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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096416
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】低侵襲表皮電気穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/30 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
A61N1/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076760
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2021161141の分割
【原出願日】2012-06-28
(31)【優先権主張番号】61/502,198
(32)【優先日】2011-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509320254
【氏名又は名称】イノビオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ケイト ブロデリック
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ケンマーラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ マッコイ
(57)【要約】
【課題】本開示は、電気穿孔して1つまたは複数の抗原を送達するための装置、ならびにこの装置を使用し、表皮組織の細胞を電気穿孔して1つまたは複数の抗原を送達する方法を対象とする。
【解決手段】本装置は、筐体と、筐体から突出する複数の電極アレイであって、それぞれが少なくとも1つの電極を含む電極アレイと、これらの電極に電気的に結合されたパルス発生器と、パルス発生器に電気的に結合されたプログラム可能なマイクロコントローラと、パルス発生器およびマイクロコントローラに結合された電力源とを備える。電極アレイは、空間的に分離した部位を画定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気穿孔して1つまたは複数の抗原を送達するための装置であって、
筐体と、
前記筐体から突出する複数の電極アレイであって、空間的に分離した部位を画定し、それぞれの電極アレイが複数の電極を含む、複数の電極アレイと、
それぞれの電極アレイの少なくとも1つの電極に電気的に結合されたパルス発生器と、
前記パルス発生器に電気的に結合されたプログラム可能なマイクロコントローラと、
前記パルス発生器および前記マイクロコントローラに結合された電力源と、を備え、それぞれの電極が、電気穿孔パルスを表皮組織の細胞に送達するように構成され、前記マイクロコントローラが、それぞれの電極アレイの前記電気穿孔パルスのパラメータを独立して調整するように構成される、装置。
【請求項2】
前記電気穿孔パルスが電位と関連付けられ、前記マイクロコントローラが、前記電位をアレイごとに変化させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電気穿孔パルスが電流と関連付けられ、前記マイクロコントローラが、前記電流をアレイごとに変化させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電気穿孔パルスが持続時間と関連付けられ、前記マイクロコントローラが前記持続時間をアレイごとに変化させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロコントローラが、それぞれの電極アレイについてそれぞれの電気穿孔パルスの量を独立して調整するように構成され、前記量が1~10である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電気穿孔パルスが送達されるとき、空間的に分離した部位が前記抗原の干渉を実質的に阻止する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
それぞれの電極アレイ内の複数の電極がそれぞれのパターンで配列される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
それぞれの電極アレイ内の複数の電極の少なくとも1つの電極が0.1mm以下の長さを有する組織貫入端部を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
それぞれの電極アレイ内の複数の電極の少なくとも1つの電極が0.01mm~0.04mmの長さを有する組織貫入端部を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記電気穿孔パルスが前記表皮組織の前記細胞内の損傷を実質的に阻止する、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記電気穿孔パルスが、0.01V~70Vである電位と関連付けられ、ここで当該電位が視覚的アナログ尺度で測定されるほぼ無痛である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
隣接する電極が1.0mm以下の距離で互いに離間する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
隣接する電極が1.5mm以下の距離で互いに離間する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
それぞれの電極アレイのための複数の電極が前記電気穿孔パルスを実質的に同時に送達するように構成される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年6月28日に出願された米国特許仮出願第61/502,198号の利益を主張し、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦支援の研究および開発
本発明の表題の開発に関する活動は、少なくとも部分的に米国政府の軍契約第W81XWH-11-C-0051によって資金提供され、したがって、米国は、本発明に一定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は、容認可能な様式で、空間的に分離した部位に1つまたは複数のプラスミドワクチンを同時に送達することができる、電気穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0004】
抗原プラスミドによる有効なワクチン接種に対する主要な障害は、DNAワクチンが細胞内部に送達される必要性である。標準的筋肉内注射による裸のDNAの送達は、齧歯類モデルを除いて、悪名高いまでに不効率である。歴史的に、このため、大型哺乳動物およびヒトにおいて強い免疫反応を得ることができない結果に至っている。コドン最適化、RNA最適化、リーダー配列付加、および最適化されたコンセンサス配列の開発等のいくつかの戦略が、DNAに基づくワクチンの発現を向上させるために開発されている。これらの最適化戦略は、改善された、交差反応性の免疫反応に至り得る。共送達された遺伝子に基づく分子アジュバントの付加は、もたらされる免疫反応の増大が頻繁に起きる、別の分野である。ベクター設計における改善および分子アジュバントの使用にも拘わらず、所望の組織、最も一般的には、筋肉、腫瘍、または皮膚の所望の細胞型中におけるプラスミドの高発現をもたらす、DNAワクチンの投与の効率的方法に対して、明らかな必要性が未だ、存在する。
【0005】
皮膚組織(皮内)への薬物送達は、いくつかの理由のために、臨床環境において魅力的な方法である。皮膚は、人体の最も大きな器官であり、最も接近可能であり、容易に監視され、ならびに高度に免疫適格性がある。しかし、皮膚の不浸透性の障壁機能は、効率的な経皮薬物送達に対する主要な障害であった。
【0006】
ヒトの皮膚は、およそ2m2の面積を備え、平均でおよそ2.5mmの厚さであり、人体の最も大きな器官なっている。通常、皮膚は、2つの広い組織型、表皮および真皮を有する。表皮は、断続的に角質化する、重層化した上皮である。皮膚の最も外側の層は、角質層(SC)であり、一次的障壁として機能する。SCは、無生育性であるが生化学的に活性の角質細胞の15~30の細胞の厚さの階層である。表皮(顆粒膜層、有棘層、基底層)の他の3つの層は、全て、分化の異なる段階でケラチノサイト、ならびに免疫ランゲルハンス細胞および皮膚樹状細胞を含有する。
【0007】
経皮薬物送達および遺伝子送達のための物理的および化学的な方法の両方が、世界的にグループによって詳述されている。イオントフォレーシス療法、脂質送達、および遺伝子銃は、そのような例である。皮膚透過性を一時的に増強する物理的方法は、電気穿孔(「EP」)である。電気穿孔は、哺乳動物の細胞の脂質の二重層膜中に水溶性経路の生成をもたらす、短時間の電気的パルスの適用を伴う。これは、そうでなければあまり透過性でない細胞膜を通して、DNAを含む大きな分子の通過を可能にする。したがって、電気穿孔は、取込みまたは薬物およびDNAが標的の組織に送達される程度を増強する。
【0008】
電気穿孔が細胞形質転換を可能にする精確な機序は、解明されていないが、提案された理論的モデルには、膜の不安定化による穿孔事象、その後帯電した分子の細胞内への電気泳動移動が伴う。電気穿孔が発生するために、細孔の形成には、閾値エネルギーが得られることを必要とし、電気泳動的効果によって生成される移動は、電界およびパルス長の両方に依存する。
【0009】
DNAワクチンの場合、電気穿孔は、免疫反応を量的に向上させ、それらの免疫反応の幅を増大させ、ならびに投与量の効率性を改善することが示されている。より最近、DNA―EPのプラットフォームは、ヒトの臨床環境への転換に成功しており、いくつかのワクチン研究において著しく改善された免疫反応を証明している。ゆえに、許容可能で、使用者に使い勝手がよく、かつ大量生産に容易に変更可能であると見なされるが、一方で強い免疫反応をもたらす、高いトランスフェクション率を継続的に得る、皮膚電気穿孔装置に対する必要性が生じている。
【0010】
いくつかの筋肉内装置が、現在、臨床治験に入ることに成功しているが、処置は、概ね、侵襲的かつ有痛であると見なされている。大量のワクチン接種に変更可能であると見なされるために、特に小児科的環境において、より許容可能な電気穿孔法に対する解決策が必要とされる。したがって、許容可能な様式で複数の外的病原因子DNAワクチンを送達することができる、有効な皮膚電気穿孔装置が所望される。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、電気穿孔し、1つまたは複数の抗原を送達するための装置を対象とする。装置は、筐体と、筐体から突出する複数の電極アレイであって、それぞれが少なくとも1つの電極を含む、電極アレイと、電気的に電極に結合されたパルス発生器と、パルス発生器に電気的に結合されたプログラム可能なマイクロコントローラと、パルス発生器およびマイクロコントローラに結合された電力源と、を備える。電極アレイは、別個の部位を空間的に画定する。電極は、電気穿孔パルスを表皮組織の細胞に送達するように構成される。マイクロコントローラは、それぞれの電極アレイの電気穿孔パルスのパラメータを独立して調整するように構成される。
【0012】
本開示は、本明細書に記載される装置を使用して、表皮組織の細胞を電気穿孔し、1つまたは複数の抗原を送達する方法も対象とする。実施形態において、抗原は、DNAワクチンプラスミド、ペプチド、小分子、またはそれらの組み合わせを概ね含む。本方法は、1つまたは複数の抗原を表皮組織の細胞に投与することと、表皮組織を電極と接触させることと、電気穿孔パルスを送達することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態によるEPのための低侵襲装置(MID)斜視図である。
図2図1(A)、1(B)、および1(C)の実施形態の電気的システムの概略的例示である。
図3】別の実施形態によるEPのためのMIDの斜視図である。
図4図3(A)、3(B)、および3(C)の実施形態の電気的システムの概略的例示である。
図5】(A)ステンレス鋼電極もしくは(B)金電極を用いて、または(C)対照として注射のみであって電気穿孔を用いずにMIDを使用する、プラスミドの注射および電気穿孔後の、緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現の蛍光顕微鏡写真である。GFPのピクセル強度を計算した(D)。
図6】(A)1mm離間されたアレイ(上)および1.5mm離間されたアレイ(下)の電極ハンドピースの側面図として、ならびに(B)25個の全ての針電極を示す、1mm離間されたアレイの表面のクローズアップとしてのEPのためのMIDの図である。
図7】1.5mmまたは1mmの電極離間および(A)ステンレス鋼電極または(B)金電極を用いてMIDを使用する、プラスミドの注射および電気穿孔後の、GFP発現の蛍光顕微鏡写真である。注射のみであって電気穿孔を伴わない1組が、対照として使用された。GFPピクセル強度を計算した(C)。
図8】1.5mmまたは1mmの電極離間を伴うMIDについての電流および抵抗のグラフを示す。電極は、金またはステンレス鋼(SS)の組成であった。
図9】5または15ボルトにおける、1.5mmまたは1mmの電極離間を伴うMIDについての電流およびインピーダンスのグラフを示す。
図10】(A)5または15ボルトにおける、1.5mmまたは1mmの電極離間を伴うMIDを使用する、プラスミドの注射および電気穿孔後の、GFP発現の蛍光顕微鏡写真を示す。GFPピクセル強度を計算した(B)。
図11】(A)15ボルトにおける、1.5mmまたは1mmの電極離間を伴うMIDを使用する、プラスミドの異なる濃度(0.5、0.25、および0.1mg/mL)の注射および電気穿孔後の、GFP発現の蛍光顕微鏡写真を示す。GPFピクセル強度を計算した(B)。
図12】MIDを使用する、プラスミドの注射および電気穿孔後の、リンパ球染色の蛍光顕微鏡写真である。図12(A)は、20×の倍率における、未治療の動物の皮膚生検である。図12(B)は、20×の倍率における、GFPを発現するプラスミドで治療された動物からの皮膚生検である。図12(C)は、図12(B)の40×の倍率での試料である。
図13】(A)実施形態による、EPのためのMIDの斜視図であり、図13(B)は、4×4のアレイおよび1.5mmの離間を伴うMIDの写真であり、図13(C)は、5×5のアレイおよび1.0mmの離間を伴うMIDの写真であり、図13(D)は、図13(B)および13(C)のMIDの側面対側面の比較を示す、写真である。
図14】皮内注射のみ(EPなし)の後のGFP発現と比較される、レポーター遺伝子プラスミドおよび図13(B)のデュアルヘッドMIDを伴うEPの皮内投与後の、GFP発現を示す蛍光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、哺乳動物への抗原の異種皮内送達を提供し得る、電気穿孔装置を対象とする。1つまたは複数の抗原は、複数の電極アレイを有する低侵襲装置(MID)によって、許容可能な様式で空間的に離間する部位に同時に送達され得る。電極アレイは、電気穿孔パルスをアレイごとに変化させるように構成される。例えば、それぞれの電極アレイは、独立して、選択的に活性化され、制御され得る。したがって、MIDは、抗原の異種送達を可能にする。このMIDによる皮膚電気穿孔は、ワクチンを対象の皮膚に効果的に送達する、臨床的に受け入れ可能な方法を反映する。この装置は、複数の形態(核酸、タンパク質、小分子、またはそれらの組み合わせ)で複数のワクチンを同時に送達するように変更可能であるが、一方で複数の抗原の共送達から生じる、免疫干渉への潜在的懸念を取り除く。それは、また、単一の処置中に単一の抗原のより高い投与量を送達する能力を可能にする。
【0015】
1.定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定されることを意図されない。明細書および添付される特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、および「the」は、文脈が別途、明確に示さない限り、複数の参照を含む。
【0016】
本明細書の数字の範囲の列挙については、同じ程度の精度を有する、その間に挟まれるそれぞれの数字は、明示的に企図される。例えば、6~9の範囲については、7および8の数字が6および9に加えて企図され、6.0~7.0の範囲については、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、および7.0の数字が明示的に企図される。
【0017】
本明細書で使用される用語「電気穿孔」は、生体膜内に顕微鏡の経路(細孔)を誘導するための経膜電界パルスの使用を指し、細孔の存在は、プラスミド、オリゴヌクレオチド、siRNA、薬物、イオン、および水等の生体分子が細胞膜の1つの側から他へと一時的に通過することを可能にする。
【0018】
本明細書で使用される用語「低侵襲」は、提供されるEP装置の針電極による限定された貫入を指し、非侵襲電極(または非貫入針)を含み得る。貫入は、角質層を貫通する程度であることが好ましく、最も外側の生きている組織層、顆粒膜層に入るのが好ましいが、基底層には貫入しない。貫入深度は、0.1mmを超えないことが好ましく、いくつかの実施形態において、貫入深度は、角質層を突破するように、約0.01mm~約0.04mmの範囲である。これは、角質層の貫通を可能にするが、より深い貫入を回避する、鋭利な地点を提供するために、トロカール端の接地を有する電極を使用して、達成され得る。
【0019】
用語「許容可能な」および「ほぼ無痛」は、本明細書において相互交換可能に使用され、EPを参照するとき、典型的に利用可能なEP装置においてよりEPに関連付けられる痛みの実質的に低い水準を意味する。より詳細には、許容可能またはほぼ無痛のEPは、角質層と基底層との間の表皮層に低い電界を送達することに加えて、本明細書に記載される装置を使用することの組み合わせの結果であり、筋肉のEPを回避する。電界は、低い電圧水準、例えば、0.01V~70V、または1V~15Vを含むことが好ましいであろう。視覚的アナログ尺度を使用して測定されるとき、本明細書に提供される方法による、本明細書に記載される装置でのEPを経験する対象は、無痛または痛みのないスコアから20%(フルスケールの)以内、または例えば、2ポイント以内、0~10のフルスケール以内、および好ましくは、無痛スコアから10%以内である痛みの水準を経験する。
【0020】
用語「損傷を実質的に防止する」は、本明細書において、記載される装置によって標的細胞に送達され、該細胞を電気穿孔し、同じ細胞に最低限に認識可能な損傷を引き起こす、エネルギーの量を指すために使用される。認識可能な巨視的組織損傷またはそのような細胞への変化がないことが好ましい。
【0021】
2.低侵襲装置
本発明は、電気穿孔パルスをアレイごとに変化させるように構成される、複数の電極アレイを有する低侵襲装置(MID)を対象とする。図1(A)、1(B)、および1(C)は、電気穿孔し、1つまたは複数の抗原を送達するための複数の電極アレイを有する、MID100を開示する。MID100は、先端部104を有する筐体102と、先端部104に結合された複数の電極アレイ106、108であって、それぞれが正方形の4×4のパターンに配列される電極110を含む、電極アレイ106、108と、を備える。いくつかの実施形態において、先端部104および電極110のうちの1つまたは両方は、例えば、使用後に滅菌して、取り外された部分が再び使用され得るために、MID100の残りから取り外され得る。あるいは、先端部104および電極110の1つまたは両方は、単一の使用のためであり得る。
【0022】
電極アレイ106、108は、空間的に分離した部位を画定する。図1(A)、1(B)、および1(C)は、2つの電極アレイ106、108を含むものとしてMID100を例示するが、他の実施形態において、MID100は、3つ以上の電極アレイ、例えば、3つまたはそれ以上、4つまたはそれ以上、5つまたはそれ以上、6つまたはそれ以上、7つまたはそれ以上、8つまたはそれ以上、9つまたはそれ以上、または10またはそれ以上の電極アレイを含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、それぞれのアレイ106、108は、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、または10.0mmのそれぞれの長さを有する、電極110の4×4のアレイを含み得る。例示される実施形態において、それぞれのアレイ106、108は、電極110の4×4のアレイ、すなわち、16の電極110を含み、他の実施形態において、アレイ106、108のそれぞれは、電極110の他の数字および/またはパターンをそれぞれ含み得る。例えば、アレイ106、108のそれぞれは、1×1、1×2、1×3、1×4、1×5、1×6、1×7、1×8、1×9、1×10、2×1、2×2、2×3、2×4、2×5、2×6、2×7、2×8、2×9、2×10、3×1、3×2、3×3、3×4、3×5、3×6、3×7、3×8、3×9、3×10、4×1、4×2、4×3、4×4、4×5、4×6、4×7、4×8、4×9、4×10、5×1、5×2、5×3、5×4、5×5、5×6、5×7、5×8、5×9、5×10、6×1、6×2、6×3、6×4、6×5、6×6、6×7、6×8、6×9、6×10、7×1、7×2、7×3、7×4、7×5、7×6、7×7、7×8、7×9、7×10、8×1、8×2、8×3、8×4、8×5、8×6、8×7、8×8、8×9、8×10、9×1、9×2、9×3、9×4、9×5、9×6、9×7、9×8、9×9、9×10、10×1、10×2、10×3、10×4、10×5、10×6、10×7、10×8、10×9、10×10、または複数の11~100およびそれらのいずれかの組み合わせのパターンで配列された、電極110をそれぞれ含み得る。パターンは、正方形、三角形、矩形、平行四辺形、円形、または他のいずれかの幾何学形状等、様々な形状で配列され得る。針形状の電極110は、金、プラチナ、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、または他のいずれかの導電性金属を含み得る。電極は、金、銅、プラチナ、銀、または他のいずれかの導電性金属等、金属でコーティングされ、またはめっきされ得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、それぞれの電極110は、針形状である。すなわち、電極110は、それぞれ、シャフト112および先細の組織貫入またはトロカール端114を含む。図2(B)は、電極110を概ね円筒状であるものとして例示するが、他の実施形態において、電極110のうちの少なくとも1つは、準円筒状、正多面体、および不規則多面体形状、それらの派生形、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、いずれかの幾何学的形態を呈し得る。組織貫入端部114は、角質層を貫通し、顆粒膜層に到達する電極110を容易にする。いくつかの実施形態において、組織貫入端部114は、電極110が角質層に貫通することを可能にするが、深い貫入を回避する。この目的のために、組織貫入端部114は、約0.1mm以下、または約0.01mm~約0.04mmの長さを有し得る。
【0025】
例示された電極110は、電気穿孔パルスを表皮組織の細胞に送達するように構成される。いくつかの実施形態において、電気穿孔パルスは、表皮組織の細胞内の損傷を実質的に防止する、電界と関連付けられる。更なる実施形態において、電気穿孔パルスは、視覚的アナログ尺度によって測定されるほぼ無痛である電位と関連付けられる。視覚的アナログ尺度は、本質的に、0mmが無痛を示し、100mmが最悪の痛みを示す、100mm長の水平線である。ほぼ無痛とは、約20mm以下(95%の信頼区間以内)、好ましくは10mm以下(95%の信頼区間以内)の中間スコアを生成する視覚的アナログ尺度を使用する、スコアである。
【0026】
いくつかの実施形態において、隣接する電極110は、約1.5mm以下の距離だけ互いに離間する。更なる実施形態において、隣接する電極110は、約1.0mm以下の距離だけ互いに離間する。電極110の間のより短い距離は、電極110がより圧縮した様式で詰め込まれることを意味し、MID100の効果を増強し得、ゆえに所望であり得る。いくつかの実施形態において、それぞれの電極110は、100mm~1.0mm、50mm~1.0mm、40mm~1.0mm、30mm~1.0mm、20mm~1.0mm、10mm~1.0mm、5.0mm~2.0mm、5.0mm~1.0mm、およそ2.0mm、およそ1.5mm、またはおよそ1.0mmの150mm以下の距離だけ隣接するそれぞれの電極110から離間し得る。
【0027】
図2も参照すると、パルス発生器116、118は、それぞれの電極アレイ106、108に電気的に結合される。いくつかの実施形態において、パルス発生器116、118のうちの少なくとも1つは、Elgen1000(Inovio Pharmaceuticals,Inc.,Blue Bell,PA)パルス発生器(図示せず)であり得る。しかし、他の実施形態において、電気穿孔パルスは、他の好適な機序を使用して生成され得る。例示される実施形態において、プログラム可能なマイクロコントローラ120は、パルス発生器116、118に電気的に結合される。入力状態/信号に応答して、マイクロコントローラ120は、それぞれの電極アレイ106、108の使用要件または好みに応じて、それぞれの電極アレイ106、108のEPパラメータを独立して調整することができる。したがって、マイクロコントローラ120は、電気穿孔パルスをアレイごとに変化させるように構成される。例えば、パルス電圧、電流、持続時間、および印加される電気パルスの量は、それぞれの注射部位に適用される1cm3毎のジュールを変化させるように、アレイごとに変化させることができる。いくつかの実施形態において、マイクロコントローラ120は、電気穿孔パルスを実質的に同時に送達するように構成される。例示された実施形態において、それぞれの電極アレイ106、108は、それぞれのパルス発生器116、118で駆動される。MID100は、パルス発生器116、118および電力を提供するためのマイクロコントローラ120に結合された電力源122も含む。例示された実施形態において、本明細書に記載される電力源122と同じ機能を行う他の電力源が代わりに使用され得るが、電力源122は、高および低電圧供給である。
【0028】
いくつかの実施形態において、それぞれの電極アレイ106、108の電気穿孔パルスは、0.01V~70V、0.01V~50V、0.01V~40V、0.01V~30V、0.01V~20V、0.01V~15V、0.1V~70V、0.1V~50V、0.1V~40V、0.1V~30V、0.1V~20V、0.1V~15V、1V~30V、1V~20V、1V~15V、15V~30V、または15V~30Vの電位と関連付けられる。更なる実施形態において、電位は、低いことが好ましく、したがって、EPは、視覚的アナログ尺度によって測定される許容可能またはほぼ無痛であるが、表皮組織内で細胞のトランスフェクションをもたらすように十分高くなる。例えば、電位は、MID100の隣接する電極110が1.0mm~2.0mm離間するとき、5V、10V、15V、またはいくつかの実施形態において、20Vであり得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、それぞれの電極アレイ106、108のそれぞれの電気穿孔パルスは、0.1mA~100mA、0.2mA~100mA、0.5mA~100mA、1mA~100mA、1mA~80mA、1mA~60mA、1mA~50mA、1mA~40mA、1mA~30mA、10mA~50mA、10mA~40mA、10mA~30mA、10mA~20mA、または10mA~15mA、またはおよそ10mA、またはいくつかの実施形態においておよそ20mAの電流と関連付けられる。電位と同様に、電流は、低いことが好ましく、したがって、EPは、視覚的アナログ尺度によって測定される許容可能またはほぼ無痛であるが、表皮組織内で細胞のトランスフェクションをもたらすように十分高くなる。
【0030】
いくつかの実施形態において、それぞれの電極アレイ106、108の電気穿孔パルスは、5ms~250ms、10ms~250ms、20ms~250ms、40ms~250ms、60ms、~250ms、80ms~250ms、100ms~250ms、20ms~150ms、40ms~150ms、60ms~150ms、80ms~150ms、100ms~150ms、100ms~140ms、100ms~130ms、100ms~120ms、100ms~110ms、またはおよそ100msの持続時間と関連付けられる。いくつかの実施形態において、持続時間は、短いことが好ましく、したがって、EPは、視覚的アナログ尺度によって測定される許容可能またはほぼ無痛であるが、表皮組織内で細胞のトランスフェクションをもたらすように十分に長くなる。
【0031】
いくつかの実施形態において、マイクロコントローラ120は、それぞれの電極アレイ106、108についてそれぞれの電気穿孔パルスの量を独立して調整するように構成され、電気パルスの数字は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、または100以上であり得る。電気穿孔パルスの量を増加させ、1パルス毎のエネルギーを低下させることによって、対象によって知覚され、または経験される痛みの量も、より高いエネルギーでのより低いパルスと比較して低下され得る。生成される免疫反応を低下させないパルスのより低い数字は、対象によって経験されるより少ない痛みをもたらすとき、使用されることが好ましい。更に、より少ない痛みおよびより良好な許容可能性は、1パルス毎のより少ないエネルギーを使用することによって生じる。いくつかの実施形態において、電気穿孔パルスの量は、約1~約10、好ましくは約1~約10、より好ましくは約1~約3である。いくつかの実施形態において、3パルスが使用される。
【0032】
いくつかの実施形態において、電極アレイ106、108は、電気穿孔パルスが送達されるときに、2つのアレイ106、108によって送達される2つ抗原の干渉を実質的に防止するように、少なくともある距離だけ互いに離間する。プラスミド干渉は、皮膚内の同じ部位に順次送達されるとき、いくつかの抗原について観察されている。特定の理論によって拘束されることを希望しないが、これは、転写レベル(促進剤での可能性のある競合等)または翻訳レベル(タンパク質レベルでのミスフォールディングまたは二量化)での干渉のためであり得るであろう。複数の離間する電極アレイ106、108を有するMID100は、生じる免疫反応に消極的に影響し得る、この干渉効果を取り除き得るであろう。更に、複数の電極アレイ106、108を有するMID100は、2つの分離した処置に対する必要性を否定する可能性があり、処置された対象が1つの入射処置を経験することを可能にし、したがって、経験される痛みを減少させる。
【0033】
いくつかの実施形態において、MID100は、それぞれの電極アレイ106、108を選択的に活性化するために、それぞれの電極アレイ106、108に電気的に結合されたスイッチ(図示せず)を含む。例えば、MID100は、フットペダルもしくはトリガボタン、または電気回路に接続された他のいずれかのトリガによってトリガされ得る。
【0034】
図3および4は、別の実施形態によるパルス発生器202を含む、MID200を例示する。この実施形態は、同じ構造の多くを利用し、図1(A)~1(C)に関して、上記のMID100の実施形態と同じ特性の多くを有する。したがって、以下の説明は、主として、図1(A)~1(C)に関する上記の実施形態と異なる構造および特徴を集中的に取り扱う。図1(A)~1(C)の実施形態の構造および特徴に対応する図3および4に示される実施形態の構造および特徴は、同様の数字を参照して本明細書の以下に指定される。
【0035】
本実施形態において、パルス発生器202は、蓄電池204によって電源供給される。例示された実施形態において、蓄電池204は、筐体102内にある。そのように、MID200は、携帯可能であり得る。蓄電池204は、リチウムイオン、ニッケル金属水素化物、鉛蓄電、またはニッケルカドミウム蓄電池であり得る。
【0036】
図4を参照すると、パルス発生器202は、高および低電圧駆動体である。本実施形態におけるパルス発生器202は、電極アレイ106、108の両方を駆動する。マイクロコントローラ206は、パルス発生器202に電気的に結合される。マイクロコントローラ206は、例えば、入力状態/信号に応答して、それぞれの電極アレイ106、108の電気穿孔パラメータを独立して調整することができる。パルス発生器202は、マイクロコントローラ206によって調整されたEPパラメータでパルスを生成し、蓄電池204と共働して必要とされるように生成パルスを増幅する。
【0037】
3.電気穿孔し、1つまたは複数の抗原を送達する方法
一態様において、本明細書に記載される複数の電極アレイ106、108を有するMID100、200は、電気穿孔し、以下に論じられるように、対象の皮膚、器官、または他の身体部分を通して1つまたは複数の抗原を送達する方法において使用され得る。すなわち、MID100、200は、生体膜内の顕微鏡の経路(細孔)を誘導する経膜電界パルスを適用するために使用され得、細胞膜の1つの側から他への1つまたは複数の抗原の送達を可能にする。本方法は、抗原を表皮組織の細胞に投与するステップと、表皮組織を電極と接触させるステップと、免疫反応を生成するために電気穿孔パルスを送達するステップと、を含み得る。本方法は、抗原を細胞に同時に送達することと、免疫反応を生成するために電気穿孔パルスを送達することと、を更に含み得る。
【0038】
・抗原を表皮組織の細胞に投与する
複数の抗原は、まず、空間的に離間する部位で皮内に注射される。いくつかの実施形態において、抗原は、Mantoux技術を使用し、例えば、29ゲージの注射針を使用して標的組織に皮内で送達される。
【0039】
・表皮組織を電極に接触させる
次に、表皮組織は、約0.1mm以下、または約0.01mm~約0.04mmの深度で少なくとも1つの電極110で貫入される。注射部位および組織貫入部位は、共存していることが好ましい。いくつかの実施例において、共存することまたは注射部位および組織貫入部位を中央に置くことを容易にするために、表皮組織は、皮内注射前に、標識され、または窪ませられ得る。
【0040】
・電気穿孔パルスを送達する
一度表皮組織が貫入されると、表皮組織は電極110と接触され、電気穿孔パルスが送達される。いくつかの実施形態において、電気穿孔パルスは、表皮組織の細胞への損傷を実質的に防止する、電界と関連付けられる。更なる実施形態において、電気穿孔パルスは、視覚的アナログ尺度によって測定されるほぼ無痛である、電位と関連付けられる。例えば、電気穿孔パルスは、約1ボルト~約30ボルト、または好ましくは約15ボルト~約20ボルトの電位、約1mA~約50mA、または好ましくは約10mA~約15mAの電流、および約80ms~約150msの範囲、または好ましくは100msの持続時間、またはそれらの組み合わせと関連付けられる。これらのパルス、好ましくは1~10パルス、より好ましくは1~3パルスは、連続して送達され得る。
【0041】
従来の皮内送達に対する欠点は、皮膚に送達され得る容量に対する制限である。単一の針注射については、概ね、100~150μL以下の容量が、皮膚剥離についての問題のために、直接、皮膚に送達され得る。抗原は、10mg/mLを超えない濃度でのみ生成され得るので、容量制限は、生じる投与量を抑制する可能性がある。
【0042】
いくつかの実施形態において、MID100、200は、単一のワクチンのより高い投与量を送達し得ることが好ましい。MID100、200の使用は、100~150μLの単一の注射容量の制限を回避する。いくつかの実施形態において、著しくより高い投与量は、患者へのいずれの付加的不快もなく、単一の処置で同時に送達され得る。より高い投与量を送達する能力は、特定のワクチンに対して生じる免疫反応に著しく積極的効果を有し得るであろう。複数のヘッド装置の使用は、単一のアレイ装置より多くの細胞を直接的に標的とする付加された利益も有する。抗原をトランスフェクトされた細胞の増加した数字は、抗原提示細胞への増加された提示によって改善された免疫反応をもたらし得るであろう。
【0043】
いくつかの実施形態において、開示された方法は、哺乳動物等の対象に投与され得る。哺乳動物は、ヒト、サル、イヌ、ネコ、家畜、モルモット、マウス、またはラットであり得る。家畜は、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、または雌ウシであり得る。
【0044】
4.抗原
本発明は、上述の複数の電極アレイ106、108を有するMID100、200を使用して、少なくとも1つの抗原を送達する方法も対象とする。本方法は、MID100、200による異種送達を使用する、2つまたはそれ以上の抗原またはそれらの組み合わせの送達を対象とし得る。ある実施形態において、本明細書に記載されたMID100、200は、抗原の送達を向上させるために使用され得る。本明細書に使用されるように、「抗原」は、体内に導入されるとき、免疫反応(免疫を生成する)を誘発するいずれかの物質又は有機物を指す。
【0045】
いくつかの実施形態において、抗原は、感染病原体または自己抗原、例えば、前立腺に特異的な抗原(PSA)または前立腺に特異的な膜抗原(PSMA)等の前立腺癌抗原由来であり得る。特定の抗原が使用されることは、重要ではない。抗原は、当技術分野において既知であり、一般的ないずれの方法を使用して、本明細書において提供される方法および組成で使用するために組み込まれてもよい。本明細書に記載される様々な態様および実施形態において使用するための好適な抗原の非限定的一覧は、例えば、BioCarb Chemicals Catalogue、およびThe Jordan Report:Accelerated Development of Vaccine 1995 NIH,Bethesda,Md.,1995の文献に見出すことができ、これらの両方が参照によって本明細書に組み込まれる。抗原としては、核酸、ペプチド、小分子、化学療法剤、免疫療法剤、またはこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。抗原は、免疫原を含み得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、抗原は核酸を含む。核酸は、標準的なホスホジエステル結合または他の結合によって共有結合された、含窒素複素環状塩基または塩基類似体を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含む、オリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配合物を指す。核酸としては、RNA、DNA、キメラのDNA-RNAポリマー、またはそれらの類似体を挙げることができる。DNAは、対象の特定の抗原を発現するプラスミドであり得る。例えば、プラスミドは、SynConインフルエンザコンストラクト(Blue Bell,PAのInovio Pharmaceuticals,Inc.)であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗原は、ペプチドを含む。ペプチドは、いずれのアミノ酸配列も含む。ペプチドは、合成されるか、または天然源から単離され得る。ペプチドは、タンパク質であり得る。ペプチドは、抗体または抗体断片であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、抗原は、小分子を含む。小分子としては、有機または無機配合物が挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗原は、化学療法剤を含む。化学療法剤としては、例えば、メトトレキサート(アメトプテリン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、シトシンアラビノシド、エトポシド、5-フルオロウラシル、メルファラン、クロラムブシル、および他のナイトロジェンマスタード(例えばシクロホスファミド)、シスプラチナム、ビンデシン(および他のビンカアルカロイド)、マイトマイシン、ブレオマイシン、プロチオニン(大麦粉オリゴペプチド)、マクロモマイシン1,4-ベンゾキノン派生物、およびトレニモン等、細胞毒性または細胞増殖抑制性の薬物が挙げられ得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、抗原は、サイトカインを含む。サイトカインは、細胞の間で局部的に信号を搬送する、免疫系の細胞によって分泌される物質を指す。サイトカインは、タンパク質、ペプチド、および糖タンパク質を含む。サイトカインとしては、インターフェロン、ケモカイン、TGF-β、TNF-α、およびインターロイキンが挙げられるが、これらに限定されない。インターロイキンとしては、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35、およびIL-36挙げられる。サイトカインは、ヒト源に由来するか、またはヒト遺伝子を発現する形質転換非ヒト源由来であり得る。
【0051】
抗原としては、寄生性抗原等の微生物性抗原、ウイルス性抗原、細菌性抗原、真菌性抗原、癌性抗原、コカインおよびニコチン派生物等のワクチン抗原付加薬物、弱毒菌または死菌、弱毒または死んだウイルス、自己免疫抗原、または非構造性タンパク質抗原、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗原は、少なくとも1つのインフルエンザ、自己免疫、コカイン、または癌性抗原を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗原は、炭水化物系ワクチンに使用し得る、細菌性表層多糖類由来のいずれの抗原も含む。細菌は、典型的に、糖タンパク質、糖脂質、リポ多糖類のO特異的側鎖、莢膜多糖類等の一部として、細胞表層上に炭水化物を発現する。好適な細菌株の非限定的例としては、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、ヘモフィルスインフルエンザ菌、クレブシエラ種、シュードモナス種、サルモネラ種、赤痢菌種、およびB群連鎖球菌が挙げられる。いくつかの実施形態において、既知のいずれの細菌性炭水化物エピトープ(例えば、Sanders,et al.Pediatr.Res.1995,37,812-819、Bartoloni,et al.Vaccine 1995,13,463-470、Pirofski,et al.,Infect.Immun.1995,63,2906-2911、米国特許第6,413,935号、および国際公開第WO93/21948号において記載されるそれら)は、本明細書に記載される組成および方法における抗原として使用され得る。
【0053】
いくつかの実施形態は、ウイルス性抗原を含む抗原を提供する。ウイルス性抗原の非限定的例としては、HIV(例えばgp120、nef、tat、pol)、インフルエンザ、および西ナイルウイルス(WNV)由来のそれらが挙げられる。いくつかの実施形態において、抗原は、全ての死ウイルスまたは弱毒ウイルスを含み得る。
【0054】
いくつかの態様は、真菌性抗原を提供する。真菌性抗原の非限定的例としては、カンジダアルビカンス、クリプトコックスネオフォルマンス、コクシディオイデス種、ヒストプラスマ種、およびアスペルギルス種由来のそれらが挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態は、寄生生物由来の抗原を提供する。寄生性抗原の非限定的例としては、マラリア原虫種、トリパノソーマ種、住血吸虫種、リーシュマニア種等由来のそれらが挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態において、抗原は、炭水化物エピトープを含む。本明細書に記載される態様および実施形態において使用され得る炭水化物エピトープの非限定的例としては、Galα1,4Galβ(細菌性ワクチン用)、GalNAcα(癌ワクチン用)、Manβ1,2(Manβ)nManβ-(例えば、C.アルビカンスに対して有用な真菌性ワクチン)(式中、nはゼロを含む任意の整数である)、GalNAcβ1,4(NeuAcα2,3)Galβ1,4Glcβ-Oセラミド(癌ワクチン用)、Galα1,2(Tyvα1,3)Manα1,4Rhaα1,3Galα1,2-(Tyα1,3)Manα4Rha-、およびGalα1,2(Abeα1,3)Manα1,4Rhaα1,3Galα1,2(Abeα1,3)Manα1,4Rhaα1,3Galα1,2(Abeα1,3)Manα1,4Rha(これらの両方は、例えば、サルモネラ種に対して有用である)が挙げられる。抗原または免疫原ならびにそれらの合成としての他の例示的な炭水化物エピトープの説明は、米国特許第6,413,935号に更に記載され、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0057】
抗原の他の例としては、疾病、ならびに疾病を引き起こす病原体、すなわち、炭疽菌、アデノウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussus)、ボツリヌス中毒症、ウシ鼻気管炎(bovine rhinotracheitis)、カタル球菌、イヌ肝炎、イヌジステンパー、クラミジア、コレラ、コクシジウム症、牛痘、サイトメガロウイルス、サイトメガロウイルス、デング熱、デングトキソプラズマ症(dengue toxoplasmosis)、ジフテリア、脳炎、毒素原性大腸菌、エプスタインバーウイルス、ウマ脳炎、ウマ伝染性貧血、ウマインフルエンザ、ウマの肺炎(equine pneumonia)、ウマリノウイルス、ネコ白血病、フラビウイルス、グロブリン、ヘモフィルスインフルエンザb型菌、ヘモフィルスインフルエンザ、百日咳菌(Haemophilus pertussis)、ヘリコバクターピロリ、ヘモフィリウス種、肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス、HIV、HIV-1ウイルス、HIV-2ウイルス、HTLV、インフルエンザ、日本脳炎、クレブシエラ種のレジオネラ-ニューモフィラ菌、リーシュマニア、ハンセン病、ライム病、マラリア免疫原、麻疹、髄膜炎、髄膜炎菌、A群髄膜炎菌多糖体、C群髄膜炎菌多糖体、流行性耳下腺炎、流行性耳下腺炎ウイルス、抗酸菌、結核菌、ナイセリア種、ナイセリアゴノレエ、ナイセリアメニンギチジス、ヒツジの青舌病(ovine blue tongue)、ヒツジ脳炎(ovine encephalitis)、乳頭腫、パラインフルエンザ、パラミクソウイルス、パラミクソウイルス(複数)、百日咳(Pertussis)、ペスト、肺炎球菌種、ニューモシスティスカリニ、肺炎、ポリオウイルス、プロテウス種、緑膿菌、狂犬病、呼吸器合抱体ウイルス、ロタウイルス、風疹、サルモネラ菌、住血吸虫症、赤痢菌、サル免疫不全ウイルス、天然痘、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、肺炎連鎖球菌、化膿性連鎖球菌、連鎖球菌種、ブタインフルエンザ、破傷風、トレポネーマーパリダム、腸チフス、ワクシニア、水痘帯状疱疹ウイルス、およびコレラ菌に対する免疫反応または抗原反応を生成するそれらが挙げられるが、それらに限定されない。抗原または免疫原としては、様々な類毒素、ウイルス性抗原および/または水痘ワクチン、ジフテリア、破傷風、および百日咳のワクチン、ヘモフィルスインフルエンザb型菌ワクチン(Hib)、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、インフルエンザワクチン、麻疹、流行性耳下腺炎、および風疹のワクチン(MMR)、肺炎球菌ワクチン、ポリオワクチン、ロタウイルスワクチン、炭疽菌ワクチン、ならびに破傷風およびジフテリアのワクチン(Td)のワクチンにおいて共通に使用される抗原等の細菌性抗原が挙げられ得る(例えば、米国特許第6,309,633号を参照)。
【0058】
いくつかの実施形態において、抗原としては、癌胎児性抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PSMA等、例えば、腫瘍関連抗原(TSA)(白血病およびリンパ腫と関連付けられる抗原を含む)、および癌を引き起こし得る病原体と関連付けられる抗原(例えば、アデノウイルス、HBV、HCV、HTLV、カポシ肉腫関連ヘルペスウイルス、HPV(Gardasil)等、例えば、腫瘍形成性ウイルス)等、癌と関連付けられた任意の型の抗原が挙げられ得る。
【0059】
抗原は、ペプチド、多糖体、脂質、核酸等の組み合わせ等、抗原の組み合わせを含み得る。抗原は、糖タンパク質、糖脂肪、糖タンパク質、リポタンパク質、リポ多糖類等を含み得る。
【0060】
開示されたEP法を実行するために使用される抗原は、例えば、Pizzoらへの米国特許第6,493,402号(α-2マクログロブリン複合体)、米国特許第6,309,633号、米国特許第6,207,157号、および米国特許第5,908,629号に記載されたそれら等、当技術分野において既知の技術を含む、そのターゲティングまたは向上した送達等、機能を高め、または付加的な機能を得るために、それに対して1つまたは複数の付加的な群を共役または結合することによって等、いくつかの様式で誘導体化され、または変性されるそれらを含む。
【0061】
MID100、200の例示的な実施例、ならびにMID100、200を使用する方法が以下により詳細に記載される。
【実施例0062】
実施例1
トランスフェクション効率に対する電極組成の効果
レポーター遺伝子局在化に対する電極材料の効果を論じるために、異なる電極組成(金およびステンレス鋼)を用いる2つの低侵襲装置(MID)についてトランスフェクション効率を比較した。この比較は、金電極に対するより安価な代替物(ステンレス鋼)を使用することができ、一方でなおトランスフェクション効果を維持するかを評価することとなっていた。電極組成は、金めっきされた電極をソケットから容易に取り外し、同じゲージおよび長さのステンレス鋼電極と交換したため、容易に試験した。これは、電極組成のみが異なる、同一の電極ヘッドを生成した。
【0063】
実験の概要は、表1に詳述される。
【表1】
【0064】
一連の生体内発現局在化の研究を終了した。全ての生体内実験は、ハートレイ系モルモット(Wilmington,MAのCharles River Laboratories)において実行し、これは、皮膚科学的用途のための優れたモデルと見做される。全ての実験は、機関のIACUCプロトコルの下で実行した。全ての動物実験は、改正された米国国防総省(DoD)3216.1“Use of Laboratory Animals in DoD Programs,”9 CFR parts 1-4“Animal Welfare Regulations,“National Academy of Sciences Publication“Guide for the Care & Use of Laboratory Animals,”およびAnimal Welfare Act(7 U.S.C.2131-2159)を実施する農務省規則、ならびに他の適用される連邦法および規則ならびにDoDの指示に従って実施した。全ての動物処置は、麻酔下で実行した。
【0065】
レポーター遺伝子GFPを発現するプラスミドをモルモット皮膚の皮内に注射した(0.5、1、および2mg/mL)。注射後直ちに、金またはステンレス鋼電極を用いてMID装置を使用し、注射部位で皮膚を電気穿孔した。動物は、処置後3日で殺処理した。皮膚は、切除し、蛍光顕微鏡下で可視化した。高解像度の写真を撮影し、次いで、標準的ソフトウェア(Adobe Photoshop CS5)を使用して、ピクセル強度について解析した。発現水準を予め定義された処置面積のピクセル計数によって計算した。ピクセル解析のための電極接点の「ゲート領域」は、トランスフェクションは、電極が皮膚と直接接触するところでのみ、電界を印加し、電界を形成する場合にのみ行われるという前提に基づいて確立した。MID装置内の第1の電極と第4の電極との間の距離は、4.5mmであった。したがって、Adobe Photoshop CS5における「定規ツール」を使用して、4.5mm2の領域を単離し、およそ95ピクセルの長さとして定義した。Adobe Photoshop CS5は、3つの異なるチャネル(赤、緑、青)で0~255(最も暗い~最も明るい)の範囲のピクセル強度を認識した。正のGFP信号が緑のチャネルで優勢であるため、ピクセル解析をこのチャネルに限定した。CS5バージョンのAdobe Photoshopは、選択された領域の平均および中央値のピクセル強度を自動的に計算することができた。ピクセル強度の分布がほとんどの場合において幾何学対照的でないため、中央値は、ヒストグラムの中央の傾向のより良好な表示を与えると見なされた。正確な結果を確実にするために、複数の動物の複数の処置部位からのプールされたデータを解析した。
【0066】
結果を図5に示す。結果は、続いて電気穿孔せずに皮内注射後のGFP発現とも比較した。金とステンレス鋼群との間に統計的に著しい差はなかった(処置群とID注射のみの対照との間でp値<0.05)。結果は、より安価なステンレス鋼電極が引き出すレポーター遺伝子発現で金電極と同程度に効果的であったことを示唆した。
【0067】
実施例2
トランスフェクション効率に対する電極離間効果
トランスフェクション効率およびレポーター遺伝子局在化に対する電極離間の効果を評価するために、1mm離間した回路基板を作製し、ハンドピース筐体内に嵌合し、1.5mm離間した回路基板を伴う類似のMIDと比較した。表面処理面積が異なる離間において、2つのハンドピースの間で同じに止まることを確実にするために、追加の電極列を1mm離間した回路基板に追加した。ゆえに、4×4の電極列(16個の電極)を伴う1.5mmの離間ハンドピースを5×5の電極列(25個の電極)を伴う1mmの離間ハンドピースと比較した。したがって、それぞれのハンドピースは、およそ4~4.5mm2のおよその処理表面積を有した。図6Aは、側面斜視からの両方のハンドピースの写真を示す。上のハンドピースは、1mmの離間であり、下のハンドピースは、1.5mmの離間である。図6Bは、1mmのハンドピースの表面のクローズアップ図を示す。
【0068】
実施例1に記載されるように、一連の生体内発現局在化の研究を終了した。具体的には、レポーター遺伝子GFPをモルモット皮膚に発現するプラスミドDNAの既知の投与量(0.5、1、および2mg/mL)の皮内注射後、1mmまたは1.5mmの試作装置を使用し、ほぼ直ちに、注射後10秒以内に、生じる注射気泡を電気穿孔した。電極は、金またはステンレス鋼の組成であった。動物は、処置後3日で殺処分した。皮膚は、切除し、蛍光顕微鏡下で可視化した。高解像度の写真を撮影し、次いで、標準的ソフトウェア(Adobe Photoshop CS5)を使用して、ピクセル強度について解析した。発現水準は、予め定義された処理面積のピクセル計数によって計算した。正確な結果を確実にするために、複数の動物の複数の処置部位からのプールされたデータを解析した。GFPの発現は、異なる期間に渡って監視し(12、24、および48時間)、発現動力学の評価を可能にした。
【0069】
実験の概要を表2に詳述する。
【表2】
【0070】
結果を図7に示す。結果は、それぞれの条件につき6個の処置について示す。結果は、続いて電気穿孔せずに、皮内注射後のGFP発現とも比較した。1.5mm離間した回路基板を伴う装置についての結果と1mm離間した回路基板を伴う装置についての結果との間に統計的に著しい差はなかった(処置群とID注射のみの対照との間でP値<0.05)。結果は、複数の実験を表し、1.5mmまたは1mmの電極離間を使用する低侵襲装置の電気穿孔(MID EP)を用いて、成功裏の強いトランスフェクションを得たことを証明した。
【0071】
これらの結果は、2つの電極離間の間に可視の差(目によって、かつピクセル計数によって量的に判定する)を観察しなかったので、電極離間が皮膚内のGFP発現に影響しないことを示唆した。したがって、1.5mmまたは1mmの電極離間を使用してMID EPを用いる電気穿孔は、強いレポーター遺伝子発現をもたらした。
【0072】
実施例3
電流に対する電極離間の効果
本明細書に記載される装置は、それぞれの電気穿孔パルス中に生じる、全ての電気的パラメータをリアルタイムで捕捉および記憶する能力を有し得る。実施例1に記載されたように、一連の生体内発現局在化の研究を終了し、異なる電極離間および組成の装置を用いる電気穿孔についての電流および電圧を調べた。印加電圧は定量に止まり(15ボルト)、それぞれの電極離間およびそれぞれの電極組成について、それぞれの処置のために送達されるインピーダンス(抵抗)および電流を調べた。
【0073】
図8は、生じるインピーダンス(オームでの抵抗)および電流(ミリAmp)の両方を示す。
【0074】
電流は、1.5mmのハンドピース(平均23mA)と比較して、1mmのハンドピース(平均85mA)においておよそ3倍大きいが、印加電圧は、すべての条件に渡って同じであった。1.5mmのハンドピースにおける上昇した電流は、組織のインピーダンスにおいて大きな低下(およそ75%)をもたらした。許容可能な皮膚装置を生産する観点からは、上昇した電流は、患者に対してより多くの苦痛または感覚を引き起こすことによって問題であり得る。上昇した電流は、患者において、より多くの苦痛または感覚を引き起こす可能性があり、したがって、上昇した電流は、許容可能な皮膚装置を生産するときに問題であり得る。これらの結果は、電極離間が生じるGFP発現に影響しないように見える一方で、離間または付加的電極の存在が電流の流れに影響し、したがって、組織のインピーダンスに影響する可能性があることを示唆した。
【0075】
上昇した電流の問題を更に論じるために、印加電圧を3分の1(5ボルトまで)に低下させ、なお10~20mAの電流をもたらし得るかどうかを調査した。電極は、ステンレス鋼であった。結果は、図9に示す。結果は、実際の電極離間ではなく、付加的電極が生じる電流に影響したことを示唆した。
【0076】
低下した電圧がトランスフェクション効果に影響するかどうかを評価するために、レポーター遺伝子GFPを発現するDNAプラスミドをモルモット皮膚の皮内に送達し、その後、直ちに15または5ボルトで、1.5mm(4×4)の電極離間または1mm(4×4または5×5)の電極離間を伴うMID装置を使用して、電気穿孔した。動物は、処置後3日に殺処分した。皮膚は、切除し、蛍光顕微鏡下で可視化した。高解像度の写真を撮影し、次いで、標準的ソフトウェア(Adobe Photoshop CS5)を使用して、ピクセル強度について解析した。
【0077】
結果を図10に示す。これらの結果は、トランスフェクション効果をなお維持しながら、入力電圧をより大きな電極ハンドピース上で低下させ得ることを示唆した。したがって、結果は、無痛および低電圧パラメータを維持しながら、強いトランスフェクションをより大きなアレイを用いて得ることができることを示唆した。ヒトの臨床的装置では、使用要件または好み、例えば注射量に応じて最適な有効範囲を維持するために、少なくとも25個の電極が必要とされる可能性が高い。
実施例4
トランスフェクション効率に対するプラスミド濃度の効果
【0078】
トランスフェクション効率に対する、レポーター遺伝子GFPを発現する低濃度のプラスミドの効果は、異なる組成および電極離間の装置を用いて調べた。
【0079】
一連の生体内発現局在化の研究は、実施例1に記載されたように終了した。レポーター遺伝子GFPを発現するプラスミドは、モルモットの皮膚の皮内に注射し(0.5、0.25、および0.1mg/mL)、その後、直ちに15ボルトで、金またはステンレス鋼電極および1mmで(5×5)または1.5mmで(4×4)の離間した電極を伴うMID装置を使用して、電気穿孔した。動物は、処置後3日で殺処分した。皮膚は、切除し、蛍光顕微鏡下で可視化した。高解像度の写真を撮影し、次いで、標準的ソフトウェア(Adobe Photoshop CS5)を使用して、ピクセル強度について解析した。発現水準は、予め定義された処理面積のピクセル計数によって計算した。正確な結果を確実にするため、複数の動物の複数の処置部位からのプールされたデータを解析した。
【0080】
結果を図11に示す。ID注射のみ(EPなし)の後のGFP発現も観察したが、最低限の発現を検知した(データは図示せず)。離間または電極組成の間の統計的に著しい差は、レポーター遺伝子GFPを発現するプラスミドの濃度のいずれにも観察しなかった。
【0081】
実施例5
細胞レベルで解析される電気穿孔効率
上記の実施例において詳述された、実験からの処置された動物から切除された皮膚試料は、免疫組織化学的に解析した。処置後の皮膚は、死後に切除し、区分し、パラフィンマウントした。GFP発現細胞を観察し、高出力の蛍光顕微鏡(OlympusのBX51TF)を使用して計数した。GFP発現細胞の数および領域(すなわち、表皮中の層の階層)を表示した。組織区分は、また、リンパ球IHC、ケラチノサイト(表皮中の細胞の大部分)、およびランゲルハンス細胞(表皮中の最も一般的APC)等、トランスフェクトされた細胞種の直接的同定を可能にするために、マウントする前に市販の抗体の収集物を用いて対比染色した。抗体は、リンパ球浸潤の際に電気穿孔の効果を観察するためにも使用した。
【0082】
強いケラチノサイト染色は、表皮中に得た。皮膚区分中の表皮領域は、明確に画定した。全体として、結果は、付加的電極が、組織のインピーダンスに影響する等、電流の流れに著しく影響したことを示唆した。この増大した電流の流れは、レポーター遺伝子の生じる発現に影響しないように見える。しかし、電圧は、5×5の1mmハンドピース上で低下させ、一方で強力な電流および強いトランスフェクションをなお得ることができることが明らかであった。
【0083】
皮膚中のランゲルハンス特異抗体のための陽性染色を見るために、脾臓およびリンパの節を殺処分された動物から切除し、抗体のための陽性対照として使用した。強い抗体染色は、脾臓およびリンパの節の両方で検知したが、皮膚では検知しなかった。特定の理論によって拘束されることを希望しないが、これは、抗体が機能しているが、皮膚中の信号が弱すぎて検知しないか、または試験された組織中に存在するランゲルハンス細胞がないことを示唆した。
【0084】
付加的な結果は、図12に示す。電気穿孔およびレポーター遺伝子の発現の両方が処置面積に対するリンパ球の浸潤をもたらしたことを観察した。EPおよびレポーター遺伝子発現の組み合わせは、最も大きい浸潤をもたらした。ケラチノサイト染色およびレポーター遺伝子発現の共存を観察する一方、染色は、一貫していなかった。しかし、リンパ球IHCおよびレポーター遺伝子発現の共存は、一貫して確認した。
【0085】
実施例6
デュアルヘッド装置
小さい緩衝ゾーンを伴う側面と側面の2つのアレイを有するデュアルヘッド装置を製造した。アレイは、パルスを同時に送達するように設計した。あるいは、それぞれのヘッドは、付加的な機器の改変を用いて、独立してパルス変調し得る。プラスチックの筐体および特注の電気的構成要素を試作した。装置は、図13に示す。
【0086】
一連の生体内発現局在化の研究は、実施例1に記載されたように、終了した。レポーター遺伝子GFPまたはRFPを発現するプラスミドを1mg/mLの濃度でモルモット皮膚の皮内に注射した。注射後、直ちに、デュアルヘッド装置(25Vで、4×4のアレイおよび1.5mm離間の16個のステンレス鋼電極を伴う)を使用して、電気穿孔した。結果は、図14に示し、これは、皮内注射のみ(EPなし)の後のGFP発現と比較した、レポーター遺伝子プラスミドの皮内投与後のGFP発現およびMID100、200を用いるEPを示す、蛍光顕微鏡写真である。MID100、200の電極110は、1.5mmの離間によって互いに離間した。動物は、処置後、殺処分し、皮膚を切除し、蛍光顕微鏡下で可視化した。蛍光顕微鏡写真は、空間的に離間する部位に複数のプラスミドを同時に送達したことを確認した。
【0087】
実施例7
トランスフェクションの動力学
一連の生体内発現局在化の研究は、実施例1に記載された方法を使用して終了する。具体的には、既知の投与量(0.5、1、および2mg/mL)のレポーター遺伝子GFPを発現するプラスミドDNAのモルモット皮膚への皮内注射後、1mmまたは1.5mmの試作装置を使用して、生じる注射気泡を直ちに電気穿孔する。MIDの電極は、金またはステンレス鋼の組成になる。動物は、処置後、異なる時点(12時間、24時間、および48時間、3日)で殺処分される。皮膚は、それぞれの時点について、切除し、蛍光顕微鏡下で可視化する。高解像度の写真を撮影し、次いで、標準的ソフトウェア(Adobe Photoshop CS5)を使用して、ピクセル強度について解析する。発現水準は、予め定義された処理面積のピクセル計数によって計算する。正確な結果を確実にするために、複数の動物の複数の処置部位からのプールされたデータを解析する。GFPの発現は、発現動力学の評価を容易にするために、異なる期間に渡って比較される。
【0088】
特定の実施形態が例示され、記載されたが、当業者に明らかになるように、本開示の趣旨および範囲を逸脱せずに、様々な改変が行われ得ることを上記から理解されたい。そのような変更および改変は、本明細書に添付される特許請求の範囲に定義される、本開示の範囲及び教示の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気穿孔して1つまたは複数の抗原を送達するための装置であって、
遠位先端部を有する筐体と、
それぞれが前記先端部と結合された複数の電極アレイであって、前記電極アレイは、前記先端部から突出し、かつ空間的に分離した部位を画定し、それぞれの電極アレイが複数の電極を含む、複数の電極アレイと、
それぞれの電極アレイの少なくとも1つの電極に電気的に結合されたパルス発生器と、
前記パルス発生器に電気的に結合されたプログラム可能なマイクロコントローラであって、それぞれの電極アレイの前記電極が、電気穿孔パルスを表皮組織の細胞に送達するように構成され、前記マイクロコントローラが、それぞれの電極アレイの前記電気穿孔パルスのパラメータを独立して調整するように構成される、マイクロコントローラと、
前記パルス発生器および前記マイクロコントローラに結合された電力源と、
を備え、
前記パルス発生器が、0.1mA~100mAの範囲における電流において、それぞれの電極アレイの前記少なくとも1つの電極に電気穿孔パルスを送達するように構成され、そして、前記マイクロコントローラが、アレイごとに前記電流を変化させるように構成される、装置。