵抗値は特に限定されない。いくつかの好ましい態様において、導電層付き偏光フィルムは、導電層に加えて粘着剤層も導電性を有する。かかる態様において、粘着剤層の表面抵抗値は、帯電防止等の観点から、凡そ1×1012Ω/□以下であることが適当である。表面抵抗値が所定値以下に制限された粘着剤層を液晶パネル(例えばインセル型液晶パネル)用途に適用すると、その導電性に基づき静電気ムラの発生が好ましく防止される。また、タッチセンサ感度や耐久性の観点から、上記表面抵抗値の下限は、好ましくは凡そ1×107Ω/□以上であることが適当である。上記の観点から、例えば、後述のオンセル型液晶セルに適用する場合には、上記表面抵抗値は、凡そ1×1010Ω/□~1×1012Ω/□であることが好ましい。また、後述のセミインセル型液晶セルに適用する場合には、上記表面抵抗値は、凡そ1×109Ω/□~1×1012Ω/□であることが好ましい。さらに、後述のインセル型液晶セルに適用する場合には、上記表面抵抗値は、凡そ1×107Ω/□~1×1012Ω/□であることが好ましく、耐久性の観点から、凡そ1×108Ω/□~1×1010Ω/□であることがより好ましい。粘着剤層の表面抵抗値は後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0106】
(粘着剤層の厚さ)
特に限定するものではないが、粘着剤層の厚さは、例えば凡そ1μm以上とすることができ、通常は凡そ3μm以上とすることが適当である。帯電防止性や耐久性、側面に導通経路を設けた場合の該導通経路との接触面積確保の観点から、粘着剤層の厚さは、好ましくは凡そ5μm以上、より好ましくは凡そ7μm以上、さらに好ましくは凡そ10μm以上である。上記厚さは、例えば凡そ100μm以下とすることができ、通常は凡そ50μm以下(例えば凡そ35μm以下)が好ましい。
【0107】
<剥離ライナー>
ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、必要に応じて、粘着面(粘着剤層のうち被着体に貼り付けられる側の面)を保護する目的で、該粘着面に剥離ライナーを貼り合わせた形態(剥離ライナーおよび導電層付き偏光フィルムの形態)で提供され得る。剥離ライナーを構成する基材としては、紙、合成樹脂フィルム等を使用することができる。表面平滑性に優れる点から合成樹脂フィルムが好適に用いられる。例えば、剥離ライナーの基材として各種の樹脂フィルム(例えばポリエステルフィルム)を好ましく用いることができる。剥離ライナーの厚さは、例えば凡そ5~200μmとすることができ、通常は凡そ10~100μm程度が好ましい。剥離ライナーのうち粘着剤層に貼り合わされる面には、従来公知の離型剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系等)あるいはシリカ粉等を用いて、離型または防汚処理が施されていてもよい。
【0108】
<その他の層等>
ここに開示される導電層付き偏光フィルムには、上記各層(偏光フィルム、粘着剤層、導電層、任意の表面処理層)の他に、偏光フィルムと導電層との間に易接着層を設けたり、コロナ処理、プラズマ処理等の各種易接着処理を施したりすることができる。
【0109】
<用途>
ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、改善された湿熱導電安定性を示すので、液晶パネル材料として用いた場合に、液晶パネルが湿熱環境に曝された場合であっても、安定した導電性を発揮し得る。したがって、液晶セル用、液晶パネル用、ひいては液晶表示装置用の導電層付き偏光フィルムとして好ましく用いられる。例えば、後述するインセル型液晶セルやセミインセル型液晶セル、オンセル型液晶セルと称される液晶セル、ひいては当該液晶セルを備える液晶パネルに、ここに開示される導電層付き偏光フィルムは好ましく用いられる。また、上記導電層付き偏光フィルムを、タッチパネル型表示装置に用いた場合には、タッチパネル型表示装置が湿熱環境に曝された場合であっても、良好なタッチセンサ感度を安定して保持することができる。したがって、タッチパネル用の導電層付き偏光フィルムとしても好適である。さらに、いくつかの好ましい態様に係る導電層付き偏光フィルムは、粘着剤層の投錨性にも優れるので、耐久性に優れた部材として、液晶パネルやタッチパネル型表示装置に利用することができる。そして、上記のようなタッチセンサ感度を利用して、ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、タッチセンサ搭載型液晶パネル(タッチセンシング機能付き液晶パネルともいう。)、ひいてはタッチパネル型液晶表示装置(タッチセンシング機能付き液晶表示装置ともいう。)に特に好ましく用いられる。ここに開示される技術の適用対象であるタッチパネル型液晶表示装置は特に限定されず、携帯電子機器用、車載用等の各種用途のものに利用可能である。ここに開示される技術は、過酷な環境に曝されやすく、所定以上の湿熱耐久性が求められる車載用タッチパネル型液晶表示装置に特に適したものであり得る。ここに開示される技術を上記用途に適用することにより、改善された湿熱導電安定性等に基づき、優れた耐久性が得られる。
【0110】
上記のようなタッチセンサ搭載型液晶パネルとしては、種々の構造を有する液晶パネルを採用することができる。例えば、インセル型液晶パネル、オンセル型液晶パネルと称される液晶パネルに、ここに開示される導電層付き偏光フィルムは好ましく用いられる。インセル型液晶パネルは、簡潔にいえば、液晶層と、該液晶層を挟む2枚の透明基板とを備える液晶セルにおいて、当該液晶セル内に(すなわち、上記2枚の透明基板の内側に)タッチセンシング機能に関わるタッチセンシング電極部を備える構成を有する。タッチセンシング機能に関わる検出電極および駆動電極の両方が液晶セル内に配置されたものを完全インセル型液晶パネルという。上記検出電極および駆動電極のうち一方のみが液晶セル内に配置され、上記電極の他方が液晶セル外に(典型的には透明基板外表面に)配置されたものをセミインセル型液晶パネルという。また、オンセル型液晶パネルは、上記液晶セルの透明基板の外面にタッチセンサ機能を配するものをいう。ここに開示される導電層付き偏光フィルムによる湿熱導電安定性向上効果、それによる良好なタッチセンサ感度の耐久性向上や長期安定保持は、インセル型において好ましく発揮され得る。インセル型液晶パネルは、オンセル型と異なり、ITO層等の導電性の層がパネルの表面に設けられていないため、導電層付き偏光フィルムはより低抵抗なものが用いられる。抵抗値水準の低いものほど、タッチセンサ感度の不具合を解消しにくい傾向があるため、オンセル型と比べて、インセル型液晶パネルでは抵抗値安定性の重要度が高い。ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、インセル型液晶パネルに特に好ましく用いられて、インセル型液晶表示装置の耐久性向上、長寿命化に寄与し得る。なお、ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、該偏光フィルムの外側にタッチパネルを配する構成(例えば、IPS方式等の液晶パネルの外部にタッチパネルを有する構成)や、かかる構成を備える液晶表示装置に用いることができる。
【0111】
<液晶パネルの構造>
ここに開示される導電層付き偏光フィルムの好ましい適用対象としては、例えば図2~6に示すようなインセル型液晶パネルが挙げられる。図2~6は、インセル型液晶パネルの構成例を示す模式的断面図である。図2に示すインセル型液晶パネル101は、液晶セル(インセル型液晶セル)120と、液晶セル120の視認側に配置された導電層付き偏光フィルム110と、を備える。導電層付き偏光フィルム110としては、ここに開示される導電層付き偏光フィルムが用いられる。
【0112】
液晶セル120は、液晶分子を含む液晶層125と、液晶層125を挟むように配置された第1透明基板141および第2透明基板142とを備える。また、液晶セル120は、第1透明基板141と第2透明基板142との間にタッチセンシング電極部130を備える。タッチセンシング電極部130は、検出電極131と駆動電極132とを有する。ここで検出電極とは、タッチ検出(受信)電極のことであり、静電容量センサとして機能する。検出電極はタッチセンサ電極ともいう。
【0113】
タッチセンシング電極部130において、液晶セル120を平面として見た場合に、当該平面のX軸方向、Y軸方向に、検出電極131、駆動電極132がストライプ状にそれぞれ独立して形成されており、両者は、お互いが直角に交差したパターンを形成している。タッチセンサ電極130が形成し得るパターンはこれに限定されず、検出電極131と駆動電極132とは、後述するような各種パターンを有するように形成され得る。
【0114】
インセル型液晶パネル101において、液晶セル120の視認側に配置される導電層付き偏光フィルム110は、その粘着剤層112が液晶セル120の第1透明基板141の外表面に貼り付けられている。換言すると、導電層付き偏光フィルム110は、第1透明基板141の外表面に導電層を介することなく配置、固定されている。導電層付き偏光フィルム110は、偏光フィルム111の一方の面に導電層113が設けられ、導電層113の一方の面(偏光フィルム111側とは反対側の面)上に粘着剤層112が配置された構成を有する。導電層付き偏光フィルム110における偏光フィルム111は、液晶層125の視認側にて、その偏光子の透過軸(または吸収軸)が直交するように配置される。この導電層付き偏光フィルム110には、背面側に表面処理層114が形成されている。
【0115】
一方、インセル型液晶パネル101において、導電層付き偏光フィルム110が配置された面とは反対側には、粘着剤層付き光学フィルム150が配置されている。粘着剤層付き光学フィルム150を構成する光学フィルム151は、粘着剤層152を介して液晶セル120の第2透明基板142の外表面に貼り付けられている。光学フィルム151が偏光フィルムである場合、光学フィルム151は、液晶層125の背面側にて、その偏光子の透過軸(または吸収軸)が直交するように配置される。
【0116】
また、インセル型液晶パネル101において、導電層付き偏光フィルム110の導電層113および粘着剤層112の側面には、導電性材料から形成された導通構造170が設けられている。これによって、導電層113および粘着剤層112の側面から、他の箇所に電位を逃がすことができ、静電気による帯電を低減または防止することができる。導通構造170は導電層113および粘着剤層112の側面(端面)全体に設けられていてもよく、当該側面の一部に設けられていてもよい。導通構造170を一部に設ける場合には、側面での導通を確保するため、導電層113および粘着剤層112の側面の総面積の凡そ1%以上、好ましくは凡そ3%以上、より好ましくは凡そ10%以上、さらに好ましくは凡そ50%以上の面積比率で導通構造170は設けられ得る。なお、図2に示す構成例では、偏光フィルム111、表面処理層114の側面にも導通構造171が設けられている。
【0117】
図3に示すインセル型液晶パネル102は、図2に示す構成の変形例であり、タッチセンシング電極部130が、液晶層125と第2透明基板142との間に配置されている点が、図2に示す構成と異なる。すなわち、検出電極131と駆動電極132とを有するタッチセンシング電極部130は、液晶層125よりもバックライト側(背面側)に配置されている。図4に示すインセル型液晶パネル103も、図2に示す構成の変形例であり、検出電極と駆動電極とが一体形成されたタッチセンシング電極部130を用いている点が図2に示す構成と異なる。図5に示すインセル型液晶パネル104は、図3および図4の構成を組み合わせたものであり、検出電極と駆動電極とが一体形成されたタッチセンシング電極部130を用いている点、およびタッチセンシング電極部130が、液晶層125よりもバックライト側(背面側)に配置されている点が図2に示す構成と異なる。
【0118】
また、図6に示すインセル型液晶パネル105は、タッチセンシング電極部130の検出電極131と駆動電極132とが液晶層125の両側に分離して配置されている点が図2に示す構成と異なる。具体的には、インセル型液晶パネル105において、検出電極131は液晶層125と第1透明基板141との間に配置されており、駆動電極132は液晶層125と第2透明基板142との間に配置されている。図3~6に示す変形例のその他の構成については図2に示すインセル型液晶パネルと基本的に同じであるので、重複する説明は省略する。
【0119】
上記のように、インセル型液晶パネルは、液晶セルの外部ではなく、液晶セル内にタッチセンシング電極部を有する。このような構成では、液晶セルの第1透明基板の外表面に電極等の導電層は設けられていない。ここで導電層とは、表面抵抗値が1×1013Ω/□以下の層をいう。このような構成を有するインセル型液晶パネルの液晶セルの第1透明基板よりも視認側に、ここに開示される導電層付き偏光フィルムを配置することにより、改善された湿熱導電安定性に基づき、優れた耐久性を実現することができる。
【0120】
また、ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、セミインセル型液晶パネルにも好ましく用いられ得る。図7は、セミインセル型液晶パネルの構成例を示す模式的断面図である。図7に示すセミインセル型液晶パネル201は、タッチセンシング電極部130の一部が液晶セル120内に配置され、タッチセンシング電極部130の他の一部が液晶セル120外(具体的には、液晶セル120の視認側の外部)に配置されている点が、図2~6に示すインセル型と異なる。具体的には、タッチセンシング電極部130を構成する検出電極131が第1透明基板141の外表面に設けられており、タッチセンシング電極部130を構成する駆動電極132が液晶セル120内に配置されている。この構成例では、駆動電極132は、液晶層125と第2透明基板142との間に配置されている。このセミインセル型液晶パネル201は、視認側から、偏光フィルム111、導電層113、粘着剤層112、検出電極131、第1透明基板141、液晶層125、駆動電極132、第2透明基板142が、この順で配置された積層構造を有する。また、偏光フィルム111のさらに視認側には表面処理層114を有する。さらに、第2透明基板142の外側には、粘着剤層152、光学フィルム151が、この順で配置されている。この液晶パネル201では、タッチセンシング電極部130の検出電極131は、第1透明基板141の外側に配置されて粘着剤層112に接している。
【0121】
また、ここに開示される導電層付き偏光フィルムは、オンセル型液晶パネルにも好ましく用いられ得る。図8は、オンセル型液晶パネルの構成例を示す模式的断面図である。図8に示すオンセル型液晶パネル202は、タッチセンシング電極部130に関わる検出電極131および駆動電極132がいずれも、電極パターンとして液晶セル120外に配置されている点が、図2~6に示すインセル型と異なる。この構成では、液晶セル120外(具体的には、第1透明基板141および第2透明基板142の外側)に、タッチセンサ機能を有する。より具体的には、液晶セル120の第1透明基板141の外表面に駆動電極132が配置され、当該駆動電極132の上に検出電極131が配置されている。このオンセル型液晶パネル202は、視認側から、偏光フィルム111、導電層113、粘着剤層112、検出電極131、駆動電極132、第1透明基板141、液晶層125、駆動電極134、第2透明基板142が、この順で配置された積層構造を有する。また、第1偏光フィルム111のさらに視認側には表面処理層114を有する。さらに、第2透明基板142の外側には、粘着剤層152、光学フィルム151が、この順で配置されている。この液晶パネル202では、タッチセンシング電極部130の検出電極131は、第1透明基板141の外側に配置されて粘着剤層112に接している。また、液晶セル120内には、駆動電極134が配置されている。この駆動電極134は、液晶層125と第2透明基板142との間に配置されている。
【0122】
なお、上記構成例では、液晶セルの視認側に配置される導電層付き偏光フィルムは、粘着剤層、導電層および偏光フィルムをこの順で有するものであったが、これに限定されず、上記構成の導電層付き偏光フィルムに代えて、粘着剤層、導電層および偏光フィルムを有する他の層構成の導電層付き偏光フィルムを採用することができる。導電層付き偏光フィルムがとり得る具体的構成(層構成)については、上述のとおりであるので、説明は繰り返さない。
【0123】
また、上記構成例では、背面側に配置される粘着剤層付き光学フィルムとして、粘着剤層と光学フィルムとから実質的に構成された粘着剤層付き光学フィルムが用いられていたが、ここに開示される技術はこれに限定されず、液晶パネルの背面側にも、ここに開示される導電層付き偏光フィルムを用いることが可能である。その場合、液晶セルの両側に、ここに開示される導電層付き偏光フィルムは配置され得る。これにより、ここに開示される技術による効果を液晶パネルの両面で得ることができる。あるいは、ここに開示される導電層付き偏光フィルムを液晶パネルの視認側ではなく、背面側にのみ配置してもよい。このような構成においても、ここに開示される技術の効果は発揮され得る。
【0124】
また、図2図3図6に示すインセル型液晶パネルにおいて、検出電極は、駆動電極よりも第1透明基板側(視認側)に配置されていたが、ここに開示されるインセル型液晶パネルの構成はこれに限定されず、駆動電極を検出電極よりも第1透明基板側(視認側)に配置することができる。
【0125】
また、図7に示すセミインセル型液晶パネルでは、検出電極が液晶セル外(具体的には、第1透明基板の外方)に配置されており、駆動電極が液晶セル内(具体的には、第1透明基板と第2透明基板との間)に配置されていたが、これに限定されず、ここに開示される技術は、検出電極が液晶セル内に配置されており、駆動電極が液晶セル外に配置される構成のセミインセル型液晶パネルに適用することができる。
【0126】
上記で説明した構成を備える液晶パネル(好適にはインセル型液晶パネル)を用いて、タッチセンシング機能付き液晶表示装置は製造される。かかる液晶表示装置の製造においては、照明システムにバックライト、あるいは反射板を用いるなど、液晶表示装置に用いられ得る各種部材を、公知または慣用の方法で用いられ得る。
【0127】
<液晶パネルの構成材料>
液晶セルを構成する液晶層としては、液晶分子を含む液晶層が用いられる。いくつかの態様において、液晶層は、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層である。液晶層としては、例えばIPS方式の液晶層が好ましく用いられる。ここに開示される技術において用いられ得る液晶層の他の例としては、TN型やSTN型、π型、VA型等の液晶層が挙げられる。液晶層の厚さは、例えば1.5μm~4μm程度である。
【0128】
タッチセンシング電極部を構成する検出電極、駆動電極(両者を一体化したものを包含する。)は、典型的には透明な導電層(透明電極)である。これら電極の材料は特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫、マグネシウム、タングステン等の金属や、これら金属の合金等の1種または2種以上を用いることができる。また、電極材料として、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、アンチモン、ジルコニウム、カドミウムの金属酸化物の1種または2種以上を用いることができる。具体例としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化カドミウムおよびこれらの混合物等からなる金属酸化物が挙げられる。ヨウ化銅等からなる他の金属化合物等を用いてもよい。上記金属酸化物は、必要に応じて、上記で例示した金属原子の酸化物をさらに含んでもよい。例えば、酸化錫を含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化錫等が好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。ITOとしては、凡そ80~99重量%の酸化インジウムと凡そ1~20重量%の酸化錫とを含有するものが好ましく用いられる。
【0129】
インセル型液晶パネルにおいては、タッチセンシング電極部としての検出電極、駆動電極、両者を一体形成した電極は、通常は、第1透明基板および第2透明基板の少なくとも一方(典型的には一方のみ)の内側(液晶セル内の液晶層側)に透明電極パターンとして形成される。セミインセル型液晶パネルにおいては、検出電極および駆動電極のうち一方が、第1透明基板および第2透明基板のうち一方の内側(液晶セル内の液晶層側)に形成され、検出電極および駆動電極のうち他方が、第1透明基板および第2透明基板のうち他方の外側に形成される。オンセル型液晶パネルにおいては、検出電極、駆動電極、両者を一体形成した電極は、第1透明基板および第2透明基板の外側(液晶セル外)に形成される。上記電極パターンは、常法により形成され得る。
なお、タッチセンシング電極部における検出電極、駆動電極、両者を一体形成した電極は、液晶層を制御する共通電極としての機能を兼ね備えるものであり得る。
【0130】
上記電極パターンは、通常は、透明基板の端部に形成された引き回し線(図示せず)に電気的に接続される。上記引き回し線は、コントローラIC(図示せず)に接続されている。電極パターンの形状は、上記構成例のようなストライプ状の配線が直交したものに限定されず、例えば、ストライプ状の他に、櫛形状や菱形状等、用途、目的等に応じて任意の形状をとり得る。したがって、検出電極、駆動電極とは、直角以外の交差パターンやその他の種々のパターンを有し得る。上記電極パターンの高さは、例えば凡そ10nm~100nmであり、幅は凡そ0.1mm~5mmであり得る。
【0131】
透明基板(第1、第2の透明基板を包含する。)を形成する材料としては、例えば、ガラスまたはポリマーフィルムが挙げられる。したがって、透明基板は、ガラス基板またはポリマー基板であり得る。透明基板に用いられるガラスとしては、特に制限なく各種のガラス材料を用いることができる。ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート等が挙げられる。透明基板がガラス板を主体に形成される場合、その厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。透明基板がポリマーフィルムを主体に形成される場合、その厚さは、例えば10μm~200μm程度である。透明基板は、その表面に易接着層やハードコート層を有してもよい。
【0132】
導電層付き偏光フィルムにおける粘着剤層および導電層の側面に接続される導通構造を形成する材料としては、各種導電材料を特に制限なく用いることができる。例えば銀、金その他の金属の1種または2種以上を含む金属ペースト等の導電性ペーストが好ましく使用される。上記材料の他の例としては、導電性接着剤が挙げられる。導通構造は、導電層や粘着剤層の側面から延びる線形状を有するものであってもよい。偏光フィルム等の側面に設けられ得る導電構造の材料についても上記と同様であり、上記と同様の形状とすることができる。
【0133】
液晶パネルにおいて、視認側とは反対側に配置される粘着剤層付き光学フィルムの光学フィルムとしては、偏光フィルムや、偏光フィルムとは異なる公知または慣用の光学フィルムを、用途や目的に応じて用いることができる。そのような光学フィルムとしては、位相差フィルム(位相差板ともいう。波長板を含む。)、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反透過フィルム等が挙げられる。それらは1種を単独でまたは2種以上を積層して用いることができる。視認側とは反対側に配置される光学フィルムとして偏光フィルムを用いる態様においては、視認側に配置される偏光フィルムと同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0134】
上記粘着剤層付き光学フィルムを構成する粘着剤層としては、ここに開示される粘着剤層や、公知または慣用の粘着剤層を、用途や目的に応じて用いることができる。粘着剤層としては、視認側に配置される粘着剤層と同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。視認側とは反対側に配置される粘着剤層を公知または慣用の粘着剤から形成する場合、その粘着剤層の厚さは特に制限されず、例えば1~100μm程度であることが適当であり、好ましくは凡そ2~50μm、より好ましくは凡そ2~40μmであり、さらに好ましくは凡そ5~35μmである。
【0135】
なお、上述した液晶パネルや、該液晶パネルを備える液晶表示装置は、上述した以外にも、用途や目的に応じて、ここに開示される技術による効果を損なわない範囲で、各構成部材の配置や構成を変更したり、適宜に他の構成を追加採用することができる。一例として、液晶セル上(例えば図2中の第1透明基板141)にカラーフィルタ基板を設けるような設計変更が可能である。
【0136】
以下、本発明に関連するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0137】
<評価方法>
[導電層の表面抵抗値]
(1)初期表面抵抗値
導電層付き偏光フィルム(粘着剤層積層前)の導電層側表面に対して、温度23℃、50%RHの雰囲気下、JIS K 6911に基づいて、印加電圧10V、印加時間10秒の条件で初期表面抵抗値[Ω/□]を測定する。抵抗率計としては、三菱ケミカルアナリテック社製の商品名「ハイレスタUP MCP-HT450型」)またはその相当品を用いることができる。
(2)湿熱試験後の表面抵抗値
導電層付き偏光フィルム(粘着剤層積層前)を、温度85℃、85%RHの湿熱環境下に24時間放置する(湿熱試験)。その後、室温で3時間乾燥した導電層表面に対して、温度23℃、50%RHの雰囲気下、JIS K 6911に基づいて、印加電圧10V、印加時間10秒の条件で湿熱試験後の表面抵抗値[Ω/□]を測定する。抵抗率計としては、三菱ケミカルアナリテック社製の商品名「ハイレスタUP MCP-HT450型」)またはその相当品を用いることができる。
(3)湿熱表面抵抗変化比
上記の測定によって得られた初期表面抵抗値P[Ω/□]に対する湿熱試験後の表面抵抗値S[Ω/□]の比(S/P)から、湿熱表面抵抗変化比を求める。
【0138】
[粘着剤層の表面抵抗値]
粘着剤層を剥離ライナー上に形成し、その粘着剤層の表面に対して、温度23℃、50%RHの雰囲気下、JIS K 6911に準じて、印加電圧250V、印加時間10秒の条件で表面抵抗値[Ω/□]を測定する。抵抗率計としては、市販の抵抗率計(例えば、三菱ケミカルアナリテック社製の商品名「ハイレスタUP MCP-HT450型」)またはその相当品を用いることができる。なお、後述の表1において、抵抗値が測定上限を超えた場合、「OVER」と表記される。
【0139】
[湿熱導電性変化比FHT
(1)予備評価(表面抵抗値との相関)
表面抵抗値の異なる導電層付き偏光フィルムのサンプル5点を用意し、各導電層付き偏光フィルムサンプルをタッチパネル評価キット(Shurter社製の製品名「TouchKit」)にセットした。この評価キットは、カバーガラスが積層されたPCAP(投影型静電容量式)タッチパネルと、IC(集積回路)基板と、ソフトウェアとを有しており、上記タッチパネルの電流値を、タッチパネルに接続した端子からIC基板を介して上記ソフトウェアで記録および処理することが可能である。導電層付き偏光フィルムサンプルの評価キットへのセットは、具体的には、図9に示すように、評価キット300のタッチパネル302のカバーガラス304に、導電層付き偏光フィルムサンプルSの粘着剤層表面を、浮きが生じないように貼り付けた。タッチパネル302は、図示しない絶縁体上に水平に載置されている。絶縁体としては、例えば平板状の樹脂や枠状のゴム体を用いることができる。そして、PCにて起動したソフトウェアで、タッチパネル302面内の容量データマップを端子TおよびIC基板を通して取得し、得られたタッチパネルの電流値と導電層付き偏光フィルムサンプルSなしのタッチパネルベース電流値との差分(Cooked Data)をΔCとして得た。本測定では、ΔCとして、タッチパネル面内の複数箇所で測定される複数の測定値とベース電流値との差分(Cooked Data)の最大値と最小値から算出したCooked Data(Max-Min)を採用している。図10は、上記で測定したΔC(Cooked Data(Max-Min))を縦軸に、導電層の表面抵抗値[Ω/□]を横軸にサンプルをプロットしたグラフである。図10に示すように、上記ΔCと表面抵抗値[Ω/□]とは、その回帰直線の相関係数R2が0.9701と高い相関を示したことから、上記ΔCは、導電層付き偏光フィルムの導電性や導電性変化の指標として利用できることがわかる。上記ΔCは、上記ソフトウェアにおいてデジタル(8bit)変換された値であるため、単位はbitである。後述のΔC(A)、ΔC(B)および湿熱導電性変化比FHTも同様である。
なお、後述のΔC(A)およびΔC(B)の測定においては、導電層付き偏光フィルムサンプルの評価キットへのセットは、導電層付き偏光フィルムサンプルとカバーガラス304との間に浮きが生じないよう、導電層付き偏光フィルムサンプルの上面(背面)に重しとして複数枚の絶縁シート(例えばポリスチレンシート)を重ね合わせてもよい。また、導電層が最外面を構成する導電層付き偏光フィルムにつき、後述のΔC(A)およびΔC(B)を測定する場合、当該導電層表面を評価キットのカバーガラスに当接するよう載置し、次いで、導電層とカバーガラスとの間に浮きが生じないよう、導電層の上に重しとして複数枚の絶縁シート(例えば、タッチパネルと同程度のサイズを有するポリスチレンシート(1枚10~20g程度)を20枚ほど)重ね合わせ、その他は上記と同様にして測定を実施することができる。
導電層付き偏光フィルムの粘着剤層をカバーガラスに貼り付けて評価キットでFHTを測定した場合も、導電層を直接カバーガラスに当接させて評価キットでFHTを測定した場合も、FHTはほぼ一致した値をとり、大きく変化することはない。
(2)ΔC(A)
測定対象である導電層付き偏光フィルムを、上記(1)と同様の方法で、評価キット300にセットし、取得したタッチパネル面内の容量データマップから、導電層付き偏光フィルムセット時のタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分ΔC(Cooked Data)を得る。これを、湿熱試験前の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分ΔC(A)とする。
(3)ΔC(B)
また、測定対象である導電層付き偏光フィルムを、温度85℃、85%RHの湿熱環境下に24時間放置する(湿熱試験)。その後、室温で3時間乾燥したものにつき、上記(1)と同様の方法で、評価キット300にセットし、取得したタッチパネル面内の容量データマップから、導電層付き偏光フィルムセット時のタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分ΔC(Cooked Data)を得る。これを、湿熱試験後の導電層付き偏光フィルムを評価用タッチパネルに貼り付けたときに流れるタッチパネルの電流値とタッチパネルベース電流値との差分ΔC(B)とする。
(4)湿熱導電性変化比FHTの算出
次式(1)から、湿熱導電性変化比FHTを算出する。
HT=ΔC(B)/ΔC(A)・・・・・(1)
【0140】
[タッチ感度安定性評価]
湿熱導電性変化比FHTに基づいて、下記の基準で評価する。
(評価基準)
◎:FHT≦1.5
〇:1.5<FHT≦2
×:2<FHT
【0141】
[投錨力]
導電層付き偏光フィルムから剥離ライナーを除去し、露出した粘着面にITOフィルム(尾池工業社製、商品名「125テトライトOES」)を貼り合わせ、幅25mmに切断して測定用サンプルを得る。測定用サンプルを引張試験機にセットし、180度方向に300mm/分の速度で導電層付き偏光フィルムをITOフィルムから引き剥がし、そのときの剥離力[N/25mm]を投錨力として記録する。
なお、投錨力が18N/25mm以上であれば「◎」、12N/25mm以上18N/25mm未満であれば「〇」、10N/25mm以上12N/25mm未満であれば「△」、10N/25mm未満であれば「×」と評価できる。
【0142】
[偏光フィルムの作製]
(調製例A1)
厚さ30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ社製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように一軸延伸しながら膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚さ12μmの偏光子を得た。具体的には、膨潤処理では、20℃の純水で処理しながら2.2倍にフィルムを延伸した。染色処理では、得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整された水溶液中にてフィルムを30℃の条件で処理しながら1.4倍に延伸した。上記水溶液において、ヨウ素とヨウ化カリウムの重量比は1:7であった。架橋処理としては、2段階の架橋処理を採用し、1段目の架橋処理では、40℃のホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液中にて処理しながらフィルムを1.2倍に延伸した。この水溶液のホウ酸含有量は5.0%、ヨウ化カリウム含有量は3.0%とした。2段目の架橋処理では、65℃のホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液中にて処理しながらフィルムを1.6倍に延伸した。この水溶液のホウ酸含有量は4.3%、ヨウ化カリウム含有量は5.0%とした。洗浄処理では、20℃のヨウ化カリウム水溶液を用いた。洗浄処理用水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6%とした。乾燥処理は70℃で5分間の条件で実施した。
【0143】
トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの片面にハードコート(HC)層を有する厚さ32μmのTAC-HCフィルムを、上記偏光子の一方の面にPVA系接着剤を用いて貼り合わせた。また、上記偏光子の他方の面に、厚さ25μmのアクリル系(CAT)フィルムをPVA系接着剤を用いて貼り合わせ、TAC保護層/PVA偏光子/CAT保護層の構成を有する偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムのTAC保護層側表面には、表面処理層としてハードコート層が設けられている。
【0144】
[導電性組成物の調製]
(調製例B1)
チオフェン系ポリマー含有液(PEDOT/PSS-NH)を14.3部と、バインダ溶液A(第一工業製薬社製の商品名「スーパーフレックス210」、ウレタンバインダ含有、固形分率35%)を1部と、バインダ溶液B(日本触媒社製、商品名「エポクロスWS-700」、Mn2万、Mw4万のオキサゾリン基含有ポリマー含有)を4部と、高沸点化合物としてトリエチレングリコール(沸点:約287℃)と水とを配合し、固形分濃度が1.5%の導電性組成物B1を調製した。チオフェン系ポリマー含有液としては、PEDOT(ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム)を含む水分散液(ヘレウス社製、商品名「CleviosP」)を東京化成工業社製の28%アンモニア水にて中和し、固形分率1%としたものを用いた。トリエチレングリコールは、組成物中3%含有するよう配合した。得られた組成物は、チオフェン系ポリマーを0.14%、ウレタンバインダを0.36%、オキサゾリン基含有ポリマーを1.0%含有していた。
【0145】
(調製例B2)
高沸点化合物として、トリエチレングリコールに代えてジエチレングリコール(沸点:約244℃)を使用した他は調製例B1と同様にして本例に係る導電性組成物B2を調製した。
【0146】
(調製例B3)
高沸点化合物として、トリエチレングリコールに代えてカテコール(沸点:約246℃)を使用した他は調製例B1と同様にして本例に係る導電性組成物B3を調製した。
【0147】
(調製例B4)
高沸点化合物(カテコール)の添加量を3%から10%に変更し、その分、水を減量した他は調製例B3と同様にして本例に係る導電性組成物B4を調製した。
【0148】
(調製例B5)
高沸点化合物として、トリエチレングリコールに代えてグリセリン(沸点:約290℃)を使用した他は調製例B1と同様にして本例に係る導電性組成物B5を調製した。
【0149】
(調製例B6)
高沸点化合物(ジエチレングリコール)の添加量を3%から20%に変更し、その分、水を減量した他は調製例B2と同様にして本例に係る導電性組成物B6を調製した。
【0150】
(調製例B7)
チオフェン系ポリマー含有液(PEDOT/PSS-NH)を42.9部と、バインダ溶液A(第一工業製薬社製の商品名「スーパーフレックス210」、ウレタンバインダ含有、固形分率35%)を3.1部と、高沸点化合物としてジエチレングリコール(沸点:約244℃)と水とを配合し、固形分濃度が0.1%の導電性組成物B7を調製した。ジエチレングリコールは、組成物中3%含有するよう配合した。チオフェン系ポリマー含有液としては上記調製例B1と同じものを使用した。得られた組成物は、チオフェン系ポリマーを0.03%、ウレタンバインダを0.07%含有していた。
【0151】
(調製例B8)
高沸点化合物として、トリエチレングリコールに代えてN-メチルピロリドン(沸点:約204℃)を使用した他は調製例B1と同様にして本例に係る導電性組成物B8を調製した。
【0152】
(調製例B9)
高沸点化合物として、トリエチレングリコール3%に代えてジメチルスルホキシド(沸点:約189℃)5%を使用し、その分、水を減量した他は調製例B1と同様にして本例に係る導電性組成物B9を調製した。
【0153】
(調製例B10)
高沸点化合物を使用しなかった他は調製例B1と同様にして本例に係る導電性組成物B10を調製した。
【0154】
(調製例B11)
トリエチレングリコールに代えてN,N-ジメチルホルムアミド(沸点:約153℃)を使用した他は調製例B1と同様にして本例に係る導電性組成物B11を調製した。
【0155】
(調製例B12)
トリエチレングリコールに代えてジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:約162℃)を使用した他は調製例B1と同様にして本例に係る導電性組成物B12を調製した。
【0156】
[粘着剤組成物の調製]
(調製例C1)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)76.9部、ベンジルアクリレート(BzA)17部、アクリル酸(AA)5部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)1部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)0.1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、上記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部とともに仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、Mw195万、Mw/Mn=3.9のアクリル系ポリマーP1溶液を調製した。
【0157】
上記で得たアクリル系ポリマーP1溶液の固形分100部に対して、導電剤1部を配合し、さらにイソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物)0.4部、過酸化物架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.1部およびγ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物C1の溶液を調製した。導電剤としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)を用いた。
【0158】
(調製例C2)
モノマー混合物の組成を、BA77.9部、BzA17部、AA5部、4HBA0.1部とした他は上記アクリル系ポリマーP1溶液の調製と同様にして、アクリル系ポリマーP2溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマーP2のMwは160万、Mw/Mn=3.7であった。
上記で得たアクリル系ポリマーP2溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物)0.4部、過酸化物架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.1部およびγ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物C2の溶液を調製した。
【0159】
(調製例C3)
モノマー混合物の組成を、BA75.8部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)23部、NVP0.5部、4HBA0.4部、AA0.3部とした他は上記アクリル系ポリマーP1溶液の調製と同様にして、アクリル系ポリマーP3溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマーP3のMwは160万、Mw/Mn=3.7であった。アクリル系ポリマーP1溶液に代えて、上記で得たアクリル系ポリマーP3溶液を用いた他は調製例C1と同様にして、アクリル系粘着剤組成物C3の溶液を調製した。
【0160】
(調製例C4)
導電剤として、LiTFSIに代えて、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(EMI-FSI)を用いた他は調製例C3と同様にして、アクリル系粘着剤組成物C4の溶液を調製した。
【0161】
<実施例1~14および比較例1~3>
上記導電性組成物B1~B12のいずれかからなる塗布液を、上記偏光フィルムの片面(ハードコート層を設けていない側)に乾燥後の厚さが50nmになるように塗布し、80℃で3分間乾燥して導電層を形成した。
上記アクリル系粘着剤組成物C1~C4のいずれかの溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(剥離ライナー、三菱化学ポリエステルフィルム社製,品番「MRF38」)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが23μmになるように塗布し、155℃で1分間乾燥を行い、剥離ライナーの表面に粘着剤層を形成した。そして、当該剥離ライナー上に形成した粘着剤層を、上記で得た偏光フィルム上の導電層側表面に転写した。このようにして各例に係る導電層付き偏光フィルムを作製した。これらの導電層付き偏光フィルムは、偏光フィルム/導電層/粘着剤層の構成を有し、偏光フィルム側背面にはハードコート層が設けられており、粘着剤層の粘着面は剥離ライナーで保護されている。
【0162】
各例に係る導電層付き偏光フィルムの概略構成、初期および湿熱試験後の表面抵抗値[Ω/□]、湿熱表面抵抗変化比、粘着剤層の表面抵抗値[Ω/□]および湿熱導電性変化比FHT(ΔC(B)/ΔC(A))、タッチ感度安定性および投錨力[N/25mm]の評価結果を表1に示す。なお、比較例2,3で使用したN,N-ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテルは高沸点化合物に該当しないが、便宜的に高沸点化合物の項目に記載した。
【0163】
【表1】
【0164】
表1に示されるように、沸点が180℃以上の高沸点化合物を導電層の形成に用いた実施例1~14では、湿熱導電性変化比FHTが2以下であり、タッチ感度安定性評価結果がすべて合格レベルであった。これらの例では、導電層の湿熱表面抵抗変化比も0.05以上10以下の範囲内であった。また、沸点が210℃以上の高沸点化合物を用いた実施例1~12では、FHTがより狭い範囲となり、特に優れた評価結果が得られた。これに対して、沸点が180℃以上の高沸点化合物を使用しなかった比較例1~3では、FHTが2を超え、タッチ感度安定性評価結果は不良であった。また、比較例1~3では、導電層の湿熱表面抵抗変化比も0.05を下回っていた。
【0165】
また、高沸点化合物の沸点が180℃以上290℃未満であり、高沸点化合物の使用量を0.1~10%とした実施例1~4、7,13~14では、投錨力が18N/25mm以上であり、優れた耐久性を有していた。また、例えば実施例3と8との対比や、実施例9~10と11~12との対比から、粘着剤層に含まれるポリマーとして、アミド基含有モノマーをモノマー単位として含むアクリル系ポリマーを使用した例や、粘着剤層に含まれる導電剤として無機塩(無機カチオンの塩)を用いた例では、投錨力が向上する傾向が認められた。
【0166】
上記の結果から、偏光フィルムと、偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けられた導電層と、導電層上に配置された粘着剤層と、を備える導電層付き偏光フィルムであって、湿熱導電性変化比FHT2以下を満足するものや、導電層の湿熱表面抵抗変化比が0.05以上10以下の範囲内であるもの、さらに導電性ポリマーと、沸点が180℃以上である高沸点化合物とを用いて形成した導電層を備える構成によると、湿熱環境に曝された場合であっても、安定した導電性を保持し得ることがわかる。
【0167】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0168】
10,110:導電層付き偏光フィルム
11,111:偏光フィルム
11A:偏光フィルムの第一面
11B:偏光フィルム第二面
12,112:粘着剤層
13,113:導電層
14,114:表面処理層
101,102,103,104,105:インセル型液晶パネル
201:セミインセル型液晶パネル
202:オンセル型液晶パネル
120:液晶セル
125:液晶層
130:タッチセンシング電極部
131:検出電極
132:駆動電極
141:第1透明基板
142:第2透明基板
150:粘着剤層付き光学フィルム
151:光学フィルム
152:粘着剤層
170:導通構造
171:導通構造
300:評価キット
302:タッチパネル
304:カバーガラス
S:導電層付き偏光フィルムサンプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インセル型液晶パネルに用いられる導電層付き偏光フィルムであって、
偏光フィルムと、該偏光フィルムの第一面側および第二面側の少なくとも一方に配置された粘着剤層と、を備え、さらに導電層を備えており、
前記導電層は、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けられており、前記粘着剤層は、前記導電層上に配置されており、
前記導電層は、導電と、沸点が180℃以上である高沸点化合物とを含む導電性組成物から形成されたものである、導電層付き偏光フィルム。
【請求項2】
前記導電層は、湿熱表面抵抗変化比S/Pが条件:0.05≦S/P≦10;を満足する、ここでSは、温度85℃、相対湿度85%および24時間の条件で実施される湿熱試験後における導電層の表面抵抗値[Ω/□]であり、Pは、前記湿熱試験前における導電層の表面抵抗値[Ω/□]である、請求項1に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項3】
前記導電性組成物における前記高沸点化合物の含有量は0.1~50重量%である、請求項1または2に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項4】
前記導電層は、導電としてチオフェン系ポリマーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項5】
前記導電層はバインダを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項6】
前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項7】
前記アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアミド基含有モノマーを含む、請求項6に記載の導電層付き偏光フィルム。
【請求項8】
インセル型液晶パネルに用いられる導電層付き偏光フィルムの製造方法であって、
偏光フィルムの少なくとも一方の面に導電層を形成する工程と;
前記導電層上に粘着剤層を設ける工程と;
を備えており、
前記導電層は、導電と、沸点が180℃以上である高沸点化合物とを含む導電性組成物から形成する、導電層付き偏光フィルムの製造方法。