IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社山本金属製作所の特許一覧

<>
  • 特開-摩擦攪拌接合装置 図1
  • 特開-摩擦攪拌接合装置 図2
  • 特開-摩擦攪拌接合装置 図3
  • 特開-摩擦攪拌接合装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009625
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B23K20/12 344
B23K20/12 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111297
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】509311643
【氏名又は名称】株式会社山本金属製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重治
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AA06
4E167AA08
4E167BG07
4E167BG20
(57)【要約】
【課題】本発明は、被接合部材の表面側及び裏面側を温度計測できることにより接合部の厚み方向にわたってリアルタイムに温度計測することができるボビン型接合ツールを用いる摩擦攪拌接合装置を提供する。
【解決手段】本発明の摩擦攪拌接合装置は、ボビン型接合ツールを用いて加工中の温度をリアルタイム計測するものする摩擦攪拌接合装置である。ボビン型接合ツールは、少なくともプローブ内の上端から下端近傍までの間で、それぞれ上下方向の異なる位置まで延びる複数の中空のプローブ内チャンネル と、下ショルダ部内でその上面高さ近傍の位置まで延びる下ショルダ内チャンネル とを備え、それぞれのプローブ内チャンネルと下ショルダ内チャンネルとには、その下端近傍に温度計測素子を配設し、さらに、それぞれの温度計測素子から温度計測手段を用いて生成された温度計測結果を送信する送信手段と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面を被加工部材の上面に当接させながら回転軸中心に回転させる上ショルダ部と、該上ショルダ部の下面から下方に突出し、筒状のプローブ部と、該プローブの下端に連結されてその上面を被加工部材の下面に当接 させながら同じ回転軸中心で回転させる下ショルダ部と、を備えるボビン型接合ツールを用いて加工中の温度をリアルタイム計測する摩擦攪拌接合装置であって、
前記ボビン型接合ツールは、少なくとも
前記プローブ内の上端から下端近傍までの間で、それぞれ上下方向の異なる位置まで延びる複数の中空のプローブ内チャンネルと、
前記下ショルダ部内でその上面高さ近傍の位置まで延びる下ショルダ内チャンネルとを備え、
それぞれの前記プローブ内チャンネルと下ショルダ内チャンネルとには、その下端近傍に温度計測素子を配設し、
さらに、それぞれの温度計測素子から温度計測手段を用いて生成された温度計測結果を送信する送信手段と、を備える、摩擦攪拌接合装置。
【請求項2】
前記上ショルダ部と前記下ショルダ部との距離は、被加工部材の厚みに応じて該下ショルダ部の位置を調整可能な締め付け機構を有し、
前記プローブ内チャンネルは少なくともその下端が、
前記上ショルダ部と前記プローブとの境界近傍に位置する上プローブ内チャンネルと該上プローブ内チャンネルより下方で予め想定される下ショルダ部の変動上限位置より上方に位置する下プローブ内チャンネルとを備え、
それぞれに配設される温度計測素子からの温度計測結果を前記送信手段で送信する、請求項1に記載の摩擦攪拌接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね平面形状をした被接合部材の表面側及び裏面側を温度計測できることにより接合部の厚み方向にわたってリアルタイムに温度計測することができるボビン型接合ツールを用いる摩擦攪拌接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する接合ツールで摩擦熱を与え、被接合部材に塑性流動現象を発生させて、被接合部材を攪拌し、接合する摩擦攪拌接合装置(以下、「FSW(Friction Stir Welding)装置」とも称する。)が知られている。摩擦攪拌接合(以下、「FSW」とも称する。)は、通常の溶融溶接とは異なり、固相での接合のため、接合部の組織が微細化し優れた機械的性質を有することが知られ、アルミニウム、銅、鉄、これらの合金など比較的低温で軟化する金属の接合に用いられる。
【0003】
一般的なFSW装置では、被接合部材の材質や肉厚に応じて予め定められた最適な接合ツールの仕様(材質、形状など)、回転数(回転速度)、送り速度である接合速度、挿入深さなどの加工条件が予め設定され、接合開始から接合終了までその加工条件を維持して接合が実施される。そして、接合が適切にされたか否か、その接合条件を検討する際、最も重要となるのが被接合部材に与える入熱であり、攪拌による接合部の均一かつ安定的な塑性流動を早期達成することが必要であることがわかってきた。
【0004】
従来は、接合が適切か否かについて接合後、事後的に確認する、また、接合開始点から終了点に到る間の接合温度の管理、接合温度の変動による接合品質への影響を考慮する、ことなどは、ほとんど行われていない実情があった。これに対して近年、通常の接合ツールにおける接合部の詳細な温度計測をリアルタイムでかつ連続的にモニタリングするFSW装置が提供され(特許文献1~3参照)、接合中の接合部の均一かつ安定的な塑性流動を検知・管理し、接合部全体にわたった接合品位を得ることが可能になってきた。
【0005】
ここで、通常のFSW装置の接合ツールは、ツールホルダ先端に把持され、同軸回転するショルダ部とそのショルダ部の中心下方に突出して接合部を攪拌する攪拌プローブ(以下、単に「プローブ」とも称する。)とで構成されており、上記従来のFSW装置におけるリアルタイム温度計測では、このような通常の接合ツールのプローブ内で厚み方向にわたって複数の計測点(計測チャンネル)を設け、各計測点での接合中の温度を計測していた。
【0006】
一方、FSW装置の中には通常の接合ツール同様のショルダ部(上ショルダ部)とプローブとに加え、被接合部材を挟み込んで裏面側に下ショルダ部を備える形状の接合ツールを用いる所謂、ボビン型接合ツール(糸巻き型)が存在する。このボビン型接合ツール(以下、単に「ボビンツール」とも称する。)では、裏当て治具を要することなく接合できるとともに、プローブ下端にネジで締め付けて結合する下ショルダ部の締め付け量を変動させることで被接合部材の厚さの変動にも追従(セルフリアクティング)できる点で特長的である。
【0007】
本発明者らは、FSWによる接合状態をリアルタイム及び事後的分析する過程において、このボビンツールを用いる場合の特長がわかってきた。具体的には、通常の接合ツールを用いる場合には、被接合部材の接合断面を観察すると、表面側(上ショルダ部の当接側)に拡がったワイングラス類似形状に塑性流動が進行しているのがわかるのに対して、ボビンツールを用いる場合には、接合断面の裏面側(下ショルダ部の当接側)まで早い段階で安定・十分な塑性流動が生じていることがわかってきた。このことはボビンツールが下ショルダ部を有することの効果であり、ボビンツールを用いる場合には、接合前に設定した上下ショルダ部の間の締め付け強度(及び加工中の送り速度)をどの程度に調整するかが安定した塑性流動を得る重要な要因であると推察された。
【0008】
しかしながら、特許文献1~3のような従来のリアルタイムに温度計測するFSW装置では、プローブ内の深さ方向の異なる複数点での温度計測のみに基づいて塑性流動を分析するものであり、これをそのままボビンツールを用いる場合に適用しても裏面側(下ショルダ部側)の当接部の温度計測はなされておらず、下ショルダ部の面接触強度(裏面側の当接力)を最適化し、加工精度・加工速度を予測することは困難であった。とりわけ、厚板や円筒形状の接合のような通常のFSWでは困難な接合の際に有益であるボビンツールによるFSWにおいて、その接合条件の分析・最適化は非常に重要なものとなってくると考えられ、下ショルダ部側の温度計測は行うことは必須であり、そのことを提唱し、具体的な構成を提供することを発明者らは企図した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2016/111336号公報
【特許文献2】特開2016-42761号公報
【特許文献3】特開2017-035702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて創作されたものであり、所謂、ボビン型接合ツールを用いる摩擦攪拌接合において、接合部で早期に十分・安定した塑性流動を得るように被接合部材の厚み方向全域にわたって精緻な温度計測をリアルタイムに実行することができ、下ショルダ部の締め付け強度や締め付け量、送り速度等の接合条件を最適化することができる摩擦攪拌装置の具体的な構成を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決すべく提供される本発明は、
下面を被加工部材の上面に当接させながら回転軸中心に回転させる上ショルダ部と、該上ショルダ部の下面から下方に突出し、筒状のプローブ部と、該プローブの下端に連結されてその上面を被加工部材の下面に当接 させながら同じ回転軸中心で回転させる下ショルダ部と、を備えるボビン型接合ツールを用いて加工中の温度をリアルタイム計測する、摩擦攪拌接合装置を提供する。
【0012】
また、上記本発明の摩擦攪拌接合装置は、
前記ボビン型接合ツールは、少なくとも
前記プローブ内の上端から下端近傍までの間で、それぞれ上下方向の異なる位置まで延びる複数の中空のプローブ内チャンネルと、
前記下ショルダ部内でその上面高さ近傍の位置まで延びる下ショルダ内チャンネルとを備え、
それぞれの前記プローブ内チャンネルと下ショルダ内チャンネルとには、その下端近傍に温度計測素子を配設し、
さらに、それぞれの温度計測素子から温度計測手段を用いて生成された温度計測結果を送信する送信手段と、を備える。
【0013】
本発明の摩擦攪拌接合装置は、上述してきたボビンツール型の接合ツールを用いるFSWを対象とする温度計測装置である。具体的には、通常の接合ツール同様にプローブ内の上端から下端に向かって深さが異なる位置(上下方向の異なる位置)に複数の温度計測点を設け、さらに被接合部材の裏面側の下ショルダ部内で被接合部材との境界近傍位置(下ショルダ部内でその上面高さ近傍の位置)に温度計測点を設け、プローブ内の複数の温度計測点と下ショルダ内の温度計測点からの温度情報を無線等で送信し、被接合部材の厚み方向全体にわたって、接合中の塑性流動をリアルタイムにモニタリングできるようにしている。
【0014】
このようにプローブ内の温度のみならず下ショルダ内の上面高さの温度もわかるため単に厚み方向全域の塑性流動をモニタリングできるというだけではなく、締め付け量・強度に応じて変動する下ショルダ側を基準に温度計測できるため、被接合部材の厚みにかかわらず被接合部材の下面近傍の温度をモニタリングでき(推定計算等のロスも軽減でき)、さらに下ショルダ部の締め付け強度や送り速度等の接合条件に応じた塑性流動の様子を精緻にモニタリングすることもできる。その結果、従来経験則や過去の事後データに頼っていた下ショルダの締め付け強度及び送り速度による接合の影響の分析や最適化を精緻に実現することができる。
【0015】
なお、本明細書において「上」「下」「表」「裏」は、被接合部材に当接させる駆動側を「上」「表」、その反対側を「下」「裏」と表現しており、駆動軸としての主軸が被接合部材に対して上方にある場合を、代表例として説明している。
【0016】
また、本発明の好適な摩擦攪拌接合装置は、
前記上ショルダ部と前記下ショルダ部との距離は、被加工部材の厚みに応じて該下ショルダ部の位置を調整可能な締め付け機構を有し、
前記プローブ内チャンネルは少なくともその下端が、
前記上ショルダ部と前記プローブとの境界近傍に位置する上プローブ内チャンネルと該上プローブ内チャンネルより下方で、予め想定される下ショルダ部の変動上限位置より上方に位置する下プローブ内チャンネルとを備え、
それぞれに配設される温度計測素子からの温度計測結果を前記送信手段で送信する。
【0017】
上述したように被接合部材の厚み方向最下点の温度計測点を下ショルダ部内としたが、これは「プローブ内の最下点の温度計測点」を、プローブに対して上下方向に変動する「下プローブの温度計測点」とし、被接合部材の厚みから「予め想定される下ショルダ部の上面よりも上方に位置」とすることで、少なくともプローブ内の上端側の位置(1)と、これより下方であって下ショルダ部の上面よりも上に位置するプローブ内の下端側の位置(中間位置(2)も含む)と、下ショルダ部の上面側の位置(3)と、で温度計測することができるようにしている。このような構成にすると被接合部材の裏面(下面)に下ショルダ部を締め付け当接するときのその変動位置や強度が変動しても計測最下点の位置は下ショルダ部基準で決められ、プローブの深さ方向全域(すなわち被接合部材の厚み方向全域)にわたって温度計測することができ、塑性流動の進行状況をモニタリングすることができる。また、早期かつ安定的な塑性流動を得るに十分な接合条件(例えば、下ショルダ部の変動量(締め付け量)や当接力(締め付け強度)、送り速度)を最適設計することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の摩擦攪拌接合装置によれば、裏当て治具を要しないボビン型接合ツールによる摩擦攪拌接合において、被接合部材の接合部の厚み方向全域の温度、とりわけ下ショルダ部側の温度も精緻に計測できるため、裏面側からの塑性流動の影響もモニタリングすることができ、下ショルダ部の変動にかかわらず接合部で早期に十分・安定した塑性流動を得ることができる。これにより下ショルダ部の締め付け強度や締め付け量、及びツールの送り速度等の接合条件を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ボビン型接合ツールを用いて行うセルフリアクティング式摩擦攪拌接合の一般原理を示す模式図である。
図2】本発明の摩擦攪拌装置で用いるボビン型接合ツールの実施形態の上部をツールホルダとした様子を示す写真図である。
図3】ツールホルダ下方からボビン型接合ツールまでを示す図2の写真図の拡大写真図である。
図4図2図3に示すボビン型接合ツール全体を示す写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
《ボビン型接合ツール式のFSWの構造及び原理について》
図1は、ボビン型接合ツールを用いて行うセルフリアクティング式摩擦攪拌接合の一般原理を示す模式図である。
【0021】
ボビン型接合ツールは、被接合部材の裏面(下面)に裏当て治具を要することなく、被接合部材の厚さの変動にも追従できるセルフリアクティング式摩擦攪拌接合に用いる接合ツールである。図1に示すように一般的なボビン型接合ツールは、中空の上ショルダ部12の内部に入れ子状に内部ツール11が挿入されており、内部ツール11の下端から下方に延びる筒状のプローブ14が下ショルダ部12の下面から突出している。プローブ14は、被接合部材20を上面(表面)から下面(裏面)に貫通して下面側に設置した下ショルダ16内に挿入され締め付け用のナット22で固定される。
【0022】
接合前に内部ツール11は上ショルダ部12内を上下方向に変動可能であり、被接合部材20の厚さ(δ:図2参照)に応じてナット22を所定量の締め付けをし、締め付け強度を負荷することで調整し、被接合部材20の上面及び下面をそれぞれ上ショルダ部12の下面と下ショルダ部15の上面で当接する(図2矢印A、B参照)。この状態で上ショルダ部12を軸回転させ(図1の矢印b参照)、一体に連結されたプローブ14及び下ショルダ部16も上ショルダ部12の軸回転と同軸回転させ(図1の矢印a参照)、接合方向に所定速度(送り速度)で移動する。このボビン型接合ツール10では、被接合部材20はその下面(裏面)にも下ショルダ部16を当接・回転させる。したがって、上ショルダ部12のみ当接・回転させる通常の接合ツールによるFSWでは、塑性流動の不安定による不完全部が発生する可能性があったが、ボビン型接合ツール10を用いた場合、下ショルダ部16により被接合部材20の下面側(裏面側)の加熱を達成することで塑性流動を早期に安定させると推察された。
【0023】
このような推察の下、ボビン型接合ツール10を用いるFSWでは、その優位性を確保するためには被接合部材20の下面(裏面)の温度計測を行い、入熱状態をリアルタイムにモニタリングする必要があると考えられたが、このような推察が提供されていない従来品では被接合部材20の裏面側の温度計測がなされていなかったことは前述の通りである。
【0024】
《本発明の摩擦攪拌接合装置で用いるボビン型接合ツールの実施形態について》
図2図4は、本発明の摩擦攪拌装置で用いるボビン型接合ツールの一例を示す写真図であり、図2はボビン型接合ツールの上部をツールホルダに連結した様子を示す写真図、図3はツールホルダの下方及びボビン型接合ツールを示す図2の写真図の拡大写真図、図4図1図2に示すボビン型接合ツール全体を示す写真図である。なお、図2図4では被加工部材20を図示せず、配設位置(符号20)として示している。
【0025】
ボビン型接合ツール10は、その上端を図示しない主軸と連結してツールホルダ11に連結し、主軸及びツールホルダ11と同軸回転しながら被接合部材20の上下面(表裏面)を挟持して接合方向に所定の送り量(送り速度)で被接合部材20を接合する。
【0026】
このボビン型接合ツール10は、上ショルダ部12を円筒形状とし、その下面12aを平坦な滑面としており、接合時には下方向に被接合部材20の接合部上面(図示せず)に当接しながら回転する。また、下ショルダ部16も上ショルダ部12と同様に略同径の円筒形状でその上面12を平坦な滑面としており、接合時に被接合部材20の接合部下面(図示せず)を当接して、上ショルダ部12とで被接合部材20を厚み方向に挟み込んで回転する。
【0027】
プローブ14は、上ショルダ部12の下面12aから下ショルダ部16の上面16aに向かって先細りしながら突出し、被接合部材20の接合部で厚み方向に貫通して延びている。そして、下ショルダ部16内を貫通して下プローブ16の下面16bから突出している。また、プローブ14はその外周に沿ってネジ溝14aが施されており、下ショルダ部16の下方でナット22、24によりネジ締結し、下ショルダ部16を固定している。ナット22、24は、所謂ダブルナット方式であり、被接合部材20の厚みδ及び接合条件の1つとなる下ショルダ16の当接力に応じて、ナット22の締め付け量及び締め付け力が調整され、この例ではワッシャ23を挟み込んでナット24を締め付けることによりナット22のゆるみを防止している。
【0028】
次にボビン型接合ツール10の温度計測点について説明する。
図4の(1)~(3)に示すようにボビン型接合ツール10では少なくとも深さ方向に、プローブ12内の上端位置(1)、プローブ12内の上端位置(1)より下方の中間位置(2)、下ショルダ部16内で下ショルダ部16の上面16a近傍の下端位置(3)で、接合中に温度計測できる。
【0029】
上端位置(1)と中間位置(2)とは、下ショルダ部16を設けない通常型式の接合ツールと同様に、プローブ14内にそれぞれ上端位置(1)及び中間位置(2)まで延びるチャンネル(図示せず)を設け、該チャンネル内に熱電対を挿入・固定し、上端位置(1)と中間位置(2)での温度を計測し、熱電対と電気的に接続するツールホルダ11内の電子基板でデジタル変換して、外部に無線等で送信することで、送信先の外部PC等でモニタリングする。
【0030】
下端位置(3)は下ショルダ部16の上端位置であり、プローブ14と下ショルダ部16との連結境界として下ショルダ16の変動にかかわらず、下ショルダ部16の上面16a近傍位置の温度を計測する。具体的には、前述の上端位置(1)及び中間位置(2)と同様に下ショルダ部16内で下端位置(3)まで延びるチャンネル(図示せず)を設け、該チャンネル内に熱電対を挿入・固定し、下端位置(3)での温度を計測し、熱電対と電気的に接続するツールホルダ11内の電子基板でデジタル変換して、外部に無線等で送信することで、送信先の外部PC等でモニタリングする。
【0031】
以上のように温度計測点を設けることで、下ショルダ部16の位置調整による変動にかかわらず、被接合部材20の厚み方向全域にわたって接合部の温度、ボビン型接合ツール10特有の下ショルダ部16による裏側の塑性流動への影響もモニタリングすることができる。このモニタリングにより、接合条件としてのナット22による下ショルダ部16の締め付け量や締め付け強度、プローブ14の接合方向の送り速度と安定的な塑性流動との関係もモニタリングするこができ、接合時間と接合精度とのバランスを考えた被接合部材20や接合ツール10ごとの接合条件を最適化することもできる。
【0032】
なお、図4では温度計測点を上端位置(1)、中間位置(2)、及び下端位置(3)の3箇所を例示しているが、被接合部材20の厚み方向全域にわたって精緻に温度計測するため、さらにさらにプローブ14内の厚み方向位置が異なる温度計測点を設けることもできる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0034】
10…ボビン型接合ツール
11…ツールホルダ
12…上ショルダ部
14…プローブ
16…下ショルダ部
20…被接合部材
22…ナット
23…ワッシャ
24…ナット
図1
図2
図3
図4