(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096381
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】乾燥粉末吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20240705BHJP
A61M 13/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M13/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075965
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2022128971の分割
【原出願日】2017-01-27
(31)【優先権主張番号】62/289,095
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503208552
【氏名又は名称】マンカインド コーポレイション
【住所又は居所原語表記】1 Casper Street, Danbury CT 06810, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】キンゼイ、ピー スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツィ、ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】スマットニー、チャド シー
(72)【発明者】
【氏名】アダモ、ブノア
(72)【発明者】
【氏名】ガーネリ、ジョセフ
(57)【要約】
【課題】気道及び肺を通って、局所又は全身送達する乾燥粉末を含む交換可能なカートリッジを含む乾燥粉末吸入器を提供する。
【解決手段】吸入器10は、局所又は全身送達され、肺高血圧症、循環器疾患、アナフィラキシー、糖尿病、肥満、癌及び他の病気、又は吐き気、嘔吐、痛み及び炎症のような、これらの及び他の病気に関連する症状を治療するための活性剤を含む医薬製剤を含む、吸入可能な乾燥粉末とともに使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
本体であって、当該本体と一体的に形成されたマウスピースを備える、本体と、
を備え、
前記本体は、カートリッジのための装着領域を有し、前記本体及び前記ハウジングは、互いに対して直線的に移動可能であり、差し込みにより互いに係合して、吸入の際に粉末用量を放出するための空気流路を得るように、前記カートリッジを再構成させるように操作可能に構成されている、
乾燥粉末吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年1月29日に出願した米国仮特許出願第62/289095号についての米国特許法第119条(e)による利益を主張する。この仮特許出願の内容の全体を、参照により、本願明細書に組み込む。
【0002】
(技術分野)
本開示は、肺への及び/又は肺を通る活性成分を、局所的に又は全身に送達するための、乾燥粉末を含む交換可能なカートリッジを備える乾燥粉末吸入器に関する。吸入器は、肺高血圧症、循環器疾患、糖尿病、肥満及び癌のような病気、又は例えば吐き気、嘔吐、痛み及び炎症のような、これらの病気及び他の病気に関連する症状を治療する為の活性剤又は有効成分を含む医薬製剤を主に含む吸入可能な乾燥粉末と共に使用される。
【0003】
本明細書で引用される全ての参考文献及びその参考文献は、追加の又は代替の詳細、特徴、及び/又は技術背景を適切に説明するために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
肺組織への薬物送達は、局所的な病気又は障害を治療するための計量式吸入器及び乾燥粉末吸入器のような噴霧器及び吸入器を含む、吸入のための様々な装置を用いて達成される。肺に薬剤を送達するために使用される乾燥粉末吸入器は、通常、バルク供給、又は、単位用量区画に貯蔵され、個々の用量に定量化された硬ゼラチンカプセル又はブリスターパックのような、粉末製剤の投薬システムを含む。バルク容器には、吸入直前に粉末から単位用量を分離するために、患者により操作される測定システムが装備されている。
【0005】
吸入器による投薬再現性は、薬物製剤が均一であり、用量が不変で再現性のある結果を伴って、対象に送達されることを必要とする。それゆえ、投薬システムは、患者が吸入動作によりその投薬される量を服用する際に、全ての製剤が効果的に完全に排出されるように動作すべきである。しかしながら、再現性のある投薬が達成され得る限り、吸入器からの完全な粉末の排出は不要である。この点において、粉末製剤の流動特性、及び長期的な物理的及び機械的安定性が、バルク容器における単回単位用量区画よりも重要である。ブリスターのような単位用量区画では、良好な水分保護を容易に達成することができる。しかしながら、ブリスターの製造に用いられる材料は、空気を薬剤区画に取り入れるので、特に送達される製剤が吸湿性であるならば、製剤は長期貯蔵により生存能力が失われる。ブリスターを浸透する周囲の空気は、有効成分を不安定にする湿気を運ぶ。さらに、吸入により薬剤を送達するために、ブリスターを使用する乾燥粉末吸入器は、ブリスターのフィルムを穿刺又は剥がすことにより生ずる、空気導管構造の幾何学的な変化のために、肺への用量送達の不一致を生じさせる場合がある。
【0006】
乾燥粉末吸入器は、呼吸を動力源又は作動源にすることが可能であり、担体中の薬物粒子を、空気流に乗せて患者に吸い込ませる細かい乾燥粉末に変形させることで、薬剤を送達することができる。アレルギー、喘息、及び/又は慢性閉塞性肺疾患(CDPD)を治療するための、局所的な肺送達用の乾燥粉末吸入器を使用して送達される薬物は、いくつかの例を挙げると、FLOVENT(登録商標)DISKUS、ADVAIR(登録商標)DISKUS、及びPULMICORT(登録商標)FLEXHALERのような複数投薬吸入器に含有される。乾燥粉末吸入器は、もはや肺疾患のみを治療することを意図しておらず、全身性疾患の治療のために、薬物が肺に送達されて全身に循環して吸収されるように使用されることができる。例えば、AFREZZA(登録商標)吸入器は、人の糖尿病治療のためのヒトインスリン製剤を送達する単位用量の乾燥粉末吸入器である。AFREZZAは、2014年6月に、米国食品医薬局により、第1型及び第2型の糖尿病の治療用に承認された。AFREZZAは、カートリッジに含まれる単位用量のインスリンを肺に送達し、そのインスリンを糖尿病に関連する高血糖症の効果的な治療のために循環吸収させる、呼吸作動式の多目的吸入器である。そして、それに応じ、乾燥粉末吸入器は、限定されないが、癌、糖尿病、肥満、循環器疾患、神経変性疾患及び心身機能の不調などの数々の病気又は障害、並びに痛み、頭痛、吐き気、嘔吐、震え、感染などの病気又は障害の症状を治療する為に、全身への循環による他の活性剤の安全な送達を達成するように使用されることができる。
【0007】
米国特許第7305986号明細書、同第7464706号明細書、同第8499757号明細書、及び同第8636001号明細書に記載されているような乾燥粉末吸入器は、それらの全体が本明細書に参照により組み込まれており、カプセル又はカートリッジ内に含まれる単回用量の粉末製剤を、吸入操作の間に解凝集することにより、主要な薬物粒子又は適した吸入プルームを生成することができる。吸入の間に、吸入器のマウスピースから放出される微粉末の量は、例えば、粉末製剤の粒子間力、及び吸入に適するようにこれらの粒子を分離させる吸入器の効率に大きく依存する。肺循環を介して薬物を送達する利点は多数あり、動脈循環への急速な侵入、肝臓代謝による薬物分解の回避、及び不快のない容易な使用を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
肺送達のために開発された数々の乾燥粉末吸入器製品は、現在までに数々の成功を収めている。しかしながら、実用性の欠如、及び/又は製造コストについて、改善の余地がある。先行技術の吸入器に存在するいくつかの問題点として、装置の耐久性の欠如、投薬量の不一致、装置の不便、推進剤を使用しない場合の送達の問題、高い製造コスト、及び/又は患者コンプライアンスの欠如を含む。従って、本発明者は、一貫して改善された粉末輸送特性を有し、使いやすく、より良好な患者コンプライアンスを可能にする個別の構造を備えた吸入器を設計及び製造する必要性を確認した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、肺循環への局所又は全身送達のために、肺へ送達される吸入用の乾燥粉末を含む、交換可能なカートリッジを備える乾燥粉末吸入器に関する。乾燥粉末吸入器は、小型で、再利用可能又は使い捨て用であり、様々な形状及び大きさを持つ呼吸駆動式吸入器であり、粉末薬の肺及び全身循環への効果的かつ迅速な送達のための空気流路導管システムを含む。
【0010】
一実施の形態では、乾燥粉末吸入器は、単位用量カートリッジと、局所組織への作用のために肺組織にエアロゾル化されて送達されるか、肺内の血流に吸収されて対象の標的組織又は臓器に向けて全身循環により送達される乾燥粉末製剤を含む。一実施の形態では、乾燥粉末は、薬学的に許容される担体及び賦形剤、例えば、リン脂質、ポリエチレングリコール、コ-グリコリド、糖質、多糖、又はジケトピペラジンのようなポリマー、ペプチド及びタンパク質のような有効成分、及び神経伝達物質を含む小分子を含む、担体分子を含むことができる。
【0011】
一実施の形態では、乾燥粉末吸入器は再利用可能であり、単回での吸入に使用され、患者によって供給される単回吸入を用いて単回用量を送達するために、単回使用の交換可能なカートリッジを備える。この実施の形態では、活性成分を含み、例えばブリスターパックに包装された特定の粉末内容物を含む多数のカートリッジが、対象による複数回の使用のために、単一の吸入器に備えられることができる。他の実施形態では、カートリッジは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のような細菌感染、肺アスペルギルス症、肺移植、肺動脈性肺高血圧症(PHA)、骨粗鬆症、肥満、アナフィラキシー、又はその症状、好中球減少症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー、急性又は慢性疼痛を含む病気又は障害の症状、化学療法によって誘発される吐き気及び嘔吐を含む吐き気及び嘔吐、偏頭痛、痴呆、アルツハイマー、うつ病、パーキンソン、多発性硬化症を含む神経系の障害及び病気又はその症状などを含む、多様な状態、病気又は障害を治療するための乾燥粉末製剤を含むことができる。
【0012】
一実施の形態では、乾式吸入器は、本体と、ハウジングと、本体とともに形成されるマウスピースと、を含み、本体はカートリッジのための装着領域を含み、本体及びハウジングは、直線又は角運動により互いに対して移動可能である。本体とハウジングの少なくとも一部は、例えば差し込むことにより、互いに係合して、閉鎖位置を得て、装着領域に配置されたカートリッジを再構成させて、カートリッジに含まれる粉末用量を放出させるための空気流路を得るように操作可能に構成されている。本実施の形態では、カートリッジは、剛性材料で形成され、並進運動において互いに移動可能なカップ及び蓋を含む。
【0013】
例示的な実施の形態では、本体と、ハウジングと、カートリッジと、マウスピースと、を含む乾燥粉末吸入器が供給される。吸入器の本体は、カートリッジの装着領域を備える。カートリッジは、フマリルジケトピペラジン及び薬物の微結晶性粒子を含む乾燥粉末組成物を含む。ハウジングは、吸入器を開放するために近位方向から遠位方向に、又は吸入器を閉鎖するために遠位方向から近位方向に、吸入器の本体上を並進的に滑る。そして、吸入器が閉鎖された時に、吸入器は、乾燥粉末を分配するための1以上の剛性空気導管を有する。
【0014】
別の実施の形態では、乾燥粉末吸入器は、本体と、蓋と、マウスピースと、を備える。マウスピース及び蓋は、一つのユニットとして構成され、本体に対するマウスピースの角回転により、吸入器の本体上を移動可能である。この実施の形態及び他の実施の形態では、本体は、遠位端と、近位端と、底表面と、上表面と、内部表面と、カートリッジ装着領域と、装置の内部及びカートリッジ装着領域に接続するための上表面の開口とを含み、マウスピースは、マウスピース空気導管に対して鉛直な面に延びる翼状の構造を有しており、鞍状構造の形状のカバー又は蓋状構造を形成するように構成されている。鉛直角から水平面に回転すると、マウスピースは、吸入器を閉鎖させるために上表面の解放領域を覆う蓋を形成し、吸入器の上部表面の一部を形成する。閉鎖形状では、カートリッジ装着領域に装填されたカートリッジは、格納位置から投薬位置に移行し、空気導管がそのカートリッジを通って形成され、カートリッジ内の粉末が吸入操作の際に吸入器から放出され得る。この実施の形態の1つの形態では、カートリッジを格納形状から投薬形状に再構成させるために、マウスピースは、カートリッジ装着部品と係合するための構造を有するように形成される。一実施の形態では、吸入器の内面は、カートリッジ装着時にカートリッジカップを保持するように設計されたカートリッジ装着領域に、突起を備える。一実施の形態では、カートリッジ装着領域と係合する構造は、吸入器のマウスピースの部分を吸入器本体から遠ざけて、装着配置になるように吸入器を解放するために、水平面内の吸入器本体と鉛直な位置に旋回させるギヤ及びラックを備え、また、鉛直平面から水平位置に旋回して吸入器を閉鎖し、吸入器にカートリッジを装着した状態の投薬形状になる。
【0015】
乾燥粉末は、肺送達のための活性成分を含む医薬製剤を含む、吸入可能な乾燥粉末を含む。いくつかの実施形態では、送達は、深肺(すなわち、肺胞領域)への送達であり、これらの実施形態のいくつかでは、全身標的化または一般的な使用のために、活性剤または活性成分が吸収されて肺循環に入る。単位用量カートリッジの乾燥粉末吸入器、および薬物送達製剤は、例えば、ジケトピペラジンと、副甲状腺ホルモン、インスリン、オキシントモジュリンおよびグルカゴン様ペプチド1を含む、ペプチドおよびタンパク質のような活性成分と、を含む。いくらかの実施形態において、活性成分は、限定されないが、トレプロスチニル、サルメテロール、エピネフリン、タクロリムス、バンコマイシン、リネゾイド、フィルガストリン、フェンタニル、カンナビノイド、パロノセトロン、アンホテリシンB、シルデナフィルやアバナフィルやベルデナフィルやタダラフィルのようなPDE5阻害剤を含むホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタサイクリン(PGI2)およびその類似体、神経伝達物質作動薬、非侵害受容剤を含む神経伝達物質拮抗薬、デルタオピオイド作動薬および拮抗薬のようなオピオイド鎮痛剤、カッパオピオイド受容体作動薬および拮抗薬、オピオイド受容体作動薬および遮断薬を含む、1以上の活性剤を含む。
【0016】
一実施の形態では、乾燥粉末吸入器は、ハウジングと、可動部材と、マウスピースと、を含む。可動部材は、容器を、粉末格納位置から投薬位置に移動させるように、操作可能に形成される。この実施の形態および他の実施の形態では、可動部材は、吸入器の近位端で蓋部品の一部として形成されることができ、カートリッジ装着領域の一部を形成することができる。この実施の形態では、マウスピースは、吸入器を閉じた時に、カートリッジ装着領域上で、ハウジングを覆う蓋またはカバーと一体に構築される。マウスピースが水平面から下方に移動すると、蓋またはカバーを角方向に鉛直位置まで移動し、吸入器を開放し、吸入器の内部にアクセスし、カートリッジの装着および脱着を可能にする。反対に、マウスピースが鉛直面から水平面に上向きに移動すると、吸入器の閉鎖が誘発され、吸入器とカートリッジ装着領域に装着されたカートリッジとの間に、空気経路の開口が自動的に生成される。
【0017】
他の実施の形態において、乾燥粉末吸入器は、本体と、ハウジングと、マウスピースと、を備える。吸入器は、解放位置、閉鎖位置、および解放位置から閉鎖位置に吸入器が移動する際に、格納位置から分配、投薬または用量送達位置にカートリッジを受け入れ、保持し、再構成するように操作可能に形成された機構を有するように、構造的に形成される。また、この実施の形態の変形例では、その機構は、吸入器が使用済みのカートリッジを脱着するために開放された時に、使用後に、投薬位置から格納位置に吸入器に取り付けられたカートリッジを再構成することができる。一実施の形態では、その機構は、使用後に、使い捨て形状または廃棄形状にカートリッジを再構成することができる。
【0018】
一実施の形態では、吸入器の本体は、マウスピースを含む近位部分と、本体と、吸入器の内部および本体の一部上でスリップオンカバーとして構造的に構成されるハウジングを含む遠位部分を含む。ハウジングは遠位端および近位端を含み、近位端は、吸入器本体の一部を適合させて封入するための開口部を備える。一実施の形態では、近位端は、吸入器を外部環境から閉鎖ように、吸入器本体と接触するか当接する。吸入器は、閉鎖形状から、カートリッジの挿入または取り出しのための吸入器の装着位置及び/又は脱着位置になるように、並進運動で、本体上の遠位方向に、ハウジングの上部を移動させることによって開かれる。カートリッジが吸入器に取り付けられた状態で、本体上で遠位方向から近位方向にハウジングの上部を並進運動させると、カートリッジが格納配置から投薬配置に転置され、カートリッジ容器は、吸入器が開放状態にある時に、近位端の開口部を超えて延びるハウジングの内部に構成された突出部により投薬配置に押し込まれる。ハウジングの頂部の動きは、その頂部のボタン状の構造を有するレバーの移動により達成され、ハウジングに取り付けられ、吸入器のカートリッジ装着領域を開閉する。閉鎖状態では、吸入器に取り付けられたカートリッジは、再構成され、マウスピースおよび周囲の空気とともに追加の空気流路を形成し、吸入の際に、投薬配置にあるカートリッジ内の乾燥粉末に接続する。この実施の形態および他の実施の形態では、投薬配置にあるカートリッジの空気流路は、マウスピース内の空気流路と連絡する空気の出入口を有する。マウスピースは、それ自身で、空気の出入口を有する。
【0019】
一実施の形態では、吸入器の本体は、本体の近位端に形成されたマウスピースを備え、ハウジングの内部と連絡する空気導管を備え、吸入器に取り付けられたカートリッジの空気出口および周囲の空気と直接的に連絡することができる。また、吸入器本体は、マウスピースと構造的に連続し、遠位部および近位部を有するカートリッジ装着領域を有する。近位部および遠位部は、マウスピースと共に1つの単一部品を形成し、ハウジング内に差し込み可能である。一実施の形態において、本体とハウジングとを引き離すことにより、内部区画に接続するための吸入器の解放配置にすることができる。この形態の解放配置では、乾燥粉末を含むカートリッジが、本体のカートリッジ装着領域に装着または取り付けられることができ、本体およびハウジングが吸入器を解放または閉鎖するように押したり引いたりすることができる。一実施の形態において、ハウジングは、本体の遠位部上で、開放配置から閉鎖配置に移動可能であり、それらが一緒になって吸入器を閉じ、カートリッジ装着領域に取り付けられたカートリッジを通る空気導管を形成する。この構成では、吸入器は、使用者によりマウスピースを通って経口吸入されると、カートリッジ内の粉末が吸入器から放出される投薬配置になっている。この実施形態の投薬配置では、本体とハウジングは互いに当接し、吸入器がバラバラになるのを防ぐために、1以上の滑り防止構造により堅く適合される。滑り防止の特徴の例として、吸入器が使用準備済であることを使用者に警告するための音を生成することができる、スナップリングまたは戻り止めが含まれ得る。
【0020】
一実施の形態では、吸入器は、遠位側および近位側を備えた実質的に長方形の形状であり、遠位側の長さの方がより短い。吸入器は、吸入器本体の遠位部を覆う可動ハウジング部を含む。本体上のハウジングの移動またはその逆は、吸入器本体をハウジングから分離し、吸入器の内部を露出させることにより達成される。ハウジングの移動は、縦断面の吸入器の長辺(第1の辺および第2の辺)から外側に延びる平行なガイドレールまたはトラックを有する吸入器本体上の、ハウジングの引っ張りまたは押し込み動作により達成されることができる。この実施の形態では、吸入器本体は、吸入の際に、吸入器の内部チャンバー内に周囲空気を流入させ案内するために、ハウジングの遠位端の開口部に適合するように、その遠位端で開口部を有するように設計される。また、ハウジングは、開閉移動中にガイドレール上を滑るための溝またはスリットを有するようにぴったりと構成され、また、吸入器の分解を防止するための停止端と、取り付け後の投薬配置にあるカートリッジの位置決めをするための、およびハウジングが遠位方向から近位方向に動いている時に、吸入器を閉鎖するための押し込み要素を備える。その押し込み要素は、カートリッジの蓋に対してカートリッジカップまたは容器を移動させ、カートリッジを通る空気流路を形成し、空気の出入口を形成し、吸入中にカップ内の粉末のエアロゾル化を可能にし、エアロゾル化された粒子を吸入器のマウスピースおよび使用者に送達する。また、別の実施の形態では、その押し込み要素は、カートリッジ部材を移動させて、マウスピースの床に配置された入口開口部に対して蓋を位置決めする。この実施の形態の一態様では、乾燥粉末吸入器は、吸入器本体を覆うハウジングの解放配置から閉鎖配置へと変換することにより、マウスピースと整列するようにカートリッジを位置決めする押し込み要素を含むハウジングを含む。
【0021】
一実施の形態では、乾燥粉末吸入器は、遠位端を有し、周囲の空気と連絡する開口部を構成するハウジングを備える。一実施の形態では、ハウジングは、吸入器本体上を滑るカバーの形状に構成され、吸入器本体の一部を実質的に覆い、本体の遠位部上を並進的に移動する。吸入器は、2つの形状、すなわち、吸入器を開いてその内部区画、チャンバーに接続する第1の位置と、吸入器の閉止を達成するために近位端に当接する第2の位置と、を達成する。また、一実施の形態では、ハウジングの遠位部は、遠位に延び、吸入器本体を取り囲むカバーおよび吸入器の内部区画への接続を可能にするために、水平面内の近位端に対して移動可能である。この実施形態の変形例では、ハウジングの遠位部は、吸入器の本体の一部と係合するための平行な構造体またはフランジを備え、例えば吸入器の本体をハウジングに固定して、2つの部分を固定し、投薬配置を維持するための固定機構を形成する。一実施の形態では、ハウジングの遠位部は、吸入器の内部と連絡するための開口部を遠位端に有し、吸入器本体上を滑るように構成された開口部を備える。また、ハウジングの遠位部は、外部表面、内部表面、及び吸入器本体上を滑るように構成されたチャンバーを含む。一実施の形態では、吸入器の遠位部は、吸入の際に、空気流をマウスピースに向けるために、その上部表面に平行な翼状構造を含む。
【0022】
別の実施の形態では、マウスピースは、ヒンジなどの可動部材を含む様々な機構により吸入器の本体に係合され、カートリッジの蓋をカートリッジカップまたは容器に対して移動させるためのラックを含む可動部材と一体的に形成される。可動部材は、吸入器に取り付けられたカートリッジを、格納位置から投薬位置まで迎えて、再構成するように構成され、例えば、開放形状から装置を閉鎖するための吸入器構成要素の移動の際に、手動でまたは自動的に動作するように設計することができる。一実施の形態では、カートリッジを再構成するための機構は、マウスピースに取り付けられ、ハウジングに移動可能に取り付けられたスライドトレイまたはスレッドを備える。他の実施の形態では、その機構は、吸入器に取り付けられ、または適合され、例えば吸入器のヒンジ内に一体的に取り付けられたギア機構を含む。さらに別の実施の形態では、カートリッジを、格納配置から投薬配置まで迎えて再構成するように操作可能に構成された機構は、例えばハウジングまたはマウスピースの回転時に、カートリッジを再構成することができるカムを備える。一実施の形態では、マウスピースの水平面からの角回転は、吸入器を開放し、カートリッジの取り付けまたは取り外しを可能とし、または、マウスピースの垂直平面から水平平面へ角運動は、マウスピースの閉鎖、及び格納位置から投薬位置までの自動的な再構成を達成する。一実施の形態では、作動中のギヤ機構は、マウスピースの入口開口部に対してカートリッジの蓋を位置決めし、そのカップの投薬配置への並進を達成する。
【0023】
さらに他の実施形態では、本体およびマウスピースを含む乾燥粉末吸入器が供給され、吸入器本体は、上部と、下部と、近位部および遠位部と、を有する、実質的に長方形の形状を有するように設計され、上部は、吸入器の内部区画およびカートリッジ装着領域に接続可能にするために、吸入器本体の遠位の半分に開口部を有する。この実施の形態では、吸入器のマウスピースは2つの空気流入口を備え、1つは吸入器の遠位端で周囲の空気と連絡し、1つはカートリッジにおける出口部分、および対象の口に差し込むための吸入器の近位部における空気出口と連絡する。この実施の形態では、本体およびマウスピースは、ギヤ、ラックおよびピニオン部材により係合し、移動可能なカートリッジカップ運搬装置は、吸入器本体に平行な約180度の角度から、吸入器本体に対して約90度の角度または垂直になるまで、水平面内にあるマウスピースを動かすことにより作動し、吸入器が開放してカートリッジが装脱着するように構成される。マウスピースを180度の角度まで吸入器本体に平行になるまで戻して動かすと、吸入器が閉鎖され、吸入器のマウスピースおよびカートリッジの間で空気流路が生成されるようにカートリッジカップを移動させることにより、そして更に、吸入の際にカートリッジ中の粉末をエアロゾル化するために、カートリッジの内部を通過する周囲の空気のためのカートリッジの入口ポートを形成することにより、吸入器中に配置されたカートリッジを自動的に投薬配置に再構成する。
【0024】
別の実施の形態では、乾燥粉末吸入器は、マウスピース、スレッド、スライドトレイまたはキャリッジ、ハウジング、ヒンジ、およびスライドまたはスレッドトレイの移動を達成するように構成されたギヤ機構を備える。マウスピースおよびハウジングは、ヒンジにより可動に取り付けられている。
【0025】
乾燥粉末吸入器とともに使用されるカートリッジは、吸入用の任意の乾燥粉末薬を含むように製造されることができる。一実施の形態では、カートリッジは、特定の乾燥粉末吸入器に適合できるように構造的に形成されており、例えば吸入器が並進運動または回転運動を可能にする機構を備える場合、使用される吸入器の大きさおよび形状に応じて、任意の大きさおよび形状に形成されることができる。一実施の形態では、カートリッジは、例えばカートリッジが使用中に固定されるように、吸入器内の一致する傾斜した縁部に対応する、カートリッジの上部に傾斜した縁部を有する固定機構で形成されることができる。一実施の形態では、カートリッジは、容器と蓋又はカバーとを備え、容器は蓋の表面に適合され、蓋に対して移動可能であり、または、蓋は、容器上で移動可能であり、例えば取り付け配置、投薬配置、または使用後配置のように、その位置に応じて様々な配置を達成することができる。吸入の間、吸入器に適合した投薬位置にあるカートリッジは、空気流が容器に入り、粉末と混合して、薬剤を流動化させる。流動化された薬剤は、容器内を移動し、分配開口部を通って徐々に容器を出る。分配開口部に存在する流動化された薬剤は、剪断され、容器内からは発生しない二次流により希釈される。乾燥粉末吸入器用のカートリッジは、述べた通り、薬剤を保持するように形成された容器と、容器内への流れを可能にする少なくとも1つの入口ポートと、容器から流れ出ることを可能にする少なくとも1つの分配ポートと、を含む。少なくとも1つの入口ポートは、少なくとも1つの入口ポートに入る流れの少なくとも1部を、圧力差に応じて容器内の少なくとも1つの分配口に導くように構成される。
【0026】
いくつかの実施の形態では、乾燥粉末製剤は、約3秒未満、または一般に1秒未満で、吸入器から一貫性を持って分配される。いくつかの実施の形態では、吸入器の空気導管は、例えば、約0.065~約0.200(√kPa)/liter/分の空気流量値に対して高い抵抗を生じるように設計される。従って、吸入システムであって、2~20kPaの間のピーク吸入圧力降下は、結果として、約7~70liter/分の間のピーク流量を生じさせる。これらの流量は、1~50mgの間の充填質量でカートリッジの内容物の75%を超えて分配する結果になる。いくつかの実施の形態では、これらの性能特性は、単一の吸入操作でエンドユーザにより達成され、90%を超えるカートリッジ分配率を生成する。特定の実施の形態において、吸入器およびカートリッジシステムは、連続的な流れとして、または患者に送達される粉末の1以上のパルスとして、吸入器から粉末を放出することにより、単回用量を供給するように形成される。
【0027】
他の実施の形態では、吸入システムは、呼吸駆動式乾燥粉末吸入器や、肺道および肺に送達するための薬剤を含む乾燥粉末を含むカートリッジを含む。薬剤は、例えば、自己集合する結晶形状、アモルファス形状、および/または自己集合しない結晶を含む微晶質形状、またはその組み合わせにおける、ジケトピペラジンを含む組成物のような肺送達のための薬物製剤、及び活性剤を含むことができる。他の実施形態では、乾燥粉末は、ジケトピペラジン以外の他の担体および/または賦形剤、例えばトレハロースを含む糖および活性剤から製剤化されてもよい。いくらかの実施形態では、活性剤は、インスリン、グルカゴン様ペプチド1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、エキセンディン、または任意の活性成分、およびその類似化合物のような、ペプチドおよびタンパク質を含む。この吸入システムは、例えば、糖尿病、糖尿病前症状、アレルギー、敗血症や尿道および気道の感染症を含む感染症、アナフィラキシー、肺疾患、腎臓病、肝疾患、認知症、神経変性疾患、または循環器疾患、血液疾患、癌および肥満、およびこれらの疾患に関連する症状の治療方法において、薬剤の局所または全身送達を必要とする状態を治療するための方法において使用されることができる。一実施形態において、吸入システムは、疾患または障害を治療するための吸入システムの各成分の少なくとも1つを含むキットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】使用準備が整った閉鎖配置にある乾燥粉末吸入器の形態を示す斜視図である。
【
図2】カートリッジの装着/脱着位置が十分に開かれた状態であり、カートリッジ装着領域に取り付けられた粉末収容形状のカートリッジを備えた状態である、
図1に示す乾燥粉末吸入器の斜視図である。
【
図3】
図1に示す乾燥粉末吸入器の、中央を通る長手方向に延びる軸における断面図であり、吸入器に取り付けられたカートリッジを含む吸入器と、カートリッジのチェンバーを通って形成された空気流路が示された粉末投薬形状を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す吸入器に類似する吸入器であり、カートリッジを備えていない状態である、
図1に示す吸入器の中央を通る長手方向に延びる軸における断面図である。
【
図5】
図4に示す吸入器に類似する吸入器であり、カートリッジを備えていない状態であり、開放配置である、
図1に示す吸入器の中央を通る長手方向に延びる軸における断面図である。
【
図6】閉鎖形状にある乾燥粉末吸入器の別の形態を示す斜視図である。
【
図7】カートリッジの装着/脱着位置が開かれた状態であり、カートリッジ装着領域に取り付けられた粉末収容形状のカートリッジを備えた状態である、
図6に示す乾燥粉末吸入器の斜視図である。
【
図8】閉鎖形状にある
図6に示す乾燥粉末吸入器の、中央を通る長手方向に延びる軸における断面図であり、カートリッジのチェンバーを通って形成された吸入器の空気流路が示された粉末投薬配置のカートリッジを含む吸入器を示す断面図である。
【
図9】
図8に示す吸入器に類似する吸入器であり、カートリッジを備えていない状態である、
図6に示す吸入器の中央を通る長手方向に延びる軸における断面図である。
【
図10】
図9に示す吸入器に類似する吸入器であり、カートリッジを備えていない状態であり、解放配置である、
図6に示す吸入器の中央を通る長手方向に延びる軸における断面図である。
【
図11】閉鎖又は吸入位置にある乾燥粉末吸入器のさらに別の形態を示す斜視図である。
【
図12】カートリッジの装着/脱着位置が開かれた状態であり、カートリッジ装着領域に取り付けられた粉末収容形状のカートリッジを備えた状態である、
図11に示す乾燥粉末吸入器を示す。
【
図13】閉鎖形状にある
図11に示す乾燥粉末吸入器の、中央を通る長手方向に延びる軸における断面図であり、カートリッジのチェンバーを通って形成された吸入器の空気流路が示された粉末投薬形状のカートリッジを含む吸入器を示す断面図である。
【
図14】
図13に示す吸入器に類似する吸入器であり、カートリッジを備えていない状態である、
図11に示す吸入器の中央を通る長手方向に延びる軸における断面図である。
【
図15】
図14に示す吸入器に類似する吸入器であり、カートリッジを備えていない状態であり、開放配置である、
図12に示す吸入器の中央を通る長手方向に延びる軸における断面図である。
【
図16】使用準備が整った閉鎖形状にある、さらにほかの乾燥粉末吸入器の形態を示す斜視図である。
【
図17】カートリッジの装着/脱着位置が開かれた状態であり、カートリッジ装着領域に取り付けられた粉末収容形状のカートリッジを備えた状態である、
図16に示す乾燥粉末吸入器を示す。
【
図18】閉鎖形状にある
図16に示す乾燥粉末吸入器の、中央を通る長手方向に延びる軸における断面図であり、カートリッジのチェンバーを通って形成された吸入器の空気流路が示された粉末投薬形状のカートリッジを含む吸入器を示す断面図である。
【
図19】
図18に示す吸入器に類似する吸入器であり、カートリッジを備えていない状態である、
図16に示す吸入器の中央を通る長手方向に延びる軸における断面図である。
【
図20】
図19に示す吸入器に類似する吸入器であり、カートリッジを備えていない状態であり、開放配置である、
図17に示す吸入器の中央を通る長手方向に延びる軸における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に開示された実施の形態では、医薬品を含む乾燥粉末を、経口吸入により対象に送達するためのカートリッジを備えた乾燥粉末吸入器が開示される。一実施の形態では、乾燥粉末吸入器は、呼吸式の乾燥粉末吸入器であり、吸入可能な乾燥粉末を含むように設計されており、限定はされないが、薬学的な作用物質および必要に応じて薬学的に許容される担体を含む、活性成分を含む医薬品を含む。
【0030】
乾燥粉末吸入器は、様々な形態の形状および大きさで提供され、再使用可能で、使いやすく、製造が安価であり、及び/又はプラスチックまたは他の許容可能な材料を使用して簡単なステップで大量生産される。乾燥粉末吸入器の様々な形態が本明細書で提供され、一般に、吸入システムは、吸入器、粉末充填カートリッジ、および空のカートリッジを含む。本吸入システムは、任意のタイプの乾燥粉末と使用されるように設計されることができる。一実施の形態では、乾燥粉末は、最適なデアグロメレーション条件を必要とする比較的凝集性のある粉末である。一実施の形態では、吸入システムは、再使用可能な小型の呼吸式吸入器を、乾燥粉末製剤の予め計量された用量を含む使い捨てのカートリッジと組み合わせて供される。
【0031】
本明細書で使用される「単位用量吸入器」という用語は、乾燥粉末製剤を含む単一のカートリッジまたは容器を受け入れるように適合され、吸入により単一の容器から使用者に、乾燥粉末製剤の単回用量を送達する吸入器を指す。場合によっては、使用者に特定の投薬量を供給するために、複数の単位用量が必要とされることは理解されるべきである。
【0032】
本明細書で使用される「カートリッジ」は、カップまたは容器及び蓋を備えた封入容器に封入された乾燥粉末製剤や粉末を、保持または収容するように形成された容器である。カートリッジは剛性材料でつくられており、カップまたは容器は、並進運動またはその逆の運動で、蓋に対して移動可能である。
【0033】
本明細書で使用される「粉末塊」は、幅、直径、および長さ等の不規則な幾何学的形状を有する粉末粒子の集塊または凝集物を示す。
【0034】
本明細書で使用される「単位用量」は、吸入のために予め測定された乾燥粉末製剤を指す。あるいは、単位用量は、測定された単回の量として吸入により送達され得る、複数の製剤の用量を有する、単回容器でもあり得る。単位用量カートリッジ/容器は、単回の用量を含有する。あるいは、それぞれ単位用量を含有している、複数の個別にアクセス可能である区画を備え得る。
【0035】
本明細書で使用される「約」は、その値を決定するのに用いられるデバイスまたは方法において、誤差の標準偏差を含む値を示すものとして使用される。
【0036】
本明細書で使用される「微粒子」は、正確な外部または内部の構造に関係なく、約0.5~約1000μmの直径の粒子を示す。約0.5~約10ミクロンの直径を持つ微粒子は、肺に到達し、大半の天然バリアを首尾よく通過することができる。喉の転回部分を通り抜けるためには、約10ミクロン未満の直径が必要であり、吐き出されるのを防ぐためには、約0.5μm以上の直径が必要である。最も効率的な吸収が起こると考えられる深肺部(または肺胞領域)に到達するためには、「吸入分画」(RF)に含まれる粒子の割合を最大にすることが好ましく、一般的に、例えばアンダーソンカスケードインパクター(Anderson Cascade Impactor)のような標準技術を用いて測定されるように、いくつかの参考文献では幾分異なる範囲で使用されているが、約0.5~約6μmの空気力学の直径でこれらの粒子が受け入れられる。吸入分画を6.4μm未満のような同様の空気力学のサイズで定義する、NEXT GENERATION IMPACTOR(登録商標)(NGI(登録商標),MSPコーポレーション)のような他のインパクタを、空気力学的粒子のサイズを測定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、粒子のサイズを決定するために、例えば米国特許第8508732号に開示されているようなレーザ回折装置が使用され、開示には、レーザ回折に関連する学説の全体が盛り込まれ、粒子の体積中央幾何学直径(VMGD)が吸入システムの性能を評価するために測定される。例えば、様々な実施の形態において、カートリッジの80%以上、85%以上、または90%以上を空にすること、および、12.5μmより大きく、7.0μmより大きく、または4.8μmより大きい放出粒子のVMGDは、革新的により良い空気力学性能を示す。
【0037】
吸入分画の充填(RF/fill)は、用量として充填された粉末内容物の放出時に、吸入器から放出され、用量中における呼吸に適した粒子の割合(%)を表す。すなわち、充填用量中における肺送達に適する大きさで放出される粒子の割合を表し、微粒子の空気力学性能の測定結果である。本明細書で説明するように、40%以上のRF/fill値は、許容可能な空気力学性能を反映する。本明細書で開示される特定の実施の形態において、吸入分画の充填は、50%より大きくてもよい。典型的な実施の形態において、吸入分画の充填は約80%までであり、その充填の約80%は、標準技術を使用して測定されるように、5.8μmまでの粒子サイズで放出される。
【0038】
本明細書で使用される「乾燥粉末」という用語は、推進剤または他の液体中において懸濁または溶解していない、微粒子組成物を示す。これは、必ずしも全ての水分子が完全に欠失していることを意味するものではない。
【0039】
本明細書で使用される「非晶質粉末」は、全ての非結晶粉末を含み、秩序立った繰り返し形態、形状、または構造を欠いている乾燥粉末を示す。
【0040】
本明細書に示す典型的な実施の形態では、本装置は、いくつかの方法および様々な材料から製造されることができる。一実施の形態では、吸入器およびカートリッジは、例えば、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマー、ナイロンおよび他の互換性のあるポリマーなどの様々なタイプのプラスチック材料を使用して、射出成形技術、熱成形、吹き込み成形、加圧形成、3D印刷などにより作製される。特定の実施の形態において、乾燥粉末吸入器は、個々の構成部品のすべてをカバーする部品を使用して組み立てることができる。いくらかの実施の形態では、吸入器は、一般的に、例えば寸法で、約1インチから約5インチのコンパクトなサイズで提供され、幅および高さは、その装置の長さよりも小さい。特定の実施形態では、吸入器は、比較的長方形の本体を含む様々な形状で提供されるが、円筒形、楕円形、管状、正方形、長方形、および円形などの他の形状で提供されることができる。
【0041】
本明細書に記載及び例示された実施の形態では、吸入器は、気流が吸入器に入ることを可能にするための少なくとも1つの比較的剛性の流導管を使用することにより、乾燥粉末製剤を効果的に流動化、解凝集、またはエアロゾル化する。例えば、吸入器には、乾燥粉末を含むカートリッジに出入りするための第1の空気の流路と、カートリッジから出る第1の空気の流路と併合可能な第2の空気流路と、が供給されている。流導管は、例えば、吸入器の形状に応じて様々な形状およびサイズを有することができる。一実施の形態では、吸入器は、例えば、約0.065~約0.200(√kPa)/litter/分の高抵抗吸入器抵抗値がある。それゆえ、このシステムでは、2~20kPaのピーク吸入圧力降下が、結果として、約7~70litter/分のピーク流量を生成する。これらの流量は、1~50mgの充填質量で分配されるカートリッジ内容物の75%より大きくなる。いくつかの実施の形態では、これらの性能特性は、カートリッジに含まれる粉末の90%を超えるカートリッジ分配割合を生成するために、単一の吸入操作でエンドユーザにより達成される。
【0042】
乾燥粉末吸入器10の実施の形態は、
図1~5に例示されている。吸入器10は、本体12、およびマウスピースカバー11の2つの要素を含む。この実施形態では、乾燥粉末吸入器10は、比較的長方形であり、長辺が長手方向の平面内に延在し、2つの形状、すなわち、
図1、
図3および
図4に示すような閉鎖または投薬配置である第1の配置と、
図2および
図5に示すような開放またはカートリッジ装着/脱着配置である第2の配置と、を達成するように設計される。
図1~
図5に示す通り、乾燥粉末吸入器10は、単一の要素として製造される比較的長方形の本体12を有し、使用者の唇または口腔に接触するマウスピース15を含む実質的にC字形状の近位端14と、右側面17、左側面18、上側面19、および下側面20を有する遠位端16とを含む。マウスピース15は、出口13と、空気導管5を通って流れる空気を吸入器本体12の内部に迂回させるが、吸入器本体12と接触するマウスピースの下部に位置する第2の入口3を通って、吸入器本体のチャンバーまたは内部と連絡している第1の入口21と、を有する。特に、第2の入口は、カートリッジ装着領域に取り付けられるカートリッジの出口ポートまたは分配ポート31と接続する。
図3では、マウスピース15が、遠位端で細くなる形状であり、近位端に向かって外向きにテーパ状を呈しており、外部形状と同様の形状である空気導管5を伴って形成されている。マウスピース15は、上側面19の合流点まで外側に向かって部分的に延びて上側面19の一部を形成し、右側面17および左側面18上を下方に延びて、マウスピースカバー11として吸入器10を閉鎖するために、本体12の右側面17および左側面18上を覆っている、またはそれらにかぶさっている、鞍状または翼状の構造22、22’を有する、単一要素として設計されている。
【0043】
図2及び
図5は、本体12の内部を示す開放形状にある吸入器10を示す。
図5は開放形状にある吸入器10を示し、
図2はカートリッジ装着部材23にカートリッジ24が装着された状態の吸入器10を示す。開放形状にするために、マウスピース11は、そのマウスピース15から下方に押され、吸入器12の遠位上部を握ることで、要素11全体を約90°回転させ、本体12に対して垂直に置く。マウスピースカバー11の動作は、吸入器にヒンジ、例えば、可動カートリッジ装着領域23上でラックに係合したラックを有するギヤに接続された軸32を含むラックアンドピニオンを設けることにより達成される。
【0044】
図3は、カートリッジが投薬配置に装着された状態の吸入器10の中央縦断面図であり、カートリッジを投薬配置に完全に位置させる可動カートリッジ装着領域23の押し込み要素33を示し、空気入口29および空気出口31を有する空気通路が形成され、カートリッジカップ30の内部に接続する。この実施の形態は、マウスピース15を水平面に保持しながら、マウスピースカバー11を上方に移動させることで、
図1に示す通り吸入器を閉鎖する。そして、移動中に、カートリッジ装着領域23におけるカートリッジ部材の可動部分は、カートリッジ装着領域の近位部分における可動要素により、遠位に押しこまれ、その結果、カートリッジ蓋28がカートリッジカップ30を超えて遠位に移動し、カップ30が、本体12の下側面20の内部表面にある剛性突出部27、27’により、装着領域に保持される。使用後、吸入器10を開放することにより、カートリッジは、廃棄/取り出し位置に戻され、そのサイクルで新しい投薬が繰り返されうる。
図4は、
図1に示す吸入器の中央縦断面図であり、カートリッジを含まない閉鎖配置における装置の内部の関係を示す。
【0045】
図5は、カートリッジを含まない開放配置における、
図1に示す吸入器の中央縦断面図である。カートリッジ装着領域に、吸入器本体12の内部の下側面20から突き出た剛性突出部が取り付けられた状態を示し、カートリッジのカップを超えて蓋を移動させるための移動可能なカートリッジ装着領域23のカートリッジの蓋の押し込み要素33により、閉鎖形状にするためのマウスピースカバー11の移動の際に投薬配置が達成される。
【0046】
図6~
図10は、別の実施の形態を示し、乾燥粉末吸入器40は、本体42と、少なくとも2つの空気流入口および1つの流出口46を有するマウスピース45と、カートリッジの装着および再構成をする機構47と、を備える。また、吸入器40は、部分的リブ状構造で形成されうる不連続の上面51と、近位端48、遠位端49、および底部42を含む。この実施形態では、吸入器40は閉鎖位置にある。吸入器本体42の上部の遠位側半分49は、吸入器本体42の内部区画内の可動ラック54と係合して、カートリッジの装着および再構成機構47の移動を可能にするために、可動レバー52を中央縦平面内で収容するための開口部またはスロット53を有し、カートリッジの蓋をカップ上に移すための、またはカートリッジの固定された蓋の下にカップを移すための押し込み要素を含むラックを備える。この実施形態では、レバー52を遠位方向に手動で移動させると、吸入器はカートリッジ装着位置を構成される。
図7は、カートリッジ装着領域55に、カートリッジが取り付けまたは装着された状態の、開放配置にある吸入器40を示す。肺吸入のための用量を準備する際に、ユーザは、
図7に示すように、吸入器内にカートリッジ56を配置または設置することができる。カートリッジ56がカートリッジ装着領域55に取り付けまたは装着された後、レバー52はそれがこれ以上移動できなくなるまで近位に移動する。
図8は、カートリッジ取り付けまたは再構成領域55に、カートリッジを取り付けた状態の、閉鎖または投薬配置にある、吸入器40の中央縦断面図を示し、投薬配置において、蓋59の下にカップ58を移動させる押し込み要素66を示す。レバー52が動いている間に、レバー52に係合した吸入器の内部の押し込み要素66は、ラックの押し込み要素66を作動させて、カートリッジ56を移動させ、その蓋を再形成し、空気入口64と共に空気導管を形成し、吸入の間にマウスピースの空気導管61及び出口46に粉末を送達するために、マウスピース45の第2の入口63と連絡する空気出口65を形成する。第1の入口62を通る空気の取り入れでは、吸入の際にカートリッジの区画を迂回する。吸入器の上面51上の不連続領域は、カートリッジ装着領域55へのアクセスを可能にする。また、
図8は、再構成機構47の軸60に係合したレバー52を示す。
【0047】
図9は、吸入器本体42の近位端に配置されるカートリッジを含まないことを除いて、
図8と同様である、閉鎖した吸入器40を示す。
図9に示す形状では、粉末用量の吸入中に、剪断力による粉末の解凝集を達成するために、押し込み要素66を含むラック54と水平の第1の入口62の密接した近接部とを、マウスピース45の第2の入口63により、ほぼ垂直の形状で関係させる。
図10は、中央縦断面を通る開放配置にあるカートリッジを含まない状態の
図9に示す吸入器40を示し、カートリッジを保持するためのレバー52およびラック54の位置、及び吸入器の内部の端部における吸入器本体42の中央部の位置を示している。また、
図10は、レバー52に接触する軸60により示されるように、機械的にラック54を押すために、可動機構に一体的に係合したラック54を示す。
【0048】
図11~
図15は、さらに別の吸入器を示し、本体72の内部に接続してカートリッジの着脱が可能であり、吸入器70の長手方向の軸Aから約90°の角度に、水平面上で横方向に回転するギヤ機構85により、マウスピース71を吸入器本体72に対して移動可能な吸入器70を示す。さらに、マウスピース71は、空気流入口74と、空気流出口73と、吸入器の本体72の内部と連絡する第2の空気流入口を備える。
図11は、吸入器70の閉鎖または投薬配置を示す。
図12は、カートリッジ76により例示されるように、カートリッジの取り付けまたは装着するための開放配置にある吸入器70を示す。吸入器70は、近位端75、遠位端77、底78、右側面79、左側面80、及び、一端で閉鎖され、その遠位端で開放された頂部81を備える実質的に長方形の本体72を有するように設計される。また、マウスピース71は、中央空気導管から延び、吸入器本体の頂部表面81を覆う1つの部品として形成された側面延長部82を有する。頂部表面81は、マウスピース71が吸入器本体72と垂直な平面を超えて回転することを防ぐために形成された停止端83を含む。マウスピース71を開位置に回転させることにより、
図12に示す通り、本体72の頂部表面81の開放領域にアクセス可能になるように、取り付けまたは再構成機構が作動される。
図13及び
図14は、吸入器70の中央縦断面図を示し、その内、ギヤ機構90による閉止または投薬機構におけるラック86の移動を示すために、
図13はカートリッジを備えた状態を示し、
図14はカートリッジを備えない状況を示す。吸入器本体に対して水平方向における、マウスピース71の右側面79から左側面80への移動は、ギヤ機構を作動させて、近位方向の並進運動により、カップ92を蓋93に対して移動させ、空気入口94および空気出口95と共にカップ内部を通る空気流路を形成し、カップ92に含まれる粉末を放出するための吸入器70の入り口89および空気導管96を連絡させる。この実施の形態において、取り付けおよび再構成機構は、カップ92から外方に延び、固定される棚構造99上に置かれるカートリッジの蓋93を載置するための装着領域91の頂部表面内に構築された棚構造99を備え、カップ92はラック86に収容され、カートリッジは粉末収容形状にある。
【0049】
さらに、他の乾燥粉末吸入器の形態を
図16~
図20に示し、吸入器100は、2つの部分からなる部材、吸入器本体101、および吸入器本体101の一部を覆うハウジングまたはカバー102を備える。
図16に示す一実施の形態では、吸入器100は、マウスピース104を備える近位端103、および吸入器の本体および内部の部分上にスリップオンカバーとして構造的に形成されるハウジング102を備える遠位端105を備える吸入器本体101を備える。
図17に示すハウジング102は遠位端107および近位端106を備え、近位端106は、吸入器本体105の一部を適応させてカプセル化するための開口部を備え、また、その上部表面から突き出た突出部113を備え、吸入に際し、直接的な空気流をマウスピース104の空気導管115に進入させる。一実施の形態では、
図16に示す通り、近位端106は、吸入器100を外部環境から閉鎖するように、吸入器本体101に接触するか、当接する。吸入器100は、閉鎖配置から、ハウジング102を本体105上の遠位方向に並進運動で移動させることにより開放され、カートリッジを取り付けや取り外しをするための、吸入器における装着および/または脱着位置を達成する。
図17は、ハウジング102が遠位側に引き離されて、吸入器本体の遠位部105にアクセスすることを可能にする、開放配置にある吸入器100を示す。この実施形態および他の実施形態では、
図17に示す通り、カートリッジ108が吸入器100のカートリッジ装着領域109に取り付けられており、マウスピース104の第2の入口部を通り、入口111および出口112に延びるマウスピースの中の空気導管と連絡する蓋および出口ポート110を示す。装着領域109は、カートリッジ108の形状にぴったりと形成され、装着中にカートリッジの適切な方向を使用者に視覚的に示すように、形成される。
【0050】
また、
図18では、遠位方向から近位方向における本体105上のハウジング102の並進運動時の、蓋117に対するカートリッジカップ116の位置を示す、閉鎖された投薬配置にある吸入器100の中央縦断面図を示し、格納配置から投薬配置にカートリッジ108の移動を引き起こし、カートリッジ容器のカップ116は、水平面内における近位端106で、開口106を超えて延びるハウジング102の内部の底部における突出剛性要素により、投薬配置に押し込まれる。また、突出剛性要素118は、使用後にカートリッジ108の取り外しを容易にするために、1以上の垂直突起部を含むことができる。さらに、閉鎖配置において、吸入器100に取り付けられたカートリッジは、空気入口119および空気出口120でカートリッジカップ116を通る追加の空気の流路を形成するように再構成され、投薬配置において、周囲空気用のマウスピースを用いて、吸入に際し、カートリッジ108中の乾燥粉末にアクセスする。この実施の形態および他の実施の形態では、吸入した時、空気は空気入口119を通って投薬配置にあるカートリッジ108の空気流路に入り、乾燥粉末粒子がエアロゾル化して空気中に同伴され、マウスピース104の空気導管115中の空気入口およびマウスピース104の空気流路と連絡している空気出口120から排出され、粉末の更なる剪断は粉末がマウスピースの出口112を通って排出される前に起こる。
【0051】
一実施の形態では、吸入器の本体101は、本体101の近位端に一体的に形成されたマウスピースを備え、本体101およびハウジング102の内部と連絡する空気導管115を含み、吸入器100に取り付けられたカートリッジ108の空気吸入口120および周囲空気と直接連絡することができる。また、吸入器本体101は、マウスピースと構造的に連続し、遠位部105および近位部103を有するカートリッジ装着領域121を含む。近位部103および遠位部105は、マウスピース104と共に単一部品を形成し、遠位部105はハウジング102内に差し込み可能である。一実施形態において、
図17および
図20に示すように、本体101とハウジング102は、内部区画にアクセスするための吸入器開放配置を得るために、手動で引き離すことができる。この形態の開放配置では、乾燥粉末を含むカートリッジ108は、視覚的手がかりにより示されるような適切な向きで、本体部105のカートリッジ装着領域において装着または取り付けられ、本体101およびハウジング102は、吸入器100を開閉するために、押したり引いたりされることができる。一実施の形態において、ハウジングは、開放配置から閉鎖配置にするために、本体105の遠位部105上を移動可能であり、これらは互いに接触した時に、吸入器100を閉鎖する。
【0052】
図18および
図19は、閉鎖または投与配置にある吸入器100を示し、閉鎖動作は、カートリッジ108の投薬位置への移動を達成し、さらにカートリッジカップは、突出部118で押されて蓋117とは独立して再構成され、カートリッジ装着領域109に取り付けられたカートリッジ108を通る空気導管を形成する状態を示す。この形状では、吸入器は、マウスピース104を介したユーザによる経口吸入の際に、カップ116内の粉末が吸入器から放出されるように、投薬形状を達成する。
図18に示すこの実施の形態および投薬配置では、本体およびハウジングは互いに当接し、吸入器の分解を妨げるために、1以上の滑り止め構造により、密接に適合される。滑り止め構造のいくつかの例として、吸入器が使用準備済であることをユーザに警告するための音を生成することができるスナップリング、または戻り止めがある。
図17及び
図20は、解放形状の吸入器100を示す。この実施の形態では、吸入器100は実質的に長方形であり、遠位側面及び近位側面の長さがより小さい。本体部105を引いたり押したりすることにより、本体部105上でのハウジング102の移動が達成され、その逆もある。その移動は、長手方向の平面内における吸入器本体105の長辺(第1の辺と第2の辺)から外側に延びるガイドレールおよびトラック123を含む本体により、容易にされる。この実施の形態では、吸入器本体105は、ハウジングの遠位端の開口部と一致するように、その遠位端に開口部を有するように設計されており、吸入の際に、周囲空気を吸入器100の内部チャンバーに導き、案内する。また、吸入器のハウジング102は、移動中にガイドレール123上を滑るための溝またはスロット124を有するようにぴったりと形成され、また、吸入器100の分解を防ぐための1以上の停止端部を備える。押し込みまたは突出部118は、取り付けおよび吸入器100の閉鎖後に、投薬にあるカートリッジを位置決めするように設計される。押し込みまたは突出部118は、カートリッジカップまたは容器116をカートリッジ蓋117に対して移動させ、カートリッジを通る空気流路を形成し、空気入口119および空気出口120を形成して、吸入中にカップ内の粉末のエアロゾル化を可能にし、エアロゾル化した粒子を吸入器のマウスピース空気導管115及びユーザに送達する。
【0053】
吸入器100の説明において、ハウジングの遠位部は、吸入器の本体の一部に係合するための平行構造およびフランジを含み、例えば吸入器の本体をハウジングに固定して、2つの部分を固定するための固定機構を形成し、投薬配置を維持する。一実施の形態では、ハウジング102の遠位部107は、吸入器100の内部と連絡するためのその遠位端に開口部、および吸入器本体105上を滑るように形成された開口部106を有する。また、ハウジング102の遠位部107は、吸入器本体105を包むように形成された外側表面、内側表面およびチャンバーを備える。一実施の形態では、ハウジング102は、吸入の際にマウスピース104に空気流を向けるために、その上部表面に平行な翼状の構造113を含む。吸入器本体部分105は、カートリッジを押し出して滑らせるために、またはハウジングの分解を防ぐために、その中央縦平面に、押し出しまたは突起部118に適合するための溝を設計することができる。また、吸入器本体部105は、その遠位端にハウジング102と係合し、2つの吸入器の部分を固定するための戻り止めを備えるように形成されてもよい。
【0054】
吸入器と共に使用するためのカートリッジの形態は、米国特許8424518号で述べられており、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。要約すると、ここに開示される吸入器の実施の形態で使用するためのカートリッジは、2つの部分を含むが、他の実施の形態も構想されてもよい。カートリッジは、貯蔵中の乾燥粉末が密閉または収容位置に含まれるように形成され、粉末格納位置から吸入または投薬配置まで、吸入器内で再構成されることができる。特定の実施の形態において、カートリッジは、1以上の開口部、格納配置、および投薬配置、外側表面、内部容積を画定する内側表面を有する蓋およびカップを備える。そして、格納配置は内部容積への連絡を制限し、分配配置は、内部容積を通る空気通路を形成し、空気流が所定の態様で内部容積に出入りすることを可能にする。例えば、カートリッジの空気入口に入る空気流が、内部容積内の空気出口を横切るように導かれ、カートリッジからでる薬剤を計算して、粉末の流出の割合が制限されるように、カートリッジの容器が形成されることができる。カートリッジ内の空気流は、空気流出口の流れ方向に対して実質的に垂直になることができ、分配開口を通って流出する前に、内部容積内の粉末を混合および流動化することができる。即時吸入器と使用するためのカートリッジは、患者の必要性、または粉末および/または有効成分の安定性に関する製剤の吸湿性に応じて、個々のブリスターで供給するか、ブリスターでグループ化することができる。
【0055】
本明細書に記載の実施の形態では、乾燥粉末吸入器およびカートリッジは、吸入システムを形成し、分配可能または規定の気流抵抗を達成するように構造的に形成されることができる。それは、そのシステムの流路のいくつかの部分で、空気導管の断面領域または配置を変更することにより、達成することができる。一実施の形態では、乾燥粉末吸入器システムの空気導管の配置は、約0.065~約0.200(√kPa)/liter/分の気流抵抗値を達成することができる。他の実施形態では、4kPaのような所望の圧力降下が達成されるまで、吸入器を通る空気の流れを防止するために、逆止め弁を使用することができ、その点で所望の抵抗値がここに示す範囲内の値に達する。
【0056】
さらに別の実施の形態では、患者に乾燥粉末製剤を送達するための吸入システムが供給される。そのシステムは、容器を受け入れるように形成された容器装着領域と、少なくとも2つの入口開口および少なくとも1つの出口開口を備えたマウスピースと、を含む吸入器を有する。少なくとも2つの入口開口のうちの1つの入口開口は、容器領域と流体連通し、少なくとも2つの入口開口のうちの1つの入口開口は、容器領域を迂回するように形成された流路を経由して、少なくとも1つの出口開口と流体連通し、患者に乾燥粉末製剤を送達する。流導管は、吸入に際し、吸入器を通って流れる総量の30%~90%を送達するように、容器領域を迂回するように形成される。
【0057】
他の実施形態では、患者に乾燥粉末製剤を送達するための吸入システムが供給される。そのシステムは、カートリッジの装着および再構成領域を含む乾燥粉末吸入器を含む。乾燥粉末吸入器とカートリッジの組み合わせにより、投薬配置における剛性の流導管である少なくとも2つも流路と、使用中の吸入システムの粉末解凝集の機構を提供する複数の構造領域を有するように形成される。解凝集のための複数の機構のうちの少なくとも1つは、0.5mm~3mmの最小寸法を有する容器領域内の開口部を閉鎖する凝集体のサイズである。
【0058】
本明細書に開示された実施の形態では、乾燥粉末製剤は、結晶粉末、非晶質粉末またはその結合からなり、その粉末は約2秒未満で吸入器から一貫して分配される。本願の吸入システムは、約0.065~約0.200kPa/liter/分の高抵抗値を示す。それゆえ、カートリッジを含むシステムでは、2~20kPaの間で適用されるピーク吸入圧力降下は、結果的に、約7~70liters/分のシステムを通るピーク流量を生じさせる。これらの流量は、1~30mg、又は50mgまでの粉末の充填質量で、分配されるカートリッジ内容物の75%を超える結果になる。いくつかの実施の形態では、これらの性能特性は、単一の吸入操作でエンドユーザにより達成され、90%を超えるカートリッジ分配率を生成する。特定の実施の形態において、吸入器およびカートリッジシステムは、連続的な流れとして、または患者に送達される粉末の1以上のパルスとして、吸入器から粉末を放出することにより、単回用量を供給するように構成される。一実施の形態では、患者の肺に乾燥粉末製剤を送達するための吸入システムが提供され、投薬形状で、約0.065~約0.200(√kPa)/liter/分の値までの流れに関する総抵抗値を有する流導管を備えるように形成される。この実施の形態および他の実施の形態では、吸入システムの流れに関する総抵抗値は、0.5kPa~7kPaの間の圧力差範囲にわたって、比較的一定である。
【0059】
吸入器の構造的構成は、解凝集機構が50%より大きい吸入画分、及び5.8μm未満の粒子を生産することを可能にする。吸入器は、吸入操作の間に、容器内に含まれる粉末製剤の85%よりも多く放出することができる。一般に、本明細書に開示された吸入器は、30mg~50mgまでの充填質量で、2~5kPaの圧力差で、3秒未満の間に、カートリッジの内容物または容器の内容物の90%よりも多く放出することができる。
【0060】
本発明の吸入器は、主に呼吸が動力源であるとしたが、いくらかの実施の形態では、乾燥粉末製剤の解凝集および送達に必要な圧力差を生成するために、電源を備えることができる。例えば、吸入器は、空気流入口に備えることができる、窒素缶のような圧縮ガス貯蔵エネルギー源などのガス動力源に適応することができる。また、患者が快適なスペースで吸入できるように、プルームを獲得するスペーサを備えることができる。
【0061】
本明細書に記載の実施形態では、吸入器は、単回単位用量を送達する再使用可能な吸入器として供給される。再使用可能な吸入器は、送達される製剤により予め定められた複数回の使用が可能であり、最大限の使用量に達すると処分される。
【0062】
これらの本装置およびシステムは、広範囲の特性を有する粉末の肺送達に有用である。実施の形態は、吸入器と、所望の粉末用量を含む一体型または実装可能な単位用量カートリッジを含むシステムを含む。粉末の肺送達では、商業的に入手可能な製品において安全性及び効能が証明されている担体及び賦形剤が含まれる。また、例示的な実施の形態では、3,6-ビス(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジン;FDKPとして知られるフマリルジケトピペラジンである。FDKPは、懸濁液中において結晶プレートの自己組織化凝集体になることができる微粒子を生成し、参照により本願に組み込まれる米国特許7820676号明細書、同第7709639号明細書及び同第8551528号明細書に開示されているように、工程に応じて、非晶質粉末またはその結合として製造されることができる。ジケトピペラジンを使用して製造された乾燥粉末は、様々な所望の製剤の凍結乾燥、噴霧乾燥溶液または懸濁液により製造することができる。約35~約67m2/gの比表面積(SSA)を有するDKP結晶微粒子は、改良された空気力学的性能および改良された薬物吸着のような、肺への薬物送達に有益な特性を示す。いくつかの実施形態において、ペプチドを含有する製剤に使用するための高容積の結晶性FDKP微粒子は、例えば、35m2/g未満の比表面積を有し、活性剤の量により、粒子の比表面積は約19m2/g~約30m2/g、約28m2/g~約71m2/g、又は約19m2/g~約57m2/gの範囲であることができる。いくつかの実施形態において、インスリンで例示されるようなペプチド活性剤を有するFDKPの微粒子は、約4m2/g~約30m2/gの範囲の比表面積であり、飛行性及び流動性により測定されるような改善された空気力学的特性を有する。
【0063】
一実施の形態では、乾燥粉末製剤は、例えばジケトピペラジン及び薬剤的な活性成分を含んでもよい。この実施の形態において、薬剤的な活性成分または活性剤は、治療される病気または状態に応じて、様々なタイプであり得る。他の実施の形態では、ジケトピペラジンは、体内の標的部位に活性剤を送達するための担体系として使用される粒子、微粒子などを形成するのに有用である、対称分子および非対称ジケトピペラジンを含むことができる。本明細書で使用される「活性剤」という用語は、治療剤、または、タンパク質またはペプチドまたは生体分子のような分子、および、ジケトピペラジン製剤内にカプセル化または結合または混合され、またはジケトピペラジン製剤上に吸着される小分子である。活性剤の任意の形態でジケトピペラジンと結合させることができる。薬物送達系は、治療的、予防的、又は診断的活性を有する生物学的な活性剤を送達するために使用されることができる。
【0064】
フマリルジケトピペラジン3,6-ビス(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジン;FDKP)は、肺適用のための好ましいジケトピペラジンの一つである。
【0065】
【0066】
約0.5~約10μmの間の直径を有する肺送達用の微粒子は、肺に達することができ、また、全身循環に達し、活性剤を送達することができる。喉の転回部分を移動するためには、約10μm未満の直径が必要であり、吐き出されるのを防ぐためには、約0.5μm以上の直径が必要である。一般的に、10μmより大きいか、20μmより大きい直径を有する微粒子は、気道および肺への局所送達に有用である。
【0067】
約0.5~約10ミクロンの直径を有する微粒子は、肺に到達でき、殆どの天然バリアを首尾よく通過することができる。喉の転回部分を移動するためには、約10ミクロン未満の直径が必要であり、吐き出されるのを防ぐためには、約0.5ミクロン以上の直径が必要である。本明細書に開示される実施の形態では、約4~約71m2/gの比表面積(SSA)を有する微粒子は、改善された空気力学性能および改善された薬物吸着のような、肺へ薬物を送達するための有益な特性を示す。これと共に、いくつかの実施の形態において、約35~約65%、45~約63%、又は45~約60%の特定トランス異性体内容物を有する結晶性フマリルジケトピペラジン(FDKP)微粒子を含む組成物が提供される。
【0068】
特定の実施形態において、肺送達用のジケトピペラジン系組成物は、活性剤とともに供給され、そのジケトピペラジンは、フマリルジケトピペラジンであって、実質的に均一に形成された複数の微結晶粒子を含み、その粒子は中空の球状構造であって、自己集合しないジケトピペラジンの微結晶を含むシェルを含み、粒子の体積平均幾何学直径は、5μm未満である。その粒子は、界面活性剤を使用せずに、溶液中のジケトピペラジンと酢酸溶液とを化合させ、高剪断ミキサー中で、2000psiまでの高圧下で同時に均質化して、沈殿物を形成させるステップを含む方法により形成される。そして、その沈殿物を脱イオン水の懸濁液で洗浄し、その懸濁液を濃縮し、その懸濁液を噴霧乾燥装置内で乾燥させる。
【0069】
いくらかの実施形態では、肺送達用のジケトピペラジン系組成物は、活性剤とともに供給され、そのジケトピペラジンは、ナトリウム、マグネシウムを含むフマリルジケトピペラジンの塩であり、その組成物は、非晶質粉末を含む。
【0070】
また、吸入可能な乾燥粉末の送達のシステムは、a)薬剤を含む乾燥粉末、及びb)カートリッジに含まれている粉末を含む吸入器、を含んで供給される。そのカートリッジは、ガス吸入口と、ガス流出口と、カートリッジを固定するハウジングを含み、2つの流路を定義し、第1の流路はガスをカートリッジのガス流入口に入ることを可能にし、第2の流路はガスを容器のガス流入口に迂回させることを可能にする。また、吸入器プルームを超える2kPa以上の圧力降下が適用されて、粒子がマウスピースから放出され、その放出された粒子の50%は10μm以下のVMADを有し、そのカートリッジのガス流入口を迂回する流れは、ガス流入口の流れ方向に対して実質的に垂直であり、流出する流れに影響を及ぼす。
【0071】
本明細書に記載の組成物および方法で使用される活性剤は、任意の医薬品を含むことができる。これらは、例えば、有機合成化合物、タンパク質及びペプチド、多糖類および他の糖、脂質、無機化合物、および核酸配列を含み、治療的、予防的、または診断的活性を含む。ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドは、全てペプチド結合により結合したアミノ酸鎖である。
【0072】
ジケトピペラジンを用いて体内の標的または部位に送達される活性剤は、例えば、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節剤、ワクチン、細胞障害性薬物、神経伝達物質アゴニスト及び拮抗薬、抗生物質、血管作動物質、神経活性剤、麻酔薬及び鎮静剤、ステロイド、充血除去剤、抗ウイルス剤、アンチセンス、抗原、及び抗体を含む。特に、これらの化合物は、インスリン、ヘパリン(低分子量ヘパリンを含む)、カルシトニン、フェルバマート、スマトリプタン、副甲状腺ホルモン及びその活性フラグメント、成長ホルモン、エリスロポエチン、AZT、DDI、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、ラモトリジン、絨毛性性腺刺激ホルモン放出因子、黄体形成放出ホルモン、β-ガラクトシダーゼ、エキセンディン、血管作用性腸ペプチド、アルガトロバンを含む。抗体及びそのフラグメントは、限定されないが、抗-SSX-241-49(滑膜肉腫、Xブレークポイント2)、抗-NY-ESO-1(食道腫瘍関連抗原)、抗-FRAME(優先的に発現するメラノーマの抗原)、抗-PSMA(前立腺特異膜抗原)、抗-メラン-A(メラノーマ腫瘍関連抗原)、及び抗チロシナーゼ((メラノーマ腫瘍関連抗原)を含んでもよい。
【0073】
特定の実施の形態では、肺循環で送達される乾燥粉末製剤は、ペプチド、タンパク質、ホルモン、その類似体又はその結合を含む、活性成分または活性剤を含む。その活性成分は、インスリン、カルシトニン、成長ホルモン、リスロポエチン、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、絨毛性性腺刺激ホルモン放出因子、黄体形成放出ホルモン、卵胞刺激ホルモン、血管作用性腸ペプチド、副甲状腺ホルモン(ブラックベアPTHを含む)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、エキセンディン、オキシントモジュリン、ペプチドYY、インターロイキン2-誘導性チロシンキナーゼ、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、イノシトール要求キナーゼ1(IRE1)または類自体、活性フラグメント、PC-DAC-修飾誘導体、又はそのO-グリコシル化形態である。特定の実施形態において、医薬組成物または乾燥粉末製剤は、フマリルジケトピペラジンを含み、活性成分は、インスリン、副甲状腺ホルモン1-34、GLP-1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、ヘパリン、アディポネクチン、コレシキトキニン(CCK)、セクレチン、ガストリン、グルカゴン、モチリン、ソマトスタチン、脳性的リウム利尿ペプチド(BNP)心房性ナトリウム利尿ペプチド、IGF-1、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インテグリンベータ-4前駆物質(ITB4)受容体拮抗薬、ノシセプチン、ノシスタチン、オルファニンFQ2、カルシトニン、CGRP、アンギオテンシン、サブスタンスP、ニューロキニンA、テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオールを含むカンナビノイド、膵ペプチド、神経ペプチドY、ペプチドを含むデルタ-スリープ-、血管作動性腸ペプチド、その活性剤及び/又はその類似体の1以上の結合から選択される1以上である。
【0074】
肺送達用の乾燥粉末に使用され得る他の活性剤は、トレプロスチニル、サルメテロール、エピネフリン、タクロリムス、バンコマイシン、リネゾリド、フィルガストリン、フェンタニル、カンナビジオール及びテトラヒドロカンナビノールを含むカンナビノイド、パロノセトロン、アンホテリシンB、シルデナフィル、アバナフィル、バルデナフィル及びタダラフィルのようなPDE5阻害剤を含むホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタサイクリンを含むプロスタグランジン、デルタオピオイドアゴニスト及び拮抗薬、カッパオピオイド受容体アゴニスト及び拮抗薬、μオピオイド受容体アゴニスト及び拮抗薬、及び/又は前述の活性剤の1以上の結合のようなオピオイド鎮痛剤を含む神経伝達物質アゴニスト、神経伝達物質拮抗薬を含む。
【0075】
また、本開示は、改良された微結晶粒子、組成物、その粒子の製造方法、および対象の病気および障害を治療するための、肺への改良された薬物送達を可能にする方法を提供する。本明細書で開示される実施の形態は、1以上の活性剤の高い薬物含有量を備えた粉末を生じさせる薬物吸着のための高い能力を有する微晶質ジケトピペラジン粒子を含有する微晶質ジケトピペラジン組成物を供給することにより、改良された送達を達成する。本微晶質粒子で製造された粉末は、より少ない粉末用量で、薬物含有量を送達することができ、患者への薬物送達を容易にすることができる。界面活性剤を含まない溶液、又は出発物質に応じて界面活性剤を含む溶液を利用する方法を含む、様々な方法により製造されることができる。
【0076】
本明細書に開示された他の実施の形態では、複数の実質的に均一な微晶質粒子を含む吸入用の乾燥粉末を含むことができ、その微晶質粒子は、実質的に中空の球状構造を有することができ、懸濁液または溶液中で自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含む多孔のあるシェルを含むことができる。特定の実施の形態では、その微晶質粒子は、提供される薬物及び/又は薬物含有量、及び粉末製造工程における他の要因に応じて、ジケトピペラジンの結晶を含む、実質的に中空の球状および実質的に固体の粒子であり得る。一実施の形態では、微結晶粒子は、比較的多孔であり、約0.43cm3/g、約0.4cm3/g~約0.45cm3/gの平均細孔体積と、BJT吸着により決定されるように、約23nm~約30nm又は約23.8nm~26.2nmの平均細孔サイズを有する粒子を含む。
【0077】
本明細書で開示された特定の実施の形態では、多数の実質的に均一の微晶質粒子を含む粉末を含み、その粒子は、多孔質であり得るシェルを含む実質的に球状の構造を有し、懸濁液または溶液中で自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含み、5μm未満、又は2.5μm未満の体積中幾何学的直径を有する。
【0078】
本明細書の特定の実施形態では、微晶質粒子の約92%までが、5.8μmの体積中幾何学的直径を有する。一実施の形態では、粒子のシェルは、その表面で吸着された1以上の薬物を有するインターロッキングジケトピペラジン微粒子から組み立てられる。いくらかの実施の形態において、その粒子は、内部空隙容積中の薬物、及び/又は、結晶表面に吸着された薬物及びその球体の内部空隙容積中に封入された薬物の結合を封入することができる。
【0079】
特定の実施の形態において、ジケトピペラジン組成物は、実質的に均一に形成された多数の微晶質粒子を含み、その粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含むシェルを含み、その粒子は、界面活性剤の存在なしで、溶液中及び酢酸溶液中で、約45%~65%までのトランス異性体含有量を有するジケトピペラジンを組み合わせ、同時に、沈殿物を形成するための2000psiまでの高圧で、高剪断ミキサー中でホモジナイズ化するステップを含む方法で形成される。そして、脱イオン水との懸濁液中で沈殿物を洗浄し、その懸濁液を濃縮し、噴霧乾燥装置中でその懸濁液を乾燥する。
【0080】
さらに、この方法は、噴霧乾燥工程の前に、薬物又は生物活性剤のような活性剤又は活性成分を含む溶液を、混合しながら添加するステップを含み、その活性剤又は活性成分が、その粒子上に又はその粒子内に吸着及び/又は封入される。この工程で製造された粒子は、サブミクロンサイズの範囲になることができる。
【0081】
特定の実施の形態において、ジケトピペラジン組成物は、実質的に均一に形成された多数の微晶質粒子を含み、その粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含むシェルを含み、5μm未満の体積平均幾何学直径を有する。その粒子は、界面活性剤の存在なしで、溶液中及び酢酸溶液中でジケトピペラジンを組み合わせ、同時に、沈殿物を形成するための2000psiまでの高圧で、高剪断ミキサー中でホモジナイズ化するステップを含む方法で形成される。そして、脱イオン水との懸濁液中で沈殿物を洗浄し、その懸濁液を濃縮し、噴霧乾燥装置中でその懸濁液を乾燥する。
【0082】
さらに、この方法は、噴霧乾燥工程の前に、薬物又は生物活性剤のような活性剤又は活性成分を含む溶液を、混合しながら添加するステップを含み、その活性剤又は活性成分が、その粒子上に又はその粒子内に吸着及び/又は封入される。この工程で製造された粒子は、サブミクロンサイズの範囲になることができる。
【0083】
特定の実施の形態において、ジケトピペラジン組成物は、実質的に均一に形成された多数の微晶質粒子を含み、その微晶質粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含むシェルを含み、5μm未満の体積平均幾何学直径を有する。その粒子は、界面活性剤の存在なしで、溶液中及び酢酸溶液中でジケトピペラジンを組み合わせ、同時に、沈殿物を形成するための2000psiまでの高圧で、高剪断ミキサー中でホモジナイズ化するステップを含む方法で形成される。そして、脱イオン水との懸濁液中で沈殿物を洗浄し、その懸濁液を濃縮し、噴霧乾燥装置中でその懸濁液を乾燥する。
【0084】
活性成分を含む出発物質が、高度の粘度を示す抽出物、又はハチミツ様の粘稠を有する物質である特定の実施の形態では、微晶質粒子は、上記、および抽出物又は粘性材料で結合する前に、タンジェント流ろ過を使用して、それらを洗浄することで形成される。水中で洗浄した後、結果として生じる粒子懸濁液は凍結乾燥されて水分を取り除かれ、活性成分を固体として追加する前のエタノール又はメタノールを含むアルコール溶液、又は懸濁液、又は溶液中で、再懸濁される。一実施の形態では、必要に応じて、組成物を製造する方法で、活性成分と同時に又は活性成分を添加した後であって、噴霧乾燥の前に、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、メチオニン、又は、例えば1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である1以上のリン脂質のような、1以上のアミノ酸を含む追加の賦形剤を添加する工程を含む。特定の実施形態において、組成物の形成は、可溶性を増加させる脂質のような不要な材料の層を取り除き分離するために、所望の活性成分を含む抽出物が、必要に応じてろ過され又はウインタされるステップを含む。
【0085】
さらに、この方法は、溶液を混合しながら添加するステップを含み、その混合は、必要に応じて高剪断ミキサーでホモジナイズ化され又はホモジナイズ化されず、その溶液は、噴霧乾燥工程の前に、薬物又は生物活性剤のような活性剤又は活性成分を含み、その活性剤または活性成分は、粒子上又は粒子内の吸着及び/又は封入される。この工程で製造された粒子は、噴霧乾燥の前にサブミクロンサイズの範囲になることができ、又は、その粒子は、噴霧乾燥の間、その溶液から形成されることができる。
【0086】
これに伴ういくらかの実施形態では、薬物含有量は、FDKPを使用して結晶粉末上に送達されることができ、約10%、約20%、又は約30%以上の含有量で、凍結乾燥され又は噴霧乾燥される。FDKP又はFDKP二ナトリウム塩から形成された結晶質粒子が使用され、その粒子が自己集合せず、サブミクロンサイズの粒子である実施の形態では、薬物含有量は、典型的に、0.01%(w/w)より大きくてもよい。一実施の形態では、微晶質粒子とともに送達される薬物含有量は、送達される薬物にもよるが、約0.01%(w/w)~約75%(w/w)であり、約1%(w/w)~約50%(w/w)であり、約10%(w/w)~約25%(w/w)であり、約10%(w/w)~約20%(w/w)であり、約5%~約30%であり、又は25%より大きい。薬物がインスリンなどのペプチドである例示的な実施の形態では、本発明の微粒子は、典型的に、約10%~45%(w/w)、又は約10%~20%(w/w)のインスリンを含む。特定の実施の形態において、粒子の薬物含有量は、送達される薬物の形状及びサイズに依存して、変化してもよい。
【0087】
一実施の形態では、本明細書の吸入器で送達される組成物は、フマリルジケトピペラジン結晶粒子、及び、テトラヒドロカンナビノール(THC)及び/又はカンナビジオールを含むカンナビノイド、トレプロスチニル、パロノセトロン、副甲状腺ホルモン、シルデナフィル、又はエピネフリンのような活性剤を含んでも良い。カンナビノイドが活性剤として使用される組成物では、カンナビノイド(その誘導体及び/又は類似物を含む)の含有量は、吸入器の含有量の40%よりも大きい粉末送達で、40%(w/w)であってもよい。いくつかの実施の形態では、組成物中のカンナビノイドの含有量は、粉末含有量の約1%~約30%、約5%~約25%(w/w)であってもよい。また、本明細書の組成物は、約25%(w/w)まで、約1%(w/w)~約25%(w/w)、2.5%~20%(w/w)、又は5%~15%(w/w)の量で、ロイシン、イソロイシン、及びメチオニンなど、及び、例えば1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である1以上のリン脂質のような、アミノ酸を含む1以上の賦形剤を含んでもよい。この実施の形態では、吸入器は、単回吸入で、組成物の約50%~100%を放出できる。この実施の形態では、その組成物は、必要に応じて、治療を必要とする患者に投与されることができる。
【0088】
エピネフリンが活性剤として使用される実施の形態において、エピネフリン組成物の含有量は、粉末含有量の約30%(w/w)まで、及び約1%から約35%までを含む。特定の実施の形態において、微結晶粒子を含む組成物は、約2%から約30%まで、又は約0.1%~約20%(w/w)のエピネフリンを含むことができる。この実施の形態において、エピネフリンの粉末は、本明細書に記載の吸入器を用いて、投薬含有量の50%よりも多い粉末の送達L効率で送達することができる。この実施の形態では、ピーナッツアレルゲンを含むナッツ、ペニシリンのような抗生物質、及び他の物質のようなアレルゲンにより引き起こされるアナフィラキシーの発症前に、アレルギー反応の症状を治療するための方法として使用されることができる。本方法は、アレルギー反応の症状を治療する必要があり、アナフィラキシーの初期症状を示す患者に、アナフィラキシーの発症を妨げるために効果的な組成物の約1mg~約15mgまでの用量を含む吸入器を提供すること、患者にアナフィラキシーの発症を妨げるために十分な量のエピネフリンを含む組成物の服用量を含む吸入器を提供することを含む。
【0089】
トレプロスチニルが活性剤として使用される実施の形態において、乾燥粉末組成物は、フマリルジケトピペラジンの微結晶粒子を含み、トレプロスチニルは、その粒子に吸収され、その組成物中のトレプロスチニルの含有量は、粉末含有量の約20%(w/w)まで、及び約0.5%から約10%(w/w)まで、または約1%から約5%(w/w)までを含む。一実施の形態において、本明細書の組成物は、メチオニン、イソロイシン、及びロイシンを含むアミノ酸などの吸入に適した他の賦形剤を含むことができる。この実施の形態では、トレプロスチニル組成物は、単回吸入において、フマリルジケトピペラジンの微結晶粒子およびトレプロスチニルを含む乾燥粉末組成物の約1mg~約15mgを含む有効量を自己投与することで、肺高血圧症の予防および治療に使用されることができる。
【0090】
パロノセトロンが吸入粉末用の活性剤として使用される実施形態では、組成物中のパロノセトロン乾燥粉末の含有量は、乾燥粉末含有量の約20%(w/w)まで、及び約0.1%から約20%まで、または0.1%から約10%(w/w)までを含む。一実施の形態において、パロノセトロン組成物は、組成物への貯蔵安定性を改善するために、フマリルジケトピペラジン二ナトリウム塩又はフマリルジケトピペラジンの結晶合成粒子、及びロイシン、イソロイシン及びメチオニンのようなアミノ酸を含む賦形剤を含んで製造されることができる。この実施の形態において、パロノセトロン吸入組成物は、本吸入器を使用する単回吸入での自己投与による吐き気及び嘔吐を誘発する化学療法の処理及び予防に、化学療法の投薬を受ける前に又は受けると同時に、約5分~30分及び好ましくは約5分~約15分の組成物の投薬により、使用されることができる。
【0091】
別の実施形態では、乾燥粉末を製造するために薬学的に許容される担体は、乾燥粉末を製造するために有用であり、肺送達に適した任意の担体又は賦形剤を含んでもよい。適する担体および賦形剤の例として、ラクトース、マンノース、スクロース、マンニトール、トレハロースのような糖質及び多糖を含む糖類、グリシン、L-ロイシン、イソロイシン、トリロイシン、酒石酸塩、メチオニン、ビタミンA、ビタミンE、クエン酸亜鉛、クエン酸ナトリウム、塩化亜鉛、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80、ホスファチジルコリンなどを含むリン脂質のようなクエン酸、アミノ酸を含む。
【0092】
一実施の形態では、乾燥粉末吸入器を用いて、自己の肺に乾燥粉末製剤を自己投与する方法が提供される。この方法は、閉鎖状態にあり、マウスピースを備えた乾燥粉末吸入器を得ること:予め計量された用量の乾燥粉末製剤を含むカートリッジを得ること:カートリッジを取り付けるために、乾燥粉末吸入器を開放すること:カートリッジを投薬位置に移動させて吸入器を閉じること:マウスピースを口に置き、乾燥粉末製剤を送達するために、1度深く吸入すること、を含む。
【0093】
さらなる実施の形態では、肥満、高血糖、インスリン抵抗性、肺高血圧症、アナフィラキシー、及び/又は糖尿病を治療するための方法が、開示される。その方法は、例えば、式2,5-ジケト-3,6-ジ(4-X-アミノブチル)ピペラジンを含むジケトピペラジンを含む、吸入可能な乾燥粉末組成物または製剤の投与を含む。そして、Xは、スクシニル、グルタリル、マレニル、及びフマリルからなる群より選択される。この実施の形態において、乾燥粉末組成物は、ジケトピペラジン塩を含むことができる。さらに別の実施の形態において、ジケトピペラジンが、薬学的に許容可能な担体または賦形剤を伴う、または伴わない2,5-ジケト-3,6-ジ(4-フマリル-アミノブチル)ピペラジンである乾燥粉末組成物または製剤が提供される。
【0094】
患者の肺に乾燥粉末製剤を送達する吸入システムが提供され、そのシステムは、投薬配置において、0.065~約0.200(√kPa)/liter/分の範囲の全抵抗値を有する流導管を備えるように設定された乾燥粉末吸入器を有する。
【0095】
一実施の形態において、乾燥粉末吸入キットは、上記で述べた乾燥粉末吸入器、気道及び肺疾患、糖尿病及び肥満のような障害または病気を治療するための乾燥粉末製剤を含む1以上に薬剤カートリッジを含んで供給される。
【0096】
また、ここに開示された乾燥粉末吸入器の形態で、患者の病気または障害を治療するための方法が供給される。その治療方法は、上記で述べた群から選択される活性成分、および薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を含む、吸入可能な製剤の用量を含むカートリッジを含む乾燥粉末吸入器を、患者の治療の必要性に応じて供給することを含む。また、患者に、乾燥粉末吸入器を通して約3~4秒間吸入させて、用量を送達することを含む。この方法では、その後、患者は正常な呼吸を再開できる。
【0097】
以下の実施例は、本明細書に記載の吸入器での使用に適した乾燥粉末を製造するためのいくつかのプロセスと、その乾燥粉末を用いた実験により得られたデータを示す。
【0098】
(実施例1)
吸入器とともに使用するためのFDKP微粒子粉末を含む、界面活性剤を含まない乾燥粉末の調製
例示的な実施の形態では、FDKP微晶質粒子を含む、界面活性剤を含まない乾燥粉末を調製した。二重供給高剪断ミキサーを使用し、約25℃±5℃に保持された酢酸溶液(表1)及びFDKP溶液(表2)の概ね等しい質量を、2000psiで、0.001-in2のオリフィスを通して入れ、均質化させて沈殿物を生成した。その沈殿物を、ほぼ同等の温度である脱イオン(DI)水に集めた。その懸濁液中のFDKP微結晶の質量%で示す含有量は、約2-3.5%である。懸濁液のFDKPの濃度は、オーブン乾燥法による固体内容物により分析されることができる。FDKP微結晶の懸濁液は、必要に応じて、脱イオン水を使用したタンジェンシャルフローフィルトレーションにより洗浄されることができる。FDKP微結晶は、必要に応じて、ろ過、遠心分離、噴霧乾燥または凍結乾燥により分離することができる。
【0099】
【0100】
【0101】
上記の方法で製造された微結晶粒子を含む乾燥粉末(A,B,C及びD)について、表面積、含水量及び多孔度測定値を含む様々な特性について試験をした。この試験では、4種類の粉末が使用された。試験した全ての粉末は、0.4%の残留水分を有していた。表2aはこの試験で得られたデータを示す。
【0102】
【0103】
表2aのデータは、試験されたサンプルの微結晶粒子を含む噴霧乾燥されたバルク乾燥粉末の表面積が59m2/g~63m2/gの範囲であることを示す。多孔度のデータは、微結晶粒子が比較的多孔性であり、BJH吸着により決定される平均細孔体積が約0.43cm3/gであり、平均細孔サイズが約23.8nm~26.2nmの範囲であることを示している。多孔度測定のデータは、これらの粒子が、約0.36cm3/gの平均細孔体積および約20nm~約22.6nmの範囲の平均細孔サイズを有する従来のFDKP微結晶とは異なることを示す。
【0104】
(実施例2)
エピネフリンを含有する微結晶FDKP粒子を含有する乾燥粉末の調製
約5%の酢酸水溶液中の約5重量%のエピネフリンの溶液を、実施例1に記載したようにして得られたFDKP微結晶の懸濁液に添加した。また、必要に応じて、ロイシンを、FDKP微結晶の懸濁液に添加した。その混合物を、高効率サイクロンを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を用いて、噴霧乾燥した。プロセスガス(60mm)として窒素が使用された。その混合物を、10-20%のポンプ容量、90-100%の吸引速度、および170-190℃の入り口温度で乾燥した。得られた粉末中のエピネフリン及びロイシンの重量%濃度は、それぞれ2-30%及び0-20%であった。噴霧乾燥器からの放出後のこれらの粉末の送達効率は、約50%~80%の範囲であった。
【0105】
(実施例3)
パロノセトロンを含有する微結晶FDKP粒子を含有する乾燥粉末の調製
DI水中の約5重量%の塩酸パロノセトロンの溶液を、実施例1に記載したようにして得られたFDKP微結晶の懸濁液に添加した。また、必要に応じて、脱イオン(DI)水中のロイシン及びメチオニンを添加した。その混合物を、水酸化アンモニウムでpH6.5±0.5に滴定した。その混合物を、高効率サイクロンを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を用いて、噴霧乾燥した。プロセスガス(60mm)として窒素が使用された。その混合物を、10-12%のポンプ容量、90-100%の吸引速度、および170-190℃の入り口温度で乾燥した。得られた粉末中のパロノセトロン、ロイシン及びメチオニンの重量%濃度は、それぞれ5%、0-20%及び0-10%であった。噴霧乾燥器からの放出後のこれらの粉末の送達効率は、約50%~70%の範囲であった。
【0106】
(実施例4)
トレプロスチニルを含有する微結晶FDKP粒子を含有する乾燥粉末の調製
エチルアルコール中の0.2-1.0wt%のトレプロスチニルを、実施例1に記載したようにして得られたFDKP微結晶の懸濁液に添加した。その混合物を、高効率サイクロンを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を用いて、噴霧乾燥した。プロセスガス(60mm)として窒素が使用された。その混合物を、10-12%のポンプ容量、90-100%の吸引速度、および170-190℃の入り口温度で乾燥した。得られた粉末中のトレプロスチニルの重量%濃度は、0.5-10%であった。噴霧乾燥器からの放出後のこれらの粉末の送達効率は、約50%~70%の範囲であった。
【0107】
(実施例5)
Δ9-THC又はCBDを含有する微結晶FDKP粒子を含有する乾燥粉末の調製
実施例1と同様にして調製された分離したFDKP微結晶粒子を、エチルアルコール中に懸濁させた。主に、Δ9-THC又はCBDのいずれかを含むカンナビス抽出物の約1-4重量%の溶液を、FDKP微結晶のエタノール及びエタノール懸濁液に添加した。必要に応じて、エタノールに溶解した添加剤の溶液も添加した。その混合物を、高効率サイクロンを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を用いて、噴霧乾燥した。プロセスガス(60mm)として窒素が使用された。その混合物を、12-15%のポンプ容量、70-100%の吸引速度、および110-140℃の入り口温度で乾燥した。Δ9-THC及び添加剤の重量%濃度を、表3に示す。噴霧乾燥器からの放出後のこれらの粉末の送達効率は、約50%~70%の範囲であった。
【0108】
Δ9-THC又はCBDを含有する微結晶FDKP粒子の組成
【表3】
【0109】
上記の方法により製造された乾燥粉末を、米国特許第9016147号で記載されているような実質的に解剖学的に正しい気道(ACA)システムを用いて試験した。その乾燥粉末は、室温で、有意な程度の安定性を示し、例えば、1ヶ月の貯蔵で、THC又はCBDの90%超が活性を維持し、この方法を用いて約35%~約75%の範囲の送達効率を示した。
【0110】
上記の開示は、例示的な実施の形態である。本明細書に開示された装置、技術および方法が、本開示の実施において良好に機能する代表的な実施の形態を明らかにするものであることは、当業者に理解されるべきである。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施の形態において多くの変更がなされ、同様の又は類似の結果が得られることは理解されるべきである。
【0111】
他で示されない限り、明細書及び請求項で使用される成分の量、分子量、反応条件などの特性を表す全ての数字は、全ての場合において、「約」という文言により修飾されることを理解するべきである。したがって、反対のことが示されていない限り、明細書及び請求項に記載される数値パラメータは、得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、クレームの範囲に対して均等論の適用を制限する試みではなく、各数値パラメータが、少なくとも、報告された有効数字の数及び通常の丸め技術を適用することにより、解釈されるべきである。広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体例に示された数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定のエラーを含む。
【0112】
(特に請求項の文脈において)本発明を説明するための文脈で使用される用語「a」、「an」、「the」及び同様の言及は、本明細書中で他で指定されない限り、又は明らかに文脈で否定されていない限り、単数および複数の両方を包含するものと解釈される。本明細書で記載される数値の範囲は、その範囲に入る各個別の値を個別に参照する簡略表記の方法として単に役立たせようとするものである。本明細書中で他で指定されない限り、個々の各値は、本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書中で他で指定されない限り、又は明らかに文脈で否定されていない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、または例示的な言語(例えば「など」)は、単に本発明をより良く示すことを意図しており、請求項に記載の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0113】
請求項で使用される「又は」の用語は、他の選択肢のみを指すことを明示的に示さない限り、又は選択肢及び「及び/又は」のみを言及し定義しているのだけれども、その選択肢が相互に違いに排他的である場合を除いて、「及び/又は」を意味する。
【0114】
本明細書で開示される代替の要素又は実施形態のグループ分けは、限定的に解釈されない。各グループの要素は、個別に、又はグループ内の他の要素又は本明細書で開示された他の要素と任意に組み合わされて、参照されてもよく、請求項に記載されてもよい。利便性及び/又は特許性の理由から、1以上のグループの要素が、グループに含まれるか、グループから削除されることが予想される。そのような包含又は削除が起こる場合、明細書は改変されたグループを含むものと考えられ、こうして、請求項で使用される全てのマルクーシュグループの記述を満たすものと考えられる。
【0115】
本発明を実施するために、本発明者らが知る最良の形態を含む、より良い実施の形態が本明細書で記載される。当然のことながら、そのより好ましい実施の形態の変形は、上記の記載を読むことで当業者に明らかになるだろう。本発明者は、そのような変形を当業者によりされることを期待しており、また、発明者は、本明細書に具体的に記載されていることを除いた形態で本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法により許容されるように、本請求項に記載された全ての主題の変形及び同等のものを含む。さらに、本明細書中で他で指定されない限り、又は明らかに文脈で否定されていない限り、全ての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが、本発明に包含される。
【0116】
本明細書に開示された特定の実施の形態は、請求項において、構成する又は本質的に構成するという言語を用いて、さらに限定されてもよい。請求項で使用される場合、補正で提出されるか又は追加されるかどうかに関わらず、構成するという言語は、請求項に記載されていない他の要素、ステップ、又は成分を除外する。本質的に構成するという言語は、請求項の範囲を特定の材料又はステップに限定し、実質的に基礎又は新規の特徴に影響を及ぼさない。そのように、請求項に記載された実施形態は、本質的に又は明示的に記載され、有効になる。
【0117】
さらに、本明細書の至る所で、数々の参考文献が、特許及び刊行物として記載されている。上記の参考文献及び印刷刊行物の各々は、参照により、その全体が個々に本明細書に組み込まれる。
【0118】
さらに、本明細書に開示された実施の形態は、本発明の原理を開示するものであることを理解されたい。本発明の範囲内で他の変形が採用されてもよい。このように、限定ではなく例として、本明細書の開示に従い、別の構成が利用されてもよい。よって、本発明は、図示及び説明されたものに正確に限定されない。
【0119】
(付記)
(付記1)
ハウジングと、
本体であって、当該本体と一体的に形成されたマウスピースを備える、本体と、
を備え、
前記本体は、カートリッジのための装着領域を有し、前記本体及び前記ハウジングは、互いに対して直線的に移動可能であり、差し込みにより互いに係合して、吸入の際に粉末用量を放出するための空気流路を得るように、前記カートリッジを再構成させるように操作可能に構成されている、
乾燥粉末吸入器。
【0120】
(付記2)
前記マウスピースは、前記吸入器本体の内部区画と連絡する空気入口を有する、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0121】
(付記3)
前記吸入器本体上での前記ハウジングの開放配置から閉鎖配置への移行により、前記ハウジングは、前記吸入器に装着された前記カートリッジを再構成する、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0122】
(付記4)
前記本体に対する前記ハウジングの移動は、長手方向軸に沿って構成され、前記吸入器本体の右側及び/又は左側から延びるガイドレールにより、容易になる、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0123】
(付記5)
開放又は装着位置、及び閉鎖又は投薬位置を得られるように構成されている、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0124】
(付記6)
前記ハウジングは、さらに、格納配置から投薬位置にカートリッジを押しこむ突出剛性要素を含む、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0125】
(付記7)
さらに、剛性の流導管を有するように構成されている、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0126】
(付記8)
前記ハウジングは、前記吸入器本体の一部を覆うカバーを含む、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0127】
(付記9)
さらに、前記マウスピースは、第1の入口ポートから出口ポートに延びる内部容積を有し、
前記内部容積は、0.2立方センチメートルより大きい、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0128】
(付記10)
前記吸入器本体は、組み立てられた吸入器において、前記ハウジングから、前記本体が分離するのを防ぐ戻り止めを備える、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0129】
(付記11)
前記吸入器本体上での前記ハウジングの開放配置から閉鎖配置への移行により、前記ハウジングが、前記マウスピースと整列するように、前記カートリッジを位置決めする、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0130】
(付記12)
さらに、乾燥粉末を含む、
付記1に記載の乾燥粉末吸入器。
【0131】
(付記13)
前記乾燥粉末が、吸入用の医薬組成物である、
付記12に記載の乾燥粉末吸入器。
【0132】
(付記14)
前記乾燥粉末は、3,6-ビス(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジンを含む、
付記12に記載の乾燥粉末吸入器。
【0133】
(付記15)
前記乾燥粉末は、1%~40%(w/w)の量のカンナビノイドを含む、
付記14に記載の乾燥粉末吸入器。
【0134】
(付記16)
前記カンナビノイドが、テトラヒドロカンナビノール又はカンナビジオールである、
付記15に記載の乾燥粉末吸入器。
【0135】
(付記17)
さらに、前記乾燥粉末は、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンから選択される、リン脂質を含む、
付記14に記載の乾燥粉末吸入器。
【0136】
(付記18)
本体と、ハウジングと、カートリッジと、マウスピースと、
を含む、乾燥粉末吸入器であって、
前記本体は、前記カートリッジのための装着領域を有し、
前記カートリッジは、フマリルジケトピペラジン及び薬物の微結晶粒子を含む、乾燥粉末組成物を含み、
前記ハウジングは、前記吸入器を開放するために、前記本体上を近位方向から遠位方向に並進的に滑り、又は、前記吸入器を閉鎖するために、前記本体上を遠位方向から近位方向に並進的に滑り、
前記吸入器が閉鎖された時に、前記吸入器が前記乾燥粉末を分配するための1以上の剛性空気導管を備える、
乾燥粉末吸入器。
【0137】
(付記19)
前記薬物は、
テトラヒドロカンナビノール又はカンナビジオールである、
付記18に記載の乾燥粉末吸入器。
【0138】
(付記20)
さらに、前記乾燥粉末は、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンから選択される、リン脂質を含む、
付記18に記載の乾燥粉末吸入器。