IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチユ三菱フォークリフト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-誘導システム 図1
  • 特開-誘導システム 図2
  • 特開-誘導システム 図3
  • 特開-誘導システム 図4
  • 特開-誘導システム 図5
  • 特開-誘導システム 図6
  • 特開-誘導システム 図7
  • 特開-誘導システム 図8
  • 特開-誘導システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009634
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】誘導システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20240116BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20240116BHJP
【FI】
G08G5/00
G05D1/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111311
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】卯路 彰
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB20
5H181FF03
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL07
5H301AA01
5H301AA06
5H301BB05
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC04
5H301CC06
5H301CC07
5H301CC10
5H301GG07
(57)【要約】
【課題】無人飛行体を使用してオペレータに荷役位置までの距離および方向等を直感的に認識させる。
【解決手段】誘導システムSは、複数の無人飛行体2と、有人搬送車1と、管理装置3と、を備えている。無人飛行体2は、光もしくは画像またはその両方を投影する投影部を有する。管理装置3は、施設マップおよび荷役位置を記憶する記憶部と、有人搬送車1の位置と、荷役位置と、施設マップとに基づいて、有人搬送車1を荷役位置に誘導するためのルートを決定するルート決定部と、決定されたルートから所定の範囲以内に各無人飛行体2の配置位置を決定する配置決定部と、を有する。複数の無人飛行体2は、配置位置でホバリングしながら光もしくは画像またはその両方をルート上に投影して有人搬送車1を誘導する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホバリング可能な複数の無人飛行体と、
有人搬送車と、
管理装置と、を備える誘導システムであって、
前記無人飛行体は、光もしくは画像またはその両方を投影する投影部を有し、
前記管理装置は、
施設マップおよび荷役位置を記憶する記憶部と、
前記有人搬送車の位置と、前記荷役位置と、前記施設マップとに基づいて、前記有人搬送車を前記荷役位置に誘導するためのルートを決定するルート決定部と、
前記決定されたルートから所定の範囲以内に各前記無人飛行体の配置位置を決定する配置決定部と、を有し、
前記複数の無人飛行体は、前記配置位置でホバリングしながら光もしくは画像またはその両方を前記ルート上に投影して前記有人搬送車を誘導する、誘導システム。
【請求項2】
前記配置決定部は、前記無人飛行体の前記配置位置を、前記ルートから前記ルートに直交する第1水平距離以内の位置、かつ、隣接する別の前記無人飛行体から前記ルートに直交する第2水平距離以上離した位置に決定する、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項3】
前記配置決定部は、さらに、前記無人飛行体の前記配置位置を隣接する別の前記無人飛行体から前記ルート方向に第3水平距離以上離した位置に決定する、請求項2に記載の誘導システム。
【請求項4】
前記配置決定部は、前記無人飛行体の前記配置位置を前記複数の無人飛行体間の前記ルート方向における水平距離が一定になる位置に決定する、請求項3に記載の誘導システム。
【請求項5】
前記配置決定部は、前記無人飛行体の前記配置位置を、前記有人搬送車のオペレータの頭部位置より高く地面から第1垂直距離以内の位置、かつ、隣接する別の前記無人飛行体から第2垂直距離以上離した位置に決定する、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項6】
前記管理装置は、投影制御部をさらに有し、
前記投影制御部は、前記有人搬送車と前記ルート方向における水平距離が所定距離以内になった前記無人飛行体の投影を停止させる、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項7】
前記管理装置は、投影制御部をさらに有し、
前記有人搬送車は、複数であって、
前記配置決定部は、前記複数の有人搬送車の前記ルートが重なるとき、一方の前記有人搬送車を停止させることを決定し、
前記投影制御部は、停止させる方の前記有人搬送車を誘導していた前記複数の無人飛行体のうち、少なくとも1つの前記無人飛行体が投影する光または画像の色を特定の色に変更する、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項8】
スピーカと、前記スピーカを前記無人飛行体の方角に向ける角度変更部とを有するノイズキャンセル部をさらに備え、
前記スピーカは、前記無人飛行体が発する騒音と逆位相の音声信号を前記無人飛行体に向けて発する、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項9】
前記ノイズキャンセル部は、マイクをさらに有し、
前記管理装置は、前記マイクが集音した前記無人飛行体の騒音と、前記無人飛行体の数と、前記無人飛行体の位置と、前記マイクと前記無人飛行体との距離と、前記スピーカと前記無人飛行体との距離と、を入力データとし、前記無人飛行体の騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、前記マイクが集音した前記無人飛行体の騒音と、前記無人飛行体の数と、前記無人飛行体の位置と、前記マイクと前記無人飛行体との距離と、前記スピーカと前記無人飛行体との距離と、を入力されると、前記無人飛行体の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されたニューラルネットをさらに備え、
前記スピーカは、前記ニューラルネットによって生成された音声信号を前記無人飛行体に向けて発する、請求項8に記載の誘導システム。
【請求項10】
前記ノイズキャンセル部は、指向性を有するマイクをさらに有し、
前記角度変更部は、さらに、前記マイクを前記無人飛行体の方角に向けるよう構成されており、
前記管理装置は、前記マイクが集音した前記無人飛行体の騒音と、前記無人飛行体と前記マイクとの距離と、前記無人飛行体と前記スピーカとの距離と、を入力データとし、前記無人飛行体の騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、前記マイクが集音した前記無人飛行体の騒音と、前記無人飛行体と前記マイクとの距離と、前記無人飛行体と前記スピーカとの距離と、を入力されると、前記マイクが向けられた前記無人飛行体の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されたニューラルネットをさらに有し、
前記スピーカは、前記ニューラルネットによって生成された音声信号を前記無人飛行体に向けて発する、請求項8に記載の誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体と有人搬送車とを備えた誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫内で使用される有人搬送車は、オペレータが操作することで動作するように構成されている。有人搬送車は、例えば、フォークリフトからなる。フォークリフトは、フォークを使って荷役するように構成されている。
【0003】
ところで、ホバリング可能な1つの無人飛行体と、有人搬送車と、無人飛行体を制御する管理装置と、を備えた誘導システムが知られている(特許文献1等参照)。
【0004】
無人飛行体は、路面に対して誘導画像を投影するプロジェクタを備えている。誘導画像は、例えば、特定した方向を指し示す矢印であって、有人搬送車の前方の路面に投影される。これにより、有人搬送車を操作中のオペレータは、誘導画像を確認することで、荷役位置に誘導されるように構成されている。
【0005】
ところで、従来の誘導システムでは、1つの無人飛行体が有人搬送車を誘導するので、有人搬送車を操作するオペレータが荷役位置までの距離および方向等を直感的に認識することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-52629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、無人飛行体を使用して有人搬送車を誘導するとともに、オペレータに荷役位置までの距離および方向等を直感的に認識させることができる誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る誘導システムは、
ホバリング可能な複数の無人飛行体と、
有人搬送車と、
管理装置と、を備える誘導システムであって、
無人飛行体は、光もしくは画像またはその両方を投影する投影部を有し、
管理装置は、施設マップおよび荷役位置を記憶する記憶部と、
有人搬送車の位置と、荷役位置と、施設マップとに基づいて、有人搬送車を荷役位置に誘導するためのルートを決定するルート決定部と、
決定されたルートから所定の範囲以内に各無人飛行体の配置位置を決定する配置決定部と、を有し、
複数の無人飛行体は、配置位置でホバリングしながら光もしくは画像またはその両方をルート上に投影して有人搬送車を誘導する、ことを特徴とする。
【0009】
上記誘導システムは、好ましくは、
配置決定部が、無人飛行体の配置位置を、ルートからルートに直交する第1水平距離以内の位置、かつ、隣接する別の無人飛行体からルートに直交する第2水平距離以上離した位置に決定する。
【0010】
上記誘導システムは、好ましくは、
配置決定部が、さらに、無人飛行体の配置位置を隣接する別の無人飛行体からルート方向に第3水平距離以上離した位置に決定する。
【0011】
上記誘導システムは、好ましくは、
配置決定部が、無人飛行体の配置位置を複数の無人飛行体間のルート方向における水平距離が一定になる位置に決定する。
【0012】
上記誘導システムは、好ましくは、
配置決定部が、無人飛行体の配置位置を、有人搬送車のオペレータの頭部位置より高く地面から第1垂直距離以内の位置、かつ、隣接する別の無人飛行体から第2垂直距離以上離した位置に決定する。
【0013】
上記誘導システムは、好ましくは、
管理装置が、投影制御部をさらに有し、
投影制御部は、有人搬送車とルート方向における水平距離が所定距離以内になった無人飛行体の投影を停止させる。
【0014】
上記誘導システムは、好ましくは、
管理装置が、投影制御部をさらに有し、
有人搬送車が、複数であって、配置決定部は、複数の有人搬送車のルートが重なるとき、一方の有人搬送車を停止させることを決定し、
投影制御部は、停止させる方の有人搬送車を誘導していた複数の無人飛行体のうち、少なくとも1つの無人飛行体が投影する光または画像の色を特定の色に変更する。
【0015】
上記誘導システムは、好ましくは、
スピーカと、スピーカを無人飛行体の方角に向ける角度変更部とを有するノイズキャンセル部をさらに備え、
スピーカは、無人飛行体が発する騒音と逆位相の音声信号を無人飛行体に向けて発する。
【0016】
上記誘導システムは、好ましくは、
ノイズキャンセル部が、マイクをさらに有し、
管理装置が、マイクが集音した無人飛行体の騒音と、無人飛行体の数と、無人飛行体の位置と、マイクと無人飛行体との距離と、スピーカと無人飛行体との距離と、を入力データとし、無人飛行体の騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、マイクが集音した無人飛行体の騒音と、無人飛行体の数と、無人飛行体の位置と、マイクと無人飛行体との距離と、スピーカと無人飛行体との距離と、を入力されると、無人飛行体の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されたニューラルネットをさらに有し、
スピーカが、ニューラルネットによって生成された音声信号を無人飛行体に向けて発する。
【0017】
上記誘導システムは、好ましくは、
ノイズキャンセル部が、指向性を有するマイクをさらに有し、
角度変更部が、さらに、マイクを無人飛行体の方角に向けるよう構成されており、
管理装置が、マイクが集音した無人飛行体の騒音と、無人飛行体とマイクとの距離と、無人飛行体とスピーカとの距離と、を入力データとし、無人飛行体の騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、マイクが集音した無人飛行体の騒音と、無人飛行体とマイクとの距離と、無人飛行体とスピーカとの距離と、を入力されると、マイクが向けられた無人飛行体の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されたニューラルネットをさらに有し、
スピーカは、ニューラルネットによって生成された音声信号を無人飛行体に向けて発する。
【発明の効果】
【0018】
上記誘導システムは、オペレータに荷役位置までの距離および方向等を直感的に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る誘導システムの斜視図である。
図2】誘導システムを示し、Aは側面図であり、Bは平面図である。
図3】誘導システムの機能ブロック図である。
図4】無人飛行体の斜視図である。
図5】誘導画像を示す平面図である。
図6】配置位置決定部による無人飛行体の配置方法を示し、Aは側面図であり、Bは平面図である。
図7】Aは無人飛行体に投影された光の像の例を示し、Bは無人飛行体に投影された別の光の像の例を示す。
図8】AおよびBは、無人飛行体の高さの別の例を示す側面図である。
図9】AおよびBは、無人飛行体の高さのさらに別の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る誘導システムの一実施形態について説明する。X方向、Y方向およびZ方向は互いに直交する方向である。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る誘導システムSを示す斜視図である。また、図2は、図1に示された誘導システムSを示し、図2Aは側面図であり、図2Bは平面図である。図3は、誘導システムSの機能ブロック図である。図1および図2に示すように、誘導システムSは、有人搬送車1と、無人飛行体2(2a、2b、2c、2d)と、管理装置3と、ノイズキャンセル部4とを備えている。無人飛行体2は、9つ示されているが、本発明における無人飛行体2の数はこれに限定されない。棚R1には有人搬送車1の搬送対象である荷Wが載置されている。以下では、荷Wが載置されている位置、または、これから荷Wが載置される位置を「載置位置」という。
【0022】
<有人搬送車>
図1に示すように、有人搬送車1は、車体10と、車体10の前方に配置されたフォーク11と、を備えている。オペレータOは、荷Wをフォーク11によってすくい上げて搬送する。有人搬送車1は、管理装置3と通信可能に構成されている。
【0023】
図3に示すように、有人搬送車1は、さらに、位置検出部12を備えている。位置検出部12は、有人搬送車1の位置を検出するとともに、検出した有人搬送車1の位置を管理装置3に送信する。
【0024】
有人搬送車1は、オペレータOによって操作されるフォークリフトであるが、単なる一例であって、本発明に係る有人搬送車1はこのフォークリフトに限定されない。有人搬送車1は、例えば、有人無人兼用のフォークリフトであってもよく、この場合、自律して動作する無人モードと、オペレータOの操作によって動作する有人モードとを有する。
【0025】
<無人飛行体>
図4は、無人飛行体2の斜視図である。図4に示すように、無人飛行体2は、いわゆるドローンと称される飛行体であって、本体20と、本体20の四方に配置された4つのプロペラ21、プロペラ21を回転させる動力部(図示略)と、を備えている。
【0026】
図3に示すように、無人飛行体2は、さらに、飛行制御部22と、記憶部23と、投影部24と、スピーカ25と、を備えている。無人飛行体2は、管理装置3と通信可能に構成されている。
【0027】
飛行制御部22は、無人飛行体2の位置を公知技術によって検出するとともに、プロペラ21の回転を制御し、無人飛行体2を管理装置3から受信した配置位置まで飛行させたり、配置位置でホバリングさせたりする。
【0028】
記憶部23は、有人搬送車1を誘導するための誘導画像を記憶している。図5に示すように、誘導画像は、有人搬送車1が走行する方向を示す第1画像D1と、有人搬送車1が方向転換する位置(本発明の「屈曲位置」に相当)および走行方向を示す第2画像D2と、荷役位置を示す第3画像D3とを含む。以下では、第1、第2および第3画像D1、D2、D3をまとめて誘導画像Dということがある。本発明における「荷役位置」は、有人搬送車1が停止して荷役をする位置を意味する。第1および第2画像D1、D2の矢印は走行方向を示し、第3画像D3の矢印は載置位置の方向を示している。第1、第2および第3画像D1、D2、D3の形状、大きさおよび色は、それぞれ異なっていることが好ましいが、例えば、形状、大きさおよび色のいずれかが異なっていてもよい。本実施形態に係る第1、第2および第3画像D1、D2、D3は、色違いの円と、円の中に配置された色違いの矢印とによって構成されている。
【0029】
記憶部23は、また、有人搬送車1を停止させるための特定の誘導画像Dの色(以下、「停止色」という)を記憶している。停止色は、例えば、赤色でもよい。
【0030】
記憶部23は、さらに、オペレータOを誘導するための音声Vを記憶している。音声Vは、「○m」、「先を左折です」、「先、目的地です」、「この先、障害物があります」、「ご注意ください」、「停止してください」等を含む。
【0031】
投影部24は、本実施形態では、プロジェクタによって構成されている。投影部24は、本体20の下面に配置されており、管理装置3によって制御され、図1および図2Aに示すように、誘導画像Dを有人搬送車1が荷役位置へと向かうルート上に投影する。投影された誘導画像Dは、図5に示すように、当該ルート上の路面に所定の間隔をおいて整列して表示される。
【0032】
スピーカ25は、本体20に配置されており、オペレータOに向かって音声Vを出力する。
【0033】
<管理装置>
管理装置3は、例えば、サーバコンピュータであって、不図示の記憶手段および演算手段を有する。記憶手段には、サーバコンピュータを本実施形態に係る管理装置3として機能させるためのプログラムが記憶されている。
【0034】
図3に示すように、管理装置3は、記憶部30と、ルート決定部31と、配置決定部32と、投影制御部33と、音声制御部34と、ニューラルネット35とを備えている。
【0035】
記憶部30は、施設マップ、荷役位置および載置位置を記憶する。施設マップには、棚Rの位置、棚Rの高さ、通行路の位置、障害物の位置が含まれている。また、施設マップには、通行路の幅も記憶されている。本実施形態では、管理装置3は、複数の有人搬送車1を管理しており、記憶部30は、複数の有人搬送車1に係る荷役位置および載置位置を記憶している。
【0036】
ルート決定部31は、有人搬送車1の位置と、荷役位置と、施設マップとに基づいて、有人搬送車1が荷役位置へと向かうルート(以下、単に「ルート」という)を決定する。ルート決定部31は、例えば、有人搬送車1と荷役位置とを結ぶ最短のルートを決定したり、または、オペレータOの過去の走行ルート、通行路の車幅、通行路の状態(段差など)を考慮してルートを決定したりしてもよい。また、ルート決定部31は、複数の有人搬送車1のルートが重ならないようにルートを決定してもよい。ルート決定部31は、例えば、複数の有人搬送車1が走行する時刻を考慮してルートを決定したり、複数の有人搬送車1の現在位置に基づいて、リアルタイムでルートを更新したりしてもよい。
【0037】
配置決定部32は、決定されたルート上方における各無人飛行体2の配置位置を決定する。具体的には、配置決定部32は、ルート上における直進位置、屈曲位置、荷役位置の上方における無人飛行体2の配置位置を決定する。無人飛行体2のホバリング高さH(以下、単に「高さH」という)は、オペレータOの前方の視界を遮らないよう、有人搬送車1に乗車したオペレータOの頭部位置よりも高い方が好ましい。また、無人飛行体2の高さHは、適切に誘導画像Dを表示させるために、地面から所定の距離以内にある方が好ましい。さらに、各無人飛行体2の配置位置は、各無人飛行体2の接触を防止するために、別の無人飛行体2から所定の間隔をおいた位置に決定される方が好ましい。
【0038】
そこで、配置決定部32は、図6Aに示すように、無人飛行体2の配置位置を、有人搬送車1に乗車したオペレータOの頭部位置より高く地面から第1垂直距離VD1以内の位置、かつ、隣接する別の無人飛行体2から第2垂直距離VD2以上離した位置に決定する。加えて、配置決定部32は、図6Bに示すように、ルートLからルートLに直交する第1水平距離HD1以内の位置、かつ、隣接する別の無人飛行体2からルートLに直交する第2水平距離HD2以上離した位置に決定する。さらに、配置決定部32は、図6Aおよび図6Bに示すように、各無人飛行体2の配置位置を、隣接する別の無人飛行体2からルートL方向に第3水平距離HD3以上離した位置、かつ、各無人飛行体2間のルートL方向における水平距離が一定になる位置に決定する。例えば、第1垂直距離VD1は5m、第2垂直距離VD2は0.2m、第1水平距離HD1は1m、第2水平距離HD2は1m、第3水平距離HD3は3mでもよい。
【0039】
これにより、無人飛行体2は、誘導画像Dを表示させる位置から第1垂直距離VD1以内および第1水平距離HD1以内の位置に配置されるので、誘導画像Dを適切に表示させることができる。また、各無人飛行体2は、隣接する別の無人飛行体2から第2垂直距離VD2および第2水平距離HD2をおいて配置されるので、無人飛行体2間の接触を回避することができる。無人飛行体2間のルート方向における水平距離は、例えば、1m~10mの間で固定されていてもよい。本実施形態では、当該水平距離は、5mに構成されている。それによって、無人飛行体2は、後で説明するように、ルートLに向かって最短距離で誘導画像Dを投影することにより、等間隔で誘導画像DをルートL上に投影することができる。
【0040】
配置決定部32は、複数の有人搬送車1のルートが重なるとき、一方の有人搬送車1が重なっているルート部分を通過するまで他の有人搬送車1を停止させることを決定する。配置決定部32は、好ましくは、載置位置から遠い方の有人搬送車1を停止させるよう決定する。これにより、荷役作業が円滑に進行する。配置決定部32は、停止を決定した有人搬送車1を誘導する無人飛行体2のグループを他の有人搬送車1のルートに配置させないよう配置位置を決定する。配置決定部32は、一方の有人搬送車1が重なっているルート部分を通過すると、他方の有人搬送車1の停止を解除することを決定する。
【0041】
図6に示すように、投影制御部33は、ルートL方向に等間隔に配置された無人飛行体2に、ルートLに向かって最短距離で誘導画像Dを投影させる。これにより、誘導システムSは、図5に示すように、誘導画像Dを所定の距離Q1をおいて等間隔で路面に表示させることができる。また、誘導システムSは、当該距離Q1を所定の距離で固定しているので、誘導画像Dの数によって、屈曲位置、荷役位置までの距離をオペレータOに直感的に認識させることができる。
【0042】
図5に示すように、投影制御部33は、ルート上における直進位置、屈曲位置および荷役位置に応じて、第1、第2および第3画像D1、D2、D3を投影部24に投影させる。第1、第2および第3画像D1、D2、D3の色は互いに異なっているので、誘導システムSは、各位置で表示された誘導画像Dの色によって、オペレータOに屈曲位置、荷役位置を認識させることができ、単に形状を異ならせた誘導画像Dよりも直感的に各位置を認識させることができる。本実施形態では、各位置に対応する第1、第2および第3画像D1、D2、D3があらかじめ無人飛行体2の記憶部23に記憶されているので、投影制御部33は、屈曲位置、荷役位置および他の位置の上方に配置された無人飛行体2の投影部24を制御して、各位置に対応する誘導画像Dを投影させる。
【0043】
また、投影制御部33は、第1、第2および第3画像D1、D2、D3を走行方向に流れるように周期的に点滅させて、その流れ点滅効果によって有人搬送車1を誘導させてもよい。または、投影制御部33は、第1画像D1のみを流れ点滅させ第2および第3画像D2、D3は、点灯させておいてもよい。さらに、投影制御部33は、第2および第3画像D2、D3のみを点滅させてもよい。投影制御部33は、このように、第1、第2および第3画像D1、D2、D3全体を特定のパターンで点滅させたり、第1、第2および第3画像D1、D2、D3をそれぞれ異なるパターンで点灯、点滅させたりすることにより、オペレータOに直感的にルートの方向、各位置関係等を認識させることができる。
【0044】
また、投影制御部33は、有人搬送車1の前方数メートルの位置において画像なしスペースQ2を設け、その画像なしスペースQ2上方の無人飛行体2aに投影させない。これは、オペレータOの視線が下方に集中し、オペレータOが前方を認識できなくなることを防止するためである。すなわち、投影制御部33は、画像なしスペースQ2を設けることにより、オペレータOの視線を前方に向かせ、運転中の安全性を向上させる。なお、有人搬送車1が移動することにより画像なしスペースQ2もそれに伴って移動するので、投影制御部33は、画像なしスペースQ2上方内に位置することになった無人飛行体2の投影をさらに停止させる。
【0045】
また、投影制御部33は、配置決定部32によって、停止させられることを決定された有人搬送車1を誘導していた複数の無人飛行体2のうち、少なくとも1つの無人飛行体2の誘導画像Dを停止色で投影させる。これにより、投影制御部33は、誘導されている有人搬送車1の走行の停止を促すことができる。好ましくは、投影制御部33は、すべての誘導画像Dの色を停止色で投影させ、走行の停止を促す。
【0046】
音声制御部34は、画像なしスペースQ2の上方に配置された無人飛行体2のスピーカ25を制御して、屈曲位置および荷役位置のいずれかまたは両方ならびにその他の情報を、オペレータOに報知させる。報知させる音声Vは、例えば、「15m先を左折です」、「30m先、目的地です」、「この先、障害物があります。ご注意ください」などでもよい。当該音声Vは、記憶部23に記憶されている「○m」、「先を左折です」、「先、目的地です」、「この先、障害物があります。」、「ご注意ください」を適宜組み合わされ生成されてもよい。誘導システムSは、これら音声Vによる報知によって、オペレータOにさらに直感的に屈曲位置、荷役位置などを認識させることができる。また、音声制御部34は、配置決定部32によって停止させられることを決定された有人搬送車1に対して、音声V「停止してください」を発することにより、停止の決定をオペレータOに報知してもよい。
【0047】
ニューラルネット35は、後で説明するマイク40が集音した無人飛行体2の騒音と、無人飛行体2の数と、無人飛行体2の位置と、マイク40と無人飛行体2との距離と、後で説明するスピーカ42と無人飛行体2との距離と、を入力データとし、騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによってあらかじめ学習させられている。そして、ニューラルネット35は、マイク40が集音した無人飛行体2の騒音と、無人飛行体2の数と、無人飛行体2の位置と、マイク40と無人飛行体2との距離と、スピーカ42と無人飛行体2との距離と、を入力されると、騒音を消すための逆位相の音声信号を生成する。
【0048】
<ノイズキャンセル部>
図1および図2Bに示すように、ノイズキャンセル部4は、棚Rの上面に複数配置されている。図3に示すように、複数のノイズキャンセル部4は、マイク40と、角度変更部41と、スピーカ42と、をそれぞれ有する。ノイズキャンセル部4は、管理装置3と通信可能に構成されている。
【0049】
マイク40は、無人飛行体2からの騒音を集音するよう構成されている。集音された無人飛行体2の騒音信号は、ニューラルネット35に送信される。
【0050】
ニューラルネット35は、受信した無人飛行体2の騒音信号と、無人飛行体2の数と、無人飛行体2の位置と、マイク40と無人飛行体2との距離と、スピーカ42と無人飛行体2との距離とに基づいて、騒音を消すための逆位相の音声信号を生成し、生成した音声信号をスピーカ42に送信する。
【0051】
角度変更部41は、ジンバル等といった方向を変更させる部材で構成されており、スピーカ42に連結されている。角度変更部41は、スピーカ42を無人飛行体2の方角に向けるよう構成されている。より詳細には、角度変更部41は、スピーカ42との距離が最も短い無人飛行体2の方角にスピーカ42を向ける。角度変更部41は、1つの無人飛行体2に対して、1つのスピーカ42を向けるよう構成されてもよい。
【0052】
スピーカ42は、指向性を有し、この指向性の角度は、例えば、5度~30度、または、5度~20度でもよい。スピーカ42は、ニューラルネット35から入力された音声信号を無人飛行体2に発する。スピーカ42は、角度変更部41によって無人飛行体2の方角に向けられており、しかも、いわゆる超指向性を有することにより、無人飛行体2の騒音を適切に減少させることができる。
【0053】
図1を参照して、配置決定部32によって配置された各無人飛行体2の役割について改めて説明する。有人搬送車1の前方2つの無人飛行体2aは、誘導画像Dを投影せず、音声Vによって有人搬送車1を誘導する。無人飛行体2と屈曲位置との間、および屈曲位置と荷役位置との間に配置された無人飛行体2bは、第1画像D1を投影し、有人搬送車1を誘導する。そして、屈曲位置、荷役位置にそれぞれ配置された無人飛行体2c、2dは、第2および第3画像D2、D3を投影し屈曲位置および荷役位置をそれぞれ示して、有人搬送車1を誘導する。なお、有人搬送車1が無人飛行体2の下方を通過すると、無人飛行体2は、役割を終え、管理装置3によって新たな誘導位置に配置されたり、充電するために所定場所に向かったりしてもよい。さらに、無人飛行体2は、複数の有人搬送車1のルートが重なり、有人搬送車1を停止させる必要があるときには、誘導画像Dを停止色に変更するとともに、音声Vによって有人搬送車1の走行の停止を促す。
【0054】
上記構成を備えていることにより、誘導システムSは、荷役位置までの距離および方向等をオペレータOに直感的に認識させることができる。しかも、誘導システムSは、無人飛行体2をルート方向に等間隔で配置し、それによって誘導画像Dを固定距離Q1ごとに路面に表示させるので、オペレータOの視認性を向上させることができる。さらに、誘導システムSは、従来の有人搬送車1の構成を特に変更することなく運用することができる。また、誘導システムSは、無人飛行体2の騒音に対応してノイズキャンセル部4によって無人飛行体2の騒音を減少させることもできる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態に係る誘導システムSについて説明してきたが、本発明に係る誘導システムSは、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態は、以下のように変形してもよく、また、以下変形例と組み合わせて実施してもよい。
【0056】
(1)誘導システムSは、図7Aおよび図7Bに示すように、第1、第2および第3画像D1、D2、D3の代わりに単純な丸い光の像D4、D5、D6や矢印の光の像D7、D8、D9を誘導画像Dとして、無人飛行体2に投影させてもよい。この場合、誘導システムSは、図7Aおよび図7Bに示すように、ルート上における屈曲位置、荷役位置および他の位置に応じて、当該光の像の大きさ、色および形状をそれぞれ異ならせてもよい。図7Aおよび図7Bにおいて、光の像D4、D7は走行方向を示し、光の像D5、D8は屈曲位置と走行方向を示し、光の像D6、D9は荷役位置と載置位置とをそれぞれ示している。
【0057】
(2)誘導システムSは、例えば、図8Aに示すように、水平方向における無人飛行体2の互いの距離を十分に離すことができれば、すべての無人飛行体2を載置位置の高さに配置してもよい。この場合、配置決定部32は、無人飛行体2が載置位置の高さに配置されるよう配置位置を決定する。または、誘導システムSは、例えば、図8Bに示すように、水平方向における無人飛行体2の互いの距離を十分に離すことができれば、無人飛行体2を有人搬送車1に乗車したオペレータOの顔の高さと載置位置の高さとを結ぶ直線に沿って配置してもよい。この場合、配置決定部32は、無人飛行体2を当該直線に沿う高さに配置されるよう配置位置を決定する。これらのように無人飛行体2を配置することにより、誘導システムSは、載置位置の高さもオペレータOに直感的に認識させることができる。
【0058】
なお、誘導システムSは、このように無人飛行体2の位置を配置した場合、載置位置が低い位置のとき、無人飛行体2によって誘導画像Dが遮られ、誘導画像DをオペレータOに認識させることができない。そこで、誘導システムSは、無人飛行体2の投影部24を下方および上方に誘導画像Dを投影可能に構成され、載置位置の高さが所定高さ以下のとき、投影制御部33によって投影部24を制御して、図9Aに示すように、天井に向かって誘導画像Dを投影させるよう構成されてもよい。所定高さは、例えば、0.5m~1mとしてもよい。この場合、オペレータOは、天井に投影された誘導画像Dによってルートの方向、屈曲位置、荷役位置を認識するとともに、無人飛行体2の高さHによって載置位置の高さを認識することができる。
【0059】
さらに、誘導システムSは、オペレータOの視線が上方に向かい前方を認識できなくなることを防止するために、天井に向かって投影させるとき、図9Bに示すように、画像なしスペースQ2の距離をさらに長く設定してもよい。この場合、例えば、オペレータOの視線の角度を認識する視線認識部をさらに備え、投影制御部33は、オペレータOの視線の角度に基づいて画像なしスペースQ2の距離を調整するよう構成してもよい。視線認識部は、カメラを有し、当該カメラは、例えば、無人飛行体2、有人搬送車1または棚R等に配置されてもよい。また、投影制御部33は、投影対象に応じて、光もしくは画像またはその両方の大きさ、または光もしくは画像またはその両方の形状を決定する。すなわち、投影制御部33は、天井に投影させる誘導画像Dの大きさ、形状を路面に投影させるときと異ならせてもよい。
【0060】
(3)誘導システムSは、有人搬送車1の位置を施設内に設けられたカメラや無人飛行体2に設けられたカメラによって認識してもよい。この場合、有人搬送車1は、位置検出部12を備えなくてもよい。
【0061】
(4)誘導システムSは、誘導画像Dを、例えば、第1画像D1のみで構成し、屈曲位置および荷役位置に投影された第1画像D1を点滅させることによりオペレータOに屈曲位置および荷役位置を認識させてもよい。さらに誘導システムSは、スピーカ25が発する音声Vをブザー、チャイム等によって構成し、その音声Vによって屈曲位置および荷役位置をオペレータOに報知してもよい。
【0062】
(5)マイク40は、指向性を有し、角度変更部41は、さらに、マイク40を無人飛行体2の方角に向けるよう構成されていてもよい。そして、ニューラルネット35は、マイク40が集音した無人飛行体2の騒音と、無人飛行体2とマイク40との距離と、無人飛行体2とスピーカ42との距離と、を入力データとし、騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、マイク40が集音した無人飛行体2の騒音と、無人飛行体2とマイク40との距離と、無人飛行体2とスピーカ42との距離と、を入力されると、マイク40が向けられた無人飛行体2の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されていてもよい。これにより、スピーカ42は、ニューラルネット35によって生成された音声信号をマイク40が向けられた無人飛行体2に向けて発することにより、無人飛行体2の騒音を減少させる。マイク40の指向性の角度は、例えば、5度~30度、または、5度~20度でもよい。上記実施形態では、ニューラルネット35が複数の無人飛行体2の騒音に対する逆位相の音声信号を生成する構成に対し、この変形例では、ニューラルネット35が各無人飛行体2の騒音に対する逆位相の音声信号を生成する構成であるので、より適切な消音効果が期待できる。
【0063】
(6)記憶部24は、「停止待機」、「停止」といった有人搬送車を停止させるための文字を含む画像をさらに記憶しており、投影制御部33は、配置決定部32によって、停止させられることを決定された有人搬送車1を誘導していた複数の無人飛行体2のうち、少なくとも1つの無人飛行体2の誘導画像Dを当該画像に変更することにより、誘導されている有人搬送車1の走行の停止を促してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 有人搬送車
10 車体
11 フォーク
12 位置検出部
2 無人飛行体
20 本体
21 プロペラ
22 飛行制御部
23 記憶部
24 投影部
25 スピーカ
3 管理装置
30 記憶部
31 ルート決定部
32 配置決定部
33 投影制御部
34 音声制御部
35 ニューラルネット
4 ノイズキャンセル部
40 マイク
41 角度変更部
42 スピーカ
D1 第1画像
D2 第2画像
D3 第3画像
H ホバリング高さ
L ルート
O オペレータ
R 棚
S 誘導システム
V 音声
W 荷
Q1 誘導画像間の距離
Q2 画像なしスペース
HD1 第1水平距離
HD2 第2水平距離
HD3 第3水平距離
VD1 第1垂直距離
VD2 第2垂直距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9