(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096336
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】空調衣服の服本体及び空調衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20240705BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D27/28 A
A41D27/28 D
A41D27/28 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075031
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2019198625の分割
【原出願日】2019-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
(72)【発明者】
【氏名】胡桃澤 武雄
(72)【発明者】
【氏名】沖 洋平
(72)【発明者】
【氏名】古屋 尚克
(72)【発明者】
【氏名】中西 英仁
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 勝司
(57)【要約】
【課題】他の衣服等の下に着用した際にも機能が低下し難い空調衣服の服本体及び空調衣服を提供する。
【解決手段】通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地Cを用いて形成され、ファン2を取り付けるためのファン取付孔13と、ファン2によって導入された空気を排出する空気排出部14と、を備えた服本体1であって、服地Cと着用者の身体との間及び/又は服地Cと服本体1の上に着用する他の衣服との間に空間を確保する外面側空間確保手段17、後身頃内面側空間確保手段18及び前身頃内面側空間確保手段19を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性のない又は空気導入手段による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地を用いて形成され、
前記空気導入手段を取り付けるための取付部と、
前記空気導入手段によって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備えた空調衣服の服本体であって、
前記服地と着用者の身体との間及び/又は前記服地と前記服本体の上に着用する他の衣服との間に空間を確保する空間確保手段を備えることを特徴とする空調衣服の服本体。
【請求項2】
前記空間確保手段は、前記服地に接続されたメッシュ状部材と、前記メッシュ状部材と前記服地との間の空間に備えられたスペーサと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服の服本体。
【請求項3】
前記空間確保手段は、前記取付部及びその周囲の前記服地を前記服本体の外面側から覆うように形成された外面側空間確保手段を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の空調衣服の服本体。
【請求項4】
前記取付部を複数備え、
前記外面側空間確保手段は、複数の前記取付部を一続きに覆うようにして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の空調衣服の服本体。
【請求項5】
前記外面側空間確保手段は、前記服本体の下端部近傍に備えられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の空調衣服の服本体。
【請求項6】
前記空間確保手段は、前記服本体の後身頃の内面側に備えられた後身頃内面側空間確保手段を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項7】
前記後身頃内面側空間確保手段は、前記服本体内面側の着用者の肩の上方に位置する部分まで連続して形成されていることを特徴とする請求項6に記載の空調衣服の服本体。
【請求項8】
前記空間確保手段は、前記服本体の前身頃の内面側に備えられた前身頃内面側空間確保手段を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項9】
前記前身頃内面側空間確保手段は、前記服本体内面側の着用者の肩の上方に位置する部分まで連続して形成されていることを特徴とする請求項8に記載の空調衣服の服本体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体と、
前記空調衣服の服本体の内部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調衣服の服本体及び空調衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、身体を冷却する空調衣服が実用化され、急速に普及しつつある。空調衣服は、通気性の低い素材で形成された服本体と、服本体の後側の下方に取り付けられた2つのファンと、2つのファンに電力を供給するための電源装置と、電源装置と2つのファンとを電気的に接続するための電源ケーブルと、を備える。
【0003】
ファンを作動させると、大量の空気がファンから服本体内に取り込まれ、取り込まれた空気の圧力により服本体と着用者の身体との間に空気流通路が自動的に形成される。取り込まれた空気は、形成された空気流通路を着用者の身体又は下着の表面に沿って流通し、例えば、襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部から外部に排出される。
そして、取り込まれた空気が、服本体と着用者の身体又は下着との間の空気流通路を流通する間に、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体が冷却される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、空調衣服を着用していることを周囲の人に知られないようにしたい場合等においては、空調衣服を着用した上に、他の何らかの衣服を着用する必要性が生じる場合がある。
しかしながら、従来の空調衣服は、その上に他の衣服を着用すると、ファンの外面側の空気導入路が塞がれて服本体内への空気の導入に支障が生じ、かつ、上に着用する衣服がある程度の重量を有するものである場合、その重量によって空調衣服が着用者の身体に押し付けられてしまい、空調衣服内部における空気流通路の形成にも支障が生じることから、十分に機能を発揮させることが困難であった。
なお、この点は、通常のコート等の衣服と比較して重量のある、防刃服、防弾服等の着用者の身体に対する防護機能を有する衣服を空調衣服の上に着用する際に特に顕著であった。
また、同様の問題は、衣服以外のものを空調衣服の上に着用する際にも、例えば、高所作業に従事する作業員が空調衣服の上にハーネス安全帯を装着する際や、リックサックを背負う際等に顕著に生じていた。
【0006】
本発明の課題は、他の衣服等の下に着用した際にも機能が低下し難い空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
通気性のない又は空気導入手段による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地を用いて形成され、
前記空気導入手段を取り付けるための取付部と、
前記空気導入手段によって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備えた空調衣服の服本体であって、
前記服地と着用者の身体との間及び/又は前記服地と前記服本体の上に着用する他の衣服との間に空間を確保する空間確保手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空調衣服の服本体であって、
前記空間確保手段は、前記服地に接続されたメッシュ状部材と、前記メッシュ状部材と前記服地との間の空間に備えられたスペーサと、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の空調衣服の服本体であって、
前記空間確保手段は、前記取付部及びその周囲の前記服地を前記服本体の外面側から覆うように形成された外面側空間確保手段を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の空調衣服の服本体であって、
前記取付部を複数備え、
前記外面側空間確保手段は、複数の前記取付部を一続きに覆うようにして形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の空調衣服の服本体であって、
前記外面側空間確保手段は、前記服本体の下端部近傍に備えられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体であって、
前記空間確保手段は、前記服本体の後身頃の内面側に備えられた後身頃内面側空間確保手段を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の空調衣服の服本体であって、
前記後身頃内面側空間確保手段は、前記服本体内面側の着用者の肩の上方に位置する部分まで連続して形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体であって、
前記空間確保手段は、前記服本体の前身頃の内面側に備えられた前身頃内面側空間確保手段を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の空調衣服の服本体であって、
前記前身頃内面側空間確保手段は、前記服本体内面側の着用者の肩の上方に位置する部分まで連続して形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、空調衣服であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体と、
前記空調衣服の服本体の内部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、他の衣服等の下に着用した際にも機能が低下し難い空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る空調衣服の開閉手段を開いた状態における正面図である。
【
図2】実施形態に係る空調衣服の開閉手段を閉じた状態における背面図である。
【
図3】
図2のIII-III部における断面図である。
【
図4】実施形態に係る空調衣服で使用されるスペーサの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図4に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではなく、以下説明する実施の形態には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加えることが可能である。
また、以下においては、着用者が空調衣服100を着用した状態を基準として、着用者の前側を前、着用者の後側を後、着用者の上側を上、着用者の下側を下、着用者の右手側を右、着用者の左手側を左と定めて説明する。
【0020】
[第1 実施形態の構成]
実施形態に係る空調衣服100は、
図1に示すように、服本体1と、服本体1内部に空気を導入するファン2と、ファン2に電力を供給する電源部3と、電源部3とファン2とを接続する接続ケーブル4、を備え、ファン2によって服本体1内に取り込まれた空気を、着用者の身体又は下着の表面に沿って流通させた後に、服本体1の襟部及び袖部に形成された空気排出部14から排出することで、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体を冷却するものである。
【0021】
[1 服本体]
服本体1は、
図1から
図3に示すように、通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地Cによって、着用者の胴部及び腕部を覆う形状に形成されている。
図1から
図3においては、服本体1をブルゾン型の上衣の形状に形成しているが、服本体1の形状は着用者の身体の少なくとも一部を覆うものであればよく、これに限られない。例えば、着用者の胴部のみを覆うベスト型や、着用者の下半身までを覆うつなぎ服型に形成してもよく、空調衣服を着用した上に着用する対象物に応じて服本体1の形状は適宜決定できる。
なお、服地Cの服本体1の着用時において着用者に向く面を服地Cの内面側、その反対側の服本体1の着用時において外部空間に向く面を服地Cの外面側とする。また、服地Cの内面側及び服本体1の着用時において服地Cの内面側よりも着用者側に位置する部分を服本体1の内面側、服地Cの外面側及び服本体1の着用時において服地Cの外面側よりも外部空間側に位置する部分を服本体1の外面側とする。
【0022】
服本体1は、
図1から
図3に示すように、開閉手段11と、空気漏れ防止手段12と、ファン取付孔13と、空気排出部14と、電源部保持手段15と、ケーブル保持手段16と、外面側空間確保手段17と、後身頃内面側空間確保手段18と、前身頃内面側空間確保手段19と、を備え、ファン取付孔13からファン2によって取り込まれた外気が、襟部及び袖部に形成された空気排出部14から排出されるように構成されている。
【0023】
[(1) 開閉手段]
開閉手段11は、服本体1を前開きとし、空調衣服100を着用する際に、服本体1の前部を開閉するための手段であり、
図1に示すように、服本体1の前身頃を左右に分割すると共に、その両側に例えば線ファスナー等を備えて、当該分割部分を着脱自在とすることにより形成されている。
【0024】
[(2) 空気漏れ防止手段]
空気漏れ防止手段12は、
図1から
図3に示すように、服本体1下部に備えられた、服本体1と着用者の身体との間の空間内の空気が服本体1の裾部から外部に漏れることを防止するための手段であり、例えば、服本体1の裾部に、開閉手段11付近を除いて着用者の身体を周回するようにして形成された紐通し部と、紐通し部に通された紐状部材と、紐状部材の紐通し部から出ている部分に備えられたコードストッパーと、を備え、紐状部材の紐通し部から出ている部分を引っ張った上でコードストッパーを固定することで、服本体1の裾部を着用者の身体に密着させることができるようにすることで形成されている。
空調衣服100の着用時においては、空気漏れ防止手段12によって、服本体1の裾部が絞り込まれて着用者の身体に密着し、服本体1下部から空気が外部に漏れることを防止することができる。
【0025】
[(3) ファン取付孔]
ファン取付孔13は、
図1に示すように、服本体1を形成する服地Cの着用者の腰の左右に対応する位置に形成された、空調衣服100の着用時において、服本体1と着用者の身体との間の空間と、服本体1の外部の空間と、を繋ぐこととなる円形の孔部である。
ファン取付孔13の直径は、後述のファン2の直径と略同一に形成され、ファン取付孔13を挿通するようにしてファン2を取り付けることで、ファン取付孔13を介して、外部の空気を服本体1の内面側に取り込むことができる。
ファン取付孔13の周囲は、例えばプラスチック等によって形成された扁平な環状の部材を取り付ける、服本体1の服地Cのファン取付孔13周囲の部分を折り返して縫合する等の方法で、補強されていることが好ましい。
【0026】
[(4) 空気排出部]
空気排出部14は、ファン2によってファン取付孔13から服本体1と着用者の身体との間の空間内に導入された空気を、着用者の身体又は下着に沿って流通させた後に排出するための開口部であり、
図1から
図3に示すように、着用者の首と服本体1の襟部の端部との間の開口部と、着用者の腕と服本体1の袖部の端部との間の開口部と、に形成される。
【0027】
[(5) 電源部保持手段]
電源部保持手段15は、電源部3を、接続ケーブル4を通じてファン2へと電力を供給可能な位置において保持するための手段であり、例えば、
図1及び
図3に示すように、服本体1の内面側に備えられた電源部3を収納可能なポケットを用いることができる。
図1及び
図3においては、電源部保持手段15が、服本体1の内面側に備えられたポケットである場合について図示したが、電源部保持手段15の具体的な構成は、電源部3を、接続ケーブル4を通じてファン2へと電力を供給可能な位置において保持することができるものであればよく、これに限られない。
また、例えば、服本体1の外面側に電源部保持手段15や電源部3を制御するリモコン(図示せず)を保持するリモコン保持手段(図示せず)を設けた上で、服地Cに設けられた服本体1の内面側から服本体1の外面側に連通する開口部を介して、接続ケーブル4によって、ファン2と電源部3との間、又はファン2と電源部3とリモコンとの間が、接続されるようにしてもよい。
【0028】
[(6) ケーブル保持手段]
ケーブル保持手段16は、
図1及び
図3に示すように、接続ケーブル4を、服本体1の内面側に保持するための手段であり、例えば、一般的なベルト通しのように、上下方向に長い布を上下2か所において縫い付けることにより、接続ケーブル4を挿通可能な開口部を有するリング状に形成され、当該開口部に接続ケーブル4を挿通させることによって、これを保持することができるように構成されている。
【0029】
[(7) 外面側空間確保手段]
外面側空間確保手段17は、服本体1の後身頃の外面側に、ファン取付孔13及びその周囲の服地Cを覆うように備えられた、空調衣服100の上に衣服を着用する際に、当該衣服と、ファン2及び服地Cのファン取付孔13近傍の部分と、の間の間隔を、スペーサ173の厚みよりも狭くならないようにし、当該衣服と、ファン2及び服地Cのファン取付孔13近傍の部分と、の間に、ファン2によって服本体1内に取り込まれる空気をファン2へと導くための空間を確保するための手段である。
外面側空間確保手段17は、
図2及び
図3に示すように、服本体1の後身頃の外面側に上端部以外の端部が服地Cに固定されるようにして備えられたメッシュ状部材171と、メッシュ状部材171の上端部と服本体1の服地Cとの間の開口部に備えられ、当該開口部を開閉自在とする開閉手段172と、メッシュ状部材171と服本体1の服地Cとの間の空間に収納されたスペーサ173と、を備える。
【0030】
(メッシュ状部材)
メッシュ状部材171は、
図2及び
図3に示すように、2つのファン取付孔13の両者を覆うようにして服本体1の服地Cの外面側に取り付けられた略矩形状の網状の部材であり、
図2に示すように、服地Cの外面側に2つのファン取付孔13の両者を覆うようにして配置された上で、左右の端部及び下端部を服地Cに縫合、接着等の方法で固定することで、服地Cの服本体1の後身頃の下端部近傍に位置する部分に接合されている。
これによって、服地Cとメッシュ状部材171との間に、上部が開口部となる袋状の空間が形成されることとなる。
【0031】
メッシュ状部材171の具体的な構成としては、メッシュの各開口部が、スペーサ173が通過できない大きさであると共に、スペーサ173を介してのファン2への空気の導入を妨げない程度の開口度を有するものであれば任意である。また、材料も、スペーサ173の落下を防止できる程度の強度を有するものであれば任意の材料を用いることができる。また、メッシュ状部材171の服地Cへの接合方法も、スペーサ173の重量によって外れないものであれば特に限定されない。
なお、メッシュ状部材自体を袋状に形成した上で、袋状のメッシュ状部材の開口部に面ファスナー等からなる開閉手段を設けることによって、袋の中に後述するスペーサを着脱自在に収納することができるようにしてもよい。この場合、メッシュ状部材についても、面ファスナー等の手段により、服地Cに対して着脱自在とすることが可能となる。
【0032】
(開閉手段)
開閉手段172は、メッシュ状部材171の上端部と服地Cとの間に形成された開口部を開閉自在とするための手段であり、例えば、
図2及び
図3に示すように、メッシュ状部材171の上端部近傍に左右方向に延在するようにして面ファスナーの一方を備えると共に、服地Cのこれと対向する部分に面ファスナーの他方を取り付けることで、メッシュ状部材171の上端部近傍を、服地Cに対して着脱自在とすることにより構成されている。
【0033】
(スペーサ)
スペーサ173は、内部に空気が流通する空間が形成された部材であり、
図2及び
図3に示すように、メッシュ状部材171と服本体1の服地Cとの間の空間内に収納されて備えられている。
【0034】
スペーサ173の構造としては、空調衣服100の上に着用した衣服と、ファン2及び服地Cのファン取付孔13近傍の部分と、の間に、ファン2によって服本体1内に取り込まれる空気をファン2へと導くための空間を確保することができるものであれば任意であるが、例えば、特許第4067034号公報において開示されている、
図4に示すようなスペーサ構造Sを備えるものを用いることができる。
【0035】
具体的には、
図4に示すスペーサ構造Sは、枠状部S11と、一端が枠状部S11に連なり枠状部S11から起立するように形成された4本の柱部S12と、4本の柱部S12の他端を連結する連結部S13と、を有する凸部S1と、隣り合う凸部S1の枠状部S11同士を連結する可撓連結部S2と、を備え、可撓連結部S2を、枠状部S11よりも厚みが薄い帯状に形成することで、可撓連結部S2において曲がり易くなり、一定の柔軟性を有するように構成されている。
このようなスペーサ構造Sを用いることで、可撓連結部S2によって接続される凸部S1の個数を変更することで、任意の大きさ及び形状のスペーサを形成することができる。
【0036】
スペーサ構造Sを形成する材料としては、空調衣服100の上に、例えば、一定の重量を有する防刃服、防弾服等の防護機能を有する衣服を着用した際にもその重量によって大きく変形しない程度の強度を有するものであれば任意であるが、着心地の観点からは、上記の程度の強度を有しつつ固すぎないものを用いることが好ましく、例えば、ポリエチレン(PE)や、荷重条件、荷重方向及び空調衣服を着用した上に着用する対象物の重量によっては、さらに柔軟性のあるエラストマ(TPE)を用いることが好ましいが、特に限
定されない。さらに、必要に応じて又は取り付ける場所によっては、複数段重ねて配置するようにしてもよい。
【0037】
スペーサ173は、上記のようなスペーサ構造Sを用いて、開閉手段172が備えられた部分を除き、メッシュ状部材171の略全体に亘る大きさを有するように形成されている。また、スペーサ173は、メッシュ状部材171の開閉手段172を介してメッシュ状部材171から取り外し可能となっている。
なお、本実施形態においては、メッシュ状部材171を介してスペーサ173を服本体1に取り付けるようにしたが、スペーサ173を、服地Cに直接縫合したり、面ファスナー等の手段で服地Cに対して着脱自在としても良い。この場合、メッシュ状部材171を不要とすることができる。
【0038】
[(8) 後身頃内面側空間確保手段]
後身頃内面側空間確保手段18は、服本体1の後身頃の内面側の、ファン取付孔13の上部の位置に備えられた、空調衣服100の上に衣服を着用し、空調衣服100にその上に着用した衣服の重量が掛かった際においても、服本体1の後身頃の服地Cと、着用者の身体と、の間の間隔を、スペーサ183の厚みよりも狭くならないようにし、服本体1の後身頃の服地Cと、着用者の身体と、の間に、ファン2によって服本体1内に取り込まれた空気が流通する空間を確保するための手段である。
後身頃内面側空間確保手段18は、
図1及び
図3に示すように、服本体1の内面側に、上端部以外の端部が服地Cに固定されるようにして備えられたメッシュ状部材181と、メッシュ状部材181の上端部と服本体1の服地Cとの間の開口部に備えられ、当該開口部を開閉自在とする開閉手段182と、メッシュ状部材181と服本体1の服地Cとの間の空間に収納されたスペーサ183と、を備える。
【0039】
(メッシュ状部材)
メッシュ状部材181は、
図1及び
図3に示すように、服本体1の服地Cの内面側のファン取付孔13の上部の部分に取り付けられた略矩形状の網状の部材であり、
図1に示すように、服地Cの内面側の上記の位置に配置された上で、左右の端部及び下端部を服地Cに縫合、接着等の方法で固定することで、服地Cの内面側の上記の位置に接合されている。
これによって、服地Cとメッシュ状部材181との間に、上部が開口部となる袋状の空間が形成されることとなる。
【0040】
メッシュ状部材181の具体的な構成としては、メッシュの各開口部が、スペーサ183が通過できない大きさであると共に、スペーサ183を介しての服本体1内部における空気の流通を妨げない程度の開口度を有するものであれば任意である。また、材料も、スペーサ183の落下を防止できる程度の強度を有するものであれば任意の材料を用いることができる。また、メッシュ状部材181の服地Cへの接合方法も、スペーサ183の重量によって外れないものであれば特に限定されない。
なお、メッシュ状部材自体を袋状に形成した上で、袋状のメッシュ状部材の開口部に面ファスナー等からなる開閉手段を設けることによって、袋の中に後述するスペーサを着脱自在に収納することができるようにしてもよい。この場合、メッシュ状部材についても、面ファスナー等の手段により、服地Cに対して着脱自在とすることが可能となる。
【0041】
(開閉手段)
開閉手段182は、メッシュ状部材181の上端部と服地Cとの間に形成された開口部を開閉自在とするための手段であり、例えば、
図1及び
図3に示すように、メッシュ状部材181の上端部近傍に左右方向に延在するようにして面ファスナーの一方を備えると共に、服地Cのこれと対向する部分に面ファスナーの他方を取り付けることで、メッシュ状部材181の上端部近傍を、服地Cに対して着脱自在とすることにより構成されている。
【0042】
(スペーサ)
スペーサ183は、内部に空気が流通する空間が形成された部材であり、
図1及び
図3に示すように、メッシュ状部材181と服本体1の服地Cとの間の空間に収納されて備えられている。
スペーサ183の構造としては、服本体1の後身頃の服地Cと、着用者の身体と、の間に、ファン2によって服本体1内に取り込まれた空気を流通させるための空間を確保することができるものであれば任意であるが、外面側空間確保手段17について述べたのと同様、
図4に示すようなスペーサ構造Sを備えるものを用いることができる。
【0043】
スペーサ183は、上記のようなスペーサ構造Sを用いて、開閉手段182が備えられた部分を除き、メッシュ状部材181の略全体に亘る大きさを有するように形成されている。また、スペーサ183は、メッシュ状部材181の開閉手段182を介してメッシュ状部材181から取り外し可能となっている。
なお、本実施形態においては、メッシュ状部材181を介してスペーサ183を服本体1に取り付けるようにしたが、スペーサ183を、服地Cに直接縫合したり、面ファスナー等の手段で服地Cに対して着脱自在としても良い。この場合、メッシュ状部材181を不要とすることができる。
【0044】
[(9) 前身頃内面側空間確保手段]
前身頃内面側空間確保手段19は、服本体1の前身頃の内面側の、開閉手段11の左右にそれぞれに備えられた、空調衣服100の上に衣服を着用し、空調衣服100にその上に着用した衣服の重量が掛かった際においても、服本体1の前身頃の服地Cと、着用者の身体と、の間の間隔を、スペーサ193の厚みよりも狭くならないようにし、服本体1の前身頃の服地Cと、着用者の身体と、の間に、ファン2によって服本体1内に取り込まれた空気が流通する空間を確保するための手段である。
前身頃内面側空間確保手段19は、
図1及び
図3に示すように、服本体1の内面側に、開閉手段11に沿う端部以外の端部が服地Cに固定されるようにして備えられたメッシュ状部材191と、メッシュ状部材191の開閉手段11に沿う端部と服本体1の服地Cとの間の開口部に備えられ、当該開口部を開閉自在とする開閉手段192と、メッシュ状部材191と服本体1の服地Cとの間の空間に収納されたスペーサ193と、を備える。
【0045】
前身頃内面側空間確保手段19は、
図1及び
図3に示すように、服本体1の着用時において着用者の胴体前方に位置する部分から、着用者の肩の上方に位置する部分に至るまで連続するようにして備えられている。
【0046】
(メッシュ状部材)
メッシュ状部材191は、
図1及び
図3に示すように、服本体1の服地Cの内面側の開閉手段11の左右それぞれに取り付けられた網状の部材であり、
図1に示すように、服地Cの内面側の上記の位置に配置された上で、開閉手段11に沿う端部を除いて、服地Cに縫合、接着等の方法で固定することで、服地Cの内面側の上記の位置に接合されている。
これによって、服地Cとメッシュ状部材191との間に、開閉手段11に沿って開口部が形成された袋状の空間が形成されることとなる。
【0047】
メッシュ状部材191の具体的な構成としては、メッシュの各開口部が、スペーサ193が通過できない大きさであると共に、スペーサ193を介しての服本体1内部における空気の流通を妨げない程度の開口度を有するものであれば任意である。また、材料も、スペーサ193の落下を防止できる程度の強度を有するものであれば任意の材料を用いることができる。また、メッシュ状部材191の服地Cへの接合方法も、スペーサ193の重量によって外れないものであれば特に限定されない。
なお、メッシュ状部材自体を袋状に形成した上で、袋状のメッシュ状部材の開口部に面ファスナー等からなる開閉手段を設けることによって、袋の中に後述するスペーサを着脱自在に収納することができるようにしてもよい。この場合、メッシュ状部材についても、面ファスナー等の手段により、服地Cに対して着脱自在とすることが可能となる。
【0048】
(開閉手段)
開閉手段192は、メッシュ状部材191の開閉手段11に沿う端部と服地Cとの間に形成された開口部を開閉自在とするための手段であり、例えば、
図1に示すように、メッシュ状部材191の開閉手段11に沿う端部近傍に当該端部に沿って延在するようにして面ファスナーの一方を備えると共に、服地Cのこれと対向する部分に面ファスナーの他方を取り付けることで、メッシュ状部材191の開閉手段11に沿う端部近傍を、服地Cに対して着脱自在とすることにより構成されている。
【0049】
(スペーサ)
スペーサ193は、内部に空気が流通する空間が形成された部材であり、
図1及び
図3に示すように、メッシュ状部材191と服本体1の服地Cとの間の空間に収納されて備えられている。
スペーサ193としては、服本体1の前身頃の服地Cと、着用者の身体と、の間に、ファン2によって服本体1内に導入された空気を流通させるための空間を確保することができるものであれば任意であるが、外面側空間確保手段17について述べたのと同様、
図4に示すようなスペーサ構造Sを備えるものを用いることができる。
【0050】
スペーサ193は、上記のようなスペーサ構造Sを用いて、開閉手段192が備えられた部分を除き、メッシュ状部材191の略全体に亘る大きさを有するように形成されている。また、スペーサ193は、メッシュ状部材191の開閉手段192を介してメッシュ状部材191から取り外し可能となっている。
なお、本実施形態においては、メッシュ状部材191を介してスペーサ193を服本体1に取り付けるようにしたが、スペーサ193を、服地Cに直接縫合したり、面ファスナー等の手段で服地Cに対して着脱自在としても良い。この場合、メッシュ状部材191を不要とすることができる。
【0051】
[2 ファン]
ファン2は、
図1から
図3に示すように、ファン取付孔13を挿通するようにして服本体1に取り付けられ、ファン取付孔13を通して、服本体1と着用者の身体との間の空間に空気を導入するためのものである。ファン2には、電源部3より、接続ケーブル4を通じて必要な電力が供給される。
ファン2は、ファン取付孔13を挿通するようにして服本体1に取り付けられ、服本体1の外面側から内面側へと空気を導入できるものであればよく、その具体的な構成は任意である。
【0052】
[3 電源部]
電源部3は、ファン2に電力を供給するための部材であり、例えば、安全保護回路が付加されたリチウムイオン組電池が内蔵され、
図1に示すように、接続ケーブル4を通じてファン2と接続される。また、電源部3は、ファン2に供給する電力のオン/オフを切り替えるスイッチを備える。
電源部3は、ファン2に電力を供給することができるものであれば、その具体的な構成は任意である。
【0053】
[4 接続ケーブル]
接続ケーブル4は、電源部3とファン2とを接続するケーブルであり、接続ケーブル4を通じて、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力が供給される。
接続ケーブル4は、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力を供給できるものであればよく、その具体的な構成は任意である。
【0054】
[第2 実施形態の効果]
本実施形態に係る空調衣服100によれば、服本体1の後身頃の外面側に、ファン取付孔13及びその周囲の服地Cを覆うようにして、外面側空間確保手段17が備えられている。
これによって、空調衣服100の上に他の衣服等を着た場合においても、当該衣服等と、ファン取付孔13に取り付けられたファン2及びその周囲の服地Cと、が密着することがなくなり、外面側空間確保手段17内部のスペーサ173を介して、服本体1の下方から空気を導入し易くなることから、空調衣服100の上に他の衣服等を着た場合にも、冷却機能の低下を抑えることができる。
【0055】
また、外面側空間確保手段17が、大型の単一のスペーサ173によって、二つのファン2の両者及びその周囲の服地Cを覆うように形成されていることで、二つのファン2の間の部分を含めて、服本体1外面側における空気の流通路を広く形成できることから、更に上記の効果を向上できる。
【0056】
また、外面側空間確保手段17が、服本体1後身頃の下端部近傍にまで至るように備えられていることで、服本体1の下方の空気をさらに導入し易くなる。
【0057】
また、空調衣服100が、後身頃内面側空間確保手段18及び前身頃内面側空間確保手段19を備えることで、空調衣服100の上に他の衣服等を着用した場合においても、その重みによって服地Cが着用者の身体に密着し、空調衣服100内において空気が流通するための空間が塞がれてしまうことを防止できることから、空調衣服100の上に他の衣服等を着用した場合にも、冷却機能の低下を抑えることができる。
【0058】
また、前身頃内面側空間確保手段19が、着用者の肩の上方にまで至るように形成されていることで、特に衣服の重量が掛かり塞がり易い着用者の肩の上方にも、着用者の前方から連続するようにして空気が流通する空間を確保できることから、さらに上記効果を高めることができる。
【0059】
また、外面側空間確保手段17、後身頃内面側空間確保手段18及び前身頃内面側空間確保手段19のいずれも、スペーサがメッシュ状部材によって形成された袋状の空間内に収納されるようにして取り付けられていることで、例えば服本体1の洗濯の際等に、スペーサを取り外すことが容易となる。
【0060】
[第3 変形例]
上記実施形態に係る空調衣服100においては、
図1及び
図3に示すように、前身頃内面側空間確保手段19を、服本体1内面側の着用者の肩の上方に位置する部分まで連続して備えられるように形成した場合について説明したが、これに替えて、後身頃内面側空間確保手段18を、服本体1内面側の着用者の肩の上方に位置する部分まで連続して備えられるように形成してもよい。
さらに、後身頃内面側空間確保手段18と前身頃内面側空間確保手段19とが、着用者の肩の上方で接続され、服本体1内面側に、前身頃から後身頃に至るまで、一続きのスペーサが備えられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
100 空調衣服
1 服本体
13 ファン取付孔(取付部)
14 空気排出部
17 外面側空間確保手段(空間確保手段)
171 メッシュ状部材
173 スペーサ
18 後身頃内面側空間確保手段(空間確保手段)
181 メッシュ状部材
183 スペーサ
19 前身頃内面側空間確保手段(空間確保手段)
191 メッシュ状部材
193 スペーサ
2 ファン(空気導入手段)
3 電源部(電源手段)
4 接続ケーブル(電源手段)
C 服地