(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096292
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ガス系消火設備
(51)【国際特許分類】
F16L 33/00 20060101AFI20240705BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F16L33/00 B
A62C35/68
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074159
(22)【出願日】2024-05-01
(62)【分割の表示】P 2020145364の分割
【原出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(71)【出願人】
【識別番号】593000971
【氏名又は名称】株式会社テクノフレックス
(71)【出願人】
【識別番号】520332601
【氏名又は名称】柳田 充
(71)【出願人】
【識別番号】520332612
【氏名又は名称】藤野 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】薮下 真大
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 彗一郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 裕一朗
(72)【発明者】
【氏名】高井 浩介
(72)【発明者】
【氏名】関 浩司
(72)【発明者】
【氏名】吉井 健二
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩三郎
(72)【発明者】
【氏名】柳田 充
(72)【発明者】
【氏名】藤野 健治
(57)【要約】
【課題】簡単に施工できる巻出し配管部用管継手及びこれを用いたガス系消火設備を提供する。
【解決手段】ガス系消火設備に用いられる巻出し配管部用管継手であって、山部と谷部が繰り返される管壁を備えたベローズ管と、前記ベローズ管に巻き付けられている補強部材と、を有し、前記ベローズ管は、可撓性を有し、前記ベローズ管の谷部は、螺旋状に延伸する一続きの溝であり、前記補強部材は、前記ベローズ管の谷部に沿って前記ベローズ管に巻き付けられている巻出し配管部用管継手。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス系消火設備に用いられる巻出し配管部用管継手であって、
山部と谷部が繰り返される管壁を備えたベローズ管と、
前記ベローズ管に巻き付けられている補強部材と、を有し、
前記ベローズ管は、可撓性を有し、
前記ベローズ管の谷部は、螺旋状に延伸する一続きの溝であり、
前記補強部材は、前記ベローズ管の谷部に沿って前記ベローズ管に巻き付けられている巻出し配管部用管継手。
【請求項2】
前記ベローズ管の肉厚は、0.2mm以上0.5mm以下である請求項1に記載の巻出し配管部用管継手。
【請求項3】
前記ベローズ管の最高使用圧力は、前記補強部材が巻き付けられている状態で、2MPa以上10.8MPa以下である請求項1または2に記載の巻出し配管部用管継手。
【請求項4】
前記ベローズ管の外面を覆い、前記ベローズ管の伸長を抑制する伸長抑制部材と、
前記ベローズ管の一端側に設けられる第1の治具固定用リングと、
前記ベローズ管の他端側に設けられる第2の治具固定用リングと、
前記ベローズ管の一端に接続される円筒形状の中空部材と、
前記中空部材に回転可能に取り付けられるナットと、
前記ナットに螺合する第1取付部材と、
前記第2の治具固定用リングに接合されている第2取付部材と、を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の巻出し配管部用管継手。
【請求項5】
前記ナットは、前記中空部材に回転可能であることに加えて傾斜可能に取り付けられている請求項4に記載の巻出し配管部用管継手。
【請求項6】
前記ベローズ管の外面を覆い、前記ベローズ管の伸長を抑制する伸長抑制部材と、
前記ベローズ管の一端側に設けられる第1の治具固定用リングと、
前記ベローズ管の他端側に設けられる第2の治具固定用リングと、
前記ベローズ管の一端に接続される円筒形状の第1中空部材と、
前記ベローズ管の他端に接続される円筒形状の第2中空部材と、
前記第1中空部材に回転可能に取り付けられる第1ナットと、
前記第2中空部材に回転可能に取り付けられる第2ナットと、
前記第1ナットに螺合する第1取付部材と、
前記第2ナットに螺合する第2取付部材と、を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の巻出し配管部用管継手。
【請求項7】
前記第1ナットは、前記第1中空部材に回転可能であることに加えて傾斜可能に取り付けられており、
前記第2ナットは、前記第2中空部材に回転可能であることに加えて傾斜可能に取り付けられている、請求項6に記載の巻出し配管部用管継手。
【請求項8】
前記第1の治具固定用リングの長さ及び前記第2の治具固定用リングの長さは、いずれも、50mm以上200mm以下である請求項4から7のいずれか一項に記載の巻出し配管部用管継手。
【請求項9】
貯蔵容器に繋がる消火配管と、
消火剤ガスを噴射する噴射ヘッドと、
前記消火配管と前記噴射ヘッドとの間に設けられる巻出し配管部と、を有し、
前記巻出し配管部は、請求項1から8のいずれか一項に記載の巻出し配管部用管継手を有するガス系消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻出し配管部用管継手及びこれを用いたガス系消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス系消火設備が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-206397号公報
【特許文献2】特開2011-160953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス系消火設備を施工する技術者の人材不足及び高齢化の下では、ガス系消火設備をより簡単に施工できるようにして、ガス系消火設備の施工性を従来よりも高めることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明には、次の一実施形態が含まれる。
【0006】
ガス系消火設備に用いられる巻出し配管部用管継手であって、
山部と谷部が繰り返される管壁を備えたベローズ管と、
前記ベローズ管に巻き付けられている補強部材と、を有し、
前記ベローズ管は、可撓性を有し、
前記ベローズ管の谷部は、螺旋状に延伸する一続きの溝であり、
前記補強部材は、前記ベローズ管の谷部に沿って前記ベローズ管に巻き付けられている巻出し配管部用管継手。
【0007】
貯蔵容器に繋がる消火配管と、
消火剤ガスを噴射する噴射ヘッドと、
前記消火配管と前記噴射ヘッドとの間に設けられる巻出し配管部と、を有し、
前記巻出し配管部は、上記の巻出し配管部用管継手を有するガス系消火設備。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、簡単に施工できる巻出し配管部用管継手及びこれを用いたガス系消火設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るガス系消火設備の模式的斜視図である。
【
図2A】実施形態に係る巻出し配管部用管継手を説明するための模式図である。
【
図2B】実施形態に係る巻出し配管部用管継手を説明するための模式図である。
【
図2C】実施形態に係る巻出し配管部用管継手を説明するための模式図である。
【
図2D】実施形態に係る巻出し配管部用管継手を説明するための模式図である。
【
図2E】実施形態に係る巻出し配管部用管継手を説明するための模式図である。
【
図2F】実施形態に係る巻出し配管部用管継手を説明するための模式図である。
【
図2G】実施形態に係る巻出し配管部用管継手を説明するための模式図である。
【
図2H】実施形態に係る巻出し配管部用管継手を説明するための模式図である。
【
図3】実施形態に係る巻出し配管部用管継手の模式的側面図(組み立て前)である。
【
図4】実施形態に係る巻出し配管部用管継手の模式的側面図(組み立て後)である。
【
図5】ベローズ管510と補強部材520を拡大して示す図である。
【
図6A】実施形態に係る巻出し配管部用管継手の組み立て方法の一例を説明する模式的側面図である。
【
図6B】実施形態に係る巻出し配管部用管継手の組み立て方法の一例を説明する模式的側面図である。
【
図6C】実施形態に係る巻出し配管部用管継手の組み立て方法の一例を説明する模式的側面図である。
【
図6D】実施形態に係る巻出し配管部用管継手の組み立て方法の一例を説明する模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ガス系消火設備1]
図1は、実施形態に係るガス系消火設備1の模式的斜視図である。
図1に示すように、実施形態に係るガス系消火設備1は、貯蔵容器20に繋がる消火配管30と、消火剤ガスを噴射する噴射ヘッド40と、消火配管30と噴射ヘッド40との間に設けられる巻出し配管部50と、を有するガス系消火設備である。以下、詳細に説明する。
【0011】
ガス系消火設備1は、消火剤ガスを用いた消火設備である。ガス系消火設備以外の消火設備としては、例えば、水や泡を用いた消火設備がある。ガス系消火設備1においては、防護区画内で火災が発生すると、貯蔵容器20の容器弁が手動または自動で開放され、貯蔵容器20内の圧力と消火配管30内の圧力との差(貯蔵容器20内の圧力>消火配管30内の圧力。噴射ヘッド40は常に開いているものとし、消火配管30内の圧力は防護区画内の圧力に等しい、あるいは実質的に等しいものとする。)により、貯蔵容器20に貯蔵されている消火剤ガスが、貯蔵容器20から消火配管30を通って噴射ヘッド40から防護区画内に放出される。これにより、防護区画内の酸素濃度が低下するなどして、防護区画内の火災が鎮火される。
【0012】
ガス系消火設備1の施工では、貯蔵容器20、消火配管30、巻出し配管部50、及び噴射ヘッド40が、それぞれ異なる者(工事業者)によって異なる日時に施工される場合がある。本実施形態によれば、巻出し配管部用管継手500のベローズ管510が可撓性を有し、例えば
図2A乃至
図2Hに示すような形状に曲げること(換言すると変形させること)ができるため、巻出し配管部50が施工される現場の状況(建築資材やその他の物の配置状態、天井裏や壁裏など施工場所の広さなど。)に応じて、非熟練工であっても、巻出し配管部50を簡単に施工することができる。このため、例えば、貯蔵容器20と消火配管30が施工されたものの、巻出し配管部50を施工する熟練工のスケジュールを確保できないなどの理由により、噴射ヘッド40の施工が遅れるという事態の発生を抑制することができる。つまり、貯蔵容器20と消火配管30が施工された後、熟練工のスケジュールの確保が難しい場合などであっても、非熟練工により巻出し配管部50を施工して、噴射ヘッド40を施工するフェーズに移ることができる。なお、
図2A乃至
図2Hには、理解を容易にするため、配管部用管継手500だけでなく、噴射ヘッド40などもあわせて示している。
【0013】
(防護区画)
防護区画は消火剤ガスが供給される区画である。例えば、ビル、発電所、または工場などの建物内における1つの部屋を1つの防護区画とすることができる。また、複数の部屋をまとめて1つの防護区画とすることもできる。電子機器が設置されたコンピュータルームや配電盤などが設置された電気室などは、ガス系消火設備1の防護区画に適している。水や泡で消火を行うと電子機器や配電盤などが故障するためである。1つの建物内における防護区画の数は特に限定されない。
【0014】
(貯蔵容器20)
貯蔵容器20は、消火剤ガスを貯蔵する容器である。貯蔵容器20には、ボンベなどが含まれる。本実施形態では、貯蔵容器20が防護区画外に設置されているものとするが、貯蔵容器20は防護区画内に設置することもできる。
【0015】
貯蔵容器20の容量は、例えば消火剤ガスが気体として貯蔵容器20に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の消火剤ガスを格納できる容量であることが好ましく、消火剤ガスが液体として貯蔵容器20に充填される場合には0.65kg以上100kg以下の消火剤ガスを格納できる容量であることが好ましい。消火剤ガスは、液体として貯蔵容器20に格納される場合、例えば、消火配管30内では液体、又は気体・液体混合の状態であり、噴射ヘッド40から防護区画内に放出されるときに完全に気体になる。貯蔵容器20内の圧力は、防護区画内の圧力よりも高く、例えば0.2MPa以上30MPa以下である。これら容量や圧力は、消火剤ガスの放出開始から10秒間以上3分間以下、好ましくは1分間あるいは2分間で、防護区画の消火において要求される消火剤ガスの全放出量(全放出量は法令などによって規定される。)の100%または90%以上の消火剤ガスが放出されるよう、設定されていることが好ましい。
【0016】
貯蔵容器20は容器弁を備えている。容器弁は、防護区画内で火災が発生した際に手動または自動で開放される。自動で開放される場合は、防護区画内に熱を感知するセンサなどを設けて、このセンサからの信号などに基づき、容器弁を開放することができる。
【0017】
貯蔵容器20の数は1つでもよいし、2つ以上でもよい。
図1には3つの貯蔵容器20を図示している。複数の貯蔵容器20が配置される場合は、複数の貯蔵容器20すべての容器弁が開放されてもよいが、火災の規模などに応じて、それらのうち少なくとも1つ以上の容器弁が開放されてもよい。
【0018】
(消火配管30)
消火配管30は、貯蔵容器20に繋がる配管であって、消火剤ガスを供給する配管である。消火配管30は、例えば、天井裏や壁の裏などに配置することができるが、室内に配置することもできる。
【0019】
消火剤ガスには、消火に用いることが可能な各種のガスを用いることができる。例えば、ハロゲン化物ガスや不活性ガス(イナートガス)などが消火剤ガスの一例となる。不活性ガス(イナートガス)としては、窒素ガスあるいはアルゴンガスなどを用いることができる。特に窒素ガスは、人体への悪影響が少ないため、消火剤ガスとして好ましく用いることができる。
【0020】
消火配管30は貯蔵容器20の容器弁に接続される。消火配管30は容器弁に直接接続されてもよいし、連結管などの他の部材を介して間接接続されてもよい。直接接続とは、貯蔵容器20と消火配管30の間に他の部材(例:弁など)が介在しないことをいい、間接接続とは他の部材が介在することをいう。消火配管30が容器弁に接続される形態には、このような直接接続と間接接続の双方が含まれる。
【0021】
複数の貯蔵容器20が配置される場合、消火配管30は、複数の貯蔵容器20すべての容器弁に接続することができる。消火配管30は、平時においては空配管である。つまり、消火配管30は防護区画の内部空間と連通しており、消火配管30の内部には、平時においては消火剤ガスではなく空気が存在している。
【0022】
消火配管30は、例えば、1つまたは複数のステンレス鋼管を有しても良い。消火配管30が複数のステンレス鋼管を有する場合、これら複数のステンレス鋼管は、1つまたは複数の継手を用いて連結することができる。この場合、継手は、銅や黄銅などのステンレス以外の金属からなるものであってもよいし、ステンレス製であってもよい。継手がステンレス製である場合は、そうでない場合と比較して、より施工性と腐食耐性に優れたガス系消火設備1を提供することができる。継手とステンレス鋼管とを接続する方法には、ネジ、溶接、フランジ接続、またはハウジング接続などが含まれる。
【0023】
(噴射ヘッド40)
噴射ヘッド40は、消火剤ガスを噴射(つまり放出)する装置である。噴射ヘッド40は、巻出し配管部50を介して、消火配管30に接続されている。噴射ヘッド40は、例えば、開放型であり、常に開いている。噴射ヘッド40は、天井や壁などの、防護区画内に消火剤ガスを放出可能な、様々な箇所に設置することができる。噴射ヘッド40には、天井面に設置する噴射ヘッド、壁に設置される横吹き出し用の噴射ヘッド、または静音型噴射ヘッドなどを用いることができる。噴射ヘッド40の形状や大きさは特に限定されない。噴射ヘッド40の設置数は、少なくとも1つであり、防護区画の全域に均一にかつ速やかに拡散することができる数であることが好ましい。
【0024】
(巻出し配管部50)
巻出し配管部50は、消火配管30と噴射ヘッド40との間に設けられる。巻出し配管部用管継手500は、巻出し配管部50が有する部材である。巻出し配管部50は、1つの巻出し配管部用管継手500のみから構成されてもよいし、巻出し配管部用管継手500以外の部材を有していてもよく、また、複数の巻出し配管部用管継手500を有していてもよい。巻出し配管部50が有する巻出し配管部用管継手500以外の部材の一例としては、他の配管、実施形態に係る巻出し配管部用管継手500と同様の構成を有する他の巻出し配管部用管継手、エルボ、ソケット、及びティー等の継手のうちの少なくとも1つを挙げることができる。巻出し配管部50がこれらの部材を有する場合には、巻出し配管部50の取り付け可能域を拡大することができる。
【0025】
(巻出し配管部用管継手500)
図3は、実施形態に係る巻出し配管部用管継手の模式的側面図(組み立て前)であり、
図4は、実施形態に係る巻出し配管部用管継手の模式的側面図(組み立て後)である。
図3、
図4では、理解を容易にするため、各部材の一部を適宜透過的に描き、それら部材に覆われている部材が見えるようにしている。
図3、
図4に示すように、実施形態に係る巻出し配管部用管継手500は、ガス系消火設備1に用いられる巻出し配管部用管継手であって、山部と谷部が繰り返される管壁を備えたベローズ管510と、ベローズ管510に巻き付けられている補強部材520と、を有し、ベローズ管510は、可撓性を有し、ベローズ管510の谷部は、螺旋状に延伸する一続きの溝であり、補強部材520は、ベローズ管510の谷部に沿ってベローズ管510に巻き付けられている巻出し配管部用管継手である。巻出し配管部用管継手500(ベローズ管510)は可撓性を有しており、
図2A乃至
図2Hに示すように、様々な形状に曲げることができる。
【0026】
実施形態に係る巻出し配管部用管継手500は、上記したベローズ管510及び補強部材520に加えて、ベローズ管510の外面を覆い、ベローズ管510の伸長を抑制する伸長抑制部材530と、ベローズ管510の一端側に設けられる第1の治具固定用リング542と、ベローズ管510の他端側に設けられる第2の治具固定用リング544と、ベローズ管510の一端に接続される円筒形状の中空部材550と、中空部材550に回転可能に取り付けられるナット560と、ナット560に螺合する第1取付部材572と、第2の治具固定用リング544に接合されている第2取付部材574と、を有していてもよい。以下、詳細に説明する。
【0027】
(ベローズ管510)
ベローズ管510は、中空の部材である。ベローズ管510は、チューブと呼ばれることがある。消火配管30から供給される消火剤ガスは、ベローズ管510内(中空の部分)を通過する。ベローズ管510は、例えば、金属製の平板をチューブ状(円筒形状)に曲げる(あるいは丸める、巻く)ことにより円筒管を作製し、ダイスなどの装置を用いて、この作製した円筒管の管壁を山部と谷部が繰り返される形状にすることにより製造することができる。ベローズ管510の材料としては、例えば、ステンレス鋼、より具体的には、クロムとニッケルを含む合金鋼などを用いることができる。当該合金鋼を用いる場合、ベローズ管510の全重量に占めるクロムの含有量は例えば18%以上である。
【0028】
ベローズ管510の管壁は、山部と谷部が繰り返される形状を有する。これら山部や谷部は、「ひだ」、あるいは凸部や凹部などと呼ばれることがある。ベローズ管510は、ベローズ管510内を通過する消火剤ガスの圧力により、伸長する虞があるが、本実施形態では、後述する伸長抑制部材530によって、ベローズ管510の伸長を抑制している。
【0029】
ベローズ管510は、可撓性を有する。これにより、ガス系消火設備1を施工する現場において、消火配管30と噴射ヘッド40の間にある障害物や、消火配管30と噴射ヘッド40との間の距離などに臨機応変に対応して、巻出し配管部用管継手500を曲げつつ、巻出し配管部用管継手500、ひいては巻出し配管部50を施工することができる。このため、非熟練工であっても、巻出し配管部50が施工される現場の状況に応じて、消火配管30と噴射ヘッド40を巻出し配管部50で容易に接続や連結などすることができる。つまり、当該現場の状況ごとに現場の寸法を測定したり、測定した寸法に応じて配管を切り出したり、切り出した配管にネジ溝を形成したりなどする必要がなく、現場の状況に応じて巻出し配管部用管継手500を曲げて、巻出し配管部50を構築することができる。障害物や距離はガス系消火設備1を施工する現場ごとに異なり得るが、ベローズ管510が可撓性を有していることにより、非熟練工であっても、当該現場の様々な状況に応じて、噴射ヘッド40と消火配管30を接続や連結などすることができる。
【0030】
図5は、ベローズ管510と補強部材520を拡大して示す図である。
図5において、矢印は、螺旋状に延伸する様子を説明するために示したものである。
図5に示すように、ベローズ管510の谷部は、螺旋状に延伸する一続きの溝である。後述の補強部材520は、ベローズ管510の谷部に沿ってベローズ管510に巻き付けられている。ベローズ管510の管壁において複数の谷部が独立している場合、各谷部に設ける独立した複数の補強部材520を設け、それぞれの補強部材520をベローズ管510の各谷部に固定する必要がある。しかし、本実施形態によれば、補強部材520を、螺旋状に延伸する一続きの溝に挿入し、ベローズ管510を圧縮することにより、補強部材520を谷部(つまり谷部となる凹部内)に簡単に挟み込み、補強部材520を谷部に密着固定することができる。
【0031】
ベローズ管510の肉厚T1は、ベローズ管510の可撓性が損なわれないよう、0.5mm以下であることが好ましく、0.35mm以下であることがより好ましい。他方、ベローズ管510の肉厚T1は、ベローズ管510に耐圧強度をもたせるため、0.2mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましい。一般に耐圧強度を満足させる場合にはベローズ管510の肉厚T1の増加を行うが、上記の数値範囲では(たとえ上限値の0.5mmであっても)、ベローズ管510にガス消火に必要な耐圧強度を満たせない虞がある。もっとも、ベローズ管510の肉厚T1を上記の数値範囲の上限値(0.5mm)より大きくすると、ベローズ管510の可撓性が損なわれる虞がある。そこで、本実施形態では、ベローズ管510の谷部に補強部材520を設けることにより、ベローズ管510の可撓性と耐圧性を両立させている。
【0032】
ベローズ管510の口径(内径)は、消火配管30の口径(内径)及び/又は噴射ヘッド40の口径(内径)よりも大きいことが好ましい。このようにすれば消火剤ガス放出時による高流速噴出時の圧力損失低減の効果がある。
【0033】
(補強部材520)
補強部材520は、ベローズ管510の耐圧強度を補強するためにベローズ管510に巻き付けられる部材であって、ベローズ管510の谷部に設けられる。このような補強部材520を設けることにより、消火剤ガス通過時の圧力上昇によりベローズ管510の乱れ(伸びなどによってベローズ管510の山部や谷部の形状(ひだの形状)が変形すること)による可撓性の損失を防ぎ、かつ耐圧性を向上させることができる。上記のとおり、ベローズ管510に可撓性を持たせるためには、ベローズ管510の肉厚T1をベローズ管510の可撓性が損なわれない程度に留めておくことが有効であるが、そのようにすると、ベローズ管510に十分な耐圧強度を持たせることができない。一般に、ガス消火の場合は、配管内の圧力が水消火や泡消火の場合より大きくなるため、ベローズ管510に水消火や泡消火の場合よりも大きな耐圧強度を持たせることが必要となる。そこで、本実施形態では、補強部材520をベローズ管510に巻き付けることにより、ベローズ管510に適度の可撓性をもたせつつ、十分な耐圧強度を付与している。ベローズ管510の最高使用圧力は、補強部材520が巻き付けられている状態で、例えば、2MPa以上10.8MPa以下であることが好ましく、3.8MPaより大きく10.8MPa以下であることがより好ましい。
【0034】
補強部材520は、好ましくはベローズ管510の谷部に挟持される。つまり、谷部(凹部)の内壁に挟まれて、保持される。谷部による挟持は、例えば、谷部に補強部材520を設けた後、ベローズ管510を圧縮すること(つまり、ベローズ管510の長さ方向の長さが短くなるようにベローズ管510を圧縮すること)により実現することができる。ベローズ管510を圧縮すると、ベローズ管510の谷部の幅Pが補強部材520の幅と実質的に等しくなる。このようにすれば、ベローズ管510の谷部に補強部材520が密着するため、補強部材520を所定の位置に設置することが可能となる(例えば、補強部材520をベローズ管510の谷部から必要以上にはみださないように配置することが可能となる)。このため、ベローズ管510の実質的な外径(つまり、巻き付けられている補強部材520をベローズ管510の一部とみなして、補強部材520の線径も含めたうえで特定されるベローズ管510の外径)が拡大してしまうことを抑制することができる。換言すれば、補強部材520を巻き付けることによって、ベローズ管510そのものの外径が拡大するわけではないが、補強部材520の線径によりベローズ管510が実質的に円周方向に膨らんだような形状になってしまうことを抑制することができる。また、巻出し配管部用管継手500内(具体的にはベローズ管510内)に消火剤ガスが通過した際の圧力によるベローズ管510の変形を抑制することができる。
【0035】
上記のとおり、ベローズ管510の谷部が独立している場合、各谷部に独立した複数の補強部材520を設け、それぞれをベローズ管510の各谷部に固定する必要がある。しかし、本実施形態によれば、1つ(1本)の補強部材520を、複数の谷部が螺旋状に連続することにより構成される一続きの溝に挿入し、ベローズ管510を圧縮することにより谷部に固定することができる。2つ(2本)以上の補強部材520を、複数の谷部が連続することにより構成される一続きの溝に挿入すれば、耐圧強度をさらに向上させることができる。しかし、補強部材520の数(本数)を必要以上に増加させると、ベローズ管510の可撓性が損なわれる。したがって、ベローズ管510に巻き付ける補強部材520の数は、ベローズ管510の可撓性を損なわない数(本数)であることが好ましい。なお、本実施形態では、1本の補強部材520をベローズ管510に巻きつけている。
【0036】
補強部材520には断面が円形のワイヤや金属製の針金などを用いることが好ましく、特にベローズ管510と同等以上の強度及び耐食性を有する材質のワイヤや金属製の針金などが好ましい。ベローズ管510がステンレス製である場合には、例えば、ワイヤや金属製の針金などもステンレス製にすることができる。
【0037】
以上のように、1つ(1本)の補強部材520には、1本のワイヤや金属製の針金等などの線形状の部材が用いられることから、補強部材520は「補強線」と呼ぶことができる。
【0038】
(伸長抑制部材530)
伸長抑制部材530は、ベローズ管510の外面を覆い、ベローズ管510の伸長を抑制する部材である。伸長抑制部材530は、ブレイドなどと呼ばれることがある。ベローズ管510は内圧が加わると長さ方向に伸び出し、真直ぐなパイプに戻ろうとする性質を持つ。ベローズ管510の山部及び谷部の形状(ひだの形状)が乱れると、ベローズ管510が有する本来の可撓性が損なわれてしまう。伸長抑制部材530は、例えば、筒状に編まれ、ベローズ管510に密着するようにベローズ管510の外周を被覆する。伸長抑制部材530は、ベローズ管510の両端部において、溶接、加締め、圧着、あるいはこれら1つ以上の方法の組み合わせなどによって固定(例:強固に固定)される。つまり、伸長抑制部材530の一端とベローズ管510の一端、及び伸長抑制部材530の他端とベローズ管510の他端とを上記の方法で固定することにより、ベローズ管510が伸びることを抑制することができる。伸長抑制部材530は、例えば、ステンレス製の線材や帯材及び普通鋼線などを編み込むことにより作製することができる。
【0039】
(第1の治具固定用リング542、第2の治具固定用リング544)
第1の治具固定用リング542及び第2の治具固定用リング544は、治具(巻出し配管部用管継手500を建築資材等に取り付けるための治具)が固定される部位である。つまり、第1の治具固定用リング542や第2の治具固定用リング544に治具を固定し、この固定した治具を巻出し配管部用管継手500の施工現場にある建築資材等に固定することにより、巻出し配管部用管継手500を施工現場において固定することができる。第1の治具固定用リング542や第2の治具固定用リング544は、伸長抑制部材530(ブレイド)の一端や他端を押さえるように設けられるため、ブレイド押さえリングと呼ばれることがある。第1の治具固定用リング542は、ベローズ管510の一端側(消火配管30側)に設けられる。第2の治具固定用リング544は、ベローズ管510の他端側(噴射ヘッド40側)に設けられる。第1の治具固定用リング542及び第2の治具固定用リング544は中空の部材である。中空部分には、ベローズ管510及びこれの外面を覆う伸長抑制部材530が挿入される。
【0040】
第1の治具固定用リング542及び第2の治具固定用リング544は、例えば、溶接、加締め、圧着、あるいはこれら1つ以上の方法の組み合わせなどによって、伸長抑制部材530の外面に固定することができる。第1の治具固定用リング542及び第2の治具固定用リング544の外形は、例えば、円柱形状や多角柱形状などであるが、特に限定されない。
【0041】
火災時の消火剤ガス放出時の反動(放射反力)により、ベローズ管510が大きく暴れ、噴射ヘッド40の位置が安定しない問題が生じる。この暴れを抑えるためには、ベローズ管510を、施工現場にある建築資材等に対して強固に固定する治具が必要となる。消火ガス放出時の反力は一般の水系の消火設備に比べはるかに大きく、固定する治具も大型となり専用の金具で固定する必要がある。そこで、様々な治具の使用を想定し、第1の治具固定用リング542及び第2の治具固定用リング544は、いずれも、水消火や泡消火の場合に用いるものと比較して、長めであることが好ましい。具体的には、水消火や泡消火の場合の2倍以上10倍以下の長さであることが好ましい。より具体的には、第1の治具固定用リング542及び第2の治具固定用リング544の長さは、いずれも、50mm以上200mm以下であることが好ましい。
【0042】
(中空部材550、ナット560)
中空部材550は、円筒形状の部材である。中空部材550は、ベローズ管510の端部に、溶接や接着などの方法で固定されている。中空部材550とベローズ管510の境界は、第1の治具固定用リング542や第2の治具固定用リング544に覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0043】
ベローズ管510の一端には中空部材550が接続(接続の具体例:溶接等による接合)され、中空部材550にはナット560に挿入されている。中空部材550は、スリーブなどと呼ばれることがある。中空部材550は凸部Xを有しており、ナット560は、第1の治具固定用リング542とこの凸部Xとの間Dにおいて、中空部材550の長さ方向に移動可能とされる。つまり、ナット560は、第1の治具固定用リング542と凸部Xとの間Dにおいて、
図4の左右方向において移動させることができる。このように、本実施形態では、ベローズ管510に第1取付部材572(消火配管30側の取付部材)を接合(溶接等)するのではなく、ベローズ管510と第1取付部材572の間にナット560を設けている。
【0044】
ナット560は、中空部材550に回転可能に取り付けられる。これにより、第1取付部材572を消火配管30(あるいは、エルボ、ソケット、ティー等の継手などの、消火配管30に繋がる部材。以下、消火配管30あるいは消火配管30に繋がる部材のことを「消火配管30等」という。)に取り付けるあたり、巻出し配管部用管継手500の全体を回転させることなく、ナット560を回転させるだけで、第1取付部材572を巻出し配管部用管継手500(ベローズ管510)に接続や連結などすることができる。
【0045】
ナット560は、さらに、中空部材550に回転可能であることに加えて傾斜可能(つまり、回転可能且つ傾斜可能)に取り付けられることが好ましい。具体的には、ナット560の開口と中空部材550の外面との間に、ナット560を僅かに傾けることができるよう、隙間Q(遊び)が設けられていることが好ましい。このようにすれば、消火配管30等が傾いている場合であっても、消火配管30等の傾き(角度)に合わせて消火配管30等に第1取付部材572を取り付け、この第1取付部材572の傾き(角度)に合わせて第1取付部材572にナット560を取り付けることができる。ナット560を僅かに傾けることができる場合は、第1取付部材572を消火配管30等が僅かに傾いている場合であっても、消火配管30等の傾き(角度)にあわせて第1取付部材572を消火配管30等に取り付けた後、巻出し配管部用管継手500の全体(特にベローズ管510)を傾かせることなく、ナット560を傾かせて、第1取付部材572をナット560に取り付けることができる。
【0046】
ナット560の内側には、例えばネジ溝が形成されている。このネジ溝は、第1取付部材572の外面に設けられたネジ溝と螺合する。なお、本実施形態では、消火配管30側にのみナット560及び中空部材550を設けているが、ナット560及び中空部材550は噴射ヘッド40側にも設けることができる。この場合は、上記した消火配管30側のナット560及び中空部材550を第1ナット及び第1中空部材といい、噴射ヘッド40側のナット及び中空部材を第2ナット及び第2中空部材と称する。第2中空部材は、ベローズ管の他端に接続(接続の具体例:溶接等による接合)される。第2ナット及び第2中空部材は、上記した消火配管30側のナット560及び中空部材550と同じ構成及び機能を有する。
【0047】
ナット560には、例えば袋ナットを用いることが好ましい。
【0048】
(第1取付部材572、第2取付部材574)
第1取付部材572(消火配管30側の取付部材)は、巻出し配管部用管継手500を消火配管30等に取り付けるための部材である。第2取付部材574(噴射ヘッド40側の取付部材)は、巻出し配管部用管継手500を噴射ヘッド40(あるいは、エルボ、ソケット、ティー等の継手などの、噴射ヘッド40に繋がる部材。以下、噴射ヘッド40あるいは噴射ヘッド40に繋がる部材のことを「噴射ヘッド40等」という。)に取り付けるための部材である。取り付けの方法の一例としては、螺合や嵌合、あるいはこれらの組み合わせなどを挙げることができる。螺合により取り付ける場合には、第1取付部材572や第2取付部材574の例えば内表面にネジ溝が設けられる。
【0049】
巻出し配管部用管継手500が消火配管30側に上記したナット560(第1ナット)を有している場合、第1取付部材572は第1ナットに螺合により取り付けられる。巻出し配管部用管継手500が噴射ヘッド40側に上記したナット560と同じ構成及び機能を有する第2ナットを有している場合、第2取付部材574は第2ナットに螺合により取り付けられる。巻出し配管部用管継手500が消火配管30側にのみ上記したナット560(第1ナット)を有しており、噴射ヘッド40側に上記したナット560と同じ構成及び機能を有する(第2ナット)を有していない場合、第2取付部材574は、ベローズ管510に溶接等により接合される。
【0050】
第1取付部材572の端部と第2取付部材574の端部との間の距離Lは、2000mm以下であることが好ましい。このようにすれば、実施形態に係る巻出し配管部用管継手500を横走り管として使用した場合において、巻出し配管部用管継手500の支持が不要となる。
【0051】
第1取付部材572はアダプタと呼ばれることがある。また、第2取付部材574は、ベローズ管510に溶接等により接合される場合はニップルと呼ばれることがあり、第2ナットに螺合により取り付けられる場合は、第1取付部材572と同様に、アダプタと呼ばれることがある。第2取付部材574は、ニップルとして機能する場合は、ベローズ管510と溶接等で接合される部材であって、噴射ヘッド等に対してはネジ接続で接続される。第2取付部材574とベローズ管510が溶接等で接合される場合は、第2取付部材574と噴射ヘッド40等と接続するにあたっては、ベローズ管510を回転させることになる。
【0052】
以上説明した巻出し配管部用管継手500によれば、ベローズ管510が可撓性を有することにより、非熟練工であっても、ガス系消火設備1の施工現場の状況にあわせて、巻出し配管部50を施工することができる。また、ベローズ管510の谷部に沿うように少なくとも1本(ベローズ管510の可撓性を損なわない程度の本数)の補強部材520がベローズ管510に巻き付けられているため、ベローズ管510に可撓性を持たせつつ、ベローズ管510の耐圧強度を確保することができる。したがって、耐圧強度は確保されていながらも、簡単に施工できる巻出し配管部用管継手500及びこれを用いたガス系消火設備1を提供することができる。
【0053】
本実施形態では、ナット560と第1取付部材572は平行ネジ接続のため、接続や取外し等が容易に行える。また、ナット560は中空部材550にあらかじめルーズで嵌め合わされており、自由に回転、前後可動する。ベローズ管510には中空部材550スリーブが溶接等で接合される。消火配管30等との接続の際は第1取付部材572のみをナット560から取り外し、第1取付部材572のみを消火配管30等に接続することができる。第1取付部材572とベローズ管510を接続する場合にはベローズ管510と一体となったナット560を、消火配管30等と接続された第1取付部材572にあてがい、ナット560のみを回転させるだけで接続が行える。第2取付部材574を噴射ヘッド40等に接続する場合と異なり、ベローズ管510を回転させる必要がないため、作業が楽に行える利点がある。
【0054】
ガス系消火設備1用の巻出し配管では、正確に天井ボードの穴位置に噴射ヘッド40を取付けるために、複数本の鋼材配管とエルボ等の継手を組み合わせて位置を調整し、複数回のねじ込み施工を要する。しかし、この巻出し配管を施工する際の位置合わせには熟練の技術を要し、正確な寸法の配管を切り出すことに時間を要するため施工者の負担となっている。また、地震等の不測の事態が発生しても迅速に事業を復旧できるように、耐震天井化工事が求められている。本実施形態で説明したように、巻出し配管が可撓性を有するベローズ管510を有することで、複数本の鋼管によるねじ込み作業が1回のねじ込み作業で完了するため、施工簡易化と時間の短縮につながる。水消火では既に実用化されているが、ガス消火用に求められる使用圧力は水と比較し高い。このため、フレキは固く、可とう性が損なわれたものを使用する必要があった。しかし、実施形態によれば、可撓性を有するベローズ管510の谷部に補強部材520を設けることで、耐圧性と可撓性を両立するガス消火設備用巻出し配管を提供することができる。また、可撓性を有するベローズ管510を備えた実施形態に係るガス系消火設備用巻出し配管部50によれば、地震等の振動発生時に生じる位相のずれを、区画に固定された消火配管30と天井下地部に固定される噴射ヘッド40との間において吸収することができる。したがって、天井の耐震性を向上させることができる。
【0055】
[実施形態に係る巻出し配管部用管継手の組み立て方法]
図6A乃至
図6Dは、実施形態に係る巻出し配管部用管継手の組み立て方法の一例を説明する模式的側面図である。
図6A乃至
図6Dでは、理解を容易にするため、各部材の一部を適宜透過的に描き、それら部材に覆われている部材が見えるようにしている。以下、
図6A乃至
図6Dを参照しつつ、実施形態に係る巻出し配管部用管継手の組み立て方法を説明する。
【0056】
まず、
図6Aに示すように、ベローズ管510に補強部材520を巻き付け、ピッチを圧縮する。
【0057】
次に、
図6Bに示すように、伸長抑制部材530、第1の治具固定用リング542、及び第2の治具固定用リング544をベローズ管510に固定する。
【0058】
次に、
図6Cに示すように、ナット560を通した中空部材550を第1の治具固定用リング542に固定する。また、第2取付部材574を第2の治具固定用リング544に固定する。
【0059】
次に、
図6Dに示すように、第1取付部材572をナット560に螺合する。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらの説明によって何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
1 ガス系消火設備
20 貯蔵容器
30 消火配管
40 噴射ヘッド
50 巻出し配管部
500 巻出し配管部用管継手
510 ベローズ管
520 補強部材
530 伸長抑制部材
542 第1の治具固定用リング
544 第2の治具固定用リング
550 中空部材
560 ナット
572 第1取付部材
574 第2取付部材
X 中空部材550が有する凸部
L 第1取付部材572の端部と第2取付部材574の端部との間の距離
P ベローズ管510の谷部と谷部の間の間隔
T1 ベローズ管510の肉厚
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵容器に繋がる消火配管と、
消火剤ガスを噴射する噴射ヘッドと、
前記消火配管と前記噴射ヘッドとの間に設けられる巻出し配管部と、を有し、
前記巻出し配管部は、巻出し配管部用管継手を有し、
前記巻出し配管部用管継手は、
山部と谷部が繰り返される管壁を備えたベローズ管と、
前記ベローズ管に巻き付けられている補強部材と、を有し、
前記ベローズ管は、可撓性を有し、
前記ベローズ管の谷部は、螺旋状に延伸する一続きの溝であり、
前記補強部材は、前記ベローズ管の谷部に沿って前記ベローズ管に巻き付けられており、
前記ベローズ管の材料としてステンレス鋼が用いられているガス系消火設備。
【請求項2】
請求項1に記載のガス系消火設備であって、
前記ステンレス鋼は、クロムとニッケルを含む合金鋼であるガス系消火設備。
【請求項3】
請求項2に記載のガス系消火設備であって、
前記ベローズ管の全重量に占めるクロムの含有量は18%以上であるガス系消火設備。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガス系消火設備であって、
前記補強部材は、前記補強部材が前記ベローズ管の谷部に密着固定されるように、前記ベローズ管の谷部に挟み込まれているガス系消火設備。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガス系消火設備であって、
前記補強部材は、断面が円形のワイヤであるガス系消火設備。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガス系消火設備であって、
前記補強部材は、金属製の針金であるガス系消火設備。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のガス系消火設備であって、
前記ベローズ管の肉厚は、0.2mm以上0.5mm以下であるガス系消火設備。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のガス系消火設備であって、
前記ベローズ管の最高使用圧力は、前記補強部材が巻き付けられている状態で、2MPa以上10.8MPa以下であるガス系消火設備。