(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096402
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】運搬用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/40 20060101AFI20240705BHJP
B65D 1/38 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B65D1/40
B65D1/38
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076551
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2019150173の分割
【原出願日】2019-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川島 昭洋
(72)【発明者】
【氏名】西田 拓司
(57)【要約】
【課題】運搬用容器を持ち易くする。
【解決手段】底壁13と、前記底壁13上に立設された側壁11、12により内部に収容空間Cが形成された合成樹脂製の運搬用容器10であって、前記側壁11には手を挿入するための持ち手孔20が貫通形成されており、前記持ち手孔20の上面を形成する前記側壁11における前記収容空間C側の部分には、下方に突出する突条30が前記側壁11の主面に沿って延びるように形成されており、前記突条30の下端部における前記収容空間C側の部分及び前記突条30の下端部における前記収容空間Cとは反対側の部分には、前記突条30の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条30に沿って延びるように形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、
前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、
前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されており、
前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されていることを特徴とする運搬用容器。
【請求項2】
前記突条の下端部における前記収容空間側の前記曲面又は前記傾斜面と、前記突条の下端部における前記収容空間側とは反対側の前記曲面又は前記傾斜面との間には、平坦面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の運搬用容器。
【請求項3】
前記上面からの前記突条の突出長は、0.5~3.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
底壁と側壁とで区画された収容空間内に荷物を入れて運搬したり保管したりする合成樹脂製の運搬用容器が汎用されている。
特許文献1には、長方形板状の底壁の上に一対の長側壁及び短側壁が立設された合成樹脂製の運搬用容器に係る発明が記載されている。一対の短側壁のそれぞれには持ち手孔が貫設されており、使用者は、持ち手孔のそれぞれに左右の手を入れた状態で運搬用容器を運搬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、短側壁に貫設された持ち手孔は、その上面が短側壁の収容空間側の内面とほぼ直角となるように形成されている。そのため、持ち手孔に手を入れて運搬用容器を持ち上げると、持ち手孔の上面と短側壁の内面との間の角部が使用者の指の関節に当たったり、持ち手孔の上面が使用者の指の腹を潰すことになり指が痛くなる場合がある。特に重量物を入れて運搬するような場合にはこの現象が顕著となる。
【0005】
また、こうした運搬用容器を合成樹脂材料で成形する際、金型間に形成された僅かな隙間に合成樹脂材料が入り込むことによりバリが発生する場合がある。特に、持ち手孔の上面と短側壁の内面との間の角部は、金型間の境界部分となることからバリが発生し易くなる。そのため、持ち手孔の上面と短側壁の内面との間の角部に発生したバリが使用者の指の関節や腹に当たることによっても指が痛くなることが考えられる。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運搬用容器を持ち易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の運搬用容器は、底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されており、前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されている。
【0008】
持ち手孔に手を入れて運搬用容器を持ち上げる際、指の関節と関節との間の腹で持ち手孔の上面を支持し、指の先端側と掌とで持ち手孔より上側の側壁を把持するように持つと持ち易い。この場合、持ち手孔の上面を形成する側壁における収容空間側の部分が指の関節に当たり、指の腹は持ち手孔の上面に潰されることになる。上記の構成によれば、持ち手孔の上面を形成する側壁における収容空間側の部分には突条が形成されているため、突条が指の関節に当たることによって、指の腹が持ち手孔の上面で過度に潰されることが抑制される。
【0009】
また、突条の下端部における収容空間側の部分及び収容区間側とは反対側の部分には、曲面又は傾斜面が形成されている。そのため、これら曲面又は傾斜面によって、突条の指に対する当たりが柔らかくなり、運搬用容器を持ち上げる際に突条が指の関節に当たっても指が痛くなり難い。運搬用容器を持ち易くすることができる。
【0010】
上記の構成において、前記突条の下端部における前記収容空間側の前記曲面又は前記傾斜面と、前記突条の下端部における前記収容空間側とは反対側の前記曲面又は前記傾斜面との間には、平坦面が形成されていることが好ましい。
【0011】
運搬用容器を金型内で成形する際に、金型間の境界部分が曲面又は傾斜面に位置していると、境界部分の位置が曲面又は傾斜面上でずれ易い。そして、金型間の境界部分の位置がずれると、金型間に隙間ができ易くバリが発生し易い。上記の構成によれば、突条の下端部に平坦面が形成されているため、突条の下端部における曲面又は傾斜面近くの平坦面に、金型間の境界部分が位置するようにすることができる。これにより、境界部分の位置がずれ難くなり、バリの発生が抑制される。持ち易い運搬用容器が得られる。
【0012】
上記の構成において、前記上面からの前記突条の突出長は、0.5~3.0mmであることが好ましい。
上記構成によれば、持ち手孔に手を入れて運搬用容器を持ち上げる際、指の関節が持ち手孔の突条で過度に潰されることが抑制され、指の腹が持ち手孔の上面で過度に潰されることが抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運搬用容器を持ち易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の運搬用容器の斜視図であり、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図。
【
図2】(a)は運搬用容器の短側壁の拡大断面図、(b)は(a)の点線部分の拡大部であり、持ち手孔の拡大断面図。
【
図3】持ち手孔の上面を形成する短側壁における突条の拡大断面図。
【
図4】運搬用容器の成形時の金型について説明する図。
【
図5】持ち手孔に手を挿入した状態について説明する図。
【
図6】(a)~(d)は、突条の変更例について説明する拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した運搬用容器10について説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の運搬用容器10は、上方に開口する有底箱状に形成されており、内部には、荷物を入れるための収容空間Cが形成されている。運搬用容器10は、長方形板状の底壁13と、底壁13の対向する短側辺に沿って立設された一対の短側壁11と、底壁13の対向する長側辺に沿って立設された一対の長側壁12を有している。なお、以下の説明では、運搬用容器10の底壁13を水平な床面に接地した状態で、運搬用容器の上下方向、水平方向を規定する。
【0016】
運搬用容器10の短側壁11、長側壁12、及び底壁13は、合成樹脂製の板材が一体に連結された形状をなしている。短側壁11及び長側壁12は、底壁13に対してほぼ垂直に立設されており、短側壁11と長側壁12との連結部分は、上下方向に延びる湾曲面となっている。
【0017】
運搬用容器を構成する合成樹脂としては従来公知のものを適宜選択して使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0018】
図1(a)及び(b)に示すように、短側壁11及び長側壁12は、上下方向及び水平方向に延びるように設けられた複数のリブによって補強されている。具体的には、短側壁11及び長側壁12の上端縁には、補強リブとしての上部フランジ14が水平方向外方へ突出形成されており、短側壁11及び長側壁12の下端部には、補強リブとしての下部フランジ15が水平方向外方へ突出形成されている。また、上部フランジ14と下部フランジ15との間には、水平方向に延びる複数の横リブ16と、上下方向に延びる複数の縦リブ17が、外方へ突出形成されている。
【0019】
図1(b)に示すように、下部フランジ15が形成された部分より下方には、横リブ16及び縦リブ17は形成されていない。そのため、運搬用容器10は、複数個を上下方向にスタッキング可能に構成されている。二つの運搬用容器10をスタッキングする際、一方の運搬用容器10の下部フランジ15より下方の部分を、他方の運搬用容器10の上方開口から挿入すると、一方の運搬用容器10の下部フランジ15が、他方の運搬用容器10の上部フランジ14上に載置され、一方の運搬用容器10が他方の運搬用容器10に対して水平方向への移動が規制された状態でスタッキングされる。
【0020】
図1及び
図2(a)に示すように、短側壁11及び長側壁12のそれぞれには、使用者が手を挿入するための持ち手孔20が貫通形成されている。持ち手孔20は、短側壁11及び長側壁12の上部であって、水平方向の中央の位置に形成されている。持ち手孔20は、短側壁11及び長側壁12で同じ構成であるため、以下では、短側壁11に形成された持ち手孔20について説明する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、持ち手孔20は、短側壁11に形成された横リブ16及び縦リブ17で囲まれた部分に貫設形成されている。持ち手孔20の上面は、持ち手孔20の上側の横リブ16の下面で形成され、持ち手孔20の下面は、持ち手孔20の下側の横リブ16の上面で形成され、持ち手孔20の側面は、持ち手孔20の左右の縦リブ17の側面で形成されている。ここでは、持ち手孔20の上面を形成する横リブ16を上部横リブ21とし、持ち手孔20の下面を形成する横リブ16を下部横リブ22とする。
【0022】
図2(a)に示すように、上部横リブ21は、他の横リブ16及び縦リブ17とほぼ同じ突出長に形成されている。下部横リブ22は、上部横リブ21より突出長が短く形成されており、その突出長は他の横リブ16及び縦リブ17の約半分程度である。
【0023】
図2(b)に示すように、持ち手孔20の上面を形成する上部横リブ21の下面21aには、下方に向けて突出する突条30が、短側壁11の主面に沿って延びるように形成されている。突条30は、上部横リブ21の下面21aにおける収容空間C側の端縁部分に形成されている。また、突条30は、持ち手孔20の水平方向の全長、つまり、上部横リブ21の下面21aの水平方向の全長に亘って形成されている。下面21aは、突条30が形成された部分以外では、水平方向に延びる平坦面21bとされている。
【0024】
図3に示すように、突条30の下端部における収容空間C側の部分には、突条30の横断面が湾曲形状とされた曲面からなる湾曲部31が形成されている。湾曲部31は、突条30の全長に亘って延びるように形成されている。また、突条30の下端部における収容空間Cとは反対側の部分には、突条30の横断面が面取り形状とされた傾斜面からなる傾斜部32が形成されている。傾斜部32は、突条30の全長に亘って延びるように形成されている。ここで、突条30の横断面が面取り形状とされた傾斜面とは、突条30が横断面長方形状に突出形成されていると仮定した場合に、下端部における長方形状の断面の一つの角部を面取りして形成されたような形状の傾斜面を言うものとする。傾斜部32は、下方ほど収容空間C側に向かう傾斜面として形成されている。
【0025】
湾曲部31と傾斜部32との間には、水平方向に延びる平坦面としての平坦部33が形成されている。
上部横リブ21の下面21aからの突条30の突出長、突出幅の値は特に限定されるものではないが、運搬用容器10を持ち易くするためには、突条30の突出長は、0.5~3.0mm程度であることが好ましく、1.0~2.0mm程度であることがより好ましい。また、突条30の突出幅は、1.0~5.0mm程度であることが好ましく、1.0~4.0mm程度であることがより好ましい。突条30の突出幅のうち、平坦部33の幅は、突条30の突出幅の50~90%程度であることが好ましく、60~80%程度であることがより好ましい。
【0026】
図3に示すように、持ち手孔20の上方側の短側壁11の内面には、下方へ行くほど外方へ向けて傾斜する下向き傾斜面11aが形成されている。本実施形態の下向き傾斜面11aは、上部横リブ21の上面21cと略同じ高さ位置から下側に形成されている。
【0027】
次に、運搬用容器10を成形するための製造方法について、金型構造を中心として説明する。
運搬用容器10は、成形用の金型40のキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出した後、金型40を冷却することによって成形される。
【0028】
図4に示すように、成形用の金型40は、図示しない固定型と、可動型41と、スライド型42を備えている。固定型、可動型41、及びスライド型42を型締めすると、その間に運搬用容器10の形状のキャビティが形成される。
図4では、金型40のキャビティ内で成形された運搬用容器10の突条30部分を拡大して示している。金型40を冷却後、成形された運搬用容器10を取り出すために離型する。この際、可動型41を上方へ移動させるとともに、スライド型42を水平方向に移動させて、固定型から可動型41及びスライド型42を離型する。
【0029】
図4に示すように、上部横リブ21の突条30では、可動型41とスライド型42との境界部分は、収容空間C側の湾曲部31のごく近傍の平坦部33に位置するように構成されている。平坦面として形成された平坦部33に可動型41とスライド型42との境界部分が位置していることから、平坦部33に段差又はパーティングラインが形成されて、短側壁11の内面には段差又はパーティングラインが形成されない。そして、熱可塑性樹脂材料で射出成形した際には、可動型41とスライド型42との境界部分の位置が平坦部33ではずれ難くなる。これにより、成形された運搬用容器10の突条30でのバリの発生が抑制される。なお、図示は略すが、こうした段差又はパーティングラインは、持ち手孔20の下面を形成する下部横リブ22の上面にも形成される。
【0030】
次に、運搬用容器10の作用について説明する。
運搬用容器10の一対の短側壁11及び一対の長側壁12のそれぞれには、使用者が手を挿入するための持ち手孔20が貫設形成されている。短側壁11で、持ち手孔20の上面を形成する上部横リブ21の下面21aには、運搬用容器10の収容空間C側の端縁部分に下方に突出する突条30が形成され、突条30が形成された部分以外は平坦面21bとされている。
【0031】
図5に示すように、使用者が、一対の短側壁11のそれぞれに形成された持ち手孔20に左右の手をそれぞれ挿入して持ち上げる際に、突条30の部分に指の第一関節が当たるように手を挿入すると、突条30は第一関節に沿うような状態で第一関節に当たる。このとき、下面21aの平坦面21bが第一関節と第二関節との間の指の腹に当たる。突条30が第一関節で支持されていることから、下面21aの平坦面21bが指の腹を強く潰すように作用することが抑制される。運搬用容器10を持ち上げた際に、第一関節と第二関節との間の指の腹に痛みを感じることが抑制される。
【0032】
また、突条30の下端部における収容空間C側の部分には、突条30の横断面が湾曲形状とされた曲面からなる湾曲部31が形成され、突条30の下端部における収容空間Cとは反対側の部分には、突条30の横断面が面取り形状とされた傾斜面からなる傾斜部32が形成されている。湾曲部31及び傾斜部32は、突条30の全長に亘って延びるように形成されている。そのため、持ち手孔20に挿入された手の指の第一関節に対する突条30からの当たりが柔らかくなる。
【0033】
さらに、突条30の下端部における湾曲部31と傾斜部32との間には、平坦部33が形成されており、運搬用容器10を成形するための金型40は、可動型41とスライド型42との境界部分が、収容空間C側の湾曲部31のごく近傍の平坦部33に位置するように構成されている。そのため、可動型41とスライド型42との境界部分の位置がずれ難くなり、成形された運搬用容器10の突条30でのバリの発生が抑制される。これによっても、手の指の第一関節に対する突条30からの当たりが柔らかくなる。
【0034】
また、持ち手孔20の上方側の短側壁11の内面には、下方へ行くほど外方へ向けて傾斜する下向き傾斜面11aが形成されている。そのため、突条30の部分に指の第一関節が当たるように手を挿入したときに、下向き傾斜面11aが形成されていることによって第一関節より先の部分が短側壁11の内面にフィットし易くなり握り易い。
【0035】
上記実施形態の運搬用容器によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)短側壁11に形成された持ち手孔20の上面となる上部横リブ21の下面21aにおける収容空間C側の部分には、下方に突出する突条30が短側壁11の主面に沿って延びるように形成されている。
【0036】
そのため、持ち手孔20に手を入れて運搬用容器10を持ち上げる際、突条30に指の関節が当たるようにして持ち上げると、指の腹が上部横リブ21の下面21aで過度に潰されることが抑制される。運搬用容器10を運搬する際に指に痛みを感じ難く、運搬用容器10が持ち易くなる。
【0037】
(2)突条30の下端部における収容空間C側の部分には湾曲部31が形成され、突条30の下端部における収容空間Cとは反対側の部分には傾斜部32が形成されている。
そのため、湾曲部31及び傾斜部32によって、突条30の指に対する当たりが柔らかくなり、運搬用容器10を持ち上げる際に突条30が指の関節に当たっても指が痛くなり難い。運搬用容器10を持ち易くすることができる。
【0038】
(3)突条30の下端部における湾曲部31と傾斜部32との間には、平坦面としての平坦部33が形成されている。
そのため、運搬用容器10を金型40内で成形する際に、可動型41とスライド型42との境界部分が平坦部33に位置するようにすれば、境界部分の位置がずれ難くなり、バリの発生が抑制される。持ち易い運搬用容器が得られる。
【0039】
(4)突条30の上部横リブ21の下面21aからの突出長は、0.5~3.0mm程度である。
そのため、持ち手孔20に手を入れて運搬用容器10を持ち上げる際、指の関節が上部横リブ21の突条30で過度に潰されることが抑制され、指の腹が上部横リブ21の下面21aで過度に潰されることが抑制される。運搬用容器10が持ち易くなる。
【0040】
(5)持ち手孔20は、短側壁11及び長側壁12の上部であって、水平方向の中央の位置に形成されている。
そのため、床面等に接地した状態の運搬用容器10を持ち上げ易い。
【0041】
(6)持ち手孔20は、一対の短側壁11及び一対の長側壁12にそれぞれ形成されている。
そのため、挿入し易い位置の持ち手孔20を適宜選択することができる。
【0042】
(7)持ち手孔20は、運搬用容器10を補強するための上部横リブ21、下部横リブ22、及び縦リブ17によって囲まれた位置に貫設されている。
そのため、短側壁11及び長側壁12に貫設された持ち手孔20の周囲が補強されている。
【0043】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・上記実施形態の運搬用容器10では、突条30の下端部における収容空間C側の部分には湾曲部31が形成され、突条30の下端部における収容空間Cとは反対側の部分には、傾斜部32が形成されているがこれに限定されない。
図6(d)に示すように、収容空間C側の部分に傾斜部32が形成され、収容空間Cとは反対側の部分に湾曲部31が形成されていてもよい。
【0045】
・突条30の形状は適宜変更することができる。例えば、
図6(a)に示すように、収容空間C側の部分と収容空間Cとは反対側の部分との両方に湾曲部31が形成されていてもよい。
【0046】
・
図6(a)に示すように、平坦部33が形成されていなくてもよい。
・
図6(b)に示すように、収容空間C側の部分と収容空間Cとは反対側の部分との両方に傾斜部32が形成されていてもよい。
【0047】
・上記実施形態の運搬用容器10では、突条30は上部横リブ21の下面21aにおける収容空間C側の端縁部分に形成されているが、
図6(c)、(d)に示すように、収容空間Cとは反対側にやや変位した位置に形成されていてもよい。
【0048】
・上記実施形態の運搬用容器10では、突条30は、持ち手孔20の水平方向の全長、つまり、上部横リブ21の下面21aの水平方向の全長に亘って形成されているが、これに限定されない。上部横リブ21の下面21aの水平方向の中央部付近にのみ形成されていてもよい。また、複数の突条30が上部横リブ21の下面21aで水平方向に並設されていてもよい。
【0049】
・短側壁11の持ち手孔20に形成された突条30と、長側壁12の持ち手孔20に形成された突条30の形状が異なっていてもよい。例えば、長側壁12の突条30の湾曲部31が、短側壁11の突条30の湾曲部31より曲率半径Rが大きくなるように形成されていてもよい。長側壁12は短側壁11に比べて水平方向の幅が大きいことから離型時に撓み易く、湾曲部31の曲率半径Rを相対的に大きくしても成形後の離型時に可動型41を上方へ移動させ易い。
【0050】
・持ち手孔20の上方側の短側壁11の内面には、上部横リブ21の上面21cと略同じ高さ位置から下側に、下方へ行くほど外方へ向けて傾斜する下向き傾斜面11aが形成されている。下向き傾斜面11aの形成位置はこれに限定されない。例えば、上部横リブ21の上面21cと下面21aとの上下方向中間位置から下側に形成されていてもよく、上面21cと下面21aとの間の位置であって、上面21cからの距離と下面21aからの距離が略1:2となる位置から下側に形成されていてもよい。また、上面21cより上方の位置から下側に形成されていてもよい。
【0051】
・上記実施形態の運搬用容器10は、スタッキング可能な構造として説明したが、これに限定されず、ネスティング可能な構造であってもよく、スタッキング及びネスティング可能な構造であってもよい。
【0052】
・上記実施形態の運搬用容器10では、一対の短側壁11及び長側壁12が底壁13に対してほぼ垂直に立設されているが、これに限定されない。一対の短側壁11及び長側壁12が底壁13に対して90゜以上の角度を有して立設されており、運搬用容器10が上方ほど拡径する形状であってもよい。この場合、底壁13に対する一対の短側壁11及び長側壁12の角度が大きいと、その角度が小さい場合に比べて持ち手孔20における上部横リブ21の下面21aと短側壁11の内側の主面との角度がより鋭角となる。そして、上部横リブ21の下面21aに突条30が形成されていないと、持ち手孔20における上部横リブ21の下面21aが指の関節や腹に当たったときの痛みが大きくなりやすい。この点、上部横リブ21の下面21aに突条30を形成することによってその痛みを軽減させることができる。このように、底壁13に対する一対の短側壁11及び長側壁12の角度が大きくされた運搬用容器10では、持ち手孔20に突条30を形成した場合の効果がより顕著に得られる。
【0053】
・上記実施形態の運搬用容器10では、持ち手孔20は一対の短側壁11及び長側壁12のそれぞれに形成されているが、一対の短側壁11のみに形成されていてもよく、一対の長側壁12のみに形成されていてもよい。
【0054】
・持ち手孔20の位置は、短側壁11及び長側壁12の上部でなくてもよい。例えば、短側壁11及び長側壁12の上下方向中央部であってもよい。また、短側壁11及び長側壁12の水平方向の中央の位置でなくてもよい。水平方向の中央の位置から、水平方向へ偏倚した位置であってもよい。
【0055】
・持ち手孔20の上部横リブ21の突条30では、平坦部33に段差又はパーティングラインが形成される。段差又はパーティングラインの段差高さや突出量を、長側壁12の方が短側壁11より小さくなるように形成してもよい。
【0056】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されており、前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分の少なくともいずれか一方には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されている。
【0057】
(ロ)前記突条は、前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の端縁部分に形成されている。
(ハ)前記突条の突出幅は、0.5~5.0mmである。
【符号の説明】
【0058】
10…運搬用容器、11…短側壁(側壁)、12…長側壁(側壁)、13…底壁、20…持ち手孔、21…上部横リブ、21a…下面(持ち手孔の上面)、30…突条、31…湾曲部(曲面)、32…傾斜部(傾斜面)、33…平坦部(平坦面)、40…金型、41…可動型、42…スライド型。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、
前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、
前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されているとともに、前記上面における前記突条以外の部分には、水平方向に延びる平坦面が形成されており、
前記平坦面における前記側壁の厚み方向の幅は、前記突条における前記側壁の厚み方向の幅より広く、
前記突条における前記側壁の厚み方向の幅は、前記持ち手孔の上方側における前記側壁の厚み方向の幅より広く、
前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されていることを特徴とする運搬用容器。
【請求項2】
底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、
前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、
前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されているとともに、前記上面における前記突条以外の部分には、水平方向に延びる平坦面が形成されており、
前記平坦面における前記側壁の厚み方向の幅は、前記突条における前記側壁の厚み方向の幅より広く、
前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されており、
前記持ち手孔の上方側における前記側壁の内面には、下方へ行くほど外方へ向けて傾斜する下向き傾斜面が形成されており、前記下向き傾斜面は、前記突条の前記傾斜面に連続して形成されており、
前記突条における前記側壁の厚み方向の幅は、前記下向き傾斜面における前記側壁の厚み方向の幅より広いことを特徴とする運搬用容器。
【請求項3】
底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、
前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、
前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されているとともに、前記上面における前記突条以外の部分には、水平方向に延びる平坦面が形成されており、
前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されており、
前記持ち手孔の上方側における前記側壁の内面には、下方へ行くほど外方へ向けて傾斜する下向き傾斜面が形成されており、前記下向き傾斜面は、前記突条の前記傾斜面に連続して形成されており、
前記下向き傾斜面における前記側壁の厚み方向の幅、前記持ち手孔の上方側における前記側壁の厚み方向の幅、前記突条における前記側壁の厚み方向の幅、前記平坦面が形成されている壁部位における前記側壁の厚み方向と直交する方向の幅、前記平坦面における前記側壁の厚み方向の幅の順で広いことを特徴とする運搬用容器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の運搬用容器は、底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されているとともに、前記上面における前記突条以外の部分には、水平方向に延びる平坦面が形成されており、前記平坦面における前記側壁の厚み方向の幅は、前記突条における前記側壁の厚み方向の幅より広く、前記突条における前記側壁の厚み方向の幅は、前記持ち手孔の上方側における前記側壁の厚み方向の幅より広く、前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されている。
上記課題を解決するため、本発明の運搬用容器は、底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されているとともに、前記上面における前記突条以外の部分には、水平方向に延びる平坦面が形成されており、前記平坦面における前記側壁の厚み方向の幅は、前記突条における前記側壁の厚み方向の幅より広く、前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されており、前記持ち手孔の上方側における前記側壁の内面には、下方へ行くほど外方へ向けて傾斜する下向き傾斜面が形成されており、前記下向き傾斜面は、前記突条の前記傾斜面に連続して形成されており、前記突条における前記側壁の厚み方向の幅は、前記下向き傾斜面における前記側壁の厚み方向の幅より広い。
上記課題を解決するため、本発明の運搬用容器は、底壁と、前記底壁上に立設された側壁により内部に収容空間が形成された合成樹脂製の運搬用容器であって、前記側壁には手を挿入するための持ち手孔が貫通形成されており、前記持ち手孔の上面を形成する前記側壁における前記収容空間側の部分には、下方に突出する突条が前記側壁の主面に沿って延びるように形成されているとともに、前記上面における前記突条以外の部分には、水平方向に延びる平坦面が形成されており、前記突条の下端部における前記収容空間側の部分及び前記突条の下端部における前記収容空間とは反対側の部分には、前記突条の横断面における形状が湾曲形状とされた曲面又は面取り形状とされた傾斜面が前記突条に沿って延びるように形成されており、前記持ち手孔の上方側における前記側壁の内面には、下方へ行くほど外方へ向けて傾斜する下向き傾斜面が形成されており、前記下向き傾斜面は、前記突条の前記傾斜面に連続して形成されており、前記下向き傾斜面における前記側壁の厚み方向の幅、前記持ち手孔の上方側における前記側壁の厚み方向の幅、前記突条における前記側壁の厚み方向の幅、前記平坦面が形成されている壁部位における前記側壁の厚み方向と直交する方向の幅、前記平坦面における前記側壁の厚み方向の幅の順で広い。