(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096352
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】味噌調味料組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240705BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20240705BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L23/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075296
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2020014480の分割
【原出願日】2020-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】301032517
【氏名又は名称】エバラ食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 駿人
(57)【要約】
【課題】ロースト感が有り、黒色あるいは茶色の異物の発生を抑制した味噌調味料組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】味噌を含有する味噌調味料組成物は、油脂付着工程61と、味噌加熱工程62と、混合工程63を有する製造方法により製造される。油脂付着工程61は、攪拌機構と加熱機構とを備える製造装置で油脂67を加熱し、製造装置の内壁に、液状の油脂67を膜状に付着させる。味噌加熱工程62は、油脂67が付着している製造装置の容器本体に味噌66の一部を第1味噌原料部66aとして入れ、攪拌しながら加熱して炒め味噌77とする。混合工程63は、味噌66から第1味噌原料部66aを除いた残部を第2味噌原料部66bとして、炒め味噌77と混合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
味噌を含有する味噌調味料組成物において、
110℃にまで加熱した背脂と、
前記味噌の一部である第1味噌を前記背脂により加熱した炒め味噌と、
前記味噌から前記第1味噌を除いた残部である第2味噌と
を備え、
前記味噌の質量を100とするときに、前記第1味噌の質量は30以上90以下の範囲内である
味噌調味料組成物。
【請求項2】
前記背脂と異なる油脂を含む請求項1に記載の味噌調味料組成物。
【請求項3】
希釈用液体調味料である請求項1または2に記載の味噌調味料組成物。
【請求項4】
前記炒め味噌は、前記第1味噌を70℃にまで加熱したものである請求項1または2に記載の味噌調味料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味噌調味料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
味噌ラーメンのスープには、味噌を炒めたあるいは焼いたようなロースト感(香ばしさ)が感じられるものがある。このようなロースト感がある味噌ラーメンは、一般的なラーメン店では、直火で加熱した味噌や野菜等の原料で作った味噌調味料と豚骨等のスープベースとを丼ぶり等の喫食用の器内で合わせ、味噌調味料をスープベースに溶かしてスープをつくる。そして、店によっては、背脂を粗いざる等で濾して、丼ぶりの上方からスープや麺に振りかける。
【0003】
こうしたロースト感のある味噌ラーメンのスープが、加熱した水、すなわち湯で溶かすだけでつくることができれば簡易である。ロースト感のある味噌をつかった食品として、予め加熱したバターに味噌を加えて加熱混合する工程を有する凍結乾燥食品が例えば特許文献1に記載されている。そして特許文献1によると、バターと味噌とを同時に加熱すると味噌が焦げすぎることが記載されている。また、植物性油脂を予め加熱してから味噌を加えてつくった凍結乾燥食品が例えば特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-146796号公報
【特許文献2】特開2016-054676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1と特許文献2とに記載されるいずれの方法を用いても、店で喫食できる味噌ラーメンのスープのロースト感を再現しようとすると、味噌が焦げてしまう。そのため、得られる味噌調味料には、味噌の焦げが混入してしまい、味噌調味料を用いて調理する者や喫食する者には、黒色あるいは茶色の異物として認識されてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ロースト感が有り、かつ黒色あるいは茶色の異物の発生を抑制した味噌調味料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の味噌調味料組成物は、味噌を含有する味噌調味料組成物において、110℃にまで加熱した背脂と、上記味噌の一部である第1味噌を背脂により加熱した炒め味噌と、上記味噌から第1味噌を除いた残部である第2味噌とを備え、上記味噌の質量を100とするときに、第1味噌の質量が30以上90以下の範囲内である。
【0008】
背脂と異なる油脂を含むことが好ましい。
【0009】
味噌調味料組成物は希釈用液体調味料であることが好ましい。
【0010】
炒め味噌は、前記第1味噌を70℃にまで加熱したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、黒色あるいは茶色の異物の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】味噌調味料製造装置の説明図であり、(A)は正面から見た断面概略図、(B)は側方から見た断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す味噌調味料組成物製造装置(以下、単に「製造装置」と称する)10は、調味液11を製造する装置の一例である。調味液11は、本発明の一実施形態である。調味液11は、味噌を含有する調味料組成物であり、味噌とは異なる他の素材も成分として含有する。調味液11は、3℃以上常温(概ね25℃)以下の範囲では液体、すなわち、一定の体積はもつが一定の形状をもたない状態となっている。ただし、液体を示す温度領域は、3℃以上常温以下の範囲に限られず、例えば3℃よりも低い温度を含んでいてもよい。
【0014】
調味液11は、水で薄め(希釈し)て喫食する場合もあるし、あるいは薄めることなく喫食される場合もある。なお、調味液11を薄める上記の水は、加熱された水であるいわゆる湯も概念として含める。水の代わりに、または水に加えて、液体のスープベース(だし汁等のスープ基材)を用いてもよい。喫食に供するにあたり薄めるか否か、及び薄める場合の希釈比率は、喫食する者の嗜好、喫食の態様等に応じて適宜決定すればよい。一例としてラーメンのスープに用いる場合、調味液11を体積VSとし、水の体積をVWとするときに、希釈比率VW/VSで求める希釈比率を、1以上10以下の範囲内が好ましく、4以上9以下の範囲内がより好ましく、5以上7以下の範囲内がさらに好ましい目安として設定することができ、本例では希釈比率を6に設定して喫食に供している。また、希釈して喫食する他の態様の例としては、味噌汁や、麺にからめて喫食するいわゆる混ぜそばが挙げられる。味噌汁の場合には希釈比率を例えば10とし、混ぜそばの場合には例えば1にする等、希釈比率は自在に設定可能である。また、希釈しないいわゆるストレートタイプとして喫食する態様の一例としては、焼おにぎりに用いる態様がある。焼おにぎりの場合には、おにぎりに調味液11を塗布して焼けばよい。このように、調味液11は、希釈の有無、及び希釈比率の設定が自在となっている。
【0015】
[原料]
調味液11の原料は、味噌と油脂とであり、味噌及び油脂に加えて他の素材も原料として用いてよく、本例でも他の素材も味噌及び油脂に加えて用いている。
(1)味噌
味噌としては本例では米味噌を用いている。ただし、味噌はこの例に限られず、下記の(a)または(b)を満たすものであれば、米味噌の代わりに、または米味噌に加えて、麦味噌、豆味噌の少なくとも一方でもよい。
(a)大豆若しくは大豆及び米、麦等の穀類を蒸煮したものに、米、麦等の穀類を蒸煮してこうじ菌を培養したものを加えたもの又は大豆を蒸煮してこうじ菌を培養したもの若しくはこれに米、麦等の穀類を蒸煮したものを加えたものに食塩を混合し、発酵及び熟成させたもの。
(b)上記(a)に、砂糖類(砂糖、糖みつ等の糖類)、風味原料(かつおぶし、煮干魚類、こんぶ等の粉末又は抽出濃縮物、魚醤、たん白加水分解物、酵母エキスその他これらに類する食品)等を加えたもの。
【0016】
(2)油脂
油脂としては本例ではラードと背脂とを併用している。ただし、油脂は食用油脂であれば特に限定されず、常温で液体の脂肪油であってもよいし、常温で固体の脂肪であってもよいし、これらを併用してもよい。用いることができる食用油脂としては、大豆油、ゴマ油、なたね油、オリーブ油、米油、紅花油、パーム油、ココナッツ油、コーン油、クルミ油及びそれらのサラダ油等の植物性油脂、ラード、背脂の他、タロー、鶏油等の動物性油脂または、これらの動物性油脂を加工、抽出等したものが挙げられる。
【0017】
(3)野菜原料
原料として野菜原料を用いることが好ましく、本例でも野菜原料を用いている。野菜原料としては、野菜に加工を施した野菜加工品が好ましく、粒状と繊維状とペースト状との少なくともいずれかひとつであることがより好ましい。野菜原料がこれら態様であることで、粘度や夾雑物の存在により加熱によるロースト感がより確実に発現する。例えば、野菜を摺りつぶして滑らかなペースト状にした野菜ペースト、野菜を摺りおろした粒状あるいは繊維(短繊維)状のおろし野菜、野菜を細片に刻んだ刻み野菜、野菜をついて微粒子状にしたもの、刻み野菜等のように機械的な加工が施された野菜に対して炒める等の加熱加工を施したソテー野菜、おろし野菜等の機械的加工が施された野菜を乾燥した粉体(パウダ)等が挙げられる。このように、施す加工処理は特に限定されず、また、野菜原料はこれら処理の前の野菜に含まれていた水と共存状態であってもよい。粒状の野菜原料の個々の形状は、球状等の定形でなくてもよく、不定形であってもよい。
【0018】
野菜の種類としては、香味野菜を用いることが好ましく、本例でも香味野菜を用いている。香味野菜は、香りをもっている野菜であり、にんにく、たまねぎ、しょうが、ねぎ等が挙げられる。
【0019】
(4)その他
上記の味噌、油脂、野菜原料の他に、畜肉及び魚介類のだしやエキス、糖類(上白糖等)、無機塩(食塩等)、増粘剤(タマリンドシードガム、キサンタンガム等)、旨味調味料(酵母エキス等)、酸味料、アミノ酸類、核酸、香辛料、旨味以外の調味料、抗酸化剤、着色料、保存料、強化剤、乳化剤、ハーブ、等の食品に使用可能な各種食品素材または、食品添加物を原料として用いてもよい。
【0020】
[製造装置]
製造装置10は、加熱機構31と攪拌機構32とを備える加熱容器の一例であり、味噌等の原料を収容する容器本体33を備えている。製造装置10はこの例に限られず、容器本体33に収容された原料を攪拌しながら加熱できるものであれば市販の加熱容器であってもよい。市販品としては、例えば、株式会社カジワラのレオニーダーKHを挙げることができる。
【0021】
容器本体33は、
図1に示すように、概ね半円筒形状に湾曲して形成された第1壁板36と、第1壁板36の各端に設けられて味噌等の原料の収容空間を形成する一対の第2壁板37とを有する。なお、第1壁板36の一方の上端は、外側に突出した突出部36aとして形成されており、容器本体33を突出部36a側に傾けることにより被収容物を流出しやすくし、取り出しをより容易にしている。
【0022】
加熱機構31は、容器本体33に収容された被収容物を、容器本体33を介して加熱するためのものである。加熱機構31は、容器本体33の外表面に配されたヒータ41と、ヒータ41の加熱のオンとオフとの切り替え、及び加熱をオンにした場合における温度を調節する温度コントローラ42とを備える。この温度コントローラ42により、容器本体33を介して、容器本体33に収容された原料の温度が目的とする温度に調節される。ヒータ41は特に限定されず、本例では蒸気を用いたヒータを用いており、加熱する間の蒸気圧は全開としてある。
【0023】
攪拌機構32は、原料等の被収容物を攪拌するためのものであり、攪拌ユニット45と、モータ46と、駆動コントローラ47等を備える。攪拌ユニット45は攪拌翼51と回転軸52と支持部材53を有する。回転軸52は、鉛直方向に起立した姿勢の一対の第2壁板37の一方から他方に向かって延びており、概ね水平に配されている。回転軸52は、第2壁板37に対して回転自在に設けられており、攪拌翼51は、棒状の支持部材53により回転軸52に固定されている。これにより、攪拌翼51は、モータ46によって、回転軸52と一体に第1壁板36の内壁に沿って回転する。駆動コントローラ47は、モータ46を制御することにより、攪拌翼51の回転のオンとオフとの切り替え、及び回転翼の回転速度を調整する。
【0024】
攪拌翼51は、矩形の板状に形成されており、長辺が一対の第2壁板37の一方から他方へ向かう方向に沿って配されている。攪拌翼51は、長手方向に延びた端縁は、例えば水平となるように設けられている。これにより、攪拌翼51は、第1壁板36の内壁に沿った姿勢で回転し、第1壁板36の内面から収容物を掻きとるように変位する。支持部材53は、長さを調節可能な伸縮機構(図示無し)を備えており、これにより、攪拌翼51の回転軸52からの距離を調節できるようになっている。攪拌翼51の回転軸52からの距離を調節することにより、被収容物の内部と被収容物上の空間との間で変位するように回転させることが、より好ましく、本例でもそのようにしている。この例では、攪拌翼51を、回転軸52の長手方向に沿って3つ設けてあるが、攪拌翼51の個数はこの例に限られず、1個、2個、または4個以上であってもよい。
【0025】
攪拌翼51を本例のように複数設ける場合には、回転軸52を中心とした攪拌翼51同士の中心角θ、すなわち支持部材53同士の角度は、互いに等しいことが好ましい。これにより、被収容物に対する攪拌効果が均等になり、温度の均一化に寄与したり、原料の混合むらや分散むらが抑えられる。
【0026】
なお、
図1においては、図の煩雑化を避けるために、温度コントローラ42、モータ46、駆動コントローラ47を
図1の(A)にのみ描いてある。
【0027】
調味液11は、製造装置10で油脂を加熱し、製造装置の容器本体33の内壁に、液状の油脂を膜状に付着させる油脂付着工程61(
図2参照)と、油脂が膜状に付着している容器本体33に味噌の一部を第1味噌原料部として入れ、攪拌しながら加熱して炒め味噌とする味噌加熱工程62(
図2参照)と、味噌から第1味噌原料部を除いた残部を第2味噌原料部として、前記炒め味噌と混合する混合工程63(
図2参照)とにより製造することができる。香味野菜やその他の原料を用いて調味液11を製造する本例では、油脂付着工程、味噌加熱工程、及び混合工程に加え、さらに他の工程を経て調味液11を製造しており、
図2を参照しながら以下に説明する。
【0028】
油脂付着工程61は、味噌66の焦げを防ぐためのものである。油脂付着工程61は、容器本体33による加熱で油脂67を液状にし、液状になった油脂67を、容器本体33の内壁に、膜状に付着させる。容器本体33の内壁に油脂の膜(以下、油脂膜と称する)を形成することにより、後工程で入れられる味噌66が容器本体33の内壁に接着しにくくなり、味噌66の過度な加熱が抑制される。その結果、味噌66は焦げにくくなり、味噌66の焦げが例えば黒色または茶色の異物として調味液11に混入することが防止される。
【0029】
容器本体33の内壁は、油脂が付着していない非付着領域があっても味噌66の焦げの防止に一定の効果はある。例えば油脂が容器本体33の内壁の一部において線状に付着していても、その他の多くの領域で油脂膜が形成していれば、味噌66の焦げは防止される。ただし、容器本体33の内壁のうち、油脂膜が形成される領域は広いほど好ましく、本実施形態では、例えば後述の第1味噌原料部66aを載せる領域として容器本体33の底から深さの1/2程度までを油脂膜の形成領域として、容器本体33の概ね40%の領域に油脂膜を形成している。
【0030】
背脂68は、調味液11に、深みのある濃いあじわいであるいわゆる酷(こく)を発現させるために有効である。背脂68を用いる場合には、油脂付着工程61は、第1工程71と第2工程72との2工程を有することが好ましく、この例でもそのようにしている。第1工程71は、背脂68の焦げを防ぐためのものである。第1工程71は、背脂68と異なる油脂を容器本体33により加熱して液状にし、容器本体33の内壁に膜状に付着させる。第1工程71で油脂膜を形成する油脂は特に限定されないが、好ましいものとしてはラード、タロー、鶏油等が挙がられ、本例では純正ラード(以下、単に「ラード」と称する)73を用いている。ラード73は、容器本体33に入れる前に、予め湯煎で溶解しておくことが好ましい。ただし、湯煎で溶解する場合において、ラード73は、一部が固体のまま残った状態で容器本体33に入れてもよい。
【0031】
第2工程72は、ラード73が付着している容器本体33に背脂68を入れて、攪拌しながら加熱する。背脂68は、背脂68は、ラード73で形成された油脂膜上に載るように容器本体33内に入れられるようにすることが好ましい。本例では、第1工程71によりラード73の油脂膜を形成しており、油脂膜上に載るように背脂68を入れることにより背脂68の焦げがより抑制されている。第2工程72は、背脂を110℃に達するまで昇温させるように加熱することが好ましい。これにより、調味液11の甘味が向上する。第2工程72での加熱により背脂68が達する温度は110℃であることが好ましい。第2工程72で背脂68を110℃に達するまで加熱する時間は特に限定されず、本例では背脂68を110℃に達するまでの加熱に要する時間は25分である。背脂68が110℃に達した場合には、容器本体33による加熱を停止することが好ましく、本例でも停止させている。冷凍されている背脂68を用いる場合には、容器本体33に入れる前に、予め解凍することが好ましい。
【0032】
野菜原料は、調味液11に、野菜を煽ったロースト感(香ばしさ)を発現させるためのものであり、野菜原料が本例のように香味野菜由来であることがより好ましい。野菜原料の野菜が香味野菜であることにより、野菜を煽ったロースト感が調味液11に付与される。野菜原料を容器本体33に入れる野菜原料添加工程75は、油脂付着工程61と味噌加熱工程62との間であることが好ましい。これにより、後工程である味噌加熱工程62において、野菜原料が味噌66の一部とともに加熱され、野菜を煽ったロースト感が現れる。
【0033】
図2においては野菜原料添加工程75を1回として描いてあるが、野菜原料添加工程は複数回であってもよい。本例では、互いに異なる香味野菜の野菜原料を含有する香味野菜群Aと香味野菜群Bとを調製し、香味野菜群Aを添加する野菜原料添加工程75と、香味野菜群Bを添加する野菜原料添加工程75とを行っている。
図2においては香味野菜群Aには符号76aを付し、香味野菜群Bには符号76bを付してある。なお香味野菜群とは、複数種類の香味野菜の野菜原料の混合物であってもよいし、1種の香味野菜の野菜原料で構成されていてもよいし、香味野菜と香味野菜以外の野菜原料との混合物であってもよい。
【0034】
香味野菜群A,Bは、例えば、摺りおろしたにんにく(以下、すりにんにくと称する)と生姜(ショウガ)やネギ、おろしたたまねぎ(以下、オニオンミンチ)等から選ばれる1種の香味野菜または複数種類の香味野菜の混合物である。
【0035】
味噌66は、全量を2つに分けて、一方を第1味噌原料部66aとし、他方を第2味噌原料部66bとする。第1味噌原料部66aは味噌66の一部であり、味噌加熱工程62に供する。第2味噌原料部66bは、味噌66から第1味噌原料部66aを除いた残部であり、味噌加熱工程62には供さずに混合工程63に供する。
【0036】
味噌加熱工程62は、調味液11に、味噌を煽ったロースト感(香ばしさ)を発現させるためのものである。味噌加熱工程62では、第1味噌原料部66aは油脂67及び香味野菜原料群A,Bとともに攪拌されながら加熱されることによって炒められ、炒め味噌77とされる。なお、味噌加熱工程62では炒め焼きをしてもよい。味噌加熱工程62では、第1味噌原料部66aを70℃に達するまで昇温させることが好ましく、これにより、調味液11に、味噌を煽ったロースト感がより確実に表れる。味噌加熱工程62において第1味噌原料部66aの昇温で達する温度(以下、達温と称する)は、70℃以上100℃以下の範囲内であることがより好ましく、90℃であることがさらに好ましい。目的とする温度に達した場合には、加熱を停止することが好ましい。味噌加熱工程62は、撹拌翼51の回転速度が10回転/分以上20回転/分以下であることが好ましく、15回転/分で回転させることにより撹拌しながら実施することが好ましい。回転速度が10回転/分以上であることにより10回転/分未満の場合と比べて、味噌がより焦げ付きにくく、20回転/分以下であることにより20回転/分を超える場合と比べて高温状態の味噌がより跳ねにくく安全である。
【0037】
味噌66の質量を100とするときに、第1味噌原料部66aの質量は多くても90であることが好ましく、これにより、第1味噌原料部66aの質量を90よりも多くした場合に比べて、味噌の焦げがより確実に発生しにくく、苦みと渋みが混じったようないわゆるえぐみも抑えられる。味噌66の質量100に対する第1味噌原料部66aの質量は、30以上80以下の範囲内であることがより好ましく、40以上70以下の範囲内であることがさらに好ましく、50以上60以下の範囲内であることが特に好ましい。味噌66の質量100に対する第1味噌原料部66aの質量を30以上とすることにより、30未満とする場合に比べて、ロースト感がより確実に現れる。
【0038】
得られた炒め味噌77は、製造装置10と同様に構成された、別の装置で第2味噌原料部66bと混合されてもよいが、本例では製造装置10で第2味噌原料部66bと混合している。混合工程63は、炒め味噌77と第2味噌原料部66bとを混合する。第2味噌原料部66bを容器本体33に入れる場合には、一度に全量を入れるよりも、複数回に分けて間欠的に、もしくは、一定の時間をかけて連続的に少しずつ入れる方が好ましい。本例では、第2味噌原料部66bをミキサで分散をして一度に投入している。
【0039】
油脂67と味噌66と香味野菜以外の原料を用いる場合には、それらの原料を添加する添加工程81を、混合工程63の後に有することが好ましい。添加工程81は、加熱を停止した状態で行うことが好ましい。タマリンドシードガムを添加する場合には、加熱を開始してから、加熱した状態で添加することが好ましい。
【0040】
図2においては添加工程81を1回として描いてあるが、添加工程81は複数回であってもよい。本例では、互いに異なる原料を含有するその他原料群82として添加する複数回の添加工程81を実施している。なお原料群とは、複数種類の原料の混合物であってもよいし、ひとつの原料で構成されていてもよい。
【0041】
本例では、その他原料群82に用いた原料は、グルタミン酸ナトリウム、食塩、上白糖、レッドペッパーパウダ、酵母エキス、タマリンドシードガム、水である。
【0042】
添加工程81がある場合には添加工程81の後に、無い場合には混合工程63の後に、炒め味噌77と第2味噌原料部66bとの混合物を加熱する味噌混合物加熱工程83を有することが好ましい。味噌混合物加熱工程83では、本例では85℃まで達温した後は加熱を停止している。
【実施例0043】
[実施例1]~[実施例7]
第1味噌原料に用いる味噌と第2味噌原料とする味噌との質量比率M1/M2とが互いに異なる調味液11を、製造装置10を用いて上記の方法で製造し、実施例1~実施例7とした。ただし、油脂付着工程61は、背脂と異なる油脂を用いた第1工程71及び背脂を用いた第2工程72は実施せず、油脂として背脂を用い、背脂で油脂膜を形成した。各実施例の処方と、味噌加熱工程62における達温は100℃であり、達温までの時間は5分であった。表1及び後述の表2、表3中の米味噌A(A1およびA2)とは、加熱されていない味噌であり、色味が薄く、すっきりとした香りと旨みが特徴である。なお、表1をはじめとする各表での「質量部」は、周知の通り、質量での割合(比率)を意味する。
【0044】
得られた調味液11について、目視評価と、ロースト感と味との各評価を下記の評価方法及び評価基準で行った。結果は表1に示す。
1.目視評価
得られた調味液11から1000cm3をサンプルとして採取し、このサンプルを平板上に薄く展開して、黒食もしくは茶色の異物の有無を目視で確認し、以下の基準で評価した。
P(合格) ;異物が確認されなかった
F(不合格);異物が確認された
【0045】
2.ロースト感
得られた調味液11から10ml(=10cm3)をサンプリングし、60ml(=60cm3),98℃の水で薄めて、喫食し、ロースト感(香ばしさ)の強さを、評価した。評価は、後述の比較例1のサンプルを用いた場合のロースト感を「基準」とした。なお、比較例1のサンプルを用いた場合にはロースト感は感じられなかった。評価は、3人の評価者の各々で下記の基準で評価を行い、これら3人の評価結果の平均値の小数第一位を四捨五入して求めた。
「1」;「基準」と同程度であった
「2」;ロースト感をわずかに感じた
「3」;ロースト感を明確に感じた
「4」;ロースト感を非常に強く感じた
【0046】
3.味
得られた調味液11から10cm3をサンプリングし、60ml(=60cm3),98℃の水で薄めて、喫食し、味を評価した。評価は、後述の比較例1のサンプルを用いた場合の味を「基準」とした。なお、比較例1のサンプルを用いた場合の味は、単調な風味であった。評価は、3人の評価者の各々で下記の基準で評価を行い、これら3人の評価結果の平均値の小数第一位を四捨五入して求めた。
「1」;「基準」と同様に単調な風味であった。なお、ロースト感に比較例1と際があっても、単調な風味であればこの評価結果とした
「2」;味のめりはりが「基準」よりもわずかに感じられた。
「3」;味のめりはりが「基準」と比べて明らかに感じられ、野菜の甘味、厚み、こく、まろやかさのバランスがよい
「4」;味のめりはりが「基準」と比べて顕著に感じられ、野菜の甘味、厚み、こく、まろやかさのバランスが非常によい
【0047】
【0048】
[比較例1]~[比較例2]
用いる味噌のすべてを第2味噌原料部66bとして用いて調味液を製造し、比較例1とした。すなわち、比較例1では、味噌加熱工程62及び混合工程63は行っていない。また、用いる味噌のすべてを第1味噌原料部として調味液を製造し、比較例2とした。すなわち、比較例2では、第2味噌原料部66bが無いため混合工程63を行っていない。その他の処方及び条件は、表1に示すように実施例1~実施例7と同じである。
【0049】
得られた調味液について、実施例1~7と同じ方法及び基準で、目視評価を行った。また、比較例2については、ロースト感と味とにつき、実施例1~7と同じ方法及び基準で評価した。比較例1については、ロースト感が感じられず、また味についても単調であり、これを他の実施例及び比較例の評価の基準とした。結果は表1に示す。
【0050】
[実施例8]~[実施例20]
味噌加熱工程62における第1味噌原料部66aの達温と、達温までの時間とを表2に示す条件にして、実施例8~20とした。各実施例の処方は表2に示す。なお、実施例20は、ラード73を膜状に付着させてから背脂68を容器本体33に投入し加熱した。すなわち、実施例20では第1工程71と第2工程72とを実施した。実施例8~19の油脂付着工程61は実施例1~7と同じである。
【0051】
実施例1~7と同じ方法及び基準で、目視評価と、ロースト感と味との各評価を行った。結果は表2に示す。
【0052】
なお、味の評価と調味液との色味との関係を確認したところ、以下であった。
味の評価において「1」の場合;色味は薄いもしくは焦げた色であった
味の評価において「2」の場合;色味は上記「1」の場合の薄い場合よりも濃くなり、もしくは上記「1」の焦げた色よりも薄かった
味の評価において「3」の場合;色味は上記「2」の場合よりもわずかに茶色味が増した色もしくは上記「2」の焦げた色よりも薄かった。
味の評価において「4」の場合;色味は「3」の場合よりも茶色味が強く増した色、かつ、「3」の焦げた色よりも薄い色であった
【0053】
【0054】
[比較例3]
油脂67を容器本体33に入れたが、油脂67を膜状には形成させず、容器本体33の内壁に、線状に付着させて野菜原料添加工程75を行い、比較例3とした。すなわち比較例3は、油脂膜を形成しなかった。
【0055】
実施例1~7と同じ方法及び基準で、目視評価と、ロースト感と味との各評価を行った。結果は表2に示す。
【0056】
[実施例21]~[実施例23]
味噌の種類をはじめとする処方を変えて、実施例21~23とした。各処方及び条件は表3に示す。なお、実施例21~23の油脂付着工程61は、実施例1~7と同じである。表3に示す米味噌B(B1およびB2)とは、加熱の処理がなされた味噌であり、濃い赤色で酷(こく)が深いことが特徴である。
【0057】
実施例1~7と同じ方法及び基準で、目視評価と、ロースト感と味との各評価を行った。結果は表3に示す。
【0058】