(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096398
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】振動デバイス、振動モジュール、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
H03H 9/10 20060101AFI20240705BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20240705BHJP
H03B 5/32 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H03H9/10
H03H9/19 D
H03B5/32 H
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076418
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2020076348の分割
【原出願日】2020-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】西澤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】青木 信也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 敦司
(57)【要約】
【課題】優れた振動特性を有する振動デバイス、振動モジュール、電子機器および移動体を提供すること。
【解決手段】振動デバイスは、振動素子と、中継基板と、ベースと、振動素子と中継基板とを接合する素子側接合部材と、ベースと中継基板とを接合するベース側接合部材と、を有する。また、素子側接合部材は、A軸に沿って並んで配置された第1接合部材および第2接合部材を有する。そして、振動素子が有する第1水晶基板のX軸は、A軸に沿い、中継基板が有する第2水晶基板は、Zカットの水晶基板である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに表裏関係にあり、電気軸であるX軸に沿う第1面および第2面を含む第1水晶基板と、前記第1面に配置される第1励振電極と、前記第2面に前記第1励振電極と対向して配置される第2励振電極と、前記第1面に配置され、前記第1励振電極と電気的に接続される第1端子および前記第2励振電極と電気的に接続される第2端子と、を備える振動素子と、
前記振動素子の前記第1面側に位置する基板と、前記基板に配置される第1基板配線および第2基板配線と、を備えるベースと、
前記振動素子と前記ベースとの間に配置され、厚さ方向が光学軸であるZ軸に沿う第2水晶基板と、前記第2水晶基板の前記振動素子側の第3面に配置される第1中継配線および第2中継配線と、前記第3面とは表裏関係にあり前記ベース側の第4面に配置され、前記第1中継配線と電気的に接続される第3中継配線および前記第2中継配線と電気的に接続される第4中継配線と、を備える中継基板と、
前記第1端子と前記第1中継配線とを電気的に接続する第1接合部材および前記第2端子と前記第2中継配線とを電気的に接続する第2接合部材を備え、前記振動素子と前記中継基板とを接合する素子側接合部材と、
前記第1基板配線と前記第3中継配線とを電気的に接続する第3接合部材および前記第2基板配線と前記第4中継配線とを電気的に接続する第4接合部材を備え、前記ベースと前記中継基板とを接合するベース側接合部材と、を有し、
前記第1接合部材および前記第2接合部材は、前記X軸に沿った方向に並んで配置されることを特徴とする振動デバイス。
【請求項2】
前記第3接合部材および前記第4接合部材は、前記振動素子の平面視で、前記第1接合部材および前記第2接合部材が並ぶ方向に交差する方向に並んで配置される請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記第3接合部材および前記第4接合部材は、前記振動素子の平面視で、前記第1接合部材および前記第2接合部材が並ぶ方向に直交する方向に並んで配置される請求項2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記第1接合部材、前記第2接合部材、前記第3接合部材および前記第4接合部材は、それぞれ、金属バンプである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記金属バンプは、金(Au)で構成される金バンプ、ニッケル(Ni)で構成されるニッケルバンプまたは銅(Cu)で構成される銅バンプである請求項4に記載の振動デバイス。
【請求項6】
前記振動素子の平面視で、前記第1励振電極を前記X軸に沿った方向に延長した領域を第1領域とし、前記第1励振電極を前記X軸に沿った方向に直交する方向に延長した領域を第2領域としたとき、
前記第1接合部材および前記第2接合部材は、前記第1領域および前記第2領域と重ならない請求項1ないし5のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項7】
前記第1接合部材および前記第2接合部材は、前記振動素子の平面視で、前記第1水晶基板の中心と交わり前記X軸に沿う仮想線上に配置される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項8】
前記第1水晶基板は、
前記第1励振電極および前記第2励振電極が配置される振動部と、
前記第1端子および前記第2端子が配置され、前記振動部よりも薄い支持部と、を有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項9】
前記第1水晶基板は、
前記第1励振電極および前記第2励振電極が配置される振動部と、
前記第1端子および前記第2端子が配置される支持部と、
前記振動部と前記支持部との間に位置し、前記振動部および前記支持部よりも薄い接続部と、を有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の振動デバイスを備えることを特徴とする振動モジュール。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の振動デバイスと、
前記振動デバイスから出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の振動デバイスと、
前記振動デバイスから出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を備えることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイス、振動モジュール、電子機器および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された圧電振動デバイスは、セラミックスからなるベースと、ATカット水晶基板からなる圧電振動片と、Zカット水晶基板からなるサポート材と、を有する。そして、圧電振動片は、サポート材を介してベースに支持されている。また、ベースとサポート材との間には一対の第1金属バンプが配置され、これら一対の第1金属バンプによってベースとサポート材とが機械的および電気的に接続されている。また、サポート材と圧電振動片との間には一対の第2金属バンプが配置され、これら一対の第2金属バンプによってサポート材と圧電振動片とが機械的および電気的に接続されている。
【0003】
なお、特許文献1の
図1には、圧電振動片の長手方向に沿ってX軸が記載されているが、明細書の詳細な説明中にX軸を説明する記載はない。そのため、このX軸が圧電振動片を構成するATカット水晶基板の電気軸を表すものなのか、あるいは、単に三次元座標を表すものなのかが不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1の圧電振動デバイスでは、ベースと圧電振動片との間にサポート材を介している。そのため、ベースと第1金属バンプとの間、第1金属バンプとサポート部材との間、サポート部材と第2金属バンプとの間、第2金属バンプと圧電振動片との間、と言ったように線膨張係数の異なる部材同士の界面が多くなる。このように、線膨張係数の異なる部材同士の界面の数が増えると、互いの線膨張係数の差に起因して圧電振動片に加わる応力が増加し、圧電振動片の変形が大きくなって周波数精度が悪化する、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる振動デバイスは、互いに表裏関係にあり、電気軸であるX軸に沿う第1面および第2面を含む第1水晶基板と、前記第1面に配置される第1励振電極と、前記第2面に前記第1励振電極と対向して配置される第2励振電極と、前記第1面に配置され、前記第1励振電極と電気的に接続される第1端子および前記第2励振電極と電気的に接続される第2端子と、を備える振動素子と、
前記振動素子の前記第1面側に位置する基板と、前記基板に配置される第1基板配線および第2基板配線と、を備えるベースと、
前記振動素子と前記ベースとの間に配置され、厚さ方向が光学軸であるZ軸に沿う第2水晶基板と、前記第2水晶基板の前記振動素子側の第3面に配置される第1中継配線および第2中継配線と、前記第3面とは表裏関係にあり前記ベース側の第4面に配置され、前記第1中継配線と電気的に接続される第3中継配線および前記第2中継配線と電気的に接続される第4中継配線と、を備える中継基板と、
前記第1端子と前記第1中継配線とを電気的に接続する第1接合部材および前記第2端子と前記第2中継配線とを電気的に接続する第2接合部材を備え、前記振動素子と前記中継基板とを接合する素子側接合部材と、
前記第1基板配線と前記第3中継配線とを電気的に接続する第3接合部材および前記第2基板配線と前記第4中継配線とを電気的に接続する第4接合部材を備え、前記ベースと前記中継基板とを接合するベース側接合部材と、を有し、
前記第1接合部材および前記第2接合部材は、前記X軸に沿った方向に並んで配置される。
【0007】
本発明にかかる振動モジュールは、上述の振動デバイスを備える。
【0008】
本発明にかかる電子機器は、上述の振動デバイスと、
前記振動デバイスから出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を備える。
【0009】
本発明にかかる移動体は、上述の振動デバイスと、
前記振動デバイスから出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る振動デバイスの分解斜視図である。
【
図10】中継基板が湾曲変形した状態を示す断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る振動デバイスを示す平面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る振動デバイスを示す平面図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係る振動デバイスが有する振動素子を示す断面図である。
【
図16】本発明の第5実施形態に係る振動デバイスが有する振動素子を示す断面図である。
【
図17】本発明の第6実施形態に係る振動モジュールを示す断面図である。
【
図18】第7実施形態のスマートフォンを示す斜視図である。
【
図19】第8実施形態の自動車を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の振動デバイス、振動モジュール、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る振動デバイスの分解斜視図である。
図2は、
図1中の振動デバイスの断面図である。
図3は、ベースを示す平面図である。
図4は、
図3中のW-W線断面図である。
図5は、中継基板を示す平面図である。
図6は、ATカットのカット角を示す図である。
図7は、振動素子を示す平面図である。
図8および
図9は、中継基板の変形例を示す平面図である。
図10は、中継基板が湾曲変形した状態を示す断面図である。
図11は、中継基板の変形例を示す平面図である。なお、説明の便宜上、各図には、互いに直交するA軸、B軸およびC軸を図示する。また、各軸の矢印先端側を「プラス側」とも言い、基端側を「マイナス側」とも言う。また、C軸のプラス側を「上」とも言い、マイナス側を「下」とも言う。また、C軸に沿った方向からの平面視を単に「平面視」とも言う。
【0013】
図1に示すように、振動デバイス1は、ベース4と、ベース4の上面にベース側接合部材8を介して接合された中継基板6と、中継基板6の上面に素子側接合部材9を介して接合された振動素子5と、中継基板6および振動素子5を覆うように、接合部材7を介してベース4の上面に接合されたリッド3と、を有する。このような振動デバイス1では、
図2に示すように、ベース4とリッド3とにより中継基板6および振動素子5を収容する収納空間Sが形成される。収納空間Sは、気密であり、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態となっている。これにより、振動素子5のCI(クリスタルインピーダンス)値が低下し、発振特性が向上する。ただし、収納空間Sの雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気圧状態、加圧状態となっていてもよい。
【0014】
図3および
図4に示すように、ベース4は、基板41と、基板41に配置された第1基板配線42および第2基板配線43と、を有する。また、基板41は、薄板であり、互いに表裏関係にある下面411および上面412を有する。また、基板41は、下面411と上面412とを貫通する2つの貫通孔413、414を有する。また、基板41の平面視形状は、矩形である。
【0015】
基板41は、半導体基板である。半導体基板としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板や、GaP、GaAs、InP等の化合物半導体基板を用いることができる。基板41として半導体基板を用いることにより、振動デバイス1を半導体プロセスによって形成することができる。そのため、振動デバイス1を精度よく製造することができると共に、その小型化を図ることができる。また、基板41にリン(P)、ボロン(B)等の不純物をドープして複数の能動素子を形成し、能動素子同士を電気的に接続することにより、基板41に、例えば発振回路を含む半導体回路を形成することもできる。このように、基板41のスペースを有効活用することができる。本実施形態では、基板41としてシリコン基板を用いている。これにより、入手し易く、安価で加工も容易な基板41となる。
【0016】
なお、基板41の絶縁性を確保するために、基板41の表面には絶縁膜410が形成されている。絶縁膜410は、シリコン酸化膜(SiO2膜)で構成されている。絶縁膜410の形成方法は、特に限定されず、例えば、基板41の表面を熱酸化することにより形成してもよいし、TEOS(テトラエトキシシラン)を用いたプラズマCVDにより形成してもよい。なお、絶縁膜410としては、特に限定されず、例えば、ポリイミド等の絶縁性の樹脂材料から構成されていてもよいし、異種材料が積層した複合体で構成されていてもよい。
【0017】
ただし、基板41としては、半導体基板に限定されず、例えば、セラミック基板、ガラス基板等を用いることもできる。
【0018】
また、第1基板配線42は、上面412に配置され、収納空間S内に臨む内部端子421と、下面411に配置された外部端子422と、貫通孔413内に配置され、内部端子421と外部端子422とを電気的に接続する貫通電極423と、を有する。同様に、第2基板配線43は、上面412に配置され、収納空間S内に臨む内部端子431と、下面411に配置された外部端子432と、貫通孔414内に配置され、内部端子431と外部端子432とを電気的に接続する貫通電極433と、を有する。
【0019】
なお、本実施形態では、下面411には、さらに、2つのダミー端子44、45が配置されている。ダミー端子44、45は、電気的な役割を担っておらず、例えば、対象物との接合強度を高めるために設けられている。ただし、ダミー端子44、45の役割としては、これに限定されない。また、ダミー端子44、45は、省略してもよい。
【0020】
図2に示すように、リッド3は、下面に開口する有底の凹部32を有する。リッド3は、凹部32内に中継基板6および振動素子5を収容した状態でベース4に接合されている。リッド3は、半導体基板である。半導体基板としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板や、GaP、GaAs、InP等の化合物半導体基板を用いることができる。リッド3として半導体基板を用いることにより、振動デバイス1を半導体プロセスによって形成することができるため、振動デバイス1を精度よく製造することができると共に、その小型化を図ることができる。
【0021】
特に、本実施形態では、リッド3としてシリコン基板を用いている。これにより、入手し易く、安価で加工も容易なリッド3となる。また、基板41とリッド3の材料を揃えることができ、これらの熱膨張係数を等しくすることができる。そのため、熱膨張に起因する応力の発生およびその増減が抑えられ、優れた振動特性を有する振動デバイス1となる。
【0022】
ただし、リッド3としては、特に限定されず、例えば、セラミック基板、ガラス基板等を用いることもできる。また、リッド3として、基板41と異種の基板を用いてもよい。特に、リッド3として光透過性を有するガラス基板を用いると、振動デバイス1の製造後に、リッド3を介して振動素子5にレーザーを照射して励振電極の一部を除去することにより、振動素子5の周波数調整を行うことができる。
【0023】
このようなリッド3は、接合部材7を介してベース4と直接接合されている。本実施形態では、直接接合の中でも金属同士の拡散を利用した拡散接合を用いてリッド3とベース4とが接合されている。ただし、接合方法としては、これに限定されず、例えば、リッド3およびベース4の各接合面にアルゴンガス等の不活性ガスを照射して、これらの接合面を活性して直接接合してもよい。また、樹脂接着剤、低融点ガラス等の各種接合部材を用いて接合してもよい。
【0024】
図1および
図2に示すように、中継基板6は、ベース4の上側にベース4と離間して配置されている。また、中継基板6は、Zカットの第2水晶基板61と、第2水晶基板61に配置された一対の配線62、63と、を有する。Zカットの第2水晶基板61について簡単に説明すると、水晶は、互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、それぞれ、電気軸、機械軸、光学軸と呼ばれる。そして、第2水晶基板61は、X-Y面に沿って切り出された「Zカット水晶基板」である。すなわち、第2水晶基板61は、Z軸方向に厚みを有し、X-Y面方向に広がりを有する。
【0025】
第2水晶基板61は、薄板であり、互いに表裏関係にある第4面としての下面611および第3面としての上面612を有する。また、第2水晶基板61の平面視形状は、矩形である。特に、本実施形態では、Y軸方向を長辺とし、X軸方向を短辺とする長方形である。また、第2水晶基板61は、X軸方向がA軸方向と一致し、Y軸方向がB軸方向と一致し、Z軸方向がC軸と一致するように配置されている。
【0026】
また、
図5に示すように、配線62は、上面612に配置された第1中継配線621と、下面611に配置された第3中継配線622と、側面を通って第1中継配線621と第3中継配線622とを電気的に接続する接続配線623と、を有する。同様に、配線63は、上面612に配置された第2中継配線631と、下面611に配置された第4中継配線632と、側面を通って第2中継配線631と第4中継配線632とを電気的に接続する接続配線633と、を有する。
【0027】
また、上面612に配置された第1中継配線621および第2中継配線631は、A軸方向に並んで配置されている。一方、下面611に配置された第3中継配線622および第4中継配線632は、B軸方向に並んで配置されている。なお、接続配線623、633の構成は、特に限定されず、例えば、第2水晶基板61を貫通する貫通電極を含んでいてもよい。
【0028】
このような中継基板6は、ベース側接合部材8を介してベース4の上面412に接合されている。ベース側接合部材8は、互いに離間して配置された第3接合部材B3および第4接合部材B4を有する。また、
図3および
図5に示すように、第3接合部材B3は、内部端子421と第3中継配線622とに接触し、第1基板配線42と配線62とを電気的に接続している。一方、第4接合部材B4は、内部端子431と第4中継配線632とに接触し、第2基板配線43と配線63とを電気的に接続している。なお、これら第3接合部材B3および第4接合部材B4は、B軸方向に並んで配置されている。
【0029】
図1および
図2に示すように、振動素子5は、中継基板6の上側に中継基板6と離間して配置されている。また、振動素子5は、ATカットの第1水晶基板51と、第1水晶基板51に配置された一対の電極52、53と、を有する。ATカットの第1水晶基板51は、厚みすべり振動モードを有し、三次の周波数温度特性を有する。そのため、振動素子5は、優れた温度特性を有する。
【0030】
ATカットについて簡単に説明すると、水晶は、前述したように、互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。
図6に示すように、第1水晶基板51は、X-Z面をX軸回りに所定の角度θ回転させた平面に沿って切り出された「回転Yカット水晶基板」であり、θ=35°15’回転させた平面に沿って切り出した基板を「ATカット水晶基板」という。なお、以下では、角度θに対応してX軸まわりに回転したY軸およびZ軸をY’軸およびZ’軸とする。すなわち、第1水晶基板51は、Y’軸方向に厚みを有し、X-Z’面方向に広がりを有する。
【0031】
図2に示すように、第1水晶基板51は、薄板であり、互いに表裏関係にある第1面としての下面511および第2面としての上面512を有する。また、
図1および
図7に示すように、第1水晶基板51の平面視形状は、矩形である。特に、本実施形態では、X軸方向を長辺とし、Z’軸方向を短辺とする長方形である。また、
図7に示すように、第1水晶基板51は、厚みすべり振動する振動部51Aと、振動部51Aの周囲に位置し、振動部51Aと一体化された支持部51Bと、を有する。本実施形態の第1水晶基板51は、振動部51Aと支持部51Bとが同じ厚さを有するフラット型である。また、第1水晶基板51は、X軸方向がA軸方向と一致し、Z’軸方向がB軸方向と一致し、Y’軸方向がC軸と一致するように配置されている。
【0032】
電極52は、振動部51Aの下面511に配置された第1励振電極521と、支持部51Bの下面511に配置された第1端子522と、第1励振電極521と第1端子522とを電気的に接続する第1接続配線523と、を有する。また、電極53は、振動部51Aの上面512に、第1励振電極521と対向して配置された第2励振電極531と、支持部51Bの下面511に配置された第2端子532と、第2励振電極531と第2端子532とを電気的に接続する第2接続配線533と、を有する。また、第1端子522および第2端子532は、A軸方向に並んで配置されている。
【0033】
ただし、第1水晶基板51としては、これに限定されず、振動部51Aが支持部51Bよりも厚いメサ型であってもよいし、振動部51Aが支持部51Bよりも薄い逆メサ型であってもよい。また、第1水晶基板51の周囲を研削して面取りするベベル加工や、上面および下面を凸曲面とするコンベックス加工が施されていてもよい。また、メサ型の場合には、下面511側および上面512側の一方にだけ突出した構成であってもよいし、逆メサ型の場合には、下面511側および上面512側の一方にだけ凹没した構成であってもよい。
【0034】
このような振動素子5は、素子側接合部材9を介して中継基板6の上面612に接合されている。素子側接合部材9は、互いに離間して配置された第1接合部材B1および第2接合部材B2を有する。また、第1接合部材B1は、第1端子522と第1中継配線621とに接触し、電極52と配線62とを電気的に接続している。一方、第2接合部材B2は、第2端子532と第2中継配線631とに接触し、電極53と配線63とを電気的に接続している。
【0035】
また、第1接合部材B1および第2接合部材B2は、A軸方向に並んで配置されている。また、平面視で、第1水晶基板51の中心Oと交わりA軸に沿う軸を仮想線Jとしたとき、仮想線J上に第1接合部材B1および第2接合部材B2が配置されている。これにより、素子側接合部材9によって、振動素子5をバランスよく支持することができる。
【0036】
第1接合部材B1、第2接合部材B2、第3接合部材B3および第4接合部材B4としては、導電性と接合性とを兼ね備えていれば、特に限定されず、例えば、金バンプ、銀バンプ、銅バンプ、ニッケルバンプ、はんだバンプ等の各種金属バンプ、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系の各種接着剤に銀フィラー等の導電性フィラーを分散させた導電性接着剤等を用いることができる。ただし、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4としては、金属バンプであることが好ましい。これにより、導電性接着剤のような濡れ広がりが生じないため、導電性接着剤と比べて、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4の小型化を図ることができる。また、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4からのガスの発生を抑制でき、収納空間Sの環境変化、特に圧力の上昇を効果的に抑制することができる。また、導電性接着剤と比べて、より高い接合強度を発揮することができる。
【0037】
さらに、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4としては、金属バンプの中でも、金バンプ、ニッケルバンプ、銅バンプのいずれかであることが好ましく、金バンプであることがさらに好ましい。本実施形態では、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4として金属バンプを用いている。このように、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4として、金バンプ、ニッケルバンプ、銅バンプのいずれか、これらの中でも特に金バンプを用いることにより、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4と第1、第2水晶基板、51、61との線膨張係数差を十分に小さくすることができ、線膨張係数差に起因する応力の発生を効果的に抑制することができる。
【0038】
なお、金バンプとは、金(Au)で構成されたバンプであり、ニッケルバンプとは、ニッケル(Ni)で構成されたバンプであり、銅バンプとは、銅(Cu)で構成されたバンプである。また、金バンプは、実質的に金(Au)だけで構成されていてもよいし、金(Au)の他にも、金(Au)以外の金属材料、その他各種添加剤等を含んでいてもよい。ニッケルバンプ、銅バンプについても同様である。
【0039】
以上、振動デバイス1の各部について簡単に説明した。このような振動デバイス1では、各部の材料、向き、配置等が工夫されており、応力が生じ難く、かつ、生じた応力が振動素子5に伝達され難い。そのため、振動デバイス1は、優れた振動特性を発揮することができる。
【0040】
以下、これについて説明する。前述したように、振動デバイス1では、中継基板6上に振動素子5が接合されている。そして、中継基板6を振動素子5と同じ材料である水晶から形成している。このように、中継基板6を振動素子5と同じ材料から形成すれば、中継基板6と振動素子5との線膨張係数が同じとなり、これらの間に線膨張係数差に起因する応力が生じないと考えられる。しかしながら、水晶は、向きによって線膨張係数が異なる特性を有しており、単純に、中継基板6を振動素子5と同じ材料である水晶から形成しただけでは、これらの間の線膨張係数差を同じとすることができない。なお、水晶の線膨張係数は、X軸方向およびY軸方向では、それぞれ、13.7ppm/℃であり、Z軸方向では、9.7ppm/℃である。
【0041】
そこで、振動デバイス1では、
図7に示すように、振動素子5の第1水晶基板51のX軸および中継基板6の第2水晶基板61のX軸を、これらを接合する第1接合部材B1および第2接合部材B2の並び方向であるA軸と一致させている。すなわち、振動素子5の第1水晶基板51のX軸の向き、中継基板6の第2水晶基板61のX軸の向きおよび第1、第2接合部材B1、B2の並び方向を互いに揃えている。このような構成とすることにより、A軸方向に沿った線膨張係数を中継基板6および振動素子5で等しくすることができ、熱膨張係数差に起因した応力が振動素子5に加わり難くなる。そのため、振動素子5の振動特性の低下を効果的に抑制することができる。
【0042】
なお、前述したように、水晶ではX軸方向の線膨張係数とY軸方向の線膨張係数とが等しい。つまり、X-Y面方向であれば、如何なる方向でも線膨張係数が等しい。そのため、例えば、
図8に示すように、第2水晶基板61のY軸がA軸と一致している構成や、
図9に示すように、第2水晶基板61のX軸およびY軸が共にA軸に対して傾斜している構成であってもよい。これらの構成においても、本実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0043】
なお、前述したように、中継基板6は、B軸に並んで配置された第3接合部材B3および第4接合部材B4を介してベース4に接合されている。ベース4は、主にシリコンから形成されており、シリコンの線膨張係数は、2.8ppm/℃である。これに対して、中継基板6のB軸方向と一致するY軸方向の線膨張係数は、13.7ppm/℃である。このように、ベース4と中継基板6とではB軸方向の線膨張係数が大きく異なるため、これらの間に線膨張係数差に起因したB軸方向の応力が生じ、
図10に示すように、中継基板6がA軸を中心に略円弧状に湾曲変形する。
【0044】
そこで、ベース4との線膨張係数差に起因する中継基板6の湾曲変形により生じる応力が振動素子5に伝わり難くなるように、第1、第2接合部材B1、B2の並び方向を湾曲変形の方向であるB軸方向に直交するA軸方向としている。つまり、平面視で、第1、第2接合部材B1、B2は、第3、第4接合部材B3、B4が並ぶ方向に対して交差、特に直交する方向に並んで配置されている。そのため、中継基板6の湾曲変形に伴う第1、第2接合部材B1、B2の相対的位置関係の変化を抑制することができ、中継基板6の湾曲変形に伴って生じる応力が振動素子5に加わり難くなる。特に、本実施形態のように、第1、第2接合部材B1、B2が並ぶ方向と、第3、第4接合部材B3、B4が並ぶ方向とを直交させることにより、中継基板6の状態に関わらず、すなわち、湾曲変形していようがなかろうが第1、第2接合部材B1、B2の相対的位置関係を一定に保つことができる。そのため、中継基板6の湾曲変形に伴って生じる応力が振動素子5により加わり難くなる。
【0045】
なお、これに限定されず、例えば、第1、第2接合部材B1、B2は、第3、第4接合部材B3、B4が並ぶ方向であるB軸方向に対して直交以外の角度で交差した方向に並んで配置されていてもよいし、第3、第4接合部材B3、B4が並ぶ方向であるB軸方向に並んで配置されていてもよい。
【0046】
また、
図5に示すように、平面視で、第1、第2接合部材B1、B2の中心同士を結ぶ線分を線分L1とし、第3、第4接合部材B3、B4の中心同士を結ぶ線分を線分L2としたとき、線分L1は、線分L2の垂直二等分線となる。これにより、
図10に示すように、第1、第2接合部材B1、B2を、中継基板6の湾曲変形の変曲点となる部分に配置することができる。そのため、中継基板6の湾曲変形に伴う第1、第2接合部材B1、B2のA軸まわりの傾斜を抑制することができる。したがって、振動素子5の姿勢が安定し、中継基板6やベース4との接触を抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、平面視で、第3、第4接合部材B3、B4が振動素子5と重ならないように配置されている。具体的には、第3接合部材B3は、振動素子5に対してB軸方向プラス側に位置し、第4接合部材B4は、振動素子5に対してB軸方向マイナス側に位置している。これにより、第3、第4接合部材B3、B4を十分に離間させることができ、中継基板6をより安定して支持することができる。ただし、これに限定されず、例えば、
図11に示すように、第3、第4接合部材B3、B4が振動素子5と重なって配置されていてもよい。これにより、本実施形態と比べて中継基板6のB軸方向の長さを短くすることができるため、振動デバイス1の小型化を図ることができる。
【0048】
また、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4は、それぞれ、金バンプである。金バンプの構成材料である金(Au)の線膨張係数は、14.3ppm/℃である。そのため、第1、第2接合部材B1、B2と第1、第2水晶基板51、61との線膨張係数差を十分に小さく抑えることができる。その結果、第1、第2接合部材B1、B2と振動素子5との界面に生じる熱応力、第1、第2接合部材B1、B2と中継基板6との界面に生じる熱応力、および、第3、第4接合部材B3、B4と中継基板6との界面に生じる熱応力をそれぞれ十分に小さく抑えることができる。そのため、応力が生じ難く、さらには、生じた応力が振動素子5に伝わり難い振動デバイス1となる。なお、金バンプと同様に好ましいとして挙げた銅バンプの構成材料である銅(Cu)の線膨張係数は、16.8ppm/℃であり、ニッケルバンプの構成材料であるニッケル(Ni)の線膨張係数は、12.8ppm/℃である。そのため、これらによっても、金バンプからは効果が若干劣るが、上述した効果を十分に発揮することができる。
【0049】
以上、振動デバイス1について説明した。このような振動デバイス1は、前述したように、互いに表裏関係にあり、電気軸であるX軸に沿う第1面としての下面511および第2面としての上面512を含む第1水晶基板51と、下面511に配置される第1励振電極521と、上面512に第1励振電極521と対向して配置される第2励振電極531と、下面511に配置され、第1励振電極521と電気的に接続される第1端子522および第2励振電極531と電気的に接続される第2端子532と、を備える振動素子5と、振動素子5の下面511側に位置する基板41と、基板41に配置される第1基板配線42および第2基板配線43と、を備えるベース4と、振動素子5とベース4との間に配置され、厚さ方向が光学軸であるZ軸に沿う第2水晶基板61と、第2水晶基板61の振動素子5側の第3面である上面612に配置される第1中継配線621および第2中継配線631と、上面612とは表裏関係にありベース4側の第4面である下面611に配置され、第1中継配線621と電気的に接続される第3中継配線622および第2中継配線631と電気的に接続される第4中継配線632と、を備える中継基板6と、第1端子522と第1中継配線621とを電気的に接続する第1接合部材B1および第2端子532と第2中継配線631とを電気的に接続する第2接合部材B2を備え、振動素子5と中継基板6とを接合する素子側接合部材9と、第1基板配線42と第3中継配線622とを電気的に接続する第3接合部材B3および第2基板配線43と第4中継配線632とを電気的に接続する第4接合部材B4を備え、ベース4と中継基板6とを接合するベース側接合部材8と、を有する。そして、第1接合部材B1および第2接合部材B2は、X軸に沿った方向に並んで配置される。このような構成とすることにより、第1、第2接合部材B1、B2の並び方向に沿った線膨張係数を中継基板6および振動素子5で等しくすることができる。そのため、熱膨張係数差に起因した応力が振動素子5に加わり難くなる。その結果、振動素子5の振動特性の低下を効果的に抑制することができる。
【0050】
また、前述したように、第3接合部材B3および第4接合部材B4は、振動素子5の平面視で、第1接合部材B1および第2接合部材B2が並ぶ方向に交差する方向に並んで配置される。これにより、ベース4との線膨張差に起因した中継基板6の湾曲変形に伴う第1、第2接合部材B1、B2の相対的位置関係の変化を抑制することができる。そのため、中継基板6の湾曲変形に伴って生じる応力が振動素子5に加わり難くなる。
【0051】
また、前述したように、第3接合部材B3および第4接合部材B4は、振動素子5の平面視で、第1接合部材B1および第2接合部材B2が並ぶ方向に直交する方向に並んで配置される。これにより、中継基板6の状態に関わらず、すなわち、湾曲変形が生じていようがなかろうが第1、第2接合部材B1、B2の相対的位置関係を一定に保つことができる。そのため、中継基板6の湾曲変形に伴って生じる応力が振動素子5により加わり難くなる。
【0052】
また、前述したように、第1接合部材B1、第2接合部材B2、第3接合部材B3および第4接合部材B4は、それぞれ、金属バンプである。これにより、導電性接着剤のような濡れ広がりが生じないため、導電性接着剤と比べて、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4の小型化を図ることができる。また、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4からのガスの発生を抑制でき、収納空間Sの環境変化、特に圧力の上昇を効果的に抑制することができる。また、導電性接着剤と比べて、より高い接合強度を発揮することができる。
【0053】
また、前述したように、第1、第2、第3、第4接合部材B1、B2、B3、B4を構成する金属バンプは、金(Au)で構成される金バンプ、ニッケル(Ni)で構成されるニッケルバンプまたは銅(Cu)で構成される銅バンプである。これにより、第1、第2接合部材B1、B2と振動素子5との界面に生じる熱応力、第1、第2接合部材B1、B2と中継基板6との界面に生じる熱応力、および、第3、第4接合部材B3、B4と中継基板6との界面に生じる熱応力をそれぞれ十分に小さく抑えることができる。
【0054】
また、前述したように、第1接合部材B1および第2接合部材B2は、振動素子5の平面視で、第1水晶基板51の中心Oと交わりX軸に沿う仮想線J上に配置される。これにより、振動素子5をバランスよく支持することができる。
【0055】
<第2実施形態>
図12は、本発明の第2実施形態に係る振動デバイスを示す平面図である。
図13は、振動部の変位量を示すグラフである。
【0056】
本実施形態に係る振動デバイス1は、第1、第2接合部材B1、B2の配置が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、第2実施形態の振動デバイス1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図12では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0057】
図12に示すように、第1接合部材B1および第2接合部材B2は、平面視で、振動素子5の外縁に沿って配置されている。また、平面視で、第1励振電極521をA軸方向すなわち第1水晶基板51のX軸方向に延長した領域を第1領域Q1とし、第1励振電極521をA軸方向に直交するB軸方向すなわち第1水晶基板51のZ’軸方向に延長した領域を第2領域Q2としたとき、第1接合部材B1および第2接合部材B2は、第1領域Q1および第2領域Q2と重ならないように配置されている。これにより、第1接合部材B1および第2接合部材B2を振動素子5の振動部51Aの中心からより離間して配置することができる。そのため、第1、第2接合部材B1、B2から振動部51Aまでの応力伝搬経路が長くなり、振動部51Aに応力が加わり難くなる。その結果、振動素子5の振動特性の低下を効果的に抑制することができる。
【0058】
図13に、前述した第1実施形態、本実施形態および比較例として第1、第2接合部材B1、B2をB軸方向に並べて配置した構成について、振動部51の変位量を比較したグラフを示す。同図中の実線J1が第1実施形態、実線J2が本実施形態、実線J3が比較例を示す。なお、C軸方向の変位量が小さい程、振動部51Aに応力が加わり難いことを意味している。同図から分かるように、比較例に対して、前述した第1実施形態においても十分な効果が得られるが、本実施形態によれば、さらなる効果が得られる。
【0059】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0060】
<第3実施形態>
図14は、本発明の第3実施形態に係る振動デバイスを示す平面図である。
【0061】
本実施形態に係る振動デバイス1は、振動素子5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、第3実施形態の振動デバイス1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図14では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0062】
図14に示すように、本実施形態の振動デバイス1では、振動素子5の第1端子522および第2端子532が振動部51AのB軸方向マイナス側に位置している。
【0063】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0064】
<第4実施形態>
図15は、本発明の第4実施形態に係る振動デバイスが有する振動素子を示す断面図である。
【0065】
本実施形態に係る振動デバイス1は、振動素子5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、第4実施形態の振動デバイス1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図15では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0066】
本実施形態に係る振動デバイス1では、
図15に示すように、振動素子5がメサ型である。つまり、第1水晶基板51では、振動部51Aは、支持部51Bよりも厚い。振動部51Aは、支持部51Bに対してY’軸方向の両側に突出している。このようなメサ型の振動素子5とすることより、振動部51Aの厚み滑り振動を振動部51Aに効果的に閉じ込めることができる。そのため、振動素子5の振動漏れを効果的に抑制することができ、優れた振動特性を有する振動素子5となる。
【0067】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1では、第1水晶基板51は、第1励振電極521および第2励振電極531が配置される振動部51Aと、第1端子522および第2端子532が配置され、振動部51Aよりも薄い支持部51Bと、を有する。これにより、厚み滑り振動を振動部51Aに効果的に閉じ込めることができる。そのため、振動素子5の振動漏れを効果的に抑制することができ、優れた振動特性を有する振動素子5となる。
【0068】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
<第5実施形態>
図16は、本発明の第5実施形態に係る振動デバイスが有する振動素子を示す断面図である。
【0070】
本実施形態に係る振動デバイス1は、振動素子5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、第5実施形態の振動デバイス1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図16では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0071】
図16に示すように、本実施形態に係る振動デバイス1では、振動素子5がメサ型であり、さらに、第1、第2端子522、532が配置されている部分が周囲から突出した厚肉となっている。つまり、第1水晶基板51は、第1励振電極521および第2励振電極531が配置される振動部51Aと、第1端子522および第2端子532が配置される支持部51Bと、振動部51Aと支持部51Bとの間に位置し、振動部51Aおよび支持部51Bよりも薄い接続部51Cと、を有する。これにより、前述した第4実施形態と同様に、厚み滑り振動を振動部51Aに効果的に閉じ込めることができる。さらに、第1、第2端子522、532が配置され、中継基板6に接合される部分である支持部51Bが厚肉化されているため、振動素子5の機械的強度を高めることができる。
【0072】
このような第5実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0073】
<第6実施形態>
図17は、本発明の第6実施形態に係る振動モジュールを示す断面図である。
【0074】
図17に示す振動モジュール1000は、支持基板1010と、支持基板1010に搭載された回路基板1020と、回路基板1020に搭載された振動デバイス1と、回路基板1020および振動デバイス1をモールドするモールド材Mと、を有する。
【0075】
支持基板1010は、例えば、インターポーザー基板である。支持基板1010の上面には複数の接続端子1011が配置され、下面には複数の実装端子1012が配置されている。また、支持基板1010内には図示しない内部配線が配置され、この内部配線を介して、各接続端子1011が、対応する実装端子1012と電気的に接続されている。このような支持基板1010としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、セラミック基板、樹脂基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板等を用いることができる。
【0076】
また、回路基板1020は、ダイアタッチ材を介して支持基板1010の上面に接合されている。回路基板1020は、振動デバイス1が有する振動素子5を発振させてクロック信号等の基準信号の周波数を生成する発振回路1023が形成されており、その上面に発振回路1023と電気的に接続された複数の端子1022が配置されている。そして、一部の端子1022は、ボンディングワイヤーBWを介して接続端子1011と電気的に接続されており、一部の端子1022は、例えば、半田等の導電性の接合部材Bを介して振動デバイス1と電気的に接続されている。
【0077】
モールド材Mは、回路基板1020および振動デバイス1をモールドし、水分、埃、衝撃等から保護している。モールド材Mとしては、特に限定されないが、例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂を用いることができ、トランスファーモールド法によってモールドすることができる。
【0078】
以上のような振動モジュール1000は、振動デバイス1を備える。そのため、前述した振動デバイス1の効果を享受でき、優れた信頼性を発揮することができる。
【0079】
<第7実施形態>
図18は、第7実施形態のスマートフォンを示す斜視図である。
【0080】
図18に示すスマートフォン1200は、本発明の電子機器を適用したものである。スマートフォン1200には、発振器の一部として用いられる振動デバイス1と、振動デバイス1から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路1210と、を有する。演算処理回路1210は、例えば、画面1208から入力された入力信号に基づいて、表示画面を変化させたり、特定のアプリケーションを立ち上げたり、警告音や効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させたりすることができる。
【0081】
このような電子機器としてのスマートフォン1200は、振動デバイス1と、振動デバイス1から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路1210と、を備える。そのため、前述した振動デバイス1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0082】
なお、振動デバイス1を備える電子機器は、前述したスマートフォン1200の他にも、例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチールカメラ、タブレット端末、時計、スマートウォッチ、インクジェットプリンター、テレビ、スマートグラス、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ドライブレコーダー、電子手帳、電子辞書、電子翻訳機、電卓、電子ゲーム機器、玩具、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、車両、鉄道車輌、航空機、ヘリコプター、船舶等の各種計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
【0083】
<第8実施形態>
図19は、第8実施形態の自動車を示す斜視図である。
【0084】
図19に示す移動体としての自動車1500は、エンジンシステム、ブレーキシステムおよびキーレスエントリーシステム等のシステム1502を含んでいる。また、自動車1500には、発振器の一部として用いられる振動デバイス1と、振動デバイス1から出力される信号に基づいて動作し、システム1502を制御する演算処理回路1510と、を有する。
【0085】
このように、移動体としての自動車1500は、振動デバイス1と、振動デバイス1から出力される信号に基づいて動作する演算処理回路1510と、を備える。そのため、前述した振動デバイス1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0086】
なお、振動デバイス1を備える移動体は、自動車1500の他、例えば、ロボット、ドローン、二輪車、航空機、船舶、電車、ロケット、宇宙船等であってもよい。
【0087】
以上、本発明の振動デバイス、振動モジュール、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…振動デバイス、3…リッド、32…凹部、4…ベース、41…基板、410…絶縁膜、411…下面、412…上面、413…貫通孔、414…貫通孔、42…第1基板配線、421…内部端子、422…外部端子、423…貫通電極、43…第2基板配線、431…内部端子、432…外部端子、433…貫通電極、44、45…ダミー端子、5…振動素子、51…第1水晶基板、51A…振動部、51B…支持部、51C…接続部、511…下面、512…上面、52…電極、521…第1励振電極、522…第1端子、523…第1接続配線、53…電極、531…第2励振電極、532…第2端子、533…第2接続配線、6…中継基板、61…第2水晶基板、611…下面、612…上面、62…配線、621…第1中継配線、622…第3中継配線、623…接続配線、63…配線、631…第2中継配線、632…第4中継配線、633…接続配線、7…接合部材、8…ベース側接合部材、9…素子側接合部材、1000…振動モジュール、1010…支持基板、1011…接続端子、1012…実装端子、1020…回路基板、1022…端子、1023…発振回路、1200…スマートフォン、1208…画面、1210…演算処理回路、1500…自動車、1502…システム、1510…演算処理回路、B…接合部材、B1…第1接合部材、B2…第2接合部材、B3…第3接合部材、B4…第4接合部材、BW…ボンディングワイヤー、J…仮想線、L1、L2…線分、M…モールド材、O…中心、Q1…第1領域、Q2…第2領域、S…収納空間、θ…角度
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに表裏関係にあり、電気軸であるX軸に沿う第1面および第2面を含む第1水晶基板と、前記第1面に配置される第1励振電極と、前記第2面に前記第1励振電極と対向して配置される第2励振電極と、前記第1面に配置され、前記第1励振電極と電気的に接続される第1端子および前記第2励振電極と電気的に接続される第2端子と、を備える振動素子と、
前記振動素子の前記第1面側に位置する基板と、前記基板に配置される第1基板配線および第2基板配線と、を備えるベースと、
前記振動素子と前記ベースとの間に配置され、厚さ方向が光学軸であるZ軸に沿う第2水晶基板と、前記第2水晶基板の前記振動素子側の第3面に配置される第1中継配線および第2中継配線と、前記第3面とは表裏関係にあり前記ベース側の第4面に配置され、前記第1中継配線と電気的に接続される第3中継配線および前記第2中継配線と電気的に接続される第4中継配線と、を備える中継基板と、
前記第1端子と前記第1中継配線とを電気的に接続する第1接合部材および前記第2端子と前記第2中継配線とを電気的に接続する第2接合部材を備え、前記振動素子と前記中継基板とを接合する素子側接合部材と、
前記第1基板配線と前記第3中継配線とを電気的に接続する第3接合部材および前記第2基板配線と前記第4中継配線とを電気的に接続する第4接合部材を備え、前記ベースと前記中継基板とを接合するベース側接合部材と、を有し、
前記第1接合部材および前記第2接合部材は、前記X軸に沿った方向に並んで配置されており、
前記第3接合部材および前記第4接合部材は、前記振動素子の平面視で、前記第1接合部材および前記第2接合部材が並ぶ方向に交差する方向に並んで配置されており、
前記振動素子の平面視で、前記第3接合部材および前記第4接合部材の前記X軸に沿った方向における位置は、前記第1接合部材と前記第2接合部材との間であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項2】
前記第3接合部材および前記第4接合部材は、前記振動素子の平面視で、前記第1接合部材および前記第2接合部材が並ぶ方向に直交する方向に並んで配置される請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記第1接合部材、前記第2接合部材、前記第3接合部材および前記第4接合部材は、それぞれ、金属バンプである請求項1または2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記金属バンプは、金(Au)で構成される金バンプ、ニッケル(Ni)で構成されるニッケルバンプまたは銅(Cu)で構成される銅バンプである請求項3に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記振動素子の平面視で、前記第1励振電極を前記X軸に沿った方向に延長した領域を第1領域とし、前記第1励振電極を前記X軸に沿った方向に直交する方向に延長した領域を第2領域としたとき、
前記第1接合部材および前記第2接合部材は、前記第1領域および前記第2領域と重ならない請求項1または2に記載の振動デバイス。
【請求項6】
前記第1接合部材および前記第2接合部材は、前記振動素子の平面視で、前記第1水晶基板の中心と交わり前記X軸に沿う仮想線上に配置される請求項1または2に記載の振動デバイス。
【請求項7】
前記第1水晶基板は、
前記第1励振電極および前記第2励振電極が配置される振動部と、
前記第1端子および前記第2端子が配置され、前記振動部よりも薄い支持部と、を有する請求項1または2に記載の振動デバイス。
【請求項8】
前記第1水晶基板は、
前記第1励振電極および前記第2励振電極が配置される振動部と、
前記第1端子および前記第2端子が配置される支持部と、
前記振動部と前記支持部との間に位置し、前記振動部および前記支持部よりも薄い接続部と、を有する請求項1または2に記載の振動デバイス。
【請求項9】
請求項1または2に記載の振動デバイスを備えることを特徴とする振動モジュール。
【請求項10】
請求項1または2に記載の振動デバイスと、
前記振動デバイスから出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項1または2に記載の振動デバイスと、
前記振動デバイスから出力される信号に基づいて動作する演算処理回路と、を備えることを特徴とする移動体。