(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096258
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】筋萎縮性側索硬化症における治療的介入を導くためのニューロフィラメントタンパク質
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240705BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240705BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240705BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240705BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240705BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K31/7088
C07K14/47 ZNA
C12Q1/06
C12N15/113 Z
G01N33/53 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024072811
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2021531983の分割
【原出願日】2019-12-03
(31)【優先権主張番号】62/776,253
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/840,431
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/842,063
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514198367
【氏名又は名称】バイオジェン・エムエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biogen MA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】トビー アーロ ファーガソン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル リーゼッタ グラハム
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ サン-ウー ハン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リード ヴィンセント マッキャンベル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリオ スルベック-トマシー
(57)【要約】
【課題】筋萎縮性側索硬化症における治療的介入を導くためのニューロフィラメントタンパク質の提供。
【解決手段】一態様では、本発明は、筋萎縮性側索硬化症患者の症状を緩和するための方法を提供し、患者に有効な治療薬を投与することを含み、有効な治療薬は、患者に投与される時、治療薬を投与されていない筋萎縮性側索硬化症患者のニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い、患者の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質のレベルをもたらす。一部の実施形態では、患者は、有効でない治療薬または有効な治療薬とは異なる治療薬のいずれかを、現在投与されているか、または以前に投与されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年12月6日に出願された米国仮出願第62/776,253号、2019年4月30日に出願された米国仮出願第62/840,431号、及び2019年5月2日に出願された米国仮出願第62/842,063号に対する優先権を主張する。上述の出願のそれぞれの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、生物学及び医学の分野、特に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の分野に関する。ALS(運動ニューロン疾患(MND)、またはルーゲーリック病としても知られる)は、脳及び脊髄の神経細胞に影響を与える進行性の神経変性疾患である。ALSに影響を受けた神経細胞は、主に、咀嚼、歩行、及び会話などの、随意筋運動に関与しているものである。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経路おけるニューロンの喪失及び機能不全により引き起こされ、3~5年で重度の衰弱、硬直、そして最終的に死に至る。
【0003】
散発性及び家族性の2つの異なるタイプのALSがある。米国で最も一般的な疾患形態である散発性は、全症例の90~95パーセントを占める。誰にでも、どこにでも影響を与え得る。家族性ALS(FALS)は、米国の全症例の5~10パーセントを占め、家族性ALSは、疾患が遺伝することを意味する。それらの家族では、各子孫が遺伝子変異を継承し、疾患を発症し得る可能性は、50%である。フランスの神経内科医Jean-Martin Charcotは、1869年に疾患を発見した。
【0004】
ALSに対する既知の治癒はないが、リルゾール(Rilutekとして販売)、エダラボン(Radicavaとして販売)を含む、ALSの症状を緩和する一部の治療薬がある。バクロフェン及びジアゼパムなどの追加の治療薬は、ALSにより引き起こされる痙縮を制御するために使用されるが、トリヘキシフェニジル及びグリコピロレートは、唾液を飲み込むのに問題があるALS患者を助けるために使用することができる。
【0005】
しかし、全ての治療薬が、全てのALS患者の症状を緩和するわけではなく、現在、ALSの既知の治癒はない。
【0006】
従って、依然として、患者のALSの症状を緩和する新しい治療薬を特定する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一部の実施形態では、本発明は、治療薬がその患者に有効であり、それにより、ALSの1つ以上の症状を緩和し、その患者の障害の進行を遅くするかどうかを特定するための方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、適切な治療薬が可能な限り早く開始されるように早く重度ALS疾患を特定する方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、特定の使用状況に臨床的に関連するカットポイントを提供する。一部の実施形態では、本発明は、ALS患者が投与された治療薬に応答しているかどうか(すなわち、治療薬がその患者において有効であるかどうか)を判定する方法、及びその患者の症状を緩和する治療薬でALS患者を処置する方法を提供する。
【0008】
従って、第1の態様では、本発明は、ALS患者の症状を緩和するための方法を提供し、方法は、患者に有効である有効な治療薬を投与することを含み、有効な治療薬は、患者に投与される時、有効な治療薬が投与されていないALS患者のニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い(例えば、少なくとも10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低い)患者の生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントのレベルをもたらす。一部の実施形態では、患者は、(a)有効でない治療薬、または(b)有効な治療薬とは異なる治療薬が、現在投与されているか、または以前に投与されている。
【0009】
別の態様では、本発明は、ALS患者に投与される治療薬が患者に有効であるかどうかを判定するための方法を提供し、方法は、治療薬を投与された患者から生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))を取得するか、または取得していること;ならびに、処置後レベルを得るために、患者の生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質のレベルを測定すること、または測定していること、を含み、治療薬が投与されていないALS患者のニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い(例えば、少なくとも10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低い)処置後レベルにより、治療薬が患者に有効であると特定される。一部の実施形態では、患者は、(a)有効でない治療薬、または(b)有効な治療薬とは異なる治療薬が、現在投与されているか、または以前に投与されている。
【0010】
別の態様では、本発明は、有効な治療薬を用いてALS患者を処置するための方法を提供し、方法は、(i)(a)候補治療薬の投与後の患者由来の生体試料(例えば、血液、血清、血漿、もしくは脳脊髄液(CSF))を得ること、または得ていること;及び、(b)処置後レベルを得るために、患者の生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質のレベルを測定すること、または測定していること、により候補治療薬で患者のALSの症状が緩和するかどうかを判定すること(処置後レベルが候補治療薬を投与されていないALS患者のニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い(例えば、少なくとも10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低い)場合、候補治療薬は、有効な治療薬である)、ならびに、(ii)患者に有効な治療薬を投与すること(有効な治療薬がALS患者のALSの症状を緩和させることになる)を含む。一部の実施形態では、患者は、(a)非有効な治療薬、または(b)候補治療薬とは異なる治療薬を、現在投与されているか、または以前に投与されている。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、ALS患者のALSの症状を緩和する有効な治療薬を特定するための方法を提供し、方法は、患者に候補治療薬を投与すること、及び処置後レベルを得るために、患者が候補治療薬を少なくとも5週間(例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、もしくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月間、または少なくとも1、2、3年、もしくはそれ以上)投与された後の処置された患者の生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質のレベルを測定すること、を含み、候補治療薬を投与されていないALS患者におけるニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い(例えば、少なくとも10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低い)処置後レベルにより、候補治療薬が患者のALSの症状を緩和する有効な治療薬と特定される。一部の実施形態では、患者は、(a)非有効な治療薬、または(b)候補治療薬とは異なる治療薬を、現在投与されているか、または以前に投与されている。
【0012】
種々の実施形態では、有効な治療薬の投与は、患者のALS疾患の進行を遅らせる。
【0013】
別の態様では、本発明は、方法を必要とするヒト対象の筋萎縮性側索硬化症を処置する方法を提供し、方法は、ヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定すること;ヒト対象に1用量以上の治療薬を投与すること;及び1用量以上の治療薬の投与後に、ヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定すること、を含み、第2の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルが、第1の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルよりも低い。
【0014】
一部の実施形態では、方法は、第1の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルよりも低い、第2の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定した後に、ヒト対象にさらなる用量の治療薬を投与することを必要とする。
【0015】
別の態様では、本発明は、方法を必要とするヒト対象の筋萎縮性側索硬化症を処置する方法を提供し、方法は、ヒト対象に初期用量の治療薬を投与すること(初期用量のそれぞれは、同じ量であり、投与間の同じ投与間隔で投与される);初期用量の投与前にヒト対象から得られた第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントタンパク質レベルよりも低い、初期用量の投与後にヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定すること;ならびに、ヒト対象にさらなる用量の治療薬を投与すること(さらなる用量のそれぞれは、初期用量と比較して、同じかまたは少ない量及び同じかまたは延長された投与間隔のものである)を含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、方法を必要とするヒト対象の筋萎縮性側索硬化症を処置する方法を提供し、方法は、ヒト対象に初期用量の治療薬を投与すること(初期用量のそれぞれは、同じ量であり、投与間の同じ投与間隔で投与される);初期用量の投与前にヒト対象から得られた第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントタンパク質レベル以上の、初期用量の投与後にヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質を測定すること;ならびに、ヒト対象にさらなる用量の治療薬を投与すること(さらなる用量のそれぞれは、初期用量と比較して、増加した量及び/または短縮された投与間隔のものである)を含む。
【0017】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態では、治療薬は、以下の式によるアンチセンス化合物である:
mCes Aeo Ges Geo Aes Tds Ads mCds Ads Tds Tds Tds mCds Tds Ads mCeo Aes Geo mCes Te(配列番号8の核酸塩基配列)(式中、
A=アデニン、
mC=5-メチルシトシン
G=グアニン、
T=チミン、
e=2’-O-メトキシエチルリボース修飾糖、
d=一部の実施形態では、2’-デオキシリボース糖、
s=ホスホロチオアートヌクレオシド間結合、及び
o=ホスホジエステルヌクレオシド間結合、
またはその薬学的に許容される塩)。
【0018】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態では、患者またはヒト対象は、筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子に変異を有する。一部の実施形態では、SOD1遺伝子の変異は、A4Vである。一部の実施形態では、SOD1遺伝子の変異は、A4V、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S591、V87A、T88deltaTAD、A89T、V97M、S105deltaSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rである。
【0019】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態では、ニューロフィラメントタンパク質は、ニューロフィラメント軽鎖である。
【0020】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態では、ニューロフィラメントタンパク質は、ニューロフィラメント重鎖(例えば、リン酸化ニューロフィラメント重鎖)である。
【0021】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態では、第1の生体試料及び第2の生体試料は、血液、血清、血漿、または脳脊髄液を含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
筋萎縮性側索硬化症患者の症状を緩和するための方法であって、前記患者に有効な治療薬を投与することを含み、前記有効な治療薬が、前記患者に投与される時、前記有効な治療薬を投与されていない筋萎縮性側索硬化症患者のニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い、前記患者の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質のレベルをもたらす、前記方法。
(項目2)
筋萎縮性側索硬化症患者に投与された治療薬が、前記患者に有効である有効な治療薬であるかどうかを判定するための方法であって、前記治療薬を投与された前記患者から生体試料を得ること、または得ていること;及び、処置後レベルを得るために、前記患者の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質のレベルを測定すること、または測定していること、を含み、前記治療薬を投与されていない筋萎縮性側索硬化症患者のニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い処置後レベルにより、前記治療薬が前記患者に有効であると特定される、前記方法。
(項目3)
有効な治療薬の投与により筋萎縮性側索硬化症患者の症状を緩和するための方法であって、
(a)(i)候補治療薬の投与後に、前記患者から生体試料を得ること、または得ていること、及び
(ii)処置後レベルを得るために、前記生体試料中のニューロフィラメントタンパク質のレベルを測定するか、または測定していること、
により、前記患者の筋萎縮性側索硬化症の症状が、前記候補治療薬で緩和されるかどうかを判定すること、を含み、
前記処置後レベルが前記候補治療薬を投与されていない筋萎縮性側索硬化症患者のニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い場合、前記候補治療薬が有効な治療薬であり、
さらに前記方法が、
(b)前記患者に前記有効な治療薬を投与すること、
を含み、
前記有効な治療薬の投与が、前記患者の前記筋萎縮性側索硬化症の症状を緩和する、
前記方法。
(項目4)
前記患者が、(a)非有効な治療薬、または(b)前記候補治療薬とは異なる治療薬、を現在投与されているか、または以前に投与されている、項目1、2、または3に記載の方法。
(項目5)
有効な治療薬の投与により筋萎縮性側索硬化症患者の症状を緩和するための方法であって、前記患者の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質のレベルを測定すること、を含み、前記患者が、(a)有効でない治療薬、または(b)前記有効な治療薬とは異なる治療薬である第1の治療薬を現在投与されており、さらに前記方法が、前記レベルが前記有効な治療薬を投与されていない筋萎縮性側索硬化症患者のニューロフィラメントタンパク質のレベル以上である場合に、前記患者への前記第1の治療薬の投与を停止すること及び前記患者への前記有効な治療薬の投与を開始すること、を含む、前記方法。
(項目6)
前記有効な治療薬を投与された前記患者の前記生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質の前記処置後レベルが、前記有効な治療薬を投与されていない患者の前記生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質の前記レベルよりも少なくとも10%低い、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
少なくとも3ヶ月間、前記有効な治療薬を投与された前記患者の前記生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質の前記処置後レベルが、前記有効な治療薬を投与されていない患者の前記生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質の前記レベルよりも少なくとも10%低い、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
少なくとも6ヶ月間、前記有効な治療薬を投与された前記患者の前記生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質の前記レベルが、前記有効な治療薬を投与されていない患者の前記生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質の前記レベルよりも少なくとも10%低い、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
少なくとも12ヶ月間、前記有効な治療薬を投与された前記患者の前記生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質の前記レベルが、前記有効な治療薬を投与されていない患者の前記生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質の前記レベルよりも少なくとも10%低い、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記有効な治療薬の前記投与が、前記患者の筋萎縮性側索硬化症の進行を遅らせる、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液を含む、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
筋萎縮性側索硬化症の処置を必要とするヒト対象の前記筋萎縮性側索硬化症を処置する方法あって、
前記ヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定すること、
前記ヒト対象に1用量以上の治療薬を投与すること、及び
前記1用量以上の前記治療薬の投与後に、前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定すること、を含み、前記第2の生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質レベルが、前記第1の生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質レベルよりも低い、
前記方法。
(項目13)
さらに、前記第1の生体試料中の前記ニューロフィラメントタンパク質レベルよりも低い、前記第2の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定した後に、前記ヒト対象にさらなる用量の前記治療薬を投与することを含む、項目12に記載の方法。(項目14)
筋萎縮性側索硬化症の処置を必要とするヒト対象の前記筋萎縮性側索硬化症を処置する方法あって、
前記ヒト対象に初期用量の治療薬を投与することを含み、前記初期用量のそれぞれが、同じ量であり、投与間の同じ投与間隔で投与され、
前記方法が、前記初期用量の投与前に前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントタンパク質レベルよりも低い、前記初期用量の投与後に前記ヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定すること、及び
前記ヒト対象に、さらなる用量の前記治療薬を投与すること、を含み、前記さらなる用量のそれぞれが、前記初期用量と比較して、同じかまたはより少ない量及び同じかまたは延長された投与間隔のものである、
前記方法。
(項目15)
方法を必要とするヒト対象の筋萎縮性側索硬化症を処置する方法あって、
前記ヒト対象に初期用量の治療薬を投与することを含み、前記初期用量のそれぞれが、同じ量であり、投与間の同じ投与間隔で投与され、
さらに前記方法が、前記初期用量の投与前に前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントタンパク質レベル以上の、前記初期用量の投与後に前記ヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定すること、及び
前記ヒト対象に、さらなる用量の前記治療薬を投与すること、を含み、前記さらなる用量のそれぞれが、前記初期用量と比較して、増加した量及び/または短縮された投与間隔のものである、
前記方法。
(項目16)
前記治療薬が、以下の式によるアンチセンス化合物である、項目12~15のいずれか1項に記載の方法:
mCes Aeo Ges Geo Aes Tds Ads mCds Ads Tds Tds Tds mCds Tds Ads mCeo Aes Geo mCes
Te(配列番号8の核酸塩基配列)(式中、
A=アデニン、
mC=5-メチルシトシン
G=グアニン、
T=チミン、
e=2’-O-メトキシエチルリボース修飾糖、
d=2’-デオキシリボース糖、
s=ホスホロチオアートヌクレオシド間結合、及び
o=ホスホジエステルヌクレオシド間結合、
またはその薬学的に許容される塩)。
(項目17)
前記患者または前記ヒト対象が、筋萎縮性側索硬化症と関連したスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子に変異を有する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。(項目18)
前記SOD1遺伝子における前記変異が、A4Vである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記SOD1遺伝子における前記変異が、A4V、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S591、V87A、T88deltaTAD、A89T、V97M、S105deltaSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rである、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記ニューロフィラメントタンパク質が、ニューロフィラメント軽鎖である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記ニューロフィラメントタンパク質が、ニューロフィラメント重鎖である、項目1~19のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記ニューロフィラメント重鎖が、リン酸化ニューロフィラメント重鎖である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記第1の生体試料及び前記第2の生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液を含む、項目12~22のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】血漿中ニューロフィラメント重鎖の縦方向の低下を示す折れ線グラフであり、平均低下は、1ヶ月当たり1.8%である。
【
図2】ニューロフィラメント重鎖レベルの上位三分位、中位三分位、及び下位三分位の患者の処置群による血漿中ニューロフィラメント重鎖レベルの縦方向の変化を示す折れ線グラフである。各三分位では、プラセボ処置群が上側の線であり、デクスプラミペキソール処置群が下側の線である。
【
図3】SOD1活性ASOまたはSOD1不活性ASOで処置されたSOD1
G93Aマウスにおける神経筋接合部(NMJ)の喪失を比較する折れ線グラフである。
【
図4】SOD1活性ASOまたはSOD1不活性ASOで処置されたSOD1
G93Aマウスの血清中のリン酸化ニューロフィラメント重鎖レベルを比較する折れ線グラフである。
【
図5】様々なASO1投与コホートにおけるCSF中SOD1タンパク質濃度のベースラインからの倍数変化を示すグラフである。
【
図6A】プラセボに対してASO1 100mgで処置された急速な進行者である患者及びプラセボに対してASO1 100mgで処置された全体的なSOD1変異(進行の速い及び他のSOD1変異)を有する患者のALSFRS-Rにおける、ベースラインからの平均変化を示すグラフである。
【
図6B】プラセボに対してASO1 100mgで処置された急速な進行者である患者及びプラセボに対してASO1 100mgで処置された全体的なSOD1変異(進行の速い及び他のSOD1変異)を有する患者のSVC(%予測)における、ベースラインからの平均変化を示すグラフである。
【
図6C】プラセボに対してASO1 100mgで処置された急速な進行者であった患者における、85日目のCSF中pNfHにおけるベースラインに対する幾何平均比を示すグラフである。
【
図7A】ASO1 100mgまたはプラセボを用いる処置の過程の血漿中のpNfHレベルを示すグラフである。
【
図7B】ASO1 100mgまたはプラセボを用いる処置の過程の血漿中のNfLレベルを示すグラフである。
【
図7C】ASO1 100mgまたはプラセボを用いる処置の過程のCSF中のpNfHレベルを示すグラフである。
【
図7D】ASO1 100mgまたはプラセボを用いる処置の過程のCSF中のNfLレベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一部の実施形態では、本発明は、ALS患者が治療薬に応答するかどうかを判定する方法、及びその患者の症状を緩和することになる治療薬でALS患者を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、患者は、ヒトである。
【0024】
本明細書で言及される刊行物(特許刊行物を含む)、ウェブサイト、会社名、及び科学文献は、当業者らが利用可能である知識を確立し、それぞれが参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されるのと同じ程度に、全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用されるあらゆる参考文献及び本明細書の特定の教示間のあらゆる矛盾は、後者を支持して解決されるものとする。
【0025】
本明細書に示される全てのアミノ酸配列は、別途指示のない限り、アミノ(N)からカルボキシ(C)の方向にある。本明細書に示される全てのヌクレオチド配列は、別途指示のない限り、5’から3’の方向にある。示されたアミノ酸配列に関して、含むことまたは含むことが使用される場合、1つ以上のアミノ酸残基が、示されたアミノ酸配列のN’末端に、示されたアミノ酸配列のC’末端に、または両端に出現し得るが、1つ以上のアミノ酸残基が、示されたアミノ酸配列中の所定のアミノ酸残基間に出現しないことを意味する。示されたヌクレオチド配列に関して、含むまたは含むことが使用される場合、1つ以上のヌクレオチド残基が、示されたヌクレオチド配列の5’末端に、示されたヌクレオチド配列の3’末端に、または両端に出現し得るが、1つ以上のヌクレオチド残基が、示されたヌクレオチド配列の所定のヌクレオチド残基間に出現しないことを意味する。
【0026】
明細書及び特許請求の範囲で定義または使用される用語は、別途文脈が要求しない限り、示された意味を有するものとする。本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、別途定義のない限り、本発明の属する当業者が一般に理解する意味を有する。語または表現の表現当該技術分野で理解される定義及び本明細書で具体的に教示される語または表現の定義間の矛盾は、後者を支持して解決されるものとする。本明細書で使用される場合、以下の用語は、示された意味を有する。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明確に示さない限り、それらが指す用語の複数形も具体的に包含する。「約」という用語は、本明細書では、おおよそ、その領域に、おおまかに、またはあたりに、を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、それは、記載された数値の上下に境界を拡張することにより、その範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、記載された値の上下の数値を20%の変動で修正するために使用される。
【0027】
ALSは、脳及び脊髄の神経細胞に影響を及ぼす進行性の神経変性疾患である。ALSでは、上位運動ニューロン(脳内の運動ニューロン)及び下位運動ニューロン(脊髄内の運動ニューロン及び脳の運動核への運動ニューロン)はともに、変性または死滅し、筋肉へのメッセージの送信を停止させる。機能することができずに、筋肉が徐々に弱まり、(線維束攣縮を経て)痙攣し始め、(萎縮を経て)衰弱する。最終的に、脳は、随意運動を開始及び制御する能力を喪失する。衰弱は不可避で、診断後平均して2~5年で、通常は、呼吸不全による、死亡が発生する。患者の大多数は、散発性ALSに罹患しているが、患者のごく一部である約2%は、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の様々な変異により引き起こされる遺伝性または家族性ALSを有する。1993年の最初の発見以来、180を超えるSOD1変異がこの形態のALS(SOD1 ALSと呼ばれる)を引き起こすことが報告されている。(The Amyotrophic Lateral Sclerosis Online Genetics Database(ALSoD).Institute of Psychiatry,Psychology &
Neuroscience.Published 2015;Rosen,Nature,364(6435):362(1993))。個々の変異に対する疾患の進行は様々であり、最も重篤な変異での生存期間は15ヶ月未満である。変異がSOD1 ALSを引き起こす機序は知られていないが、説得力のあるデータは、SOD1活性の喪失ではなく、毒性の機能獲得が、運動ニューロン死をもたらす事象のカスケードを開始するトリガーであることを示唆する(Bruijn et al.,Science,281(5384):1851-4(1998))。
【0028】
可溶性SOD1酵素(Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼとしても知られる)は、スーパーオキシド過酸化水素(H2O2)への不均化を触媒することにより、生体分子の酸化的損傷に対する防御を提供するスーパーオキシドジスムターゼの1つである(Fridovich,Annu.Rev.Biochem.,64:97-112(1995))。スーパーオキシドアニオン(O2-)は、主にミトコンドリアの酸化的リン酸化のエラーにより生成される潜在的に有害な細胞副産物である(Turrens,J.Physiol.,552:335-344(2003))。SOD1遺伝子の変異は、上位及び下位運動ニューロンの選択的変性を特徴とする障害である優性遺伝型のALSと関連する(Rowland,N.Engl.J.Med.,2001,344:1688-1700(2001))。家族性ALS及びSOD1遺伝子のミスセンス変異間には、密接な遺伝的連鎖がある(Rosen,Nature,362:59-62(1993))。変異型SOD1の毒性は、ALSの病因に関与し得るプロセスである、活性酵素からの核の保護を低減(核内の機能喪失)させる、初期のミスフォールディングから生じる(機能の獲得)と考えられる(Sau,Hum.Mol.Genet.,16:1604-1618(2007))。ALSの運動ニューロンの進行性変性は、最終的には、死に至る。運動ニューロンが死滅する場合、筋運動を開始及び制御する脳の能力が失われる。随意筋動作が徐々に影響を受け、疾患の後期の患者は、完全に麻痺する可能性がある。
【0029】
ALSの初期症状には、通常、筋力低下または硬直が含まれる。徐々に、随意的制御下の全ての筋肉が影響を受け、個体は、力ならびに話す能力、食べる能力、移動する能力、及び呼吸する能力さえも喪失する。ALSを有するほとんどの者は、通常、症状が最初に現れた時から3~5年以内に、呼吸不全で死亡する。しかし、ALSを有する者の約10パーセントは、10年以上生存している。
【0030】
ALSの治癒はなく、ALS患者への投与が承認されている治療薬があるが、あらゆるALS患者が、あらゆる治療薬に応答するわけではない。従って、ALSの処置は、全てのALS患者が同じ治療薬に応答するわけではないので、困難であり、特定の患者のために正しい治療薬を選択することは、困難であり得る。現在、特定の患者に使用される特定の治療薬を選択するのは、保健医療提供者次第である。保健医療提供者(例えば、医師)は、現在、特定の患者のALS症状の緩和に基づいて、その特定の患者の処置のために特定の治療薬を選択するが、選択された特定の治療薬が、実際に、その特定の患者のALSの症状を緩和する確実性はない。
【0031】
治療薬が特定の患者のALS症状を緩和するかどうかを判定するために、治療薬は、治療薬を投与されていない患者(例えば、未処置の患者または処置前の患者)と比較して、ALS疾患の進行を遅らせ、及び/または治療薬を投与された患者のALSの症状を低減する能力により判断される。
【0032】
現在、ALSの症状は、筋力などの機能試験で測定される。一般に使用される1つのスケールは、ALS機能評価尺度(ALSFRSまたはALFRS-R)である。評価は、一般に、言語、唾液分泌、嚥下、書字、摂食動作、着衣及び衛生、寝床での動作、歩行、階段をのぼる、呼吸困難、起座呼吸、呼吸不全などのカテゴリーに基づいている。一部の場合では、ALS診断からの年数が考慮される。12のカテゴリーのそれぞれは、0~4のスケールで患者によりランク付けされ、0が最悪(例えば、言語カテゴリーの会話の喪失)であり、4が最高(例えば、言語カテゴリーの正常な会話)である。これらの要因から、ALSFRS-R評価を計算することができ、0が最悪(すなわち、最も罹患している)であり、40が最高(すなわち、症状が最も少ない)である。
【0033】
徒手筋力検査(MMT)は、動き、収縮、運動の範囲、及び圧力に対する位置を保持する能力のような基準を試験する個々の筋肉に基づいて使用することもできる。評価範囲は、以下のように0~5である。
グレード0:収縮または筋運動はない。
グレード1:収縮の痕跡があるが、関節運動はない。
グレード2:重力を排除した関節運動。
グレード3:重力に逆らう運動があるが、さらなる抵抗に逆らう運動はない。
グレード4:通常よりも強度が低い外部抵抗に逆らう運動。
グレード5:通常の強度。
【0034】
一部の実施形態では、治療薬は、少なくとも3ヶ月間治療薬を投与した後に、患者のALSFRS-Rスコアが、治療薬の投与の開始前の患者のALSFRS-Rスコアと比較して、同じままか、増加するか、または1.0以下減少する場合、特定の患者のALSの症状を緩和する(すなわち、その患者において有効である)と言われる。例えば、治療薬は、投与前に、患者が初期ALSFRS-Rスコア20を有し、治療薬を用いる処置の3ヶ月後に、患者のALSFRS-Rスコアは、20のままであるか、または(例えば、25もしくは30に)増加するか、または19に減少する場合、ALSの症状を緩和すると言われる。一部の実施形態では、治療薬は、少なくとも6ヶ月間の治療薬の投与後に、患者のALSFRS-Rスコアが、治療薬の投与の開始前の患者のALSFRS-Rスコアと比較して、同じままであるか、増加するか、または1.0以下減少する場合に、ALSの症状を緩和すると言われる。一部の実施形態では、治療薬は、少なくとも12ヶ月間の治療薬の投与後に、患者のALSFRS-Rスコアが、治療薬の投与の開始前の患者のALSFRS-Rスコアと比較して、同じままであるか、増加するか、または1.0以下減少する場合に、ALSの症状を緩和すると言われる。
【0035】
ALSの症状及びその重症度を評価するために使用することができる別の機能試験は、肺活量(SVC)試験である。SVCは、強制的または迅速な努力なしに最大の吸気後の弱い完全な呼気で測定された気体の量を表示する肺活量測定試験である。
【0036】
ALS症状及びその重症度を評価するために使用することができる追加の機能試験は、ハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)試験である。
【0037】
ALSFRS-R試験などの機能試験は、非侵襲的であるが、実施に時間がかかり、多くの場合、数ヶ月、場合により、数年後にのみ変化を示す。さらに、一度機能が低下すると、復帰するのが難しいことがある。従って、ALSの疾患の進行は、好ましくは、機能低下を表す前に、物理的変化を追跡し続けることにより、検出することもできる。
【0038】
従って、機能試験を実施する前にすでに発生している機能の喪失に基づかない特定の患者に有効である治療薬を特定する方法を見つける必要がある。
【0039】
ニューロフィラメント(NF)は、ニューロンの細胞質にみられるタンパク質である。それらは、直径が約10nm及び長さが数マイクロメートルを測定するタンパク質ポリマーである。微小管及びマイクロフィラメントと一緒に、それらは、神経細胞骨格を形成する。ニューロフィラメントは、ニューロフィラメントタンパク質L(低分子量、NFL、ニューロフィラメント軽鎖とも呼ばれる)、ニューロフィラメントタンパク質M(中分子量、NFM、ニューロフィラメント中鎖とも呼ばれる)、及びニューロフィラメントタンパク質H(高分子量、NFH、ニューロフィラメント重鎖とも呼ばれる)を含む様々なタンパク質からなる。哺乳動物の神経系のニューロフィラメントは、タンパク質インターネキシンも含有し、末梢神経系におけるニューロフィラメントは、タンパク質末梢神経系も含有し得る。
【0040】
従って、本明細書で使用される場合、「ニューロフィラメントタンパク質」は、ニューロフィラメントプロテインL(低分子量、NFL、ニューロフィラメント軽鎖とも呼ばれる)、ニューロフィラメントタンパク質M(中分子量;NFM、ニューロフィラメント中鎖とも呼ばれる)、ニューロフィラメントタンパク質H(高分子量;NFH、ニューロフィラメント重鎖とも呼ばれる)、インターネキシン及びペリフェリンを意味する。ヒトニューロフィラメント軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号1及びJulien et al.,Biochimica et Biophysica Acta 909:10-20,1987で提供される(NCBI参照配列:NP_006149.2及びNCBI参照配列:NG_008492.1も参照のこと)。ヒトニューロフィラメント重鎖のアミノ酸配列は、配列番号2及び配列番号3、ならびにLees et al.,EMBO J.7(7):1947-1955,1988で提供される(NCBI参照配列:NG_008404.1及びNCBI参照配列:NP_066554.2も参照のこと)。ヒトニューロフィラメント中鎖のアミノ酸配列は、配列番号4及び配列番号5、ならびにMyers et al.,EMBO J.6(6):1617-1626,1987で提供される。配列番号6は、ヒトインターネキシンタンパク質の配列を提供する。配列番号7は、ヒトペリフェリンタンパク質の配列を提供する。
【0041】
ニューロンにおけるそれらの特定の構造的役割のために、ニューロフィラメントは、ニューロンの完全性を評価するために使用することができる。ニューロンが損傷している場合、ニューロフィラメントが損傷したニューロンから漏れ、脳脊髄液(CSF)またはさらに血液(例えば、血液の血清もしくは血漿成分)中に見出すことができる。神経変性疾患患者は、脳脊髄液及び血漿中で高レベルのニューロフィラメントを呈する(Yuan A,et al.Cold Spring Harb Perspect Biol.2017;9(4).2.Weydt P,et al.Ann Neurol2016;79(1):152-158を参照のこと)。これは、変性ニューロンの軸索内容物の細胞外放出を表し得る。実に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の観察データ及び大部分の断面データでは、ニューロフィラメントレベルと生存率及び筋萎縮性側索硬化症機能評価尺度-改訂(ALSFRS-R)の低下で示されるように、疾患重症度の間の相関が実証されている(McCombe PA,et al.J Neurol Sci.2015;353(1-2):122-129;Boylan KB,et al.Neurol Neurosurg Psychiatry.2013;84(4):467-472を参照のこと)。
【0042】
一部の実施形態では、ニューロフィラメントタンパク質は、ニューロフィラメント軽鎖である。一部の実施形態では、ニューロフィラメント軽鎖は、リン酸化されている。血清中のニューロフィラメント軽鎖を測定するためのアッセイが記載されている(例えば、Gaiottino et al.,PLoS ONE 8:e75091,2013;Kuhle et al.,J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry 86(3):273-279, 2014.を参照のこと)。例えば、患者由来の血清は、室温、1000gで10分間遠心分離し、収集後2時間以内に-80℃で保存する。ニューロフィラメント軽鎖(NfL)(例えば、血清中NfL)濃度は、すぐに使える酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)希釈剤(Mabtech AB, Nacka
Strand, Sweden)、またはGaiottino et al.,PLoS ONE 8:e75091,2013に記載のエレクトロケミルミネッセンス(ECL)イムノアッセイ、またはDisanto et al.,Ann.Neurol.81(6):857-870,2017に記載の単一分子アレイ(SIMOA)法を使用して、(例えば、重複して)測定することができる。3つのアッセイ法は、Kuhl et
al.,Clinical Chemistry and Laboratory Medicine 54(10):1655-1661,2016に比較されている。SIMOAアッセイ(特に、Simoa NF-light Advantageキットと呼ばれる)は、Quanterix Corp.(Lexington, MA, USA)から市販されている。
【0043】
ニューロフィラメントタンパク質の中鎖及び/または重鎖は、本発明の一部の実施形態に従って測定することもできる。
【0044】
例えば、SimplePlexプラットフォームは、リン酸化Nf重鎖(pNf-H)のレベルを測定するために使用することができる。SimplePlexは、Protein Simple(San Jose, CA, USA)から市販されている(Dysinger M,et al.J Immunol Methods.451:1-10,2017を参照のこと)。一部の実施形態では、ニューロフィラメント重鎖は、リン酸化されている。
【0045】
本明細書に記載されるように、CSF及び血清中のニューロフィラメント軽鎖レベルの上昇が、MRIで観察される物理的損傷と相関すると記載されているが、血清及び/またはCSF中のニューロフィラメントタンパク質のレベルの上昇(または増加)がALS患者の将来の身体的損傷または機能喪失を予測し得ることを、本発明者らは発見している。従って、特定の治療薬を服用している患者の血清(またはCSF)中のニューロフィラメントタンパク質のレベルを追跡することにより、医療提供者は、患者が機能喪失及び/または身体的損傷を示す前に、患者が治療薬に応答しているかどうか(すなわち、治療薬がその患者の症状を緩和するかどうか)を予測し得る。
【0046】
一態様では、本発明は、ALS患者のALS症状を緩和するための方法を提供し、方法は、(a)治療薬を投与されていない患者、または、(b)治療薬の投与前の患者、の生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質のレベルと比較して、患者の生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質のレベルを維持または低減する治療薬を投与することを含む。
【0047】
別の態様では、本発明は、候補治療薬が特定の患者に有効であり、それにより、その候補治療薬を用いる処置の前の患者におけるレベルと比較して、候補治療薬が患者におけるニューロフィラメントタンパク質(例えば、血清またはCSF中ニューロフィラメントタンパク質)のレベルを低減させることができるかどうかを判定することにより、その患者のALS疾患の症状を緩和するのに有用であるかどうかを判定する方法を提供する。候補治療薬が、候補治療薬を用いる処置の前の患者におけるレベルと比較して、患者におけるニューロフィラメントタンパク質(例えば、血清またはCSF中ニューロフィラメント)のレベルを低減させることができる場合、その候補治療薬は、その患者に有効であると特定される。
【0048】
別の態様において、本発明は、ALS患者の症状を緩和するための方法を提供し、方法は、患者に有効である有効な治療薬を投与することを含み、有効な治療薬は、患者に投与される時、血清1ml当たり16pgの血清中ニューロフィラメント軽鎖に相当する量よりも少ないまたは治療薬を投与されていない筋萎縮性側索硬化症患者におけるニューロフィラメントタンパク質のレベルよりも低い、患者の血清中のニューロフィラメントタンパク質のレベルをもたらす。一部の実施形態では、患者は、有効でない治療薬または有効な治療薬とは異なる治療薬のいずれかを、現在投与されているか、または以前に投与されている。
【0049】
一部の実施形態では、ニューロフィラメントタンパク質は、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)である。一部の実施形態では、ニューロフィラメントタンパク質は、ニューロフィラメント中鎖(NfM)である。一部の実施形態では、ニューロフィラメントタンパク質は、ニューロフィラメント重鎖(NfH)(例えば、リン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNfH))である。一部の実施形態では、ニューロフィラメントタンパク質は、ヒトタンパク質である。一部の実施形態では、生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質のレベル(すなわち、量または数量)が測定される。
【0050】
ニューロフィラメントタンパク質(例えば、本明細書に記載のニューロフィラメントタンパク質、例えば、NfLまたはNfH、例えば、pNfH)のレベルが、増加する(すなわち、上昇する)、それと同じ(もしくはそれと等しい)、または減少する(すなわち、低減する)ものとして、記載される場合、そのレベルが、同種の分泌液から同じアッセイ法で得られたレベルと比較されていることが理解されるであろう。例えば、Simoaアッセイを使用して、患者の血清から得られた血清中ニューロフィラメント軽鎖(sNfL)の処置後レベルは、Simoaアッセイを使用して、患者由来のsNfLのベースライン(すなわち、処置の開始前)レベルと比較されることになるか、または、処置されていない患者の血清においてSimoaアッセイで測定されるsNfLのレベルと比較されることになる。ニューロフィラメントタンパク質の「レベル」は、いかなる数量でも、例えば、生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))1mL当たりの、ニューロフィラメントタンパク質(例えば、ニューロフィラメント軽鎖)のピコグラムで、記載することができることも理解されるであろう。
【0051】
「治療薬」とは、単に、筋萎縮性側索硬化症を処置するために使用され得る薬物または薬剤を意味する。治療薬は、実際に疾患を治癒する必要性はなく、現在、筋萎縮性側索硬化症のための既知の治癒は存在しない。従って、治療薬で「処置」されている患者は、単に、患者が、その疾患に有効であり得る治療薬を投与されていることを意味する。この治療薬は、全てのALS患者に有効でなくてもよい。むしろ、ALSの治療薬は、それらを投与すると何人かの患者のALSの症状を低減させ、それにより、治療薬に応答するALS患者の生活の質の改善及び/または神経筋の機能の改善が可能になるので、疾患修飾療法または疾患修飾薬物(DMTまたはDMD)と呼ばれる場合がある。現在の治療薬は、有効である場合、ALS疾患の進行を遅らせ、及び/または応答する患者の症状を緩和する。
【0052】
従って、「有効」とは、治療薬がALS患者の症状を低減することを意味する。
【0053】
米国では、ALSを処置するための、米国食品医薬品局(FDA)により承認された2つの治療薬がある。
【0054】
最初に、リルゾール(Rilutekとして販売;Condordia)は、経口摂取可能な丸剤として投与され、ALSを有する一部の者に疾患の進行を遅らせるようにみえる。その正確な機序は、不明であるが、グルタミン酸が、多くの場合、ALSを有する者においてより高いレベルで存在するので、脳内のグルタミン酸のレベルを低減し得る。しかし、リルゾールの投与は、めまい、胃腸の状態、及び肝機能の変化などの副作用を引き起こし得る。
【0055】
2番目のFDA承認治療薬であるエダラボン(Radicavaとして販売;Mitsubishi)は、6ヶ月の期間にわたる投与が、ALSと関連する日常機能の低下の低減をもたらしたことを、臨床試験の証拠が示した後に、承認された。(静脈内投与される)エダラボンの副作用には、挫傷、歩行障害、蕁麻疹性丘疹、腫れ、及び息切れが含まれる。
【0056】
依然として開発中であり及び/または米国外で承認される、ALSを処置し及び/またはALS症状を緩和するための追加の新種の治療薬には、Neuronata-R(Corestem)、KPT-350(Biogen/Karyopharm Therapeutics)、CNS10-NPC-GDNF(Svedsen Lab)、Cu(II)ATSM(ProCypra Therapeutics)、SOD1タンパク質のレベルを標的とするBIIB067(Biogen/Ionis)、GM604(Genervon Biopharmaceuticals)、本明細書に記載のASO(例えば、ASO1、ASO2、またはASO3)、及びUS2017/0037410A1(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のASOが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、小分子、抗体もしくはそのフラグメント、核酸分子(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、アプタマー、小ヘアピンRNA、もしくは小干渉RNA)、間葉系幹細胞、グリア制限前駆細胞、及び/またはウイルスベクター(例えば、アデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルス)を含む。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、抗体もしくはそのフラグメント、及び/または核酸分子(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、アプタマー、小ヘアピンRNA、または小干渉RNA)のうちの1つ以上を含むかまたはコードする。
【0058】
一部の実施形態では、治療薬は、ALSと関連する1つ以上の遺伝子変異(複数可)を標的とする。一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、SOD1遺伝子(例えば、変異SOD1遺伝子)、OD1 RNA(例えば、変異SOD1 RNA)、及び/またはSOD1ポリペプチド(例えば、変異SOD1ポリペプチド)を標的とする(例えば、それに結合し、それを分解させ、及び/またはそのレベルを減少させる)分子を含む。実施形態では、変異SOD1遺伝子、RNA、またはポリペプチドは、ALSと関連する。実施形態では、治療薬は、SOD1に対するマイクロRNA、例えば、VY-SOD101(Voyager Therapeutics)を含む。一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2018282732A1に記載されるSOD1を標的とする核酸を含む。一部の実施形態では、治療薬は、SOD1遺伝子(例えば、変異SOD1遺伝子)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0059】
一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、第9染色体オープンリーディングフレーム72(C9orf72)ヘキサヌクレオチド伸長ポリヌクレオチド(例えば、DNAもしくはRNA)、ならびに/またはC9ORF72ジペプチドリピート(DPR)ポリペプチドを標的とする(例えば、結合し、分解させ、及び/またはレベルを減少させる)分子を含む。一部の実施形態では、治療薬は、例えば、Martier et al.Mol.Therapy Nuc.Acids 14(2019):P593-608に記載されるような、C9orf72を標的とするマイクロRNAを含む。
【0060】
一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、リルゾール、エダラボン、銅-ATSM、マシチニブ、チラセムチブ、NP001、ピリメタミン、メコバラミン、イブジラスト、メキシレチン、GDC-0134、メマンチン、EPI-589、トシリズマブ、RNS-60、ピモジド、ODM-109、エゾガビン、アミリックス、または低用量IL-2のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、抗C9orf72アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、Sareen et al.Sci.Transl.Med.2013;5(208):208ra149に記載);BIIB067(例えば、臨床試験識別番号NCT02623699に記載);AS0816(例えば、Sareen
et al Sci.Transl Med.2013;5(208):208ra149に記載);ISIS SMNRx、ISIS 333611(例えば、Miller
et al.Lancet Neurol.2013;12(5):435-42に記載);またはASO061(例えば、Sareen et al.Sci.Transl.Med.2013;5(208):208ra149に記載)のうちの1つ以上を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0061】
一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、ベタメゾン(例えば、臨床試験政府識別子:NCT03707795に記載);MCI-186(例えば、臨床試験政府識別子:NCT01492686に記載);ONO-2506PO(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00694941に記載);TRO19622 NCT01285583;E0302(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00444613に記載);AP-101(例えば、臨床試験政府識別子:NCT03981536に記載);ラサギリン(例えば、臨床試験政府識別子:NCT01232738に記載);TCH346(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00230074に記載);NP001(例えば、臨床試験政府識別子:NCT01281631に記載);Triumeq(例えば、臨床試験政府識別子:NCT02868580に記載);マシチニブ(例えば、臨床試験政府識別子:NCT02588677に記載);顆粒球コロニー刺激因子(例えば、臨床試験政府識別子:NCT01825551に記載);CK-2127107(例えば、臨床試験政府識別子:NCT03160898に記載);チラセムチブ(例えば、臨床試験政府識別子:NCT02936635に記載);Gilenya(例えば、臨床試験政府識別子:NCT01786174に記載);アリモクロモル(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00706147に記載);ピモジド(例えば、臨床試験政府識別子:NCT03272503に記載);Nuedexta(例えば、臨床試験政府識別子:NCT01806857に記載);KNS-760704(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00931944に記載);MN-166(例えば、臨床試験政府識別子:NCT04057898に記載);SB-509(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00748501に記載);KNS-760704(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00647296に記載);オレソキシム(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00868166に記載);レボシメンダン(例えば、臨床試験政府識別子:NCT03505021に記載);メマンチン(例えば、臨床試験政府識別子:NCT00353665に記載);BIIB067(例えば、臨床試験政府識別子:NCT02623699に記載);BIIB078(例えば、臨床試験政府識別子:NCT03626012に記載);またはBIIB100(例えば、臨床試験政府識別子:NCT03945279)のうちの1つ以上を含む。
【0062】
一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、例えば、WO2019032607A1;WO2015/153800;WO2003/000707;WO2014/062691;WO2015/054676;WO2016/168592;WO2014/062686;WO2014/062736;WO2017/079291;WO2017/180835;WO2015/057727;WO2015/057738;WO2016/112132;WO2016/167780;WO2015/143246;WO2015/143245;WO2017/117496(これらのそれぞれは、全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0063】
一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2013/170068に記載される小分子を含む。
【0064】
一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、例えば、WO2016/050822及びWO2019/210054(これらの両方は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような、ポリペプチド、例えば、抗体またはそのフラグメントを含む。一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、以下の抗体:全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2016/050822に記載されるようなNI-308.18F7、NI-308.15O7、NI-308.28G1、NI-308.45C2、NI.308.24E11、NI-308.5G2、NI-308.46E9、NI308-6B11、NI-308.46F8、NI-308.4M1、NI-308.12A3、またはNI-308.16C10のうちの1つの、可変重鎖アミノ酸配列、可変軽鎖アミノ酸配列、及び/または相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはそのフラグメントを含む。一部の実施形態では、治療薬、例えば、候補及び/または有効なALS治療薬は、本明細書に参照により組み込まれる、WO2019/210054に記載されるような配列番号40、44、45、46、47、48、49、及び/もしくは50、ならびに/またはWO2019/210054の表14の配列から選択される可変重鎖アミノ酸配列、可変軽鎖アミノ酸配列、及び/または相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはそのフラグメントを含む。
【0065】
「投与」または「投与すること」は、患者への治療薬の送達を意味する。投与経路は、限定されないが、経口、直腸、静脈内、髄腔内、腹腔内、筋肉内、皮下、経鼻、局所、非経口、及び舌下を含む任意の手段によるものであり得る。治療薬のための投薬量及び投与スケジュールは、規制機関(例えば、米国食品医薬品局または欧州医薬品庁)のラベルによるものであり得る。治療薬を投与される患者は、患者が実際に投与された治療薬に応答するかどうかに関わらず、その治療薬で処置されていると言われてもよい。患者が投与された治療薬に応答しない場合、その治療薬は、その患者には有効でない。
【0066】
「ALSの症状」とは、ALS患者が経験し得る症状のいずれかを意味する。ALSの症状には、筋力低下、協調の問題、筋肉の硬直、筋肉の喪失、筋痙攣、過度の反射、発話困難、声帯の痙攣、嚥下困難、流涎症、抑制欠如、軽度認知障害、重度の便秘、重度の意図しない体重減少、息切れ、足を上げるのが困難、及び筋萎縮性側索硬化症の個体が経験するその他の症状が含まれるが、これらに限定されない。誤解を避けるために、生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質(例えば、ニューロフィラメント軽鎖またはニューロフィラメント重鎖)は、ALSの症状ではない。従って、ALS患者のALSのあらゆる症状を低減させることなく、単に、生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質を低減させる治療薬は、その患者に有効でない。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ALSの症状を緩和する」とは、治療薬が患者のALS疾患の症状を低減し、及び/またはALS疾患の進行を遅らせることを意味する。ALS症状が治療薬を投与することにより緩和される患者は、示された治療薬に応答する、または反応すると言われる。例えば、患者のALSの症状を緩和する治療薬は、治療薬の投与時に、治療薬で処置されていないALS患者または治療薬を用いる処置の前のALS患者と同じ、またはそれより高い、またはそれより1.0未満小さいALS機能評価尺度(ALSFRS及びALFRS-R)をもたらす。治療薬が、その患者に治療薬を投与した時に、ALSの症状を緩和することができる場合、治療薬は、その患者に有効であると言われる。
【0068】
「治療薬を投与されていない」患者への言及は、単に、示された治療薬で処置されていない患者(例えば、ALS患者)であることに留意すべきである。従って、この患者が、将来のある時点で、示された治療薬を投与される同じ患者であっても、示された治療薬を投与されていない完全に異なる患者であってもよい。治療薬を投与されていない患者は、現在、別の治療薬で処置されていても、過去に指示された治療薬で処置されていてもよいが、現在、示された治療薬で処置されていないことに留意すべきである。
【0069】
一部の実施形態では、治療薬で患者のALS症状が緩和される患者の生体試料(例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液(CSF))中のニューロフィラメントタンパク質(例えば、ニューロフィラメント軽鎖)のレベルの維持または低減(未処置の患者のレベルと比較)は、(本明細書に記載の評価のうちの1つで決定されるように)ALS症状の緩和の観察の少なくとも2ヶ月前、2.5ヶ月前、3ヶ月前、4ヶ月前、5ヶ月前、もしくは少なくとも6ヶ月前、または少なくとも1年前に検出可能である。
【0070】
配列表の開示
配列番号1(ヒトニューロフィラメント軽鎖アミノ酸配列)
MSSFSYEPYYSTSYKRRYVETPRVHISSVRSGYSTARSAYSSYSAPVSSSLSVRRSYSSSSGSLMPSLEN
LDLSQVAAISNDLKSIRTQEKAQLQDLNDRFASFIERVHELEQQNKVLEAELLVLRQKHSEPSRFRALYE
QEIRDLRLAAEDATNEKQALQGEREGLEETLRNLQARYEEEVLSREDAEGRLMEARKGADEAALARAELE
KRIDSLMDEISFLKKVHEEEIAELQAQIQYAQISVEMDVTKPDLSAALKDIRAQYEKLAAKNMQNAEEWF
KSRFTVLTESAAKNTDAVRAAKDEVSESRRLLKAKTLEIEACRGMNEALEKQLQELEDKQNADISAMQDT
INKLENELRTTKSEMARYLKEYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEETRLSFTSVGSITSGYSQSSQVFG
RSAYGGLQTSSYLMSTRSFPSYYTSHVQEEQIEVEETIEAAKAEEAKDEPPSEGEAEEEEKDKEEAEEEE
AAEEEEAAKEESEEAKEEEEGGEGEEGEETKEAEEEEKKVEGAGEEQAAKKKD
配列番号2(ヒトニューロフィラメント重鎖アミノ酸配列)
MMSFGGADALLGAPFAPLHGGGSLHYALARKGGAGGTRSAAGSSSGFHSWTRTSVSSVSA
SPSRFRGAGAASSTDSLDTLSNGPEGCMVAVATSRSEKEQLQALNDRFAGYIDKVRQLEA
HNRSLEGEAAALRQQQAGRSAMGELYEREVREMRGAVLRLGAARGQLRLEQEHLLEDIAH
VRQRLDDEARQREEAEAAARALARFAQEAEAARVDLQKKAQALQEECGYLRRHHQEEVGE
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SEAAKVNTDAMRSAQEEITEYRRQLQARTTELEALKSTKDSLERQRSELEDRHQADIASY
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SLPEGLPKIPSVSTHIKVKSEEKIKVVEKSEKETVIVEEQTEETQVTEEVTEEEEKEAKE
EEGKEEEGGEEEEAEGGEEETKSPPAEEAASPEKEAKSPVKEEAKSPAEAKSPEKEEAKS
PAEVKSPEKAKSPAKEEAKSPPEAKSPEKEEAKSPAEVKSPEKAKSPAKEEAKSPAEAKS
PEKAKSPVKEEAKSPAEAKSPVKEEAKSPAEVKSPEKAKSPTKEEAKSPEKAKSPEKAKS
PEKEEAKSPEKAKSPVKAEAKSPEKAKSPVKAEAKSPEKAKSPVKEEAKSPEKAKSPVKE
EAKSPEKAKSPVKEEAKTPEKAKSPVKEEAKSPEKAKSPEKAKTLDVKSPEAKTPAKEEA
RSPADKFPEKAKSPVKEEVKSPEKAKSPLKEDAKAPEKEIPKKEEVKSPVKEEEKPQEVK
VKEPPKKAEEEKAPATPKTEEKKDSKKEEAPKKEAPKPKVEEKKEPAVEKPKESKVEAKK
EEAEDKKKVPTPEKEAPAKVEVKEDAKPKEKTEVAKKEPDDAKAKEPSKPAEKKEAAPEK
KDTKEEKAKKPEEKPKTEAKAKEDDKTLSKEPSKPKAEKAEKSSSTDQKDSKPPEKATED
KAAKGK
配列番号3
1 mmsfggadal lgapfaplhg ggslhyalar kggaggtrsa agsssgfhsw trtsvssvsa
61 spsrfrgaga asstdsldtl sngpegcmva vatsrsekeq lqalndrfag yidkvrqlea
121 hnrslegeaa alrqqqagrs amgelyerev remrgavlrl gaargqlrle qehllediah
181 vrqrlddear qreeaeaaar alarfaqeae aarvdlqkka qalqeecgyl rrhhqeevge
241 llgqiqgsga aqaqmqaetr dalkcdvtsa lreiraqleg havqstlqse ewfrvrldrl
301 seaakvntda mrsaqeeite yrrqlqartt elealkstkd slerqrsele drhqadiasy
361 qeaiqqldae lrntkwemaa qlreyqdlln vkmaldieia ayrkllegee crigfgpipf
421 slpeglpkip svsthikvks eekikvveks eketviveeq teetqvteev teeeekeake
481 eegkeeegge eeeaeggeee tksppaeeaa spekeakspv keeakspaea kspekeeaks
541 paevkspeka kspakeeaks ppeakspeke eakspaevks pekakspake eakspaeaks
601 pekakspvke eakspaeaks pvkeeakspa evkspekaks ptkeeakspe kakspekeea
661 kspekakspv kaeakspeka kspvkaeaks pekakspvke eakspekaks pvkeeakspe
721 kakspvkeea ktpekakspv keeakspeka kspekaktld vkspeaktpa keearspadk
781 fpekakspvk eevkspekak splkedakap ekeipkkeev kspvkeeekp qevkvkeppk
841 kaeeekapat pkteekkdsk keeapkkeap kpkveekkep avekpkeskv eakkeeaedk
901 kkvptpekea pakvevkeda kpkektevak kepddakake pskpaekkea apekkdtkee
961 kakkpeekpk teakakeddk tlskepskpk aekaekssst dqkdskppek atedkaakgk
配列番号4(ヒトニューロフィラメント中鎖アミノ酸配列):
MSYTLDSLGNPSAYRRVTETRSSFSRVSGSPSSGFRSQSWSRGSPSTVSSSYKRSMLAPR
LAYSSAMLSSAESSLDFSQSSSLLNGGSGPGGDYKLSRSNEKEQLQGLNDRFAGYIEKVH
YLEQQNKEIEAEIQALRQKQASHAQLGDAYDQEIRELRATLEMVNHEKAQVQLDSDHLEE
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GPLYTHRPPITISSKIQKPKVEAPKLKVQHKFVEEIIEETKVEDEKSEMEEALTAITEEL
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EGAKSDQAEEGGSEKEGSSEKEEGEQEEGETEAEAEGEEAEAKEEKKVEEKSEEVATKEE
LVADAKVEKPEKAKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSP
VEEKGKSPVSKSPVEEKAKSPVPKSPVEEAKSKAEVGKGEQKEEEEKEVKEAPKEEKVEK
KEEKPKDVPEKKKAESPVKEEAVAEVVTITKSVKVHLEKETKEEGKPLQQEKEKEKAGGE
GGSEEEGSDKGAKGSRKEDIAVNGEVEGKEEVEQETKEKGSGREEEKGVVTNGLDLSPAD
EKKGGDKSEEKVVVTKTVEKITSEGGDGATKYITKSVTVTQKVEEHEETFEEKLVSTKKV
EKVTSHAIVKEVTQSD
配列番号5
MARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEETRFSTFAGSITGPLYTHRPPITISSKIQKPKVEAPKL
KVQHKFVEEIIEETKVEDEKSEMEEALTAITEELAVSMKEEKKEAAEEKEEEPEAEEEEVAAKKSPVKAT
APEVKEEEGEKEEEEGQEEEEEEDEGAKSDQAEEGGSEKEGSSEKEEGEQEEGETEAEAEGEEAEAKEEK
KVEEKSEEVATKEELVADAKVEKPEKAKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPV
PKSPVEEKGKSPVSKSPVEEKAKSPVPKSPVEEAKSKAEVGKGEQKEEEEKEVKEAPKEEKVEKKEEKPK
DVPEKKKAESPVKEEAVAEVVTITKSVKVHLEKETKEEGKPLQQEKEKEKAGGEGGSEEEGSDKGAKGSR
KEDIAVNGEVEGKEEVEQETKEKGSGREEEKGVVTNGLDLSPADEKKGGDKSEEKVVVTKTVEKITSEGG
DGATKYITKSVTVTQKVEEHEETFEEKLVSTKKVEKVTSHAIVKEVTQSD
配列番号6
MSFGSEHYLCSSSSYRKVFGDGSRLSARLSGAGGAGGFRSQSLSRSNVASSAACSSASSL
GLGLAYRRPPASDGLDLSQAAARTNEYKIIRTNEKEQLQGLNDRFAVFIEKVHQLETQNR
ALEAELAALRQRHAEPSRVGELFQRELRDLRAQLEEASSARSQALLERDGLAEEVQRLRA
RCEEESRGREGAERALKAQQRDVDGATLARLDLEKKVESLLDELAFVRQVHDEEVAELLA
TLQASSQAAAEVDVTVAKPDLTSALREIRAQYESLAAKNLQSAEEWYKSKFANLNEQAAR
STEAIRASREEIHEYRRQLQARTIEIEGLRGANESLERQILELEERHSAEVAGYQDSIGQ
LENDLRNTKSEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEETRFSTSGLSISGLNPL
PNPSYLLPPRILSATTSKVSSTGLSLKKEEEEEEASKVASKKTSQIGESFEEILEETVIS
TKKTEKSNIEETTISSQKI
配列番号7
MSHHPSGLRAGFSSTSYRRTFGPPPSLSPGAFSYSSSSRFSSSRLLGSASPSSSVRLGSF
RSPRAGAGALLRLPSERLDFSMAEALNQEFLATRSNEKQELQELNDRFANFIEKVRFLEQ
QNAALRGELSQARGQEPARADQLCQQELRELRRELELLGRERDRVQVERDGLAEDLAALK
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NHEALRQAKQEMNESRRQIQSLTCEVDGLRGTNEALLRQLRELEEQFALEAGGYQAGAAR
LEEELRQLKEEMARHLREYQELLNVKMALDIEIATYRKLLEGEESRISVPVHSFASLNIK
TTVPEVEPPQDSHSRKTVLIKTIETRNGEVVTESQKEQRSELDKSSAHSY
配列番号8
CAGGATACATTTCTACAGCT
配列番号9
TTAATGTTTATCAGGAT
配列番号10
AGTGTTTAATGTTTATC
配列番号11
CCGTCGCCCTTCAGCACGCA
配列番号12
CCTTCCCTGAAGGTTCCTCC
配列番号13
CCTATAGGACTATCCAGGAA
【0071】
本明細書に記載の発明を説明するが、それを限定することを意図していない以下の実施例が提供される。
【0072】
実施例1:ALSに有効ではない治療薬
候補治療薬であるデクスプラミペキソールが、ALS症状を緩和する能力を有するかどうかを調査する臨床試験を実施した。
【0073】
結果は、デプラミペキソールの投与がALS症状を低減しなかったことを示した。
【0074】
デクスプラミペキソールで処置された患者の血清中のニューロフィラメントタンパク質、すなわち、ニューロフィラメント重鎖のレベルの遡及的調査。ベースラインの決定、ならびにデクスプラミペキソールの臨床試験における縦方向の血漿中ニューロフィラメント重鎖(NFH)濃度、EMPOWER、ならびに生存率及び筋力の低下率(ハンドヘルドダイナモメトリー[HHD]で評価)、肺活量(SVC)、ならびにALSFRS-Rを含む臨床転帰との関係の評価。
【0075】
軽鎖、中間鎖、及び重鎖のヘテロポリマーを含むニューロフィラメントは、成熟軸索の主要な構造成分である。神経変性疾患患者は、ニューロフィラメントのCSF及び血漿中レベルの上昇を呈し、これは、推定上、変性ニューロンの軸索内容物の細胞外放出を表す。ALS患者からの観察データ及び大部分の断面データでは、生存率及びALSFRS-Rの低下で示されるように、NFレベル及び疾患の重症度間の相関関係が示されている。
【0076】
EMPOWERは、943人の成人を登録する81の学術医療センターで実行されたALSの処置におけるデクスプラミペキソールの安全性及び有効性の世界規模の第3相無作為化臨床試験(RCT)であった(Cudkowicz ME et al.,Lancet Neurol.2013 Nov;12(11):1059-67を参照のこと)。
【0077】
EMPOWERの実験に含まれる対象は、可能な、予想される、または明確なALSの診断を有さなければならず、24ヶ月未満のALSの症状を有しており、予測値の少なくとも65%であったSVC値を有し、及び重大な併存疾患を有さない。
【0078】
この実験では、デクスプラミペキソールまたはプラセボを用いる12ヶ月間の処置に対して1:1の比率で、対象を割り当てた。
【0079】
Protein Simple製の自動化マイクロ流体カートリッジベースのイムノアッセイプラットフォームであるEllaでNFHアッセイを使用して、血漿中ニューロフィラメント重鎖(NFH)を測定した。
【0080】
【0081】
複数の共変量を調整した後、ベースライン血漿中NFH(log10変換)は、以下の通り相関していた:
--実験中の生存率(HR=2.41、p<0.001)
--HHDの低下率(b=-0.026、p<0.001、調整r2=0.14)、
--SVCの低下率(b=-1.77、p<0.001、調整r2=0.20)、
--ALSFRS-Rの低下率(b=-0.61、p<0.001、調整r2=0.20)。
【0082】
平均血漿中ニューロフィラメント重鎖レベルは、1ヶ月に1.8%低下した(
図1を参照のこと)。しかし、知見は、プラセボに割り当てられた対象対デクスプラミエキソールに割り当てられた対象間の縦方向の血漿中NFHの経過に差異がなかったことを示し、療法は、このEMPOWER実験で臨床的有効性がなかった(
図2を参照のこと)。
【0083】
実施例2:ALS患者に有効であると期待される治療薬の投与は、血清中ニューロフィラメントレベルの低下をもたらした
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の変異は、家族性ALSの20%に関与する。この優勢な遺伝性疾患における毒性機能の獲得を考えると、SOD1 mRNA及びタンパク質を低下させることは、治療上の利益を提供し得る。
【0084】
SOD1を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、SOD1 mRNA及びタンパク質を低減させ、SOD1G93Aラットにおいて50日超に及びSOD1G93Aマウスにおいてほぼ40日に生存率を延長させる。
【0085】
以下に示されるように、SOD1G93Aマウスにおける複合筋活動電位の最初の喪失は、SOD1 ASOの単回投与後に逆転する。さらに、血清中ホスホニューロフィラメント重鎖レベルの増加は、SOD1 ASO療法により停止する。
【0086】
使用されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表2の通りであった。
【表2】
表2に示される6つのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアート骨格修飾(「
【化1】
」は、未修飾のホスホジエステル結合を示す)、2’-O-メトキシエチルリボース(MOE;太字)、ならびに5’及び3’ウィングの(S)-2’,4’-拘束2’-O-エチル(cEt;イタリック)基を含有する。ASOは、SOD1 mRNAの3’UTR(ASO1、ASO2、及びASO3)、SOD1 mRNAのエクソン1(333611)に標的化されるか、または齧歯動物ゲノムのいずれにも標的化されなかった(不活性ASO)。評価された配列及び化学修飾の場所が提供される。異なる対照(不活性)ASOを、in vitro及びin vivo実験に使用した。全てのシトシン残基は、5’メチルシトシンである。
【0087】
ヒト神経芽細胞腫細胞株(SH-SY5Y)では、これらのASO(ASO1及びASO2)は、用量依存的に、SOD1 mRNAを強力に低下させた。
【0088】
SOD1低下ASOを用いる処置は、SOD1G93Aマウス及びラットにおいて疾患の発症を大幅に遅延させ、生存期間を延長する。SOD1G93A齧歯動物モデルでの変異型SOD1の発現は、運動機能の喪失、そして最終的には死に至る、四肢及び胴体の重度の萎縮を引き起こすことが知られる。
【0089】
SOD1低下ASO方策が疾患パラメーターを遅延させ得るかどうかを調査するために、SOD1G93Aマウス(B6.CgTg(SOD1*G93A)Gur/J)の脳室内(i.c.v.)に50日齢及び94日齢で、300μgのASO1のボーラス用量を注入した。ロータロッド上での重量及び性能を毎週試験した。ASO1を投与されたマウスは、同様の濃度の対照不活性ASO(不活性ASO)を注射されたマウスよりも、ロータロッド上で、体重を26日長く維持し、良好に動いた(データは示さず)。ASO1処置マウスの中央生存率は、不活性なASOと比較して37日長く、マウスモデルでの生存期間の22%の延長を表す。
【0090】
SOD1G93Aラット(Taconic Biosciences、モデル2148)は、腰髄のL3椎骨及びL5椎骨間に配置されたポリエチレンカテーテルを介して30μlの髄腔内ボーラス注射を投与された。65日齢のラットに、1000μgのASO1、ASO2、ASO3、ASO 333611、不活性ASO、または人工脳脊髄液(aCSF)ビヒクル対照を与えた。全てのASOをaCSFで希釈した。全ての処置群は、コピー数の浮動または性的表現型誘導変動を制御するために性的表現型及び同産群を適合させた。
【0091】
結果は、ASO1またはASO2で処置されたラットが、aCSFで処置されたラットよりも、それぞれ、70日(P<0.0001)及び67日(P<0.001)長く、体重を維持したことを示した。333611は、体重減少の開始を適度に遅延させた(中央値139日、aCSF中央値121日と比較)。
【0092】
80日間の活性ASO処置及び110日間の活性ASO処置間で発症または生存率に有意差がなかった。
【0093】
ASOによるSOD1の低減が疾患のマーカーに影響を与え得るかどうかを試験するために、SOD1
G93Aマウスに100μgのASO1と5週齢でいったん脳室内に注入し、複合筋活動電位(CMAP)の変化、神経筋接合部の神経支配、及び血清中ホスホニューロフィラメント重鎖(pNfH)レベルについて評価した。SOD1
G93Aマウスでは、CMAPは、時間とともに低下し、運動ニューロンの喪失に先行する。5週にASO1で処置されたSOD1
G93Aマウスは、次の12週間にわたってCMAPを維持したが、対照処置動物のCMAPを、同じ期間にわたって半分以上低減した(データは示さず)。保存された筋機能のCMAP電気生理学的実証と一致して、ASO1処置マウス(300μgのASO1の単一用量を5週齢で1回注射)は、後肢の前脛骨筋の神経支配を維持したが、対照処置動物は、証拠を示した筋終板の75%以上の除神経の所見を示した(
図3、群毎にn=12;平均±SEM)。
【0094】
ALS齧歯動物モデル、ヒトALS患者、及び他の神経変性疾患のCSF及び血清中のpNfHが増加する。血清中のリン酸化ニューロフィラメント重鎖レベルを調査するために、血液をi.c.v.注射前のベースライン(5週間)で収集し、次に、300μgのASO1の単一用量を5週齢で1回注射されたSOD1
G93A変異型マウスから、8及び10週齢で、再度、収集した。製造者の使用説明書に従い、ELLAマイクロ流体ELISAプラットフォーム(Protein Simple)で、pNfH血清中レベルを測定した。要約すると、指定された時点で顔面静脈穿刺により最大100μlの血液を採取した。BDバキュテイナーSSTチューブ(BD Diagnostics)の遠心分離により、血清試料を調製し、使用するまで-80℃で保存した。
図4に示されるように、活性ASO1で処置されたSOD1マウスは、対照ASO(すなわち、SOD1不活性ASO)で処置されたSOD1マウスと比較して低レベルのpNfHを示した((群毎にn=12;
図4の平均±SEM))。
【0095】
ラット及びマウスモデルにおける、この実施例2の結果、ならびにSOD1活性ASOがリン酸化ニューロフィラメント重鎖の血清中レベルを低減させることができるという事実に基づいて、SOD1活性ASOが、ALS患者のALSの症状を緩和するための有効な治療薬であることが予想される。
【0096】
実施例3:ALS患者の治療薬の切り替え
この先見的な実施例では、近年ALSと診断され且つALSFRS-Rスコアが31の患者が、リルゾールで処置される。患者の血清中のニューロフィラメントタンパク質レベルを測定し、初期レベルと呼ばれるレベルであることが判定される。患者の医師は、6ヶ月毎にALSFRS-R評価を受けるよう患者に依頼するであろう。しかし、3ヶ月後(すなわち、ALSFRS-R試験を受ける前)、医師は、患者の血清中ニューロフィラメントタンパク質レベルを測定し、患者の血清中ニューロフィラメントタンパク質レベルが初期レベルよりも高いことを発見する。次に、医師は、患者が6ヶ月のALSFRS-R試験を受ける前に、別の治療薬(例えば、その患者に有効であり得るエダロボン)に切り替えるように患者にアドバイスする。患者が治療薬を切り替えた場合、次のALSFRS-R試験(すなわち、切り替えの3ヶ月後)は、新しい治療薬(例えば、エダロボン)が患者に有効であるならば、患者がリルゾールを服用し続けていた場合よりも高くなると予測される。
【0097】
実施例4:ALS治療薬の投与は、ニューロフィラメントレベルの低下をもたらした。
二重盲検無作為化プラセボ対照の臨床試験をSOD1 ALS患者で実施した。この試験には、単回及び複数回の漸増用量(SAD/MAD)実験が含まれていた。MAD部分では、参加者は、約3ヶ月間にわたって5用量の治験薬を投与された。SOD1変異を有する50人の成人参加者をコホート毎に3:1(ASO:プラセボ)に無作為化し、20mg、40mg、60mg、または100mgのプラセボまたはSOD-1減少ASO-ASO1(配列番号8)を投与した。コホート毎の1~4人のASO1処置参加者は、進行が速いと先験的に判断された、実証されたSOD1変異(主に、A4V)を有していた。
【0098】
SOD1レベルの低減
CSF中SOD1濃度のベースラインの低減が、40mg、60mg、及び100mgのコホートで観察され、これは、投薬量とともに増加し、時間とともに、85日目の100mgの処置群において最大の低減を有していた。
図5を参照のこと。前臨床データに基づいたモデル化は、100mgのASO1が、脊髄におけるSOD1レベルを99%超、効果的に低減させ、皮質におけるSOD1レベルを約25~30%低減させることを示唆する。
【0099】
臨床観察
ASO1を用いる処置は、プラセボと比較して、機能低下の遅延(ALSFRS-R)及び呼吸機能の低下の遅延(SVCで測定)を示した。
図6A及び6Bを参照のこと。進行の速いSOD1変異を有する参加者では、ASO1 100mg群及びプラセボ群間の大きな差異は、他の変異を有するものと比較したこれらの測定値全体で観察された。
【0100】
CSF中リン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNfH)レベル
CSF中pNfHの低下は、プラセボと比較して、ASO1 100mgコホートで観察され、ASO1 100mg群及びプラセボ群間の大きな差異は、進行の速いSOD1変異を有する参加者で観察された。進行の速いSOD1変異を有する患者では、ASO1を用いる処置は、プラセボと比較してCSF中pNfHレベルの低減及び臨床的低下の遅延をもたらした。
図6Cは、進行の速いSOD1変異を有する患者で観察された、ASO1 100mg群及びプラセボ群間の85日目のpNfHレベルの差異を示す。
【0101】
血漿及びCSF中pNfH及びニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベル
ベースラインpNfH及びNfLレベルは、進行の速い患者で最も高く、疾患活性(ALSFRS-R事前無作為化勾配で測定)と相関していた。プラセボを用いた明らかな安定化または増加と比較して、ASO1 100mgでの処置を用いたpNfH及びNfLレベルの両方における低減が、血漿及びCSF中の両方で経時的に観察された。
図7A~7Dを参照のこと。
図7A~7Dでは、全体的なプラセボ(n=12)は、実験全体を通して、1.0ベースライン測定値の、それの付近の、または、それより上の実線であり;全体的なASO1 100mg処置(n=10)は、実験全体を通して、1.0ベースライン測定値を下回る実線であり;進行の速いプラセボ(n=4)は、実験全体を通して、1.0ベースライン測定値の、それの付近の、または、それより上の破線であり;進行の速いASO1 100mg処置(n=4)は、実験全体を通して、1.0ベースライン測定値を下回る破線である。ProteinSimple(商標)Simple Plex
Ellaイムノアッセイを使用して、pNfHレベルを評価した。Quanterix
Simoa NfL Advantageアッセイを使用して、NfLレベルを評価した。
【0102】
従って、特定の理論に拘束されることを望まないが、本明細書で提供される結果は、ALS患者が処置されている治療薬が、実際に、その患者に有効であるかどうかを判定するマーカー(例えば、薬力学的マーカー)としての、ニューロフィラメントタンパク質レベル(例えば、血清及び/またはCSF中ニューロフィラメントタンパク質レベル)の使用を支援する。例えば、患者が、以前に、有効でない治療薬を受けており、依然として、増加するALS症状を有する場合、血清中ニューロフィラメントレベルの測定により、不可逆的な機能低下が発生する前に、治療薬が有効ではなく、その患者に有効であり得る新しい治療薬に切り替えなければならないという事前通知を与え得る。
【0103】
上記の本発明の実施形態は、単に例示的であることを意図しており、多数の変形及び修正が、当業者らに明らかになるであろう。そのような全ての変形及び修正は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内にあることが意図される。
【外国語明細書】