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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096303
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074400
(22)【出願日】2024-05-01
(62)【分割の表示】P 2021551378の分割
【原出願日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019180381
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一慶
(57)【要約】
【課題】誤検出による警報を低減することが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】ホイールローダ10は、車両本体1と、後方検出部71と、警報装置61と、コントローラ126と、を備える。後方検出部71は、車両本体1の後方の物体を検出し、車両本体1の後方の物体との距離を計測する。警報装置61は、後方検出部71によって車両本体1の後方に物体を検出したことを報知する。コントローラ126は、後方検出部71で計測された車両本体1から物体までの距離の変化に基づいて、警報装置61による報知の変更を行う。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の後方の物体を検出し、前記車両本体の後方の物体との距離を計測する後方検出部と、
前記後方検出部によって前記車両本体の後方に物体を検出したことを報知する第1報知部と、
前記後方検出部で計測された前記車両本体から前記物体までの距離の変化に基づいて、前記第1報知部による報知の変更を行う制御部と、
を備えた、
作業機械。
【請求項2】
前記第1報知部による報知の変更は、報知の停止、報知の音量の抑制、または報知の出力形態を変更することを含む、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記後方検出部は、前記車両本体の後進時において前記車両本体の後方の物体の検出を行い、
前記後方検出部は、前記車両本体に設けられた車輪が後方に向かうように回転していることまたは前記車両本体の前進または後進を設定可能な操作部材が後進の位置に設定されていることによって後進時を検出する、
請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御部は、前記後方検出部によって物体を検出した際に前記車両本体を自動的に制動する自動ブレーキ、前記自動ブレーキの制動力の抑制、または前記自動ブレーキの停止を行う、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記自動ブレーキの制動力の抑制または前記自動ブレーキの停止を報知する第2報知部を更に備え、
前記制御部は、前記自動ブレーキの制動力の抑制または前記自動ブレーキの停止を行った場合、前記第2報知部によってオペレータに報知を行う、
請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記制御部は、第1時点における前記物体との距離より前記第1時点よりも後の第2時点における前記物体との距離が大きくなった場合に、前記第1報知部による報知の変更を行う、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1報知部による報知の変更を行う場合、前記車両本体を自動的に制動する自動ブレーキの制動力の抑制、または前記自動ブレーキの停止を行う、
請求項6記載の作業機械。
【請求項8】
車両本体の後方の物体を検出し、前記車両本体の後方の物体との距離を計測する後方検出ステップと、
計測された前記車両本体から前記物体までの距離の変化を判定する距離変化判定ステップと、
距離の変化に基づいて、前記車両本体の後方に物体を検出したことの報知の変更を行う制御ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一例であるホイールローダにおいて、後方の障害物を検出し自動で停止する自動停止システムが提案されている。
【0003】
たとえば、非特許文献1では、ホイールローダにステレオカメラを設置し、後進時に障害物を認識した場合にフットブレーキを動作させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“NIPPO/ホイールローダー自動停止システム開発/ステレオカメラで障害物対応”2016年7月8日3面、日刊建設工業新聞オンライン、インターネット<URL: https://www.decn.co.jp/?p=72204>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ホイールローダでは土砂を積み上げる掻き上げ作業が行われることがあり、ホイールローダは土砂の山の傾斜を登って掻き上げ作業を行う。このような場合、従来の自動停止システムでは後進時に地面を障害物として検出して障害物警報を出力するためオペレータには煩わしかった。
【0006】
本開示は、誤検出による警報を低減することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る作業機械は、車両本体と、後方検出部と、傾斜状態検出部と、制御部と、を備える。後方検出部は、車両本体の後方の物体を検出する。傾斜状態検出部は、車両本体の傾斜状態を検出する。制御部は、傾斜状態検出部で検出された車両本体の傾斜状態に基づいて、後方検出部の検出に対応した制御を決定する。
【0008】
本態様に係る作業機械は、車両本体と、後方検出部と、第1報知部と、制御部と、を備える。後方検出部は、車両本体の後方の物体を検出し、車両本体の後方の物体との距離を計測する。第1報知部は、後方検出部によって車両本体の後方に物体を検出したことを報知する。制御部は、後方検出部で計測された車両本体から前記物体までの距離の変化に基づいて、第1報知部による報知の変更を行う。
【0009】
本態様に係る作業機械の制御方法は、後方検出ステップと、傾斜状態検出ステップと、制御ステップと、を備える。後方検出ステップは、車両本体の後方の物体を検出する。傾斜状態検出ステップは、車両本体の傾斜状態を検出する。制御ステップは、傾斜状態検出ステップで検出された車両本体の傾斜状態に基づいて、後方検出ステップの検出に対応した制御を決定する。
【0010】
本態様に係る作業機械の制御方法は、後方検出ステップと、制御ステップと、を備える。後方検出ステップは、車両本体の後方の物体を検出し、車両本体の後方の物体との距離を計測する。制御ステップは、計測された車両本体から物体までの距離の変化に基づいて、車両本体の後方に物体を検出したことの報知の変更を行う。
【0011】
本態様に係る作業機械は、車両本体と、後方検出部と、制御部と、を備える。車両本体は、走行体と、走行体の前方に配置された作業機と、を有する。後方検出部は、車両本体の後方の物体を検出する。制御部は、走行体の駆動による前進時に前記作業機の動作に基づいて掻き上げ作業状態であるか否かを判定し、掻き上げ作業状態の判定に基づいて、後進時に後方の物体との接近を抑制する制御を変更する。
【0012】
本態様に係る作業機械の制御方法は、掻き上げ判定ステップと、後方検出ステップと、制御ステップと、を備える。掻き上げ判定ステップは、走行体および作業機を有する車両本体の走行体の駆動による前進時に作業機の動作に基づいて、掻き上げ作業状態を判定する。後方検出ステップは、車両本体の後方の物体を検出する。制御ステップは、掻き上げ作業状態の判定に基づいて、後進時に後方の物体との接近を抑制する制御を変更する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、誤検出による警報を低減することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示にかかる実施の形態1のホイールローダの側面図。
図2図1のホイールローダの駆動系、制動系、操作系、報知系およびコントローラの構成を示すブロック図。
図3図2のコントローラの構成を示すブロック図。
図4図1のホイールローダにおける障害物検出による自動ブレーキ機能を説明するための側面図。
図5図1のホイールローダによる掻き上げ作業を説明するための図。
図6図1のホイールローダの制御動作を説明するためのフロー図。
図7】本開示にかかる実施の形態2のホイールローダの駆動系、制動系、操作系、報知系およびコントローラの構成を示すブロック図。
図8図7のコントローラの構成を示すブロック図。
図9図1のホイールローダによる掻き上げ作業を説明するための図。
図10図7のホイールローダの制御動作を説明するためのフロー図。
図11】本開示にかかる実施の形態3のホイールローダの駆動系、制動系、操作系、および報知系の構成を示すブロック図。
図12図11のコントローラの構成を示すブロック図。
図13図11のホイールローダの作業状態の遷移を示す図。
図14図11のホイールローダの制御動作を説明するためのフロー図。
図15】本開示にかかる実施の形態の変形例におけるホイールローダの駆動系、制動系、操作系、報知系およびコントローラの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示にかかる作業機械の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
<構成>
(ホイールローダの概要)
図1は、本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)の構成を示す模式図である。本実施の形態のホイールローダ10は、車両本体1に、車体フレーム2と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4(車輪の一例)、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7(車輪の一例)、およびステアリングシリンダ9と、を備えている。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。図1では、前後方向をXで示し、前方向を示すときはXf、後方向を示すときはXbで示す。また、車体フレーム2、フロントタイヤ4、およびリアタイヤ7は、走行体の一例に相当する。
【0017】
ホイールローダ10は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0018】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0019】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、フロントフレーム11の前部に揺動可能に取り付けられている。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17(アクチュエータの一例)と、ベルクランク18(サブリンクの一例)と、を有する。
【0020】
ブーム14の基端は、ブームピン14aによってフロントフレーム11の前部に回動可能に取り付けられている。ブーム14の先端は、バケット15の後部に回動可能に取り付けられている。バケット15の後部は、開口15bの反対側である。ブーム14の基端と先端の間には、リフトシリンダ16のシリンダロッド16aの先端が回動可能に取り付けられている。リフトシリンダ16のシリンダ本体は、フロントフレーム11に回動可能に取り付けられている。
【0021】
ベルクランク18は、一方の端部がバケットシリンダ17のシリンダロッド17aの先端に回動可能に取り付けられている。ベルクランク18の他方の端部は、バケット15の後部に回動可能に取り付けられている。ベルクランク18は、両端部の間においてブーム14の中央近傍のベルクランクサポート14dに回動可能に支持されている。バケットシリンダ17のシリンダ本体は、フロントフレーム11に回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ17の伸縮力は、ベルクランクによって回転運動に変換されてバケット15に伝達される。
【0022】
バケット15は、前方に向かって開口するようにブーム14の先端にバケットピン15aによって回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ17の伸縮によって、バケット15はブーム14に対して回動し、チルト動作(矢印J参照)およびダンプ動作(矢印K参照)を行う。ここで、バケット15のチルト動作とは、バケット15の開口15bおよび爪15cがキャブ5に向かって回動することにより傾く動作である。バケット15のダンプ動作とは、チルト動作とは反対であって、バケット15の開口15bおよび爪15cがキャブ5から遠ざかるように回動することにより傾く動作である。
【0023】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のためのハンドルや、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジン31が収納されている。
【0024】
(ホイールローダの制御に関する構成)
図2は、ホイールローダ10の本開示の制御に関する構成を示すブロック図である。
【0025】
ホイールローダ10には、駆動系21と、制動系22と、操作系23と、報知系24と、検出系25と、コントローラ26(制御部の一例)と、を有する。
【0026】
駆動系21は、ホイールローダ10の駆動を行う。制動系22は、ホイールローダ10の走行中において制動を行う。操作系23は、オペレータによって操作が行われる。オペレータによる操作系23の操作に基づいて駆動系21および制動系22が動作する。報知系24は、操作系23の操作または検出系25による検出結果に基づいて、オペレータに対する報知を行う。検出系25は、車両本体1の傾斜状態、および車両本体1の後方の障害物(物体の一例)の検出を行う。コントローラ26(制御部の一例)は、操作系23に対するオペレータの操作および検出系25による検出に基づいて、駆動系21、制動系22、および報知系24の操作を行う。
【0027】
(駆動系21)
駆動系21は、エンジン31と、HST32と、トランスファ33と、アクスル34と、フロントタイヤ4およびリアタイヤ7と、を有する。
【0028】
エンジン31は、例えばディーゼル式のエンジンであり、エンジン31で発生した駆動力がHST(Hydro Static Transmission)32のポンプ32aを駆動する。
【0029】
HST32は、ポンプ32aと、モータ32bと、ポンプ32aとモータ32bを接続する油圧回路32cと、を有する。ポンプ32aは、斜板式可変容量型のポンプであって斜板の角度をソレノイド32dによって変更することができる。ポンプ32aがエンジン31によって駆動されることにより作動油を吐出する。吐出された作動油は、油圧回路32cを通ってモータ32bに送られる。モータ32bは、斜板式であって、斜板の角度をソレノイド32eによって変更することができる。油圧回路32cは、第1駆動回路32c1と、第2駆動回路32c2と、を有する。作動油が、ポンプ32aから第1駆動回路32c1を介してモータ32bに供給されることにより、モータ32bが一方向(例えば、前進方向)に駆動される。作動油が、ポンプ32aから第2駆動回路32c2を介してモータ32bに供給されることにより、モータ32bが他方向(例えば、後進方向)に駆動される。なお、作動油の第1駆動回路32c1若しくは第2駆動回路32c2への吐出方向はソレノイド32dによって変更することができる。
【0030】
トランスファ33は、エンジン31からの出力を前後のアクスル34に分配する。
【0031】
前側のアクスル34には一対のフロントタイヤ4が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。また、後側のアクスル34には一対のリアタイヤ7が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。
【0032】
(制動系22)
制動系22は、ブレーキ弁41と、サービスブレーキ42と、パーキングブレーキ43と、を有する。
【0033】
ブレーキ弁41は、例えばEPC(Electric Proportional Valve)弁であり、開度を調整することによってサービスブレーキ42に送る作動油の量を調整することができる。
【0034】
サービスブレーキ42は、アクスル34に設けられている。サービスブレーキ42は、油圧式のブレーキであり、例えばブレーキ弁41の開度が大きいときには制動力が強くなり、ブレーキ弁41の開度が小さいときには制動力が弱くなる。
【0035】
自動ブレーキの機能として、後述するブレーキペダル54が操作されていない場合でもブレーキ弁41がコントローラ26からの指示によって駆動され、サービスブレーキ42が作動する。
【0036】
パーキングブレーキ43は、トランスファ33に設けられている。パーキングブレーキ43としては、制動状態と非制動状態に切り替え可能な湿式多段式のブレーキや、ディスクブレーキなどを用いることができる。
【0037】
(操作系23)
操作系23は、アクセル51と、FNRレバー52(操作部材の一例)と、パーキングスイッチ53と、ブレーキペダル54と、復帰スイッチ55と、自動ブレーキ解除スイッチ56と、を有する。
【0038】
アクセル51は、キャブ5内に設けられている。オペレータは、アクセル51を操作してスロットル開度を設定する。アクセル51は、アクセル操作量を示す開度信号を生成してコントローラ26へ送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてエンジン31の回転速度を制御する。
【0039】
なお、アクセル51をオフ状態にすると、エンジン31への燃料供給が停止され、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御され、内部慣性がはたらくため制動力(後述する弱いブレーキ力)が発生する。
【0040】
FNRレバー52は、キャブ5に設けられている。FNRレバー52は、前進、ニュートラル、または後進の位置をとることができる。FNRレバー52の位置を示す操作信号がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、ソレノイド32dを制御して前進または後進を切り替える。
【0041】
パーキングスイッチ53は、キャブ5内に設けられており、オン・オフに状態を切り替え可能なスイッチであり、その状態を示す信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてパーキングブレーキ43を制動状態または非制動状態にする。
【0042】
ブレーキペダル54は、キャブ5内に設けられている。ブレーキペダル54は、ブレーキ弁41の開度を調整する。また、ブレーキペダル54は、操作量をコントローラ26に送信する。
【0043】
復帰スイッチ55は、後述する自動ブレーキによって車両本体1が停止した後、停止状態から復帰するためにオペレータによって操作される。
【0044】
自動ブレーキ解除スイッチ56は、自動ブレーキの機能を解除し、自動ブレーキの機能が働かないように設定する。
【0045】
(報知系24)
報知系24は、警報装置61(第1報知部の一例)と、機能OFF通知ランプ62(第2報知部の一例)と、自動ブレーキ作動通知ランプ63と、を有する。
【0046】
警報装置61は、後述する検出系25の後方検出部71の検出に基づいて車両本体1の後方に障害物を検出した場合にオペレータに警報を行う。警報装置61は、例えば、ランプを有し、ランプを点灯させてもよい。また、ランプに限らず、警報装置61がスピーカを有し、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに警報を表示させてもよい。
【0047】
機能OFF通知ランプ62は、コントローラ26の判断によって自動ブレーキの機能が抑制または停止されている場合に、例えば点灯しオペレータに報知する。また、機能OFF通知ランプ62は、オペレータの判断によって自動ブレーキ解除スイッチ56が操作され自動ブレーキの機能がオフ状態になっている場合に例えば点灯し、オペレータに報知する。また、機能OFF通知ランプ62が消灯している場合には、自動ブレーキの機能を作動することが可能な状態であることを示す。また、機能OFF通知ランプ62は、ランプに限らなくてもよく、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに通知を表示させてもよい。
【0048】
自動ブレーキ作動通知ランプ63は、自動ブレーキが作動している状態であることをオペレータに通知し、復帰スイッチ55による復帰動作が必要なことを通知する。なお、復帰スイッチ55が操作され自動ブレーキが解除されると、自動ブレーキ作動通知ランプ63が消灯する。
【0049】
なお、自動ブレーキ作動通知ランプ63は、ランプに限らなくてもよく、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに通知を表示させてもよい。
【0050】
上述のように報知系24によるオペレータに対する情報の報知の手段は、ランプ、音、モニター等適宜選択することができる。
【0051】
(検出系25)
検出系25は、図2に示すように、後方検出部71と、車体角度センサ72(傾斜状態検出部の一例)と、を有する。
【0052】
後方検出部71は、車両本体1の後方の障害物を検出する。後方検出部71は、例えば、図1に示すように車両本体1の後端に取り付けられているが、後端に限らなくても良い。
【0053】
後方検出部71は、例えばミリ波レーダを有している。送信アンテナから発したミリ波帯の電波が障害物の表面で反射して戻ってくる様子を受信アンテナで検出し、物体までの距離を測定することができる。後方検出部71による検出結果がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、後進時に所定範囲内に障害物が存在することを検出できる。なお、ミリ波レーダに限らなくてもよく、例えばカメラなどであってもよい。
【0054】
車体角度センサ72は、車両本体1の傾斜状態を検出する。車体角度センサ72は、車両本体1の角度を検出することによって、車両本体1が傾斜状態であるか否かを検出する。なお、車体角度センサ72の代わりにIMU(Inertial Measurement Unit)を用いても良く、車体内外に設置されるカメラの検出画像に基づきホイールローダ10の傾斜状態を決定してもよい。また、ホイールローダ10の傾斜状態を検出可能な構成であればよく、これらの構成に限定されなくてもよい。
【0055】
(コントローラ26)
コントローラ26は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリと、ストレージを含む。コントローラ26は、ストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコントローラ26に配信されてもよい。
【0056】
図3は、コントローラ26の構成を示すブロック図である。
【0057】
コントローラ26は、自動ブレーキ制御決定部81と、ブレーキ指示部82と、報知指示部83と、を有する。なお、コントローラ26は、一つに限らず複数設けられてもよく、自動ブレーキ制御決定部81と、ブレーキ指示部82と、報知指示部83の各機能も複数のコントローラに分かれて設けられていてもよい。
【0058】
自動ブレーキ制御決定部81は、自動ブレーキの制御について決定を行う。自動ブレーキ制御決定部81は、障害物判定部91と、傾斜状態判定部92と、決定部93と、を有する。
【0059】
障害物判定部91は、後進時に障害物が存在するか否かを判定する。障害物判定部91は、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が後方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が後進位置であることによって後進が行われていることを検出する。障害物判定部91は、後進を検出している状態において、検出系25の後方検出部71から所定範囲内における障害物の検出情報を受け取ると、障害物が存在すると判定する。
【0060】
傾斜状態判定部92は、車体角度センサ72によって傾斜角が所定角度(例えば、15°)以上と検出された場合、車両本体1が地面を障害物と誤検出するような傾斜面に配置されていると判定する。なお、傾斜角θ(後述する図5参照)は、水平に対してホイールローダ10のフロント側が持ち上がった角度である。
【0061】
決定部93は、障害物判定部91の判定結果と傾斜状態判定部92の判定結果に基づいて、自動ブレーキの制御を決定する。
【0062】
決定部93は、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定し、傾斜状態判定部92が所定角度未満の傾斜角であると判定すると、後述する図4に示すように、自動ブレーキを作動させ且つ障害物の存在を知らせる警報を発する第1制御を行うことを決定する。これは、傾斜角が所定角度未満と検出されたことにより、ホイールローダ10が掻き上げなどの作業を行っておらず、障害物の検出が誤検出ではないと判断できるためである。
【0063】
また、決定部93は、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定したが、傾斜状態判定部92が所定角度以上の傾斜角であると判定した場合、自動ブレーキを作動させず且つ自動ブレーキの機能が停止していることを報知する第2制御を行うことを決定する。これは、傾斜角が所定角度以上と検出されたことにより、後述する図5に示すように、ホイールローダ10が掻き上げなどの作業を行っており、地面を障害物と誤検出すると判断できるためである。
【0064】
ブレーキ指示部82は、決定部93の第1制御または第2制御のいずれかの決定に基づいて自動ブレーキの制御を行う。本明細書における自動ブレーキとは、障害物判定部91の判定結果と傾斜状態判定部92の判定結果に基づいて、自動で車両本体1に制動力を作動させることであり、後述するようにサービスブレーキ42による制動力だけに限られるものではない。
【0065】
報知指示部83は、決定部93の第1制御または第2制御のいずれかの決定に基づいて、警報装置61または機能OFF通知ランプ62に動作指示を行う。
【0066】
決定部93が第1制御を行うと決定した場合、ブレーキ指示部82は、アクセル51をオフすることによってエンジン31への燃料供給を停止する。そして、ブレーキ指示部82は、ブレーキ弁41を操作することによってサービスブレーキ42を駆動して車両本体1を停止させる。報知指示部83は、警報装置61を作動し、障害物の存在および自動ブレーキの作動をオペレータに報知する。
【0067】
図4は、後進時に障害物Sを検出し、車両本体1を停止させた状態を示す図である。第1制御では、障害物Sの手前で車両本体1が停止するように予め設定された設定ブレーキ力(制動力ともいえる)でサービスブレーキ42を作動させて車両本体1を停車させる。図4では、停止した車両本体1が二点鎖線で示されている。
【0068】
なお、設定ブレーキ力による自動ブレーキは、上記のようにサービスブレーキ42によって車両本体1を制動させなくてもよく、パーキングブレーキ43を作動させてもよい。この場合、決定部93が第1制御を行うと決定すると、ブレーキ指示部82は、アクセル51をオフすることによってエンジン31への燃料供給を停止する。そして、ブレーキ指示部82は、パーキングブレーキ43を制御して、車両本体1を制動する。
【0069】
決定部93が第2制御を行うと決定した場合、報知指示部83は、機能OFF通知ランプ62を点灯させる制御を行い、ブレーキ指示部82によるブレーキ弁41の動作および報知指示部83による警報装置61の動作を行わせない。
【0070】
図5は、ホイールローダ10が掻き上げ作業を行っている状態を示す図である。図5に示すように、地面Gに土砂の山Mが形成されており、その斜面iにホイールローダ10が配置されている。掻き上げの際には、ホイールローダ10は斜面iを上り降りするため、後進するたびに地面Gを障害物Sとして検出する。そのため、本実施の形態では、車体角度センサ72によって検出された角度θが所定角度以上の場合には、障害物を検知したとしても自動ブレーキを行わず、警報装置61を作動させないように制御を行う。傾斜角θは、例えば、フロントタイヤ4の軸とリアタイヤ7の軸を結ぶ線Lと水平線Hとの成す角度となる。
【0071】
これにより、誤検知を抑制できるため、作業効率を向上することが出来る。
【0072】
<動作>
次に、本実施の形態のホイールローダ10の制御動作について説明する。
【0073】
図6は、本実施の形態のホイールローダ10の制御動作を示すフロー図である。
【0074】
はじめに、ステップS10(後方検出ステップの一例)において、コントローラ26の障害物判定部91が、車両本体1の後進時に障害物が検出されたか否かを判定する。障害物判定部91は、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が後方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が後進位置であること、によって車両本体1が後進状態であることを判定する。障害物判定部91は、後進が行われていることを検出している状態において、検出系25の後方検出部71から所定範囲内における障害物の検出情報を受け取ると、障害物が存在すると判定する。
【0075】
なお、ステップS10において、障害物が存在すると判定されない場合は、ステップS14においてコントローラ26は自動ブレーキを作動させずに制御が終了する。ステップS14では、障害物の存在が検出されていないため、警報装置61による警報も行われない。
【0076】
ステップS11(傾斜状態検出ステップの一例)において、傾斜状態判定部92によって傾斜角度θが所定閾値(例えば、15度)未満と判定された場合、決定部93は第1制御を行うことを決定し、ステップS12において第1制御が行われる。
【0077】
ステップS12(制御ステップの一例)における第1制御では、コントローラ26において、ブレーキ指示部82が、エンジン31への燃料供給を停止する。そして、ブレーキ指示部82がブレーキ弁41を操作することによってサービスブレーキ42を駆動して車両本体1を停止させる。報知指示部83は、警報装置61を作動し、障害物の存在および自動ブレーキの作動をオペレータに報知し、制御が終了する。
【0078】
一方、ステップS11において、傾斜角度θが所定閾値以上と判定された場合、決定部93は第2制御を行うことを決定し、ステップS13において第2制御が行われる。
【0079】
ステップS13(制御ステップの一例)における第2制御では、報知指示部83は警報装置61を作動させず、機能OFF通知ランプ62を点灯させ、制御が終了する。なお、コントローラ26はブレーキ弁41の制御を行わない。
【0080】
これにより、地面Gを障害物として検出するような傾斜状態の場合には、自動ブレーキの機能および警報装置61を停止することができる。
【0081】
このため、誤検出による警報を低減することができる。
【0082】
また、自動ブレーキの機能を停止することが可能となるため、掻き上げ作業時に地面を検出し、土砂の山Mから下りられなくなることを防ぐことができる。
【0083】
また、例えば、ステップS12において第1制御を行って制御が終了した後に再び制御が開始され、次にステップS10において障害物が検出されない場合、ステップS14においてブレーキの作動が停止される。このように後進途中に障害物が存在しなくなった場合にも適切に自動ブレーキの制御を行うことができる。なお、後進途中に障害物が現れた場合も同様である。
【0084】
(実施の形態2)
次に、本開示にかかる実施の形態2のホイールローダ10について説明する。
【0085】
<構成>
本実施の形態2のホイールローダ10は、実施の形態1と比較して車体角度センサ72を有していない。
【0086】
図7は、本実施の形態2のホイールローダの駆動系、制動系、操作系、報知系およびコントローラの構成を示すブロック図である。図8は、図7に示すコントローラ126の構成を示すブロック図である。
【0087】
本実施の形態2の検出系125は、後方検出部71を有しているが、車体角度センサ72を有していない。
【0088】
また、本実施の形態2におけるコントローラ126の自動ブレーキ制御決定部181は、実施の形態1における自動ブレーキ制御決定部81の傾斜状態判定部92の代わりに距離変化判定部94を有している。
【0089】
本実施の形態2の距離変化判定部94は、後方検出部71からの検出結果を用いて検出された物体までの距離の変化を判定する。後方検出部71に例えばミリ波レーダを用いることにより、物体までの距離を計測することができる。
【0090】
図5においてホイールローダ10の掻き上げ動作について説明したが、掻き上げ動作では土砂の山Mの上り下りが行われる。図9は、図5の状態から下がった状態のホイールローダ10を示す図である。図5では、後方検出部71から地面Gまでの距離がd1で示されており、図9では、後方検出部71から地面Gまでの距離がd2で示されている。図5および図9に示すように、ホイールローダ10が土砂の山Mを下ると傾斜が緩やかになるため、d1<d2に示すように後方検出部71から地面Gまでの距離が長くなる。
【0091】
本実施の形態の距離変化判定部94は、後進時に障害物判定部91で障害物と判定した物体の距離が遠くなるか否かを判定する。
【0092】
決定部93は、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定し、後進時に障害物までの距離が遠くなると判定すると、自動ブレーキを作動させず且つ自動ブレーキの機能が停止していることを報知する第2制御を行うことを決定する。これは、後進時に障害物までの距離が長くなっているため、ホイールローダ10が掻き上げなどの作業を行っており、地面を障害物と誤検出していると判断できるためである。なお、必ずしも自動ブレーキの機能が停止していることを報知しなくてもよい。
【0093】
また、決定部93は、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定し、後進時に障害物までの距離が遠くなっていないと判定すると、自動ブレーキを作動させ且つ障害物の存在を知らせる警報を発する第1制御を行うことを決定する。これは、障害物までの距離が遠くなっていないため、ホイールローダ10が掻き上げなどの作業を行っておらず、障害物の検出が誤検出ではないと判断できるためである。
【0094】
<動作>
次に、本実施の形態2のホイールローダ10の制御動作について説明する。
【0095】
図10は、本実施の形態2のホイールローダ10の制御動作を示すフロー図である。
【0096】
はじめに、ステップS10(後方検出ステップの一例)において、コントローラ26の障害物判定部91が、車両本体1の後進時に障害物が検出されたか否かを判定する。障害物判定部91は、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が後方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が後進位置であることによって車両本体1が後進状態であることを判定する。障害物判定部91は、後進が行われていることを検出している状態において、検出系125の後方検出部71から所定範囲内における障害物の検出情報を受け取ると、障害物が存在すると判定する。なお、ステップS10において、障害物が存在すると判定されない場合は、ステップS14においてコントローラ26は自動ブレーキを作動させずに制御が終了する。ステップS14では、障害物の存在が検出されていないため、警報装置61による警報も行われない。
【0097】
次に、ステップS111(距離変化判定ステップの一例)において、距離変化判定部94が、後進時に障害物判定部91で障害物との距離が遠くなっているか否かを判定する。距離変化判定部94は、所定の第1時点における障害物との距離と、第1時点よりも後の第2時点における障害物との距離を比較し、第2時点における距離が第1時点における距離よりも大きくなった場合に、障害物との距離が遠ざかっていると判定する。
【0098】
ステップS111において、傾斜状態判定部92によって障害物との距離が遠くなっていないと判定された場合、決定部93は第1制御を行うことを決定し、ステップS12において第1制御が行われる。
【0099】
ステップS12(制御ステップの一例)における第1制御では、コントローラ26において、ブレーキ指示部82が、エンジン31への燃料供給を停止する。そして、ブレーキ指示部82がブレーキ弁41を操作することによってサービスブレーキ42を駆動して車両本体1を停止させる。報知指示部83は、警報装置61を作動し、障害物の存在および自動ブレーキの作動をオペレータに報知し、制御が終了する。
【0100】
一方、ステップS111において、距離変化判定部94によって障害物との距離が遠くなっていると判定された場合、決定部93は第2制御を行うことを決定し、ステップS13において第2制御が行われる。
【0101】
ステップS13(制御ステップの一例)における第2制御では、報知指示部83は警報装置61を作動させず、機能OFF通知ランプ62を点灯させ、制御が終了する。なお、コントローラ26はブレーキ弁41の制御を行わない。
【0102】
これにより、地面Gを障害物として検出していることを判断でき、自動ブレーキの機能および警報装置61を停止することができる。
【0103】
(実施の形態3)
次に、本開示にかかる実施の形態3のホイールローダ10について説明する。
【0104】
実施の形態1では、傾斜角度が所定閾値以上の場合に、掻き上げ作業を行っていると判定され、第2制御が行われているが、本実施の形態3では、作業機3の動作等に基づいて掻き上げ作業を行っていると判定される。
【0105】
<構成>
図11は、本実施の形態3のホイールローダ10の制御に関する構成を示すブロック図である。
【0106】
本実施の形態3のホイールローダ10の駆動系221には、実施の形態1の駆動系21の構成に加えて、シリンダ駆動部35が更に設けられている。
【0107】
シリンダ駆動部35は、動力取り出し部35aと、作業機ポンプ35bと、制御弁35cと、を有している。動力取り出し部35aは、PTO(Power Take Off)であり、例えば車両本体1を停止させた状態で、エンジン31からの出力を取り出し、作業機ポンプ35bに伝達する。作業機ポンプ35bは、エンジン31の動力による駆動し、制御弁35cに作動油を吐出する。制御弁35cは、作業機ポンプ35bから供給された作動油を、コントローラ26からの指令に基づいてリフトシリンダ16(ブームシリンダの一例)およびバケットシリンダ17に供給する。
【0108】
本実施の形態3のホイールローダ10の検出系225は、実施の形態1と異なり、車体角度センサ72を有しておらず、後方検出部71に加えて、ブーム角度センサ73(作業機高さ検出部の一例)と、ブームボトム圧センサ74と、を有している。
【0109】
ブーム角度センサ73は、ブーム14の角度を検出し、コントローラ226(制御部の一例)に検出値を出力する。ブーム角度センサ73は、ポテンショメータで構成することができ、例えばブームピン14aに配置される。
【0110】
ブーム14の角度は、図1に示すように、ブームピン14aの中心から前方に延びる水平線Lhに対する、ブームピン14aの中心からバケットピン15aの中心に向かう方向に延びる直線Lbの角度θである。直線Lbが水平である場合をブーム角度が0°とする。直線Lbが水平線Lhよりも上方にある場合のブーム14の角度θを正の値とする。直線Lbが水平線Lhよりも下方にある場合のブーム14の角度θを負の値とする。
【0111】
なお、ブーム角度センサ73は、リフトシリンダ16に設けられたストロークセンサであってもよい。
【0112】
ブームボトム圧センサ74は、リフトシリンダ16のボトム側に取り付けられている。リフトシリンダ16のボトム側に圧力が加えられ、この圧力でシリンダが伸長しブーム14が上昇する。ブームボトム圧センサ74は、リフトシリンダ16のシリンダボトム側の油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出する。ブームボトム圧センサ74は、検出したボトム圧をコントローラ226に送信する。
【0113】
図12は、コントローラ226の構成を示すブロック図である。
【0114】
コントローラ226は、実施の形態1のコントローラ26と異なり、傾斜状態判定部92に代えて掻き上げ判定部95を有している。掻き上げ判定部95は、前進時にホイールローダ10の作業内容が掻き上げ作業であるか否かを判定する。
【0115】
掻き上げ判定部95は、前進時に掘削作業状態であるか否かを判定し、掘削作業状態の判定が保たれたうえで、掻き上げ作業状態であるか否かを判定する。
【0116】
図13は、作業内容の状態遷移を示す図である。掻き上げ判定部95は、掘削作業状態W1と掘削作業以外の状態W2を判定する。
【0117】
掻き上げ判定部95は、前進時に、条件Aと条件Bが成立した場合に掘削作業状態W1であると判定する。
【0118】
掻き上げ判定部95は、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が前方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が前進位置であることのいずれかによって車両本体1が前方に走行している(前進状態)ことを判定する。
【0119】
条件(A)は、ブームボトム圧センサ74による検出値であるブームボトム圧が、第1閾値以上を満たすことである。第1閾値は、コントローラ226に記憶されている。ブームボトム圧が所定閾値以上となることで、リフトシリンダ16に圧力がかかったことが分かる。すなわち、掘削等の際には、バケット15に土砂を積み込んだりすることで、リフトシリンダ16に圧力が付与されるため、ブームボトム圧を検出することによって掘削作業状態であるか否かを判定できる。
【0120】
条件(B)は、ブーム角度センサ73による検出値であるブーム14の角度θが第2閾値以下を満たすことである。掘削の際は、ブーム14の角度θが水平状態よりも下方に位置するため、第2閾値は、負の値であることが好ましい。第2閾値は、コントローラ226に記憶されている。
【0121】
すなわち、リフトシリンダ16に所定の第1閾値以上の圧が負荷され、ブーム14の角度θが所定の第2閾値以下に低くなったときに、ホイールローダ10の状態が掘削作業状態W1であると判定される。掻き上げ判定部95は、掘削作業状態W1であると判定すると、掘削フラグをONに設定し、ブーム圧低下フラグをOFFに設定する。
【0122】
次に、掻き上げ判定部95は、掘削作業状態W1において、掻き上げ作業状態W3か、掻き上げ作業以外の状態W4であるかを判定する。掻き上げ判定部95は、掘削フラグがONの状態で、条件(C)を満たした場合に、掻き上げ作業状態W3であると判定し、条件(C)を満たさない場合には、掻き上げ作業以外の状態W4であると判定する。
【0123】
条件(C)は、ブーム角度センサ73による検出値であるブーム14の角度θが第3閾値より大きい状態を満たすことである。第3閾値は、例えば負の値である。第3閾値は、第2閾値よりも大きい値に設定されている。第3閾値は、コントローラ226に記憶されている。なお、第2閾値は、バケット15の位置がタイヤ接地面に近い時を示す。第2閾値は、例えば-40°に設定することができる。また、第3閾値は、ブーム14が水平状態と第2閾値の状態との中間程度に位置する時を示す。第3閾値は、例えば-20°に設定することができる。第3閾値におけるブーム14が、第2閾値におけるブーム14よりも上方に回動した状態となるように第3閾値および第2閾値は設定されている。
【0124】
なお、条件(B)および条件(C)は、ブーム14の角度の大小に基づいて設定されているが、これに限らず、バケット15の位置を検出し、その高さに基づいて設定されていてもよい。バケット15の位置は、例えばキャブ5等に設けられたカメラによって検出することができる。また、第3閾値におけるバケット15の高さは、第2閾値におけるバケット15の高さよりも高くなるように第3閾値および第2閾値は設定されている。
【0125】
このように、作業機3の高さに基づいて、条件(B)と条件(C)を設定し、第3閾値における作業機3の高さを、第2閾値における作業機3の高さよりも高く設定してもよい。
【0126】
掻き上げ判定部95は、掻き上げ作業状態W3であると判定すると、掻き上げフラグを立てる。また、掻き上げ判定部95は、掘削フラグがONの状態で条件(C)を満たさないと判定した場合、掻き上げフラグをOFFに設定する。
【0127】
通常の掘削時と比べて掻き上げの際にはブーム14が上方に位置するため、掘削作業状態W1において、ブーム14の角度θを検出することによって、掻き上げ作業状態W3と掻き上げ作業以外の状態W4を判別することができる。
【0128】
なお、掻き上げ判定部95は、掘削フラグがONの状態において、条件(D)または条件(E)を満たした場合、ホイールローダ10が掘削作業以外の状態W2であるとして掘削フラグをOFFに設定する。
【0129】
条件(D)は、ブームボトム圧低下フラグがONの状態になっていることである。ブーム14の角度θに基づいて予め設定された閾値としてのブームボトム圧よりも、ブームボトム圧センサ74による検出値が所定時間の間小さい場合に、ブームボトム圧低下フラグがONに設定される。ここで、ブーム14の角度θに基づいて予め設定された閾値としてのブームボトム圧は、コントローラ226に記憶されている。
【0130】
このように、掻き上げ判定部95は、ブームボトム圧がブーム角度に基づいて設定される閾値よりも所定時間の間小さくなった場合に、ブーム圧低下フラグをONに設定し、掘削作業以外の状態W2に遷移したと判定して、掘削フラグをOFFに設定する。
【0131】
条件(E)は、FNRレバー52の位置が、前進(F)以外の位置(後進(N)かニュートラル(N))に配置されていることである。掻き上げ判定部95は、前進していない場合、掘削作業以外の状態W2であると判定し、掘削フラグをOFFに設定する。
【0132】
以上のように、掻き上げ判定部95は、条件(A)と条件(B)を満たして掘削作業状態W1であると判定した場合、その判定が保たれている状態において、さらに条件(C)を満たしたときに、ホイールローダ10が掻き上げ作業状態W3であると判定し、掻き上げフラグをONに設定する。
【0133】
決定部93は、障害物判定部91の判定結果と掻き上げ判定部95の判定結果に基づいて、自動ブレーキの制御を決定する。
【0134】
決定部93は、掻き上げ判定部95が掻き上げ作業を行っていない状態(図12では、掘削作業以外の状態W2または掻き上げ作業以外の状態W4)と判定し、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定した場合、自動ブレーキを作動させ且つ障害物の存在を知らせる警報を発する第1制御を行うことを決定する。これは、ホイールローダ10が掻き上げ作業を行っておらず、障害物の検出が誤検出ではないと判断できるためである。
【0135】
また、決定部93は、掻き上げ判定部95が掻き上げ作業状態W3であると判定した後に、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定した場合、自動ブレーキを作動させず且つ自動ブレーキの機能が停止していることを報知する第2制御を行うことを決定する。これは、ホイールローダ10が掻き上げ作業を行っており、地面を障害物と誤検出すると判断できるためである。
【0136】
<動作>
次に、本実施の形態3のホイールローダ10の制御動作について説明する。
【0137】
図14は、本実施の形態3のホイールローダ10の制御動作を示すフロー図である。
【0138】
はじめに、ステップS210において、掻き上げ判定部95が、車両本体1が前進しているか否かを判定する。掻き上げ判定部95は、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が前方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が前進位置であることのいずれかによってホイールローダ10が前方に走行している(前進状態)ことを判定する。
【0139】
ステップS210において、前進状態であると判定された場合、ステップS220において、掻き上げ判定部95が、ホイールローダ10が掘削作業状態W1であるか否かを判定する。掻き上げ判定部95は、ブームボトム圧に基づく条件(A)とブーム角度に基づく条件(B)を満たしているときにホイールローダ10が掘削作業状態W1であると判定する。
【0140】
ステップS220において、条件(A)と条件(B)を満たし掘削作業状態W1であると判定された場合、掻き上げ判定部95は、掘削フラグをONに設定し、制御はステップS230に進む。
【0141】
ステップS230において、掻き上げ判定部95は、ホイールローダ10が掻き上げ作業状態W3であるか否かを判定する。掻き上げ判定部95は、掘削フラグがONに設定された状態で、ブーム角度に基づく条件(C)を満たしたときに掻き上げ作業状態W3であると判定する。
【0142】
ステップS230において、条件(C)を満たし掻き上げ作業状態W3であると判定された場合、掻き上げ判定部95は、掻き上げフラグをONに設定し、制御はステップS240に進む。
【0143】
ステップS240において、障害物判定部91は、ホイールローダ10が後進状態であるか否かを判定する。障害物判定部91は、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が後方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が後進位置であることのいずれかによってホイールローダ10が後方に走行している(後進状態)ことを判定する。
【0144】
ステップS240において、後進状態であると判定された場合、制御がステップS250に進む。
【0145】
ステップS250において、障害物判定部91は、障害物の存在を判定する。障害物判定部91は、検出系225の後方検出部71から所定範囲内における障害物の検出情報を受け取ると、障害物が存在すると判定する。
【0146】
ステップS250において、障害物が存在すると判定された場合、決定部93は第2制御を行うと決定し、ステップS260において第2制御が行われる。
【0147】
ステップS260(制御ステップの一例)における第2制御では、報知指示部83は警報装置61を作動させず、機能OFF通知ランプ62を点灯させ、制御が終了する。なお、コントローラ26はブレーキ弁41の制御を行わない。
【0148】
これにより、地面Gを障害物として検出していることを判断でき、自動ブレーキの機能および警報装置61を停止することができる。
【0149】
一方、ステップS210において、前進状態と判定されない場合、制御はステップS270進む。ステップS270において、障害物判定部91は、ホイールローダ10が後進状態であるか否かを判定する。障害物判定部91は、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が後方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が後進位置であることのいずれかによってホイールローダ10が後方に走行している(後進状態)ことを判定する。
【0150】
ステップS270において、後進状態であると判定された場合、制御がステップS280に進む。ステップS280において、障害物判定部91は、障害物の存在を判定する。障害物判定部91は、検出系225の後方検出部71から所定範囲内における障害物の検出情報を受け取ると、障害物が存在すると判定する。
【0151】
ステップS280において、障害物が存在すると判定された場合、決定部93は第1制御を行うと決定し、ステップS290において第1制御が行われる。
【0152】
ステップS280(制御ステップの一例)における第1制御では、コントローラ26において、ブレーキ指示部82が、エンジン31への燃料供給を停止する。そして、ブレーキ指示部82がブレーキ弁41を操作することによってサービスブレーキ42を駆動して車両本体1を停止させる。報知指示部83は、警報装置61を作動し、障害物の存在および自動ブレーキの作動をオペレータに報知し、制御が終了する。
【0153】
なお、ステップS220において、掘削作業であると判定されない場合、制動系22および報知系24を動作させずに制御が終了する。ステップS230において、掻き上げ作業であると判定されない場合、制動系22および報知系24を動作させずに制御が終了する。ステップS240において、後進状態であると判定されない場合、制動系22および報知系24を動作させずに制御が終了する。ステップS250において、障害物が検出されない場合、制動系22および報知系24を動作させずに制御が終了する。
【0154】
また、ステップS270において、後進状態と判定されない場合、制動系22および報知系24を動作させずに制御が終了する。また、ステップS280において、障害物が検出されない場合も制動系22および報知系24を動作させずに制御が終了する。
【0155】
<特徴>
(1)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、車両本体1と、後方検出部71と、車体角度センサ72(傾斜状態検出部の一例)と、コントローラ26(制御部の一例)と、を備える。後方検出部71は、車両本体1の後方の障害物(物体の一例)を検出する。車体角度センサ72は、車両本体1の傾斜状態を検出する。コントローラ26は、車体角度センサ72で検出された車両本体1の傾斜状態に基づいて、後方検出部71の検出に対応した制御を決定する。
【0156】
これにより、例えば掻き上げ作業等で車両本体1が傾斜した場所に配置されている場合には、地面Gを障害物として検出することを防ぐことが可能となるため、障害物の誤検出を防ぐことができる。なお、後方検出部71の検出に対応した制御は、後進時に後方の障害物S(物体の一例)との接近を抑制する制御ともいえる。
【0157】
(2)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、警報装置61(第1報知部の一例)を更に備える。警報装置61は、後方検出部71によって車両本体1の後方に障害物(物体の一例)を検出したことを報知する。後方検出部71の後方検出に対応した制御は、警報装置61による報知の停止を含む。
【0158】
これにより、地面Gを障害物として誤検出して障害物の存在を知らせる警報を発することを防ぐことが可能となる。
【0159】
(3)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、車両本体1と、後方検出部71と、警報装置61(第1報知部の一例)と、コントローラ126(制御部の一例)と、を備える。後方検出部71は、車両本体1の後方の物体を検出し、車両本体1の後方の物体との距離を計測する。警報装置61は、後方検出部71によって車両本体1の後方に物体を検出したことを報知する。コントローラ126は、後方検出部71で計測された車両本体1から物体までの距離の変化に基づいて、警報装置61による報知の変更を行う。
【0160】
これにより、ホイールローダ10が例えば掻き上げ作業等を行っている場合に、地面Gを障害物として検出することを防ぐことが可能となるため、障害物の誤検出を防ぐことができる。このため、警報装置61の警報を例えば停止させることができ、誤検出による警報を低減することができる。
【0161】
(4)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、後方検出部71は、車両本体1の後進時において車両本体1の後方の物体の検出を行う。後方検出部71は、車両本体1に設けられたフロントタイヤ4またはリアタイヤ7(車輪の一例)が後方に向かうように回転していることまたは車両本体1の前進または後進を設定可能なFNRレバー52(操作部材の一例)が後進の位置に設定されていることによって後進時を検出する。
【0162】
これによって、車両本体1が後進していることを検出することができる。
【0163】
(5)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、後方検出部71の検出に対応した制御は、後方検出部71によって障害物(物体の一例)を検出した際に車両本体1を自動的に制動する自動ブレーキと、自動ブレーキの停止を含む。
【0164】
これにより、地面Gを障害物Sと誤検出することによって自動ブレーキが作動して車両本体1を停止させることを防ぐことができる。
【0165】
(6)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ26(制御部の一例)は、後方検出部71によって車両本体1の後方に障害物(物体の一例)を検出した場合、車両本体1の傾斜が所定閾値未満のとき、警報装置61による障害物検出の報知を行い、車両本体1の傾斜が所定閾値以上のとき、警報装置61(第1報知部の一例)による報知の停止を行う。
【0166】
これにより、例えば掻き上げ作業等で車両本体1が傾斜した場所に配置されている場合に、地面Gを障害物として誤検出して警報を発することを防ぐことが可能となる。
【0167】
(7)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ26(制御部の一例)は、後方検出部71によって車両本体1の後方に障害物(物体の一例)を検出した場合、車両本体1の傾斜が所定閾値未満のとき、自動ブレーキを作動させ、車両本体1の傾斜が所定閾値以上のとき、自動ブレーキの停止を行う。
【0168】
これにより、例えば掻き上げ作業等で車両本体が傾斜した場所に配置されている場合に、自動ブレーキが作動して車両本体1を停止させることを防ぐことができる。
【0169】
(8)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、機能OFF通知ランプ62(第2報知部の一例)を更に備える。機能OFF通知ランプ62は、自動ブレーキの停止を報知する。コントローラ26(制御部の一例)は、自動ブレーキの抑制または停止を行った場合、機能OFF通知ランプ62によってオペレータに報知を行う。
これにより、自動ブレーキの抑制または停止が行われていることをオペレータに認識させることができる。
【0170】
(9)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、傾斜の所定閾値は、15°である。
【0171】
これにより、車両本体1は、建設現場などの急斜面に配置されていることを検出することができる。
【0172】
(10)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ126(制御部の一例)は、第1時点における物体との距離より第1時点よりも後の第2時点における物体との距離が大きくなった場合に、警報装置61(第1報知部の一例)による報知の変更を行う。
【0173】
このように検出された物体との距離が遠ざかった場合、ホイールローダ10が例えば掻き上げ作業等を行っていると判断することができる。
【0174】
(11)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ126(制御部の一例)は、警報装置61(第1報知部の一例)による報知の変更を行う場合、車両本体1を自動的に制動する自動ブレーキの停止を行う。
【0175】
これにより、地面Gを障害物Sと誤検出することによって自動ブレーキが作動して車両本体1を停止させることを防ぐことができる。
【0176】
(12)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、車体フレーム2(本体フレームの一例)と、ブーム14と、バケット15と、バケットシリンダ17(アクチュエータの一例)と、ベルクランク18(サブリンクの一例)と、を備える。ブーム14は、車体フレーム2の前部に揺動可能に取り付けられている。バケット15は、前方に向かって開口15bが配置されるようにブーム14に接続されブーム14に対して駆動する。バケットシリンダ17は、バケット15を駆動する。ベルクランク18は、ブーム14に取り付けられ、バケットシリンダ17の駆動力をバケット15へ伝達する。
【0177】
これにより、フロントローディング構成を有するホイールローダ10において、掻き上げ作業等を行っている場合に、地面Gを障害物Sと誤検出することによって警報装置61が作動する誤検出による警報を低減することができる。
【0178】
(13)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)の制御方法は、ステップS10(後方検出ステップの一例)と、ステップS11(傾斜状態検出ステップの一例)と、ステップS12、S13(制御ステップの一例)と、を備える。ステップS10は、車両本体1の後方の障害物(物体の一例)を検出する.ステップS11は、車両本体1の傾斜状態を検出する。ステップS12、S13は、ステップS11で検出された車両本体1の傾斜状態に基づいて、ステップS10の検出に対応した制御を決定する。
【0179】
これにより、例えば掻き上げ作業等で車両本体1が傾斜した場所に配置されている場合には、地面Gを障害物として検出することを防ぐことが可能となるため、障害物の誤検出を防ぐことができる。
【0180】
(14)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)の制御方法は、ステップS10(後方検出ステップの一例)と、ステップS111(距離変化判定ステップの一例)と、ステップS12、S13(制御ステップの一例)と、を備える。ステップS10は、車両本体1の後方の障害物(物体の一例)を検出する.ステップS11は、計測された車両本体1から障害物までの距離の変化を判定する。ステップS12、S13は、ステップS111で検出された距離の変化に基づいて、車両本体1の後方に物体を検出したことの報知の変更を行う。
【0181】
(15)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、車両本体1と、後方検出部71と、コントローラ226(制御部の一例)と、を備える。車両本体1は、車体フレーム2、フロントタイヤ4およびリアタイヤ7(走行体の一例)と、車体フレーム2の前方に配置された作業機3と、を有する。後方検出部71は、車両本体1の後方の障害物(物体の一例)を検出する。コントローラ226(制御部の一例)は、走行体の駆動による前進時に作業機3の動作に基づいて、掻き上げ作業状態である判定し、掻き上げ作業状態の判定に基づいて、後進時に後方の物体との接近を抑制する制御を変更する。
【0182】
これにより、掻き上げ作業で車両本体1が傾斜した場所に配置されている場合には、地面Gを障害物として検出することを防ぐことが可能となるため、障害物の誤検出を防ぐことができる。
【0183】
(16)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16(ブームシリンダの一例)と、を有する。ブーム14は、車体フレーム2の前部に揺動可能に取り付けられている。バケット15は、前方に向かって開口が配置されるようにブーム14に接続され、ブーム14に対して駆動する。リフトシリンダ16は、ブーム14を駆動する。ホイールローダ10は、ブームボトム圧センサ74と、ブーム角度センサ73(作業機高さ検出部の一例)と、を更に備える。ブームボトム圧センサ74は、リフトシリンダ16のボトム圧を検出する。ブーム角度センサ73は、ブーム14の角度θを検出する。コントローラ226は、リフトシリンダ16のボトム圧と作業機3の高さに基づいて、掻き上げ作業状態であるか否かの判定を行う。
【0184】
このように、ブーム14の角度θと、リフトシリンダ16のボトム圧を検出することで、ホイールローダ10が掻き上げ作業状態であるか否かを判定することができる。
【0185】
(17)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラは、リフトシリンダ16(ブームシリンダの一例)のボトム圧が第1閾値以上、且つ作業機3の高さが第2閾値以下の場合に掘削作業状態であると判定し、掘削作業状態との判定中に作業機3の高さが第3閾値より大きいとき、掻き上げ作業状態であると判定する。第3閾値における作業機3の高さが、第2閾値における作業機3の高さよりも高くなるよう第2閾値および第3閾値は設定されている。
【0186】
このように、作業機3の高さと、リフトシリンダ16のボトム圧を検出することで、ホイールローダ10が掘削作業状態であるか否かを判定し、掘削作業状態であると判定されたうえで、作業機3の高さに基づいて、その掘削作業が掻き上げ作業であるか否かを判定することができる。これは、通常の掘削時と比べて掻き上げの際には作業機3の高さが上方に位置するため、掘削作業状態において、掻き上げ作業状態と掻き上げ作業以外の状態を判別することができるためである。
【0187】
(18)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、ブーム14の角度を検出するブーム角度センサ73を有する。第2閾値および第3閾値は、ブーム14の角度として設定されている。
【0188】
このように、ブーム14の角度と、リフトシリンダ16のボトム圧を検出することで、ホイールローダ10が掘削作業状態であるか否かを判定し、掘削作業状態であると判定されたうえで、ブーム14の角度に基づいて、その掘削作業が掻き上げ作業であるか否かを判定することができる。これは、通常の掘削時と比べて掻き上げの際にはブーム14が上方に回動しているため、掘削作業状態において、掻き上げ作業状態と掻き上げ作業以外の状態を判別することができるためである。
【0189】
(19)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ226(制御部の一例)は、前進時の場合に、掘削作業状態であるか否かを判定する。コントローラ226は、フロントタイヤ4(車輪の一例)またはリアタイヤ7(車輪の一例)が前方に向かうように回転していることまたは車両本体1の前進または後進を設定可能なFNRレバー52(操作部材の一例)が前進の位置に設定されていることによって前進時を検出する。
【0190】
これによって、車両本体1の前進を検出することができる。
【0191】
(20)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、警報装置61(第1報知部の一例)を更に備える。警報装置61は、後方検出部71によって車両本体1の後方に障害物(物体の一例)を検出したことを報知する。後進時に後方の障害物S(物体の一例)との接近を抑制する制御は、警報装置61による報知の停止を含む。
【0192】
これにより、地面Gを障害物として誤検出して警報を発することを防ぐことが可能となる。
【0193】
(21)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)の制御方法は、ステップS220、S230(掻き上げ判定ステップの一例)と、ステップS250、S280(後方検出ステップの一例)と、ステップS260、S290(制御ステップの一例)と、を備える。S220、S230は、走行体および作業機3を有する車両本体1の走行体の駆動による前進時に作業機3の動作に基づいて、掻き上げ作業状態を判定する。ステップS250、S280は、車両本体1の後方の障害物(物体の一例)を検出する。ステップS260、S290は、掻き上げ作業状態の判定に基づいて、後進時に後方の障害物S(物体の一例)との接近を抑制する制御を変更する。
【0194】
これにより、掻き上げ作業で車両本体1が傾斜した場所に配置されている場合には、地面Gを障害物として検出することを防ぐことが可能となるため、障害物の誤検出を防ぐことができる。
【0195】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0196】
(A)
上記実施の形態では、ステップS13の第2制御に示すように自動ブレーキの機能を停止していたが、停止に限らなくても良く、第1制御のときよりもブレーキ弁41の開度を小さく設定して自動ブレーキのときよりも弱いブレーキ力が作動するように制御してもよい。この弱いブレーキが、自動ブレーキの抑制の一例に対応する。このとき、自動ブレーキの抑制を、機能OFF通知ランプ62で通知してもよい。
【0197】
なお、弱いブレーキ力はブレーキ弁41の開度を調整する代わりにオペレータがアクセル51をオフにした際の制御を行うことによって生じさせてもよい。オペレータがアクセル51をオフすることによって、エンジン31への燃料供給が停止され、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御され、弱いブレーキ力が作動される。すなわち、ブレーキ指示部82が、エンジン31への燃料供給を停止し、ポンプ32aとモータ32bの斜板を走行の抵抗となるように制御してもよい。
【0198】
また、アクセルをオフした場合の制御だけでなく、ニュートラルの位置になるようにFNRレバー52を操作した際の制御を行うことによって弱いブレーキ力を作動させてもよい。FNRレバー52がニュートラルの位置の場合、コントローラ26は、ソレノイド32d、32eを制御し、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように移動する。すなわち、ブレーキ指示部82が、エンジン31への燃料供給を停止し、ポンプ32aとモータ32bの斜板を走行の抵抗となるように制御してもよい。
【0199】
これによって、制動力が働き弱いブレーキ力が発生する。なお、ニュートラルの方がアクセル51をオフするだけよりも大きいブレーキ力を得ることができる。
【0200】
(B)
上記実施の形態では、駆動系21にHST32を用いているが、HSTに限らなくても良く、トルクコンバータであってもよい。図15は、駆動系21にトルクコンバータ132とトランスミッション133が設けられた構成を示すブロック図である。エンジン31からの駆動力はトルクコンバータ132を介してトランスミッション133に伝達される。トランスミッション133は、トルクコンバータ132を介して伝達されるエンジン31の回転駆動力を変速してアクスル34に伝達する。トランスミッション133には、パーキングブレーキ43が設けられている。
【0201】
トルクコンバータの場合、上記(A)で述べた弱いブレーキ力を生じさせるためには、上記と同様にブレーキ弁41の開度を小さく設定してもよい。また、HSTに比較してブレーキ力が弱くなるが、アクセル51をオフ状態にする制御を行うだけでもよい。なお、設定ブレーキ力を生じさせる場合は、上記実施の形態と同様に、ブレーキ弁41の開度を大きくするか、パーキングブレーキ43を用いればよい。
【0202】
さらに、HSTに限らず、HMT(Hydro Mechanical Transmission)が用いられても良い。
【0203】
(C)
上記実施の形態では、第2制御において、自動ブレーキを作動させず、警報装置61も作動させていないが、例えば警報装置61のみ動作させてもよい。また、自動ブレーキのみ作動させてもよく、自動ブレーキおよび警報装置61の双方を作動させてもよい。双方を作動させる場合は、第1制御と異なるように、第2制御では、自動ブレーキの制動力の抑制や、警報装置61の警報の大きさの抑制等が行われる。
【0204】
(D)
上記実施の形態のホイールローダ10は、自動ブレーキの機能を有しているが、自動ブレーキの機能を有していなくてもよい。この場合、第1制御では、自動ブレーキが作動せず、警報装置61が作動する。また、第2制御では、警報装置61の作動は行われない。
【0205】
(E)
上記実施の形態では、警報装置61の報知の変更の一例として第2制御において、警報装置61による警報を停止させているが、これに限らず、警報の音量を抑制してもよく、警報の出力形態を変更してもよい。警報の出力形態を変更するとは、例えば、音による報知を光による報知に変更することである。
【0206】
(F)
なお、制動力の制御は、サービスブレーキ42、パーキングブレーキ43、他に制動力を変更する手段を適宜適用できる。
【0207】
(G)
上記実施の形態3では、ステップS210において掻き上げ作業状態W3と判定された場合、ステップS214において障害物を検出した後に、ステップS215において第2制御が行われているが、ステップS214における障害物検出が設けられていなくてもよい。第2制御として、自動ブレーキの制動や警報の大きさを弱めたりする場合には、障害物の検出が必要であるが、自動ブレーキの機能および警報を停止して機能OFF通知ランプ62を点灯するだけの場合には、障害物の検出の有無にかかわらず掻き上げ作業状態の判定後に実行出来るためである。
【0208】
(H)
上記実施の形態1では、ステップS10において障害物を検出した後に、ステップS11において傾斜角度が所定閾値以上であるか判定しているが、ステップS11をステップS10の前に行ってもよい。
【0209】
(I)
上記実施の形態のホイールローダはオペレータが搭乗して操作してもよいし、無人で操作されてもよい。
【0210】
(J)
上記実施の形態では、作業機械の一例としてホイールローダを用いて説明したが、これに限られるものではなく、フォークリフト等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本開示の作業機械および作業機械の制御方法によれば、誤検出による警報を低減することが可能な効果を発揮し、ブルドーザ、ホイールローダ等として有用である。
【符号の説明】
【0212】
1 :車両本体
10 :ホイールローダ
26 :コントローラ
71 :後方検出部
72 :車体角度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15