IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノリタケカンパニーリミテドの特許一覧 ▶ 国立大学法人 鹿児島大学の特許一覧

特開2024-9637微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法
<>
  • 特開-微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法 図1
  • 特開-微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法 図2
  • 特開-微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法 図3
  • 特開-微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法 図4
  • 特開-微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法 図5
  • 特開-微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法 図6
  • 特開-微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009637
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/231 20220101AFI20240116BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20240116BHJP
   B01F 25/452 20220101ALI20240116BHJP
   B01F 35/221 20220101ALI20240116BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20240116BHJP
【FI】
B01F23/231
B01F23/2373
B01F25/452
B01F35/221
B01F35/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111314
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】大橋 隆行
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 和晃
(72)【発明者】
【氏名】五島 崇
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4G035AB27
4G035AC26
4G035AE01
4G035AE02
4G035AE13
4G035AE19
4G037AA02
4G037AA18
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】多孔質体を用いて微細気泡をより効率よく発生させる技術を提供する。
【解決手段】ここで開示される微細気泡発生装置は、液体中に微細気泡を発生させる装置である。この装置は、上記液体に接触するとともに上記微細気泡を発生させる複数の細孔を有する第1面を備える多孔質体と、上記多孔質体にガスを供給するガス供給機構と、上記第1面と接触する上記液体を該第1面に沿う方向に揺動させる液体揺動機構と、を備えている。この装置は、上記液体揺動機構によって上記液体が揺動されている間に、上記多孔質体に供給された上記ガスを上記複数の細孔を介して上記液体中に放出させるように構成されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置であって、
前記液体に接触するとともに前記微細気泡を発生させる複数の細孔を有する第1面を備える多孔質体と、
前記多孔質体にガスを供給するガス供給機構と、
前記第1面と接触する前記液体を該第1面に沿う方向に揺動させる液体揺動機構と、
を備えており、
前記液体揺動機構によって前記液体が揺動されている間に、前記多孔質体に供給された前記ガスを前記複数の細孔を介して前記液体中に放出させるように構成されている、微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記多孔質体は、両端が開口した円筒状に構成されており、該多孔質体の内表面が複数の貫通孔である前記複数の細孔を有する前記第1面であり、
前記ガス供給機構は、前記多孔質体の外表面側から前記ガスを供給するように構成されている、請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記ガス供給機構は、内部に前記多孔質体を配置する、両端が開口した円筒状のガス供給管を有しており、該ガス供給管の内壁面と前記多孔質体の外表面との間に前記ガスを供給するように構成されている、請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記多孔質体は、一端が閉じ、他端が開口した円筒状に構成されており、該多孔質体の外表面が複数の貫通孔である前記複数の細孔を有する前記第1面であり、
前記ガス供給機構は、前記多孔質体の内表面側から前記ガスを供給するように構成されている、請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記ガス供給機構は、前記揺動の状況に応じて、前記ガスの供給開始および供給停止を切り替え可能に構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記ガス供給機構は、前記ガスの供給源と、該供給源から前記多孔質体までの前記ガスの流路となる配管と、該配管上に設けられたバルブと、を有しており、前記揺動の状況に応じて該バルブを開閉することによって前記多孔質体への前記ガスの供給開始および供給停止を切り替えるように構成されている、請求項5に記載の微細気泡発生装置。
【請求項7】
前記液体揺動機構は、円筒状の前記多孔質体の一方の端部から他方の端部に向かう方向、および、前記他方の端部から前記一方の端部に向かう方向に前記液体を揺動させるように構成されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項8】
前記液体揺動機構は、前記液体を収容する容器と、減圧設備と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、配管と、を備えており、
前記配管を介して、前記多孔質体の一方の端部が前記容器と接続されており、該多孔質体の他方の端部が前記蓄気室に接続されており、
前記蓄気室は、前記減圧設備および前記加圧設備に接続されており、該蓄気室と該減圧設備との接続、および、該蓄気室と該加圧設備との接続は、前記バルブによって切り替え可能に構成されており、
前記液体揺動機構は、
前記蓄気室と前記減圧設備との接続を介して前記多孔質体内が減圧された場合に前記一方の端部から前記液体を該多孔質体内に吸入し、前記蓄気室と前記加圧設備との接続を介して前記多孔質体内が加圧された場合に前記一方の端部から前記液体を該多孔質体外に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、前記液体を揺動させるように構成されている、請求項2または3に記載の微細気泡発生装置。
【請求項9】
前記液体揺動機構は、前記液体を収容する容器と、減圧設備と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、を備えており、
前記容器は、前記蓄気室と接続されており、
前記多孔質体は、前記蓄気室内に配置されており、
前記蓄気室は、前記減圧設備および前記加圧設備に接続されており、該蓄気室と該減圧設備との接続、および、該蓄気室と該加圧設備との接続は、前記バルブによって切り替え可能に構成されており、
前記液体揺動機構は、
前記蓄気室内が減圧された場合に前記容器から前記液体を該蓄気室内に吸入し、該蓄気室内が加圧された場合に前記蓄気室から前記液体を前記容器に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、前記液体を揺動させるように構成されている、請求項4に記載の微細気泡発生装置。
【請求項10】
前記液体揺動機構は、前記液体を収容する、前記多孔質体への該液体の供給源である容器であって、前記多孔質体から放出された前記ガスを回収する容器を備えており、
前記容器は、前記多孔質体よりも上側に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項11】
前記液体揺動機構は、前記液体を収容する容器と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、配管と、を備えており、
前記多孔質体は、一方の端部が上側に、他方の端部が下側になるように配置されており、
前記容器は、前記多孔質体の前記一方の端部よりも上側に配置されているとともに、前記配管を介して該一方の端部と接続されており、
前記蓄気室は、前記配管を介して、前記多孔質体の前記他方の端部と接続されているとともに、前記加圧設備に接続されており、
前記蓄気室と前記加圧設備との接続および非接続は、前記バルブによって切り替え可能に構成されており、
前記液体揺動機構は、
前記蓄気室と前記加圧設備とが接続されていない場合に前記一方の端部から前記液体を前記多孔質体内に吸入し、前記蓄気室と前記加圧設備とが接続されて前記多孔質体内が加圧された場合に前記一方の端部から前記液体を前記多孔質体外に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、前記液体を揺動させるように構成されている、請求項2または3に記載の微細気泡発生装置。
【請求項12】
前記液体揺動機構は、前記揺動の間における前記液体の平均レイノルズ数を8000以下に調節するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項13】
前記多孔質体の平均細孔径は、10μm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置を用いて、液体中に微細気泡を発生させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微細気泡発生装置および微細気泡の発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、径が100μm未満のファインバブルと呼ばれる微細気泡を用いた技術の有用性が注目されている。ファインバブルは、例えば、径が1μm未満のウルトラファインバブルと、径が1μm以上のマイクロバブルとを含んでいる。気泡を微細化することで、例えば、有機合成等の化学反応用途における気液反応の促進、微生物、動物細胞等の培養用途における酸素の供給の高効率化等が期待できる。その他にも、微細気泡を含む液体を用いた洗浄技術、水の除菌および脱臭、オゾン水の生成、健康・医療機器分野、湖沼や養殖場の水質浄化、工場・畜産等の各種排水処理、機能水製造等への微細気泡を用いた技術の利用が検討されている。それにともない、近年では、マイクロバブルやウルトラファインバブルを発生させる装置の市場も拡大している。
【0003】
特許文献1で開示される微細気泡発生装置は、円筒状の内周面を有する筒状部材、該筒状部材の一端を閉じる第1端壁部材、および、該筒状部材の他端を閉じる第2端壁部材によって画定される流体旋回室と、該流体旋回室内に気液混合流体を導入する流体導入孔と、該流体旋回室内から気液混合流体を吐出する流体吐出孔と、を備える気体旋回剪断装置を有している。この気体旋回剪断装置では、流体導入孔が、筒状部材の軸線方向の中心位置よりも第2端壁部材寄りの位置に設けられている。流体吐出孔は、筒状部材の内周面の中心軸線に沿って該第2端壁部材を貫通している。流体旋回室内に導入された気液混合流体は、吐出口が設けられていない第1端壁部材に向けて旋回流となって進み、第1端壁によって当該流体旋回室の半径方向中心部に向けられながら反転し、旋回速度を更に高め、第2端壁部材に向かい、流体吐出口から外部へ吐出される。この文献では、このとき、液体内に含まれる気体への剪断力が大きくなり、微細化が促進されると記載されている。
【0004】
特許文献2で開示される超微細気泡発生器は、一端に液体の導入口を有し、他端に液体の導出口を有する筒状のケーシング体内に、導入口から導出口に向けて導入口から導入した液体の流速を増速させる流速増速部と、該流速増速部にて増速された液流により圧力降下されたケーシング体内に外部から気体を吸引する気体吸引部と、該気体吸引部にて吸引された気体を増速された液流によりせん断して超微細な気泡混じりの液体を生成する超微細気泡含有液体生成部と、を備えている。この超微細気泡発生器の気体吸引部には、吸引される気体の脈動を抑制する脈動抑制体が配設されている。この文献では、脈動抑制体を配設することによって、気体の脈動を低減して、超微細気泡に安定的に生成できるとともに、振動または騒音の低減することができると記載されている。
【0005】
特許文献3で開示される気泡生成装置は、下流端が液体中に配置されるガス流路と、ガス流路内を減圧することにより、液体がガス流路内のガスと混ざり合うように、液体を下流端から吸い込ませたのち、ガス流路内を加圧することにより、ガス流路内の液体および該液体と混ざり合ったガスを、下流端から液体中に噴出させるガス圧制御装置と、を備えている。この文献では、ガス流路の減圧および加圧のそれぞれの過程で、ガス流路内で生成した気泡に対して攪拌力等を作用させることができるため、かかる気泡の微細化を効率的に行うことができると記載されている。
【0006】
特許文献4で開示される気泡生成装置は、気体供給源と、気体供給源が供給する気体を液体中へと導く気体用流路と、気体用流路の出口部分に配置された多孔質部材と、多孔質部材の液体側の表面に振動を与える振動源と、を備えている。この気泡生成装置では、流路から流体中へ導入される気体は、多孔質部材を通過するために微小な気泡となって液体中に導入される。そして、振動源によって多孔質部材の表面が振動することによって、微小な気泡が多孔質部材の表面から速やかに脱落する。この文献では、かかる構成によって、液体中に微小な気泡を効率よく生成することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-272719号公報
【特許文献2】特開2014-028340号公報
【特許文献3】特開2017-023996号公報
【特許文献4】特開2003-265939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、多孔質体にガスを通過させて気泡を液体中に発生させる構成を有する装置(例えば特許文献4)では、他の構成を有する装置(例えば特許文献1~3)と比べて、生成される気泡の気泡径が大きくなる傾向がある。
【0009】
そこで、本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、多孔質体を用いて微細気泡をより効率よく発生させる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで開示される微細気泡発生装置は、液体中に微細気泡を発生させる装置である。この装置は、上記液体に接触するとともに上記微細気泡を発生させる複数の細孔を有する第1面を備える多孔質体と、上記多孔質体にガスを供給するガス供給機構と、上記第1面と接触する上記液体を該第1面に沿う方向に揺動させる液体揺動機構と、を備えている。この装置は、上記液体揺動機構によって上記液体が揺動されている間に、上記多孔質体に供給された上記ガスを上記複数の細孔を介して上記液体中に放出させるように構成されている。
【0011】
かかる構成の微細気泡発生装置では、液体が多孔質体の第1面に沿って揺動している間は、第1面には、液体の揺動によってせん断力が発生し得る。このため、微細気泡をより効率よく発生させることができる。
【0012】
この装置の好ましい一態様では、上記多孔質体は、両端が開口した円筒状に構成されている。該多孔質体の内表面が、複数の貫通孔である上記複数の細孔を有する上記第1面である。上記ガス供給機構は、上記多孔質体の外表面側から上記ガスを供給するように構成されている。かかる構成によると、ここで開示される技術の効果をよりよく実現することができる。
【0013】
この装置の好ましい他の一態様では、上記ガス供給機構は、内部に上記多孔質体を配置する、両端が開口した円筒状のガス供給管を有している。上記ガス供給機構は、該ガス供給管の内壁面と上記多孔質体の外表面との間に上記ガスを供給するように構成されている。かかる構成によると、微細気泡の発生をより効率よくすることができるとともに、多孔質体の内部から外部への液体の漏出を抑制することができる。
【0014】
この装置の好ましい他の一態様では、上記多孔質体は、一端が閉じ、他端が開口した円筒状に構成されている。該多孔質体の外表面が、複数の貫通孔である上記複数の細孔を有する上記第1面である。上記ガス供給機構は、上記多孔質体の内表面側から上記ガスを供給するように構成されている。かかる構成によると、ここで開示される技術の効果をよりよく実現することができる。
【0015】
この装置の好ましい他の一態様では、上記ガス供給機構は、上記揺動の状況に応じて、上記ガスの供給開始および供給停止を切り替え可能に構成されている。かかる構成によると、微細気泡の発生効率を高められるとともに、微細気泡のサイズをより小さくすることができる。
【0016】
この装置の好ましい他の一態様では、上記ガス供給機構は、上記ガスの供給源と、該供給源から上記多孔質体までの上記ガスの流路となる配管と、該配管上に設けられたバルブと、を有している。上記ガス供給機構は、上記揺動の状況に応じて該バルブを開閉することによって上記多孔質体への上記ガスの供給開始および供給停止を切り替えるように構成されている。かかる構成によると、微細気泡の発生効率をより向上させることができる。
【0017】
この装置の好ましい他の一態様では、上記液体揺動機構は、上記円筒状多孔質体の一方の端部から他方の端部に向かう方向、および、上記他方の端部から上記一方の端部に向かう方向に上記液体を揺動させるように構成されている。上記のとおり、円筒状多孔質体の両端が開口となっている。このため、かかる構成によると、いずれか一方の端部から、発生した微細気泡を効率よく多孔質体の外部に排出することができる。
【0018】
この装置の好ましい他の一態様では、上記液体揺動機構は、上記液体を収容する容器と、減圧設備と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、配管と、を備えている。上記配管を介して、上記多孔質体の一方の端部が、上記容器と接続されており、該多孔質体の他方の端部が上記蓄気室に接続されている。上記蓄気室は、上記減圧設備および上記加圧設備に接続されている。該蓄気室と該減圧設備との接続、および、該蓄気室と該加圧設備との接続は、上記バルブによって切り替え可能に構成されている。上記液体揺動機構は、上記蓄気室と上記減圧設備との接続を介して上記多孔質体内が減圧された場合に上記一方の端部から上記液体を該多孔質体内に吸入し、上記蓄気室と上記加圧設備との接続を介して上記多孔質体内が加圧された場合に上記一方の端部から上記液体を該多孔質体外に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、上記液体を揺動させるように構成されている。かかる構成によると、当該端部における液体の吸入および排出を円滑に行うことができ、延いては、より効率よく微細気泡を発生させることができる。
【0019】
この装置の好ましい他の一態様では、上記液体揺動機構は、上記液体を収容する容器と、減圧設備と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、を備えている。上記容器は、上記蓄気室と接続されている。上記多孔質体は、上記蓄気室内に配置されている。上記蓄気室は、上記減圧設備および上記加圧設備に接続されており、該蓄気室と該減圧設備との接続、および、該蓄気室と該加圧設備との接続は、上記バルブによって切り替え可能に構成されている。上記液体揺動機構は、上記蓄気室内が減圧された場合に上記容器から上記液体を該蓄気室内に吸入し、該蓄気室内が加圧された場合に上記蓄気室から上記液体を上記容器に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、上記液体を揺動させるように構成されている。かかる構成によると、流路内での気泡の合一化を抑制させることができ、より効率よく微細気泡を発生させることができる。
【0020】
この装置の好ましい他の一態様では、上記液体揺動機構は、上記液体を収容する、上記多孔質体への該液体の供給源である容器であって、上記多孔質体から放出された上記ガスを回収する容器を備えている。上記容器は、上記多孔質体よりも上側に配置されている。かかる構成によると、多孔質体への液体の供給に、重力を利用することができる。このため、ここで開示される技術の効果に加えて、装置を簡略化する効果を実現することができる。
【0021】
この装置の好ましい他の一態様では、上記液体揺動機構は、上記液体を収容する容器と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、配管と、を備えている。上記多孔質体は、一方の端部が上側に、他方の端部が下側になるように配置されている。上記容器は、上記多孔質体の上記一方の端部よりも上側に配置されているとともに、上記配管を介して該一方の端部と接続されている。上記蓄気室は、上記配管を介して、上記多孔質体の上記他方の端部と接続されているとともに、上記加圧設備に接続されている。上記蓄気室と上記加圧設備との接続および非接続は、上記バルブによって切り替え可能に構成されている。上記液体揺動機構は、上記蓄気室と上記加圧設備とが接続されていない場合に上記一方の端部から上記液体を上記多孔質体内に吸入し、上記蓄気室と上記加圧設備とが接続されて上記多孔質体内が加圧された場合に上記一方の端部から上記液体を上記多孔質体外に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、上記液体を揺動させるように構成されている。かかる構成によると、ここで開示される技術の効果に加えて、装置の構成をより簡略化する効果を実現することができる。
【0022】
この装置の好ましい他の一態様では、上記液体揺動機構は、上記揺動の間における上記液体の平均レイノルズ数を8000以下に調節するように構成されている。かかる構成によると、微細気泡をより効率よく発生させることができる。
【0023】
この装置の好ましい他の一態様では、上記多孔質体の平均細孔径は、10μm未満である。かかる構成によると、微細気泡をより効率よく発生させることができる。
【0024】
また、上記微細気泡発生装置を用いて、液体中に微細気泡を発生させる方法が提供される。かかる構成の方法では、微細気泡のサイズをより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、第1実施形態に係る微細気泡発生装置の概略図である。
図2図2は、図1の多孔質体110近傍の拡大図である。
図3図3は、微細気泡発生装置100の動作を説明するフロー図である。
図4図4は、試験例2の気泡発生装置2の概略図である。
図5図5は、試験例3の気泡発生装置3の概略図である。
図6図6は、第2実施形態に係る微細気泡発生装置の概略図である。
図7図7は、第3実施形態に係る微細気泡発生装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、ここで開示される技術の実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。なお、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを超えてB未満」、「Aを超えてB以下」、および「A以上B未満」をも意味するものとする。各図に示すUの矢印は、重力方向の上向きを示している。また、各図に示すDの矢印は、重力方向の下向きを示している。
【0027】
本明細書において、「微細気泡」は、ファインバブルを含み得る。ファインバブルは、国際標準化機構(ISO)の規格(ISO 20480-1:2017)によって、直径が100μm未満の気泡であることが定められている。また、ファインバブルは、マイクロバブルと、ウルトラファインバブルと、を包含する。マイクロバブルは、上記規格によって、直径が1μm以上100μm未満の気泡であることが定められている。ウルトラファインバブルは、上記規格によって、直径が1μm未満の気泡であることが定められている。
【0028】
本明細書における「微細気泡」は、平均気泡径が150μm以下(好ましくは125μm以下、より好ましくは115μm以下、さらに好ましくは110μm以下、特に好ましくは100μm以下)の気泡をいう。本明細書において、「平均気泡径」とは、市販のデジタル撮影装置(例えばハイスピードカメラ)を用いて取得された画像から無作為に100個~500個(例えば200個~300個)の気泡を選択し、アメリカ国立衛生研究所が開発したフリー画像解析ソフト「ImageJ」を用いて解析することによって算出された、気泡径が小さい方からの累積が50%である気泡径(D50)をいう。
【0029】
本明細書における「微細気泡」に関して、モード径は、例えば150μm以下であり、125μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、75μm以下がさらに好ましく、50μm以下が特に好ましい。特に限定するものではないが、モード径は、概ね5μm以上であり、10μm以上であってもよい。本明細書において、「モード径」とは、市販のデジタル撮影装置(例えばハイスピードカメラ)を用いて取得された画像から無作為に100個~500個(例えば200個~300個)の気泡を選択し、画像解析ソフト「ImageJ」を用いて解析することによって算出された、最頻度気泡径をいう。
【0030】
本明細書における「微細気泡」に関して、ザウター径は、例えば300μm以下であり、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。特に限定するものではないが、ザウター径は、概ね30μm以上であり、50μm以上であってもよい。本明細書において、「ザウター径」とは、市販のデジタル撮影装置(例えばハイスピードカメラ)を用いて取得された画像から無作為に100個~500個(例えば200個~300個)の気泡を選択し、選択された気泡の、体積の総和と表面積の総和との比を計算することによって得られた値をいう。ザウター径の算出には、画像解析ソフト「ImageJ」が用いられ得る。
【0031】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る微細気泡発生装置の概略図である。図2は、図1の多孔質体110近傍の拡大図である。微細気泡発生装置100(以下、単に「装置100」ともいう。)は、液体中に微細気泡を発生させる装置である。図1に示されているように、装置100は、多孔質体110と、ガス供給機構120と、液体揺動機構130と、を備えている。装置100は、液体揺動機構130によって液体LQが揺動されている間に、多孔質体110に供給されたガスGを複数の細孔MPを介して液体LQ中に放出させるように構成されている。液体LQが第1面に沿って揺動している間は、第1面には、液体LQの揺動によってせん断力が発生し得る。このため、微細気泡をより効率よく発生させることができる。例えば、この揺動の間にガスGを複数の細孔MPを介して液体LQ中に放出させることによって、上記せん断力によって発生する微細気泡のサイズをより小さくすることができる。また、発生した微細気泡の気泡径分布をより狭いものとすることができる。
【0032】
液体LQの揺動とは、例えば、液体LQの、多孔質体110の第1面上の任意の点Pから任意の他の点Qに向かう流動と、点Qから点Pに向かう流動とを交互に連続的に繰り返す運動をいう。液体LQが揺動されている間とは、例えば、液体LQが点Pから点Qに向かって流動している間と、点Qから点Pに向かって流動している間をいう。点Pから点Qに向かう流動と点Qから点Pに向かう流動とが切り替わる時点、および、点Qから点Pに向かう流動と点Pから点Qに向かう流動とが切り替わる時点では、液体LQの流動速度がゼロになる。このため、かかる2つの時点は、「液体LQが揺動されている間」から除かれる。
【0033】
多孔質体110は、例えば、液体LQに接触するとともに微細気泡FBを発生させる複数の細孔を有する第1面を備える。図1および図2に示されているように、多孔質体110は、両端(図2における端部11A,11B)が開口した円筒状(中空円筒状)に構成されている。この実施形態では、多孔質体110の内表面111が第1面である。図2に示されているように、内表面111は、複数の細孔MPを有している。複数の細孔MPは、複数の貫通孔であり得る。この実施形態では、ガス供給機構120は、多孔質体110の外表面側112からガスGを供給するように構成されている。ガス供給機構120については、後でさらに述べる。なお、図2に示された実施形態では、蓄気室138側の端部11Bにおける内表面111に上記点Pがあり、容器側131の端部11Aの内表面111に上記点Qがある。
【0034】
図2に示されているように、多孔質体110は、Oリング91,92を備えている。Oリング91は、例えば、樹脂製であり、多孔質体110の一方の端部11A側に装着されている。Oリング92は、多孔質体110の他方の端部11B側に装着されている。この実施形態では、Oリング91,92は、液体揺動機構130の配管139(ここでは第3配管13Z)と、ガス供給機構120のガス供給管126とに挟み込まれている。これによって、多孔質体110と配管139(ここでは第3配管13Z)とガス供給管126とが相互に接続されている。これによって、多孔質体110の外表面112にガスGが供給され、多孔体110の内腔に液体LQが流れるように構成されている。
【0035】
多孔質体110の平均細孔径は、所望する微細気泡の直径によって適宜設定されるものであり、特に限定されない。平均細孔径は、例えば20μm以下であり、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。平均細孔径が小さいほど、より小さい微細気泡を発生させることができる。かかる観点から、平均細孔径は、10μm未満が好ましく、7μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。一方で、平均細孔径が小さすぎると、供給されたガスが通過できず、微細気泡を適切に形成できない虞がある。かかる観点から、平均細孔径は、例えば0.05μm以上であり、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。
【0036】
平均細孔径は、水銀ポロシメータを用いた水銀圧入法によって測定され得る。水銀ポロシメータとしては、市販されている従来公知の装置が用いられ得るが、一例として、マイクロメトリックス製の「AutoPore IV 9500」が挙げられる。なお、平均細孔径としては、メーカー等の公称値が採用されてもよい。
【0037】
多孔質体110は、例えばセラミック製であり得る。多孔質体110を構成するセラミックとしては、例えば、アルミナ(Al),ジルコニア(ZrO),マグネシア(MgO),シリカ(SiO),チタニア(TiO),ジルコン(ZrSiO),ムライト(Al13Si)等の酸化物系セラミック;窒化ケイ素(Si),窒化ホウ素(BN),窒化アルミニウム(AlN),炭化ケイ素(SiC),炭窒化ホウ素(BCN)等の非酸化物系セラミック;等が挙げられる。セラミックは、上述のセラミックを一種単独であってもよく、2種以上を含む複合材料であってもよい。セラミックとしては、品質が安定し安価で入手が容易なアルミナ、ベーマイト、シリカ、およびチタニアが好ましく用いられ得る。なお、各セラミックの名称に併記された括弧内の化学式は、当該セラミックの代表的な組成を示すものであり、セラミックの組成がかかる化学式のものに限定されることを意図したものではない。また、上記のとおり、多孔質体110の材質としてセラミックを例示したが、これに限定されない。多孔質体110は、例えば、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。
【0038】
ガス供給機構120は、例えば、多孔質体110にガスGを供給する機構である。ガスGの種類は、所望する微細気泡の種類によって適宜選択されるため、特に限定されない。ガスGは、例えば空気、酸素ガス、オゾン、水素ガス、窒素ガス、炭酸ガス等であり得、ここでは空気である。
【0039】
この実施形態では、ガス供給機構120は、液体LQの揺動の状況に応じて、ガスGの供給開始および供給停止を切り替え可能に構成されている。後述のとおり、ガス供給機構120の動作と、液体揺動機構130の動作とは、制御部によって制御されている。このため、例えば、液体揺動機構130の動作に応じてガスGの供給開始および供給停止を切り替えるプログラムを予め制御部に定めておけばよい。これによって、液体LQの揺動の状況に応じてガスGの供給開始および供給停止を切り替えることができる。かかるプログラムとしては、例えば、液体LQが揺動する期間のうちの、所定の期間にのみ多孔質体110にガスGを供給し、当該所定期間を除いた他の期間にはガスGの供給を停止するように設定されたプログラムが挙げられる。液体LQが揺動する期間のうちの特定期間にガスGの供給を行うことによって、微細気泡の発生効率を高められるとともに、微細気泡のサイズをより小さくすることができる。上記所定の期間としては、例えば、多孔質体110の端部11Bから端部11Aに向かう流動の期間が挙げられる。かかる期間では、多孔質体110内で液体LQが容器131に向かう方向に流れている。発生した微細気泡が多孔体110外に排出される方向と液体LQが流れる方向とが一致する期間にガスGを供給することによって、より効率よく微細気泡を発生させることができる。
【0040】
図1に示されているように、ガス供給機構120は、供給源121と、レギュレータ122と、流量計123と、圧力計124と、バルブ125と、ガス供給管126と、配管127と、を有している。供給源121は、ガスGの供給源であり、例えばガスボンベである。レギュレータ122は、例えば、供給源121から供給されるガスGの供給圧を調整する圧力レギュレータである。流量計123は、配管127中のガスGの流量(ガスGの供給量)を計測する計測器である。圧力計124は、配管127中のガスGの圧力(ガスGの供給圧)を計測する計測器である。バルブ125は、配管127上に設けられている。バルブ125は、例えば、多孔質体110へのガスGの供給開始および供給停止を切り替えている。この実施形態では、バルブ125は、ガス供給管126へのガスGの供給開始および供給停止を切り替えている。バルブ125は、例えば、電磁弁等の電気的に制御可能なバルブであることが好ましい。図1に示されているように、供給源121と、レギュレータ122と、流量計123と、圧力計124と、バルブ125と、ガス供給管126とは、配管127を介して相互に接続されている。配管127は、供給源121から多孔質体110までのガスGの流路となっている。
【0041】
この実施形態では、ガス供給機構120は、液体LQの揺動の状況に応じてバルブ125を開閉することによって、多孔質体110へのガスGの供給開始および供給停止を切り替えるように構成されている。例えば、液体揺動機構130の動作に応じてバルブ125を開閉し、ガスGの供給開始および供給停止を切り替えるプログラムを予め制御部に定めておけばよい。これによって、液体LQの揺動の状況に応じてガスGの供給開始および供給停止を切り替えることができる。また、微細気泡の発生効率をより向上させることができる。
【0042】
この実施形態では、上記のとおり、ガス供給機構120は、ガス供給管126を有している。また、この実施形態では、ガス供給機構120は、ガス供給管126の内壁面と多孔質体110の外表面112との間にガスGを供給するように構成されている。図1および図2に示されているように、ガス供給管126は、両端(図2における端部12A,12B)が開口した円筒状(中空円筒状)の管であり、その内部に多孔質体110を配置することができる。ガス供給管126の内部に多孔質体110が配置されたとき、ガス供給管126の内壁面と多孔質体110の外表面112との間は空隙となっている。かかる空隙に、ガスGが供給される。この実施形態では、ガス供給管126は、壁面に供給孔12Pと排出孔12Qとを有している。供給孔12Pと排出孔12Qとは、例えば、ガス供給管126の内部と外部とを連通する貫通孔である。供給孔12Pは、例えば、配管127と接続されている(図1参照)。ガスGは、配管127および供給孔12Pを介してガス供給管126に供給される。排出孔12Qには、例えば、封止栓128が取り付けられている。封止栓128を外すことで、例えば、ガス供給管126内のガスGを供給管126の外部に排出することができる。例えば、ガス供給管126の内圧が高まりすぎた場合に、封止栓128を外すとよい。ガス供給機構120がガス供給管126を備え、ガス供給管126の内壁面と多孔質体110の外表面との間にガスGが供給されることによって、より効率よく多孔質体110にガスGを供給することができる。また、ガスGの供給を停止しても、ガス供給管126内にガスGが留まり得る。このため、ガス供給管126を用いることによって、多孔質体110の細孔MP(ここでは貫通孔)を介した液体LQの外部への漏出をよりよく抑制することができる。
【0043】
ガス供給管126の内部における多孔質体110の配置に関して、図2に示されているように、ガス供給管126の端部12Aには、接続部材93が取り付けられており、端部12Bには、接続部材94が取り付けられている。接続部材93,94は、例えば、ガス供給管126と多孔質体110と第3配管13Zとを接続する部材である。図2に示されているように、端部12A,12Bの外周と、接続部材93,94の内周にはねじ切り加工が施されており、これによって、接続部材93,94がガス供給管126に取り付けられる。また、接続部材93,94は貫通孔を有しており、該貫通孔に第3配管13Zが挿通される。この実施形態では、第3配管13Zには、外周に沿ってリング状の突起である係止部Z1,Z2が設けられている。係止部Z1,Z2が接続部材93,94の貫通孔の周縁に当接することによって、第3配管13Zと接続部材93,94とが接続される。
【0044】
図2に示されているように、ガス供給管126の内部には、端部12A側に保持部1261が設けられており、端部12B側に保持部1262が設けられている。保持部1261,1262は、例えば、多孔質体110をガス供給管126の内部に保持する部位である。図2に示されているように、保持部1261,1262は貫通孔を有している。図2に示されているように、保持部1261,1262の貫通孔に多孔質体110を挿通し、保持部1261の端部12A側の表面にOリング91を配置して第3配管13Zが取り付けられた接続部材93を取り付け、保持部1262の端部12B側の表面にOリング92を配置して第3配管13Zが取り付けられた接続部材94を取り付ける。これによって、ガス供給管126の内部に多孔質体110を配置するとともに、ガス供給管126と多孔質体110と第3配管13Zとが接続される。かかる接続を介して、液体LQが多孔体110の内腔を流れるように構成されている。
【0045】
液体揺動機構130は、例えば、第1面(ここでは内表面111)と接触する液体LQを該第1面に沿う方向に揺動させる機構である。液体LQの種類は特に限定されない。液体LQは、ここでは、水であってもよい。
【0046】
液体揺動機構130は、例えば、多孔質体110の一方の端部11Aから他方の端部11Bに向かう方向K1、および、他方の端部11Bから一方の端部11Aに向かう方向K2に液体LQを揺動させるように構成されている。この実施形態では、液体揺動機構130は、多孔質体110の内表面111に沿って、端部11Aから端部11Bに向かう方向K1、および、端部11Bから端部11Aに向かう方向K2に液体LQを揺動させるように構成されている。図2に示されているように、端部11Aおよび端部11Bは開口端である。このため、液体LQを端部11Aと端部11Bとの間で揺動させることによって、端部11Aと端部11Bとのいずれか一方(ここでは端部11A)から発生した微細気泡を効率よく多孔体110の外部に排出することができる。
【0047】
図1に示されているように、液体揺動機構130は、容器131と、減圧設備132と、加圧設備133と、レギュレータ134と、流量計135と、圧力計136と、バルブ137と、蓄気室138と、配管139と、を備えている。配管139は、第1配管13Xと、第2配管13Yと、第3配管13Zと、を備えている。図2に示されているように、第1配管13Xを介して、加圧設備133と、レギュレータ134と、流量計135と、圧力計136と、バルブ137と、が接続されている。かかる接続を、以下、「加圧ライン」ともいう。また、第2配管13Yを介して、減圧設備132と、バルブ137と、が接続されている。かかる接続を、以下、「減圧ライン」ともいう。また、第3配管13Zを介して、多孔質体110の一方の端部11Aが容器131と接続されており、多孔質体110の他方の端部11Bが蓄気室138に接続されている。第3配管13Zは、容器131から多孔質体110の内腔を通って蓄気室138に至るまでの液体LQの流路となっている。なお、この実施形態では、多孔質体110の端部11Aが下側に、端部11Bが上側になるように配置されている(図2参照)。また、図1に示されているように、容器131は、多孔質体110の端部11Aよりも下側に配置されている。
【0048】
容器131は、例えば、液体LQを収容する。容器131は、例えば、多孔質体110への液体LQの供給源である。また、容器131は、多孔質体110から放出されたガスG(微細気泡FB)を回収する回収部にもなり得る。減圧設備132は、第2配管13Yと第3配管13Zとを介して蓄気室138および多孔質体110内を減圧する設備であり、例えば真空ポンプである。加圧設備133は、第1配管13Xと第3配管13Zとを介して蓄気室138および多孔質体110内を加圧する設備であり、例えばエアコンプレッサである。レギュレータ134は、例えば、加圧設備133から供給される空気の供給圧を調整する圧力レギュレータである。流量計135は、第1配管13X中の空気の流量(供給量)を計測する計測器である。圧力計136は、第1配管13X中の空気の圧力(供給圧)を計測する計測器である。バルブ137は、第1配管13Xと第2配管13Yと第3配管13Zとのつなぎ目に設けられている。バルブ137によって、蓄気室138と減圧設備132との接続、および、蓄気室138と加圧設備133との接続が切り替え可能に構成されている。バルブ137は、例えば、電磁弁等の電気的に制御可能なバルブであることが好ましい。
【0049】
蓄気室138は、ここでは、両端(図2における端部13Aおよび他方の端部)が開口した円筒状(中空円筒状)の管である。蓄気室138は、容器131に収容された液体LQの吸入および排出ができるように構成されている。この実施形態では、蓄気室138は、第1接続孔13Rと第2接続孔(図示なし)とを備えている。図2に示されているように、第1接続孔13Rは、蓄気室138の一方の端部13A(図2では、多孔質体110側の端部)に設けられている。また、第2接続孔は、蓄気室138の他方の端部(図1では、バルブ137側の端部)に設けられている。この実施形態では、バルブ137と蓄気室138とガス供給管126と多孔質体110と容器131とは、第3配管13Zと接続されている。かかる接続を介して、液体LQが多孔体110の内腔を流れ、蓄気室138における液体LQの吸入および排出ができるように構成されている。
【0050】
この実施形態では、液体揺動機構130は、蓄気室138と減圧設備132との接続を介して多孔質体110内が減圧された場合に、一方の端部11Aから液体LQを多孔質体110内に吸入する。また、液体揺動機構130は、蓄気室138と加圧設備133との接続を介して多孔質体110内が加圧された場合に、一方の端部11Aから液体LQを多孔質体110外に排出する。液体揺動機構130は、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、液体LQを揺動させるように構成されている。この実施形態では、上記のとおり、多孔質体110の端部11Aが容器131に接続されている。このため、端部11Aにおける液体LQの吸入および排出を円滑に行うことができ、延いては、より効率よく微細気泡を発生させることができる。
【0051】
液体揺動機構130は、液体LQの揺動の間における、液体LQの平均レイノルズ数Reを8000以下に調節するように構成されることが好ましい。本明細書において、液体LQの平均レイノルズ数Reは、以下の式(1):
Re=ρUD/μ (1)
に基づいて算出される。上記式(1)中、ρは液体LQの粘度(kg/cm)であり、液体LQが水である場合はρ=998.2(kg/cm)である。Uは液体LQの粘性係数(Pa・s)であり、液体LQが水である場合はU=0.001(Pa・s)である。Dは多孔質体110の内径(m)である。Uは断面平均流速(m/s)である。断面平均流速Uは、例えば、多孔質体110から液体LQを排出している期間における、液体LQの液面の変位量(m)(ここでは、蓄気室138内における液面の変位量(m))を当該期間(s)で除すことによって算出することができる。平均レイノルズ数Reを上記範囲に設定することで、微細気泡をより効率よく発生させることができる。
【0052】
液体LQの平均レイノルズ数Reは、所望する微細気泡の気泡径、微細気泡の気泡径分布、微細気泡の発生量等によって適宜設定され得る。特に限定するものではないが、平均レイノルズ数Reは、例えば1000以上であるとよい。また、平均レイノルズ数Reは、例えば2300以下あるいは2300未満であってもよい。平均レイノルズ数Reは、例えば、加圧設備133による加圧の程度、バルブ137を開くタイミング、多孔質体110の内径等を変更することによって適宜設定され得る。なお、本明細書では、平均レイノルズ数Reが2300未満の流域を「層流域」、平均レイノルズ数Reが2300以上4000未満の流域を「遷移域」、平均レイノルズ数Reが4000以上の流域を「乱流域」と定義している。
【0053】
図示は省略しているが、装置100の一連の動作は、制御部によって制御されている。装置100の一連動作は、例えば、予め定められたプログラムに沿って駆動するコンピュータによって制御され得る。制御部の各機能は、例えば、該制御部を構成する各コンピュータの演算部(プロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)とも称される)、記憶部(メモリー、ハードディスク等)等のハードウェアと、ソフトウエアとが協働することによって処理され得る。制御部の構成に関しては、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため、ここでの説明を省略する。
【0054】
図3は、微細気泡発生装置100の動作を説明するフロー図である。図3に示された制御フローを実行する前に、多孔質体110と、ガス供給機構120と、液体揺動機構130と、を接続する。例えば、まず、多孔質体110と液体揺動機構130とを接続する。例えば、多孔質体110をガス供給管126の内部に収容しておき、第3配管13Zを介して、蓄気室138と多孔質体110と容器131とを接続する。このとき、第3配管13Zを介して多孔質体110の端部11Aを容器131と接続させる。ここでは、端部11Aに取り付けられた第3配管13Zの先端を、容器131内に収容された液体LQの中に配置する。次いで、蓄気室138の端部(図1におけるバルブ137側の端部)に取り付けられた第3配管13Zを、バルブ137と接続する。バルブ137を、予め第1配管13Xを介して加圧設備133とレギュレータ134と流量計135と圧力計136と接続させ、加圧ラインを構築しておくとよい。また、バルブ137を、予め第2配管13Yを介して減圧設備132と接続させ、減圧ラインを構築しておくとよい。
【0055】
次いで、多孔質体110とガス供給機構120とを接続する。上記のように第3配管13Zが接続された多孔質体110(ここでは、ガス供給管126の内部に配置された多孔質体110)に、配管127を接続させる。ここでは、配管127をガス供給管126の供給孔12Pに接続させる。なお、配管127には、予め供給源121とレギュレータ122と流量計123と圧力計124とバルブ125とを接続させておくとよい。
【0056】
装置100の各部を接続させたら、図3に示された制御フローを実行する。この制御フローでは、まず、多孔質体110を減圧ラインに接続する(ステップS1)。ここでは、例えば、バルブ137を減圧ライン側に切り替える。次いで、第3配管13Z内を減圧する(ステップS2)。例えば、減圧設備133のスイッチをオンにして、第3配管13Zを介して蓄気室138内の空気を吸引することによって、蓄気室138内と多孔体110の内腔とを減圧することができる。そうすると、容器131内の液体LQが第3配管13Zを介して吸引され、多孔質体110の内腔に流れ込む(ステップS3)。そして、液体LQは蓄気室138内に吸引される。このため、蓄気室138内での液体LQの液面が上昇する。
【0057】
次いで、吸引された液体LQの液面が所定の高さに達したかを判定する(ステップS4)。この実施形態では、蓄気室138内における、液体LQの液面が高さH1に達したか否かを判定する。蓄気室138内に液体LQの液面があれば、少なくとも多孔質体110の内腔が液体LQで満たされたことを確認することができる。液体LQの液面が蓄気室138内で高さH1に達したことをステップS4における判定の基準とすることによって、例えば、多孔質体110の円筒(内腔)内を十分に液体LQで満たすことができる。なお、高さH1は、多孔質体110の円筒内(内腔)容積に応じて適宜設定できる。
【0058】
ステップS4において、液体LQの液面が所定の高さ(ここでは高さH1)に達したと判定された場合(Yes)、多孔質体110を加圧ラインに接続する(ステップS5)。ここでは、例えば、バルブ137を加圧ライン側に切り替える。同時に、加圧設備133のスイッチをオンにして、蓄気室138内を加圧する(ステップS6)。このとき、加圧設備133から蓄気室138内に供給された空気が液体LQの液面を低下させ、該液体を蓄気室138および多孔質体110の内腔から容器131に排出する(ステップS7)。一方、ステップS4において、液体LQが所定の高さ(ここでは高さH1)に達したと判定されなかった場合(No)、図3に示されているように、ステップS3に戻る。
【0059】
次いで、ガス供給機構120のバルブ125を開く(ステップS8)。バルブ125を開くことで、多孔質体110に所定の供給圧に調整されたガスGを供給することができる。多孔質体110にガスGが供給されるとき、上記のとおり、液体LQが多孔質体110の内腔から容器131に向かって排出されている。このとき、多孔質体110の内表面111には、液体LQの排出によって、内表面111に沿う方向にせん断力が生じている。このタイミングで所定の供給圧でガスGが供給されることによって、ガスGが、細孔MPを介して多孔質体110の内腔に入り込む。これによって、微細気泡を発生させることができる(ステップS9)。
【0060】
ステップS8でバルブ125を開くタイミングは、特に限定されず、装置100の運転条件に応じて適宜設定され得る。このタイミングは、例えば、ステップS6における蓄気室138内の加圧と同時に設定され得る。蓄気室138内の加圧と同時にバルブ125を開くことによって、微細気泡発生期間をより長くすることができ、延いては微細気泡の発生効率を向上することができる。
【0061】
次いで、排出された液体LQの液面が所定の高さに達したかを判定する(ステップS10)。この実施形態では、蓄気室138内における液体LQの液面が高さH2に達した否かを判定する。高さH2は、上記高さH1よりも容器131側に定められ得る。液体LQの液面が蓄気室138内における高さH2に達したことをステップS4における判定の基準とすることによって、例えば、蓄気室138内の気体が多孔質体110の円筒(内腔)を通して容器131に排出されないようにすることができる。
【0062】
ステップS10において、液体LQの液面が所定の高さ(ここでは高さH2)に達したと判定された場合(Yes)、バルブ125を閉じる(ステップS11)。バルブ125を閉じることによって、ガス供給管126へのガスGの供給が停止するため、やがて微細気泡が発生されなくなる。ステップS11の後は、ステップS1に戻り(RETURN)、図3に示された制御フローを繰り返す。一方、一方、ステップS10において、液体LQの液面が所定の高さ(ここでは高さH2)に達したと判定されなかった場合(No)、図3に示されているように、ステップS7に戻る。
【0063】
ここで開示される技術によると、装置100を用いて、液体LQ中に微細気泡を発生させる方法が提供される。かかる方法によって、より効率よく微細気泡を発生させることができる。
【0064】
以上、図1図3に従って、ここで開示される微細気泡発生装置の第1実施形態を説明した。しかし、ここで開示される微細気泡発生装置は、これに限定されず、他の変形例を含み得る。例えば、上述した構成の装置100では、ガス供給機構120は、液体LQの揺動の状況に応じてガスGの供給開始および供給停止を切り替えている。しかし、これに限定されない。例えば、ガス供給機構120は、液体LQの揺動の状況に応じてガスGの供給圧を調節するように構成されていてもよい。例えば、上記第1実施形態においてガスGが多孔質体110に供給されている間に供給圧P1でガスGを供給し、上記第1実施形態においてガスGの供給が停止されている間に供給圧P1よりも小さい供給圧P2(P2>0)でガスGを供給するように構成されてもよい。液体LQの揺動の状況に応じてガスGの供給圧を変化させることによっても、より効率よく微細気泡を発生させることができる。供給圧P1は、微細気泡を発生できる大きさであれば特に限定されず、多孔質体110の平均細孔径、所望する微細気泡のサイズ、所望する微細気泡の量等に応じて適宜設定され得る。供給圧P2は、多孔質体110の細孔MP(ここでは貫通孔)を介して液体LQを外部に漏出させず、かつ、微細気泡を発生させない大きさであれば、特に限定されない。
【0065】
また、上述した構成の装置100の動作では、バルブ137による減圧ライン側への切り替えおよび加圧ライン側への切り替えと、バルブ125の開閉と、を同じタイミングで行っている。しかし、これに限定されない。装置100の運転条件によっては、多孔質体110の細孔MPの内部に液体LQが浸入していることがある。この状態でバルブ125を開いてガスGを供給しても、まずは細孔MP内に浸入した液体LQを排出させる必要があり、かかる液体LQの排出に必要な期間は、微細気泡を発生させることができない。この場合、多孔質体110の内腔から液体LQを排出させるタイミングと、微細気泡が発生するタイミングとを合わせられないため、気泡径のコントロールが難しくなり得る。このような場合において、バルブ137を加圧ライン側に切り替えるタイミングと、バルブ125を開いてガスGを供給するタイミングとを異ならせてもよい。例えば、バルブ137を先に加圧ライン側に切り替えておき、液体LQの排出を始めた後で、バルブ125を開いてガスGを多孔質体に供給してもよい。
【0066】
次に、ここで開示される技術の第1実施形態に関する試験例を説明する。なお、以下に示す試験例は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。
【0067】
<試験1>
試験1では、第1実施形態に係る微細気泡発生装置を用いて微細気泡を発生させた。試験1で用いられた装置の構成は、図1および図2に示されているとおりである。このため、以下の装置の各名称に付された参照番号は、図1または図2に記載の番号である。
【0068】
-実施例1(実施例1A~実施例1D)-
多孔質体110として、平均細孔径が0.5μmであり、気孔率が36%のアルミナを主成分とした多孔質体を用いた。まず、円筒状の多孔質体110の内側に液体LQ(水)が流通するように第3配管13Zを接続した。次いで、第3配管13Zの上段(多孔質体110の上段)に蓄気室138を設けた。さらに、蓄気室138に加圧設備133(エアコンプレッサー)と減圧設備132(真空ポンプ)とを取り付け、バルブ137(電磁弁)で加圧ラインと減圧ラインを切り替えられるようにした。多孔質体110の下段(先端)側の第3配管13Zを容器131に入れて液体LQに漬かる状態とした。
【0069】
次いで、多孔質体110の外表面112からガスG(空気)を供給できるように、ガス供給管126に配管127を接続し、空気が多孔質体110の外表面112から細孔MP(貫通孔)を介して内表面111側に供給されるようにした。配管127の途中に、ガスGの供給のタイミングを制御できるようにレギュレータ122、流量計123、圧力計124、およびバルブ125(電磁弁)を接続した。
【0070】
液体LQを多孔質体110の内腔で加速的に上下運動させるため、まず、多孔質体110の内腔が全て液体LQに漬かるまで(ここでは、蓄気室138の高さH1まで)、蓄気室138の空気を減圧設備132で吸引した。次いで、バルブ137を加圧設備133側に切り替えて蓄気室138に空気を送り込むことで、液体LQの液面を蓄気室138の高さH2まで低下させ、多孔質体110の内腔の液体LQを押し出した。かかる蓄気室138の減圧および加圧を繰り返すことで、多孔質体110の内腔の液体LQを加速的に上下運動させた。多孔質体110の内腔の液体LQが押し下げられているタイミングでバルブ125を開き、ガスGを供給した。なお、バルブ125を開いた状態とした時間は、多孔質体110からの液体LQが吐出される時間と同じとなるように設定した。また、バルブ125を開くタイミングと、バルブ137を加圧ライン側に切り替えるタイミングとを同時とした。
【0071】
そして、多孔質体110から容器131内の液体LQ中に放出された気泡の画像を、ハイスピードカメラを用いて撮影した。その後、画像解析ソフト「ImageJ」を用いて、取得した画像からランダムに300個の気泡を選択し、気泡のザウター径(μm)、個数平均径(μm)、D10(μm)、D50(μm)、および、D90(μm)を算出した。また、個数平均径の変動係数(CV値)(%)を算出した。結果を表1の該当欄に示す。ザウター径(μm)は、解析対象となった気泡の、体積の総和と表面積の総和との比を計算することによって得られた値である。個数平均径(μm)は、解析対象となった気泡の気泡径の算術平均値である。D10(μm)は、解析対象となった気泡の、気泡径が小さい方からの累積が10%である気泡径である。D50(μm)は、解析対象となった気泡の、気泡径が小さい方からの累積が50%である気泡径である。D90(μm)は、解析対象となった気泡の気泡径が小さい方からの累積が90%である気泡径である。
【0072】
なお、ここでは、上記多孔質体を用いた場合の平均レイノルズ数Reと、該多孔質体から発生される気泡のザウター径とが、表1の該当欄に示される値となる諸条件を設定した。表1に記載のレイノルズ数Reは、上記式(1)に基づいて算出された数値である。かかる諸条件に関して、各例における、平均細孔径(μm)、内径(mm)、および長さ(mm)の多孔質体条件;流量(L/min)、平均レイノルズ数Re、流体場、圧力(MPa)、電磁弁開度(%)、および周期(Hz)の液体条件;平均供給圧(MPa)、および電磁弁開度(%)のガス条件;を、表1の該当欄に示した。表1に示された液体条件およびガス条件は、各例において発生する気泡の気泡径が最も小さくなるように設定された条件である。
【0073】
液体条件における表1中の「電磁弁開度(%)」は、揺動の一周期を100%としたときの、バルブ137が加圧ラインに接続された期間の割合(%)である。また、ガスGの供給に関する表1中の「電磁弁開度(%)」は、揺動の一周期を100%としたときの、バルブ125が開状態であった期間の割合(%)である。ガスGの供給および液体LQの揺動に関してともに電磁弁開度が50%であった場合は、揺動の一周期のうちの50%の期間(半周期)を、加圧ラインへの接続状態とし、かつ、ガスGの供給状態とした。また、ガスGの供給および液体LQの揺動に関してともに電磁弁開度が20%であった場合は、揺動の一周期のうちの20%の期間を、加圧ラインへの接続状態とし、かつ、ガスGの供給状態とした。また、ここでは、液体LQの液面が蓄気室138の高さH1から低下して高さH2まで達し、高さH2から上昇して高さH1まで達するまでの期間を、液体LQの揺動の一周期とした。
【0074】
-実施例2(実施例2A~実施例2C)-
多孔質体110として、平均細孔径が1μm、気孔率が38%の多孔質体を用いた。それ以外は実施例1と同じ部材および手順を用いて、各例のデータを取得した。なお、かかるデータと諸条件とは、表1の各該当欄に示されている。
【0075】
-実施例3(実施例3A~実施例3D)-
多孔質体110として、平均細孔径が3μm、気孔率が40%の多孔質体を用いた。それ以外は実施例1と同じ部材および手順を用いて、各例のデータを取得した。なお、かかるデータと諸条件とは、表1の各該当欄に示されている。
【0076】
なお、実施例3Bでは、バルブ125を開いた状態とした時間が、多孔質体110からの液体LQが吐出される時間よりも短くなるように設定した。バルブ125を開くタイミングと、バルブ137を加圧ライン側に切り替えるタイミングとを異ならせた。本例では、バルブ137を加圧ライン側に切り替えた直後の期間だけ、バルブ125を開いた状態とし、気泡を発生させた。揺動の一周期を100%とすると、バルブ125を開いた状態とした期間は、1%であった。
【0077】
-実施例4(実施例4Aおよび実施例4B)-
多孔質体110として、平均細孔径が10μm、気孔率が42%の多孔質体を用いた。それ以外は実施例1と同じ部材および手順を用いて、各例のデータを取得した。なお、かかるデータと諸条件とは、表1の各該当欄に示されている。
【0078】
【表1】
【0079】
<試験2(比較試験)>
試験2では、液循環方式(インライン方式)の気泡発生装置を用いて気泡を発生させた。図4は、試験例2の気泡発生装置2の概略図である。図4に示されているように、円筒状の多孔質体21の内側に液体LQが流通するように、配管22aを介して、多孔質体21と送液ポンプ22bとを接続した。送液ポンプ22b側の配管22aの先端を容器23内の液体LQ中に浸漬させて、多孔質体21内を液体LQが定速度で循環するようにした。送液ポンプ22bには、送液ポンプ22bの電圧を調節する電圧調節器22cを接続させた。また、配管22aに、圧力計22dと、バルブ22e(ボールバルブ)と、圧力計22fとを接続させた。多孔質体21に、さらに配管24を接続し、配管24を介して容器23内に液体LQを排出できるようにした。そして、多孔質体21の外表面からガスGを供給できるように、多孔質体21をガス供給管25aに収容し、ガス供給管25aに配管25bを接続した。配管25bには、ガスGの供給源25cと、レギュレータ25dと、流量計25eと、圧力計25fと、を接続させた。かかる構成によって、ガスGが多孔質体21の外表面から細孔を介して内表面に供給されるとともに、気泡を発生させるようにした。
【0080】
-比較例1(比較例1A~比較例1E)-
多孔質体21として、平均細孔径が0.5μm、気孔率が36%の多孔質体を用いた。多孔質体21にガスGを供給して、気泡を発生させた。送液ポンプ22bの電圧と、バルブ22eによる配管22aの開度とを調整することで、レイノルズ数Reが所望の値になるようにした。かかるレイノルズ数Reを、表2の該当欄に示す。また、レギュレータ25dを用いて、ガスGの供給圧を調整した。かかる供給圧は、表2に示された各レイノルズ数Reで多孔質体21から気泡が発生する下限の圧力値に設定された。
【0081】
そして、多孔質体21から容器23内の液体LQ中に放出された気泡の画像を、ハイスピードカメラを用いて撮影した。その後、上記試験1と同じ手法を用いて、気泡のザウター径(μm)、個数平均径(μm)、個数平均径の変動係数(CV値)(%)、D10(μm)、D50(μm)、および、D90(μm)を算出した。結果を表2の該当欄に示す。
【0082】
なお、表2には、各例についての多孔質体の条件、液体条件、およびガス条件が併記されている。
【0083】
-比較例2(比較例2A~比較例2E)-
多孔質体21として、平均細孔径が1μm、気孔率が38%の多孔質体を用いた。それ以外は比較例1と同じ部材および手順を用いて、各例のデータを取得した。なお、かかるデータと諸条件とは、表2の各該当欄に示されている。
【0084】
-比較例3(比較例3A~比較例3E)-
多孔質体21として、平均細孔径が3μm、気孔率が40%の多孔質体を用いた。それ以外は比較例1と同じ部材および手順を用いて、各例のデータを取得した。なお、かかるデータと諸条件とは、表2の各該当欄に示されている。
【0085】
-比較例4(比較例4A~比較例4D)-
多孔質体21として、平均細孔径が10μm、気孔率が42%の多孔質体を用いた。それ以外は比較例1と同じ部材および手順を用いて、各例のデータを取得した。なお、かかるデータと諸条件とは、表2の各該当欄に示されている。また、比較例4Aでは、発生した気泡が合一化してしまい、データを取得できなかった。表2における比較例4Aの「バブル特性」欄に記載の「-」は、データが取得できなかったことを示している。
【0086】
【表2-1】
【表2-2】
【0087】
<試験3(比較試験)>
試験3では、浸漬方式の気泡発生装置を用いて気泡を発生させた。図5は、試験例3の気泡発生装置3の概略図である。図5に示されているように、円筒状の多孔質体31の内側にガスGが流通するように、多孔質体31に配管32を接続した。配管32に接続した多孔質体31を容器33内の液体LQ(水)に浸漬させた。その後、配管32を介して、ガスGを多孔質体31の内部に供給した。ガスGが、多孔体31の内部から外部に、細孔を介して液体LQ中に放出されることによって、多孔質体31の外表面から気泡が発生するようにした。なお、配管32には、ガスGの供給源34と、レギュレータ35と、流量計36と、圧力計37と、を接続させた。
【0088】
-比較例5-
多孔質体31として、平均細孔径が0.5μm、気孔率が36%の多孔質体を用いた。多孔質体31にガスGを供給して、気泡を発生させた。レギュレータ35を用いて、ガスGの供給圧を調整した。かかる供給圧は、多孔質体31から気泡が発生する下限の圧力値に設定された。表3に、本例についての多孔質体の条件、およびガス供給条件を示す。
【0089】
そして、多孔質体31から容器33内の液体LQ中に放出された気泡の画像を、ハイスピードカメラを用いて撮影した。その後、上記試験1と同じ手法を用いて、気泡のザウター径(μm)、個数平均径(μm)、個数平均径の変動係数(CV値)(%)、D10(μm)、D50(μm)、および、D90(μm)を算出した。結果を表3の該当欄に示す。
【0090】
-比較例6-
多孔質体31として、平均細孔径が1μm、気孔率が38%の多孔質体を用いた。それ以外は比較例5と同じ部材および手順を用いて、各例のデータを取得した。なお、かかるデータと諸条件とは、表3の各該当欄に示されている。
【0091】
-比較例7-
多孔質体31として、平均細孔径が3μm、気孔率が40%の多孔質体を用いた。それ以外は比較例5と同じ部材および手順を用いて、各例のデータを取得した。なお、かかるデータと諸条件とは、表3の各該当欄に示されている。
【0092】
【表3】
【0093】
表1~表3に示された結果から、多孔質体110と、ガス供給機構120と、液体揺動機構130と、を備えており、液体LQが揺動されている間に、多孔質体110に供給されたガスGを複数の細孔MPを介して液体中LQに放出させるように構成された微細気泡発生装置100を用いることによって、微細気泡を発生させることができることがわかった。特に、平均レイノルズ数Reが2300未満の層流域に関して、装置100を用いた場合、他の装置2または装置3を用いた場合よりも、微細な気泡を発生できることがわかった。このことから、装置100によって、より効率的に微細気泡を発生させることができることがわかった。
【0094】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る微細気泡発生装置の概略図である。図6に示されているように、微細気泡発生装置200(以下、単に「装置200」ともいう。)は、多孔質体210と、ガス供給機構220と、液体揺動機構230と、を備えている。以下、第1実施形態と共通する事柄、第1実施形態と異なる事柄であっても、ここで開示される技術を特徴づけない事柄の説明については、省略することがある。
【0095】
多孔質体210は、例えば、液体LQに接触するとともに微細気泡FBを発生させる複数の細孔を有する第1面を備える。図6に示されているように、多孔質体210は、一端(図6における端部21A)が閉じ、他端(図6における端部21B)が開口した円筒状(中空円筒状)に構成されている。この実施形態では、多孔質体210の外表面212が第1面である。ここでは、外表面212は、複数の細孔MPを有している。複数の細孔MPは、複数の貫通孔であり得る。この実施形態では、ガス供給機構220は、多孔質体210の内表面側211からガスGを供給するように構成されている。なお、図6に示された実施形態では、容器側231の端部21Aにおける外表面212に上記点Qがあり、反対側の端部21Bにおける外表面212に上記点Pがある。かかる構成によっても、微細気泡をより効率よく発生させることができる。
【0096】
多孔質体210は、例えば、支持部材290を備えている。支持部材290は、例えば、多孔質体210の端部21Bに装着されている。支持部材290は、図6に示されているように、ガス供給機構220の配管227と接続されている。支持部材290は、例えば、貫通孔を有しており、該貫通孔に配管227が装着されることで、多孔体210の内表面側(内腔)にガスGが供給されるように構成されている。
【0097】
図6に示されているように、ガス供給機構220は、供給源221と、レギュレータ222と、流量計223と、圧力計224と、バルブ225と、配管227と、を有している。図2に示されているように、供給源221と、レギュレータ222と、流量計223と、圧力計224と、バルブ225と、は、配管227を介して相互に接続されている。図6に示されているように、配管227は、蓄気室238に設けられた貫通孔238hを通り、多孔質体210の端部21Bに接続されている。配管227は、供給源221から多孔質体210までのガスGの流路となっている。
【0098】
この実施形態では、液体揺動機構230は、多孔質体210の外表面212に沿って、一方の端部21Aから他方の端部21Bに向かう方向L1、および、他方の端部21Bから一方の端部21Aに向かう方向L2に液体LQを揺動させるように構成されている。図6に示されているように、多孔質体210は、円筒状の蓄気室238内に収容されている。このため、液体LQを、第1接続孔23Rから第2接続孔23Sに向かう方向(端部23Aから端部23Bに向かう方向)L1、および、蓄気室238の第2接続孔23Sから第1接続孔23Rに向かう方向(端部23Bから端部23Aに向かう方向)L2で揺動させるとよい。
【0099】
図6に示されているように、液体揺動機構230は、容器231と、減圧設備232と、加圧設備233と、レギュレータ234と、流量計235と、圧力計236と、バルブ237と、蓄気室238と、配管239と、を備えている。配管239は、第1配管23Xと、第2配管23Yと、第3配管23Zと、を備えている。図6に示されているように、液体揺動機構230では、第1配管23Xを介した加圧ラインと、第2配管23Yを介した減圧ラインと、が構築されている。また、蓄気室238の第1接続孔23Rと第2接続孔23Sとには、それぞれ第3配管23Zが接続されている。そして、第1接続孔23Rに接続された第3配管23Zの先端は、容器231内の液体中に配置されている。この実施形態では、第3配管23Zと蓄気室238とが、多孔質体110の外表面212に沿った液体LQの流路となっている。なお、この実施形態では、多孔質体210の端部21Aが下側に、端部21Bが上側になるように配置されている。また、図6に示されているように、容器231は、多孔質体210の端部21Aよりも下側に配置されている。
【0100】
この実施形態では、液体揺動機構230は、蓄気室238内が減圧された場合に、容器231から液体LQを蓄気室238内に吸入する。また、液体揺動機構130は、蓄気室238内が加圧された場合に、蓄気室238から液体LQを容器231に排出する。液体揺動機構230は、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、液体LQを揺動させるように構成されている。この実施形態では、上記のとおり、蓄気室238内に多孔質体210が収容されている。かかる構成によると、図2の実施形態と比較して気泡生成空間が増加するため、流路内での気泡の合一化を抑制する観点から、好ましい。このため、平均細孔径がより大きな多孔質体の利用、より高い供給ガス流量での操作が可能になると想定される。結果的に、かかる構成によると、単一多孔質体当たりの気泡の微細化の促進、気体発生量の増加、ガス供給圧の低減等の効果を実現することができる。
【0101】
以下、図3を参照しつつ、装置200の動作を説明する。図3に示された制御フローを実行する前に、多孔質体210と、ガス供給機構220と、液体揺動機構230と、を接続する。例えば、まず、多孔質体210と液体揺動機構230とを接続する。例えば、多孔質体210を蓄気室238の内部に収容しておき、第3配管23Zを介して、蓄気室238と容器231と、蓄気室238とバルブ237と、を接続する。このとき、第1接続孔23Rに取り付けられた第3配管23Zの先端を、容器231内に収容された液体LQの中に配置する。次いで、バルブ237に第1配管23Xと第2配管23Yとを接続し、加圧ラインと減圧ラインとを構築する。
【0102】
次いで、多孔質体210とガス供給機構220とを接続する。上記のように、蓄気室238の内部に配置された多孔質体210に、配管227を接続させる。ここでは、配管227を多孔質体210の端部21Bに装着された支持部材290に接続させる。
【0103】
装置200の各部を接続させたら、図3に示された制御フローを実行する。この制御フローでは、まず、蓄気室238を減圧ラインに接続する(ステップS1)。次いで、第3配管23Z内を減圧する(ステップS2)。例えば、減圧設備233のスイッチをオンにして、第3配管23Zを介して蓄気室238内の空気を吸引することによって、蓄気室238内を減圧することができる。そうすると、容器231内の液体LQが第3配管23Zを介して吸引され、蓄気室238内に流れ込む(ステップS3)。このため、蓄気室238内での液体LQの液面が上昇する。
【0104】
次いで、吸引された液体LQの液面が所定の高さに達したかを判定する(ステップS4)。この実施形態では、蓄気室238内における、液体LQの液面が高さH3に達したかを判定する。この実施形態では、高さH3は、多孔質体210の端部21Bよりも蓄気室238の端部23B側に設定され得る。
【0105】
ステップS4において、液体LQの液面が所定の高さ(ここでは、高さH3)に達したと判定された場合(Yes)、多孔質体210を加圧ラインに接続する(ステップS5)。ここでは、例えば、バルブ237を加圧ライン側に切り替える。同時に、加圧設備233のスイッチをオンにして、蓄気室238内を加圧する(ステップS6)。このとき、加圧設備233から蓄気室238内に供給された空気が液体LQの液面を低下させ、該液体を蓄気室238から容器231に排出する(ステップS7)。一方、ステップS4において、液体LQが所定の高さに達したと判定されない場合(No)、ステップS3に戻る。
【0106】
次いで、ガス供給機構220のバルブ225を開く(ステップS8)。バルブ225を開くことで、多孔質体210にガスGを供給することができる。多孔質体210にガスGが供給されるとき、上記のとおり、液体LQが蓄気室238から容器231に向かって排出されている。このとき、多孔質体210の外表面212には、液体LQの排出によって、外表面212に沿う方向にせん断力が生じている。このタイミングで所定の供給圧でガスGが多孔質体210の内表面211側に供給されることによって、ガスGが、細孔MPを介して多孔質体210の外に放出され、微細気泡を発生させることができる(ステップS9)。なお、ステップS8でバルブ225を開くタイミングは、特に限定されず、装置200の運転条件に応じて適宜設定され得る。
【0107】
次いで、排出された液体LQの液面が所定の高さに達したかを判定する(ステップS10)。この実施形態では、蓄気室138内における液体LQの液面が高さH4に達したことを、次のステップに進む判定基準とする。高さH4は、上記高さH3よりも容器131側に定められ得る。高さH4は、例えば、多孔質体210の端部21Bよりも蓄気室238の端部23B側に定められ得る。液体LQの液面が蓄気室138内における高さH4であることをステップS4における判定の基準とすることによって、例えば、蓄気室238内の気体が多孔質体110の円筒(内腔)を通して容器131に排出されないようにすることができる。
【0108】
ステップS10において、液体LQの液面が所定の高さ(ここでは、高さH4)に達したと判定された場合(Yes)、バルブ225を閉じる(ステップS11)。バルブ225を閉じることによって、蓄気室238へのガスGの供給が停止するため、次第に微細気泡が発生されなくなる。ステップS11の後は、ステップS1に戻り(RETURN)、図3に示された制御フローを繰り返す。一方、一方、ステップS10において、液体LQの液面が所定の高さ(ここでは、高さH4)に達したと判定されない場合(No)、ステップS7に戻る。
【0109】
<第3実施形態>
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、気泡発生部である多孔質体から放出されたガス(ここでは、微細気泡)を回収する回収部(上記第1実施形態では容器131、上記第2実施形態では容器231)が、多孔質体110または多孔質体210が配置された部位よりも下側に配置されていた。しかし、これに限定されない。回収部は、気泡発生部が配置された部位よりも上側に配置されていてもよい。図7は、第3実施形態に係る微細気泡発生装置の概略図である。図7に示されているように、微細気泡発生装置300(以下、単に「装置300」ともいう。)は、多孔質体310と、ガス供給機構320と、液体揺動機構330と、を備えている。以下、第1実施形態と共通する事柄、第1実施形態と異なる事柄であっても、ここで開示される技術を特徴づけない事柄の説明については、省略することがある。
【0110】
図7に示されているように、多孔質体310は、一方の端部31Aが上側に、他方の端部31Bが下側になるように配置されている。この実施形態では、多孔質体310の端部31Aは、配管339(ここでは第3配管33Z)を介して容器331と接続されている。また、端部31Bは、配管339(ここでは第3配管33Z)を介して蓄気室338と接続されている。
【0111】
この実施形態では、液体揺動機構330は、多孔質体310の内表面311に沿って、一方の端部31Aから他方の端部31Bに向かう方向M1、および、他方の端部31Bから一方の端部31Aに向かう方向M2に液体LQを揺動させるように構成されている。図7に示されているように、液体揺動機構330は、容器331と、加圧設備333と、レギュレータ334と、流量計335と、圧力計336と、第1バルブ3371と、第2バルブ3372と、蓄気室338と、配管339と、を備えている。配管339は、例えば、第1配管33Xと、第3配管33Zと、を備えている。この実施形態では、容器331は、多孔質体310の端部31Aよりも上側に配置されているとともに、第3配管33Zを介して端部31Aと接続されている。そして、端部31Aに接続された第3配管33Zの先端は、容器331内の液体LQ中に配置されている。また、この実施形態では、蓄気室338は、第3配管33Zを介して、多孔質体310の端部31Bと接続されている。図7に示されているように、第3配管33Zを介して、多孔質体310の端部31Bと、蓄気室338の第1接続孔33Rとが接続されている。図7に示された実施形態では、第3配管33Zを介して、容器331から多孔質体310の内腔を通って、蓄気室338に至るまでが、液体LQの流路となっている。
【0112】
この実施形態では、容器331から多孔質体310への液体LQの供給状態は、第1バルブ3371(例えば、ボールバルブ)によって、切り替えられるように構成されている。第1バルブ3371は、例えば、第3配管33Z上に配置されている。ここでは、第1バルブ3371を開くことによって、容器331内の液体LQは、重力によって第3配管33Zに入り込み、多孔質体310の内腔を通って、蓄気室338に至る。また、例えば、第1バルブ3371を閉じることによって、多孔質体310への液体LQの供給を停止し、延いては、装置300の運転を停止することができる。
【0113】
この実施形態では、蓄気室338は、さらに第1配管33Xを介して加圧設備333と接続されている。例えば、液体揺動機構330では、第1配管33Xを介した加圧ラインが構築されている。図7に示されているように、第1配管33Xは、蓄気室338の第2接続孔33Sに接続されている。
【0114】
また、この実施形態では、蓄気室338と加圧設備333との接続および非接続は、第2バルブ3372(例えば、電磁弁)によって切替可能に構成されている。第2バルブ3372は、例えば、第1配管33X上に配置されている。ここでは、第2バルブ3372を開くことによって、蓄気室338と加圧設備333とが接続状態となり、蓄気室338内が加圧された状態となる。また、第2バルブ3372を閉じることによって、蓄気室338と加圧設備333とが非接続状態となる。
【0115】
この実施形態では、液体揺動機構330は、蓄気室338と加圧設備333とが接続されていない場合に、端部31Aから液体LQを多孔質体310内に吸入する。また、液体揺動機構330は、蓄気室338と加圧設備333とが接続されて、多孔質体310内が加圧された場合に、端部31Aから液体LQを多孔質体310外に排出する。液体揺動機構330は、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、液体LQを揺動させるように構成されている。この実施形態では、上記のとおり、容器331が多孔質体310よりも上側に配置されている。かかる構成によると、重力によって、液体LQを容器331から多孔質体310内に供給することができ、図2および図6の実施形態で用いられた減圧設備の設置を省略することができる。このため、装置300では、ここで開示される技術の効果に加えて、装置の構成の簡略化する効果を実現することができる。
【0116】
次に、ここで開示される技術の第3実施形態に関する試験例を説明する。なお、以下に示す試験例は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。
【0117】
<試験4>
試験4では、第3実施形態に係る微細気泡発生装置を用いて微細気泡を発生させた。試験4で用いられた装置の構成は、図7に示されているとおりである。このため、以下の装置の各名称に付された参照番号は、図7に記載の番号である。
【0118】
-実施例31~実施例33-
多孔質体310として、平均細孔径が0.5μmであり、気孔率が36%のアルミナを主成分とした多孔質体を用いた。まず、円筒状の多孔質体310の内側に液体LQ(水)が流通するように、多孔質体310の端部31Aと端部31Bとに第3配管33Zを接続した。次いで、端部31A側の第3配管33Zの上段(多孔質体310の上段)に空の容器331を設けた。また、端部31B側の第3配管33Zに、蓄気室338を接続した。さらに、蓄気室338に加圧設備333(エアコンプレッサー)を取り付け、第2バルブ3372(電磁弁)で蓄気室338と加圧設備333との接続および非接続を切り替えられるようにした。
【0119】
次いで、多孔質体310の外表面312からガスG(空気)を供給できるように、ガス供給管326に配管327を接続し、供給源321から空気が多孔質体310の外表面312から細孔(貫通孔)を介して内表面311側に供給されるようにした。配管327の途中に、ガスGの供給のタイミングを制御できるようにレギュレータ322、流量計323、圧力計324、およびバルブ325(電磁弁)を接続した。
【0120】
次いで、第1バルブ3371が閉じた状態であることを確認し、容器331に液体LQを注ぎ込んだ。次いで、ガス供給機構320のバルブ325と、液体揺動機構330の第2バルブ3372とを開いた。次いで、第1バルブ3371を徐々に開き、容器331内の液体LQを第3配管33Zに流し込んだ。液体LQの液面が蓄気室338内の高さH5に達したら、第2バルブ3372の開度(%)を所定の開度に設定し、加圧設備333による加圧力(MPa)を調整し、液体LQの液面が蓄気室338内の高さH5と高さH6との間で上下運動するようにした。各例における平均レイノルズ数Reを、表4の該当欄に示す。なお、図7に示されているように、蓄気室338内において、高さH5は、高さH6よりも高い位置(ここでは、第1配管33X側)に設定された。なお、各例の第2バルブ3372の開度(%)と加圧設備333による加圧力(MPa)とは、表4の液体条件における「電磁弁開度(%)」欄および「圧力(MPa)」欄に記載のとおりである。表4の液体条件における「電磁弁開度(%)」は、揺動の一周期を100%としたときの、第2バルブ3372が加圧ラインに接続された期間の割合(%)である。ここでは、液体LQの液面が蓄気室338の高さH5から低下して高さH6まで達し、高さH6から上昇して高さH5まで達するまでの期間を、液体LQの揺動の一周期とした。
【0121】
また、ガス供給機構320のバルブ327の開度(%)を所定の開度に設定し、ガスGの供給圧(MPa)を調整して、気泡を発生させた。なお、各例のバルブ327の開度(%)とガスGの供給圧(MPa)とは、表4のガス条件における「電磁弁開度(%)」欄および「圧力(MPa)」欄に記載のとおりである。表4のガス条件における「電磁弁開度(%)」は、揺動の一周期を100%としたときの、バルブ327が開状態であった期間の割合(%)である。
【0122】
実施例31および実施例33に関して、液体条件の電磁弁開度が20%であり、ガス条件の電磁弁開度が99%であるのは、揺動の一周期のうちの20%の期間を加圧ラインへの接続状態とし、かつ、揺動の一周期全体をガスGの供給状態としたことを意味している。実施例32に関して、液体条件の電磁弁開度とガス条件の電磁弁開度とがともに20%であるのは、揺動の一周期のうちの20%の期間を、加圧ラインへの接続状態とし、かつ、ガスGの供給状態としたことを意味している。
【0123】
多孔質体310から容器331内の液体LQ中に放出された気泡の画像を、ハイスピードカメラを用いて撮影した。その後、上記試験1と同じ手法を用いて、気泡のザウター径(μm)、個数平均径(μm)、個数平均径の変動係数(CV値)(%)、D10(μm)、D50(μm)、および、D90(μm)を算出した。結果を表4の該当欄に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
表4に示された結果から、第3実施形態に係る微細気泡発生装置300を用いることによって、微細気泡FBを発生させることができるとわかった。上述したとおり、装置300は、第1実施形態および第2実施形態の微細気泡発生装置が備える減圧設備を有していない。しかし、試験4によって、減圧設備を有さない液体揺動機構330を備える装置300を用いる場合でも、液体LQが収容された容器331を多孔質体310よりも上側に配置することによって、重力によって液体LQを多孔質体310に吸入させることができるとわかった。
【0126】
上述のとおり、この実施形態では、容器331を備えている。容器331は、液体LQを収容する、多孔質体310への液体LQの供給源である。容器331は、多孔質体310よりも上側に配置されている。かかる構成の装置300では、液体LQの供給源である容器331が、微細気泡FBを発生する多孔質体310よりも上側に配置されることによって、多孔質体310への液体LQの供給に、重力を利用することができる。このため、減圧設備を有さない液体揺動機構330を用いる場合でも、ここで開示される技術の効果を実現することができる。また、減圧設備を省略することによる装置の簡略化効果を実現することができる。
【0127】
以上、多孔質体の第1面(気体発生面)が内表面である場合を例に挙げて、第3実施形態を説明した。しかし、これに限定されない。多孔質体の第1面(気体発生面)が外表面である場合でも、上述の効果と同様の効果を実現することができる。
【0128】
なお、ここで開示される技術は、以下の項目1~項目14に記載の製造方法を包含する。
【0129】
[項目1]
液体中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置であって、
前記液体に接触するとともに前記微細気泡を発生させる複数の細孔を有する第1面を備える多孔質体と、
前記多孔質体にガスを供給するガス供給機構と、
前記第1面と接触する前記液体を該第1面に沿う方向に揺動させる液体揺動機構と、
を備えており、
前記液体揺動機構によって前記液体が揺動されている間に、前記多孔質体に供給された前記ガスを前記複数の細孔を介して前記液体中に放出させるように構成されている、微細気泡発生装置。
[項目2]
前記多孔質体は、両端が開口した円筒状に構成されており、該多孔質体の内表面が複数の貫通孔である前記複数の細孔を有する前記第1面であり、
前記ガス供給機構は、前記多孔質体の外表面側から前記ガスを供給するように構成されている、項目1に記載の微細気泡発生装置。
[項目3]
前記ガス供給機構は、内部に前記多孔質体を配置する、両端が開口した円筒状のガス供給管を有しており、該ガス供給管の内壁面と前記多孔質体の外表面との間に前記ガスを供給するように構成されている、項目2に記載の微細気泡発生装置。
[項目4]
前記多孔質体は、一端が閉じ、他端が開口した円筒状に構成されており、該多孔質体の外表面が複数の貫通孔である前記複数の細孔を有する前記第1面であり、
前記ガス供給機構は、前記多孔質体の内表面側から前記ガスを供給するように構成されている、項目1に記載の微細気泡発生装置。
[項目5]
前記ガス供給機構は、前記揺動の状況に応じて、前記ガスの供給開始および供給停止を切り替え可能に構成されている、項目1~4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目6]
前記ガス供給機構は、前記ガスの供給源と、該供給源から前記多孔質体までの前記ガスの流路となる配管と、該配管上に設けられたバルブと、を有しており、前記揺動の状況に応じて該バルブを開閉することによって前記多孔質体への前記ガスの供給開始および供給停止を切り替えるように構成されている、項目1~5のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目7]
前記液体揺動機構は、前記円筒状多孔質体の一方の端部から他方の端部に向かう方向、および、前記他方の端部から前記一方の端部に向かう方向に前記液体を揺動させるように構成されている、項目2~6のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目8]
前記液体揺動機構は、前記液体を収容する容器と、減圧設備と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、配管と、を備えており、
前記配管を介して、前記多孔質体の一方の端部が前記容器と接続されており、該多孔質体の他方の端部が前記蓄気室に接続されており、
前記蓄気室は、前記減圧設備および前記加圧設備に接続されており、該蓄気室と該減圧設備との接続、および、該蓄気室と該加圧設備との接続は、前記バルブによって切り替え可能に構成されており、
前記液体揺動機構は、
前記蓄気室と前記減圧設備との接続を介して前記多孔質体内が減圧された場合に前記一方の端部から前記液体を該多孔質体内に吸入し、前記蓄気室と前記加圧設備との接続を介して前記多孔質体内が加圧された場合に前記一方の端部から前記液体を該多孔質体外に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、前記液体を揺動させるように構成されている、項目2,3,5~7のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目9]
前記液体揺動機構は、前記液体を収容する容器と、減圧設備と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、を備えており、
前記容器は、前記蓄気室と接続されており、
前記多孔質体は、前記蓄気室内に配置されており、
前記蓄気室は、前記減圧設備および前記加圧設備に接続されており、該蓄気室と該減圧設備との接続、および、該蓄気室と該加圧設備との接続は、前記バルブによって切り替え可能に構成されており、
前記液体揺動機構は、
前記蓄気室内が減圧された場合に前記容器から前記液体を該蓄気室内に吸入し、該蓄気室内が加圧された場合に前記蓄気室から前記液体を前記容器に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、前記液体を揺動させるように構成されている、項目4~7のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目10]
前記液体揺動機構は、前記液体を収容する、前記多孔質体への該液体の供給源である容器であって、前記多孔質体から放出された前記ガスを回収する容器を備えており、
前記容器は、前記多孔質体よりも上側に配置されている、項目1~7のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目11]
前記液体揺動機構は、前記液体を収容する容器と、加圧設備と、蓄気室と、バルブと、配管と、を備えており、
前記多孔質体は、一方の端部が上側に、他方の端部が下側になるように配置されており、
前記容器は、前記多孔質体の前記一方の端部よりも上側に配置されているとともに、前記配管を介して該一方の端部と接続されており、
前記蓄気室は、前記配管を介して、前記多孔質体の前記他方の端部と接続されているとともに、前記加圧設備に接続されており、
前記蓄気室と前記加圧設備との接続および非接続は、前記バルブによって切り替え可能に構成されており、
前記液体揺動機構は、
前記蓄気室と前記加圧設備とが接続されていない場合に前記一方の端部から前記液体を前記多孔質体内に吸入し、前記蓄気室と前記加圧設備とが接続されて前記多孔質体内が加圧された場合に前記一方の端部から前記液体を該多孔質体外に排出し、該吸入および該排出を交互に繰り返すことによって、前記液体を揺動させるように構成されている、項目2,3,5~7のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目12]
前記液体揺動機構は、前記揺動の間における前記液体の平均レイノルズ数を8000以下に調節するように構成されている、項目1~11のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目13]
前記多孔質体の平均細孔径は、10μm未満である、項目1~12のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
[項目14]
項目1~13のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置を用いて、液体中に微細気泡を発生させる方法。
【0130】
以上、ここで開示される技術を説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される技術には、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得る。
【符号の説明】
【0131】
100 微細気泡発生装置
110 多孔質体
120 ガス供給機構
121 供給源
122 レギュレータ
123 流量計
124 圧力計
125 バルブ
126 ガス供給管
127 配管
128 封止栓
130 液体揺動機構
131 容器
132 減圧設備
133 加圧設備
134 レギュレータ
135 流量計
136 圧力計
137 バルブ
138 蓄気室
139 配管
91,92 Oリング
200 微細気泡発生装置
210 多孔質体
220 ガス供給機構
230 液体揺動機構
290 支持部材
300 微細気泡発生装置
310 多孔質体
320 ガス供給機構
330 液体揺動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7