(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096358
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ハロゲン化反応成分から調製される付加及び縮合ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 85/00 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
C08G85/00
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075424
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2020517199の分割
【原出願日】2018-09-25
(31)【優先権主張番号】62/563,748
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ビン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・アラン・ポルズ
(72)【発明者】
【氏名】ルーシー・クラークソン
(57)【要約】
【課題】ある種の用途のための改良されたポリマーの開発を可能にすること。
【解決手段】1分子当たり少なくとも2個の活性水素含有官能基及び1分子当たり少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含有する少なくとも1種のハロゲン化反応成分と、前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分の活性水素基に対して反応性である少なくとも2個の官能基を含有する少なくとも1種の共反応成分との付加重合又は縮合重合によって、ハロゲン官能基含有ポリマーが調製される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のもの:
c)少なくとも2個の活性水素含有官能基及び少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含む少なくとも1種のハロゲン化反応成分;並びに
d)前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分の前記活性水素含有官能基に対して反応性である少なくとも2個の官能基を含む少なくとも1種の共反応成分:
を含む反応成分の付加重合又は縮合重合生成物であるポリマー。
【請求項2】
前記少なくとも1種の共反応成分がイソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボキシレート基、無水物基及びアシルハライド基より成る群から選択される少なくとも2個の官能基を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーがポリアミド、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン又はエポキシポリマーである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分が少なくとも2個の活性水素含有官能基及び式(I):
CX1X2HCX3X4-Y- (I)
(ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
Yは酸素(O)、イオウ(S)又はNRであり、
ここで、RはH又は有機部分である)
に相当する少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル基を含み、
但し、前記ハロゲン化ヘテロアルキル基が少なくとも1個のハロゲン原子を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
Yが酸素(O)である、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ハロゲン化ヘテロアルキル基が少なくとも1個のフッ素原子を含む、請求項4に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ハロゲン化ヘテロアルキル基が2~4個の炭素原子を含む、請求項4に記載のポリマー。
【請求項8】
前記少なくとも2個の活性水素含有官能基がヒドロキシル基、チオール基、第2アミノ基及び第1アミノ基より成る群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
前記少なくとも1種の共反応成分がポリイソシアネート、ポリイソシアネート官能化ウレタンプレポリマー、ポリカルボン酸及びエポキシ樹脂より成る群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分が式(II):
(R1-Y-)xR2(YH)y (II)
(ここで、
R1はハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニル基であり、
R2は有機部分であり、
Yは酸素(O)、イオウ(S)又はNRであり、ここで、RはH又は有機部分であり、
xは1又はそれより大きい整数であり、
yは2又はそれより大きい整数である)
に相当する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項11】
R1が少なくとも1個のフッ素原子を含む、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
R1が式(III):
CX1X2HCX3X4- (III)
(ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
但し、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つはハロゲン又はハロゲン化アルキル基である)
に相当する、請求項10に記載のポリマー。
【請求項13】
x+yが3~6の整数である、請求項10に記載のポリマー。
【請求項14】
xが1であり且つyが2である、請求項10に記載のポリマー。
【請求項15】
Yが酸素(O)である、請求項10に記載のポリマー。
【請求項16】
R2がC3~C20脂肪族部分である、請求項10に記載のポリマー。
【請求項17】
xが1であり、yが2であり、Yが酸素(O)であり且つR2がC3~C20脂肪族部分である、請求項10に記載のポリマー。
【請求項18】
少なくとも2個の活性水素含有官能基及び少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含む少なくとも1種のハロゲン化反応成分と、前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分の前記活性水素基に対して反応性である少なくとも2個の官能基を含む少なくとも1種の共反応成分とを反応させるステップを含む、ポリマーの製造方法。
【請求項19】
前記ポリマーがポリアミド、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン又はエポキシポリマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分が少なくとも2個の活性水素含有官能基及び式(I):
CX1X2HCX3X4-Y- (I)
(ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
Yは酸素(O)、イオウ(S)又はNRであり、ここで、RはH又は有機部分である)
に相当する少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル基を含み、
但し、前記ハロゲン化ヘテロアルキル基が少なくとも1個のハロゲン原子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の少なくとも1種のポリマーを含む製造物品であって、コーティング、塗料、接着剤、シーラント、繊維、成形品、フィルム、シート、複合材及びラミネートより成る群から選択される、前記製造物品。
【請求項22】
コーティング、塗料、接着剤、シーラント、繊維、成形品、フィルム、シート、複合材及びラミネートより成る群から選択される物品を製造するための、請求項1に記載のポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共反応成分と反応するハロゲン化反応成分をベースとする付加及び縮合ポリマー、かかるポリマーの製造方法及びかかるポリマーについての最終用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタン等の付加及び縮合ポリマーは、長年にわたってよく知られている。しかしながら、それらの特性及び属性を変えて特定最終用途により一層よく適したものにするためにかかるポリマーを変性できるようにすることは、依然として非常に興味深い。これらにタイプのポリマーにハロゲン原子やハロゲン化官能基、特にフッ素原子やフッ素化官能基を、特に狙いを定めた態様で(即ちポリマー鎖中の特定位置に1個以上のハロゲン原子を配置させることによって)導入できれば、ある種の用途のための改良されたポリマーの開発が可能になるであろう。しかしながら、かかるハロゲン官能化付加及び縮合重合生成物を製造するための合成方法には、今日まで、多少の制限があった。
【発明の概要】
【0003】
本発明の1つの局面に従えば、a)少なくとも2個の活性水素含有官能基及び少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含む少なくとも1種のハロゲン化反応成分と、b)前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分の前記活性水素基に対して反応性である官能基を少なくとも2個含む少なくとも1種の共反応成分とを反応させることによって、ポリマーが得られる。こうして得られるポリマーは、ポリマー中にハロゲン化ヘテロアルキル及び/又はハロゲン化ヘテロアルケニル基が組み込まれた結果として、類似の非ハロゲン含有ポリマーと比較して、有用且つ有利な特性を有する。
【0004】
ポリマーのタイプ
【0005】
本発明に従えば、下記a)及びb)を含む反応成分、下記a)及びb)から本質的に成る反応成分、又は下記a)及びb)から成る反応成分の付加重合又は縮合重合生成物であるポリマーが提供される:
a)少なくとも2個の活性水素含有官能基及び少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含む少なくとも1種のハロゲン化反応成分;並びに
b)前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分の前記活性水素含有官能基に対して反応性である少なくとも2個の官能基を含む少なくとも1種の共反応成分。
【0006】
前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分は、連鎖延長用モノマーとしての働きをして、縮合及び付加ポリマーに側鎖ハロゲン化官能基を提供すると考えることができる。即ち、共反応成分との反応を介して、ハロゲン化ヘテロアルキル基又はハロゲン化ヘテロアルケニル基から誘導されるハロゲン化置換基がポリマーの基幹(主鎖)にぶら下がって配置されるような形で、ハロゲン化ヘテロアルキル基又はハロゲン化ヘテロアルケニル基がポリマー鎖中に組み込まれる。かくして、ハロゲン化ヘテロアルキル又はヘテロアルケニル基は、ポリマー主鎖上の側鎖として存在する。
【0007】
本発明が企図するポリマーは様々なタイプのポリマーであり、互いに反応するハロゲン化反応成分及び共反応成分として何を選択するかによって決定される。例えば、ハロゲン化反応成分の活性水素含有官能基がヒドロキシル基であり且つ共反応成分の官能基がイソシアネート基である場合には、ポリウレタンが得られる。アミノ基を含有するハロゲン化反応成分とイソシアネート官能基を有する共反応成分とを反応させると、ポリウレアが得られる。ハロゲン化反応成分がヒドロキシル基を含有し且つ共反応成分がカルボン酸基、無水物基、カルボキシレート基又はアシルハライド基を含有していれば、ポリエステルが製造される。アミノ官能基を含有するハロゲン化反応成分とジカルボン酸官能化共反応成分とを反応させることによって、ポリアミドを製造することができる。さらに、ヒドロキシル基、第2アミノ基又は第1アミノ基を含むハロゲン化反応成分とエポキシ樹脂とを反応させることによって、硬化したエポキシ樹脂(エポキシポリマー)を生成させることができる。
【0008】
付加重合は、反応したモノマーがその構造の一部を失ったり低分子量物質を生成したりすることなく結合することによってポリマー鎖を構築するような態様で反応する重合である。ジヒドロキシル官能性のハロゲン化反応成分とポリイソシアネートとの反応は、付加重合の一例である。対照的に、縮合重合の際には、モノマー分子間の反応の結果として、モノマー由来の副生成物が生じる。縮合重合の例には、ジヒドロキシル官能性ハロゲン化反応成分とジカルボン酸官能化共反応成分との反応があり、この反応では、ポリエステルが生成し、モノマーの縮合の副生成物として水が生成する。
【0009】
本発明に従うポリマーは、線状構造、分岐鎖状構造又は架橋構造等の任意の好適な構造を有していてよく、その構造は、付加重合又は縮合重合において用いるハロゲン化反応成分及び共反応成分によって、調節可能である。例えば、ハロゲン化反応成分及び共反応成分の両方が二官能性である場合(例えば、ヒドロキシル基等の活性水素含有官能基を2個含有するハロゲン化反応成分と、このハロゲン化反応成分の活性水素含有官能基に対して反応性であるカルボン酸基等の官能基を2個含有する共反応成分とを反応させた場合)には、線状ポリマーを得ることができる。ハロゲン化反応成分及び共反応成分の一方又は両方がこのような官能基を1分子当たり3個以上含有する場合には、得られるポリマーは一般的に分岐鎖状または架橋状である。
【0010】
本発明に従うより一層高分子量のポリマーは、ここでもまたポリマーを調製する際に用いるハロゲン化反応成分及び共反応成分に依存して、熱可塑性性状であっても熱硬化性性状であってもよい。前記ポリマーは、エラストマー状であってもよい。また、特に付加重合又は縮合重合が比較的高分子量について実施されるのでなければ、室温において液状のポリマーも可能である。本発明に従うポリマーの分子量は、特に制限されるものではない。例えば、ポリスチレン標準物質を用いたゲル透過クロマトグラフィーによって測定して1000~1000000g/モル(ダルトン)又はそれ以上の数平均分子量を有するポリマーを調製することができ、この分子量は、反応条件、連鎖停止剤の使用、並びに付加及び縮合重合の分野において周知のその他のこのような技術によって、調節可能である。
【0011】
ハロゲン化反応成分
【0012】
本発明のポリマーは、1分子当たり少なくとも2個の活性水素含有官能基及び1分子当たり少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含む1種以上のハロゲン化反応成分を、重合した形で含む。即ち、前記ポリマーは、かかるハロゲン化反応成分と、該ハロゲン化反応成分の前記活性水素基に対して反応性である官能基を1分子当たり少なくとも2個含む1種以上の共反応成分との付加重合又は縮合重合の結果として、かかるハロゲン化反応成分から誘導される1個以上の繰返し単位を含む。ハロゲン化反応成分の組み込みは、それによって生成する付加又は縮合ポリマーにハロゲン化を導入する。1つの実施形態において、かかるハロゲン化は、少なくともポリマーの基幹又は主鎖にぶら下がった側鎖の形で現れる。かかる側鎖は、例えば900ダルトン以下、800ダルトン以下、又は700ダルトン以下の分子量を有することができる。前記側鎖の分子量は、例えば88ダルトン以上であることができる。前記側鎖は、例えば、ポリマーを調製するために用いたハロゲン化反応成分中に存在するハロゲン化ヘテロアルキル基又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含むことができる。
【0013】
本明細書において用いた時、用語「ハロゲン化ヘテロアルキル基」とは、部分的に又は全体的にハロゲン化された飽和脂肪族セグメントを含む部分(一般的には一価部分)であって、前記飽和脂肪族セグメントの炭素原子がヘテロ原子(特にO、S又はN)に置き換えられたものを指し、このヘテロ原子はハロゲン化ヘテロアルキル基の一部ではない炭素原子に結合する(それによって、C-C-O-C、C-C-S-C又はC-C-N-C結合を形成する)。用語「ハロゲン化ヘテロアルケニル基」とは、部分的に又は全体的にハロゲン化された不飽和脂肪族セグメント(エチレン性不飽和の部位を少なくとも1つ含有する脂肪族セグメント、即ちC=C構造)を含む部分(一般的には一価部分)であって、前記不飽和脂肪族セグメントの炭素原子がヘテロ原子(特にO、S又はN)に置き換えられたものを指し、このヘテロ原子はハロゲン化ヘテロアルケニル基の一部ではない炭素原子に結合する(それによって、C=C-O-C、C=C-S-C又はC=C-N-C結合を形成する)。本明細書において用いた時、用語「ハロゲン化(された)」とは、炭素原子上の1個以上の水素原子がハロゲン原子(例えばF、Cl、Br又はI、特にF又はCl)で置換されていることを意味する。ハロゲン化基が2個以上の炭素原子を含有する場合、1個以上の炭素原子上の1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換される。ハロゲン化ヘテロアルキル基又はハロゲン化ヘテロアルケニル基中に異なるハロゲン原子が存在していてもよい(例えばF原子及びCl原子の両方)。別の実施形態において、ハロゲン化ヘテロアルキル基又はハロゲン化ヘテロアルケニル基は、単一のタイプのハロゲンを含有する(例えばFのみ又はClのみ)。
【0014】
例えば、ハロゲン化ヘテロアルキル基は、式(I)に相当することができる。
CX1X2HCX3X4-Y- (I)
[ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
Yは酸素(O)、イオウ(S)又はNRであり、
ここで、RはH又は有機部分(例えば、C1-C6アルキル等のアルキル)であり、
但し、前記ハロゲン化ヘテロアルキル基は少なくとも1個のハロゲン原子を含む。]
1つの実施形態において、Yは酸素(O)である。別の実施形態において、ハロゲン化ヘテロアルキル基は、少なくとも1個のフッ素原子を含む(即ち、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つはF又はフッ素化アルキル基である)。さらに別の実施形態において、ハロゲン化ヘテロアルキル基は、2~4個の炭素原子を含む。
【0015】
ハロゲン化ヘテロアルケニル基は、例えば、式(IA)に相当することができる。
CX1X2=CX3-Y- (IA)
[ここで、
X1、X2及びX3は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
Yは酸素(O)、イオウ(S)又はNRであり、
ここで、RはH又は有機部分(例えば、C1-C6アルキル等のアルキル)であり、
但し、前記ハロゲン化ヘテロアルケニル基は少なくとも1個のハロゲン原子を含む。]
1つの実施形態において、Yは酸素(O)である。別の実施形態において、ハロゲン化ヘテロアルケニル基は、少なくとも1個のフッ素原子を含む(即ち、X1、X2又はX3の少なくとも1つはF又はフッ素化アルキル基である)。さらに別の実施形態において、ハロゲン化ヘテロアルケニル基は、2~4個の炭素原子を含む。
【0016】
本発明のさらなる実施形態において、ハロゲン化反応成分は、式(II)に相当することができる。
(R1-Y-)xR2(YH)y (II)
(ここで、
R1はハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニル基であり、
R2は有機部分であり、
xは1又はそれより大きい整数であり、
yは2又はそれより大きい整数である。)
ある実施形態において、R1は少なくとも1個のフッ素原子を含む。別の実施形態において、式(II)中のR1は式(III)に相当する。
CX1X2HCX3X4- (III)
(ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
但し、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つはハロゲン又はハロゲン化アルキル基である。)
x+yの合計は、例えば3~6の整数であることができる。ある実施形態に従えば、xは1であり、yは2である。本発明のある実施形態に従えば、Yは酸素(O)である。R2は例えば三価のC3~C20脂肪族部分、例えば-CH2-CH(-)-CH2-である。本発明の様々な実施形態に従えば、xは1であり、yは2であり、Yは酸素(O)であり且つR2は三価のC3~C20脂肪族部分(例えば-CH2-CH(-)-CH2-)である。
【0017】
本発明において用いるのに適したハロゲン化反応成分は、代理人整理番号IR 4328の下で本願と同日付で出願された米国仮出願(特願2020-517093対応)に記載された合成方法を用いて調製することができる。言及することによってこの米国仮出願の開示の全体をすべての目的のために本明細書に取り入れるものとする。かかる合成方法を、以下に手短に述べる。
【0018】
ハロゲン化反応成分は、アルコール、第1アミン、第2アミン及びチオールより成る群から選択される活性水素含有有機化合物と、炭素-炭素二重結合を含有し且つ炭素-炭素二重結合の少なくとも一方の炭素が少なくとも1個のハロゲン又はハロゲン化アルキル基で置換されたハロゲン化オレフィンとを反応させることを含む方法によって製造することができる。前記ハロゲン化オレフィンは、1個、2個、3個、4個又はそれ以上の互いに同一であっても異なっていてもよいハロゲン原子(例えばFのみ、Clのみ又はF及びClの両方)を含有することができる。前記ハロゲン化オレフィンは、炭素-炭素二重結合の一方の炭素上を置換するハロゲン化アルキル基(例えばフッ素化アルキル基)を有していてもよい。例えば、前記ハロゲン化オレフィンは、炭素-炭素二重結合の一方の炭素上を置換するペルフッ素化アルキル基を有していてもよい。
【0019】
ある局面に従えば、前記ハロゲン化オレフィンは、式(4)に従う構造を有することができる。
CX1X2=CX3X4 (4)
(ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)及びハロゲン化又は非ハロゲン化C1~C20アルキル基より成る群から独立して選択され、
但し、X1、X2、X3及びX4の内の1つ以上は塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)及びヨウ素(I)より成る群から選択されるハロゲンであり、
X1、X2、X3又はX4の内の1つがハロゲンであり且つその他のX1、X2、X3及びX4置換基がそれぞれハロゲン以外の置換基である場合には、前記ハロゲン化オレフィンは少なくとも1個のハロゲン化アルキル基を含有する。)
別の局面においては、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つがClであり且つ前記ハロゲン化オレフィンが追加的に1個、2個、3個、4個又はそれ以上のフッ素原子を含有する。
【0020】
好適な例示的ハロゲン化オレフィンは、CClF=CH2、CH2=CF2、CFH=CH2、CF2=CHF、CF3CF=CH2、CF2=CF2、CH2=CHCl、CHCl=CHCl、CH2=CCl2、CF2=CFCl、CF2=CHCl、CF3CCl=CH2、CF3CCl=CClH、CF3CH=CCl2、CF3CF=CCl2、CF3CF=CClH、CF3CCl=CFH、CF3CCl=CF2、CF3CCl=CFCl、CF3CF=CFCl、CF3CH=CHCl、CF3CF=CFH、CF3CH=CF2、CF3CF=CF2、CF3CH2CF=CH2、CF3CH=CFCH3、CF3CF=CHCF3、CF3CCl=CHCF3、CF2HCH2CF=CH2、CF2HCH2CF=CHCl及びCF2HCH=CFCH2Clより成る群から選択することができる。
【0021】
ある局面に従えば、前記ハロゲン化オレフィンと脂肪族多価アルコールとを反応させることができる。別の局面においては、前記ハロゲン化オレフィンと、マスクされた脂肪族多価アルコール、即ち複数のヒドロキシル基を有し且つ少なくとも1個のヒドロキシル基がブロックされ且つ少なくとも1個のヒドロキシル基が遊離のヒドロキシル基である脂肪族ポリオールとを反応させる。
【0022】
ある局面に従えば、活性水素含有有機化合物とハロゲン化オレフィンとの反応は、塩基性条件下で、例えばアルカリ金属水酸化物又は炭酸のアルカリ金属塩等の無機塩基の存在下で、実施することができる。前記反応は、液状媒体中、例えば1種以上の有機溶媒、特に極性非プロトン性有機溶媒から成る液状媒体中で、実施することができる。前記反応は、相間移動触媒の存在下で実施することができる。
【0023】
ある局面に従えば、前記活性水素含有有機化合物及び前記ハロゲン化オレフィンを、約25℃~約200℃又は約50℃~約120℃の温度において、約0.5時間~約24時間反応させることができる。前記活性水素含有有機化合物及び前記ハロゲン化オレフィンは、(活性水素含有有機化合物のモル数)/x:ハロゲン化オレフィンのモル数の化学量論的比(ここで、xは活性水素含有有機化合物1分子当たりの活性水素の数である)が約1:8~約8:1となる割合で反応させることができる。
【0024】
前記ハロゲン化反応成分を調製するために、ハロゲン化オレフィン(例えばフッ素化オレフィン)を反応成分として用いることができる。本明細書において用いた時、用語「ハロゲン化オレフィン」とは、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合及び少なくとも1個のハロゲン原子(Cl、F、Br、I)を含有する有機化合物を指す。本明細書において用いた時、用語「フッ素化オレフィン」とは、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合及び少なくとも1個のフッ素原子(及び随意に1個以上のフッ素以外のハロゲン原子)を含有する有機化合物を指す。
【0025】
前記ハロゲン化オレフィンは、1個、2個、3個又はそれ以上のハロゲン原子、例えば臭素、塩素、フッ素若しくはヨウ素原子又はそれらの組合せ(例えば少なくとも1個のフッ素原子及び少なくとも1個の塩素原子)を含有することができる。ある実施形態において、ハロゲン化オレフィンは、ハロゲン化オレフィン中に存在する炭素-炭素二重結合中に含まれる炭素原子の少なくとも一方の上を置換する少なくとも1個のハロゲン原子を含有する。好適なフッ素化オレフィンには、1個、2個、3個又はそれ以上のフッ素(F)原子を含有するオレフィンが含まれる。前記フッ素原子は、炭素-炭素二重結合中に含まれる炭素原子の一方若しくは両方の上を置換することができ、且つ/又は炭素-炭素二重結合中に含まれる炭素原子の一方若しくは両方に結合した部分(例えばアルキル基等)の上の置換基として存在することもできる。例えば、フッ素化オレフィンは、1個以上のフルオロアルキル(例えばペルフルオロアルキル)基、例えばフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペルフルオロエチル、フルオロプロピル、ジフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、テトラフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ヘキサフルオロプロピル、ペルフルオロプロピル等、又はそれらの類似体であってフッ素原子の一部及び/若しくは1個以上の水素原子が別のハロゲン原子(例えばCl)に置き換えられたものを含むことができる。前記フッ素化オレフィンは、フッ素以外のハロゲン原子、特に塩素(Cl)、ヨウ素(I)及び/又は臭素(Br)原子を1個以上含むことができる。ある実施形態において、前記ハロゲン化オレフィン又はフッ素化オレフィンは、炭素-炭素二重結合中に含まれる炭素原子上を置換する1個以上の塩素原子を含むことができる。本発明のさらなる実施形態において、前記ハロゲン化オレフィン又はフッ素化オレフィンは、炭素-炭素二重結合中に含まれる炭素原子上に少なくとも1個の水素原子を含むことができる。例えば、フルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、クロロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、クロロフルオロオレフィン及びヒドロクロロフルオロオレフィンはすべて、本発明におけるハロゲン化オレフィン反応成分として用いることができる。好適なタイプのフッ素化オレフィンには、フルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、フルオロプロペン、クロロフルオロプロペン、フルオロブテン、クロロフルオロブテン、フルオロペンテン、クロロフルオロペンテン、フルオロヘキセン、クロロフルオロヘキセン等が含まれる。本発明の様々な実施形態において、前記ハロゲン化オレフィンは、2個、3個、4個、5個、6個又はそれ以上の炭素原子、例えば2~20個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子又は2~4個の炭素原子を含む。
【0026】
ある局面に従えば、前記ハロゲン化オレフィンは、式(4)に従う構造を有することができる。
CX1X2=CX3X4 (4)
[ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)及びハロゲン化又は非ハロゲン化C1~C20アルキル基より成る群から独立して選択され、
ここで、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つはハロゲン又はハロゲン化アルキル基(例えばトリフルオロメチル等のフッ素化アルキル基)である。]
【0027】
ハロゲン化反応成分を調製するに当たって用いるのに適したハロゲン化オレフィンの特定的な代表例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
CClF=CH2、
CH2=CF2、
CFH=CH2、
CF2=CHF、
CF3CF=CH2、
CF2=CF2、
CF2=CHCl、
CF3CCl=CH2、
CF3CH=CHCl、
CF3CF=CFH、
CF3CH=CF2、
CF3CF=CF2、
CF3CH2CF=CH2、
CF3CH=CFCH3、
CF3CF=CHCF3、
CF3CCl=CHCF3、
CF2HCH2CF=CH2、
CF2HCH2CF=CHCl、
CF2HCH=CFCH2Cl、
CH2=CHCl、
CHCl=CHCl、
CH2=CCl2、
CF2=CFCl、
CF3CCl=CH2、
CF3CCl=CClH、
CF3CH=CCl2、
CF3CF=CCl2、
CF3CF=CFCl、
CF3CF=CClH、
CF3CCl=CFH、
CF3CCl=CF2、
CF3CCl=CFCl。
【0028】
上に挙げたハロゲン化オレフィンのすべての可能な異性体(例えばE又はZ異性体)を用いることができる。
【0029】
1つの実施形態においては、前記ハロゲン化オレフィンとして、クロロ置換トリフルオロプロペニル化合物を用いる。好適なクロロ置換トリフルオロプロペニル化合物には、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(1233zdとも称される)及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンが含まれる。1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンのcis-異性体又はtrans-異性体(即ち、trans-(E)-1233zd又はcis-(Z)-1233zd)のいずれを用いてもよい。
【0030】
ハロゲン化反応成分を調製するに当たって用いられる活性水素含有有機化合物は、アルコール、第1アミン、第2アミン及びチオールより成る群から選択することができる。前記活性水素含有有機化合物は、1分子当たり1個以上の活性水素(即ち、1分子当たり1個、2個、3個、4個、5個又それ以上の活性水素)を含むことができる。かかる活性水素は、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)及び/又は第1若しくは第2アミン基(-NH2又は-NH-(各結合部位は炭素原子に結合する))の形にあることができる。ある反応条件下では(例えば反応が塩基によって触媒され又は促進される場合には)、活性水素含有有機化合物が脱プロトンされた形又は一部脱プロトンされた形(例えば-O-、-S-)で存在していてもよいものと理解される。活性水素含有有機化合物は、モノマー状、オリゴマー状又はポリマー状であってよい。活性水素含有有機化合物中に存在していてもよい炭素原子の数に関する周知の制約は特に存在しないが、本発明の様々な実施形態において、活性水素含有有機化合物は1~30個又は2~20個の炭素原子を含むことができる。
【0031】
用語「アルコール」は、有機部分上を置換する少なくとも1個のヒドロキシル基(-OH)を有する任意の有機化合物を指す。用語「チオール」は、有機部分上を置換する少なくとも1個のチオール基(-SH)を有する任意の有機化合物を指す。用語「第1アミン」は、有機部分上を置換する少なくとも1個の-NH2基を有する任意の有機化合物を指す。用語「第2アミン」は、有機部分上の置換基として又は環状有機構造の一部として、少なくとも1個の-NH-基(ここで、窒素原子は2個の炭素原子に結合する)を含有する任意の有機化合物を指す。
【0032】
前記活性水素含有有機化合物の有機部分は制限されるものではないが、例えば随意に置換されたアルキル基、随意に置換されたヘテロアルキル基、随意に置換されたアルキレン基、随意に置換されたヘテロアルケニル基、随意に置換されたアリール基、随意に置換されたヘテロアリール基、随意に置換されたシクロアルキル基又は随意に置換されたヘテロシクロアルキル基であることができる。好適な随意としての置換基には、例えばハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、カルボキシル等が含まれる。
【0033】
ある実施形態において、前記活性水素含有有機化合物は、一般構造Q(YH)xに相当する。ここで、Qは置換又は非置換有機部分(例えばアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びそれらの置換体)であり、YはO、S又はNR(ここで、RはH又は置換若しくは非置換有機部分、例えば随意に置換されたアルキル基である)であり、xは1又はそれより大きい整数(例えば1~10、1~5又は1~3)である。かかる化合物において、Y部分の酸素、イオウ又は窒素原子は、Qの炭素原子に結合する。xが2又はそれより大きい整数である場合、Y部分は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qはモノマー状の有機部分であってもよいし、本発明の別の実施形態においては(オキシエチレン等のモノマー残渣の繰返し単位を2個以上含有する)オリゴマー状又はポリマー状の有機部分であってさえよい。
【0034】
別の実施形態において、前記活性水素含有有機化合物は、脂肪族多価アルコール、特に1分子当たり3個以上のヒドロキシル基(例えば1分子当たり3~6個のヒドロキシル基)を含有する脂肪族アルコールであってよい。反応条件(例えば脂肪族多価アルコール及びハロゲン化オレフィンの化学量論)を調節することによって、ヒドロキシル基の一部だけを反応させて、本発明に従うハロゲン化反応成分として用いるのに適した1分子当たり2個以上の未反応ヒドロキシル基を含有する反応生成物が得られるようにすることができる。好適な脂肪族多価アルコールの非限定的な例には、C3~C18脂肪族トリオール、糖アルコール、グリセロール、トリヒドロキシブタン、トリヒドロキシペンタン、トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール及びそれらのアルコキシル化誘導体(例えば前記脂肪族多価アルコールのいずれかを脂肪族多価アルコール1モル当たり1~750(例えば1~30)モルのアルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド)と反応させた場合)が含まれる。
【0035】
他の局面に従えば、前記活性水素含有有機化合物は、3個以上の活性水素含有官能基を含有し、その内の少なくとも2個の活性水素含有官能基がマスク/ブロックされていて、且つ、少なくとも1個の活性水素含有官能基が保護されていない形のままであってハロゲン化オレフィンとの所望の反応に関与できるものであることができる。かかる反応の後に、マスク/ブロックされた活性水素含有官能基を随意に脱保護して、少なくとも2個の活性水素含有官能基を生じさせることができる。得られるハロゲン化反応成分は、a)少なくとも2個の活性水素含有官能基及び少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含み、次いで所望の付加及び縮合ポリマーを得るために本発明に従って共反応成分と共に重合させることができる。
【0036】
本発明に従って付加及び縮合ポリマーを製造するために用いることができるハロゲン化反応成分を製造するために有用なマスク/ブロックされたポリオールの非限定的な例には、(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール(ソルケタールとも称される)、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(グリセリンカーボネートとも称される)、トリメチロールプロパンケタール、トリメチロールプロパンカーボネート、並びに他の脂肪族トリオール(例えばトリメチロールエタン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール等)のケタール及びカーボネート等の化合物が含まれる。
【0037】
特定実施形態においては、2個以上のヒドロキシル基がマスク又はブロックされ、1個以上のヒドロキシル基がハロゲン化オレフィンとの反応のために遊離のままである脂肪族多価アルコールが用いられる。ブロック/マスクされた多価アルコールがハロゲン化オレフィンと反応したら、ブロッキング/マスキング基(保護基と称されることもある)を随意に除去して2個以上の遊離のヒドロキシル基を含有する共反応成分を生じさせてもよい。ヒドロキシル基をマスクするのに適していることが有機化学の分野において周知の任意のブロッキング又はマスキング用試薬又は技術を用いることができる。しかしながら、一般的には、マスクされた脂肪族多価アルコールとハロゲン化オレフィンとを反応させるために用いられる条件下で安定なままである(即ち有意に程度で除去されない)ブロッキング又はマスキング基を用いるのが望ましい。例えば、マスクされた脂肪族多価アルコール/ハロゲン化オレフィンの反応の際に塩基性触媒が用いられる場合には、ブロッキング/マスキング基はかかる塩基性条件下で脱ブロッキング又は脱マスキングに対して耐性があるべきである。好適なブロッキング/マスキング基の非限定的な例には、シリルエーテル基、アセタール基、ケタール基、ベンジル基等が含まれる。ソルケタールはブロック/マスクされた脂肪族多価アルコールの特定例であり、グリセロールの2個のヒドロキシル基がケタール基を介してブロックされ、残りのヒドロキシル基がハロゲン化オレフィンと反応するために遊離である。別態様として、グリセロールの2個のヒドロキシル基がカーボネート基を介してブロックされ、1個のヒドロキシル基がハロゲン化オレフィンと反応するために遊離であるグリセリンカーボネートであってもよい。ヒドロキシル官能基についての好適な保護基のその他の非限定的な例には、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル(DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル(MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフリル(THF)、トリチル(トリフェニルメチル、Tr)、シリルエーテル、メチルエーテル、t-ブチルエーテル及びエトキシエチルエチルエーテル(EE)が含まれる。
【0038】
同様に、前記ハロゲン化反応成分を調製するに当たって用いられる活性水素含有化合物中に存在していてもよい別のタイプの活性水素含有官能基(例えばチオール基、第1アミン基、第2アミン基)も、当技術分野において周知の任意のマスキング/ブロッキング技術を用いてマスク又はブロックすることができる。依然として存在する1個以上のブロックされていない活性水素含有官能基を次いでハロゲン化オレフィンと反応させてハロゲン化中間体を得て、これを次いで脱ブロック(マスク除去)して2個以上の活性水素含有官能基(これは次いで本発明に従って共反応成分と反応させて不可又は縮合ポリマーを生成させるために利用可能である)を提供することができる。好適なアミン保護基には、例えば、カルボベンジルオキシ(Cbz)基、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz又はMeOZ)基、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)基)、アセチル(Ac)基、ベンゾイル(Bz)基、ベンジル(Bn)基、カルバメート基、p-メトキシベンジル(PMB)基、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)基、p-メトキシフェニル(PMP)基、トシル(Ts)基、トリクロロエチルクロロフォルメート(Troc)基、スルホンアミド(例えばノシル及びNps)基等が含まれる。
【0039】
ハロゲン化オレフィンとの反応の後に、活性水素含有有機化合物の1個以上の活性水素(即ち1個以上の-YH部分中の1個以上の水素)が、アルケニル又はアルキル基(例えば-CF=CH2、-CF2CFHCF3、-CF2CFClH、-CF2CClH2、-CF2CF2H、-CH=CHCF3又は-C(CF3)=CH2)に置き換えられる。理論に縛られることは望まないが、本発明の反応は、活性水素含有有機化合物の活性水素含有官能基がハロゲン化オレフィンの二重結合に付加することによって進行するものと信じられる。かかる反応は、ハロゲン化アルキル基を生成させる(即ち、ハロゲン化オレフィンがハロゲン化アルキル基に転化し、これが得られる生成物内に存在する)。一般的に、活性水素含有官能基のヘテロ原子(例えばヒドロキシル基の酸素原子)は、好ましくは、ハロゲン化オレフィンの炭素-炭素二重結合中に伴われる炭素のより一層「ハロゲンヘビー」の炭素原子(即ち、結合したハロゲン原子の数が最も多い炭素)に結合する。ある場合においては、活性水素含有官能基のヘテロ原子が炭素-炭素二重結合中のそれぞれの炭素原子に結合した異なる物質の混合物が得られる。ハロゲン化アルキル基からヒドロハライドを除去した結果として、アルケニル基が得られる。かかる除去は、反応媒体の塩基性を高めることによって補助することができる。
【0040】
アルコールとハロゲン化オレフィンとを反応させる場合、前記の変形は以下のように一般的に示すことができる:
初期反応:R-OH + ZXC=CZ2 → (R-O-)ZXC-CHZ2
除去:(R-O-)ZXC-CHZ2 → (R-O-)ZC=CZ2 + HX
R=有機部分(例えばアルキル)
X=ハロゲン(例えばF、Cl)
Z=水素、ハロゲン化又は非ハロゲン化有機部分、ハロゲン
【0041】
本発明において有用なハロゲン化反応成分であって上記の合成方法に従って製造することができるものの非限定的な特定例には、ソルケタール及びグリセリンカーボネートより成る群から選択される活性水素含有有機化合物とCF2=CH2、CFCl=CH2、CF2=CHCl、CF2=CFCl、CF2=CF2、CF3CF=CF2、CF3CF=CH2、CF3CH=CFH、CF3CCl=CH2及びCF3CH=CHClより成る群から選択されるハロゲン化オレフィンとの反応生成物であり且つ脱ブロックされたハロゲン化反応成分が含まれ、ここで、ケタール又はカーボネートブロッキング基が除去されて1分子当たり2個のヒドロキシル基を含有するハロゲン化反応成分が得られる。
【0042】
活性水素含有有機化合物が1分子当たり3個以上の活性水素含有官能基を含有する場合(例えば活性水素含有有機化合物が脂肪族多価アルコールである場合)であってハロゲン化オレフィンとの反応後に1分子当たり2個以上の遊離の(未反応)活性水素含有官能基を含有する物質を得ることが望まれる場合には、かかる物質が未反応のままの活性水素含有官能基が2個以下である物質より多く製造されるように、ハロゲン化オレフィンに対して化学量論的に過剰量の活性水素含有有機化合物を用いるのが一般的に望ましい。かかる場合には、(活性水素含有有機化合物のモル数)/x:ハロゲン化オレフィンのモル数の化学量論的比(ここで、xは活性水素含有有機化合物1分子当たりの活性水素の数である)が約1:1~約12:1、約1.5:1~約10:1又は約2:1~約8:1となる割合で前記活性水素含有有機化合物及び前記ハロゲン化オレフィンを反応させることができる。
【0043】
共反応成分
【0044】
本発明において有用な共反応成分は、一般的に、ハロゲン化反応成分の存在下で反応性である官能基のタイプ並びにハロゲン化反応成分と共反応成分との間で行われる付加重合又は縮合重合反応の所望生成物であるポリマーのタイプ及び組成に基づいて、選択することができる。前記共反応成分は、少なくとも1種の前記ハロゲン化反応成分の活性水素基に対して反応性である官能基を少なくとも2個含んでいるべきである(即ち、前記共反応成分は、少なくとも2個の活性水素反応性官能基を含有しているべきである)。前記共反応成分は、例えばイソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボキシレート基、無水物基及びアシルハライド基より成る群から選択される少なくとも2個の官能基を含むことができる。
【0045】
本発明において用いることできる共反応成分の非限定的な例には、ポリイソシアネート、ポリイソシアネート官能化ウレタンプレポリマー、ポリカルボン酸及びエポキシ樹脂が含まれる。
【0046】
好適なポリイソシアネートには、1分子当たり2個以上のイソシアネート官能基(-NCO)を含有する有機化合物が含まれる。本明細書において用いた時、用語「イソシアネート官能基」には、遊離のイソシアネート基だけではなく、マスクされ、ブロックされ又は保護されたイソシアネート基(例えばカプロラクタム、ジアルキルマロネート、ジアルキルピラゾール又はジアルキルケトキシムでブロックされたイソシアネート基であり、このブロックされたイソシアネート基は、ハロゲン化反応成分とブロックされたポリイソシアネートとを反応させるために採用される重合条件下で脱ブロックすることができるものである)をも含む。好適なポリイソシアネートの例には、脂肪族、環状脂肪族、アリール脂肪族、芳香族及びヘテロ環式のポリイソシアネートが含まれる。かかるポリイソシアネートの例には、式Q(NCO)n(ここで、nは2~4、好ましくは2であり、Qは2~18個、好ましくは6~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、4~15個、好ましくは5~10個の炭素原子を有する環状脂肪族炭化水素基、6~15個、好ましくは6~13個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、又は8~15個、好ましくは8~13個の炭素原子を有するアリール脂肪族炭化水素基を表すことができる)のものが含まれる。特定的な例には、次のものが含まれる:エチレンジイソシアネート;1,4-テトラメチレンジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);1,12-ドデカンジイソシアネート;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3-及び-1,4-ジイソシアネート並びにこれらの異性体の任意の所望の混合物;1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン;2,4-及び2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート並びにこれらの異性体の任意の所望の混合物;ヘキサヒドロ-1,3-及び-1,4-フェニレンジイソシアネート;ペルヒドロ-2,4’-及び-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート;1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート;1,4-ズレンジイソシアネート(DDI);4,4’-スチルベンジイソシアネート;3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI);2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)並びにこれらの異性体の任意の所望の混合物。また、ジフェニルメタン-2,4’-及び/又は-4,4’-ジイソシアネート(MDI)又はナフチレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)も好適である。
【0047】
また、例えば以下のものも好適である:トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、ポリフェニル-ポリメチレンポリイソシアネート(アニリン-ホルムアルデヒド縮合及び続いてのホスゲン化によって得られるようなもの)。また、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;ペル塩素化アリールポリイソシアネート;カルボジイミド基を有するポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート;アロファネート基を有するポリイソシアネート;イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート;ウレタン基を有するポリイソシアネート;アシル化ウレア基を有するポリイソシアネート;ビウレット基を有するポリイソシアネート;テロマー化(短鎖重合)反応によって調製されるポリイソシアネート;エステル基を有するポリイソシアネート;並びに上記のイソシアネートとアセタールとの反応生成物;及びポリマー状脂肪酸エステルを含有するポリイソシアネートも好適である。
【0048】
また、イソシアネートの工業的生産において得られるイソシアネート基含有蒸留残渣(随意に上記の1種以上のポリイソシアネート中に溶解させたもの)を用いることも可能である。また、上記のポリイソシアネートの任意の所望の混合物を用いることもできる。
【0049】
産業上容易に得ることができるポリイソシアネート、例えば以下のものを用いるのが好ましい:2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート並びにこれらの異性体の任意の所望の混合物(TDI);4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニル-ポリメチレンポリイソシアネート(アニリン-ホルムアルデヒド縮合及び続いてのホスゲン化によって得られるようなもの(粗製MDI));カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレタン基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレア基又はビウレット基を有するポリイソシアネート(「変性ポリイソシアネート」)、特に2,4-及び/若しくは2,6-トルエンジイソシアネートから又は4,4’-及び/若しくは2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートから誘導される変性ポリイソシアネート。ナフタレン-1,5-ジイソシアネート及び上記ポリイソシアネートの混合物もまた、非常に好適である。
【0050】
好適なポリイソシアネート官能化ウレタンプレポリマーには、ジオール又はジアミン等の活性化ヒドロキシル官能化化合物と過剰量のポリイソシアネートとを反応させてプレポリマー鎖当たり複数個のイソシアネート官能基を含有するプレポリマーとすることによって製造されるプレポリマーが含まれる。
【0051】
好適なポリカルボン酸には、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸等の1分子当たり2個以上のカルボン酸官能基(-COOH)を含有する有機化合物が含まれる。前記ポリカルボン酸は、脂肪族であっても芳香族であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。好適なジカルボン酸には、直鎖状又は分岐鎖状のα,ω-ジカルボン酸、例えば1分子当たり4~24個の炭素原子を有するもの(C4~C24ジカルボン酸)が含まれる。例示的なジカルボン酸には、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、ヘキサデカン二酸、セバシン酸、ジフェン酸、ナフタレン二酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸等が含まれる。また、ベンゼントリカルボン酸等のトリカルボン酸も、一般的にはジカルボン酸と比較して少量で、用いることができる。
【0052】
好適なポリカルボキシレートには、ポリカルボン酸のエステル、特に上記のいずれかのポリカルボン酸のエステル、特にかかるポリカルボン酸の低級アルキル(例えばメチル)エステルが含まれる。
【0053】
また、ポリカルボン酸のアシルハライド、特に上記ポリカルボン酸のハライドであって、-COOH官能基が-C(=O)X官能基(ここで、Xはハライド、特にClである)に置き換えられたものも、本発明において共反応成分として用いるのに好適である。
【0054】
好適なエポキシ樹脂には、1分子当たり2個以上のエポキシ(オキシラン)官能基を含有する有機化合物が含まれる。かかるエポキシ樹脂は、モノマー状であってもオリゴマー状であってもよく、末端エポキシ基を有する線状ポリマー、又は基幹がエポキシ基を含有する線状ポリマー、又は基幹が側鎖エポキシ基を有するポリマーから成ることができる。
【0055】
かかるエポキシ樹脂は、エピクロルヒドリンとビスフェノールA及び/又はビスフェノールF等のビスフェノールとの反応から製造することができる。前記エポキシ樹脂は、アルキル及び/若しくはアルケニルグリシジルエーテル又はエステル;随意に置換されたモノフェノール及びポリフェノールポリグリシジルエーテル、特にビスフェノールAのポリグリシジルエーテル;ポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族若しくは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルエステル;並びに/又はノボラックのポリグリシジルエーテルであることができる。さらなる別態様において、前記エポキシ樹脂は、エピクロルヒドリンと芳香族アミン又は芳香族モノアミン若しくはジアミンのグリシジル誘導体との反応生成物であることができる;かかるエポキシ樹脂は、時としてグリシジルアミンエポキシ樹脂と称されることもある。また、環状脂肪族エポキシドを用いることもできる。
【0056】
前記ハロゲン化反応成分と前記共反応成分とを反応させる時に、前記共反応成分と反応させるために前記ハロゲン化反応成分と組み合わせて、1種以上の追加の活性水素官能化反応成分を用いることができる。この目的のために、縮合又は付加重合の分野において周知の任意の活性水素官能化反応成分を用いることができ、これには例えばモノマー状多価アルコール(例えばグリコール)、ポリマー状/オリゴマー状多価アルコール(例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール)、ポリアミン等が含まれる。
【0057】
ポリマー製造方法
【0058】
本発明のポリマーは、前記ハロゲン化反応成分と前記共反応成分とを、前記ハロゲン化反応成分中に存在する官能基と前記共反応成分中に存在する官能基との反応をもたらして反応成分が連鎖延長してポリマーを生成するのに有効な時間及び温度で、接触させることによって、調製することができる。この目的のために好適な条件は、存在する様々な官能基の反応性に応じて変化する。重合速度を促進するために、1種以上の触媒を存在させることもでき且つ/又は反応成分の混合物を加熱することもできる。例えば、ヒドロキシル官能化ハロゲン化反応成分とイソシアネート官能化共反応成分とを共重合させてポリウレタンを生成させる場合には、ポリウレタンの分野において周知の任意の触媒、例えばスズ触媒を用いることができる。重合が縮合重合である場合には、様々な官能基の間の反応の結果として生成する低分子量の副生成物を除去することによって、ポリマーの鎖長を増大させることができる。例えば、ポリエステルを生成させるためヒドロキシル官能化ハロゲン化反応成分とポリカルボン酸共反応成分とを反応させる場合、又はポリアミドを生成させるためにアミン官能化ハロゲン化反応成分とポリカルボン酸とを反応させる場合には、副生成物の水を蒸留等の好適な技術によって共重合反応混合物から除去することができる。
【0059】
ある実施形態においては、ほぼ化学量論的量のハロゲン化反応成分及び共反応成分を有利に用いることができる。例えば、二官能性ハロゲン化反応成分(例えば1分子当たり2個のヒドロキシル基を有するハロゲン化反応成分)と二官能性共反応成分(例えばジカルボン酸)とを反応させる場合には、二官能性ハロゲン化反応成分と二官能性共反応成分とのモル比は1.5:1~1:1.5、又は1.4:1~1:1.4、又は1.3:1~1:1.3、又は1.2:1:1~1:1.2又は1.1:1~1:1.1であることができる。
【0060】
前記付加重合又は縮合重合は、生で(バルク状で)、溶液状で、懸濁若しくはエマルション法によって、又は当技術分野において周知の任意の他の技術によって、実施することができる。所望の程度まで重合を実施したら、反応生成物を1以上のさらなる処理及び/又は精製工程に付すことができる。
【0061】
ポリマー最終用途
【0062】
ハロゲン化反応成分を加えることによってポリマー中に導入されるハロゲンの結果として、特性及び特徴を有利に制御し変更することができる。例えば、ハロゲン化は、ポリマーの次の特徴のうちの1つ以上を変化させることができる:難燃性、耐指紋性、表面特性(例えば、摩擦係数、濡れ性、表面エネルギー)、耐溶剤性、耐油性、耐湿性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性、ガラス転移温度、融点、軟化点、結着性、接着性、疎水性、透過性等。
【0063】
本発明に従うポリマーは、製造される特定ポリマーのタイプ及び特徴に応じて適切であり得る任意の態様で、生成させたり用いたりすることができる。好適な方法には、例えば押出、射出成形、反応射出成形、注型等が含まれ得る。前記ポリマーは、成形又はその他の方法で、複合材料、繊維、積層体、容器、管、建築部品、車両部品、電子部品、電気部品、家庭電気器具部品、航空宇宙部品、船舶部品、家具、家具部品、コーティング、フィルム、シート、接着剤、シーラント、包装材、布帛、衣料品等の有用な物品に成形することができる。
【0064】
本発明に従うポリマーは、ポリマーの分野において周知の任意の添加剤又は追加成分、例えば、他のポリマー(ポリマーブレンド又はアロイを形成させるため)、フィラー、補強剤、着色剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、潤滑剤、加工助剤、接着促進剤、成核剤、帯電防止剤等と、組み合わせたり一緒に配合したりすることができる。
【0065】
本発明に従うポリマーは、多種多様な用途において用いることができる。例えば、前記ポリマーは、相溶化剤、発泡剤、界面活性剤、又は低表面エネルギー添加剤(汚れ(stain)防止、汚染(soil)防止、粘着防止用途、湿潤若しくはコーティング用途及び汚れ付着(fouling)防止用途用)として、耐溶剤性又は耐薬品性(コーティング、フィルム、加工部品等において)を改善又は強化するため、撥油性及び撥水性表面(プラスチック、テキスタイル、紙、木材、皮革等の基材用)の調製において、医療機器用コーティングとして、潤滑剤として、電子用途用の添加剤及びバルク材料として、熱可塑性エラストマーとして又はその中に、耐衝撃性改良剤として、接着剤として、薬物(または医薬品)送達用に、美容用途において、並びにその他の多くの当業者にとって明らかな用途において、用いることができる。
【0066】
ポリマー(コポリマーを含む)は、ポリマー材料の表面エネルギーを改変するのに有用な低表面エネルギーポリマーであることができる。これらのポリマーは、添加剤量で用いることもでき、バルク材料として用いることもできる。添加剤量は、多種多様なバルクポリマー中に、該バルクポリマーにおいて固有ではない汚れ耐性等の特性を付与するために、含ませることができる。潜在的な用途には、食品用途、テキスタイル、コーティング、調合薬、塗料及び他の多くの産業が含まれる。
【0067】
本発明によって提供されるポリマー(低表面エネルギーコポリマーを含む)は、コーティング組成物中に従来から用いられている任意の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂と組み合わせて用いることができる。もちろん、用いられる特定樹脂(群)は、関連コーティング用途に適切であるように選択されるべきであり、コーティング組成物の他の成分と適合性であるべきである。有用な樹脂の例には、ラテックス、アクリル樹脂、ビニルアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フェノキシ樹脂等が含まれる。最終コーティング樹脂が熱硬化性樹脂である場合、樹脂成分は、有効量の架橋用成分、例えば少なくとも1種の架橋剤、例えば従来から用いられているメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、ウレア/ホルムアルデヒド樹脂等を含む。1種以上のかかる架橋剤は、熱硬化性樹脂と称される1種以上の他の樹脂と組み合わせて、該熱硬化性樹脂(群)中で例えば熱を加えた際に架橋を形成して、最終的な所望の熱硬化表面コーティングを形成するのに有効な量で、用いることができる。
【0068】
追加的に、コーティング、ファイバー及びフィルムに撥水性特徴を提供するために、本発明に従うポリマーを疎水性添加剤として用いる有意の可能性が存在する。かかる物質の重要な側面は、それらを溶融加工の際に加えることによって、その後の処理工程を省くことができるということである。かかる疎水性添加剤にとって最も魅力的な用途は、テキスタイル、コーティング及びフィルムにおけるものであり、これらの用途における主要な物質属性は、汚れ防止、染み防止及び撥水性特徴である。本発明に従うポリマーは、ポリマー物品の表面化学の変性を含む様々な用途において、効果的に機能することが期待される。かかる用途においてはこれまである種のフッ素化材料が用いられているが、かかるフッ素化材料は、有意の規制圧力下にあり、段階的に廃止されることになっている。
【0069】
特に関心のある分野には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:
1)テキスタイル、コーティング、塗料用途での撥水用途(これらにおいて、本発明に従うポリマーは、住宅用及び商業用の防汚及び除湿性ファイバー、フィルム、シート、コーティング及び塗料等を製造するために用いることができる);2)特に剥離ライナーを含む自己接着用途(この場合、ライナーはラベルストック及びグラフィックアート市場用に、即ちカレンダークラフト紙及びポリエチレンコート紙用に、並びにフィルムライナー用に、コーティングされる);3)離型剤;4)フルオロ化学界面活性剤;5)印刷可能/塗装可能なポリオレフィン;6)保護窓処理;7)落書き防止コーティング;8)航空機用コーティング;9)結露防止添加剤;並びに10)耐摩耗性添加剤。
【0070】
本発明の例示的局面
【0071】
本発明の様々な例示的局面は、以下の通りまとめることができる:
局面1:以下のものを含む反応成分、以下のものから本質的に成る反応成分又は以下のものから成る反応成分の付加重合又は縮合重合生成物であるポリマー:
a)少なくとも2個の活性水素含有官能基及び少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含む少なくとも1種のハロゲン化反応成分;並びに
b)前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分の前記活性水素含有官能基に対して反応性である少なくとも2個の官能基を含む少なくとも1種の共反応成分。
局面2:前記少なくとも1種の共反応成分がイソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボキシレート基、無水物基及びアシルハライド基より成る群から選択される少なくとも2個の官能基を含む、局面1のポリマー。
局面3:前記ポリマーがポリアミド、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン又はエポキシポリマーである、局面1又は2のポリマー。
局面4:前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分が少なくとも2個の活性水素含有官能基及び式(I):
CX1X2HCX3X4-Y- (I)
(ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
Yは酸素(O)、イオウ(S)又はNRであり、
ここで、RはH又は有機部分である)
に相当する少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル基を含み、
但し、前記ハロゲン化ヘテロアルキル基が少なくとも1個のハロゲン原子を含む、局面1~3のいずれかのポリマー。
局面5:Yが酸素(O)である、局面4のポリマー。
局面6:前記ハロゲン化ヘテロアルキル基が少なくとも1個のフッ素原子を含む、局面4又は5のポリマー。
局面7:前記ハロゲン化ヘテロアルキル基が2~4個の炭素原子を含む、局面4~6のいずれかのポリマー。
局面8:前記少なくとも2個の活性水素含有官能基がヒドロキシル基、チオール基、第2アミノ基及び第1アミノ基より成る群から選択される、局面1~7のいずれかのポリマー。
局面9:前記少なくとも1種の共反応成分がポリイソシアネート、ポリイソシアネート官能化ウレタンプレポリマー、ポリカルボン酸及びエポキシ樹脂より成る群から選択される、局面1~8のいずれかのポリマー。
局面10:前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分が式(II):
(R1-Y-)xR2(YH)y (II)
(ここで、
R1はハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニル基であり、
R2は有機部分であり、
Yは酸素(O)、イオウ(S)又はNRであり、ここで、RはH又は有機部分であり、
xは1又はそれより大きい整数であり、
yは2又はそれより大きい整数である)
に相当する、局面1~9のいずれかのポリマー。
局面11:R1が少なくとも1個のフッ素原子を含む、局面10のポリマー。
局面12:R1が式(III):
CX1X2HCX3X4- (III)
(ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
但し、X1、X2、X3又はX4の少なくとも1つはハロゲン又はハロゲン化アルキル基である)
に相当する、局面10又は11のポリマー。
局面13:x+yが3~6の整数である、局面10~12のいずれかのポリマー。
局面14:xが1であり且つyが2である、局面10~13のいずれかのポリマー。
局面15:Yが酸素(O)である、局面10~14のいずれかのポリマー。
局面16:R2がC3~C20脂肪族部分である、局面10~15のいずれかのポリマー。
局面17:xが1であり、yが2であり、Yが酸素(O)であり且つR2がC3~C20脂肪族部分である、局面10~16のいずれかのポリマー。
局面18:少なくとも2個の活性水素含有官能基及び少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル又はハロゲン化ヘテロアルケニル基を含む少なくとも1種のハロゲン化反応成分と、前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分の前記活性水素基に対して反応性である少なくとも2個の官能基を含む少なくとも1種の共反応成分とを反応させるステップを含む、ポリマーの製造方法。
局面19:前記ポリマーがポリアミド、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン又はエポキシポリマーである、局面18の方法。
局面20:前記少なくとも1種のハロゲン化反応成分が少なくとも2個の活性水素含有官能基及び式(I):
CX1X2HCX3X4-Y- (I)
(ここで、
X1、X2、X3及びX4は水素原子、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化若しくは非ハロゲン化アルキル基から独立して選択され、
Yは酸素(O)、イオウ(S)又はNRであり、ここで、RはH又は有機部分である)
に相当する少なくとも1個のハロゲン化ヘテロアルキル基を含み、
但し、前記ハロゲン化ヘテロアルキル基が少なくとも1個のハロゲン原子を含む、局面18又は19の方法。
局面21:局面1~17のいずれかに従う少なくとも1種のポリマーを含む製造物品であって、コーティング、塗料、接着剤、シーラント、繊維、成形品、フィルム、シート、複合材及びラミネートより成る群から選択される、前記製造物品。
局面22:コーティング、塗料、接着剤、シーラント、繊維、成形品、フィルム、シート、複合材及びラミネートより成る群から選択される物品を製造するための、局面1~17のいずれかに従うポリマーの使用。
【0072】
本明細書においては、明瞭かつ簡潔な明細書が書かれるようにするために実施形態を記載してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分けたりすることができるということが意図されており、理解されるだろう。例えば、本明細書に記載されたすべての好ましい特徴は、本明細書に記載された本発明のすべての局面に適用可能であることが理解されるであろう。
【0073】
ある実施形態において、本発明は、前記ポリマー又は前記ポリマーの製造方法の基本的特徴及び新規の特徴に著しく影響を及ぼすことのない要素やプロセスステップを除外するものと解釈することができる。さらに、ある実施形態において、本発明は、ここに特定していない要素やプロセスステップを除外するものと解釈することができる。
【0074】
ここまで、特定実施形態を参照して本発明を例示して説明してきたが、本発明は示された詳細に限定されることを意図したものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等範囲及び領域内で、本発明から逸脱することなく、詳細に様々な変更を為すことができる。
【外国語明細書】