(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096322
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】電圧制御型半導体素子の駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
H02M1/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074743
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2022569765の分割
【原出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020209306
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕章
(57)【要約】
【課題】電圧制御型半導体素子の半導体チップの温度監視を高精度で行う。
【解決手段】ドライブ回路24は、IGBT10のゲートを駆動する。ゲート抵抗26は、ドライブ回路24とIGBT10のゲートとの間に設置される。遅延回路28は、ドライブ回路24が出力する駆動信号をゲート電圧が過渡的に変化する期間の中で生じるミラー効果期間内に達するまでの所定の時間だけ遅延する。ワンショット回路30は、遅延回路28が出力した遅延信号の立ち上がり前縁または立ち下がり後縁からミラー効果期間より短いパルス幅を有するパルス信号を出力する。サンプルホールド回路40は、IGBT10のチップ温度と温度依存性があるゲート電圧をパルス信号が入力されている期間に取り込み、パルス信号の入力がなくなったときのゲート電圧を保持して出力する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御型半導体素子を駆動する駆動装置であって、
前記電圧制御型半導体素子のゲートを駆動するドライブ回路と、
前記ドライブ回路と前記電圧制御型半導体素子のゲートとの間に設置されたゲート抵抗と、
前記ドライブ回路が出力する駆動信号をゲート電圧が過渡的に変化する期間の中で生じるミラー効果期間内に達するまでの所定の時間だけ遅延する遅延回路と、
前記遅延回路が出力した遅延信号の立ち上がり前縁または立ち下がり後縁から前記ミラー効果期間より短いパルス幅を有するパルス信号を出力するワンショット回路と、
前記電圧制御型半導体素子のチップ温度と温度依存性がある前記ゲート電圧を前記パルス信号が入力されている期間に取り込み、前記パルス信号の入力がなくなったときの前記ゲート電圧を保持して出力するサンプルホールド回路と、
を備えた、電圧制御型半導体素子の駆動装置。
【請求項2】
前記サンプルホールド回路が出力する信号をチップ温度検出信号として外部に通知するチップ温度出力端子を備えている、請求項1記載の電圧制御型半導体素子の駆動装置。
【請求項3】
電圧制御型半導体素子を駆動する駆動装置であって、
前記電圧制御型半導体素子のゲートを駆動するドライブ回路と、
前記ドライブ回路と前記電圧制御型半導体素子のゲートとの間に設置されたゲート抵抗と、
前記ドライブ回路が出力する駆動信号をゲート電圧が過渡的に変化する期間の中で生じるミラー効果期間内に達するまでの所定の時間だけ遅延する遅延回路と、
前記遅延回路が出力した遅延信号の立ち上がり前縁または立ち下がり後縁から前記ミラー効果期間より短いパルス幅を有するパルス信号を出力するワンショット回路と、
前記電圧制御型半導体素子のチップ温度と温度依存性がある前記ゲート電圧を過熱検出閾値電圧に相当する基準電圧と比較する比較器と、
前記ワンショット回路が出力する前記パルス信号と前記比較器の出力信号とを入力し、前記ゲート電圧が前記基準電圧を超えると過熱検出信号を出力するアンド回路と、
前記電圧制御型半導体素子のチップ温度と温度依存性がある前記ゲート電圧を前記パルス信号が入力されている期間に取り込み、前記パルス信号の入力がなくなったときの前記ゲート電圧を保持して出力するサンプルホールド回路と、
を備えた、電圧制御型半導体素子の駆動装置。
【請求項4】
前記アンド回路が出力する前記過熱検出信号を外部に通知するアラーム出力端子と、前記サンプルホールド回路が出力する信号をチップ温度検出信号として外部に通知するチップ温度出力端子とを備えている、請求項3記載の電圧制御型半導体素子の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御型半導体素子のチップ温度を外部に出力する機能を備えた電圧制御型半導体素子の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導負荷をスイッチング制御したり電力変換を行ったりする半導体装置がある。このような半導体装置は、半導体スイッチング素子およびこの半導体スイッチング素子を駆動する駆動装置を備えているものがある。半導体スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)のような電圧制御型半導体素子が用いられる。
【0003】
電圧制御型半導体素子には、絶対最大定格によって許容温度が定義されている。電圧制御型半導体素子は、最大許容温度を超えて動作すると、半導体チップが熱破壊を起こすことがある。この半導体チップの熱破壊を予防または防止するには、チップ温度をモニタし、チップ温度が高温になっていると想定される場合には、電圧制御型半導体素子を定格値以下で動作させたり停止させたりしている。
【0004】
電圧制御型半導体素子のチップ温度を検出する方法として、半導体装置の中にサーミスタを備え、ケース内温度を検出して、動作条件からチップ温度を予測することが知られている。また、電圧制御型半導体素子のチップ上に温度検出用ダイオードを一体に形成し、その温度検出用ダイオードの温度特性からチップ温度を直接的に測定することも行われている。
【0005】
サーミスタによるチップ温度の予測方法は、サーミスタが半導体チップから離れた位置に搭載されているため、負荷変動で過電流が流れることによる急激な温度上昇に追従することができないという特性がある。一方、温度検出用ダイオードによるチップ温度の測定方法では、温度検出用ダイオードを半導体チップ上に作り込むため、活性面積が減少し、さらに、ダイオード専用電極を半導体チップ上に設けるため、活性面積がさらに減少する。このため、電流定格の小さい半導体スイッチング素子のチップ上に温度検出用ダイオードを搭載する場合、チップサイズが肥大化することになる。
【0006】
そこで、サーミスタまたは温度検出用ダイオードを用いることなしに電圧制御型半導体素子のチップの温度を検出する方法が提案されている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1に記載の技術によれば、IGBTをターンオフするときにミラープラトーの持続時間を検出し、このミラープラトーの持続時間の長さを温度に換算することで、温度を検出している。すなわち、特許文献1の技術では、ミラープラトーの時間遅延がIGBTの接合部温度と相互依存性があることを利用し、ミラープラトーの時間遅延からIGBTの接合部温度を決定している。
【0008】
特許文献2の技術では、半導体デバイスのスイッチング動作時におけるゲート電圧の時間変化を測定し、ゲート電圧の時間変化が半導体デバイスの温度と温度依存性があることを利用し、測定したゲート電圧の時間変化から半導体デバイスの温度を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-142704号公報
【特許文献2】特開2020-072569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術は、ミラープラトーの時間遅延であるミラー効果期間を正確に検出することが困難という問題がある。また、特許文献2の技術は、ゲート電圧上昇時間を測定し、温度依存性情報を参照してゲート電圧上昇時間に対応する半導体デバイスの温度をマイコンで算出する構成を有しているので、駆動装置が大型化してしまうという問題点がある。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、半導体チップの温度監視を高精度で行うことができ、また、半導体チップの温度検出のための構成を大型化することのない電圧制御型半導体素子の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電圧制御型半導体素子の駆動装置が提供される。この電圧制御型半導体素子を駆動する駆動装置は、電圧制御型半導体素子のゲートを駆動するドライブ回路と、ドライブ回路と電圧制御型半導体素子のゲートとの間に設置されたゲート抵抗と、ドライブ回路が出力する駆動信号をゲート電圧が過渡的に変化する期間の中で生じるミラー効果期間内に達するまでの所定の時間だけ遅延する遅延回路と、遅延回路が出力した遅延信号の立ち上がり前縁または立ち下がり後縁からミラー効果期間より短いパルス幅を有するパルス信号を出力するワンショット回路と、電圧制御型半導体素子のチップ温度と温度依存性があるゲート電圧をパルス信号が入力されている期間に取り込み、パルス信号の入力がなくなったときのゲート電圧を保持して出力するサンプルホールド回路とを備えている。
【0013】
また、本発明は、さらに別の電圧制御型半導体素子の駆動装置が提供される。この電圧制御型半導体素子を駆動する駆動装置は、電圧制御型半導体素子のゲートを駆動するドライブ回路と、ドライブ回路と電圧制御型半導体素子のゲートとの間に設置されたゲート抵抗と、ドライブ回路が出力する駆動信号をゲート電圧が過渡的に変化する期間の中で生じるミラー効果期間内に達するまでの所定の時間だけ遅延する遅延回路と、遅延回路が出力した遅延信号の立ち上がり前縁または立ち下がり後縁からミラー効果期間より短いパルス幅を有するパルス信号を出力するワンショット回路と、電圧制御型半導体素子のチップ温度と温度依存性があるゲート電圧を過熱検出閾値電圧に相当する基準電圧と比較する比較器と、ワンショット回路が出力するパルス信号と比較器の出力信号とを入力し、ゲート電圧が基準電圧を超えると過熱検出信号を出力するアンド回路と、電圧制御型半導体素子のチップ温度と温度依存性があるゲート電圧をパルス信号が入力されている期間に取り込み、パルス信号の入力がなくなったときのゲート電圧を保持して出力するサンプルホールド回路と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の電圧制御型半導体素子の駆動装置は、電圧制御型半導体素子のチップ温度を直接的かつリアルタイムに監視することができるので、チップ温度の監視を高精度で行うことができ、また、チップ温度を検出するための構成を小規模の回路構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施の形態に係るIGBTの駆動装置の構成例を示す回路図である。
【
図2】ミラー効果期間のゲート電圧とチップ温度との関係を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るIGBTの駆動装置の動作を説明するタイムチャートである。
【
図4】第2の実施の形態に係るIGBTの駆動装置の構成例を示す回路図である。
【
図5】第3の実施の形態に係るIGBTの駆動装置の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、電圧制御型半導体素子にIGBTを用い、そのIGBTを駆動する駆動装置に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一の符号で示される部分は、同一の構成要素を示している。
【0017】
図1は第1の実施の形態に係るIGBTの駆動装置の構成例を示す回路図、
図2はミラー効果期間のゲート電圧とチップ温度との関係を示す図、
図3は第1の実施の形態に係るIGBTの駆動装置の動作を説明するタイムチャートである。
【0018】
図1には、半導体スイッチング素子であるIGBT10と、このIGBT10を駆動する駆動装置20とが示されている。IGBT10および駆動装置20は、たとえば、一つのパッケージに内蔵されてインテリジェント・パワー・モジュールと呼ばれる半導体装置を構成する。
【0019】
IGBT10は、IGBT10をターンオフした際に誘導負荷に蓄えられたエネルギを電源側へ還流させる働きをするFWD(Free Wheeling Diode)12が逆並列に接続されている。すなわち、FWD12のアノードは、IGBT10のエミッタに接続され、FWD12のカソードは、IGBT10のコレクタに接続されている。
【0020】
駆動装置20は、プリドライバ22と、ドライブ回路24と、ゲート抵抗26とを備えている。プリドライバ22は、外部の上位装置からPWM(Pulse Width Modulation)信号が入力される端子INを有し、プリドライバ22の出力端子は、ドライブ回路24の入力端子に接続される。
【0021】
ドライブ回路24の出力端子は、ゲート抵抗26の一方の端子に接続され、ゲート抵抗26の他方の端子は、IGBT10のゲートに接続される端子Gに接続されている。ドライブ回路24は、また、IGBT10のエミッタに接続される端子Eに接続されている。端子INに入力されたPWM信号は、プリドライバ22およびドライブ回路24を介して駆動信号SDRVに変換され、駆動信号SDRVは、ゲート抵抗26を介してゲート電圧VGEとなり、端子Gに供給される。
【0022】
駆動装置20は、また、遅延回路28と、ワンショット回路30と、抵抗32,34と、比較器36と、アンド回路38とを備えている。遅延回路28の入力端子は、ドライブ回路24の出力端子とゲート抵抗26の一方の端子との接続部に接続され、遅延回路28の出力端子は、ワンショット回路30の入力端子に接続されている。抵抗32の一方の端子は、電源のラインに接続され、抵抗32の他方の端子は、抵抗34の一方の端子に接続され、抵抗34の他方の端子は、グランドに接続されている。
【0023】
抵抗32,34は、分圧回路を構成し、基準電圧Vrefを出力する。基準電圧Vrefは、過熱検出閾値電圧に相当するものであって、たとえば、IGBT10の動作保証温度の上限である175℃に相当する電圧である。
【0024】
比較器36は、非反転入力端子がゲート抵抗26の他方の端子と端子Gとの接続部に接続され、反転入力端子が抵抗32の他方の端子と抵抗34の一方の端子との接続部に接続されている。ワンショット回路30の出力端子は、アンド回路38の第1の入力端子に接続され、比較器36の出力端子は、アンド回路38の第2の入力端子に接続されている。アンド回路38の出力端子は、外部の上位装置に過熱検出信号を通知するアラーム出力端子ALMに接続されている。
【0025】
ここで、IGBT10は、ターンオン時のミラー効果期間におけるゲート電圧VGEがIGBT10のチップ温度Tvjと温度依存性を有している。その温度依存性は、
図2に示したように、チップ温度Tvjに対してゲート電圧VGEがリニアに変化する特性であるため、ゲート電圧VGEからチップ温度Tvjを検出することができる。
【0026】
次に、以上の構成の駆動装置20の動作を
図3のタイムチャートを参照しながら説明する。なお、
図3のタイムチャートでは、上から、ドライブ回路24が出力する駆動信号SDRV、ゲート抵抗26と端子Gとの間のゲート電圧VGE、遅延回路28が出力する遅延信号、ワンショット回路30が出力するパルス信号、および、アラーム出力端子ALMの過熱検出信号を示している。
【0027】
駆動装置20の端子INにPWM信号が入力されると、そのPWM信号は、プリドライバ22を介してドライブ回路24に入力され、ドライブ回路24から駆動信号SDRVとして出力される。この駆動信号SDRVは、ゲート抵抗26を介してIGBT10のゲートに印加されると、ゲート電圧VGEは、
図3に示したように変化する。
【0028】
駆動信号SDRVがロー(L)レベルからハイ(H)レベルに立ち上がると、そのHレベルの電圧がゲート抵抗26を介してIGBT10のゲート・エミッタ間容量を充電する。ゲート・エミッタ間容量の充電電圧が、IGBT10のオン閾値電圧を超えると、IGBT10がターンオンし、IGBT10のコレクタ・エミッタがほぼ短絡状態になる。これにより、IGBT10のゲートには、ゲート・エミッタ間容量とゲート・コレクタ間容量(ミラー容量)とが接続され、IGBT10はミラー積分器として動作する。その動作期間であるミラー効果期間Tmでは、ゲート電圧VGEは、一定の状態を維持する。ミラー効果期間Tmが終了すると、IGBT10のゲートへさらなる充電が継続されているので、ゲート電圧VGEは、駆動信号SDRVのHレベルになるまで上昇する。
【0029】
駆動信号SDRVがLレベルになった後は、IGBT10がターンオンするときのゲート電圧VGEの変化と逆の変化を辿り、ゲート電圧VGEは、駆動信号SDRVのLレベルの電位になるまで低下する。
【0030】
駆動信号SDRVは、また、遅延回路28にも入力される。遅延回路28は、駆動信号SDRVを遅延時間Tdだけ遅れた遅延信号を出力する。この遅延時間Tdは、駆動信号SDRVの立ち上がり前縁の時点からゲート電圧VGEがミラー効果期間Tm中の任意の時点までの時間であり、IGBT10のスイッチング特性を基に決定される。遅延信号は、ワンショット回路30に入力され、遅延信号の立ち上がり前縁の時点から一定の幅を有するパルス信号を出力する。ワンショット回路30が出力するパルス信号は、ミラー効果期間Tmより短いパルス幅を有し、ミラー効果期間Tmにおけるゲート電圧VGEを取得する信号となる。
【0031】
ゲート電圧VGEは、また、比較器36の非反転入力端子にも供給される。比較器36は、その反転入力端子に過熱検出閾値電圧に相当する基準電圧Vrefを受けているので、ゲート電圧VGEが過熱検出閾値電圧に達しているかどうかを判断する二値化回路を構成している。比較器36は、ゲート電圧VGEが過熱検出閾値電圧に相当する基準電圧Vref未満のとき、Lレベルの信号を出力し、ゲート電圧VGEが基準電圧Vref以上のとき、Hレベルの信号を出力する。
【0032】
アンド回路38は、第1の入力端子にワンショット回路30が出力するパルス信号を受け、第2の入力端子に比較器36の出力信号を受けている。これにより、アンド回路38は、パルス信号を受けている期間だけ、比較器36の出力信号の通過を許可する。
【0033】
IGBT10のチップ温度が動作保証温度の範囲内の常温のとき、ミラー効果期間Tmのゲート電圧VGEは、基準電圧Vref未満であるので、比較器36は、Lレベルの信号を出力しており、このため、アンド回路38は、Lレベルの信号を出力する。
【0034】
IGBT10のチップ温度が動作保証温度の範囲を超えた高温のとき、ミラー効果期間Tmのゲート電圧VGEは、基準電圧Vref以上になるので、比較器36は、Hレベルの信号を出力し、アンド回路38は、Hレベルの信号を出力する。このHレベルの信号は、過熱検出信号としてアラーム出力端子ALMから外部の上位装置に通知される。
【0035】
なお、この実施の形態では、過熱検出信号をアラーム出力端子ALMから外部へ出力するようにしたが、図示しない過熱検出保護回路へ入力してIGBT10を強制的にターンオフするようにしてもよい。
【0036】
図4は第2の実施の形態に係るIGBTの駆動装置の構成例を示す回路図である。
第2の実施の形態に係るIGBT10の駆動装置20aは、第1の実施の形態の駆動装置20がIGBT10の過熱を検出してアラーム出力しているのに対し、チップ温度をリアルタイムに検出して出力する構成にしている。
【0037】
駆動装置20aは、プリドライバ22と、ドライブ回路24と、ゲート抵抗26と、遅延回路28と、ワンショット回路30とを備えており、これらは、第1の実施の形態の駆動装置20が備えるものと同じであるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0038】
駆動装置20aは、また、サンプルホールド回路40を備えている。サンプルホールド回路40は、オペアンプ42と、スイッチ素子44と、コンデンサ46と、オペアンプ48とを有している。オペアンプ42は、反転入力端子を自身の出力端子に接続してボルテージフォロワ回路を構成し、非反転入力端子は、IGBT10のゲートに接続される端子Gに接続されている。オペアンプ42の出力端子は、スイッチ素子44の一方の端子に接続され、スイッチ素子44の他方の端子は、コンデンサ46の一方の端子とオペアンプ48の非反転入力端子とに接続されている。コンデンサ46の他方の端子は、グランドに接続されている。スイッチ素子44の制御端子は、ワンショット回路30の出力端子に接続されている。オペアンプ48は、反転入力端子を自身の出力端子に接続してボルテージフォロワ回路を構成している。オペアンプ48の出力端子は、チップ温度出力端子TMPに接続されている。
【0039】
この駆動装置20aのサンプルホールド回路40によれば、入力インピーダンスの高いオペアンプ42によってゲート電圧VGEを受けるよう構成したことによりサンプルホールド回路40を端子Gに接続したことによる影響を最小にしている。オペアンプ42は、ボルテージフォロワ回路を構成しているので、非反転入力端子に入力されたゲート電圧VGEをそのまま出力する。スイッチ素子44は、制御端子にワンショット回路30が出力するHレベルのパルス信号を受けると、パルス信号を受けている期間だけオン(導通)し、オペアンプ42が出力した電圧(≒ゲート電圧VGE)をコンデンサ46に印加する。このとき、コンデンサ46の端子電圧は、オペアンプ42が出力した電圧に追従した電圧となる。
【0040】
ワンショット回路30が出力するパルス信号がLレベルになると、スイッチ素子44は、オフ(非導通)し、コンデンサ46の端子電圧は、スイッチ素子44がオフになったときの電圧に保持される。コンデンサ46に保持された電圧は、ボルテージフォロワ回路を構成するオペアンプ48によってそのままチップ温度検出信号として出力され、チップ温度出力端子TMPから外部の上位装置に通知される。
【0041】
なお、外部の上位装置では、駆動装置20aからチップ温度検出信号を受けると、そのチップ温度検出信号からチップ温度を求めることになる。すなわち、上位装置は、
図2に示したミラー効果期間のゲート電圧VGEとチップ温度Tvjとの関係を表すデータを有していて、チップ温度検出信号が示すゲート電圧VGEを対応するチップ温度Tvjに換算する。
【0042】
これにより、この駆動装置20aは、IGBT10のチップ温度を直接的かつリアルタイムに監視することができるので、チップ温度の監視を高精度で行うことができ、また、チップ温度を検出するための構成を小規模の回路構成で実現することができる。
【0043】
図5は第3の実施の形態に係るIGBTの駆動装置の構成例を示す回路図である。
第3の実施の形態に係るIGBT10の駆動装置20bは、第1の実施の形態の駆動装置20が有するIGBT10の過熱検出機能と、第2の実施の形態の駆動装置20aが有するIGBT10のチップ温度検出機能とを有している。
【0044】
駆動装置20bは、プリドライバ22と、ドライブ回路24と、ゲート抵抗26と、遅延回路28と、ワンショット回路30と、抵抗32,34と、比較器36と、アンド回路38と、サンプルホールド回路40とを備えている。以上の駆動装置20bの構成要素は、第1の実施の形態の駆動装置20および第2の実施の形態の駆動装置20aが備えるものと同じである。ただ、比較器36の非反転入力端子に入力されるゲート電圧VGEは、サンプルホールド回路40のオペアンプ42の出力端子から取得している。
【0045】
このように、この駆動装置20bは、第1の実施の形態の駆動装置20および第2の実施の形態の駆動装置20aが備えるものと同じであり、動作も駆動装置20,20aの動作と同じであるので、ここでは詳細な説明は省略する。この駆動装置20bによれば、過熱検出と温度検出との両方を実現することができる。
【0046】
なお、上記の実施の形態では、IGBT10をターンオンするときのミラー効果期間のゲート電圧VGEを検出し、そのゲート電圧VGEに対応するチップ温度を求めるようにした。しかし、IGBT10をターンオフするときのミラー効果期間またはIGBT10をターンオンおよびターンオフするときの両方のミラー効果期間のゲート電圧VGEを検出してチップ温度を求めるように変更してもよい。この場合、遅延回路28は、駆動信号SDRVの立ち下がり後縁の時点からゲート電圧VGEがミラー効果期間Tm中の任意の時点までの時間だけ遅れた遅延信号を出力することになる。また、駆動装置20,20aは、IGBT10に代えてMOSFETを駆動する装置としてもよい。
【0047】
以上、実施の形態に基づき、本発明の電圧制御型半導体素子の温度検出方法および駆動装置の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
10 IGBT
12 FWD
20,20a,20b 駆動装置
22 プリドライバ
24 ドライブ回路
26 ゲート抵抗
28 遅延回路
30 ワンショット回路
32,34 抵抗
36 比較器
38 アンド回路
40 サンプルホールド回路
42 オペアンプ
44 スイッチ素子
46 コンデンサ
48 オペアンプ