(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096254
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】骨代謝改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20240705BHJP
A23L 5/44 20160101ALI20240705BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240705BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240705BHJP
A23G 4/06 20060101ALI20240705BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20240705BHJP
A23C 9/123 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/132 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20240705BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20240705BHJP
A61K 36/67 20060101ALI20240705BHJP
A61K 36/736 20060101ALI20240705BHJP
A61K 36/07 20060101ALI20240705BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L5/44
A23L33/105
A23L2/52
A23G4/06
A23G3/36
A23C9/123
A61K31/122
A61K31/381
A61K31/132
A61K31/575
A61K36/28
A61K36/67
A61K36/736
A61K36/07
A61P19/00
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072598
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2020085158の分割
【原出願日】2020-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】594045089
【氏名又は名称】オリザ油化株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(72)【発明者】
【氏名】柿原 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】小倉 将司
(72)【発明者】
【氏名】下田 博司
(57)【要約】
【課題】 新規な成分の骨代謝改善剤を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
1. フェルラ酸、アスタキサンチン、α-リポ酸、 ササクレヒトヨタケエキス、ハマウツボ科の植物エキス、桜エキス、 γ-オリザノール、植物及び/または植物加工物由来のポリアミン組成物、フキエキスのうちの少なくとも1種を有効成分とする破骨細胞の分化抑制剤。
2.α-リポ酸、ハマウツボ科の植物エキス、フェルラ酸のうちの少なくとも1種を有効成分とする骨芽細胞の分化促進剤。
3.ハマウツボ科の植物エキスを有効成分とする前駆骨芽細胞におけるBSPII発現促進剤。
4.ハマウツボ科の植物エキスを有効成分とする前駆骨芽細胞における1型コラーゲン発現促進剤。
5.上記1.~上記4.のうちの少なくとも1つの剤を有効成分とする骨代謝改善剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチン、α-リポ酸、 ササクレヒトヨタケエキス、ハマウツボ科の植物エキス、桜エキス、 γ-オリザノール、植物及び/または植物加工物由来のポリアミン組成物、フキエキスのうちの少なくとも1種を有効成分とする破骨細胞の分化抑制剤。
【請求項2】
α-リポ酸、ハマウツボ科の植物エキス有効成分とする骨芽細胞の分化促進剤。
【請求項3】
ハマウツボ科の植物エキスを有効成分とする前駆骨芽細胞におけるBSPII発現促進剤。
【請求項4】
ハマウツボ科の植物エキスを有効成分とする前駆骨芽細胞における1型コラーゲン発現促進剤。
【請求項5】
請求項1~請求項4のうちの少なくとも1つの剤を有効成分とする骨代謝改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨代謝を改善するための健康食品、医薬品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国内において骨粗鬆症患者は1000万人を超えており、社会的に大きな問題となっている。また、急速な高齢化により65才以上の人口が増加し、骨粗鬆症患者が増加の一途を辿ることが推測されている。骨粗鬆症は骨強度低下によって骨折の危険性が高まった病態であり、その治療および予防は健全な長寿社会を実現するために必要である。
【0003】
人体において骨は絶えず骨吸収と骨形成を繰り返しており、骨吸収に関与する細胞が破骨細胞、骨形成に関与する細胞が骨芽細胞である。骨の形成、維持、修復には、これらの細胞の形成と吸収のバランスに依存しており、そのバランスが崩れることにより、骨吸収が骨形成を上回り、骨粗鬆症などの骨代謝疾患がもたらされることが知られている。よって骨形成が骨吸収を下回らないことが骨量の維持・増強に重要であると考えられている。
【0004】
骨吸収は破骨細胞によって行なわれるため、破骨細胞の分化および活性化が顕著であるほど、骨吸収率は高くなる。一方、骨形成は骨芽細胞によって行なわれ、骨芽細胞の分化および活性化が顕著であるほど、骨形成率は高くなる。そのため、骨吸収率を減少させる骨吸収抑制作用を有し、骨形成率を高める骨形成促進作用を有する組成物が得られれば、骨粗鬆症に有効である。このような効果が報告されているものとして、例えば、生姜の辛味成分である6-ジンゲロールおよび6-ショウガオールを含むしょうがの抽出物を有効成分とする骨代謝改善組成物(特許文献1参照)やサルカケミカン(学名:Toddalia asiatica)由来のトダクリン(toddaculin)を有効成分とする骨代謝改善組成物(特許文献2参照)が知られている(特許文献3)。
【0005】
また、骨密度測定を補うものとして、様々な骨代謝マーカーが開発されつつある。非コラーゲン型の骨基質タンパク質であるBSPIIも閉経後の女性で血中濃度が上昇するなど、骨代謝との関連が示唆されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-043416号公報
【特許文献2】特開2016-069355号公報
【特許文献3】特開2018-123111号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W. Witholdら,ClinicalChemistry,43巻,1号,85~91ページ(1997年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景の下、本発明者は、フェルラ酸、アスタキサンチン、α-リポ酸、 ササクレヒトヨタケエキス、ハマウツボ科の植物エキス、桜エキス、 γ-オリザノール、植物及び/または植物加工物由来のポリアミン組成物、フキエキスについて、破骨細胞の分化を抑制する作用を見出し、α-リポ酸、ハマウツボ科の植物エキス、フェルラ酸において、骨芽細胞の分化を促進し、ハマウツボ科の植物エキスにおいて、前駆骨芽細胞におけるBSPII及び1型コラーゲン発現促進作用を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は新規な成分を有効成分とする骨代謝改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
1. フェルラ酸、アスタキサンチン、α-リポ酸、 ササクレヒトヨタケエキス、ハマウツボ科の植物エキス、桜エキス、 γ-オリザノール、植物及び/または植物加工物由来のポリアミン組成物、フキエキスのうちの少なくとも1種を有効成分とする破骨細胞の分化抑制剤。
2.α-リポ酸、ハマウツボ科の植物エキス、フェルラ酸のうちの少なくとも1種を有効成分とする骨芽細胞の分化促進剤。
3.ハマウツボ科の植物エキスを有効成分とする前駆骨芽細胞におけるBSPII発現促進剤。
4.ハマウツボ科の植物エキスを有効成分とする前駆骨芽細胞における1型コラーゲン発現促進剤。
5.上記1.~上記4.のうちの少なくとも1つの剤を有効成分とする骨代謝改善剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フェルラ酸、アスタキサンチン、α-リポ酸、 ササクレヒトヨタケエキス、ハマウツボ科の植物エキス、桜エキス、 γ-オリザノール、植物及び/または植物加工物由来のポリアミン組成物、フキエキスは破骨細胞の分化抑制作用を有する。これにより、これらの成分は破骨細胞の分化抑制剤として有用である。
また、本発明によれば、α-リポ酸、ハマウツボ科の植物エキス、フェルラ酸は骨芽細胞の分化促進作用を有する。これにより、これらの成分は、骨芽細胞の分化促進剤として有用である。
さらに、本発明によれば、ハマウツボ科の植物エキスは前駆骨芽細胞におけるBSPII発現促進作用を有する。これにより、ハマウツボ科の植物エキスはBSPII発現促進剤として有用である。
ハマウツボ科の植物エキスは、前駆骨芽細胞における1型コラーゲン発現促進作用を有する。これにより、ハマウツボ科の植物エキスは駆骨芽細胞における1型コラーゲン発現促進剤として有用である。
以上により、フェルラ酸、アスタキサンチン、α-リポ酸、 ササクレヒトヨタケエキス、ハマウツボ科の植物エキス、桜エキス、 γ-オリザノール、植物及び/または植物加工物由来のポリアミン組成物、フキエキス、特にハマウツボ科の植物エキスは、骨代謝改善剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】様々な食品抽出物の破骨細胞分化への効果の検討結果を示すグラフである。
【
図2】様々な食品抽出物の骨芽細胞分化に対する効果の検討結果を示すグラフである。
【
図3】カンカの骨芽細胞分化マーカーへの影響を示す図である。
【
図4】骨芽細胞分化におけるカンカのI型コラーゲン局在と発現への影響を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の骨代謝改善剤はフェルラ酸、アスタキサンチン、α-リポ酸、 ササクレヒトヨタケエキス、ハマウツボ科の植物エキス、桜エキス、 γ-オリザノール、植物加工物由来のポリアミン組成物、フキエキスのうちの少なくとも1種を有効成分とする。
【0013】
上記フェルラ酸は、下記化学式(1)に示される化合物である。
【0014】
【0015】
上記フェルラ酸を得る方法は特に限定されず、市販品を用いてもよい。例えば、オリザ油化株式会社製の「フェルラ酸」を用いることができる。
【0016】
上記アスタキサンチンは、下記化学式(2)にて示される化合物である。
【0017】
【0018】
また、本発明で使用するアスタキサンチンとして、そのエステルを用いることが好ましい。
このアスタキサンチンのエステルとしては、特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ビスホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸のモノエステルまたはジエステルが挙げられる。これらは単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。アスタキサンチンは、β-カロチンの骨格の両端にオキソ基とヒドロキシル基とを余分に有する構造であるため、β-カロチンとは異なり、分子の安定性が低い。これに対し、両端のヒドロキシル基が不飽和脂肪酸などでエステル化されたエステル体(例えば、オキアミエキス)はより安定である。
【0019】
本発明に用いられるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、化学的に合成されたものであっても、あるいは天然物由来のもののいずれであってもよい。後者の天然物としては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する赤色酵母;ティグリオパス(赤ミジンコ)、オキアミなどの甲殻類の殻、ヘマトコッカス藻等の藻類などが挙げられる。本発明においては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルの特性を利用できるものであれば、どのような方法で生産されたアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有するエキスをも使用することができる。一般的には、これらの天然物からのエキスが用いられ、抽出エキスの状態であっても、また必要により適宜精製したものであってもよい。本発明においては、このようなアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する粗エキスや破砕粉体物、あるいは必要により適宜精製されたもの、化学合成されたものを、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。体内での安定性を考慮すると、好ましくはエステル体が用いられる。
上記アスタキサンチンとして、市販品を用いることともでき、例えば、オリザ油化株式会社製の「アスタキサンチン」を用いてもよい。
【0020】
上記α-リポ酸とは、チオクト酸とも呼ばれ、下記化学式(3)に示される化合物である。
【0021】
【0022】
上記α-リポ酸を製造する方法は特に限定されず、公知の方法にて製造することができる。また、上記α-リポ酸は市販品を用いることができ、例えば、オリザ油化株式会社製の「α-リポ酸‐P」を用いることができる。
【0023】
上記ササクレヒトヨタケエキスの原料であるササクレヒトヨタケは学名をCoprinus comatusという食用茸であり、円柱型の白い絹のような傘を持ち、白色の毛皮のような鱗片に覆われている。しかしながら、その美しさは自然では数日しか保たれないため幻のキノコと呼ばれており、その稀少価値の高さからイタリアでは高級食材として知られているものである。
その抽出溶媒は特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル等の極性溶媒を使用することができる。これらの溶媒を2種以上混合してもよい。
望ましくは、水またはエタノールを抽出溶媒として用いると、有効成分が効率よく抽出される。特に、水は、抽出の際に有効成分の活性を低下させにくく、抽出物の食品使用における安全面の上でも好ましい抽出溶媒である。抽出用の水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水、深層水等を使用することができる。
【0024】
抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。
【0025】
具体的な抽出方法を示すと、抽出溶媒を満たした処理槽に原料(ササクレヒトヨタケ)を投入し、攪拌しながら有効成分を溶出させる。例えば、抽出溶媒として水を用いる場合には、抽出原料の5~100倍量程度(重量比)の抽出溶媒を使用し、30分~2時間程度抽出を行う。溶媒中に有効成分を溶出させた後、ろ過して抽出残渣を除くことによって抽出液を得る。
【0026】
その後、常法に従って抽出液に希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施し、本発明による骨代謝改善剤とする。
有効成分の精製方法は、合成吸着樹脂、ゲル濾過樹脂等に抽出液を通して有効成分を吸着させ、これをメタノール、エタノール等で溶出させて減圧濃縮を行うとよい。
【0027】
更に、上述したササクレヒトヨタケの抽出物はエルゴチオネインを含有することを特徴とする。
エルゴチオネインは下記式(4)で表されるアミノ酸の1種であり、ヒトを含めた動物の赤血球、肝臓などに広く分布することが明らかにされ、ヒドロキシルラジカルの捕捉作用、Fe, Cuに依存した過酸化水素からのヒドロキシラジカルの生成抑制作用、銅依存オキシヘモグロビンの酸化抑制作用、ミオグロビン及び過酸化水素によるアラキドン酸酸化抑制作用などの抗酸化活性が報告されている。
【0028】
【0029】
上記ササクレヒトヨタケの抽出物に含有されるエルゴチオネインの含有量は特に限定されないが、ササクレヒトヨタケの抽出物の全質量を100wt%とした場合、0.01wt%以上、更には0.1~20wt%とすることができる。
【0030】
尚、上記ササクレヒトヨタケエキスは市販品を用いることができ、例えば、オリザ油化株式会社製の「コプリーノ(登録商標)エキス‐P0.5」等を用いることができる。
【0031】
ハマウツボ科(Cistanche)に属する草本の新鮮な茎が不妊症、インポテンツ、便秘などの治療に有効であることが知られている(特許文献1参照)。加えて、このような多年生草本の新鮮な茎から得られる調製物は血液及び腎臓の栄養となる。これらの寄生及び多年生草本は、中国の北西地方で広く栽培され、地方によっては「砂漠のチョウセンニンジン(desert ginseng)」として知られている。最も大量に栽培されているハマウツボ科(Cistanche)の種は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa(カンカニクジュヨウ)]である。
【0032】
原料として用いるハマウツボ科の植物は特に限定されず、例えば、全寄生植物[Cistanche tubulosa:カンカニクジュヨウ]、ホンオニク(Cistanche salsa:ニクジュヨウ)、ナンバンギセル(Aeginetia indica)、オニク(Boschniakia rossica)等が挙げられるが、これらに限定されない。尚、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上併用しても良い。また、これらのうち、特に、全寄生植物[Cistanche tubulosa:カンカニクジュヨウ]が好ましい。
【0033】
原料のハマウツボ科の植物からエキスを得る方法は特に制限されず、例えば、溶媒抽出法、超臨界抽出等が挙げられる。
【0034】
また、溶媒抽出法にて抽出する場合、用いる溶媒は特に限定されないが、極性溶媒を用いることが好ましい。また、上記極性溶媒は特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル等が挙げられる。尚、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上併用しても良い。
その後、更に希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施すことがこのましい、高濃度のフェニルエタノイド配糖体を含有するエキスを得ることができるからである。
なお、精製方法としては、例えば、活性炭処理、樹脂吸着処理、イオン交換樹脂、液-液向流分配等の方法が挙げられる。
また上記ハマウツボ科の植物エキスとして市販品を用いることができ、例えば、オリザ油化株式会社製の「カンカエキス-P25」等を用いることができる。
【0035】
桜エキスの原料として用いるサクラ(桜、櫻)は、バラ科サクラ属の植物のうち、ウメ、モモ、アンズなどを除いた総称であり、一般にはサクラ亜属 (Subgen. Cerasus) に属するものを指す。
【0036】
本発明で用いる桜の種は特に限定されず、例えば、ヤマザクラ群、エドヒガン群、マメザクラ群、チョウジザクラ群、ミヤマザクラ群、シナミザクラ群等の群に属する桜を用いることができ、更にこれらの群に限定されない。
【0037】
本発明の原料で用いる桜の部位は特に限定されず、葉、茎、幹、花、根、果実等が挙げられるが、葉又は花を用いることが好ましい。
【0038】
ここで、極性溶媒抽出にて抽出する場合、用いる極性溶媒は特に限定されないが、たとえば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン等が挙げられる。これらのうち、水、メタノール、エタノールが好ましい。有効成分を効率よく抽出できるからである。尚、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上併用しても良い。
【0039】
抽出溶媒として水を使用する場合には、抽出温度20~100℃、好ましくは40~70℃程度で行うとよい。これは、抽出温度が低すぎると、有効成分が抽出されにくく、抽出温度が高すぎると桜に含有している、シアン化合物が残留しやすくなり、また、有効成分が分解されやすくなるため、好ましくない。抽出用の水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水等を使用することができる。
【0040】
抽出溶媒として含水アルコールを使用する場合、アルコール濃度20wt%好ましくは25wt%~50wt%、さらに好ましくは25wt%~30wt%であることが好ましい。アルコール濃度が20wt%未満の場合、高い抽出量の有効成分を得ることが困難となり、アルコール濃度が50wt%を超えると不純物等の影響で収率が低下するからである。
また、アルコール濃度が30wt%以上の場合、抽出温度は、0~95℃、好ましくは0~60℃程度で行うとよい。なお、含水エタノール抽出は、有効成分の含有率を向上させるため、種々の濃度で繰り返すとよい。
【0041】
また、極性溶媒にて抽出する場合、その抽出方法は特に限定されず、例えば、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出等任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。尚、上述した方法にて抽出を行う場合、これらのうちの1つのみを行っても良いし、これらの方法を組み合わせても良い。また、これらの抽出は、1回のみ行っても良いし、2回以上行っても良い。
【0042】
なお、上記桜エキスは市販品を用いることができ、例えば、オリザ油化株式会社製の「桜の花エキス-P」を用いることができる。
【0043】
γ-オリザノールは、フェルラ酸と植物ステロールもしくはトリテルペンアルコールのエステルの混合物である。植物ステロールとしては、例えば、カンペステロール、β-シトステロール、スチグマステロール等が挙げられる。トリテルペンアルコールとしては、シクロアルテノール、24-メチレンシクロアルタノール、シクロブラノール、シクロサドール等が挙げられる。
【0044】
上記γ-オリザノールは上述した化合物を含むものであれば特に限定されず、また市販品を用いることもできる。例えば、オリザ油化株式会社製の「γ-オリザノール」を用いることができる。
【0045】
ポリアミンは、第1級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物であり、20種類以上が見いだされている。代表的なポリアミンとしてはプトレスシン、スペルミジン、スペルミンがある。ポリアミンの主な生理作用としては(1)核酸との相互作用による核酸の安定化と構造変化(2)種々の核酸合成系への促進作用(3)タンパク質合成系の活性化(4)細胞膜の安定化や物質の膜透過性の強化(5)活性酸素の消去(6)細胞増殖の促進(7)抗アレルギー作用が知られている。
【0046】
本発明において「植物及び/または植物加工物」とは、種々の植物或いは植物を加工した物であり、特に限定されるものではないが、例えば双子葉植物、単子葉植物、草本性植物、木本性植物、ウリ科植物、ナス科植物、イネ科植物、アブラナ科植物、マメ科植物、アオイ科植物、キク科植物、アカザ科植物、マメ科の植物、該植物加工物、該植物エキスなどが挙げられる。例えば、サツマイモ、トマト、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、タバコ、シロイヌナズナ、ピーマン、ナス、マメ、サトイモ、ホウレンソウ、ニンジン、イチゴ、ジャガイモ、イネ、トウモロコシ、アルファルファ、小麦、オオムギ、ダイズ、ナタネ、ソルガム、ユーカリ、ポプラ、ケナフ、杜仲、サトウキビ、シュガービート、キャッサバ、サゴヤシ、アカザ、ユリ、ラン、カーネーション、バラ、キク、ペチュニア、トレニア、キンギョソウ、シクラメン、カスミソウ、ゼラニウム、ヒマワリ、シバ、ワタ、エノキダケ、ホンシメジ、マツタケ、シイタケ、キノコ類、チョウセンニンジン、アガリクス、ウコン、オタネニンジン、柑橘類、緑茶、紅茶、ウーロン茶、バナナ、キウイ、納豆、豆乳、ダイズエキス、小麦エキス、胚芽エキス、胚エキス、果汁、オカラ、コメ胚芽、小麦胚芽、オオムギ胚芽、ダイズ胚芽、トウモロコシ胚芽、マイロ胚芽、ヒマワリ胚芽などが挙げられる。
好ましくは、単子葉植物や双子葉植物がよく、さらに好ましくはイネ科植物やマメ科植物がよく、特に好ましくは、トウモロコシ、キノコ類、ダイズ、小麦、イネ、納豆、豆乳、オカラ、小麦胚芽、ダイズ胚芽、トウモロコシ胚芽、ダイズエキス、小麦エキス、胚芽エキス、胚エキスがよい。特に国民一人・1年当たり供給純食料が多い植物、例えば、大豆、イネ、小麦などからポリアミンを回収してもよい。
【0047】
ポリアミン組成物を回収する植物組織としては、特に限定はされない。好ましくは、種子形態、生育過程にあるものである。生育過程にある植物は全体、あるいは部分的な組織から回収することができる。回収できる部位としては、特に限定されないが全樹、花、蕾、子房、果実、葉、子葉、茎、芽、根、種子、乾燥種子、胚、胚芽、根などである。好ましくは、果実、葉、茎、芽、種子、乾燥種子、胚芽、胚であり、特に好ましくは、種子、乾燥種子、胚芽、胚などである。これらのうち特に大豆胚芽、イネの胚芽及び小麦の胚芽のうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0048】
植物及び/又は植物加工物由来のポリアミン組成物は以下の方法にて製造することができる。
即ち、植物及び/又は植物加工物を酸性条件下に処し、その後、液体画分を分離することにより植物由来のポリアミンの組成物を得ることができる。
【0049】
ここで、「酸性条件下」とは、pHが6以下の条件をいう。精製時に、pHを酸性条件下にすることにより、植物組織から効率的かつ安定的なポリアミン組成物回収の効果が得られる。この効果は、pHが6以下であれば一様に得られるが、好ましくはpHが6~3であり、特に好ましくはpHが4.5~3.5である。
【0050】
本願発明の「植物加工物」とは植物から得られる物又はその加工物をいう。その調製方法とは、植物を水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物などを用いて、低温、室温、加温条件下での含浸法、蒸留法、圧搾法、超音波法、超臨界流体法、亜臨界流体法などで抽出物を回収する。さらに植物や植物から回収した抽出物を発酵させるなどの加工処理した加工物なども含まれる。例えば植物エキス、豆乳、オカラ、小麦粉、発酵エキス、納豆などが挙げられる。
【0051】
酸性条件下になるように添加する酸溶液としては、塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸などの有機酸および酸性水が挙げられるが、0.01N~6Nの塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、トリクロロ酢酸、スルホサリチル酸、ギ酸、クエン酸、乳酸や0.1~10%の過塩素酸などの無機酸や有機酸などである。
【0052】
また、植物及び/又は植物加工物に含まれていたポリアミンを酸溶液中(液体画分)に十分に抽出した後に遠心分離や濾過分離によって液体画分を残査や沈殿と分離する。回収された液体画分にはポリアミンが多く含まれており「ポリアミン組成物」として得た。
【0053】
本発明において「ポリアミン」とは、第1級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物であり、20種類以上のポリアミンが見いだされている。例えば、1,3-ジアミノプロパン、プトレスシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミンなどが挙げられる。代表的なポリアミンとしてはプトレスシン、スペルミジン、スペルミンがある。
【0054】
本発明で言うところの「プトレスシン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を2つもつ脂肪族炭化水素化合物である。「スペルミジン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を3つもつ脂肪族炭化水素化合物である。「スペルミン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を4つもつ脂肪族炭化水素化合物である。
「カダベリン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を2つもつ脂肪族炭化水素化合物である。
【0055】
必要に応じてポリアミン組成物は、イオン交換法、膜分画法、ゲル濾過法、電気透析法で脱塩処理や精製処理を行っても良く、これらの方法を少なくとも1つ以上実施することで、より高純度なポリアミン組成物を得ることができる。例えば、イオン交換法としては、ポリアミン溶液をイオン交換樹脂を充填したカラムに通し、ポリアミンとアミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖類等の夾雑物とを分離する。使用するイオン交換樹脂としては、イオン交換基がスルホン酸基、スルホプロピル基、リン酸基、カルボキシルメチル基、アミノエチル基、ジエチルアミノ基、4級アミノエチル基、4級アンモニウム基等であればよく、陽イオン交換樹脂でも陰イオン交換樹脂でもいずれも使用することができる。陽イオン交換樹脂を使用した場合には、ポリアミンは陽イオン交換樹脂に吸着されるので、非吸着物質を十分に分離した後、硫酸、塩酸等の酸性溶液や塩化ナトリウム等の塩溶液でポリアミンを溶出する。陰イオン交換樹脂を使用した場合には、ポリアミンは陰イオン交換樹脂に吸着されないので、ポリアミンを含む非吸着画分を回収する。例えば、膜分画法としては、セルロース系、酢酸セルロース系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリアクリルニトリル系、ポリ四フッ化エチレン系、ポリエステル系、ポリプロピレン系等で分画分子量が1000~100000の範囲の限外濾過(UF)膜を使用してポリアミン組成物のUFを行い、ポリアミンを含む透過液を回収する。また、食塩阻止率30~80%のナノフィルトレーション (NF) 膜を使用してポリアミン溶液のNFを行い、脱塩する。例えば、ゲル濾過法は、ポリアミン組成物を中和し、ゲル濾過担体を充填したカラムに通して分子量分画によりポリアミンを回収する。使用するゲル濾過担体は、デキストラン系、アクリルアミド系、アガロース系、セルロース系、ポリビニル系、ガラス系、ポリスチレン系などで分画分子量が100~100000の範囲である。例えば、電気透析法は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とによって仕切られた各膜間にポリアミン組成物と食塩水とを交互に供給して電気透析を行う。
【0056】
なお、植物及び/又は植物加工物由来のポリアミン組成物は市販品を用いることができ、例えば、オリザ油化株式会社製の「ポリアミン-P」、「オリザポリアミン-P」が挙げられる。
【0057】
フキ(蕗)”は、キク科フキ属(Petasites)の多年草で、中国の生薬名では“ホウトサイ”と呼ばれる。雌雄異株で地下に横走する根茎を有し、この根茎から出る葉柄につば広の葉身を付ける。花は早春に葉の展開に先だってあらわれ、短い直立した茎の頂部に散房状に筒状花からなる頭花(花茎:フキノトウ)を付ける。
日本原産の野菜として古くから栽培され、花序や花茎あるいは葉柄を食用としている。自生しているものも採取、利用されている。栽培品種としては、愛知早生ブキ、水フキ(京ブキ)、アキタブキ、ラワンブキ等がある。
【0058】
本発明において、抽出原料として用いるフキの部位は限定されず、葉柄、葉身、花茎、根茎等いずれを使用してもよいが、フキの地上部(葉柄、葉身)を用いることが望ましい。骨代謝改善作用を有する成分がフキの葉柄および葉身に多く含まれるためである。なお、フキの地上部は、花茎(フキノトウ)、果実等であってもよい。
株種については、雄株または雌株のいずれを用いてもよい。フキの栽培品種や栽培時期についても限定されない。
【0059】
原料からフキエキスを抽出するための溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、アセトン等を使用することができる。これらの溶媒を2種以上混合してもよい。
望ましくは、含水エタノールを抽出溶媒として用いるとよい。特に、含水エタノールは、抽出の際に有効成分の活性を低下させにくく、抽出物の食品使用における安全面の上でも好ましい抽出溶媒である。抽出用の水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水、深層水等を使用することができる。
【0060】
抽出温度としては、例えば、含水エタノールを使用する場合、抽出温度20~80℃、望ましくは60~70℃程度で行うとよい。抽出温度が低すぎると、有効成分が抽出されにくくなり、また、抽出温度が高すぎると、有効成分の活性が低下しやすくなるためである。
【0061】
抽出溶媒としての含水エタノールは、エタノール濃度40~90%(wt/wt)であるとよい。エタノール濃度40%(wt/wt)以上としたのは、エタノール含有量が少なすぎると、抽出量が少なくなり、また、エタノール濃度90%(wt/wt)以下としたのは、エタノール濃度が高すぎると、骨代謝改善成分が抽出されにくくなるからである。望ましくはエタノール濃度60~80%(wt/wt)、さらに望ましくは70%(wt/wt)程度であるとよい。なお、エタノール抽出は、有効成分の含有率を向上させるため、エタノール濃度を段階的に変えながら繰り返して行うとよい。
【0062】
上記フキエキスの抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。
【0063】
抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1、3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル等の極性溶媒を使用することができる。これらの溶媒を2種以上混合してもよい。
望ましくは、水エタノールまたはこれらの混合物である含水エタノールを抽出溶媒として用いると、有効成分が効率よく抽出される。
【0064】
抽出溶媒として水を用いる場合、水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水、深層水等を使用することができる。
【0065】
抽出溶媒としての含水エタノールを用いる場合、エタノールの濃度が特に限定されないが、特にエタノール濃度10~90%(wt/wt)、望ましくはエタノール濃度20~80%(wt/wt)であるとよい。エタノール濃度90%(wt/wt)以下としたのは、エタノール濃度が高すぎると、有効成分が抽出できなくなるからである。
【0066】
抽出温度としては、20~80℃、望ましくは40~50℃程度で行うとよい。抽出温度が低すぎると、有効成分が抽出されにくくなり、抽出温度が高すぎると、有効成分が分解し、生理活性(健康機能性)が低下するためである。
【0067】
抽出方法としては、撹拌抽出、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。
【0068】
なお、上記フキエキスとして、市販品を用いることもでき、例えば、オリザ油化株式会社製の「フキエキス‐P」を用いることができる。
【0069】
本発明の骨代謝改善剤は、各種飲食品の素材として使用することができる。飲食品としては、例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)が挙げられる。これらの飲食品に本発明の骨代謝改善剤 を適宜配合するとよい。
【0070】
これら飲食品には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤の食品素材を使用することができる。
【0071】
具体的な製法としては、骨代謝改善剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥し、これを粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品(インスタント食品等)に含有させることができる。また、前記骨代謝改善剤を、例えば、油脂、エタノール、グリセリンあるいはこれらの混合物に溶解して液状にし、飲料に添加するか、固形食品に添加することが可能である。必要に応じてアラビアガム、デキストリン等のバインダーと混合して粉末状あるいは顆粒状にし、飲料に添加するか固形食品に添加することも可能である。
【0072】
本発明の骨代謝改善剤を飲食品に適用する場合の添加量としては、病気予防や健康維持が主な目的であるので、飲食品に対して有効成分の含量が合計1~20wt%以下であるのが好ましい。
【0073】
本発明の骨代謝改善剤は、薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)の素材として用いてもよい。薬品製剤用の原料に、本発明の骨代謝改善剤を適宜配合して製造することができる。本発明の骨代謝改善剤に配合しうる製剤原料としては、例えば、賦形剤(ブドウ糖、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等)、結合剤(蒸留水、生理食塩水、エタノール水、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(アルギン酸ナトリウム、カンテン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、アラビアゴム末、ゼラチン、エタノール等)、崩壊抑制剤(白糖、ステアリン、カカオ脂、水素添加油等)、吸収促進剤(第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等)、吸着剤(グリセリン、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、硅酸等)、滑沢剤(精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール等)などが挙げられる。
【0074】
本発明の骨代謝改善剤の投与方法は、一般的には、錠剤、丸剤、軟・硬カプセル剤、細粒剤、散剤、顆粒剤、液剤等の形態で経口投与することができるが、非経口投与であってもよい。非経口剤として投与する場合は、溶液の状態、または分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した状態で、局所組織内投与、皮内、皮下、筋肉内および静脈内注射などによることができる。また、坐剤などの形態としてもよい。更に、点眼薬として投与することができる。
【0075】
投与量は、投与方法、病状、患者の年齢等によって変化し得るが、大人では、通常、1日当たり有効成分として0.5~5000mg、子供では通常0.5~3000mg程度投与することができる。
骨代謝改善剤の配合比は、剤型によって適宜変更することが可能であるが、通常、経口または粘膜吸収により投与される場合は約0.3~15.0wt%、非経口投与による場合は、0.01~10wt%程度にするとよい。なお、投与量は種々の条件で異なるので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【実施例0076】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明によって得られる骨代謝改善剤の各種作用・効果等の確認のために説明するもので、本発明の範囲は、これらの製品および製法に限定されるものではない。
【0077】
試験材料
本実施例の試験材料のサンプルとして、フェルラ酸:オリザ油化株式会社製の「フェルラ酸」、アスタキサンチン:オリザ油化株式会社製の「アスタキサンチン‐20」、α-リポ酸:オリザ油化株式会社製の「α-リポ酸‐P」、ササクレヒトヨタケエキス:オリザ油化株式会社製の「コプリーノエキス‐P」、ハマウツボ科の植物エキス:オリザ油化株式会社製「カンカエキス‐P25」、桜エキス:オリザ油化株式会社製の「桜の花エキス‐P」、 γ-オリザノール:オリザ油化株式会社製の「γ-オリザノール」、植物加工物由来のポリアミン:オリザ油化株式会社製の「ポリアミン‐P」、フキエキス:オリザ油化株式会社製の「フキエキス‐P」、ツバメの巣エキス(比較例):オリザ油化株式会社製の「ツバメの巣エキス‐P」を用いた。
【0078】
試験例1:破骨細胞分化への効果の検討試験方法
フェルラ酸、アスタキサンチン、α-リポ酸、 コプリーノエキス、カンカエキス、桜の花エキス、 γ-オリザノール、ポリアミン、フキエキス、ツバメの巣エキスの10 mg/ml(in 10% DMSO)を原液として調製した。前駆破骨細胞として、マウス由来RAW264.7細胞を用いた。細胞増殖用培地は、α-MEMにPenicillin-Streptomycin、L-Glutamine Solution、ウシ胎仔血清(10%)を添加して使用した。破骨細胞分化誘導は、sRANKL(ORIENTAL YEAST)を前述の増殖培地に100 ng/ml(最終濃度)で添加して行った。RAW264.7細胞にRANKLと各サンプル抽出液又は、コントロールとして溶媒0.1 % DMSO(最終濃度)を添加し、破骨細胞分化誘導4日後にTRAP染色し、破骨細胞数を計測した。その結果を
図1に示す。
【0079】
結果及び試験例1における実施例の効果
図1に示さるように、ツバメの巣を除く化合物でTRAP陽性破破骨細胞数の減少が見られた。カンカ、アスタキサンチン、 α-リポ酸は20μg/mlの濃度で、TRAP陽性破骨細胞数の減少がみられた。カンカ、アスタキサンチン、 α-リポ酸は効果的に破骨細胞分化を抑制すると考えられ、これらは骨吸収阻害剤として有用であることが確認された。
【0080】
試験例2:骨芽細胞分化に対する効果の検討
試験方法
前駆骨芽細胞として、MC3T3-E1細胞を用いた。骨芽細胞の分化誘導は、α-MEMにPenicillin-Streptomycinとウシ胎仔血清(10%)を添加した培地に10 mMグリセロリン酸、 50 μg/mlアスコルビン酸、10 nMデキサメタゾンを添加して、3日おきに培地交換して行った。各サンプル又は、コントロールとして溶媒(0.1 % DMSO)存在下で分化誘導し、2週間後に10% ホルマリンで固定し、アリザリンレッドS染色とアルカリフォスファターゼ染色を行った。その結果を
図2に示す。
【0081】
結果及び試験例2における実施例の効果
図2に示されるように、αリポ酸は局所的に強くアルカリフォスファターゼの発現促進が見られた。カンカ、フェルラ酸はwell周辺にカルシウム沈着がみられた。αリポ酸、カンカ、フェルラ酸は、骨芽細胞の分化を促進し、骨の石灰化を促進させることが確認された。
【0082】
試験例3:カンカの骨芽細胞分化マーカーへの影響
試験方法
骨芽前駆細胞(MC3T3-E1)を37℃で3日間培養後、分化誘導培地(上述)に置換し、カンカ(10 ug/ml)、又はコントロール0.1% DMSO存在下で培養し、経時的(0, 2, 9, 16, 21日後)にRIPAバッファーを用いてタンパク質を抽出した。抗BSPII、抗CDH11、抗RUNX2抗体を用いて、ウェスタンブロット解析を行った。その結果を
図3に示す。
【0083】
結果及び試験例3における実施例の効果
図3に示されるように、カンカのCDHとRUNX2発現への影響は見られなかったが、骨芽細胞分化誘導後、16~21日後においてBSPIIの発現上昇が見られたことから、 カンカが骨の石灰化に重要な細胞外マトリックスタンパク質であるBSPIIの分泌を促進していることが確認された。
【0084】
試験例4:骨芽細胞分化におけるカンカのI型コラーゲン局在と発現への影響
試験方法
骨芽前駆細胞(MC3T3-E1)を37℃で3日間培養後、分化誘導培地(上述)に置換し、カンカ(10 ug/ml)、又はコントロール0.1% DMSO存在下で培養し、3日後に免疫染色を行った。核の染色にはDAPI、アクチンの染色にはファロイジンFITC、I型コラーゲンは抗I型コラーゲン抗体(二次抗体は抗マウスAlexa-594)を用いて染色を行った。その結果を
図4に示す。
【0085】
結果及び試験例4における実施例の効果
図4によれば、カンカ存在下においてアクチンファーバーの高密化と、I型コラーゲンの細胞質への顕著な蓄積が観察された。
これにより、カンカが細胞に対して擬似的メカニカルストレスを生じさせ、アクチンファイバーの高密化が起き、それに関連してI型コラーゲンの蓄積が生じたことが確認された。
【0086】
本発明による骨代謝改善剤の配合例を示す。尚、以下の配合例は本発明を限定するものではない。
配合例1:チューインガム
砂糖 53.0wt%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
骨代謝改善剤 0.5
100.0wt%
【0087】
配合例2:グミ
還元水飴 40.0wt%
グラニュー糖 20.0
ブトウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
ユズ果汁 4.0
ユズフレーバー 0.6
色素 0.02
骨代謝改善剤 1.0
100.0wt%
【0088】
配合例3:キャンディー
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
骨代謝改善剤 0.4
100.0wt%
【0089】
配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
骨代謝改善剤 0.4
香料 微量
水 残余
100.0wt%
【0090】
配合例5:清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
骨代謝改善剤 0.3
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0091】
配合例6:錠菓
砂糖 76.4wt%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
骨代謝改善剤 0.5
精製水 3.9
100.0wt%
【0092】
配合例7:ソフトカプセル
玄米胚芽油 47.0wt%
ユズ種子油 40.0
乳化剤 12.0
骨代謝改善剤 1.0
100.0wt%
【0093】
配合例8:錠剤
乳糖 54.0wt%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
骨代謝改善剤 1.0
100.0wt%
【0094】
配合例9:点眼剤
フマル酸ケトチフェン 0.7wt%
アズレンスルホン酸ナトリウム 0.2
クロモグリク酸ナトリウム 9.8
L-アスパラギン酸カリウム 8.5
アラントイン 3.0
塩酸テトラヒドロゾリン 0.5
メチル硫酸ネオスチグミン 0.05
塩化ベンザルコニウム液 0.1
グリセリン 25.0
骨代謝改善剤 1.0
pH調節剤 適量
精製水 残部
100.0wt%