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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096353
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ヘキソースの酵素的製造
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20240705BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C12P19/02 ZNA
C12P19/02
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075301
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2021523430の分割
【原出願日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】62/752,061
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/857,543
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518059587
【氏名又は名称】ボヌモーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィチェレキー、ダニエル、ジョセフ
(57)【要約】
【課題】改善された酵素的方法によって糖類からヘキソースを製造する方法の提供。
【解決手段】
改善された酵素的方法によって糖類からヘキソースを製造する方法が本明細書に開示される。改善された方法は、デンプンもしくはデンプン誘導体、セルロースもしくはセルロース誘導体、又はスクロースをグルコース6-リン酸(G6P)中間体に変換するために以前に報告された酵素よりも高い活性を有する酵素を利用する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン又はデンプン誘導体からヘキソースを酵素的に製造するための改善された方法であって、該改善は、
a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであって、該PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記ステップ、
b)α-グルカンホスホリラーゼ(aGP)によって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップであって、該aGPは、配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記ステップ、及び
c)4-α-グルカントランスフェラーゼ(4GT)によって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップであって、該4GTは、配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記ステップ、
の少なくとも1つを含む、上記改善された方法。
【請求項2】
セルロース又はセルロース誘導体からヘキソースを酵素的に製造するための改善された方法であって、該改善は、ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、G1Pをグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップを含み、該PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記改善された方法。
【請求項3】
スクロースからヘキソースを酵素的に製造するための改善された方法であって、該改善は、
a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであって、該PGMが、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記ステップ、及び
b)スクロースホスホリラーゼを用いてスクロースをグルコース1-リン酸(G1P)に変換するステップであって、該スクロースホスホリラーゼは、配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記ステップ、
の少なくとも1つを含む、上記改善された方法。
【請求項4】
ヘキソースが、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、アルロース、イノシトール及びタガトースからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の改善された方法。
【請求項5】
デンプン誘導体が、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトトリオース、マルトース及びマルトデキストリンからなる群から選択される、請求項1に記載の改善された方法。
【請求項6】
ヘキソースリン酸ホスファターゼを使用してヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の改善された方法。
【請求項7】
方法のステップが、単一の反応容器内で行われる、請求項6に記載の改善された方法。
【請求項8】
方法のステップが、ATPを含まず(ATP-free)、NAD(P)(H)を含まず(NAD(P)(H)-free)に、約0.1mM~約150mMのリン酸濃度で行われ、リン酸塩は再利用され、及び/又はヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップは、エネルギー的に好適な化学反応を伴う、請求項7に記載の改善された方法。
【請求項9】
方法ステップが、
約37℃~約85℃の範囲の温度、
約5.0~約8.0の範囲のpH、又は
約0.5時間~約48時間、もしくは連続反応として、
のうちの少なくとも1つの方法条件下で行われる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の改善された方法。
【請求項10】
ヘキソースをその糖アルコールに還元するステップをさらに含む、請求項4に記載の改善された方法。
【請求項11】
PGMは、テルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaroensis)由来のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)の活性と比較して少なくとも10%高い活性を有する、請求項4に記載の改善された方法。
【請求項12】
aGPは、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のaGP(Uniprot ID G4FEH8)の活性と比較して少なくとも10%高い活性を有する、請求項1に記載の改善された方法。
【請求項13】
4GTは、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の4GT(Uniprot ID O32462)の活性と比較して少なくとも10%高い活性を有する、請求項1に記載の改善された方法。
【請求項14】
SPは、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)と比較して少なくとも10%高い活性を有する、請求項3に記載の改善された方法。
【請求項15】
SPは、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)と比較して少なくとも10%高い達成可能な収率を有する、請求項3に記載の改善された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年10月29日に出願された米国特許出願第62/752,061号及び2019年6月5日に出願された米国特許出願第62/857,543号の優先権を主張し、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ヘキソース単糖類の調製方法に関する。より具体的には、本発明は、以前に報告されたものよりも高い活性を有する酵素を使用して、中間体、グルコース6-リン酸(G6P)を調製する改善された方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ヘキソースは、6個の炭素原子を有する単糖類である。ヘキソースは官能基によって分類することができ、アルドヘキソースは1位にアルデヒドを有し、ケトヘキソースは2位にそのケトンを有する。アルドヘキソース(又はアルドース)には、アロース、アルトロース、グルコース、グロース、ガラクトース、イドース、タロース及びマンノースが含まれる。ケトヘキソース(又はケトース)には、プシコース(アルロース)、フルクトース、タガトース、及びソルボースが含まれる。イノシトールは、アルデヒド基やケトース基を有さないヘキソースであり、炭素環式糖として特徴付けられる。
【0004】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/169957号は、酵素的変換によって糖類からヘキソースを調製する方法を記載している。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2017/059278号及び国際公開第2018/004310号は、酵素的変換によって糖類からタガトースを調製する方法を記載している。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/112139号は、酵素的変換によって糖類からアルロースを調製する方法を記載している。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる韓国特許第20040098757号明細書は、酵素的変換によって糖類からフルクトース6-リン酸を調製する方法を記載している。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる中国特許第106148425号は、酵素的変換によって糖類からイノシトールを調製する方法を記載している。これらの方法のそれぞれにおいて、グルコース6-リン酸(G6P)は酵素的経路の中間体である。
【0005】
高収率での酵素的なヘキソース製造の開発にもかかわらず、例えば、より少量の酵素でより高い収率を得ることができる、さらに改善されたヘキソース製造方法を提供することが依然として必要とされている。ヘキソース製造のコスト低減に対する工業的及び商業的な強い関心があり、この低減は、酵素の使用量の低減、より高い活性を有する酵素、及び糖類をG6P中間体に変換するのにより効果的な酵素の組み合わせの使用を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載の発明は、一般に、様々な糖類出発材料からの酵素的変換によってヘキソースを調製するための改善された方法(processes)に関する。糖類は、デンプンもしくはデンプン誘導体、セルロースもしくはセルロース誘導体、又はスクロースから選択され得る。本発明の改善された方法では、示されるように、方法ステップに使用される酵素は、ヘキソースの調製のために以前に開示された酵素よりも改善された活性を有する。
【0007】
デンプン又はデンプン誘導体からヘキソースを酵素的に製造するための本発明のいくつかの改善された方法であって、改善は、a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであり、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、b)アルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP)によって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップであり、αGPは、配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、及び4-α-グルカントランスフェラーゼ(4GT)によって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップであり、4GTは、配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、の少なくとも1つを含む。
【0008】
セルロース又はセルロース誘導体からヘキソースを酵素的に製造するための本発明のいくつかの改善された方法であって、改善は、ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、G1Pをグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップを含み、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0009】
スクロースからヘキソースを酵素的に製造するための本発明のいくつかの改善された方法であって、改善は、a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであり、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、及びb)スクロースホスホリラーゼを使用してスクロースをグルコース1-リン酸(G1P)に変換するステップであり、スクロースホスホリラーゼは、配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、の少なくとも1つを含む。
【0010】
本発明のいくつかの改善された方法では、ヘキソースは、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、アルロース、イノシトール及びタガトースから選択される。本発明のいくつかの改善された方法は、ヘキソースリン酸ホスファターゼを使用してヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップをさらに含む。
【0011】
本発明のいくつかの改善された方法では、方法ステップは単一の反応容器内で行われる。本発明の他の改善された方法では、方法ステップは2つ以上の反応容器内で行われる。本発明のいくつかの改善された方法では、方法ステップは、ATPなし(ATP-free)、NAD(P)(H)なし(NAD(P)(H)-free)で、約0.1mM~約150mMのリン酸濃度で行われ、リン酸塩は再利用され、及び/又はヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップは、エネルギー的に好適な化学反応を伴う。本発明のいくつかの改善された方法では、方法ステップは、約37℃~約85℃の範囲の温度、約5.0~約8.0の範囲のpH、又は約0.5時間~約48時間のうちの少なくとも1つの方法条件下で行われる。本発明のいくつかの改善された方法では、方法ステップは連続反応として行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】スクロースをG6Pに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:SP、スクロースリン酸、及びPGM、ホスホグルコムターゼ。本発明の改善された方法は、以下の改善の1つ又は複数を含む:SPが、配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;及びPGMが、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
図2】デンプン誘導体、マルトデキストリンをG6Pに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:IA、イソアミラーゼ;PA、プルラナーゼ;αGP、α-グルカンホスホリラーゼ又はデンプンホスホリラーゼ;4GT、4-グルカントランスフェラーゼ;及びPGM、ホスホグルコムターゼ。本発明の改善された方法は、以下の改善の1つ又は複数を含む:PGMが、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;αGPが、配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;及び4GTが、配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0014】
図3】セルロースをG6Pに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:CDP、セロデキストリンホスホリラーゼ、及びPGM、ホスホグルコムターゼ。本発明の改善された方法では、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
図4】G6Pをアロースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;P6PE、プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ;A6PI、アロース6-リン酸イソメラーゼ;A6PP、アロース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0016】
図5】G6Pをマンノースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;PMI、ホスホマンノースイソメラーゼ;及びM6PP、マンノース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0017】
図6】G6Pをガラクトースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;F6PE、フルクトース6-リン酸イソメラーゼ;Gal6PI、ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ;Gal6PP、ガラクトース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0018】
図7】G6Pをフルクトースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;F6PP、フルクトース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0019】
図8】G6Pをアルトロースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;P6PE、プシコース6-リン酸エピメラーゼ;Alt6PI、アルトロース6-リン酸イソメラーゼ;Alt6PP、アルトロース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0020】
図9】G6Pをタロースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;F6PE、フルクトース6-リン酸エピメラーゼ;Tal6PI、タロース6-リン酸イソメラーゼ;Tal6PP、タロース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0021】
図10】G6Pをソルボースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;F6PE、フルクトース6-リン酸エピメラーゼ;S6PE、ソルボース6-リン酸エピメラーゼ;S6PP、ソルボース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0022】
図11】G6Pをグロースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;F6PE、フルクトース6-リン酸エピメラーゼ;S6PE、ソルボース6-リン酸エピメラーゼ;Gul6PI、グロース6-リン酸イソメラーゼ;Gul6PP、グロース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0023】
図12】G6Pをイドースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;F6PE、フルクトース6-リン酸エピメラーゼ;S6PE、ソルボース6-リン酸エピメラーゼ;l6PI、イドース6-リン酸イソメラーゼ;l6PP、イドース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0024】
図13】G6Pをタガトースに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;F6PE、フルクトース6-リン酸エピメラーゼ;T6PP、タガトース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0025】
図14】G6Pをイノシトールに変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:IPS、イノシトール-リン酸シンターゼ;IMP、イノシトールモノホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0026】
図15】G6Pをプシコース(アルロース)に変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:PGI、ホスホグルコイソメラーゼ;P6PE、プシコース6-リン酸エピメラーゼ;P6PP、プシコース6-リン酸ホスファターゼ。本発明による改善された方法のための酵素的経路については、この経路を図1図2又は図3の経路と組み合わせる。
【0027】
図16】グルコース1-リン酸を別のヘキソースに変換するための形成ギブスエネルギーに基づく中間体間の反応ギブスエネルギーを示す図である。
【0028】
図17】HPLCクロマトグラムによるマルトデキストリンのG6Pへの変換を示す図である。(破線)0時間クロマトグラム、(点線)先に開示されたαGP(Uniprot ID G4FEH8)及びPGM(Uniprot ID Q68BJ6)による30分間の方法、(実線)より高い活性のαGP(Uniprot ID D1B926)及びより高い活性のPGM(Uniprot ID A0A150LLZ1)を有する30分間の「改善された」方法。(1)ボイド及びマルトデキストリン、(2)G1P及びG6P、(3)マルトトリオース、ならびに(4)マルトース。
【0029】
図18】スクロースホスホリラーゼ活性のクロマトグラムを示す図である。一番上のクロマトグラムは、より高い活性のSP、Uniprot ID F6BJS0と比較した、Uniprot ID D9TT09(基準SP)との反応を示す。0時間の反応(スクロースからフルクトース)を破線で示し、同量のSP及び他の酵素を使用した2時間の反応を基準(実線)及びより高い活性のSP(点線)の両方について示す。2時間で、より高い活性のSPは、基準SPとしてのフルクトース量の約150%を生成する。下のクロマトグラムは、Uniprot ID D9TT09(基準SP)をより高い活性のUniprot ID F6BJS0と比較する。0時間の反応(スクロースからフルクトース)を破線で示し、基準SP(実線)及びより高い活性のSP(点線)の両方について、同量のSP及び他の酵素を使用した6時間の反応を示す。6時間(両方の反応の最大収率)で、より高い活性のSPは、基準SPとしてのフルクトース量の約130%を生成する。
【0030】
図19】さらに高い活性のPGMと比較した、Uniprot ID A0A150LLZ1との反応のクロマトグラムを示す図である。クロマトグラムは、限界PGM、過剰なホスホグルコイソメラーゼ及び過剰なフルクトース6-リン酸ホスファターゼとのインキュベーション後のグルコース1-リン酸から作られたフルクトースのレベルを示す。他のすべてのPGMを等量で使用すると、フルクトース生成が改善され、したがって、酵素的方法の制限酵素であるためにPGM活性が増強されることが明らかに分かる。図中、Uniprot ID A0A0P6YKY9=実線、Uniprot ID E8N4Y6=破線、Uniprot ID R7RR04=点線、Uniprot ID A0A023DI95=丸の線、UniParc ID UPI0001D17AE3=三角形の線、Uniprot ID A0A150LLZ1=四角形の線である。はるかに低い(表1参照)基準PGM Uniprot ID Q68BJ6の活性は示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書に記載の発明は、生成物分離コスト及びヘキソース製造コストを大幅に低減しながら、高い生成物収率でヘキソースを合成するための酵素的経路又は方法を提供する。本明細書に記載の酵素的方法は、一般に、酵素的変換によって糖類からヘキソース単糖類を調製するための改善された方法に関する。無細胞酵素カクテルを使用して糖類をヘキソースに変換するための人工(非天然)ATPを含まない酵素的経路が提供される。細胞ベースの製造方法とは対照的に、本発明の酵素的方法は、ヘキソースの無細胞調製を含み、細胞内外への基質/生成物の輸送を遅らせることが多い細胞膜の除去に起因して比較的高い反応速度を有する。方法はまた、栄養豊富な発酵培地/細胞代謝産物を含まない最終生成物を有する。糖類は、デンプンもしくはデンプン誘導体、セルロースもしくはセルロース誘導体、又はスクロースから選択され得る。本発明の改善された方法では、示されるように、方法ステップに使用される酵素は、ヘキソースの調製のために以前に開示された酵素よりも改善された活性を有する。
一実施形態では、本発明は、先に開示されたαGP、PGM及び4GTの代わりに、より高い活性を有するαGP、PGM及び4GTの少なくとも1つを使用して、デンプン及びその誘導体をヘキソースに変換するための改善された方法に関する。テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のアルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP)(Uniprot ID G4FEH8)、テルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来のホスホグルコムターゼ(PGM)(Uniprot ID Q68BJ6)、及びテルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の4-α-グルカノールトランスフェラーゼ(Uniprot ID O32462)を開示している国際公開第2018/169957号を参照のこと。デンプン又はデンプン誘導体からヘキソースを酵素的に製造するための本発明のいくつかの改善された方法であって、改善は、a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであり、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、b)アルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP)によって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップであり、αGPは、配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、及び4-α-グルカントランスフェラーゼ(4GT)によって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップであり、4GTは、配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、の少なくとも1つを含む。本発明の改善された方法において、方法は、a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであり、PGMが、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップと、b)アルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP)によって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップであり、αGPが、配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップと、4-α-グルカントランスフェラーゼ(4GT)によって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップであり、4GTが、配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップと、を含む。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、テルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)の代わりに、より高い活性を有するPGMを使用してセルロース及びその誘導体をヘキソースに変換するための改善された方法に関する。セルロース又はセルロース誘導体からヘキソースを酵素的に製造するための本発明のいくつかの改善された方法において、改善は、PGMによって触媒される、G1Pをグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップを含み、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0033】
さらに別の実施形態では、本発明は、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来の先に開示されたSP(Uniprot ID D9TT09)の代わりにより高い活性を有するSP、及びテルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)の代わりにより高い活性を有するPGMのうちの少なくとも1つを使用してスクロースをヘキソースに変換するための改善された方法に関する。スクロースからヘキソースを酵素的に製造するための本発明のいくつかの改善された方法であって、改善は、a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであり、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、及びb)スクロースホスホリラーゼを使用してスクロースをグルコース1-リン酸(G1P)に変換するステップであり、スクロースホスホリラーゼは、配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ステップ、の少なくとも1つを含む。本発明の改善された方法において、方法は、a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであり、PGMが、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むステップと、b)スクロースホスホリラーゼを使用してスクロースをグルコース1-リン酸(G1P)に変換するステップであり、スクロースホスホリラーゼが、配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むステップと、を含む。
【0034】
本発明のいくつかの改善された方法では、ヘキソースは、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、アルロース、イノシトール及びタガトースから選択される。本発明のいくつかの改善された方法は、ヘキソースリン酸ホスファターゼを使用してヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップをさらに含む。
【0035】
デンプンもしくはデンプン誘導体、セルロースもしくはセルロース誘導体、又はスクロースからヘキソースを酵素的に製造するための本発明によるいくつかの改善された方法は、ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップを含み、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、PGMは配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0036】
ホスホグルコムターゼ(PGM)(EC 5.4.2.2)は、グルコース1-リン酸とグルコース6-リン酸の相互変換を触媒する。糖からヘキソースを製造するための本発明の改善された方法では、反応はG6Pの方向に進行し、次にさらに下流で処理され、方法の最終的な酵素的ステップは、ヘキソースリン酸を脱リン酸化するエネルギー的に好適な不可逆的なステップである。
【0037】
本発明の改善された方法では、PGMは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する、テルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来の前述のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)と比較してより高い活性を有する。好ましくは、本発明の方法で使用されるPGMは、テルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)の活性よりも少なくとも10%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも2000%、少なくとも2500%、少なくとも3000%、少なくとも3500%、少なくとも4000%、少なくとも4500%、少なくとも5000%、又は少なくとも5500%改善された酵素活性を有する。
【0038】
例えば、例1に示すように、本発明の方法で使用するためのPGMは、テルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)よりも改善された活性を有し、ゲオバチルス・ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)NUB3621由来のPGM(Uniprot ID A0A023CRS6)は、約700%改善された酵素活性を有し、カルディバチルス・デビリス(Caldibacillus debilis)由来のPGM(Uniprot ID A0A150LLZ1)は、約1900%改善された酵素活性を有し、ゲオバチルス・テルモグルコシダシウス(Geobacillus thermoglucosidasius)由来のPGM(UniParc ID UPI0001D17AE3)は、約2100%改善された酵素活性を有し、パラゲオバチルス・カルドキシロシリティクス(Parageobacillus caldoxylosilyticus)NBRC107762由来のPGM(Uniprot ID A0A023DI95)は、約1980%改善された酵素活性を有し、テルモブラキウム・セレレ(Thermobrachium celere)DSM8682由来のPGM(Uniprot ID R7RR04)は、約5100%改善された酵素活性を有し、アナエロリネア・テルモフィラ(Anaerolinea thermophila)由来のPGM(Uniprot ID E8N4Y6)は、約5800%改善された酵素活性を有し、テルマナエロスリクス・ダキセンシス(Thermanaerothrix daxensis)由来のPGM(Uniprot ID A0A0P6YKY9)は、約6500%改善された酵素活性を有する。以下の例は、酵素的方法の一部としてPGMの活性を決定するためのプロトコルを当業者に提供し、このプロトコルは、例えば、酵素をその基質と共にインキュベートし、次いで、HPLCを介して反応物及び生成物又はその下流の生成物の量を測定することを含む。任意の2つの酵素の相対活性の測定は、緩衝液、pH、温度などの同一の反応条件下で行われる。
【0039】
本発明の改善された方法で使用するためのPGMの例には、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するゲオバチルス・ステアロテルモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)NUB3621由来のPGM(Uniprot ID A0A023CRS6)、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するカルディバチルス・デビリス(Caldibacillus debilis)由来のPGM(Uniprot ID A0A150LLZ1)、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するゲオバチルス・テルモグルコシダシウス(Geobacillus thermoglucosidasius)由来のPGM(UniParc ID UPI0001D17AE3)、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するパラゲオバチルス・カルドキシロシリティクス(Parageobacillus caldoxylosilyticus)NBRC107762由来のPGM(Uniprot ID A0A023DI95)、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するテルモブラキウム・セレレ(Thermobrachium celere)DSM8682由来のPGM(Uniprot ID R7RR04)、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するアナエロリネア・テルモフィラ(Anaerolinea thermophila)由来のPGM(Uniprot ID E8N4Y6)、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するテルマナエロスリクス・ダキセンシス(Thermanaerothrix daxensis)由来のPGM(Uniprot ID A0A0P6YKY9)、及び配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むPGMのタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の改善された方法で使用するためのPGMは、一般に、α-D-ホスホヘキソムターゼ・スーパーファミリー(IPR005841)の一部であり、酵素の活性部位を形成する4つのドメインを含む。最初の3つのドメインはαβコアからなり、第4のドメインはTATAボックス結合タンパク質様フォールド(Mehra-Chaudharyら、Proteins 79(4):1215-29,2011)を含む。第1のドメインは、活性部位へのホスホリル転移のための保存されたセリン残基に寄与する(配列番号3のSer147)。第2のドメインは、活性部位に対する保存されたMg2+結合残基に寄与する(配列番号3のAsp306、Asp308及びAsp310)。第3のドメインは、活性部位に対する基質特異性について保存された残基に寄与する(配列番号3のGlu406及びSer408)。第4のドメインは、活性部位へのリン酸結合のための保存された残基に寄与する(配列番号3のArg538)。さらに、正に荷電した残基(Lys/Arg)は、配列番号3のLys420での触媒作用において役割を果たして保存されている。保存された残基はLeeら、FEBS J 280(11):2622-32,2013及びLevinら「タンパク質工学、設計及び選択(Protein Engineering,Design and Selection)」12(9):737-746,1999から引用した。
【0041】
本発明によるデンプン又はデンプン誘導体からヘキソースを製造するための本発明のいくつかの改善された方法は、αGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップを含み、αGPは、配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、αGPは、配列番号10~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、αGPは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0042】
α-グルカンホスホリラーゼ又はデンプンホスホリラーゼ(αGP)(EC 2.4.1.1)は、マルトオリゴ糖をリン酸分解的に切断してG1Pを生じる。デンプンホスホリラーゼはまた、リン酸の放出を伴う逆反応、すなわち、G1Pからα-1,4-D-グルカン鎖の非還元末端へのグルコシル単位の転移を触媒する。一般に、オリゴ糖鎖の重合度は4以上である。デンプン誘導体からヘキソースを製造するための本発明の改善された方法では、反応はG1Pの方向に進行し、次にさらに下流で処理され、方法の最終的な酵素的ステップは、ヘキソースリン酸を脱リン酸化するエネルギー的に好適な不可逆的なステップである。
【0043】
本発明の改善された方法では、αGPは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有する、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来の前述のアルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP)(Uniprot ID G4FEH8)と比較してより高い活性を有する。好ましくは、本発明の方法で使用されるαGPは、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のαGP(Uniprot ID G4FEH8)の活性よりも少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、又は少なくとも200%改善された酵素活性を有する。例えば、例2に示すように、テルムス・テルモフィルス(Thermus thermophilus)由来のαGP(Uniprot ID Q5SJ42)は、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のαGP(Uniprot ID G4FEH8)よりも約71%改善された酵素活性を有し、テルムス種(Thermus sp)CCB_US3_UF1由来のαGP(Uniprot ID G8NCC0)は、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のαGP(Uniprot ID G4FEH8)よりも約186%改善された酵素活性を有し、テルモアナエロバクター・シューデタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)株ATCC 33223由来のαGP(Uniprot ID B0K7V8)は、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のαGP(Uniprot ID G4FEH8)よりも約128%改善された酵素活性を有し、テルマナエロビブリオ・アキダミノボランス(Thermanaerovibrio acidaminovorans)株ATCC49978由来のαGP(Uniprot ID D1B926)は、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のαGP(Uniprot ID G4FEH8)よりも約111%改善された酵素活性を有する。以下の例は、酵素的方法の一部としてαGPの活性を決定するためのプロトコルを当業者に提供し、このプロトコルは、例えば、酵素をその基質と共にインキュベートし、次いで、分光光度測定及びHPLCを介して反応物及び生成物又はその後の下流生成物の量を測定することを含む。任意の2つの酵素の相対活性の測定は、緩衝液、pH、温度などの同一の反応条件下で行われる。
【0044】
本発明の改善された方法で使用するためのαGPの例には、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するテルムス・テルモフィルス(Thermus thermophilus)由来のαGP(Uniprot ID Q5SJ42)、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するテルムス種(Thermus sp)CCB_US3_UF1由来のαGP(Uniprot ID G8NCC0)、配列番号12に記載のアミノ酸配列を有するテルモアナエロバクター・シューデタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)株ATCC33223由来のαGP(Uniprot ID B0K7V8)、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有するテルマナエロビブリオ・アキダミノボランス(Thermanaerovibrio acidaminovorans)株ATCC49978由来のαGP(Uniprot ID D1B926)、及び配列番号10、配列番号11、配列番号12又は配列番号13と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するαGPのタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の改善された方法で使用するためのα-グルカンホスホリラーゼは、一般に、グリコシルトランスフェラーゼ、ファミリー35(IPR000811)の一部であり、「αグルカンホスホリラーゼ」ドメイン(IPR011834)を含む。いくつかのαGPは、PLP結合、PLP安定化、及びリン酸結合について保存された残基を有する。例えば、Uniprot ID D1B926(配列番号13)では、PLP結合のためにLys585が保存され、Arg484及びThr581はPLP安定化のために保存され、Gly110、Arg485及びLys490はリン酸結合のために保存されている(保存された残基はWatsonら、EMBO Journal Vol.16 No.1 pp.1-14、1997から引用した)。
【0046】
デンプン誘導体からヘキソースを製造するための本発明によるいくつかの改善された方法では、改善は、4-α-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を使用してデンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップを含み、4GTは、配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、4GTは、配列番号15~17のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、αGPは、配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0047】
4-α-グルカントランスフェラーゼ(4GT)(EC 2.4.1.25)は、マルトオリゴ糖のトランスグリコシル化を触媒し、様々な長さのマルトオリゴ糖及びグルコースを生じる。マルトース及びグルコースを転移反応におけるアクセプターとして使用することができる。
【0048】
ヘキソースを製造するための本発明のいくつかの方法は、ヘキソースリン酸をヘキソースに変換するエネルギー的に好適な脱リン酸化ステップを含む。このような方法では、特に単一の反応容器で実施される場合、リン酸塩は再利用され、方法の上流で、例えばαGPがアミロデキストリンをG1Pに変換することによって触媒される反応で使用される。しかしながら、αGPは、重合度(DP)が4未満のアミロデキストリンに対して高い活性で反応しない。本発明によるそのような方法では、反応に4GTを加えて、全体的な収率を改善する。4GTは、4より小さいDP、例えばマルトトリオースが、αGPによって分解され得る長鎖のアミロデキストリンに変換されるように、アミロデキストリンをトランスグリコシル化する。4GTがなければ、マルトトリオースは、収率を高めるために方法に再び関与することができる長鎖のアミロデキストリンに再利用されることはなく、方法の最終生成物として蓄積される。4GTは、アミロデキストリンがαGPによって十分に分解されて有意な量のマルトトリオースを生成する場合に、収率を増加させる。これは、エネルギー的に好適な脱リン酸化ステップ及びリン酸塩の再利用に起因して起こる。
【0049】
本発明の改善された方法では、4GTは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の前述の4-α-グルカントランスフェラーゼ(4GT)(Uniprot ID O32462)と比較して、より高い活性を有する。好ましくは、本発明の方法で使用される4GTは、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の4GT(Uniprot ID O32462)の活性よりも少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、又は少なくとも200%改善された酵素活性を有する。例えば、例3に示すように、オセアニテルムス・プロフンダス(Oceanithermus profundus)DSM14977の4GT(Uniprot ID E4U8S9)は、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)の4GT(Uniprot ID O32462)よりも約128%改善された酵素活性を有し、メイオテルムス・シルバヌス(Meiothermus silvanus)株ATCC700542由来の4GT(Uniprot ID D7BF07)は、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の4GT(Uniprot ID O32462)よりも約212%改善された酵素活性を有し、アナエロリネア・テルモフィラ(Anaerolinea thermophila)株DSM14523由来の4GT(Uniprot ID E8MXP8)は、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の4GT(Uniprot ID O32462)よりも約184%改善された酵素活性を有する。以下の例は、酵素的方法の一部として4GTの活性を決定するためのプロトコルを当業者に提供し、このプロトコルは、例えば、酵素をその基質と共にインキュベートし、次いで、分光光度測定によってグルコースの量を測定することを含む。任意の2つの酵素の相対活性の測定は、緩衝液、pH、温度などの同一の反応条件下で行われる。
【0050】
本発明の改善された方法で使用するための4GTの例には、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有するオセアニテルムス・プロフンダス(Oceanithermus profundus)DSM14977由来の4GT(Uniprot ID E4U8S9)、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有するメイオテルムス・シルバヌス(Meiothermus silvanus)株ATCC700542由来の4GT(Uniprot ID D7BF07)、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するアナエロリネア・テルモフィラ(Anaerolinea thermophila)株DSM14523由来の4GT(Uniprot ID E8MXP8)、及び配列番号15、配列番号16又は配列番号17と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有する4GTのタンパク質が含まれるがこれらに限定されない。
【0051】
本発明の改善された方法で使用するための4-グルカントランスフェラーゼは、遺伝的には、グリコシドトランスフェラーゼ・スーパーファミリー(IPR017853)、より具体的にはグリコシドヒドロラーゼのファミリー77(IPR003385)の一部である。一般に、4-グルカントランスフェラーゼは、活性部位がバレルβ鎖のc末端にある(β/α)バレル触媒ドメインを含む。活性部位は、保存された触媒トライアドを含む。配列番号17において、これらの保存された残基は、Asp298(求核剤)、Glu345(プロトン供与体)及びAsp398(遷移状態安定剤)に対応する。本発明の改善された方法で使用するための4GTはまた、基質結合に関連する保存された残基を含有する。例えば、配列番号17において、これらの保存された残基は、Tyr60、Asp218、Arg296及びHis397に対応する。Przylasら、Journal of Molecular Biology 296(3):873-886,2000を参照されたい。
【0052】
スクロースからヘキソースを酵素的に製造するためのいくつかの改善された方法において、改善は、スクロースホスホリラーゼによって触媒される、スクロースをグルコース1-リン酸(G1P)に変換するステップを含み、スクロースホスホリラーゼは、配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、SPは、配列番号19~25のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、SPは配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0053】
スクロースホスホリラーゼ(EC:2.4.1.7)は、スクロース及び無機リン酸のフルクトース及びG1Pへの変換を触媒する。スクロースからヘキソースを製造するための本発明の改善された方法では、反応はG1Pの方向に進行し、次にさらに下流で処理され、方法の最終的な酵素的ステップは、ヘキソースリン酸を脱リン酸化するエネルギー的に好適な不可逆的なステップである。
【0054】
本発明の改善された方法では、SPは、配列番号18に記載のアミノ酸配列を有する、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来の前述のSP(Uniprot ID D9TT09)と比較してより高い活性を有する。好ましくは、本発明の方法で使用されるSPは、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)の活性よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも100%又は少なくとも200%改善された酵素活性を有する。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用されるSPは、ヘキソース、特にフルクトースの改善された最大収率を示す。例えば、より高い活性を有するいくつかのSPを例4に示す。テルモアナエロバクテリウム種(Thermoanaerobacterium sp)PSU-2由来のSP(Uniprot ID A0A1X2FWC2)は、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)の活性よりも11%改善された酵素活性、及び9%高いフルクトースの最大収率を有する。テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクムThermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID L0IL15)は、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)よりも50%向上した酵素活性、及び1%高いフルクトースの最大収率を有する。テルモアナエロバクテリウム・キシラノリティクム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)由来のSP(Uniprot ID F6BJS0)は、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)の活性よりも49%向上した酵素活性、及び32%高いフルクトースの最大収率を有する。テルモバチルス種(Thermobacillus sp)ZCTH02-B1由来のSP(Uniprot ID A0A1Y3Q6Q6)は、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)の活性よりも50%改善された酵素活性、及び3%高いフルクトースの最大収率を有する。ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)由来のSP(Uniprot ID Q84HQ2)は、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)の活性よりも31%改善された酵素活性、及び37%高いフルクトースの最大収率を有する。パエニバチルス・テルモフィルス(Paenibacillus thermophilus)由来のSP(Uniprot ID A0A388NK91)は、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)よりも22%改善された酵素活性、及び、19%高いフルクトースの最大収率を有する。テピディバチルス・デカツレンシス(Tepidibacillus decaturensis)由来のSP(Uniprot ID A0A135L6L9)は、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)の活性よりも44%改善された酵素活性、及び9%高いフルクトースの最大収率を有する。最大収率の増加は、商業的方法において重要であり、各SPによるフルクトースの達成可能な最大収率に関与する。おそらく寄与因子には、フルクトースによるスクロースホスホリラーゼの生成物阻害、逆反応の速度(G1P+フルクトース⇔スクロース+P)、より広くは反応の後期段階におけるフルクトースの形成とフルクトースの分解との間の平衡が含まれる。
【0055】
以下の例は、酵素的方法の一部としてSPの活性を決定するためのプロトコルを当業者に提供し、プロトコルは、例えば、酵素をその基質と共にインキュベートし、次いで、HPLCを介して反応物及び生成物又はその後の下流生成物の量を測定することを含む。任意の2つの酵素の相対活性の測定は、緩衝液、pH、温度などの同一の反応条件下で行われる。
【0056】
本発明の改善された方法で使用するためのSPの例には、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有するテルモアナエロバクテリウム種(Thermoanaerobacterium sp)PSU-2由来のSP(Uniprot ID A0A1X2FWC2)、配列番号20に記載のアミノ酸配列を有するテルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID L0IL15)、配列番号21に記載のアミノ酸配列を有するテルモアナエロバクテリウム・キシラノリティクム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)由来のSP(Uniprot ID F6BJS0)、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するテルモバチルス属(Thermobacillus sp)ZCTH02-B1由来のSP(Uniprot ID A0A1Y3Q6Q6)、配列番号23に記載のアミノ酸配列を有するビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)由来のSP(Uniprot ID Q84HQ2)、配列番号24に記載のアミノ酸配列を有するパエニバチルス・テルモフィルス(Paenibacillus thermophilus)由来のSP(Uniprot ID A0A388NK91)、配列番号25に記載のアミノ酸配列を有するテピディバチルス・デカツレンシス(Tepidibacillus decaturensis)由来のSP(Uniprot ID A0A135L6L9)、配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するSPのタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明の改善された方法で使用するためのSPは、一般に、グリコシドヒドロラーゼ・スーパーファミリー(IPR017853)の一部、より具体的にはスクロースホスホリラーゼファミリー(IPR022527)であり、グリコシルヒドロラーゼ、ファミリー13、触媒ドメイン(IPR006047)を含む。グリコシルヒドロラーゼドメインは、(β/α)バレルからなり、触媒性ドメインである。全スクロースホスホリラーゼは、4つのドメイン、すなわち、N末端ドメイン、グリコシル加水分解酵素ドメイン、Bドメイン(グリコシルドメイン内の大きなループから形成される)、及びC末端ドメインからなる(Sprogoe D,van den Broek LA,Mirza O,Kastrup JS,Voragen AG,Gajhede M,Skov LK(February 2004)「ビフィドバクテリウム・アドレセンティス由来のスクロースホスホリラーゼの結晶構造(Crystal structure of sucrose phosphorylase from Bifidobacterium adolescentis)」Biochemistry.43(5):1156-62.doi:10.1021/bi0356395.PMID 14756551)。よく研究されているロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のスクロースホスホリラーゼ(Uniprot Q59495)への配列アラインメントを通して、触媒残基Asp196の保存が見られる(Schwarz A,Nidetzky B(July 2006)「ロイコノストック・メセンテロイデス・スクロースホスホリラーゼのAsp-196-->Ala変異体はリン酸への及びリン酸からのグルコシル転移の立体化学的過程及び速度論的機構の変化を示す(Asp-196-->Ala mutant of Leuconostoc mesenteroides sucrose phosphorylase exhibits altered stereochemical course and kinetic mechanism of glucosyl transfer to and from phosphate)」FEBS Letters.580(16):3905-10.doi:10.1016/j.febslet.2006.06.020.PMID 16797542.),Glu237(Schwarz A,Brecker L,Nidetzky B(May 2007)「部位特異的突然変異誘発及び野生型酵素とGlu237->Gln変異型酵素の詳細な速度論的比較によってプローブしたロイコノストック・メセンテロイデス・スクロースホスホリラーゼにおける酸塩基触媒(Acid-base catalysis in Leuconostoc mesenteroides sucrose phosphorylase probed by site-directed mutagenesis and detailed kinetic comparison of wild-type and Glu237-->Gln mutant enzymes)」The Biochemical Journal.403(3):441-9.doi:10.1042/BJ20070042.PMC 1876375.PMID 17233628.),and Asp 295(Mueller M,Nidetzky B(April 2007)「部位特異的突然変異誘発でプローブしたロイコノストック・メセンテロイデス・スクロースホスホリラーゼの触媒機構におけるAsp-295の役割(The role of Asp-295 in the catalytic mechanism of Leuconostoc mesenteroides sucrose phosphorylase probed with site-directed mutagenesis)」FEBS Letters.581(7):1403-8.doi:10.1016/j.febslet.2007.02.060.PMID 17350620)。
【0058】
デンプンは、自然界で最も広く使用されているエネルギー貯蔵化合物であり、大部分は植物種子に貯蔵されている。天然デンプンは、線状アミロース及び分枝状アミロペクチンを含む。デンプン誘導体の例には、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、フルクトース、グルコースが含まれる。デンプンの誘導体は、デンプンの酵素加水分解又はデンプンの酸加水分解によって調製することができる。具体的には、デンプンの酵素加水分解は、α-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(IA、EC.3.2.1.68)、α-1,6-グルコシド結合を加水分解するプルラナーゼ(PA、EC.3.2.1.41)、又はα-1,4-グルコシド結合を切断するα-アミラーゼ(EC 3.2.1.1)によって触媒又は増強することができる。コーンスターチは、αGP作用を妨げる多くの枝を含む。イソアミラーゼを使用してデンプンを脱分岐し、線状アミロデキストリンを得ることができる。イソアミラーゼで前処理されたデンプンは、最終生成物中により高いF6P濃度をもたらすことができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼは、α-1,6-グリコシド結合を切断し、α-グルカンホスホリラーゼによるデンプンのより完全な分解を可能にする。α-アミラーゼは、α-1,4-グリコシド結合を切断するので、α-アミラーゼは、ヘキソースへのより迅速な変換及び溶解性の向上のためにデンプンを断片に分解するために使用される。
【0059】
セルロースは、最も豊富な生物資源であり、植物細胞壁の主要な構成要素である。非食品リグノセルロース性バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンならびに他の微量成分を含有する。Avicel(微結晶セルロース)、再生非晶質セルロース、細菌セルロース、濾紙などを含む純粋なセルロースは、一連の処理によって調製することができる。部分加水分解セルロース系基質としては、重合度が7を超える非水溶性セロデキストリン、重合度が3~6の水溶性セロデキストリン、セロビオース、グルコース、フルクトースなどが挙げられる。セルロース誘導体としては、前処理バイオマス、再生非晶質セルロース、セロデキストリン、セロビオース、フルクトース、グルコースなどが挙げられる。さらに、セルロースの誘導体は、セルラーゼ混合物によって触媒されるセルロースの酵素加水分解によって、酸によって、又はバイオマスの前処理によって調製することができる。本発明のいくつかの方法では、G1Pは、セルロースホスホリラーゼによってセルロースから製造される。いくつかの方法では、G1Pは、セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)及びセロビオースホスホリラーゼ(CBP)によって触媒されるセロデキストリン及びセロビオースならびに遊離リン酸から生成される。
【0060】
本発明のいくつかの改善された方法では、ヘキソースは、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、アルロース、イノシトール及びタガトースから選択される。ヘキソースは、6個の炭素原子を有する単糖類である。ヘキソースは官能基によって分類することができ、アルドヘキソースは1位にアルデヒドを有し、ケトヘキソースは2位にそのケトンを有する。アルドヘキソース(又はアルドース)には、アロース、アルトロース、グルコース、グロース、ガラクトース、イドース、タロース及びマンノースが含まれる。ケトヘキソース(又はケトース)には、プシコース(アルロース)、フルクトース、タガトース、及びソルボースが含まれる。イノシトールは、アルデヒド基もケトース基も有さず、炭素環式ヘキソースとして特徴付けられる。本発明の改善された方法を使用して、デンプン及びその誘導体を、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、タガトース、アルロース、イノシトール及びイドースから選択されるヘキソースに変換することができる。したがって、本発明の実施形態のいくつかは、これらの個々のヘキソースを製造するための改善された方法に関する。
【0061】
ヘキソースを製造するための本発明の改善された方法には、ヘキソースリン酸ホスファターゼを使用してヘキソースリン酸を脱リン酸化する追加のステップが含まれる。ヘキソースを製造するための本発明のいくつかの改善された方法では、方法ステップは単一の反応容器内で行われる。本発明の他の改善された方法では、方法ステップは2つ以上の単一反応容器内で行われる。いくつかの改善された方法では、方法ステップは、ATPなし、NAD(P)(H)なしで、約0.1mM~約150mMのリン酸濃度で行われ、リン酸塩は再利用され、及び/又はヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップは、エネルギー的に好適な化学反応を伴う。本発明のいくつかの改善された方法では、方法ステップは、約37℃~約85℃の範囲の温度、約5.0~約8.0の範囲のpH、又は約0.5時間~約48時間のうちの少なくとも1つの方法条件下で行われる。本発明のいくつかの改善された方法では、方法ステップは連続反応として行われる。
【0062】
ヘキソースを調製するための本発明のいくつかの方法には、ヘキソースリン酸ホスファターゼを使用してヘキソースリン酸を脱リン酸化するさらなるステップが含まれる。本発明の方法で使用されるホスファターゼは、ヘキソースリン酸に特異的である。例えば、アロース6-リン酸は、アロース6-リン酸ホスファターゼによってアロースに変換され、マンノース6-リン酸は、マンノース6-リン酸ホスファターゼによってマンノースに変換され、ガラクトース6-リン酸は、ガラクトース6-リン酸ホスファターゼによってガラクトースに変換され、フルクトース6-リン酸は、フルクトース6-リン酸ホスファターゼによってフルクトースに変換され、アルトロース6-リン酸は、アルトロース6-リン酸ホスファターゼによってアルトロースに変換され、タロース6-リン酸は、タロース6-リン酸ホスファターゼによってタロースに変換され、ソルボース6-リン酸は、ソルボース6-リン酸ホスファターゼによってソルボースに変換され、グロース6-リン酸は、グロース6-リン酸ホスファターゼによってグロースに変換され、タガトース6-リン酸は、タガトース6-リン酸ホスファターゼによってタガトースに変換され、プシコース6-リン酸は、プシコース6-リン酸ホスファターゼによってプシコースに変換され、イノシトール3-リン酸は、イノシトールモノホスファターゼによってイノシトールに変換され、イドース6-リン酸は、イドース6-リン酸ホスファターゼによってイドースに変換される。本明細書で使用される場合、特異的とは、他のヘキソースよりも示されたヘキソースに対してより高い特異的活性を有することを意味する。例えば、アロース6-リン酸ホスファターゼは、例えば、ソルボース6-リン酸又はタロース6-リン酸よりも、アロース6-リン酸に対して高い特異的活性を有する。本発明の方法において、ヘキソースリン酸ホスファターゼは、その方法における他のヘキソースリン酸中間体と比較して、示されたヘキソースリン酸に対してより高い活性を有する。例示的な例として、マルトデキストリンをアロースに変換するための方法において、アロース6-リン酸ホスファターゼは、G1P、G6P、F6P及びプシコース6-リン酸など、方法における他のヘキソースリン酸中間体と比較して、アロース6-リン酸に対してより高い活性を有する。図2及び図4を参照されたい。
【0063】
糖アルコールは、本発明の改善された方法によって生成された様々なヘキソース糖から製造することができる。例えば、マンニトール及びソルビトールを製造することができ、これらは現在、医療及び食品産業にとって商業的な関心事である。これらの改善された酵素的方法のケトース又はアルドース生成物は、水素ガス又は水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を使用して糖アルコール形態に還元され得る。好ましくは、米国特許第6,570,043号明細書、米国特許第8,816,068号明細書、又は米国特許第5,466,795号明細書に既に記載されているように、水素ガスが還元剤として使用される。
【0064】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、アロースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、プシコース6-リン酸3-エピメラーゼ(P6PE)によって触媒される、F6Pをプシコース6-リン酸(P6P)に変換するステップと、アロース6-リン酸イソメラーゼ(A6PI)によって触媒される、P6Pをアロース6-リン酸(A6P)に変換するステップと、アロース6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)によって触媒される、A6Pをアロースに変換するステップと、を含む。
【0065】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、マンノースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、マンノース6-リン酸イソメラーゼ(M6PI)又はホスホグルコース/ホスホマンノースイソメラーゼ(PGPMI)によって触媒される、F6Pをマンノース6-リン酸(M6P)に変換するステップと、マンノース6-リン酸ホスファターゼ(M6PP)によって触媒される、M6Pをマンノースに変換するステップと、を含む。
【0066】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、ガラクトースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、フルクトース6-リン酸4-エピメラーゼ(F6PE)によって触媒される、F6Pをタガトース6-リン酸(T6P)に変換するステップと、ガラクトース6-リン酸イソメラーゼ(Gal6PI)によって触媒される、T6Pをガラクトース6-リン酸(Gal6P)に変換するステップと、ガラクトース6-リン酸ホスファターゼ(Gal6PP)によって触媒される、Gal6Pをガラクトースに変換するステップと、を含む。
【0067】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、フルクトースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、フルクトース6-リン酸ホスファターゼ(F6PP)によって触媒される、F6Pをフルクトースに変換するステップと、を含む。
【0068】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、アルトロースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、P6PEによって触媒される、F6PをP6Pに変換するステップと、アルトロース6-リン酸イソメラーゼ(Alt6PI)によって触媒される、P6Pをアルトロース6-リン酸(Alt6P)に変換するステップと、アルトロース6-リン酸ホスファターゼ(Alt6PP)によって触媒される、生成されたAlt6Pをアルトロースに変換するステップと、を含む。
【0069】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、タロースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、F6PEによって触媒される、F6PをT6Pに変換するステップと、タロース6-リン酸イソメラーゼ(Tal6PI)によって触媒される、T6Pをタロース6-リン酸(Tal6P)に変換するステップと、タロース6-リン酸ホスファターゼ(Tal6PP)によって触媒される、Tal6Pをタロースに変換するステップと、を含む。
【0070】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、ソルボースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、F6PEによって触媒される、F6PをT6Pに変換するステップと、ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)によって触媒される、T6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に変換するステップと、ソルボース6-リン酸ホスファターゼ(S6PP)によって触媒される、S6Pをソルボースに変換するステップと、を含む。
【0071】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、グロースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、F6PEによって触媒される、F6PをT6Pに変換するステップと、グロース6-リン酸イソメラーゼ(Gul6PI)によって触媒される、S6Pをグロース6-リン酸(Gul6P)に変換するステップと、グロース6-リン酸ホスファターゼ(Gul6PP)によって触媒される、Gul6Pをグロースに変換するステップと、を含む。
【0072】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、イドースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、F6PEによって触媒される、F6PをT6Pに変換するステップと、ソルボース6-リン酸エピメラーゼ(S6PE)によって触媒される、T6Pをソルボース6-リン酸(S6P)に変換するステップと、イドース6-リン酸イソメラーゼ(I6PI)によって触媒される、S6Pをイドース6-リン酸(I6P)に変換するステップと、イドース6-リン酸ホスファターゼ(I6PP)によって触媒される、I6Pをイドースに変換するステップと、を含む。
【0073】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、タガトースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、フルクトース6-リン酸エピメラーゼ(F6PE)によって触媒される、F6Pをタガトース6-リン酸(T6P)に変換するステップと、タガトース6-リン酸ホスファターゼ(T6PP)によって触媒される、T6Pをタガトースに変換するステップと、を含む。
【0074】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、プシコースの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)によって触媒される、G6Pをフルクトース6-リン酸(F6P)に変換するステップと、プシコース6-リン酸エピメラーゼ(P6PE)によって触媒される、F6Pをプシコース6-リン酸(P6P)に変換するステップと、プシコース6-リン酸ホスファターゼ(P6PP)によって触媒される、P6Pをプシコースに変換するステップと、を含む。
【0075】
一実施形態では、本発明の改善された方法は、イノシトールの製造に関する。デンプン又はデンプン誘導体が出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、b)配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するαGPによって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップ、及びc)配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する4GTによって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップ、の1つ又は複数から選択される。セルロース又はセルロース誘導体が出発材料である場合、改善は、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップである。スクロースが出発物質である場合、改善は、a)配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するPGMによって触媒される、G1PをG6Pに変換するステップ、及びb)配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するSPによって触媒される、スクロースをG1Pに変換するステップ、の一方又は両方から選択される。方法はさらに、イノシトールリン酸シンターゼを使用してG6Pをイノシトール3-リン酸(I3P)に変換するステップと、イノシトールモノホスファターゼを使用してI3Pをイノシトールに変換するステップと、を含む。別の実施形態では、本発明の改善された方法は、スクロースからのイノシトールの製造に関する。
【0076】
図1は、スクロースをG6P中間体に変換するための酵素的経路を示す。本発明の改善された方法は、以下の改善の1つ又は複数を含む:SPが、配列番号19~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;及びPGMが、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明の好ましい方法では、SPは配列番号19~25のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、PGMは配列番号2~8のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましい方法では、SPは配列番号21のアミノ酸配列を含み、PGMは配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0077】
図2は、デンプン誘導体、マルトデキストリンをG6P中間体に変換する酵素的経路を示す概略図である。以下の略語が使用される:IA、イソアミラーゼ;PA、プルラナーゼ;αGP、α-グルカンホスホリラーゼ又はデンプンホスホリラーゼ;4GT、4-グルカントランスフェラーゼ;及びPGM、ホスホグルコムターゼ。本発明の改善された方法は、以下の改善の1つ又は複数を含む:PGMが、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;αGPが、配列番号10~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;及び4GTが、配列番号15~17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明の好ましい方法では、PGMは配列番号2~8のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、αGPは配列番号10~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、4GTは配列番号15~17のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。本発明のより好ましい方法では、PGMは配列番号8のアミノ酸配列を含み、αGPは配列番号11のアミノ酸配列を含み、4GTは配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0078】
図3は、セルロースをG6P中間体に変換するための酵素的経路を示す。本発明の改善された方法では、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、PGMは、配列番号2~8のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、PGMは配列番号8のアミノ酸配列を含む。ヘキソースを製造するための本発明のいくつかの改善された方法では、方法ステップの1つ又は複数は、単一の反応容器内で行われる。本発明の他の改善された方法では、方法ステップは2つ以上の反応容器内で行われる。その後、ヘキソースリン酸の脱リン酸化によって生成されたリン酸イオンは、特にすべての方法ステップが単一のバイオリアクター又は反応容器内で行われる場合、デンプン誘導体をG1Pに変換する方法ステップで再利用することができる。リン酸塩を再利用する能力は、非化学量論量のリン酸塩を使用することを可能にし、反応リン酸濃度を低く保つ。これは、全体的な経路及び方法の全体的な速度に影響を及ぼすが、個々の酵素の活性を制限せず、ヘキソース製造方法の全体的な効率を可能にする。
【0079】
ヘキソースを製造するための本発明の改善された方法では、方法ステップは、ATPなし、NAD(P)(H)なしで、約0.1mM~約150mMのリン酸濃度で行われ、リン酸塩は再利用され、及び/又はヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップは、エネルギー的に好適な化学反応を伴う。本発明の改善された方法では、方法ステップは、約37℃~約85℃の範囲の温度、約5.0~約8.0の範囲のpH、又は約0.5時間~約48時間、又は連続方法、のうちの少なくとも1つの方法条件下で行われる。
【0080】
例えば、各方法における反応リン酸濃度は、約0mM~約300mM、約0.1mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、又はより好ましくは約10mM~約50mMの範囲であり得る。例えば、各方法における反応リン酸濃度は、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、又は約55mMであり得る。リン酸濃度が低いと、全リン酸が低いために製造コストが低下し、リン酸除去コストが低下する。また、高濃度の遊離リン酸による方法中のホスファターゼ又は他の酵素の阻害を防ぎ、リン汚染の可能性が低下する。
【0081】
さらに、本明細書に開示される方法の各々は、リン酸の供給源としてATPを添加せずに、すなわちATPを含まずに行うことができる。各方法は、NAD(P)(H)を添加する必要なく、すなわちNAD(P)(H)を含まずに行うこともできる。
【0082】
当技術分野で公知の任意の適切な生物学的に適合性の緩衝剤、例えばHEPES、PBS、BIS-TRIS、MOPS、DIPSO、Trizmaなどを本発明の各方法で使用することができる。本発明による方法のための反応緩衝液は、5.0~8.0の範囲のpHを有することができる。より好ましくは、反応緩衝液pHは、約6.0~約7.3の範囲であり得る。例えば、反応緩衝液pHは、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2又は7.3であり得る。
【0083】
反応緩衝液は、二価金属カチオンを含むこともできる。いくつかの方法では、ステップは、Mg2+、Zn2+、Ca2+、Co2+、Mn2+、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される二価金属カチオンの存在下で行われる。当技術分野で知られているように、適切な塩を使用して、所望の金属カチオンを導入することができる。
【0084】
本発明の各方法において、方法ステップが行われる反応温度は、37~85℃の範囲であり得る。より好ましくは、ステップは、約40℃~約80℃の範囲の温度で行うことができる。温度は、例えば、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、又は約85℃であり得る。好ましくは、反応温度は、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、又は約65℃である。より好ましくは、反応温度は約50℃~約55℃の範囲である。
【0085】
本発明の改善された方法のいくつかについて、反応時間は必要に応じて調整することができ、約0.5時間~約48時間の範囲であり得る。例えば、反応時間は、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約26時間、約28時間、約30時間、約32時間、約34時間、約36時間、約38時間、約40時間、約42時間、約44時間、約46時間、又は約48時間であり得る。より好ましくは、反応時間は約24時間である。
【0086】
この方法は、設定された時間制限なしに、連続方法として1つ又は複数の反応器で行うこともできる。連続方法では、例えば、マルトデキストリン溶液は、溶液が下流処理のために1つ又は複数のカラムを離れるときにタガトースへの変換が完了するような速度で、固定化酵素の床を通してポンプ輸送される。例えば、200g/Lのマルトデキストリンを、マルトデキストリンがカラムを離れるときに最大のタガトース収率が達成されるように、固定化酵素(例えば50℃に維持)が充填されたカラムを通してポンプ輸送することができる。この方法論は、バッチ法よりも大きな体積生産性を提供する。これにより、生成物がカラム及び反応条件と接触する時間が制限され、生成物の分解(例えば、潜在的なヒドロキシメチルフルフラール形成)の可能性が減少する。また、製造の自動化が促進されるため、運転費用が削減される。
【0087】
本発明のステップで使用される酵素は、可溶性、固定化、集合化、捕捉、又は凝集タンパク質の形態をとり得る。これらの酵素は、当技術分野で公知のように、機能性を改善するために一般的に使用される不溶性の有機又は無機支持体に吸着され得る。これらの支持体には、アガロース、メタクリレート、ポリスチレン、又はデキストランなどのポリマー支持体、ならびにガラス、金属、又は炭素系材料などの無機支持体が含まれる。これらの材料は、多くの場合、大きな表面対体積比、ならびに固定化酵素の付着及び活性を促進する特殊化された表面で製造される。酵素は、共有結合、イオン又は疎水性相互作用を介してこれらの固体支持体に固定され得る。酵素はまた、固体支持体、ほとんどの場合ポリヒスチジン配列に親和性を有する別のタンパク質又はペプチド配列への共有結合融合など、遺伝子操作された相互作用によって固定され得る。酵素は、表面又は表面コーティングに直接固定され得るか、又は表面又は表面コーティング上に既に存在する他のタンパク質に固定され得る。酵素は、すべてが1つの担体に、個々の担体に、又は2つの組み合わせ(例えば、担体あたり2つの酵素が固定され、次いでそれらの担体が混合される)に固定化することができる。これらのバリエーションを均一に又は定義された層で混合して、連続方法におけるターンオーバーを最適化することができる。例えば、反応器の開始時には、高い初期G1P増加を確実にするためにαGPの層を有することができる。酵素は、すべてが1つの担体上に、個々の担体上に、又はグループで固定化され得る。これらの酵素を均一に又は定義された層もしくはゾーンで混合して、ターンオーバーを最適化してもよい。
【0088】
本発明による方法の各々は、反応全体の非常に好ましい平衡定数により、高収率を達成することができる。理論的には、出発物質がリン酸化中間体に完全に変換される場合、最大99%の収率が達成され得る。
【0089】
本発明の方法は、低コストの出発材料を使用し、原料及び生成物分離に関連するコストを低減することによって製造コストを低減する。デンプン及びその誘導体は、例えばラクトースよりも安価な原料である。ヘキソースをラクトースから製造する場合、グルコースと他のヘキソースをクロマトグラフィーを介して分離するため、製造コストが高くなる。また、ホスファターゼによってヘキソースを脱リン酸化するステップは、原料にかかわらず、不可逆的なホスファターゼ反応である。したがって、後続の生成物分離コストを効果的に最小限に抑えながら、ヘキソースが非常に高い収率で製造される。
【0090】
本発明による方法は、ヘキソースの容易な回収を可能にし、分離コストが最小限に抑えられる。本発明のいくつかの好ましい方法では、所望のヘキソースの回収はクロマトグラフィー分離なしで行われる。連続反応でヘキソースを生成した後には、生成物を精密濾過、イオン交換(カチオン、次いでアニオン、研磨用の可能な混合床)、濃縮、結晶化、結晶単離、及び乾燥に通す。ヘキソースの収率が高いため、ヘキソースを精製するために必要なのは結晶化のステップだけである。結晶化の前にヘキソースをさらに精製するために、ナノ濾過を使用して結晶化方法に酵素が存在するリスクを排除し、ヘキソースと共結晶化するか又は母液の再利用可能性を制限し得る未変換デキストリンを除去することができる(マルトデキストリン、マルトテトラオース、マルトトリオース、マルトースなど)。
【0091】
本発明の改善された方法はまた、スクロース、デンプンもしくはデンプン誘導体、又はセルロースもしくはセルロース誘導体からのG6Pの製造を含む。本発明の方法から製造されたG6Pは、例えばクロマトグラフィーなどの当技術分野で公知の技術によって単離及び精製することができる。
【0092】

以下の例は、より高い活性を有する酵素を使用する改善された方法を記載する。
【0093】
材料及び方法
【0094】
グルコース1-リン酸、塩化マグネシウム、マルトデキストリンDE4-7、リン酸ナトリウム(一塩基性及び二塩基性)を含むすべての化学物質は、試薬グレード以上であり、特に明記しない限り、Sigma-Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)又はFisher Scientific(米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)から購入した。マルトトリオースは、Carbosynth(英国バークシャー)から購入した。大腸菌(E.coli)BL21(DE3)(Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)を組換えタンパク質発現のための宿主細胞として使用した。50mgのL-1カナマイシンを含むZYM-5052培地を大腸菌(E.coli)細胞増殖及び組換えタンパク質発現に使用した。
【0095】
組換え酵素の製造及び精製
【0096】
タンパク質発現プラスミド(pET28a)を有する大腸菌(E.coli)BL21(DE3)株を、50mg L-1カナマイシンを含有する100mLのZYM-5052培地を含む1L三角フラスコ中でインキュベートした。細胞を、220rpmで回転振盪しながら30℃で16~24時間増殖させた。細胞を12℃での遠心分離によって回収し、20mMのHEPES(pH7.5)を含む、300mMのNaCl及び5mMのイミダゾールを含む、いずれかの20mM HEPES(pH7.5)で1回洗浄した(Ni精製)。細胞ペレットを同じ緩衝液に再懸濁し、超音波処理によって溶解した。遠心分離後、上清中の標的タンパク質を標準的な方法によって精製した。Hisタグ化タンパク質を、先に記載された緩衝液中でイマダゾールを増加させる勾配を用いてProfinity IMAC Ni-Charged Resin(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)によって精製した。組換えタンパク質の純度を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって調べた。
【0097】
例1 より高い活性のPGMを有する改善された方法
【0098】
様々なホスホグルコムターゼ(PGM)を単離し、多段階酵素反応でG1PからG6Pへの変換についてアッセイした。各PGMの相対活性を以下のようにして測定した。50mMのHEPES pH7.2、5mMのMgCl、50mMのグルコース1-リン酸、0.02g/LのPGM、0.1g/LのPGI、及び0.1g/LのF6PPの反応物を調製し、50℃で30分間インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(1万 MWCO)を用いた酵素の濾過によって反応を停止した。生成物であるフルクトースを、Hi-Plex H+カラム及び屈折率検出器を使用して評価した。試料を5mM HSO中、0.6mL/分で、65℃で15.5分間評価した。30分で生成されたフルクトースの量を使用して、酵素的方法における各PGMの相対効率を決定した。フルクトースのピーク面積及びピーク高さの増加の平均を使用して、活性の増加を決定した。
【0099】
図19は、様々なPGMの活性を示すクロマトグラムである。クロマトグラムは、様々なPGM、過剰なホスホグルコイソメラーゼ及び過剰なフルクトース6-リン酸ホスファターゼとのインキュベーション後のグルコース1-リン酸から作られたフルクトースのレベルを示す。PGMはカスケードの制限酵素である。表1は、本発明の改善された方法で使用するためのPGMが、テルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来の先に開示されたPGM(Uniprot ID Q68BJ6)と比較して改善された活性を有することを示す。国際公開第2017/059278号を参照されたい。
【表1】
【0100】
例2 より高い活性のαGPを有する改善された方法
【0101】
各αGPの相対活性を以下のようにして測定した。25mMのリン酸ナトリウムpH7.2、5mMのMgCl、20g/LのマルトデキストリンDE4-7、9μgのαGP、及び0.1g/LのPGMの200μL反応液を調製し、50℃でインキュベートした。試料を様々な時点で1.5mMのNAD及び3U/mLのグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼと混合した。各時点での340nmでの吸光度を用いて反応速度を得た。この速度を使用して各αGPの比活性を確認し、相対活性比較のために使用した。
【0102】
表2は、本発明の改善された方法で使用するためのαGPが、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来の先に開示されたαGP(Uniprot ID G4FEH8)と比較して改善された活性を有することを示す。国際公開第2017/059278号を参照されたい。
【表2】
【0103】
例3 より高い活性の4GTを有する改善された方法
【0104】
各4GTの相対活性を以下のようにして測定した。50mMのリン酸ナトリウムpH7.2、5mMのMgCl2、20g/Lのマルトトリオース、及び9μgの4GTの200μL反応液を調製し、50℃でインキュベートした。様々な時点で、試料を1.5mMのNAD+、1mMのATP、1U/mLのヘキソキナーゼ、及び1U/mLのグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼと混合した。各時点での340nmでの吸光度を用いて反応速度を得た。この速度を使用して各4GTの比活性を確認し、相対活性比較のために使用した。
【0105】
表3は、本発明の改善された方法で使用するための4GTが、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の先に開示された4GT(Uniprot ID O32462)と比較して改善された活性を有することを示す。国際公開第2018/169957号を参照されたい。
【表3】
【0106】
例4 より高い活性のSPを有する改善された方法
【0107】
Uniprot ID D9TT09との相同性(Verhaegheら「熱安定性スクロースホスホリラーゼの探求により、新規な特異性としてのスクロース6’-リン酸ホスホリラーゼを示す(The quest for a thermostable sucrose phosphorylase reveals sucrose 6’-phosphate phosphorylase as a novel specificity)」Appl Microbiol Biotechnol.2014 Aug;98(16):7027-37)によって想定される様々なスクロースホスホリラーゼを単離し、スクロースからグルコース6-リン酸への変換についてアッセイした。
【0108】
各SPの相対効率を以下のようにして測定した。25mMのリン酸ナトリウムpH7.2、5mMのMgCl、200g/Lのスクロース、0.15g/LのSP、0.1g/LのPGM、0.1g/LのPGI、及び0.3g/LのF6PPの反応物を調製し、50℃でインキュベートした。試料を0時間、2時間、6時間、及び8時間で採取した。Vivaspin 2濃縮器(1万 MWCO)を用いた酵素の濾過によって反応を停止した。生成物であるフルクトースを、Supel Cogel Pbカラム及び屈折率検出器を使用して評価した。試料を超純水中、0.6mL/分で、80℃で25分間評価した。2時間で作られたフルクトースの量を使用して、各SPの相対活性を決定する。6時間で作られたフルクトースの量(8時間で完了確認)は、各SPの最大達成可能収率の差を示す。
【0109】
スクロースからフルクトースへの完全な変換に対する効果も調べた。 基準(以下の表)と比較して試験した8つの酵素のうち、7つはUniprot ID D9TT09よりも改善された活性を示し、1つはスクロースからフルクトースを製造する場合の予想外の利点を示す。 図18は、Uniprot ID D9TT09(基準SP)をUniprot ID F6BJS0と比較した、スクロースホスホリラーゼ活性のクロマトグラムを示す。 2時間で、より高い活性のSPは、基準SPとしてのフルクトースの量の約150%を生成する。下部クロマトグラムは、最大収率に関してUniprot ID D9TT09(基準SP)をUniprot ID F6BJS0と比較する。 6時間(両方の反応の最大収率)で、より高い活性のSPは、基準SPとしてのフルクトースの量の約130%を生成する。興味深いことに、相対収率は相対活性と直接相関しない。 おそらく、寄与因子には、フルクトースによるスクロースホスホリラーゼの生成物阻害、逆反応の速度(G1P+フルクトース⇔スクロース+P)、より広くは反応の後期段階におけるフルクトースの形成とフルクトースの分解との間の平衡が含まれる。 配列番号26に示されるアミノ酸配列を有するテルマナエロスリクス・ダキセンシス(Thermanaerothrix daxensis)由来の比較SP(Uniprot ID A0A0N8GPZ6)は、先に開示されたSPと比較してより低い相対活性及びより低いフルクトースの最大収率を示した。
【表4】
【0110】
例5 G6Pの改善された酵素的製造
【0111】
酵素活性の改善を可視化するために、マルトデキストリンのG6Pへの変換を、先に開示されたαGP(Uniprot ID G4FEH8)及びPGM(Uniprot ID Q68BJ6)を使用して行い、その方法を、より高い活性を有するαGP(Uniprot ID D1B926)及びPGM(Uniprot ID A0A150LLZ1)を使用する方法と比較した。 20g/LのマルトデキストリンDE5、50mMのリン酸緩衝液pH7.2、5mMのMgCl、0.05g/LのαGP、及び0.005g/LのPGMを含有する200μLの反応混合物を50℃で30分間インキュベートした。酵素をVivaspin 2濃縮器(3万 MWCO)で濾過することによって反応を停止させ、Agilent Hi-Plex H-カラム及び屈折率検出器を使用してHPLC(Agilent 1100シリーズ)によって分析した。 試料を5mM HSO中、0.6mL/分で、65℃で15.5分間評価した。 ボイド、マルトデキストリン、及びG6Pのピークが近すぎて個々の成分を確実に定量することができないため、結果は定量されなかったが(図17)、酵素αGP(Uniprot ID D1B926)及びPGM(Uniprot ID A0A150LLZ1)を用いて明らかにより多くのG6Pが生成される。
【配列表フリーテキスト】
【0112】
配列表10 <223>Xaaは任意の自然発生アミノ酸であり得る
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図19
【配列表】
2024096353000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン又はデンプン誘導体からヘキソースを酵素的に製造するための改善された方法であって、該改善された方法は、
a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであって、該PGMは、配列番号8又は2~のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
該PGMは、該改善された方法においてテルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaroensis)由来のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)の活性と比較して少なくとも10%高い活性を有する、
上記ステップ
を含む、改善された方法。
【請求項2】
前記改善された方法が、
b)α-グルカンホスホリラーゼ(aGP)によって触媒される、デンプン誘導体をG1Pに変換するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記改善された方法が、
c)4-α-グルカントランスフェラーゼ(4GT)によって触媒される、デンプン誘導体をトランスグリコシル化するステップを更に含む、請求項2に記載の方法
【請求項4】
セルロース又はセルロース誘導体からヘキソースを酵素的に製造するための改善された方法であって、
該改善された方法は、ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、G1Pをグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであって、該PGMは、配列番号8又は2~のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
該PGMは、該改善された方法においてテルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaroensis)由来のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)の活性と比較して少なくとも10%高い活性を有する、
上記ステップ
を含む、改善された方法。
【請求項5】
スクロースからヘキソースを酵素的に製造するための改善された方法であって、該改善された方法は、
a)ホスホグルコムターゼ(PGM)によって触媒される、グルコース1-リン酸(G1P)をグルコース6-リン酸(G6P)に変換するステップであって、該PGMが、配列番号8、又は2~のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含
該PGMは、該改善された方法においてテルモコックス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaroensis)由来のPGM(Uniprot ID Q68BJ6)の活性と比較して少なくとも10%高い活性を有する、
上記ステップ、及び
b)スクロースホスホリラーゼ(SP)を用いてスクロースをグルコース1-リン酸(G1P)に変換するステップを含む、
善された方法。
【請求項6】
ヘキソースが、アロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アルトロース、タロース、ソルボース、グロース、イドース、アルロース、イノシトール及びタガトースからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の改善された方法。
【請求項7】
デンプン誘導体が、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトトリオース、マルトース及びマルトデキストリンからなる群から選択される、請求項1に記載の改善された方法。
【請求項8】
ヘキソースリン酸ホスファターゼを使用してヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の改善された方法。
【請求項9】
前記方法のステップが、単一の反応容器内で行われる、請求項に記載の改善された方法。
【請求項10】
前記方法のステップが、ATPを含まず(ATP-free)、NAD(P)(H)を含まず(NAD(P)(H)-free)に、0.1mM~150mMのリン酸濃度で行われ、リン酸塩は再利用され、及び/又はヘキソースリン酸を脱リン酸化するステップは、エネルギー的に好適な化学反応を伴う、請求項に記載の改善された方法。
【請求項11】
前記方法ステップが、
7℃~85℃の範囲の温度、
.0~8.0の範囲のpH、又は
.5時間~48時間、もしくは連続反応として、
のうちの少なくとも1つの方法条件下で行われる、
請求項1~10のいずれか一項に記載の改善された方法。
【請求項12】
ヘキソースをその糖アルコールに還元するステップをさらに含む、請求項に記載の改善された方法。
【請求項13】
aGPは、配列番号11、10、12及び13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつテルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のaGP(Uniprot ID G4FEH8)の活性と比較して少なくとも10%高い活性を有する、請求項に記載の改善された方法。
【請求項14】
4GTは、配列番号17、15及び16のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつテルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の4GT(Uniprot ID O32462)の活性と比較して少なくとも10%高い活性を有する、請求項に記載の改善された方法。
【請求項15】
SPは、配列番号23、19~22、及び24~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつテルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)と比較して少なくとも10%高い活性を有する、請求項5に記載の改善された方法。
【請求項16】
SPは、配列番号23、19~22、及び24~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつテルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来のSP(Uniprot ID D9TT09)と比較して少なくとも10%高い達成可能な収率を有する、請求項に記載の改善された方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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【外国語明細書】