(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096438
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ゲノム編集の方法及び構築物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240705BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/87 Z ZNA
C12N15/87 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077437
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2021521053の分割
【原出願日】2019-10-15
(31)【優先権主張番号】62/745,540
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511197958
【氏名又は名称】フォンダッツィオーネ・テレソン・エティエッセ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・アウリッキオ
(72)【発明者】
【氏名】マネル・リャド・サンタエウラリア
(57)【要約】
【課題】本発明は、外来性DNA配列を細胞のゲノムに組み込む方法であって、細胞を、ドナー核酸、標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド、及び標的化配列を認識するヌクレアーゼと接触させる工程を含む、方法に関する。本発明はまた、前記ドナー核酸及び/又は標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド及び/又はヌクレアーゼを含むベクター、並びにそれらの医学的使用に関する。
【解決手段】外来性DNA配列を細胞のゲノムに組み込む方法であって、細胞を:a)- 少なくとも1つのストップコドン及び翻訳開始配列(TIS)又は - リボソームスキッピング配列、及び - 前記外来性DNA配列を含み、逆位の標的化配列が5'及び3'にて隣接する、ドナー核酸;b)標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド、並びにc)標的化配列を認識するヌクレアーゼと接触させる工程を含む、方法の提供。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外来性DNA配列を細胞のゲノムに組み込む方法であって、
細胞を:
a)- 少なくとも1つのストップコドン及び翻訳開始配列(TIS)又は
- リボソームスキッピング配列、及び
- 前記外来性DNA配列
を含み、逆位の標的化配列が5'及び3'にて隣接する、ドナー核酸;
b)標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド、並びに
c)標的化配列を認識するヌクレアーゼ
と接触させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外来性DNA配列を細胞のゲノムに組み込む方法であって、細胞を、ドナー核酸、標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド、及び標的化配列を認識するヌクレアーゼと接触させる工程を含む、方法に関する。本発明はまた、前記ドナー核酸及び/又は標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド及び/又はヌクレアーゼを含むベクター、並びにそれらの医学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遺伝子治療は遺伝子機能を置換することしかできず、機能獲得型(GOF)突然変異の変性効果を回避することができないので、優性として遺伝するメンデル遺伝性疾患は治療に関して問題を提起する。ゲノム編集は、優性遺伝性疾患の処置向けの実行可能な選択肢としてここ数年で浮上してきた。ゲノム編集では、エンドヌクレアーゼ、通常はCRISPR/Cas9を使用する[1、2]。CRISPR-Cas9とは、ガイドRNA(gRNA)と呼ばれる配列に結合し、それを使用してワトソン-クリックの塩基相補性によって標的DNA配列を認識する、リボ核タンパク質である。この標的DNA配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に隣接する必要があり、このことによって、Cas9がDNAに結合し、標的配列を切断することが可能になる[3]。Cas9のRNAベースの標的化によって、異なる遺伝子座を標的化するためのその設計が容易となり、Cas9及び2つの異なるgRNAが同じ細胞に送達されることで2つの異なる配列の標的化も可能となる。Cas9はゲノム内の特定の場所へと標的化された後、二本鎖切断(DSB)を生成し、これは、2つの修復メカニズムのいずれかで修復されることになる:非相同末端結合(NHEJ)は、細胞周期のあらゆる相で活性であることから、ほとんどの細胞型において最も優位なメカニズムであり、DSBを修復するためにDSBの部位でのランダム塩基の挿入又は欠失からなる。このランダムな挿入又は欠失(インデル)は、リーディングフレームの変化を引き起こす場合が多く、その結果、標的化された遺伝子の発現をノックアウトする[3]。GOF突然変異の対立遺伝子特異的ノックアウトによって、野生型コピーは影響を受けない状態であることが必要であり、したがって、遺伝子の正常な機能を維持する一方で、GOF対立遺伝子の効果を回避する[4]。このアプローチは広範に活性であるNHEJ修復経路を使用するが、一方、その適用は、GOF対立遺伝子でのgRNA/PAMの組合せのアベイラビリティとそういった特異的突然変異に限定されている使用との両方によって限定される、すなわち、突然変異それぞれが、治療用AAVベクターのその独自のセットを有する必要がある;相同組換え修復(HDR)は、主に細胞周期のG期及びS2期に発生するプロセスであり、DSBの精密な修正のために、外部ドナーDNAによって又は他の対立遺伝子によって提供され得る相同性鋳型を使用する[3]。HDRによる遺伝子修正は、Cas9[7]の非存在下でも、in vitro[5]及びin vivo[6-9]で首尾よく使用されてきた。しかし、in vivoでのその効率は、分化した細胞では相同的組換え経路の活性が低いことによって限定されている[10]。したがって、当分野では、活発な再生を経ていない組織において及び分化した細胞において、遺伝子修正を可能にする代替の治療用遺伝子置換戦略が求められている。突然変異型対立遺伝子と野生型対立遺伝子の両方が遺伝子の正常なコピーに交換され、その結果、突然変異型対立遺伝子のサイレンシングと野生型配列の置換を同時に可能とする、突然変異非依存性の遺伝子置換戦略が更に求められている。対立遺伝子特異的ノックアウトとHDRによる遺伝子修正の両方の限定を克服するために、相同性非依存性標的化組み込み(Homology-Independent Targeted Integration)[11、12]が最近開発された。HITIでは、目的の遺伝子内において同じgRNA標的配列が隣接するドナーDNAを使用する(
図2)。Cas9が遺伝子とドナーDNAの両方を切断した後、細胞のNHEJ機構は、インデル無しでの組み込みに関して驚くべき高(60~80%)率をもって、切断の修復の際にドナーDNAを含むことができる。ドナーDNAの考えられる逆位組み込みは、そのgRNA標的配列を逆転することによって回避され、その結果、逆位組み込みが発生した場合、Cas9は再度標的配列を認識し、これを切断することができる。HITIはNHEJを使用しているので、その再生能力に非依存的に、ニューロン等の最終分化細胞や肝臓等の組織において効果的である(例を挙げると、成人組織と小児組織の両方)[12]。更に、治療用遺伝子の野生型コピーのHITI媒介挿入とは、特定の病因性突然変異や標的細胞の潜在的な増殖状態とは無関係に治療的である能力を有する[12]。本発明者らは、驚くべきことに、突然変異型対立遺伝子と野生型対立遺伝子の両方をドナーDNAによって提供される遺伝子の正常なコピーに置き換えることにより、HITIを優性遺伝性疾患の処置に使用することができることを見いだした。このことにより、ノックアウトの対立遺伝子特異性によって課せられる標的配列の制限が回避されるとともに、同じ遺伝子のすべての突然変異に対する治療の適用性が広がり、更には神経系や網膜等の非分裂性の細胞及び組織の標的化が可能になると思われる。更に、本発明者らは、高レベルの治療用タンパク質の全身放出向けの工場という点で肝臓を変換するためにHITIを使用してきたが、このことは、血友病、LSD、又は糖尿病におけるような、機能喪失によって引き起こされる多くの遺伝性状態及び一般状態又は置換される因子がその機能を果たすために肝臓から分泌され且つ/又は血液を通して他の標的器官に達する必要がある状態の治療に望ましいものであり、その結果、効果の低い酵素補充療法、従来の遺伝子治療及び遺伝子編集のような現在利用可能な治療法の限定を克服する。アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクターは、これの安全性プロファイル、広い指向性及び長期の導入遺伝子発現を提供する能力によって、遺伝子治療のin vivo適用向けに最も高頻度に使用されるものである[13]。しかし、AAVゲノムのエピソーム状態を考慮すると、AAVからの肝導入遺伝子の発現は、発生中の肝臓では又は肝障害が存在すると、経時的に失われる場合がある[14]。したがって、より安定で効果的な肝導入遺伝子の発現が求められている。AAV媒介HITIによって、目的の分泌タンパク質、すなわちARSBのコード配列を高度に転写性のアルブミン遺伝子座に挿入して[6-9]、その結果、全身に分泌される高レベルのタンパク質の長期発現を提供することによって、前記限定を克服する。網膜色素変性症(RP)とは、世界中で3.000~5.000人に1人が罹患している遺伝性網膜疾患(IRD)の不均一な集団である。RPの全症例の30~40%は常染色体優性遺伝を持っている。ロドプシン(RHO)遺伝子の突然変異は、米国で優性RP症例の約25%、及び世界の他の地域で症例の約20%を占める。P23Hは北米では最も一般的な突然変異であり、米国でのRPの全症例の9%に相当し、他の大陸ではほとんど存在しない。P23H突然変異は、ロドプシンの正常なフォールディングを損ない、その結果、小胞体(ER)に蓄積する。これにより、突然変異型ロドプシンを排除するために、小胞体ストレス応答(UPR)とプロテアソームが活性化される。光受容体において細胞毒性をもたらすその存在によって、両方のメカニズムが構成的に活性化される。P23Hを保有するいくつかの動物モデル、特にmRho-P23Hノックイン[15]及びhRHO-P23Hトランスジェニック[16]のマウスは研究に広く使用されている。
【0003】
一方、ヨーロッパ及びアジアでは、P347(SとL)の位置での突然変異が高頻度である。スペイン[17]及びイタリア[18]では、P347Lは優性RPの4.5%に相当する。P347位置での突然変異は優性阻害効果を有し、その結果、突然変異型と野生型の両方のロドプシンの杆体の外側セグメントへの輸送が変化する。これによって、光伝達及びまた膜輸送における杆体の機能に障害が生じ、その結果、光受容体の最終的な死にいたる[19]。hRHO-P347Sを発現するトランスジェニックマウスモデルが、T.Dryjaらによって作出されたが[20]、これを本発明で使用する。いずれの場合も、疾患の表現型は、機能獲得/優性阻害効果とともに突然変異によって生じるが、したがって、毒性産物のレベルを低下させることが、遺伝子の正常なコピー(従来の遺伝子治療)を付加すること以外に又はそれを付加することに加えて、多大なメリットをもたらすために必要である。したがって、優性網膜色素変性症を処置するための望ましいアプローチは、野生型対立遺伝子を変化させることなく、突然変異型対立遺伝子を特異的にノックアウトすることであろう。最近の取り組みとしては、操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼを使用したP347S RHO mRNAのノックダウン[21]及びエンドヌクレアーゼを使用してGOF対立遺伝子を切断するGOF対立遺伝子の対立遺伝子特異的ノックアウトが挙げられる。これは、ほとんどの場合点突然変異によって引き起こされる、突然変異型対立遺伝子の非常に特異的な認識に依存する。最近、様々な種類の網膜色素変性症の処置のための網膜における対立遺伝子特異的ノックアウトの実現可能性が、様々な刊行物に示されてきた。Bakondiらは、トランスジェニックラットモデルにおいて、マウスS334Ter-3対立遺伝子がWTラット対立遺伝子と識別されることを示した[22]。しかし、これらのアプローチは1つの単一突然変異に適合されており、優性網膜色素変性症は様々な異なる突然変異によって引き起こされる可能性がある。より多数の患者に適用される、突然変異対立遺伝子の突然変異非依存性サイレンシング及び機能的遺伝子による置換を可能にする治療戦略が依然として求められている。ムコ多糖症VI型(MPS VI)は、アリールスルファターゼB(ARSB)欠損症によって引き起こされる希少なリソソーム蓄積症(LSD)であり、これは、毒性グリコサミノグリカン(GAG)の広範な蓄積及び尿中排泄をもたらす。臨床的には、MPS VI表現型は、一次認知障害のない状態で、発育遅延、粗な顔貌、骨格の変形、関節硬直、角膜混濁、心臓弁肥厚及び臓器肥大によって特徴付けられる[24]。MPSの治療法は、正常なリソソーム加水分解酵素が分泌され、次いで、マンノース-6-リン酸受容体経路を介してほとんどの細胞に取り込まれること、に依拠する。本発明者らは、肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター(AAV2/8.TBG.hARSB)の転写制御下でARSBをコードする組換えAAVベクター血清型8(AAV2/8)の単回全身投与によって、MPS VI動物モデルで持続的な肝臓形質導入と表現型改善がもたらされることを実証した[25-31]。本発明者らはまた、上記単回全身投与が、MPS VIマウスにおいて、この状態に対する現在の標準治療である酵素補充療法(ERT)の毎週投与と少なくとも同程度に効果的であることを示した[32-34]。本発明者らは最近、MPS VI患者における本アプローチの安全性と有効性の双方を試験するために、フェーズI/II治験(ClinicalTrials.gov識別子:NCT03173521)を開始した。高度に転写性のアルブミン遺伝子座でのHITIは、AAVによる本来なら安全で効果的な肝臓遺伝子治療のいくつかの限定を克服する潜在力を持ち、これには:i.アルブミン遺伝子座から特に高い、導入遺伝子発現のレベル;ii.肝細胞の細胞喪失が生じた場合に複製されるであろう、ゲノム遺伝子座での治療用コード配列の挿入によって保証される導入遺伝子発現の安定性が挙げられる。リソソーム蓄積症のモデル、MPS VIにおけるこのアプローチの有効性に関する発明者らの好結果の証明によって、とりわけ血友病、アルファ-l-アンチトリプシン欠乏症、糖尿病、慢性炎症性腸疾患等の、全身性治療用タンパク質の安定した発現が必要である他のLSD又は他の慢性衰弱状態に対する新規な遺伝子治療戦略の基盤が築かれる。したがって、治療用タンパク質の安定した全身発現を必要とする疾患に対する遺伝子治療戦略が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,534,261号
【特許文献2】米国特許第6,607,882号
【特許文献3】米国特許第6,746,838号
【特許文献4】米国特許第6,794,136号
【特許文献5】米国特許第6,824,978号
【特許文献6】米国特許第6,866,997号
【特許文献7】米国特許第6,933,113号
【特許文献8】米国特許第6,979,539号
【特許文献9】米国特許第7,013,219号
【特許文献10】米国特許第7,030,215号
【特許文献11】米国特許第7,220,719号
【特許文献12】米国特許第7,241,573号
【特許文献13】米国特許第7,241,574号
【特許文献14】米国特許第7,585,849号
【特許文献15】米国特許第7,595,376号
【特許文献16】米国特許第6,903,185号
【特許文献17】米国特許第6,479,626号
【特許文献18】米国特許出願公開第2003/0232410号
【特許文献19】米国特許出願公開第2009/0203140号
【特許文献20】米国特許第8,440,431号
【特許文献21】米国特許第8,440,432号
【特許文献22】米国特許第8,450,471号
【特許文献23】米国特許第8,586,363号
【特許文献24】米国特許第8,697,853号
【特許文献25】WO2013/176772
【特許文献26】米国特許第5,049,386号
【特許文献27】米国特許第4,946,787号
【特許文献28】米国特許第4,897,355号
【特許文献29】WO91/17424
【特許文献30】WO91/16024
【特許文献31】米国特許第4,186,183号
【特許文献32】米国特許第4,217,344号
【特許文献33】米国特許第4,235,871号
【特許文献34】米国特許第4,261,975号
【特許文献35】米国特許第4,485,054号
【特許文献36】米国特許第4,501,728号
【特許文献37】米国特許第4,774,085号
【特許文献38】米国特許第4,837,028号
【特許文献39】米国特許第4,797,368号
【特許文献40】WO93/24641
【特許文献41】米国特許第5,173,414号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Urnovら、Nature Reviews Genetics、2010、11:636~646頁
【非特許文献2】Gajら、Nat Methods、2012、9(8):805~7頁
【非特許文献3】Ramirezら、Nucl Acids Res、2012、40(12):5560~8頁
【非特許文献4】Kimら、Genome Res、2012、22(7):1327~33頁
【非特許文献5】Scharenbergら、Curr Gene Ther、2013、13(4):291~303頁
【非特許文献6】Beurdeleyら、Nat Commun、2013、4:1762頁
【非特許文献7】Joung and Sander、Nat Rev Mol Cell Biol、2013、14(l):49~55頁
【非特許文献8】Jinekら(2012) Science 337:816~821頁
【非特許文献9】Jinekら(2013) eLife 2:e00471
【非特許文献10】Segal (2013) eLife 2:e00563
【非特許文献11】Hochstrasser and Doudna、Trends Biochem Sci、2015:40(l):58~66頁
【非特許文献12】Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons、1995年
【非特許文献13】Panyamら Adv Drug Deliv Rev.2012年9月13日.pii: 50169-409X(12)00283-9. doi: 10.1016/j .addr.2012.09.023
【非特許文献14】Anderson、Science 256:808~813頁(1992)
【非特許文献15】Nabel & Feigner、TIBTECH 11:211~217頁(1993)
【非特許文献16】Mitani & Caskey、TIBTECH 11:162~166頁(1993)
【非特許文献17】Dillon. TIBTECH 11:167~175頁(1993)
【非特許文献18】Miller、Nature 357:455~460頁(1992)
【非特許文献19】Van Brunt、Biotechnology 6(10):1149~1154頁(1988)
【非特許文献20】Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience 8:35~36頁(1995)
【非特許文献21】Kremer & Perricaudet、British Medical Bulletin 51(l):31~44頁(1995)
【非特許文献22】Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (編)(1995)
【非特許文献23】Yuら、Gene Therapy 1:13~26頁(1994)
【非特許文献24】Crystal、Science 270:404~410頁(1995)
【非特許文献25】Blaeseら、Cancer Gene Ther. 2:291~297頁(1995)
【非特許文献26】Behrら、Bioconjugate Chem. 5:382~389頁(1994)
【非特許文献27】Remyら、Bioconjugate Chem. 5:647~654頁(1994)
【非特許文献28】Gaoら、Gene Therapy 2:710~722頁(1995)
【非特許文献29】Ahmadら、Cancer Res. 52:4817~4820頁(1992)
【非特許文献30】Westら、Virology 160:38~47頁(1987)
【非特許文献31】Kotin、Human Gene Therapy 5:793~801頁(1994)
【非特許文献32】Muzyczka、J. Clin. Invest. 94:1351頁(1994)
【非特許文献33】Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 5:3251~3260頁(1985)
【非特許文献34】Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 4:2072~2081頁(1984)
【非特許文献35】Hermonat & Muzyczka、PNAS 81:6466~6470頁(1984)
【非特許文献36】Samulskiら、J. Virol. 63:03822~3828頁(1989)
【非特許文献37】Srivastava A、Curr Opin Virol.2016年12月;21:75~80頁
【非特許文献38】Auricchioら(2001) Hum. Mol. Genet. 10(26):3075~81頁
【非特許文献39】Dalkara Dら、Sci Transl Med. 2013年6月12日;5(189):189ra76
【非特許文献40】Petrs-Silva Hら、Mol Ther. 2011年2月;19(2):293~301頁
【非特許文献41】Klimczak RRら、PLoS One. 2009年10月14日;4(10):e7467
【非特許文献42】Hickey DGら、Gene Ther. 2017年12月;24(12):787~800頁
【非特許文献43】Bitterら(1987) Methods in Enzymology、153:516~544頁
【非特許文献44】Angel and Yanik (2010) PLoS ONE 5(7): el 1756
【非特許文献45】Ran, F.A.ら、Genome engineering using the CRISPR-Cas9 system. Nat Protoc、2013. 8(11):2281~2308頁
【非特許文献46】Kleinstiver, B.P.ら、High-fidelity CRISPR-Cas9 nucleases with no detectable genome-wide off-target effects. Nature、2016. 529(7587):490~5頁
【非特許文献47】Slaymaker, I.M.ら、Rationally engineered Cas9 nucleases with improved specificity. Science、2016. 351(6268):84~8頁
【非特許文献48】Casini, A.ら、A highly specific SpCas9 variant is identified by in vivo screening in yeast. Nat Biotechnol、2018. 36(3):265~271頁
【非特許文献49】Merienne, N.ら、The Self-Inactivating KamiCas9 System for the Editing of CNS Disease Genes. Cell Rep、2017. 20(12):2980~2991頁
【非特許文献50】http://rsbweb.nih.gov/ij/
【非特許文献51】https://tide.deskgen.com/
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外来性構築物を標的遺伝子に組み込むための非相同末端結合(NHEJ)ベースの遺伝子編集戦略に関する。前記戦略は、非分裂細胞の効果的な標的化を可能にし、その結果、より良好な標的化の収率及び目的の遺伝子の治療レベルの発現をもたらす。有利には、本発明の方法は、内因性プロモーターの下で正常な遺伝子を発現するという利点をもって、突然変異対立遺伝子の遺伝子座に直接に修正された遺伝子を挿入することを可能にし、したがって、当該遺伝子の超生理学的発現が毒性の効果という結果となる恐れのある疾患に対して特に有利である生理学的レベルの発現をもたらす。本発明の治療用組成物のAAV媒介送達の場合にNHEJの使用から生じる更なる利点とは、より大きな外来性構築物を保有する能力、及び大きな遺伝子の突然変異によって引き起こされる疾患を標的化する能力である。実際、HDRベースの遺伝子編集戦略と比較して、標的化組み込みに必要な相同領域は極小である。Rho P347Sのような優性阻害突然変異体に対して、更なる利点は、毒性対立遺伝子の同時サイレンシングである。本発明はまた、ガイドRNAの設計に応じて、遺伝子特異的標的化にも適合するが、例えば、ガイドRNA(gRNA又はsgRNA)は、野生型対立遺伝子に対して突然変異対立遺伝子を特異的に認識することができる。有利には、本発明の方法は、安全な遺伝子座遺伝子、例えば、外来性遺伝子配列の挿入が毒性事象をもたらさない中性の「安全な」ゲノム領域であることが知られているゲノム遺伝子座、例を挙げるとAAVS1部位、及び/又は目的の組織で発現される遺伝子、例を挙げると、アルブミン遺伝子の遺伝子座を標的化することに向けることができる。本発明は、肝臓において高レベルで発現される遺伝子、例を挙げるとアルブミンの遺伝子座内への目的の配列の挿入に依拠する。有利には、NHEJ媒介遺伝子標的化の結果として、アルブミン遺伝子は発現されず、目的の遺伝子は、アルブミンプロモーターの下で発現される。このことによって、肝実質内の比較的少数の細胞からではあるが、目的の遺伝子の高レベルの発現がもたらされ、したがって、全体としてのアルブミン発現は蝕まれることはなく、目的の遺伝子の発現は、治療効果を達成するのに十分に高い。更に、目的の遺伝子は肝臓ゲノムに安定して組み込まれているので、組織の再生時(小児において又は肝臓の損傷時)に、目的の遺伝子の発現が失われることはない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
したがって、本発明の一目的は、外来性DNA配列を細胞のゲノムに組み込む方法であって、
細胞を:
a)- 少なくとも1つのストップコドン及び翻訳開始配列(TIS)又は
- リボソームスキッピング配列、及び
- 前記外来性DNA配列
を含み、逆位の標的化配列が5'及び3'にて隣接する、ドナー核酸;
b)標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド、並びに
c)標的化配列を認識するヌクレアーゼ
と接触させる工程を含む、方法である。
【0008】
好ましくは、翻訳開始配列(TIS)は、コザックコンセンサス配列又はIRES配列である。好ましくは、リボソームスキッピング配列は、T2A、P2A、E2A、F2A、好ましくはT2A配列である。好ましくは、前記IRES配列は、60~70bpの、好ましくは約50bpの、より好ましくは50bpの合成配列である。
【0009】
好ましい実施形態では、ドナー核酸は:
- 少なくとも1つのストップコドン、及び
- コザック配列であるか又は60~70bpの、好ましくは約50bpの、より好ましくは50bpの合成配列であるIRES配列である、翻訳開始配列(TIS)、及び
- 前記外来性DNA配列
を含む。
【0010】
好ましくは、ドナー核酸は、3つの考えられるフレームにストップコドンを含み、好ましくは、3つの考えられるフレームの前記ストップコドンは、各フレームに挿入された2つの終止コドンを含むか又はそれからなり、好ましくは、3つの考えられるフレームの前記ストップコドンは、配列番号1の配列(TAATAAATAATAAATAATAA)又はその並べ替え(permutation)を含むか又はそれからなる。
【0011】
好ましくは、
コザックコンセンサス配列は:
- 配列番号54(gccacc)と少なくとも98%の同一性を有する配列若しくはその機能的断片又は
- 配列番号55(gccncc)の配列(配列中、nはgであってもaであってもよい)
を含むか又はそれらを本質的に有し、且つ/又は
IRES配列は、
配列番号24(TgACAAACTgTACATgCCgTTAACTgTAATTTTgCgTgATTTTTTTgTAg)若しくは配列番号23(AggTggTAgCCgCAAACATAgTTCAATACAAACTTgCTgTCTCggCgg)と少なくとも95%の同一性を有する配列又はその機能的断片を含むか又はそれらを本質的に有し、且つ/又は、
リボソームスキッピングT2A配列は、配列番号32(ggaagcggagagggcagaggaagtctgctaacatgcggtgacgtcgaggagaatcctggacct)又は配列番号25~28をコードする配列と少なくとも80%の同一性を有する配列又はそれらの機能的断片を含むか又はそれらを本質的に有し、且つ/又は
標的化配列は、配列番号29(GCAGCCGCAGTACTACCTGG)、配列番号30(AGTACTGCGGATACTCAAAG)、配列番号31(ACAAGAGTGAGATCGCCCAT)と少なくとも95%の同一性を有する配列又はその機能的断片を含むか又はそれらを本質的に有し、且つ/又は、
標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチドは、配列番号56(CCAGGTAGTACTGCGGCTGC)、配列番号57(CTTTGAGTATCCGCAGTACT)、配列番号58(ATGGGCGATCTCACTCTTGT)と少なくとも95%の同一性を有する配列又はその機能的断片を含むか又はそれらを本質的に有する。
【0012】
好ましい実施形態では、標的化配列は、配列番号56(CCAGGTAGTACTGCGGCTGC)、配列番号57(CTTTGAGTATCCGCAGTACT)、配列番号58(ATGGGCGATCTCACTCTTGT)と少なくとも95%の同一性を有する配列又はその機能的断片を含むか又はそれらを本質的に有することができ、且つ/又は、標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチドは、配列番号29(GCAGCCGCAGTACTACCTGG)、配列番号30(AGTACTGCGGATACTCAAAG)、配列番号31(ACAAGAGTGAGATCGCCCAT)と少なくとも95%の同一性を有する配列又はその機能的断片を含むか又はそれらを本質的に有することができる。
【0013】
好ましくは、ドナー核酸は、ポリアデニル化シグナル、好ましくはウシ成長ホルモンポリAを更に含む。
【0014】
好ましくは、標的化配列は、ロドプシン(Rho)遺伝子に含まれている配列又は肝臓で発現される遺伝子、例えばアルブミン遺伝子に含まれている配列である。好ましくは、標的化配列は、肝臓で発現される遺伝子に含まれる配列であり、ドナーDNA配列は、分泌性治療用タンパク質、例えば、アリールスルファターゼB(ARSB)のコード配列である。
【0015】
好ましくは、標的化配列は:
- 好ましくはヒト、マウス又はブタからのRHO遺伝子の第1のエクソン、
- 好ましくはヒト又はマウスからのアルブミン遺伝子の第2のエクソン、
又はその機能的断片
内に含まれる。
【0016】
好ましくは、標的化配列はガイドRNA(gRNA)標的部位であり、標的化配列と相同な前記相補鎖オリゴヌクレオチドは、遺伝子の標的化配列にハイブリダイズするガイドRNAである。
【0017】
前記gRNA標的部位は、配列番号29(GCAGCCGCAGTACTACCTGG)、配列番号30(AGTACTGCGGATACTCAAAG)、配列番号31(ACAAGAGTGAGATCGCCCAT)と少なくとも95%の同一性を有する配列又はその機能的断片を含むか又はそれらを本質的に有することができ、且つ/又は、前記ガイドRNAは、配列番号29(GCAGCCGCAGTACTACCTGG)、配列番号30(AGTACTGCGGATACTCAAAG)、配列番号31(ACAAGAGTGAGATCGCCCAT)と少なくとも95%の同一性を有する配列又はその機能的断片を含むか又はそれらを本質的に有することができる。
【0018】
前記外来性DNA配列は、好ましくはレポーター遺伝子を含み、好ましくは、前記レポーター遺伝子は、ディスコソマレッド、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ及びβ-グルクロニダーゼのうちの少なくとも1つから選択される。
【0019】
前記ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNAガイド型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択されるのが好ましく、好ましくは、前記ヌクレアーゼは、Cas9、Cpfl、Casl2b(C2cl)、Casl3a(C2c2)、Cas3、Csf1、Casl3b(C2c6)及びC2c3、又はSaCas9やVQR-Cas9-HF1等のそれらのバリアントからなる群から選択されるCRISPRヌクレアーゼである。
【0020】
前記相補鎖オリゴヌクレオチド、前記ドナー核酸、ヌクレアーゼをコードする前記ポリヌクレオチドは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターに含まれるのが好ましく、好ましくは、前記ウイルスベクターは:アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス及びアデノウイルスから選択される。
【0021】
好ましくは、細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、幹細胞、造血幹細胞、造血前駆幹細胞のうちの1種又は複数からなる群から選択され、好ましくは、細胞は、対象の、眼の網膜の細胞又は肝細胞である。
【0022】
本発明の別の目的は、好ましくは医学的使用のための又は遺伝的疾患の処置に使用するための、又は突然変異型対立遺伝子と野生型対立遺伝子の両方がドナーDNAによって提供される遺伝子の正常なコピーに置き換えられる、優性遺伝性疾患の処置に使用するための、又は、機能喪失に起因する遺伝性疾患及び一般疾患の処置に使用するための、上記定義により得られる細胞であり、好ましくは、前記疾患は、血友病、糖尿病、ムコ多糖症(MPSI、MPSII、MPSIIIA、MPSIIIB、MPSIIIC、MPSIVA、MPSIVB、MPSVII)、スフィンゴ脂質症(ファブリー病、ゴーシェ病、ニーマンピック病、GM1ガングリオシド蓄積症)、リポフスチン沈着症(バッテン病他)及びムコ脂質症を含むリソソーム蓄積症;アデニロコハク酸欠乏症、血友病A及びB、副腎白質ジストロフィー、常染色体優性を含む。上記の細胞は、優性遺伝性の眼疾患、例えば網膜変性、好ましくは網膜色素変性症、神経疾患及び肝疾患の処置に使用するためのものとすることができる。
【0023】
本発明の更なる目的は:
a)- 少なくとも1つのストップコドン及び翻訳開始配列(TIS)又は
- リボソームスキッピング配列、及び
- 前記外来性DNA配列
を含み、逆位の標的化配列が5'及び3'にて隣接する、ドナー核酸;
b)標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド、並びに
c)標的化配列を認識するヌクレアーゼ
を含む、システムである。
【0024】
好ましい実施形態では、ドナー核酸及び/又は少なくとも1つのストップコドン及び/又はリボソームスキッピング配列及び/又は翻訳開始配列(TIS)及び/又は外来性DNA配列及び/又は標的化配列及び/又は相補鎖オリゴヌクレオチド及び/又はヌクレアーゼは、上で定義されている通りである。
【0025】
好ましくは、相補鎖オリゴヌクレオチド及び/又はドナー核酸及び/又はヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、1つ又は複数のウイルスベクター又は非ウイルスベクターに含まれており、好ましくは、前記ウイルスベクターは:アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス及びレンチウイルスから選択される。
【0026】
本発明によるシステムは、好ましくは医学的使用のためのものであり、好ましくは、遺伝的疾患の処置に使用するための、又は突然変異型対立遺伝子と野生型対立遺伝子の両方がドナーDNAによって提供される遺伝子の正常なコピーに置き換えられる、優性遺伝性疾患の処置に使用するための、又は、機能喪失に起因する遺伝性疾患及び一般疾患の処置に使用するためのものであり、好ましくは、前記疾患は、血友病、糖尿病、ムコ多糖症(MPSI、MPSII、MPSIIIA、MPSIIIB、MPSIIIC、MPSIVA、MPSIVB、MPSVII)、スフィンゴ脂質症(ファブリー病、ゴーシェ病、ニーマンピック病、GM1ガングリオシド蓄積症)、リポフスチン沈着症(バッテン病他)及びムコ脂質症を含むリソソーム蓄積症;アデニロコハク酸欠乏症、血友病A及びB、ALAデヒドラターゼ欠損症、副腎白質ジストロフィー、常染色体優性を含む。上記の細胞は、優性遺伝性の眼疾患、例えば網膜変性、好ましくは網膜色素変性症、神経疾患及び肝疾患の処置に使用するためのものとすることができる。
【0027】
本発明の別の目的は、上で定義されているシステム又はドナー核酸及び/若しくは標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド及び/若しくは上で定義されている標的化配列を認識するヌクレアーゼを含む発現ベクターである。
【0028】
本発明では、ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター又はネイキッドプラスミドDNAベクターからなる群から選択されるのが好ましい。本発明の別の目的は、上で定義されている又は発現ベクターを含む宿主細胞である。本発明の別の目的は、上で定義されているシステム又は発現ベクターを含む宿主細胞である。
【0029】
本発明の別の目的は、上で定義されているシステム又は発現ベクターを含むウイルス粒子である。
【0030】
好ましくは、ウイルス粒子は、AAVのカプシドタンパク質を含む。
【0031】
好ましくは、ウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9及びAAV10からなる群のうちの1つ又は複数から、好ましくはAAV2血清型又はAAV8血清型から選択される血清型のAAVのカプシドタンパク質を含む。
【0032】
本発明の別の目的は、以下:上で定義されている、システム又は発現ベクター又は宿主細胞又はウイルス粒子、及び薬学的に許容される担体のうちの1つを含む医薬組成物である。
【0033】
本発明の別の目的は:1つ又は複数の容器に含まれる、上で定義されている、システム又は発現ベクター又は宿主細胞又はウイルス粒子又は上で定義されている医薬組成物を含み、任意選択で、核酸構築物、ベクター、宿主細胞、ウイルス粒子又は医薬組成物をどのように患者に投与するかについて記載する取扱説明書又はパッケージング材料を更に含む、キットである。
【0034】
上で定義されている、システム又は発現ベクター又は宿主細胞又はウイルス粒子又は上で定義されている医薬組成物は、好ましくは医薬として使用するためのものであり、好ましくは網膜ジストロフィーの処置に使用するためのものであり、好ましくは、網膜ジストロフィーは、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、錐体ジストロフィー又は錐体杆体ジストロフィー、シュタルガルト病(ELOVL4)、フォン-ヒッペルリンドウ病、網膜芽細胞腫、神経性疾患、肝疾患、ムコ多糖症(MPSI、MPSII、MPSIIIA、MPSIIIB、MPSIIIC、MPSIVA、MPSIVB、MPSVII)、スフィンゴ脂質症(ファブリー病、ゴーシェ病、ニーマンピック病、GM1ガングリオシド蓄積症)、リポフスチン沈着症(バッテン病他)及びムコ脂質症を含むリソソーム蓄積症;糖尿病、アデニロコハク酸欠乏症、血友病A及びB、ALAデヒドラターゼ欠損症、副腎白質ジストロフィー、常染色体優性のような、肝臓を治療用タンパク質の産生及び分泌のための工場として使用し得るその他の疾患から選択される。
【0035】
本発明の更なる目的は、ウイルス粒子の生産のための上で定義されている発現ベクターである。
【0036】
好ましくは、本発明の目的は本明細書で言及されている配列である。
【0037】
好ましくは、ドナーDNAカセットエレメント及び/又はgRNA発現カセットエレメント及び/又はプロモーター配列及び/又はgRNA発現向けのU6プロモーター及び/又はgRNA及び/又はgRNA標的部位及び/又はCas9/Cas9-2a-GFP及び/又は治療用導入遺伝子及び/又はポリA及び/又はストップシグナル及び/又はスタートシグナル(コザック/T2A/IRES)は、以下の配列番号3~22に示される配列である。
【0038】
一実施形態では、本発明の方法は、ex vivo又はin vitroである。
【0039】
一実施形態では、本発明の方法では、細胞は、対象又は患者からの単離された細胞である。
【0040】
本発明の文脈において逆位の標的化配列とは、ドナーDNAの上流及び下流に配置され、このDNAとは、切断され次いで標的ゲノムに組み込まれるDNA構築物である。逆位の標的化配列は、標的ゲノム遺伝子座(例えば、アルブミン又はロドプシン)のガイドRNAを認識するものと正確に同じ配列であるが、逆転している。これにより、単方向性の組み込みを得ることが可能になる。
【0041】
好ましくは、翻訳開始配列(TIS)がリボソームスキッピングT2A配列であるか又はリボソームスキッピングT2A配列が存在する場合、上記少なくとも1つのストップコドンは存在しない。
【0042】
好ましくは、少なくとも1つのストップコドンは、TAG、TAA、TGAからなる群から選択される。
【0043】
3つの考えられるフレームにストップコドンを挿入する目的で、2つの終止コドン、例えば、TAATAAATAATAAATAATAA(配列番号1)を各フレームに挿入する。上記のストップコドンの任意の並べ替え又は組合せを使用することができる。
【0044】
ロドプシン(Rho)の配列は、以下の受託番号で好ましくは開示されている:ヒト: AB065668.1、マウス:AC142099.3、ブタ:AEMK02000087.1、一方、アルブミンの配列は、以下の受託番号AC140220.4で好ましくは記載されている。
【0045】
ディスコソマレッドは、配列番号2の配列を好ましくは有する。
【0046】
【0047】
本発明による方法では、外来性DNAは、ゲノムと比較して少なくとも1個のヌクレオチドの違いを含む。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、IRBP及びCas9を含む一ベクターが、上で定義されているドナーDNAを含む第2のベクターと一緒に使用される。
【0049】
ドナーDNA配列は、3'及び5'にて、gRNAが認識するのと同じgRNA標的部位が隣接するが、逆位であるのが好ましい(例えば、逆位標的部位)。
【0050】
本発明に従って得られる細胞は、外来性配列を発現する。
【0051】
本発明の文脈において、ヌクレアーゼは、特にAAVベクターが使用される場合、異なるベクターに存在するのが好ましい。
【0052】
好ましくは、AAV2/8ベクターが使用される。
【0053】
本発明では、Cas9又はspCas9を含む第1のベクターは、組織特異的プロモーター、例えば、肝臓特異的ハイブリッド肝臓プロモーター(HLP)又は網膜特異的プロモーターの制御下にあるのが好ましい。前記ベクターは、短い合成ポリA(sh polyA)を更に含むことができる。好ましくは、第2のベクターは、上で定義されているgRNA発現カセット及びドナーDNAを含む。好ましくは、アルブミンに特異的なgRNAはU6プロモーターの下にある。好ましくは、ドナーDNAは、好ましくはPAMを含んで、逆位アルブミンgRNA標的部位が3'及び5'にて隣接する。
【0054】
好ましくは、上記の第2のベクターは或いは、上で定義されている、アルブミン特異的gRNAの発現カセット及びARSBのコード配列を含むドナーDNAを含むことができる。
【0055】
好ましい実施形態では、目的の遺伝子並びにNHEJ部位特異的挿入に必要な酵素は、2つのAAVベクターによって運ばれ、ここで、プロセスに必要なエレメントのサイズが限定されているので、より大きな目的の遺伝子を用いることができる。本発明者らは、実際、構造部分を最小限に抑え(例えば、相同性アームの代わりに挿入部位を使用して)、その結果、ベクターにより長いcDNAを挿入することを可能とした。
【0056】
本発明の文脈において、ドナー核酸は、非相同末端結合を介して遺伝子に挿入される。
【0057】
本発明はまた、上で定義されている核酸又は上で定義されているヌクレオチド配列又は上で定義されているベクター、並びに薬学的に許容される希釈剤及び/又は賦形剤及び/又は担体を含む医薬組成物を提供する。
【0058】
好ましくは、組成物は治療薬を更に含み、好ましくは、治療薬は、酵素補充療法及び小分子療法からなる群から選択される。
【0059】
好ましくは、医薬組成物は:脳脊髄液(CSF)、髄腔内、非経口、静脈内、病巣内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮下、心室内、大槽内、腰椎、頭蓋内、脊髄内、静脈内、局所、鼻、経口、眼、網膜下、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される経路を通して投与される。
【0060】
本発明はまた、医学的使用のための上記の核酸又はヌクレオチド配列を含むベクターを提供し、ここで、前記ベクターは、脳脊髄液(CSF)、髄腔内、非経口、静脈内、病巣内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮下、心室内、大槽内、腰椎、頭蓋内、脊髄内、静脈内、局所、鼻、経口、眼、網膜下、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される経路を通して投与される。好ましくは、本発明のベクターは、静脈内、非経口、眼、好ましくは網膜下経路を通して投与される。
【0061】
好ましくは、ベクターはウイルスベクターであり、好ましくは、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ポリオウイルスベクター、マウスマロニーベースのウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、又はパルボウイルスベクターであり、好ましくは、アデノ随伴ウイルスは、AAV2、AAV9、AAV1、AAVSH19、AAVPHP.B、AAV8、AAV6である。
【0062】
好ましくは、前記ヌクレオチド配列は、ベクター、好ましくはウイルスベクター、更に好ましくはアデノ随伴ベクターに挿入される。
【0063】
本発明では、「少なくとも80%の同一性」とは、同一性が、参照される配列と少なくとも80%、又は85%又は90%又は95%又は100%の配列同一性であり得ることを意味する。これは、同一性に関し言及した%すべてにあてはまる。本発明では、「少なくとも95%の同一性」とは、同一性が、参照される配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性であり得ることを意味する。これは、同一性に関し言及した%すべてにあてはまる。本発明では、「少なくとも98%の同一性」とは、同一性が、参照される配列と少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性であり得ることを意味する。これは、同一性に関し言及した%すべてにあてはまる。好ましくは、同一性の%とは、参照される配列の全長に関するものである。
【0064】
本発明には、本明細書で言及されているヌクレオチド配列に由来する核酸配列、例えば、機能的断片、突然変異体、バリアント、誘導体、アナログ、及び本明細書で言及されている配列と少なくとも80%の同一性の%を有する配列も含まれる。
【0065】
次に、本発明を、以下の図を参照して非限定的な例によって例示する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】RHO遺伝子座を標的化するHITI設計の図である:黄色長方形及び青色三角形は、gRNA標的配列の2つの部分(Cas9切断の上流及び下流)を示す。はさみはCas9媒介DSBを表す。クロスのあるはさみは、Cas9が配列を認識且つ切断できないことを表す。PAM配列は赤色で示され、下線が引かれている。STOP:ストップコドン、START:翻訳開始部位、bGH:ウシ成長ホルモンポリA。
【
図2A】mRhoでのHITIのin vitro試験の図である:A)HEK293細胞でのトランスフェクションに使用されるプラスミドの図である:黄色長方形及び青色三角形は、gRNA標的配列の2つの部分(それぞれCas9切断の上流及び下流)を示す。Cbh:ニワトリベータアクチンハイブリッドプロモーター。STOP:ストップコドン、START:翻訳開始部位、bGH:ウシ成長ホルモンポリA。細胞をPFA4%で15分間固定し、DAPI含有封入剤を使用して染色した。
【
図2B】mRhoでのHITIのin vitro試験の図である:B)トランスフェクションの48時間後のHEK293細胞の蛍光顕微鏡検査の図である:細胞をPFA4%で15分間固定し、DAPI含有封入剤を使用して染色した。
【
図2C】mRhoでのHITIのin vitro試験の図である:C)蛍光HEK293細胞の代表的なFACSグラフの図である:トリプシン0.05%EDTAを使用してトランスフェクションの48時間後に細胞を剥離した。各試料について10,000個の細胞をカウントした。Q1:EGFP-/DsRed+、Q2:EGFP+/DsRed+、Q3:EGFP-/DsRed-、Q4:EGFP+/DsRed-。赤色四角はソートされた細胞を示す。PE-A:DsRed蛍光フィルター。FITC-A:EGFP蛍光フィルター。
【
図2D】mRhoでのHITIのin vitro試験の図である:D)EGFP+集団内のDsRed+細胞の定量化の図である。
【
図3】mRho遺伝子のSurveyorアッセイの図である:予想されるバンドサイズを示す。T7E:T7エンドヌクレアーゼI処理。
【
図4】マウス網膜のin vivo HITIの図である。A)マウス網膜のHITIに使用されるAAVの模式図である:IRBP:光受容体間レチノイド結合タンパク質プロモーター。shpolyA:短い合成ポリA。bGH:ウシ成長ホルモンポリA。黄色長方形及び青色三角形は、gRNA標的配列の2つの部分(Cas9切断の上流及び下流)を示す。ITR配列を青色ループとして示す。B)網膜凍結切片の蛍光顕微鏡検査の図である:注射の30日後に眼を採取し、4%PFAで一晩固定した。眼を30%ショ糖で6時間処理し、次いで、最適な冷却剤に含めた。10μm切片を作製し、DAPI含有封入剤で染色した。C)HITI効率を評価するためのDsRed+光受容体の定量化の図である。**=p<0.01
【
図5】HITI接合部増幅の図である。DNAを網膜の耳側から抽出し、HITI接合部のPCR増幅に使用した。A)5'接合部及び3'接合部を増幅するためのプライマー設計を示すスキームである。B)5'接合部増幅の図である。予想される断片サイズは206bpであった。PCR増幅は、gRNA処理網膜1つにおいてのみ観察された。C)3'接合部増幅の図である。予想される断片サイズは473bpであった。PCR増幅は、gRNA処理網膜1つにおいてのみ観察された。
【
図6】mRhoのHITI接合部のNGS特徴付けの図である:切断部位を囲む各位置での相対インデル頻度の図である。負数及び正数は、それぞれ欠失及び挿入を表す。切断部位に関する+1の位置には青色線で下線が引かれている。相対頻度がその位置において0.05%よりも高いインデルのみを示す。
【
図7】ブタ網膜のHITIの図である:A)DsRed+光受容体は、gRNA処理網膜のみに存在する。B)ブタ網膜におけるHITI効率を評価するためのDsRed+光受容体の定量化の図である。***=p>0.001
【
図8】pRhoにおけるインデルの特徴付けの図である。A)網膜又はRPEから抽出したDNAを使用したpRho遺伝子座のSurveyorアッセイの図である:T7E:T7エンドヌクレアーゼI処理。PCR産物のサイズと予想される切断バンドを示す。B)pRho遺伝子座のTIDE解析の図である:網膜又はRPEより抽出したDNAから増幅したPCR産物の配列を決定した。RPE配列をTIDEの鋳型として使用した。クロマトグラムを使用してインデルの頻度とタイプを脱構築した。A)代表的なTIDE結果の図である。B)ブタ網膜におけるインデル頻度の定量化の図である。
【
図9】HITIを使用したRP表現型の修正の図である。A)P23H+/-マウスの治療に使用されるAAVベクターの模式図:ITRは青色で示されている。IRBP:光受容体間レチノイド結合タンパク質プロモーター。shpolyA:短い合成ポリA。hRHO CDS:ヒトRHO遺伝子のコード配列、bGH:ウシ成長ホルモンポリA。黄色長方形及び青色三角形は、gRNA標的配列の2つの部分(Cas9切断の上流及び下流)を示す。B)p60でのP23HマウスにおけるERG B波の改善の図である。Cd.s/m
2=1平方メートルあたりのカンデラ。*=p<0.05
【
図10】ONL厚の組織学的解析の図である:A)pl20で採取された網膜のヘマトキシリン-エオジン染色の顕微鏡検査画像の図である。B)解析された網膜の耳側領域におけるONL厚の定量化の図である。
【
図11】構築物のサイズ及びT2A配列は、in vitro HITIの効率に影響を及ぼさない、図である。A)hRHO-2A-DsRed構築物の設計の図である。B)蛍光顕微鏡検査では、異なるサイズの2つのドナーDNAでHITI効率に差がないことを示す。C)DsRed+/GFP+細胞のFACS定量化の図である。
【
図12】アルブミン遺伝子座に組み込むためのHITI設計の模式図、及び使用したgRNAベクターとウイルスベクターの模式図である:A)マウスアルブミン遺伝子の第2のイントロンに特異的なgRNAの設計の図である。PAM配列は赤色で示されている。B)マウス肝臓のHITIに使用されるAAV2/8ベクターの模式図である。ドナーDNAは同じgRNA標的配列が隣接する。ドナーDNAは、3つのフレームにストップコドン、翻訳スタート配列(コザック)、レポーター遺伝子DsRed及びbGHポリAを含有する。C)Cas9ベクター及びドナーDNA送達後に予想されるHITIの図解である。はさみはCas9媒介DBSを表す。クロスのあるはさみは、Cas9が標的部位を認識できないことを表す。
図12。アルブミン遺伝子座に組み込むためのHITI設計の模式図、及び使用したgRNAベクターとウイルスベクターの模式図である:A)マウスアルブミン遺伝子の第2のイントロンに特異的なgRNAの設計。PAM配列は赤色で示され、下線が引かれている。B)マウス肝臓のHITIに使用されるAAV2/8ベクターの模式図。ドナーDNAは同じgRNA標的配列が隣接する。ドナーDNAは、3つのフレームにストップコドン、翻訳スタート配列(コザック)、レポーター遺伝子DsRed、及びbGHポリAを含有する。C)Cas9及びドナーDNA送達後に予想されるHITIの描写。はさみはCas9媒介DBSを表す。クロスのあるはさみは、Cas9が標的部位を認識できないことを表す。
【
図13】マウス肝細胞のAlb遺伝子座におけるDsRedの標的化組み込みの図である。各ベクター4×10
13GC/Kgをp2にて側頭静脈を通して静脈内投与した。注射の1カ月後、肝臓を採取し、画像化した。A)新鮮肝臓の実体顕微鏡イメージングでは、gRNA処理肝臓においてのみDsRed+フォーカスが広く存在することを示す。B)肝臓凍結切片の蛍光顕微鏡検査では、DsRed+肝細胞のフォーカスを示す。C)DsRed+肝細胞の定量化の図である。***p<0.0001。
【
図14】インデルの特徴付けの図である。A)アルブミン2°エクソンでのインデル検出のためのSurveyorアッセイの図である。DNAを肝臓から抽出し、Cas9標的配列を囲むゲノム領域のPCR増幅に使用した。592bpの断片を増幅した。T7E1消化産物の予想サイズを示す。T7E1:T7エンドヌクレアーゼI処理。B)インデル頻度の定量化の図である。スクランブル及びPBSで観察された意味のないインデルが含まれていた。C)マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)DSB修復による共通の7bp欠失の模式図である。マイクロホモロジー領域を青色四角で示す。PAMは赤色で示され、下線が引かれている。
【
図15】HITI接合部増幅の図である。A)5'接合部及び3'接合部を増幅するためのプライマー設計を示すスキームである。B)5'接合部増幅の図である。予想される断片サイズは663bpであった。PCR増幅は、すべてのgRNA処理で観察され、すべてのスクランブル処理肝臓では非存在であった。C)3'接合部増幅の図である。予想される断片サイズは455bpであった。PCR増幅は、すべてのgRNA処理で観察され、すべてのスクランブル処理肝臓では非存在であった。
【
図16】Alb遺伝子座のHITI接合部のNGSの図である。HITI接合部のNGSリードにおける挿入及び欠失頻度の分布。A)5'接合部の図である:合計リード=80,000~100,000、B)3'接合部の図である:合計リード=250,000~350,000。負数及び正数は、それぞれ欠失及び挿入を表す。青色バーは、DSBの後の+1の位置を示す。
【
図17】HITIは、成体マウスの肝臓で効果的で用量依存的であることを示す図である。4週齢C57BL/6マウスに、各ベクターについて、4×10
13GC/Kg(高用量、HD)又は1.3×10
13GC/Kg(低用量、LD)を注射した。A)肝臓凍結切片の蛍光顕微鏡検査の図である。B)DsRed+肝細胞の定量化の図である。
【
図18】マウス肝細胞のアルブミン遺伝子座にARSBコード配列を組み込むのに使用されるAAVの設計の図である。HLP:ハイブリッド肝臓プロモーター、sh polyA:短いポリA、U6:RNAポリメラーゼ3のU6プロモーター、STOP:3つの異なるフレームのストップコドン。hARSB CDS:ヒトアリールスルファターゼBのコード配列、bGH poly-A:ウシ成長ホルモンポリA。スタッファー(stuffer)DNAを灰色で示す。黄色長方形及び青色三角形は、gRNA標的配列の2つの部分(Cas9切断の上流及び下流)を示す。
【
図19】マウス血清中のARSBレベルの図である。血清ARSBを、ヒトARSBに対する抗体を用いたイムノアッセイを使用して月1回で測定した。各時点で観察された値を、マウスごとに個別に表す。
【
図20】尿中GAGが処置後3カ月で減少することを示す図である。尿中GAGを、注射の3カ月後に収集した尿から測定した。GAGレベルをクレアチニンレベルで標準化した。結果を、スクランブルgRNAで処置した対照の罹患マウスにおけるGAGレベルに対するパーセンテージとして表す。サークルはそれぞれの分析されたマウスを表す。バーは群平均及び標準誤差を表す。
【0067】
配列表の配列の説明
説明文:
【0068】
【0069】
P939// pSpCas9(BB)-2A-GFP+gRNAScramble
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
p972// pSpCas9(BB)-2A-GFP+gRNA hRHO HITI
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
p995/ SpCas9-2A-GFP-HITI mRHO
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
p1070// pSpCas9(BB)-2A-GFP-gRNAalbumin
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
p946// pAAV-IRBP-SpCas9
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
p1139_pAAV2.1._HLP_SpCas9(HA)_spA
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
p1135// pAAV2.1 mRHOgRNA-mRHO HITI (kozak-dsRED)_hVmd2-EGFP
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
p1116// pAAV_Scramble_mRHO HITI(kozak-dsRED)_hVmd2-EGFP
【0099】
【0100】
【0101】
p1048// pAAV2.1-Scramble-mRHO HITI(IRESdsRED)-Vmd2-EGFP
【0102】
【0103】
【0104】
p1047// pAAV2.1-mRHOgRNA-mRHOHITI(IRESdsRED)-hVDM2-EGFP
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
p1138// pAAV-mRHO HITI (kozak-hRHO-T2A-dsRED) + mRHO gRNA
【0109】
【0110】
【0111】
p1118// pAAV_Scramble_sRHO HITI(kozak-dsRED)_hVmd2-EGFP
【0112】
【0113】
【0114】
p1126// pAAV_sRHOgRNA_sRHO HITI(kozak-dsRED)_hVmd2-EGFP
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
p1222// pAAV2.1_sRHOgRNA+sRHO HITI (IRES-dsRED)_Vmd2_GFP
【0119】
【0120】
【0121】
p1227// pAAV2.1_sRHOgRNA+sRHO HITI (IRES-dsRED)_Vmd2_GFP
【0122】
【0123】
【0124】
p1160//pAAV_Alb5'HITI(kozak-dsRED) + gRNA mAlb 5'
【0125】
【0126】
【0127】
p1161//pAAV_Alb5'HITI(kozak-dsRED) + scramble
【0128】
【0129】
p1336// pAAV_mAlb5' HITI(kozak-ARSB) + Stuffer DNA + gRNA
【0130】
【0131】
【0132】
p1240// pAAV2.1_mAlb5' HITI (kozak-ARSB) NEW + Scramble
【0133】
【0134】
【0135】
p1239//pAAV2.1_mAlb5' HITI (kozak-ARSB) NEW + gRNA
【0136】
【0137】
【0138】
本発明のプラスミド:
【0139】
【0140】
定義
外来性DNA配列
上述の外来性DNA配列は、標的ゲノムのゲノムDNAへと組み込まれるDNAの断片を含む。一部の実施形態では、外来性DNAは遺伝子の少なくとも一部を含む。外来性DNAは、コード配列を、例えば、野生型遺伝子に、又は発現する必要がある因子の「コドン最適化」配列に、関連したcDNAを含むことができる。一部の実施形態では、外来性DNAは、遺伝子の少なくともエクソン及び/又は遺伝子の少なくとも1つのイントロンを含む。一部の実施形態では、外来性DNAは、遺伝子のエンハンサーエレメント又はプロモーターエレメントを含む。一部の実施形態では、外来性DNAは、遺伝子の3'部分に融合された遺伝子の5'部分を含む遺伝子の不連続配列を含む。一部の実施形態では、外来性DNAは、野生型遺伝子配列を含む。一部の実施形態では、外来性DNAは突然変異遺伝子配列を含む。一部の実施形態では、外来性DNAは、野生型遺伝子配列を含む。一部の実施形態では、外来性DNA配列は、レポーター遺伝子を含む。一部の実施形態では、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルクロニダーゼのうちの少なくとも1つから選択される。一部の実施形態では、外来性DNA配列は、例えば、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含むことができる遺伝子転写調節エレメントを含む。一部の実施形態では、外来性DNA配列は、1つ又は複数のエクソン又はそれらの断片を含む。一部の実施形態では、外来性DNA配列は、1つ又は複数のイントロン又はそれらの断片を含む。一部の実施形態では、外来性DNA配列は、3'非翻訳領域又は5'非翻訳領域の少なくとも一部を含む。一部の実施形態では、外来性DNA配列は、人工DNA配列を含む。一部の実施形態では、外来性DNA配列は、核局在化配列及び/又は核外搬出配列を含む。外来性DNA配列は、一部の実施形態では、標的ゲノム遺伝子座にて組み込まれる核酸のセグメントを含む。外来性DNA配列は、一部の実施形態では、目的の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態での外来性DNA配列は、1つ又は複数の発現カセットを含む。かかる発現カセットは、一部の実施形態では、目的の外来性DNA配列、選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチド、並びに発現に影響を及ぼす調節成分を含む。外来性DNA配列は、一部の実施形態では、ゲノム核酸を含む。ゲノム核酸は、動物、マウス、ヒト、非ヒト、げっ歯類、非ヒト、ラット、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えばマーモセット、アカゲザル)、家畜哺乳動物若しくは農業哺乳動物、鳥類、細菌、古細菌、ウイルス、又は目的のその他生物体、或いはそれらの組合せに由来する。適切な任意のサイズの外来性DNA配列が標的ゲノムに組み込まれる。一部の実施形態では、ゲノムに組み込まれる外来性DNA配列は、長さが、3キロベース(kb)未満、約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500キロベースであり、又は500キロベース超である。一部の実施形態では、ゲノムに組み込まれる外来性DNA配列は、長さが、少なくとも約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500(kb)であり、又は500(kb)超である。
【0141】
標的化配列
一部の実施形態では、標的化構築物(逆位の標的化配列が5'及び3'にて隣接するドナー核酸を含む)は、少なくとも2つの標的化配列を含む。本明細書の標的化配列は、ヌクレアーゼによって認識及び切断される核酸配列である。一部の実施形態では、標的化配列は、長さが約9から約12ヌクレオチドまで、長さが約12から約18ヌクレオチドまで、長さが約18から約21ヌクレオチドまで、長さが約21から約40ヌクレオチドまで、長さが約40から約80ヌクレオチドまで、又は部分範囲の任意の組合せ(例えば、9~18、9~21、9~40、及び9~80ヌクレオチド)、である。一部の実施形態では、標的化配列は、ヌクレアーゼ結合部位を含む。一部の実施形態では、標的化配列は、ニック/切断部位を含む。一部の実施形態では、標的化配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を含む。一部の実施形態では、標的核酸配列(例えば、プロトスペーサー)は、20ヌクレオチドである。一部の実施形態では、標的核酸は、20ヌクレオチド未満である。一部の実施形態では、標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30又はそれ超のヌクレオチドである。標的核酸は、一部の実施形態では、多くても5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30又はそれ超のヌクレオチドである。一部の実施形態では、標的核酸配列は、PAMの第1のヌクレオチドの5'間近の16、17、18、19、20、21、22、又は23塩基である。一部の実施形態では、標的核酸配列は、PAMの最後のヌクレオチドの3'間近の16、17、18、19、20、21、22、又は23塩基である。一部の実施形態では、標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5'間近の20塩基である。一部の実施形態では、標的核酸配列は、PAMの最後のヌクレオチドの3'間近の20塩基である。一部の実施形態では、標的核酸配列は、PAMの5'又は3'である。一部の実施形態では、標的化配列は、相補鎖核酸の核酸-標的化セグメントが結合する標的核酸に存在する核酸配列を含む。例えば、標的化配列は、一部の実施形態では、相補鎖核酸がそれに対して塩基対を有するように設計されている配列を含む。一部の実施形態での標的化配列は、例えば、細胞の核若しくは細胞質に、又はミトコンドリアや葉緑体等の細胞の細胞小器官内に、存在する任意のポリヌクレオチドを含む。標的化配列は、ヌクレアーゼ向けの切断部位を含む。標的化配列は、一部の実施形態では、ヌクレアーゼ向けの切断部位に隣接する。ヌクレアーゼは、一部の実施形態では、相補鎖の核酸-標的化配列が結合する標的核酸に存在する核酸配列の内の又は外側の部位にて、核酸を切断する。切断部位は、一部の実施形態では、ヌクレアーゼが一本鎖切断又は二本鎖切断を生成する核酸の位置を含む。例えば、プロテアーゼ認識配列にハイブリダイズし、プロテアーゼと複合体を形成した相補鎖核酸を含むヌクレアーゼ複合体の形成は、相補鎖核酸のスペーサー領域が結合する標的核酸に存在する核酸配列において、又はその近傍で(例えば、核酸配列からの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、19、20、23、50、又はそれ超の塩基対内で)の一方又は両方の鎖の切断をもたらす。切断部位は、一部の実施形態では、核酸の一方の鎖上のみに又は両方の鎖上にある。一部の実施形態では、切断部位は、核酸の両方の鎖上の同じ位置にあるか(平滑末端を生成する)、又は各鎖上の異なる部位にある(付着末端を生成する)。付着末端は、一部の実施形態では、5'又は3'のオーバーハング粘着末端である。付着末端は、一部の実施形態では、粘着末端を生成するヌクレアーゼ(例えば、Cpfl)によって生成される。一部の実施形態では、付着末端は、例えば2つのヌクレアーゼを使用することによって生成され、ヌクレアーゼのそれぞれが、各鎖上の異なる切断部位にて一本鎖切断を生成し、それにより二本鎖切断を生成する。例えば、第1のニッカーゼが、二本鎖DNA(dsDNA)の第1の鎖の上に一本鎖切断を創り出し、第2のニッカーゼは、オーバーハング配列が創り出されるようにdsDNAの第2の鎖の上に一本鎖切断を創り出す。場合によっては、第1の鎖上のニッカーゼのヌクレアーゼ認識配列は、第2の鎖上のニッカーゼのヌクレアーゼ認識配列から、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、250、500、又は1000塩基対、によって隔てられている。ヌクレアーゼによる標的核酸の部位特異的切断は、一部の実施形態では、相補鎖核酸と標的核酸との間の塩基対合相補性によって決定される位置で生じる。ヌクレアーゼタンパク質による標的核酸の部位特異的切断は、一部の実施形態では、標的核酸のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短いモチーフによって決定される位置で生じる。例えば、PAMは、認識配列の3'末端にてヌクレアーゼ認識配列に隣接する。例えば、ヌクレアーゼの切断部位は、一部の実施形態では、PAM配列の約1~約25、又は約2~約5、又は約19~約23塩基対(例えば、3塩基対)、上流又は下流にある。一部の実施形態では、ヌクレアーゼの切断部位は、PAM配列の3塩基対上流にある。一部の実施形態では、ヌクレアーゼの切断部位は、(+)鎖上の19塩基及び(-)鎖上の23塩基であり、5'オーバーハングの長さ5個のヌクレオチド(nt)を生成する。場合によっては、切断によって平滑末端が生成される。場合によっては、切断によって、5'オーバーハングを有する付着末端又は粘着末端が生成される。場合によっては、切断によって、3'オーバーハングを有する付着末端又は粘着末端が生成される。種々のヌクレアーゼタンパク質のオルソログが、異なるPAM配列を利用する。例えば、異なるCasタンパク質が、一部の実施形態では、異なるPAM配列を認識する。例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)では、PAMは、配列5'-XRR-3'を含む標的核酸中の配列である(配列中、Rは、A又はGのいずれかであり、ここで、Xは任意のヌクレオチドであり、且つXは、スペーサー配列によって標的化される標的核酸配列の3'間近にある)。S.ピオゲネスのCas9(SpyCas9)のPAM配列は、5'-XGG-3'である(配列中、Xは任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの非相補鎖のヌクレアーゼ認識配列の3'間近にある)。CpflのPAMは5'-TTX-3'である(配列中、Xは任意のDNAヌクレオチドであり、ヌクレアーゼ認識配列の5'間近にある)。好ましくは、Cas9/sgRNA複合体は、ゲノム標的配列のPAM配列の3塩基対上流にDSBを導入し、その結果、2つの平滑末端をもたらす。正確に同じCas9/sgRNA標的配列がドナーDNA上へと逆位方向でロードされる。標的化ゲノム遺伝子座並びにドナーDNAは、Cas9/gRNAによって切断され、線形化ドナーDNAは、NHEJ DSB修復経路を介して標的部位に組み込まれる。ドナーDNAが正常な方向に組み込まれる場合、接合配列はCas9/gRNAによる更なる切断から保護される。ドナーDNAが逆位方向に組み込まれる場合、Cas9/gRNAは、インタクトなCas9/gRNA標的部位が存在することに起因して、組み込まれたドナーDNAを切除することになる。
【0142】
相補鎖核酸
相補鎖核酸、例えば相補鎖オリゴヌクレオチド又は相補鎖RNAとは、別の核酸、例えば、細胞のゲノム中の標的核酸にハイブリダイズする核酸を指す。相補鎖核酸は、例えば、RNAであってもDNAであってもよい。相補鎖核酸は、一部の実施形態では、ヌクレオチドアナログ及び/又は改変ヌクレオチドを含む。相補鎖核酸は、一部の実施形態では、核酸の配列に部位特異的に結合するようにプログラム又は設計されている。相補鎖核酸は、一部の実施形態では、核酸に新規な又は改善された特徴を提供するために1つ又は複数の改変を含む。一部の実施形態では、相補鎖核酸は、核酸親和性タグ及び/又は合成ヌクレオチド、合成ヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド誘導体、及び/又は改変ヌクレオチドを含む。相補鎖核酸は、一部の実施形態では、例えば、標的核酸中の配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列(例えば、スペーサー)を、5'末端又は3'末端にて又はその近傍に含む。一部の実施形態では、相補鎖核酸のスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して配列特異的な様式で標的核酸と相互作用する。一部の実施形態では、スペーサー配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5'又は3'に位置する標的核酸(例えば、プロトスペーサー配列)にハイブリダイズする。一部の実施形態では、相補鎖核酸は、二本相補鎖核酸と呼ばれる別々の2つの核酸分子を含む。一部の実施形態では、相補鎖核酸は、一本相補鎖核酸と呼ばれる単一の核酸分子を含む。一部の実施形態では、相補鎖核酸は、crRNAを含む一本相補鎖核酸である。一部の実施形態では、相補鎖核酸は、融合構築物を含む一本相補鎖核酸である。相補鎖核酸の核酸-標的化領域は、一部の実施形態では、標的核酸中の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む。核酸-標的化領域は、一部の実施形態では、スペーサー領域を含む。スペーサー領域のヌクレオチド配列は変化し、相補鎖核酸が相互作用する標的核酸内の位置を決定する。相補鎖核酸のスペーサー領域は、一部の実施形態では、標的核酸内の任意の所望の配列にハイブリダイズするように改変される。相補性とは二者択一的に、完全であるか又は実質的/十分である。2つの核酸間の完全な相補性とは、2つの核酸が、二重鎖の中にあるあらゆる塩基がワトソン-クリック対合により相補的塩基に結合している二重鎖を形成することを意味する。実質的又は十分である相補性とは、一本鎖中の配列が対向する鎖中の配列に対して完璧に及び/又は完全に相補性というわけではないが、2つの鎖上の塩基間で十分な結合が生じて、ハイブリダイゼーション条件(例えば塩の濃度及び温度)の設定において安定したハイブリッド複合体を形成することを意味する。このような条件は、ハイブリダイズされた鎖のTmを予測するための配列及び標準の数学的計算を使用することによって、又は、慣例的な方法を使用することによるTmの経験的決定によって予測することができる。一部の実施形態では、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、長さが18~72の間のヌクレオチドである。相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、約12ヌクレオチドから約100ヌクレオチドまでの長さを有する。例えば、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、約12ヌクレオチド(nt)から約80ntまで、約12ntから約50ntまで、約12ntから約40ntまで、約12ntから約30ntまで、約12ntから約25ntまで、約12ntから約20ntまで、約12ntから約19ntまで、約12ntから約18ntまで、約12ntから約17ntまで、約12ntから約16ntまで、又は約12ntから約15ntまでの長さを有する。或いは、DNA-標的化セグメントは、約18ntから約20ntまで、約18ntから約25ntまで、約18ntから約30ntまで、約18ntから約35ntまで、約18ntから約40ntまで、約18ntから約45ntまで、約18ntから約50ntまで、約18ntから約60ntまで、約18ntから約70ntまで、約18ntから約80nt、約18ntから約90ntまで、約18ntから約100ntまで、約20ntから約25ntまで、約20ntから約30ntまで、約20ntから約35ntまで、約20ntから約40ntまで、約20ntから約45ntまで、約20ntから約50ntまで、約20ntから約60ntまで、約20ntから約70ntまで、約20ntから約80ntまで、約20ntから約90ntまで、又は約20ntから約100ntまでの長さを有する。
【0143】
一部の実施形態では、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、長さ20のヌクレオチドである。一部の実施形態では、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、長さ19のヌクレオチドである。一部の実施形態では、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、長さ18ヌクレオチドである。一部の実施形態では、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、長さ17ヌクレオチドである。一部の実施形態では、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、長さ16のヌクレオチドである。一部の実施形態では、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、長さ21のヌクレオチドである。一部の実施形態では、相補鎖核酸の核酸-標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、長さ22のヌクレオチドである。プロトスペーサー配列は、一部の実施形態では、目的の領域内のPAMを特定し、プロトスペーサーとしてPAMの上流又は下流に所望のサイズの領域を選択することによって特定される。対応するスペーサー配列は、プロトスペーサー領域の相補的配列を決定することによって設計される。スペーサー配列は、一部の実施形態では、コンピュータプログラム(例えば、機械可読コード)を使用して特定される。コンピュータプログラムは、一部の実施形態では、変数、例えば、予測融解温度、二次構造形成、及び予測アニール温度、配列同一性、ゲノムコンテキスト、クロマチンアクセシビリティ、%GC、ゲノム発生の頻度、メチル化状態、S Psの存在等を、使用する。核酸-標的化配列(例えば、スペーサー配列)と標的核酸内のヌクレアーゼ認識配列(例えば、プロトスペーサー)との間のパーセント相補性は、一部の実施形態では、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%である。核酸-標的化配列と標的核酸内のヌクレアーゼ認識配列との間のパーセント相補性は、一部の実施形態では、連続する約20のヌクレオチドにわたって少なくとも60%である。一部の実施形態では、相補的鎖核酸は、更なる望ましい特徴(例えば、改変又は調節された安定性;細胞内標的化;蛍光標識によるトラッキング;タンパク質又はタンパク質複合体に対する結合部位等)を提供する、改変又は配列を含む。かかる改変の例には以下が挙げられる:例えば、5'キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G));3'ポリアデニル化テール(すなわち、3'ポリ(A)テール);リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及び/又はタンパク質複合体による安定性の調節及び/又はアクセシビリティの調節を可能にするため);安定性制御配列;dsRNA二重鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン));RNAを細胞内の位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体等)へと標的化する改変又は配列;トラッキング(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列等)を提供する改変又は配列;或いは、タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、及びそれらの組合せを含めて、DNAに作用するタンパク質)に対する結合部位を提供する改変又は配列。相補鎖核酸は、任意の形態で、例えば、2つの分子(例えば、別々のcrRNA及びtracrRNA)として又は1つの分子(例えば、sgRNA)としてのいずれかで、RNAの形態で、提供される。一部の実施形態では、相補鎖核酸は、ヌクレアーゼタンパク質との複合体の形態で提供される。或いは、相補鎖核酸は、RNAをコードするDNAの形態でも提供される。相補鎖核酸をコードするDNAは二者択一的に、単一の相補鎖核酸(例えば、sgRNA)又は別々のRNA分子(例えば、別々のcrRNA及びtracrRNA)をコードする。後者の場合、相補鎖核酸をコードするDNAは、それぞれ、crRNA及びtracrRNAをコードする別々のDNA分子として提供される。一部の実施形態では、相補鎖核酸をコードするDNAは、細胞のゲノムに安定して組み込まれ、任意選択で、細胞において活性なプロモーターに作動可能に連結されている。相補鎖核酸をコードするDNAは、一部の実施形態では、発現構築物中のプロモーターに作動可能に連結されている。相補鎖核酸は、適切な任意の方法によって調製される。例えば、相補鎖核酸は、例えば、T7RNAポリメラーゼを使用してin vitro転写によって調製される。一部の実施形態では、相補鎖核酸はまた、化学合成によって調製される合成的に産生された分子である。
【0144】
ヌクレアーゼ.
標的化配列を認識するヌクレアーゼは、当業者に知られており、それらに限定されないが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の反復(CRISPR)ヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼが含まれる。組成物中に見いだされ且つ本明細書に開示されている方法において有用なヌクレアーゼを、以下により詳細に説明する。
【0145】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」又は「ZFN」とは、Foklの切断ドメインと3つ以上のジンクフィンガーモチーフを含有するDNA認識ドメインとの間の融合物である。精密な配向及び間隔で個々の2つのZFNがDNAの特定の位置でヘテロ二量体化すると、DNAの二本鎖切断がもたらされる。場合によっては、ZFNは切断ドメインを各ジンクフィンガードメインのC末端に融合させる。2つの切断ドメインが二量体化しDNAを切断することを可能とするために、個々の2つのZFNは、ある特定の距離隔てて、DNAの対向している鎖をそれらのC末端に結合する。場合によっては、ジンクフィンガードメインと切断ドメインの間のリンカー配列は、各結合部位の5'末端が約5~7bpだけ隔てられている必要がある。本発明において有用である例示的なZFNには、それらに限定されないが、Urnovら、Nature Reviews Genetics、2010、11:636~646頁;Gajら、Nat Methods、2012、9(8):805~7頁;各米国特許、第6,534,261号;第6,607,882号;第6,746,838号;第6,794,136号;第6,824,978号;第6,866,997号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;第7,030,215号;第7,220,719号;第7,241,573号;第7,241,574号;第7,585,849号;第7,595,376号;第6,903,185号;第6,479,626号;並びに各米国特許出願公開、第2003/0232410号及び第2009/0203140号、に記載のものが挙げられる。一部の実施形態では、ZFNはジンクフィンガーニッカーゼであり、これは、一部の実施形態では、部位特異的な一本鎖DNA切断又はニックを誘導する操作されたZFNである。ジンクフィンガーニッカーゼに関する説明については、例えば、Ramirezら、Nucl Acids Res、2012、40(12):5560~8頁; Kimら、Genome Res、2012、22(7):1327~33頁に見られる。
【0146】
TALEN
「TALEN」又は「TALエフェクターヌクレアーゼ」とは、DNA結合タンデム反復の中央ドメイン、核局在化シグナル、及びC末端転写活性化ドメインを含有する、操作された転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼである。場合によっては、DNA結合タンデム反復は、長さが33~35個のアミノ酸を含み、1つ又は複数の特定のDNA塩基対を認識する、12位及び13位に2個の超可変アミノ酸残基を含有する。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって産生される。例を挙げると、TALEタンパク質は、野生型又は突然変異Foklエンドヌクレアーゼ又はFoklの触媒ドメインといったヌクレアーゼに融合され得る。Foklに対するいくつかの突然変異が、TALENでのFokl使用のためになされるが、これによって、例えば、切断特異性や活性が改善される。かかるTALENは、任意の所望のDNA配列に結合するように操作されている。TALENは、次いでNHEJ又はHDRを受ける、標的DNA配列に二本鎖切断を創り出すことによって遺伝子改変を生成するのによく使用される。場合によっては、HDRを促進するために一本鎖ドナーDNA修復鋳型が提供される。TALENと遺伝子編集へのその使用に関する詳細な説明については、例えば、各米国特許、第8,440,431号;第8,440,432号;第8,450,471号;第8,586,363号;及び第8,697,853号;Scharenbergら、Curr Gene Ther、2013、13(4):291~303頁;Gajら、Nat Methods、2012、9(8):805~7頁;Beurdeleyら、Nat Commun、2013、4:1762頁;及びJoung and Sander、Nat Rev Mol Cell Biol、2013、14(l):49~55頁、に見られる。
【0147】
DNAガイド型ヌクレアーゼ
「DNAガイド型ヌクレアーゼ」とは、一本鎖DNA相補的ヌクレオチドを使用して、別の核酸、例えば、細胞のゲノム中の標的核酸にハイブリダイズすることによって、ヌクレアーゼをゲノム内の正常な場所に誘導するヌクレアーゼである。一部の実施形態では、DNAガイド型ヌクレアーゼは、アルゴノート(Argonaute)ヌクレアーゼを含む。一部の実施形態では、DNAガイド型ヌクレアーゼは、TtAgo、PfAgo、及びNgAgoから選択される。一部の実施形態では、DNAガイド型ヌクレアーゼは、NgAgoである。
【0148】
メガヌクレアーゼ
「メガヌクレアーゼ」とは、ある特定の実施形態では、高度に特異的であるレアカットエンドヌクレアーゼ又はホーミングエンドヌクレアーゼであり、長さが少なくとも12塩基対、例えば長さが12から40塩基対まで又は12から60塩基対までに及ぶDNA標的部位を認識する。
【0149】
任意のメガヌクレアーゼが本明細書で使用されることが企図され、それらに限定されないが、それには、I-Scel、I-Scell、I-SceIII、I-SceIV、I-SceV、I-SceVI、I-SceVII、I-Ceul、I-CeuAIIP、I-Crel、I-CrepsblP、I-CrepsbllP、I-CrepsbIIIP、I-CrepsbIVP、I-Tlil、I-Ppol、PI-PspI、F-Scel、F-Scell、F-Suvl、F-Tevl、F-TevII、I-Amal、I-Anil、I-Chul、I-Cmoel、I-Cpal、I-CpaII、I-Csml、I-Cvul、I-CvuAIP、I-Ddil、I-DdiII、I-Dirl、I-Dmol、I-Hmul、I-HmuII、I-HsNIP、I-Llal、I-Msol、I-Naal、I-Nanl、I-NcIIP、I-NgrIP、I-Nitl、I-Njal、I-Nsp236IP、I-Pakl、I-PboIP、I-PcuIP、I-PcuAI、I-PcuVI、I-PgrlP、1-PobIP、I-Porl、I-PorIIP、I-PbpIP、I-SpBetaIP、I-Scal、I-SexIP、1-SneIP、I-Spoml、I-SpomCP、I-SpomIP、I-SpomIIP、I-SquIP、I-Ssp6803I、I-SthPhiJP、I-SthPhiST3P、I-SthPhiSTe3bP、I-TdeIP、I-Tevl、I-TevII、I-TevIII、I-UarAP、I-UarHGPAIP、I-UarHGPA13P、I-VinlP、1-ZbiIP、PI-MtuI、PI-MtuHIP PI-MtuHIIP、PI-PfuI、PI-PfuII、PI-PkoI、Pl-PkoII、PI-Rma43812IP、PI-SpBetaIP、PI-SceI、PI-Tful、PI-TfuII、PI-Thyl、PI-Tlil、PI-THII、I-Crelメガヌクレアーゼ、I-Ceulメガヌクレアーゼ、I-Msolメガヌクレアーゼ、I-Scelメガヌクレアーゼ、若しくは任意の活性バリアント、断片、突然変異体又はそれらの誘導体が含まれる。
【0150】
CRISPR
CRISPR(クラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の反復)/Cas(CRISPR関連タンパク質)ヌクレアーゼシステムとは、ゲノム工学に使用される細菌システムをベースとする操作されたヌクレアーゼシステムである。これは、多くの細菌及び古細菌の適応的免疫反応に部分的に基づいている。ウイルス又はプラスミドが細菌に侵入すると、侵入物のDNAのセグメントが「免疫」応答によってCRISPR RNA(crRNA)に変換される。次いで、crRNAは、部分的な相補性の領域を通して、tracrRNAと呼ばれる別のタイプのRNAと会合して、Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼを「プロトスペーサー」と呼ばれる標的DNA中のcrRNAと相同な領域に誘導する。Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼは、DNAを切断して、crRNA転写物内に含まれる20ヌクレオチドの相補鎖配列によって特定された部位での二本鎖切断にて平滑末端を生じる。Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼには、一部の実施形態では、部位特異的DNA認識及び切断にあたってcrRNAとtracrRNAの両方が必要である。ここでは、このシステムを操作するが、ある特定の実施形態では、crRNA及びtracrRNAを1つの分子(「単一ガイドRNA」又は「sgRNA」)に組み合わせ、そして単一ガイドRNAのcrRNA等価部分を操作してCas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼを誘導し、その結果任意の所望の配列を標的化するように操作する(例えば、Jinekら(2012) Science 337:816~821頁;Jinekら(2013) eLife 2:e00471;Segal (2013) eLife 2:e00563を参照されたい)。したがって、CRISPR/Casシステムは、細胞のゲノム内の所望の標的にて二本鎖切断を創り出し、細胞の内因的メカニズムを利用して、相同組換え修復(HDR)又は非相同末端結合(NHEJ)によって誘導された切断を修復するように、操作することができる。一部の実施形態では、Casヌクレアーゼは、DNA切断活性を有する。Casヌクレアーゼは、一部の実施形態では、標的DNA配列中の或る位置で一方又は両方の鎖の切断を誘導する。例えば、一部の実施形態では、Casヌクレアーゼは、標的DNA配列の一本鎖を切断する1つ又は複数の不活性化触媒ドメインを有するニッカーゼである。Casヌクレアーゼの非限定的な例として、Casl、CaslB、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9 (Csnl及びCsxl2としても知られている)、CaslO、Cpfl、C2c3、C2c2及びC2clCsyl、Csy2、Csy3、Csel、Cse2、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Cpfl、Csbl、Csb2、Csb3、Csxl7、Csxl4、CsxlO、Csxl6、CsaX、Csx3、Csxl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4、それらの相同体、それらのバリアント、それらの突然変異体、並びにそれらの誘導体が挙げられる。Casヌクレアーゼに関しては主要な3つのタイプ(タイプI、タイプII、及びタイプIII)が存在し、5種のタイプI、3種のタイプII、及び2種のタイプIIIのタンパク質を含めて10種のサブタイプが存在する(例えば、Hochstrasser and Doudna、Trends Biochem Sci、2015:40(l):58~66頁を参照されたい)。タイプIIのCasヌクレアーゼには、それらに限定されないが、Casl、Cas2、Csn2、及びCas9が含まれる。これらのCasヌクレアーゼは当業者に知られている。例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)の野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、NBCI Ref. Seq. No. NP 269215に記載されており、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、NBCI Ref. Seq. No. WP_011681470に記載されている。Casヌクレアーゼ、例えば、Cas9ポリペプチドは、一部の実施形態では、様々な細菌種に由来する。「Cas9」とは、RNAガイド型二本鎖DNA結合ヌクレアーゼタンパク質又はニッカーゼタンパク質を指す。野生型Cas9ヌクレアーゼは、異なるDNA鎖を切断する2つの機能ドメイン、例えば、RuvC及びHNHを有する。Cas9は、両方の機能ドメインが活性である場合、ゲノムDNA(標的DNA)の二本鎖切断を誘導することができる。Cas9酵素は、一部の実施形態では、コリネバクター(Corynebacter)、サテレラ(Sutterella)、レジオネラ(Legionella)、トレポネーマ(Treponema)、フィリファクター(Filif actor)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、連鎖球菌(Streptococcus)、ラクトバチラス(Lactobacillus)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、バクテロイド(Bacteroides)、フラビイボラ(Flaviivola)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、スフェロケタ(Sphaerochaeta)、アゾスピリルム(Azospirillum)、グルコナセトバクター(Gluconacetobacter)、ナイセリア(Neisseria)、ロゼブリア(Roseburia)、パルビバクラム(Parvibaculum)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ニトラティフラクター(Nitratifractor)、及びカンピロバクター(Campylobacter)からなる群に属する細菌に由来するCas9タンパク質の1つ又は複数の触媒ドメインを含む。一部の実施形態では、Cas9は融合タンパク質であり、例えば、2つの触媒ドメインは、異なる細菌種に由来する。Cas9ヌクレアーゼの有用なバリアントは、RuvC-又はHNH-酵素又はニッカーゼ等の単一の不活性な触媒ドメインを含む。Cas9ニッカーゼは、1つの活性機能ドメインのみを有し、一部の実施形態では、標的DNAの1つの鎖のみを切断し、それにより、一本鎖切断又はニックを創り出す。一部の実施形態では、少なくともD10A突然変異を有する突然変異型Cas9ヌクレアーゼは、Cas9ニッカーゼである。他の実施形態では、少なくともH840A突然変異を有する突然変異型Cas9ヌクレアーゼは、Cas9ニッカーゼである。Cas9ニッカーゼに存在する突然変異の他の例には、限定されないが、N854A及びN863Aが含まれる。対向しているDNA鎖を標的化する少なくとも2つのDNA-標的化RNAを使用する場合、Cas9ニッカーゼを使用して二本鎖切断が導入される。ダブルニッキング(double-nicked)誘導性の二本鎖切断は、NHEJ又はHDRによって修復される。こういった遺伝子編集戦略はHDRに有利であり、オフターゲットDNA部位でのインデル突然変異の頻度を減少させる。Cas9ヌクレアーゼ又はニッカーゼは、一部の実施形態では、標的細胞又は標的生物体に対してコドン最適化されている。一部の実施形態では、Casヌクレアーゼは、RuvClドメイン及びHNHヌクレアーゼドメイン(D10A及びH840A)の2つのサイレンシング突然変異を含有するCas9ポリペプチドであり、これは、dCas9と呼ばれる。一実施形態では、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来のdCas9ポリペプチドは、位置D10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、A987、又はそれらの任意の組合せにて少なくとも1つの突然変異を含む。かかるdCas9ポリペプチド及びそれらのバリアントに関する説明については、例えば、国際特許出願公開第WO2013/176772号に提供されている。一部の実施形態でのdCas9酵素は、D10、E762、H983、又はD986にての突然変異、並びにH840又はN863にての突然変異を含有する。場合によっては、dCas9酵素はD10A又はDION突然変異を含有する。また、dCas9酵素は代替的に、突然変異H840A、H840Y、又はH840Nを含む。一部の実施形態では、本発明のdCas9酵素は、D10A及びH840A;D10A及びH840Y;D10A及びH840N;DION及びH840A;DION及びH840Y;又はDION及びH840Nの置換を含む。置換は、Cas9ポリペプチドを触媒的に不活性とし且つ標的DNAに結合することができるように、代替的に保存的置換又は非保存的置換である。ゲノム編集法では、一部の実施形態でのCasヌクレアーゼは、dCas9に連結されたIIS型制限酵素Foklの触媒ドメインを含むポリペプチド等のCas9融合タンパク質を含む。FokI-dCas9融合タンパク質(fCas9)は、2つのガイドRNAを使用して、標的DNAの一本鎖に結合し、その結果、二本鎖切断を生じることができる。
【0151】
送達
本発明の遺伝子送達ビヒクルは、患者に投与することができる。前記投与は、「in vivo」投与であっても、「ex vivo」投与であってもよい。当業者であれば、適切な投薬割合を決定することができるであろう。「投与される」という用語には、ウイルス技法又は非ウイルス技法による送達が含まれる。ウイルス送達メカニズムには、それらに限定されないが、上記の、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、及びバキュロウイルスベクター等が含まれる。非ウイルス送達システムには、電気穿孔、脂質媒介トランスフェクション、圧縮DNA媒介トランスフェクション;リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、カチオン性両面親媒性物質(CFA)及びそれらの組合せ、等のDNAトランスフェクションが含まれる。本発明によるベクターシステムでの1つ又は複数の治療用遺伝子の送達については、単独で、又は他の処置若しくは処置の成分と組合せで、使用することができる。
【0152】
本開示の組成物を送達するために、適切な任意の送達方法を使用することが企図される。HITIシステムの個々の成分(例えば、ヌクレアーゼ及び/又は外来性DNA配列)は、一部の実施形態では、同時に又は時間的に隔てられて送達される。遺伝子改変の方法の選択は、形質転換されている細胞のタイプ及び/又は形質転換が行われている状況(例えば、in vitro、ex vivo、又はin vivo)によって左右される。これらの方法に関する一般的な議論については、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons、1995年、に見られる。
【0153】
「細胞を接触させる」という用語は、本明細書が開示するすべての送達方法を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されている方法は、相補鎖核酸(例えば、gRNA)、部位特異的改変ポリヌクレオチド(例えば、Casタンパク質)、及び/又は外来性DNA配列をコードするヌクレオチド配列を含む1つ又は複数の核酸を、標的DNAに接触させる工程か、又はそれらを細胞(又は細胞の集団)に導入する工程を含む。相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸が、発現ベクターを含み、ここで、相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、組換え発現ベクターである。送達方法又は形質転換の非限定的な例として、例えば、ウイルス感染又はバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、原形質融合、リポフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介のトランスフェクション、DEAEデキストラン媒介のトランスフェクション、リポソーム媒介のトランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マクロインジェクション、及びナノ粒子媒介の核酸送達が挙げられる(例えば、Panyamら Adv Drug Deliv Rev.2012年9月13日.pii: 50169-409X(12)00283-9. doi: 10.1016/j .addr.2012.09.023を参照されたい)。一部の態様では、本発明は、本明細書に記載の1つ又は複数のベクター等の1つ又は複数のポリヌクレオチド、それらの1つ又は複数の転写物、及び/又はそれらから転写される1つ又は複数のタンパク質を宿主細胞に送達する工程を含む方法を提供する。一部の態様では、本開示は、かかる方法によって産生される細胞、及びこのような細胞を含むか又はこれから作出される生物体(例えば、動物、植物又は真菌)を更に提供する。一部の実施形態では、相補的鎖配列と組合せで、任意選択でこれと複合体化された、ヌクレアーゼタンパク質を細胞に送達する。従来のウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子移入法を、哺乳動物細胞又は標的組織に核酸を導入するのに使用することが企図される。このような方法は、HITIシステムの成分をコードする核酸を培養中の又は宿主生物体の細胞に投与するのに使用される。非ウイルスベクター送達システムには、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載のベクターの転写物)、ネイキッド核酸、及びリポソーム等の送達ビヒクルと複合体を形成した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達システムはDNAウイルス及びRNAウイルスを含むことができ、これらのウイルスは、細胞への送達後にエピソームゲノム又は組み込まれたゲノムのいずれかを有することができる。遺伝子治療手順のレビューについては、Anderson、Science 256:808~813頁(1992);Nabel & Feigner、TIBTECH 11:211~217頁(1993);Mitani & Caskey、TIBTECH 11:162~166頁(1993);Dillon. TIBTECH 11:167~175頁(1993);Miller、Nature 357:455~460頁(1992);Van Brunt、Biotechnology 6(10):1149~1154頁(1988);Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience 8:35~36頁(1995);Kremer & Perricaudet、British Medical Bulletin 51(l):31~44頁(1995);Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (編)(1995);及びYuら、Gene Therapy 1:13~26頁(1994)を参照されたい。核酸の非ウイルス送達の方法には、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、電気穿孔、バイオリスティック法、ウイロゾーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及びDNAの作用物質強化型取込みを挙げることができる。リポフェクションについては、例えば、各米国特許、第5,049,386号、第4,946,787号及び第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効果的な受容体認識リポフェクションに適切であるカチオン及び中性脂質には、Feigner、WO91/17424; WO91/16024のものが含まれる。送達は、細胞(例えば、in vitro又はex vivoの投与)又は標的組織(例えば、in vivoの投与に向けてのものとすることが企図される。免疫脂質複合体といった標的化されたリポソームを含めて、脂質:核酸の複合体の調製は良く知られている(例えば、Crystal、Science 270:404~410頁(1995);Blaeseら、Cancer Gene Ther. 2:291~297頁(1995): Behrら、Bioconjugate Chem. 5:382~389頁(1994);Remyら、Bioconjugate Chem. 5:647~654頁(1994);Gaoら、Gene Therapy 2:710~722頁(1995);Ahmadら、Cancer Res. 52:4817~4820頁(1992);各米国特許、第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、及び第4,946,787号を参照されたい)。RNAウイルスベースの又はDNAウイルスベースのシステムを使用して、体内の特定の細胞を標的化し、ウイルスペイロードを細胞の核に輸送する。ウイルスベクターを二者択一的に、直接投与するか(in vivo)又はそれらを使用してin vitroで細胞を処理し、改変された細胞を任意選択で投与する(ex vivo)。ウイルスベースのシステムには、それらに限定されないが、遺伝子移入のための、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び単純ヘルペスウイルスの各ベクターが含まれる。宿主ゲノムでの組み込みは、一部の実施形態では、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルスの各遺伝子移入法を用いて行われ、これにより、一部の実施形態では、挿入された導入遺伝子の長期発現がもたらされる。形質導入に関して高い効率が、様々な多くの細胞型及び標的組織において観察される。一部の実施形態では、アデノウイルスベースのシステムが使用される。アデノウイルスベースのシステムによって、一部の実施形態では、導入遺伝子の一過性の発現がもたらされる。アデノウイルスベースのベクターは、細胞での形質導入に関して高い効率が可能であり、一部の実施形態では、細胞分裂が不要である。アデノウイルスベースのベクターによれば、高力価及び高レベルの発現が可能である。一部の実施形態では、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターを使用して、例えば、核酸及びペプチドのin vitro産生において、並びにin vivo及びex vivo遺伝子治療手順の場合、標的核酸を細胞に形質導入する(例えば、Westら、Virology 160:38~47頁(1987);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin、Human Gene Therapy 5:793~801頁(1994);Muzyczka、J. Clin. Invest. 94:1351頁(1994)を参照されたい)。組換えAAVベクターの構築については、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 5:3251~3260頁(1985);Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 4:2072~2081頁(1984);Hermonat & Muzyczka、PNAS 81:6466~6470頁(1984);Samulskiら、J. Virol. 63:03822~3828頁(1989)を含めて、いくつかの刊行物に記載されている。パッケージング細胞を、一部の実施形態では、使用して、宿主細胞に感染することができるウイルス粒子を形成する。かかる細胞には、それらに限定されないが、293細胞(例えば、アデノウイルスパッケージング用)、及び.psi.2細胞又はPA317細胞(例えば、レトロウイルスパッケージング用)が含まれる。ウイルスベクターは、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージングする細胞株を産生することによって生成される。場合によっては、ベクターは、パッケージングと宿主へのその後の組み込みに必要な最小限のウイルス配列を含有する。場合によっては、ベクターは、発現されるポリヌクレオチド用の発現カセットによって置き換えられている他のウイルス配列を含有する。一部の実施形態では、欠損しているウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、一部の実施形態では、AAVベクターは、宿主ゲノムへのパッケージング及び組み込みに必要である、AAVゲノムからのITR配列を含む。ウイルスDNAは細胞株にパッケージされており、細胞株は、他のAAV遺伝子、つまりrep及びcapをコードするヘルパープラスミドを含有する一方で、ITR配列を欠いている。或いは、細胞株はヘルパーとしてのアデノウイルスに感染している。ヘルパーウイルスは、ヘルパープラスミドからのAAVベクターの複製とAAV遺伝子の発現を促進する。アデノウイルスによるコンタミネーションは、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性が高い、熱処理によって低減される。
【0154】
AAV血清型
現在までに、数十の様々なAAVバリアント(血清型)が特定及び分類されている(Srivastava A、Curr Opin Virol.2016年12月;21:75~80頁)。既知の血清型のすべてが多重の多様な組織タイプ由来の細胞に感染することができる。組織特異性はカプシドの血清型によって決定され、AAVベクターを偽型化して指向性の範囲を変化させることは、治療上でのその使用にとって重要となる可能性がある。偽型AAVベクターとは、第2のAAV血清型のカプシドに一方のAAV血清型のゲノムを含有するものである;例えば、AAV2/8ベクターはAAV8カプシドとAAV2ゲノムを含有する(Auricchioら(2001) Hum. Mol. Genet. 10(26):3075~81頁)。このようなベクターは、キメラベクターとしても知られている。
【0155】
血清型2
血清型2(AAV2)については、これまでに最も広範に調べられてきた。AAV2は、骨格筋、ニューロン、血管平滑筋細胞、及び肝細胞に向けた天然の指向性を提示する。AAV2については、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、aVβ5インテグリン、線維芽細胞成長因子受容体1(FGFR-1)の3種の細胞受容体が記載されている。第1の受容体は一次受容体として機能し、後2種の受容体は補助受容体活性を有し、受容体媒介エンドサイトシスによってAAVが細胞に侵入するのを可能にする。これらの研究結果については、Qju、Handaらが議論してきたところである。HSPGは一次受容体として機能するが、細胞外マトリックスにこれが多量に存在すると、AAV粒子を除去し、感染効率を損なう場合がある。
【0156】
その他の血清型
AAV2は様々なAAVベースの研究の中で最も一般的な血清型であるが、その他の血清型が遺伝子送達ベクターとしてより効果的な場合もあることが示されてきた。例を挙げると、AAV6は気道上皮細胞に感染する上ではるかに良好であるように見え、AAV7はマウス骨格筋細胞で形質導入率が極めて高いことを示し(AAV1及びAAV5と同様に)、AAV8は肝細胞及び光受容体に形質導入する上で卓越しており、AAV1及びAAV5は血管内皮細胞への遺伝子送達において極めて効率的であることが示された。脳では、ほとんどのAAV血清型がニューロン指向性を示すが、AAV5は星状細胞にも形質導入する。AAV1とAAV2のハイブリッドであるAAV6は、AAV2よりも低い免疫原性も示す。血清型は、それらが結合する受容体に対して異なることができる。例えば、AAV4及びAAV5の形質導入は、(これらの血清型のそれぞれについて異なる形態の)可溶性シアル酸によって阻害される場合もあり、AAV5は血小板由来増殖因子受容体を介して細胞に侵入することが示された。4つの変異を持つチロシン突然変異体やAAV 2/7m8等の新規AAVバリアントは、小動物モデルで硝子体から外側網膜に形質導入することが示された(Dalkara Dら、Sci Transl Med. 2013年6月12日;5(189):189ra76;Petrs-Silva Hら、Mol Ther. 2011年2月;19(2):293~301頁)。ShH10と命名された別のAAV突然変異体は、硝子体内投与後のグリア指向性が改善されたAAV6バリアントである(Klimczak RRら、PLoS One. 2009年10月14日;4(10):e7467)。網膜に対して特に有利な指向性を有する更なるAAV突然変異体は、AAV2(クワッドY-F)である(Hickey DGら、Gene Ther. 2017年12月;24(12):787~800頁)。本発明の意味の範囲内で、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9及びAAV10からなる群のうちの1つ又は複数から、好ましくはAAV2血清型又はAAV8血清型から選択される血清型のAAVのカプシドタンパク質を含む。
【0157】
宿主細胞と適合性のある適切な任意のベクターが、本発明の方法と共に使用されることが企図される。真核生物宿主細胞向けのベクターの非限定的な例には、pXTl、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40が含まれる。一部の実施形態では、相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、制御エレメント、例えば、プロモーター等の転写制御エレメントに作動可能に連結されている。転写制御エレメントは、一部の実施形態では、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、又は原核細胞(例えば、細菌又は古細菌細胞)のいずれかにおいて機能的である。一部の実施形態では、相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核細胞及び/又は真核細胞において相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする多重の制御エレメントに作動可能に連結されている。利用する宿主/ベクターシステムに応じて、構成的プロモーター及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含めて、いくつかの適切な転写制御エレメント及び翻訳制御エレメントのいずれも発現ベクターで使用することができる(例えば、U6プロモーター、HIプロモーター等;上記を参照されたい)(例えば、Bitterら(1987) Methods in Enzymology、153:516~544頁を参照されたい)。一部の実施形態では、相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチドは、RNAとして提供される。このような場合、相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチドをコードするRNAは、直接化学合成によって産生するか、又は相補鎖核酸をコードするDNAからin vitroで転写することもできる。相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチドをコードするRNAは、RNAポリメラーゼ酵素(例えば、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ等)を使用してin vitroで合成される。合成されると、RNAは標的DNAと直接接触するか、核酸を細胞に導入するのに適切な任意の技法(マイクロインジェクション、電気穿孔、トランスフェクション等)を使用して細胞に導入される。(DNA又はRNAとしていずれかで導入された)相補鎖核酸及び/又は(DNA又はRNAとして導入された)部位特異的改変ポリペプチド及び/又は外来性DNA配列をコードするヌクレオチドが、適切なトランスフェクション技法を使用して細胞に供給される;例えば、Angel and Yanik (2010) PLoS ONE 5(7): el 1756、並びに、市販の、Qiagen社製TransMessenger(登録商標)試薬、Stemgent社製Stemfect(商標)RNAトランスフェクションキット、及びMinis BioLLC社製TransIT(登録商標)-mRNAトランスフェクションキットを参照されたい。相補鎖核酸及び/又は部位特異的改変ポリペプチド及び/又はキメラ部位特異的改変ポリペプチド及び/又は外来性DNA配列をコードする核酸は、DNAベクター上に供給することができる。核酸を標的細胞に移入するのに有用な多くのベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ミニサークル、ファージ、ウイルス等が利用可能である。一部の実施形態での核酸を含むベクターは、例えば、プラスミド、ミニサークルDNA、サイトメガロウイルス、アデノウイルス等のウイルスとしてエピソーム的に維持されるか、又はそれらは、相同組換え又はランダムな組み込み、例えば、MMLV、HIV-1及びALV等のレトロウイルス由来のベクターを通して、標的細胞ゲノムに組み込まれる。
【0158】
ゲノムDNAに変更を加える方法
本明細書で提供されるのは、分裂することがない非分裂細胞又は最終分化細胞におけるゲノムDNAを含めて、ゲノムDNA等の核酸に変更を加える相同性非依存性標的化組み込み(HITI)方法及び組成物である。本明細書の方法は、少なくとも一部の実施形態では、相同性非依存性であり、非相同末端結合を使用して、非分裂細胞や最終分化細胞等の細胞のゲノムDNA等の標的DNAに外来性DNAを挿入する。一部の実施形態では、本明細書の方法は、非分裂細胞のゲノムに外来性DNA配列を組み込む方法であって、非分裂細胞を、外来性DNA配列と標的化配列を含む標的化構築物、標的化配列と相同である相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む組成物と接触させる工程を含み、ここで、外来性DNA配列は、ゲノムと比較して少なくとも1個のヌクレオチドの違いを含み、標的化配列はヌクレアーゼにより認識される、方法を含む。本明細書に開示されているHITI方法の一部の実施形態では、外来性DNA配列は、標的細胞又は宿主細胞のゲノムに挿入される所望の配列を含有するDNAの断片である。外来性DNA配列の少なくとも一部は、標的細胞又は宿主細胞のゲノムの一部と相同な配列を有し、外来性DNA配列の少なくとも一部は、標的細胞又は宿主細胞のゲノムの一部と相同ではない配列を有する。例えば、一部の実施形態では、外来性DNA配列は、その中に突然変異を伴う宿主細胞ゲノムDNA配列の一部を含むことができる。したがって、外来性DNA配列が宿主細胞又は標的細胞のゲノムに組み込まれると、外来性DNA配列に見られる突然変異が宿主細胞又は標的細胞のゲノムへと保有される。本明細書に開示されているHITI方法の一部の実施形態では、外来性DNA配列は、少なくとも1つの標的化配列が隣接している。一部の実施形態では、外来性DNA配列は、2つの標的化配列が隣接している。標的化配列は、少なくとも1つのヌクレアーゼによって認識される特定のDNA配列を含む。一部の実施形態では、標的化配列は、標的化配列と相同な配列を有する相補鎖オリゴヌクレオチドの存在下でヌクレアーゼによって認識される。一部の実施形態では、本明細書に開示されているHITI方法において、標的化配列は、ヌクレアーゼによって認識され、切断されるヌクレオチド配列を含む。標的化配列を認識するヌクレアーゼが当業者によって知られており、これには、それらに限定されないが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の反復(CRISPR)ヌクレアーゼが含まれる。ZFNは、一部の実施形態では、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン及びDNA切断ドメインを含み、一緒に融合して、配列特異的ヌクレアーゼを創り出す。TALENは、一部の実施形態では、TALエフェクターDNA結合ドメイン及びDNA切断ドメインを含み、一緒に融合して、配列特異的ヌクレアーゼを創り出す。CRISPRヌクレアーゼは、一部の実施形態では、クラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の反復と相同なDNA配列を認識する天然に存在するヌクレアーゼであり、原核生物のDNAに通常見いだされる。CRISPRヌクレアーゼには、それらに限定されないが、Cas9 Cpfl、C2c3、C2c2、及びC2clが含まれる。好都合なことに、本発明のCas9は、以下のもののようなオフターゲット活性が低下しているバリアントである、
SpCas9 D10A(Ran, F.A.ら、Genome engineering using the CRISPR-Cas9 system. Nat Protoc、2013. 8(11):2281~2308頁)(RuvCドメイン切断活性の不活性化を伴う)、
SpCas9 N863A(Ran, F.A.ら、Genome engineering using the CRISPR-Cas9 system. Nat Protoc、2013. 8(11):2281~2308頁)(HNHドメイン切断活性の不活性化を伴う)、
SpCas9-HF1(Kleinstiver, B.P.ら、High-fidelity CRISPR-Cas9 nucleases with no detectable genome-wide off-target effects. Nature、2016. 529(7587):490~5頁)(タンパク質工学によるCas9結合エネルギーの低減)、
eSpCas9(Slaymaker, I.M.ら、Rationally engineered Cas9 nucleases with improved specificity. Science、2016. 351(6268):84~8頁)(Cas9の正電荷の低減)、
EvoCas9(Casini, A.ら、A highly specific SpCas9 variant is identified by in vivo screening in yeast. Nat Biotechnol、2018. 36(3):265~271頁)(REC3ドメインの突然変異誘発)、
KamiCas9(Merienne, N.ら、The Self-Inactivating KamiCas9 System for the Editing of CNS Disease Genes. Cell Rep、2017. 20(12):2980~2991頁)(発現後のCas9のノックアウト)。
【0159】
本明細書に開示されているHITI方法は、一部の実施形態では、宿主ゲノム又は標的ゲノムに突然変異を導入すること、更には宿主ゲノム又は標的ゲノムにおける突然変異を修復することができる。突然変異配列又は野生型配列は、本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、宿主ゲノム又は標的ゲノムに挿入される外来性DNA配列に見いだされる。突然変異は当業者に知られており、これには、単一の塩基対変化又は点突然変異、挿入、及び欠失が含まれる。一部の実施形態では、単一の塩基対変化によって、野生型配列とは、転写されたmRNAにおいて、異なるアミノ酸をコードするコドンを創り出すミスセンス突然変異がもたらされる。一部の実施形態では、単一の塩基対変化によって、転写されたmRNAにおいて終止コドンをコードするナンセンス突然変異がもたらされる。一部の実施形態では、転写されたRNAの終止コドンによって、mRNAから翻訳されたタンパク質の早期のトランケーションがもたらされる。一部の実施形態では、単一の塩基対変化によって、宿主ゲノム又は標的ゲノムから転写されたmRNAにてコードされるアミノ酸のなんらの変化ももたらさないサイレント突然変異がもたらされる。一部の実施形態では、サイレント突然変異はイントロン中にある。一部の実施形態では、サイレント突然変異はエクソン中にあり、野生型配列と同じアミノ酸をコードするコドンを創り出す。一部の実施形態では、サイレント突然変異は、プロモーター、エンハンサー、5'UTR、3'UTR、又は宿主ゲノム又は標的ゲノムの他の非コード領域の中にある。一部の実施形態では、サイレント突然変異によって、mRNA転写物の異常なスプライシングがもたらされる。一部の実施形態では、サイレント突然変異によって、RNAスプライスドナー部位又はスプライスアクセプター部位が破壊される。一部の実施形態では、サイレント突然変異によって異常なRNAエクスポートがもたらされる。一部の実施形態では、サイレント突然変異によって、mRNAの翻訳の異常又は減少がもたらされる。一部の実施形態では、サイレント突然変異によって、RNAの転写の異常又は低減がもたらされる。一部の実施形態では、突然変異は、宿主ゲノム又は標的ゲノムへの挿入を含む。一部の実施形態では、挿入は、1から4,700までの塩基対の範囲の、例えば、1~10、5~20、15~30、20~50、40~80、50~100、100~1000、500~2000、1000~4,700塩基対の範囲の、特定数のヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、本発明の方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムから少なくとも1つの遺伝子又はそれの断片を排除することを含む。一部の実施形態では、方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムに、外来性遺伝子(本明細書では、外来性DNA配列又は目的の遺伝子としても定義される)又はそれの断片を導入することを含む。一部の実施形態では、方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムにおける突然変異遺伝子又はそれの断片を、野生型遺伝子又はそれらの断片に置き換えることを含む。一部の実施形態では、宿主遺伝子はサイレンシングされ、野生型遺伝子又はそのコード配列によって置き換えられる。一部の実施形態では、方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムの少なくとも1個のヌクレオチドを変化させ、その結果、遺伝子の発現が増加する。一部の実施形態では、方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムの少なくとも1個のヌクレオチドを変化させ、その結果、遺伝子の発現が低下する。一部の実施形態では、方法は、外来性プロモーターを宿主ゲノム又は標的ゲノムに導入し、その結果、遺伝子の発現が変化する。一部の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。本明細書に開示されているHITI方法は、非分裂細胞においてゲノムDNAに変更を加える能力を向上する。非分裂細胞には、それらに限定されないが、以下が含まれる:ニューロン、オリゴデンドロサイト、ミクログリア及び上衣細胞を含めて中枢神経系の細胞;感覚変換器細胞;自律神経細胞;感覚器官と末梢ニューロンの支持細胞;光受容体、杆体及び錐体を含めて網膜の細胞;壁細胞、糸球体有足細胞、近位尿細管刷子縁細胞、ヘンレ係蹄の薄いセグメント細胞のループ、遠位尿細管細胞、集合管細胞を含めて腎臓の細胞;リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、血小板を含めて造血系の細胞;肝細胞、星細胞、クッパー細胞及び肝臓内皮細胞を含めて肝臓の細胞;アルファ、ベータ、デルタ、ガンマ及びイプシロンの各細胞を含めて膵臓の内分泌細胞;繊毛細胞、基底細胞、杯細胞及び肺胞細胞を含めて気道上皮の細胞、卵原細胞/卵母細胞、精子細胞、精母細胞、精原細胞及び精子を含めて生殖細胞;骨細胞、破骨細胞及び骨芽細胞を含めて骨の細胞;心筋細胞及び心臓ペースメーカー細胞を含めて心臓の細胞;甲状腺の濾胞上皮細胞;漿液細胞、粘液細胞及び味蕾を含めて上部消化管の細胞;壁細胞、主細胞、腸内分泌細胞を含めて胃の細胞;内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、骨髄細胞、内耳細胞、真皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞。一部の実施形態では、本明細書に開示されているHITI方法は、分裂細胞においてゲノムDNAに変更を加える方法を提供し、ここで、方法は、当技術分野で開示されている以前の方法よりも高い効率を有する。分裂細胞には、それらに限定されないが、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、筋サテライト細胞、上皮細胞、膠細胞、及び星状細胞が含まれる。一部の実施形態では、標的化構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び/又は本明細書に記載のHITI法向けのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、ウイルスによって標的細胞又は宿主細胞に導入される。ウイルスは、一部の実施形態では、標的細胞に感染し、標的化構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを発現し、これにより、標的化構築物の外来性DNAを宿主ゲノムに組み込むことが可能になる。一部の実施形態では、ウイルスは、センダイウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、バキュロウイルス、アデノウイルス、又はアデノ随伴ウイルスを含む。一部の実施形態では、ウイルスは偽型ウイルスである。一部の実施形態では、本明細書に記載の、標的化構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び/又はHITI法向けのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルス遺伝子送達法によって標的細胞又は宿主細胞に導入される。非ウイルス遺伝子送達法は、一部の実施形態では、遺伝物質(DNA、RNA及びタンパク質を含めて)を標的細胞に送達し、標的化構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを発現し、これにより、標的化構築物の外来性DNAを宿主ゲノムに組み込むことが可能になる。一部の実施形態では、非ウイルス法は、DNA、mRNA又はタンパク質用のトランスフェクション試薬(ナノ粒子を含めて)、又は電気穿孔を含む。
【0160】
疾患を処置する方法
遺伝的疾患等の疾患を処置するための方法及び組成物も本明細書で提供される。遺伝的疾患は、遺伝性DNAにおける突然変異によって引き起こされるものである。一部の実施形態では、遺伝的疾患は、ゲノムDNAの突然変異によって引き起こされる。遺伝的突然変異は当業者に知られており、これには、単一塩基対の変化又は点突然変異、挿入、及び欠失が含まれる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、それを必要とする対象において遺伝的疾患を処置する方法を含み、ここで、遺伝的疾患は、野生型遺伝子と比較して少なくとも1個の変更されたヌクレオチドを有する突然変異遺伝子に起因するものであり、ここで、方法は、対象の少なくとも1つの細胞を、野生型遺伝子と相同なDNA配列及び標的化配列を含む標的化構築物、標的化配列と相同な相補鎖オリゴヌクレオチド、並びにヌクレアーゼを含む組成物と接触させる工程を含み、ここで、標的化配列はヌクレアーゼによって認識され、その結果、突然変異遺伝子又はその断片が野生型遺伝子又はその断片に置き換えられる。本明細書に開示されている方法によって処置される遺伝的疾患には、それらに限定されないが、ムコ多糖症(MPSI、MPSII、MPSIIIA、MPSIIIB、MPSIIIC、MPSIVA、MPSIVB、MPS VII)、スフィンゴ脂質症(ファブリー病、ゴーシェ病、ニーマンピック病、GM1ガングリオシド蓄積症)、リポフスチン沈着症(バッテン病他)及びムコ脂質症を含むリソソーム蓄積症;糖尿病、アデニロコハク酸欠乏症、血友病A及びB、ALAデヒドラターゼ欠損症、副腎白質ジストロフィー、常染色体優性のような、肝臓が治療用タンパク質の産生及び分泌のための工場として使用することができる他の疾患が挙げられる。本発明で処置することができる網膜疾患は、例えば、網膜色素変性症(RHO、AIPL1、IMPDH1、RDS、PDE6B又は他の遺伝子の突然変異による)、錐体杆体ジストロフィー(CRX)、シュタルガルト病(ELOVL4)、フォンヒッペルリンダウ及び網膜芽細胞腫である。
【0161】
本明細書に開示されている遺伝的疾患を処置する方法は、突然変異遺伝子のDNA配列に対応する野生型DNA配列の少なくとも一部を含む外来性DNA配列を用い、その結果、本発明の方法では、突然変異DNA配列を野生型DNA配列に置き換える。
【0162】
本明細書で使用される用語「a」、「an」又は「the」は、1つの構成要素を有する態様だけでなく、複数の構成要素を有する態様をも含む。例を挙げると、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指定していない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「細胞(a cell)」への言及は、複数のかかる細胞を含み、「薬剤(the agent)」への言及は、当業者であれば知られている1種又は複数の薬剤への言及を含む、等々である。「ゲノム編集」という用語は、1つ又は複数のヌクレアーゼ及び/又はニッカーゼを使用して、DNAを挿入する、置き換える、又は標的DNAから、例えば細胞のゲノムから除去する、あるタイプの遺伝子工学を指す。ヌクレアーゼは、ゲノムの所望の位置にて特定の二本鎖切断(DSB)を創り出し、細胞の内因的メカニズムを利用して、非相同末端結合(NHEJ)によって誘導切断を修復する。ニッカ―ゼは、ゲノムの所望の位置にて特定の一本鎖切断(DSB)を創り出す。非限定的な一例では、2つのニッカーゼを使用して、標的DNAの対向している鎖上に2つの一本鎖切断を創り出し、これによって、平滑末端又は付着末端を生じることができる。適切な任意のヌクレアーゼを細胞に導入して、標的DNA配列のゲノム編集を誘導することができるが、このヌクレアーゼには、それらに限定されないが、CRISPR関連タンパク質(Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、他のエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼ、それらのバリアント、それらの断片、及びそれらの組合せがある。「非相同末端結合」又は「NHEJ」という用語は、相同の鋳型を必要とすることなく切断末端を直接ライゲートさせる、二本鎖DNA切断を修復する経路を指す。「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド」及び「核酸分子」という用語は、同義的に使用することができ、したがって、一本鎖、二本鎖又は多重鎖のいずれかの形態にある、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)及びそれらのポリマーを指す。上記用語には、それらに限定されないが、一本鎖、二本鎖若しくは多重鎖のDNA又はRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、或いはプリン塩基及び/若しくはピリミジン塩基、又は他の天然の、化学的に改変された、生化学的に改変された、非天然の、合成された又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。上記用語にはまた、メチル化による及び/又はキャッピングによる等の改変物、並びに未改変形態のポリヌクレオチドも含まれる。より具体的には、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」という用語には、以下が含まれる:ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)、プリン塩基又はピリミジン塩基のN-又はC-グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、及び非ヌクレオチド骨格を含有する他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸(PNA))やポリモルホリノ(Anti-Virals, Inc.社製、Corvallis、Oreg.、Neugeneとして市販されている)ポリマー、及び他の合成配列特異的核酸ポリマー、ただし、当該ポリマーは、DNA及びRNAに見られるような、塩基対合及び塩基積重ねを可能にする構成で核酸塩基を含有することを条件とする。一部の実施形態では、核酸は、DNA、RNA、及びそれらのアナログの混合物を含むことができる。特に限定されない限り、当該用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知のアナログを含有する核酸を包含する。別記されない限り、特定の核酸配列は、その保存的に改変されたバリアント(例えば縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、一塩基多型(SNP)、及び相補的配列並びに明確に示された配列も暗に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ又は複数の選択された(又はすべての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって、行うことができる。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によってコードされるmRNAと同義的に使用される。「遺伝子」又は「ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列」という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意味する。DNAセグメントは、遺伝子産物の転写/翻訳及び転写/翻訳の調節に関与するコーディング領域に先立つ領域と後続する領域(リーダーとトレイラー)、並びに個々のコーディングセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含むことができる。「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では同義的に使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。当該用語は、1個又は複数のアミノ酸残基が対応する天然型アミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーに、並びに天然型アミノ酸ポリマー及び非天然型アミノ酸ポリマーに、適用される。本明細書で使用される場合、当該用語は、全長タンパク質を含めて、任意の長さのアミノ酸の鎖を包含し、ここで、アミノ酸残基が共有結合のペプチド結合によって連結されている。「組換え発現ベクター」とは、宿主細胞において特定のポリヌクレオチド配列の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを有する、組換え的又は合成的に生成された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスゲノム、又は核酸断片の一部とすることができる。通常、発現ベクターは、転写されるポリヌクレオチドを含み、プロモーターに作動可能に連結されている。これに関連して「作動可能に連結されている」とは、ポリヌクレオチドコード配列及びプロモーター等の2つ以上の遺伝子エレメントが、コード配列のプロモーター誘導性転写等の、エレメントの適切な生物学的機能を可能とする相対的な位置で配置されていることを意味する。「プロモーター」という用語は本明細書では、核酸の転写を誘導する核酸制御配列のアレイを指すために使用される。本明細書で使用される場合、プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合での、TATAエレメント等の、転写の開始部位の近傍に必要な核酸配列を含む。プロモーターはまた任意選択で、転写の開始部位から数千塩基対も位置することができる遠位エンハンサー又はリプレッサーエレメントを含む。発現ベクター中に存在してもよいその他のエレメントとしては、転写を促進するもの(例えば、エンハンサー)、及び転写を終結させるもの(例えば、ターミネーター)、並びに発現ベクターから産生される組換えタンパク質にある特定の結合親和性又は抗原性を付与するものが挙げられる。「一塩基多型」又は「SNP」という用語は、対立遺伝子内を含めて、ポリヌクレオチドについての単一ヌクレオチドの変更を指す。これには、一ヌクレオチドの別のヌクレオチドへの置換、並びに単一のヌクレオチドの欠失又は挿入が含まれ得る。最も一般的には、SNPは二対立遺伝子マーカーであるが、三対立及び四対立遺伝子マーカーが存在する場合もある。非限定的な例として、SNP A\Cを含む核酸分子は、多型位置にC又はAを含むことができる。「対象」、「患者」及び「個体」」という用語は、同義的に本明細書で使用して、ヒト又は動物を含む。例えば、動物対象は、哺乳動物、霊長類(例えばサル)、家畜動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、又はヤギ)、愛玩動物(例えばイヌ、ネコ)、実験室用試験動物(例えばマウス、ラット、モルモット、トリ)、獣医学的に重要な動物、又は経済的に重要な動物とすることができる。本明細書で使用される場合、「投与する」という用語には、対象への、経口投与、局所的接触、坐薬としての、静脈内、腹腔内、筋肉内、損傷内、クモ膜下腔内、鼻腔内としての各投与、又は皮下投与が含まれる。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、口腔、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、又は経皮)を含めて、任意の経路によるものである。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、及び頭蓋内が含まれる。他の送達様式には、それらに限定されないが、リポソーム製剤、静脈注入、経皮パッチ等の使用が含まれる。「処置する」という用語は、それらに限定されないが、治療効果及び/又は予防効果といった有益な又は所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療上の効果とは、処置下にある1つ又は複数の疾患、状態、又は症状における任意の治療上重要な改善又はそれらに及ぼす任意の治療上重要な影響を意味する。予防的効果の場合、疾患、状態又は症状がまだ発現していないとしても、特定の疾患、状態又は症状が進行するリスクのある対象に、又は疾患の1つ又は複数の生理学的症状が報告されている対象に、本発明の組成物を投与することができる。「有効量」又は「十分な量」という用語は、有益な又は所望の結果を達成するのに十分な薬剤(例えば、DNAヌクレアーゼ等)の量を指す。治療有効量とは、処置される対象と疾患の状態、対象の体重と年齢、疾患状態の重度、投与方法等のうちの1つ又は複数に応じて異なることができるが、これらは当業者であれば容易に決定することができる。特定の量とは、選択される個々の薬剤、標的細胞の種類、対象の標的細胞の位置、続いて行われる投薬レジメン、他の化合物と組合せで投与されるか否か、投与のタイミング、及びそれが運ばれる物理的送達システムのうちの1つ又は複数に応じて異なってもよい。
【0163】
「薬学的に許容される担体」という用語は、細胞、生物体、又は対象への薬剤(例えば、DNAヌクレアーゼ等)の投与を助ける物質を指す。「薬学的に許容される担体」とは、組成物又は製剤に含めることができ、且つ患者に対して重大で有害な毒性効果をまったく引き起こさない担体又は賦形剤を指す。薬学的に許容される担体の非限定的な例には、水、NaCl、通常の食塩溶液、乳酸リンゲル液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、香味料、及び着色料等が含まれる。当業者であれば、その他の医薬担体が本発明において有用であることを認識するであろう。参照数値に関する「約」という用語は、その値から10%プラス又はマイナスした値の範囲を含むことができる。例えば、「約10」という量は、9、10、及び11の参照数を含めて、9から11までの量を含む。参照数値に関する「約」という用語はまた、その値から10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%プラス又はマイナスした値の範囲も含むことができる。
【0164】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語はまた、より長い又はより短いポリヌクレオチド/タンパク質、及び/又は例えば、本明細書に開示されている配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の同一性のパーセンテージ、より好ましくは少なくとも99%の同一性のパーセンテージを有することを指す。本発明では、「少なくとも70%の同一性」とは、同一性が、参照される配列と少なくとも70%、又は75%、又は80%、又は85%又は90%又は95%又は100%の配列同一性とすることができることを意味する。このことは、同一性に関して言及された%すべてにあてはまる。好ましくは、同一性の%は、参照される配列の全長に関するものである。本発明の誘導体はまた、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの「機能的突然変異体」を含み、これらは、それらの配列中の1個又は複数のアミノ酸又はヌクレオチドを突然変異させることによって生成することができ、且つそれらの活性を維持するポリペプチド又はポリヌクレオチドである。本発明では、「機能的」とは、例えば「それらの活性を維持している」ものとする。また、これらのバリアントポリヌクレオチドが、本明細書に具体的に例示のポリヌクレオチドと同じ重要な機能活性を実質的に保持する限り、(例えば、それらが、例示のポリヌクレオチドによってコードされるのと同じアミノ酸配列又は同じ機能的活性を有するタンパク質をコードする限り)、ポリヌクレオチドの配列内のヌクレオチドの置換、付加、又は欠失を別にすれば、本明細書に例示のポリヌクレオチドの同じヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、本発明の範囲内である。したがって、本明細書に開示されているポリヌクレオチドは、具体的に例示した配列の、上記のような、突然変異体、誘導体、バリアント、及び断片を含むと理解されたい。本発明はまた、標準的ストリンジェント条件及び標準方法(Maniatis, T.ら、1982年)のもとでの当配列とのハイブリダイゼーションを可能にするように本発明のポリヌクレオチド配列と十分に相同である配列を有するそういったポリヌクレオチド分子も企図する。
【0165】
内部リボソーム侵入部位(Internal Ribosome Entry Site)(IRES)
内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントとは、キャップ非依存性メカニズムを使用して翻訳の内部開始を促進するシス作用性RNA領域である。IRESエレメントの平均サイズは500bpである。好都合には、活性を維持する小人工IRESエレメントが報告されている。例を挙げると、[38]に2つの50nt長のIRESエレメントが記載されている:
AggTggTAgCCgCAAACATAgTTCAATACAAACTTgCTgTCTCggCgg(配列番号23)
及び
TgACAAACTgTACATgCCgTTAACTgTAATTTTgCgTgATTTTTTTgTAg(配列番号24)
【0166】
コザックコンセンサス配列
コザック配列とは、ほとんどのRNA転写物の翻訳開始部位として機能するモチーフであり、同様にリボソームによって翻訳開始部位として認識され、ここからタンパク質がそのmRNA分子によってコードされている。in vivoでは、この部位は異なるmRNAで正確に一致しないことが多く、所定のmRNAから合成されるタンパク質の量はコザック配列の強さに左右される。この配列の一部のヌクレオチドは他のヌクレオチドよりも重要である:AUGは、タンパク質のN末端にあるメチオニンアミノ酸をコードする実際上の開始コドンであるので、最も重要である。(まれに、GUGが、開始コドンとして使用されるが、これは、mRNAに結合する開始複合体のmet-tRNAであるので、メチオニンはなおも第1のアミノ酸である。)「AUG」のAヌクレオチドは番号1と呼ばれる。「強力な」コンセンサスの場合、番号1のヌクレオチドを基準にして、位置+4にあるヌクレオチド(すなわち、コンセンサスの中にあるG)及び位置-3にあるヌクレオチド(すなわち、コンセンサスの中にあるA又はGのいずれか)は両方ともコンセンサスと一致する必要がある(番号0の位置はない)。「十分な」コンセンサスはこれらの部位のうちの1つだけを有し、「弱い」コンセンサスはどちらもない。-1及び-2にあるccは保存されていないが、全体の強さに寄与している。
【0167】
2A自己切断ペプチド
2Aペプチドとは、細胞内の組換えタンパク質の切断を誘導することができる18~22個のaa長のペプチドである。2Aペプチドは、ウイルスのゲノムの2A領域に由来する。
【0168】
2Aペプチドファミリーの4つのメンバーは、ライフサイエンス研究においては高頻度で使用される。それらは、P2A、E2A、F2A、及びT2Aである。F2Aは口蹄疫ウイルス18に由来する;E2Aは馬の鼻炎Aウイルスに由来する;P2Aはブタテッショウウイルス-1 2Aに由来する;T2Aはトーシー・アシグナ(thosea asigna)ウイルス2に由来する。
【0169】
【0170】
ストップコドン:
終止コドンは、タンパク質合成の停止であるとシグナルを送る、メッセンジャーRNA(mRNA)分子内のトリヌクレオチド配列である。遺伝コードには、TAG、TAA、TGAの3つの終止コドンが存在する。本発明の意味の範囲内では、3つの考えられるフレームにストップコドンを挿入するために、2つの終止コドン、例を挙げると、TAATAAATAATAAATAATAA(配列番号1)又は並べ替え又はそれらの組合せを各フレームに挿入する。
【実施例0171】
材料及び方法
プラスミド構築物:
AAVベクタープラスミドの生成
AAV血清型2のITRを含有するpAAV2.1[36]プラスミドに由来するAAVベクター産生に使用されるプラスミド。具体的には、以前の公開にあたって本発明者らのグループが生成したpAAV2.1プラスミドを使用した。
【0172】
コザック又はIRES[38]の各配列、並びにPCRプライマーのオーバーハングとして5'及び3'のgRNA標的部位を添加して、本発明者らのグループによる以前の公開[37]において生成したプラスミドから、ディスコソマレッド蛍光タンパク質(DsRed)CDS(675bp)及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(bGHpA)のPCR増幅によってkozak-DsRed及びIRES-DsRedのドナーDNAベクターを生成した。PCR断片をPCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen社、Carlsbad、California、米国)にサブクローニングした後、AflII制限部位を使用してInfusion(Takara社、Kusatsu、日本)によりpAAV2.1プラスミドにクローニングした。
【0173】
mRho-gRNA、pRHO-gRNA、mAlb-gRNA(Table 2(表25)を参照されたい)を、Benchling gRNA設計手段(www.benchling.com)を使用して設計し、各遺伝子の第1のエクソンを標的化するオンターゲットスコア及びオフターゲットスコアがより高い予測スコアであるgRNAを選択した。次いで、gRNAをFwd及びRevのオリゴヌクレオチドとして生成し(Table 3)、Zhangの研究室が記載のように、アニールし、PX458(pCbh-SpCas9-2A-GFP)にクローニングした[35]。gRNA発現カセット(上記のスクランブルgRNAを含めて)をPCR増幅し、PCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen社、Carlsbad、California、米国)でサブクローニングした後、NheI制限部位を使用してIn-Fusionクローニング(Takara社、Kusatsu、日本)によりpAAV2.1プラスミドにクローニングした。
【0174】
【0175】
pAAV2.1-IRBP-SpCas9-spAプラスミドを、HindIII制限部位及びAgeI制限部位と従来のライゲーションを使用して、光受容体間レチノール結合タンパク質(IRBP)プロモーターを市販のpAAV-pMecp2-SpCas9-spA(Addgene PX551[39])にクローニングすることによって生成した。pAAV2.1-IRBP-VQRCas9HF1-SpAプラスミドは、同様のライゲーション戦略に従って、Daniela Benati and Clarissa Patrizi (University of Modena and Regio Emilia)が生成したものであった。
【0176】
pAAV2.1-HLP-SpCas9-spAプラスミドを、AflII制限部位及びAgeI制限部位とIn-Fusionクローニング(Takara社、Kusatsu、日本)を使用して、以前のプライマーのIRBPプロモーターをハイブリッド肝臓プロモーターHLPに置換することにより、AuricchioグループのHristiana Lyubenovaと共同して生成した。
【0177】
Cas9鋳型として使用したプラスミド
AAVベクターの産生及び特徴付け
AAVベクターを、HEK293細胞の三重トランスフェクションによるTIGEM AAVベクターコアによって産生し、これに続いて、CsCl2精製2ラウンドを行った[40]。各ウイルス調製物について、物理的力価(GC/mL)を、ドットブロット解析[41]によって及びTaqMan(Applied Biosystems社、Carlsbad、CA、米国)を使用したPCR定量化[40]によって行った力価を平均することによって決定した。ドットブロット及びPCR分析に使用するプローブを、pAAV2.1-IRBP-SpCas9-spAベクターについてはIRBPプロモーター、pAAV2.1-HLP-SpCas9-spAベクターについてはHLPプロモーター、及びドナーDNAベクターについてはbGHpA領域、とアニールするように設計した。プローブの長さは200から700bpの間で異なった。
【0178】
HEK293細胞の培養及びトランスフェクション
HEK293細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)と2mM L-グルタミン(Gibco社、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、米国)を含有するDMEMで維持した。細胞を6ウェルプレート(1×106細胞/ウェル)にプレーティングし、リン酸カルシウム法(1~2mg/l×106細胞)を使用して、16時間後にCas9をコードするプラスミド及び異なるgRNA及びドナーDNAでトランスフェクトした;培地を4時間後に交換した。トランスフェクトした最大材料は3ugであった。すべての場合において、必要な場合には空ベクターを使用して、プラスミドDNAの量をウェル間で平衡化した。
【0179】
細胞蛍光分析
6ウェルプレートにプレーティングした、HEK293細胞をPBSで1回洗浄し、トリプシン0.05%EDTA(Thermo Fisher Scientific社、Waltham, MA、米国)で剥離し、PBSで2回洗浄し、PBS、5%FBS及び2.5mM EDTAを含有するソーティング溶液に再懸濁した。細胞を、EGFP及びDsRedの適切な励起及び検出設定を使用して、BD FACSDivaソフトウェア(BD Biosciences社)を備えたBD FACS ARIA III(BD Biosciences社、San Jose、CA、米国)で分析した。蛍光検出のしきい値を、非トランスフェクト細胞に設定し、最低でも10,000細胞/試料を分析した。最低でも50,000個のGFP+又はGFP+/DsRed+細胞/試料をソートし、DNA抽出に使用した。
【0180】
動物モデル
マウスをTIGEMアニマルハウス(Pozzuoli、イタリア)に収容し、12時間の明/暗サイクル下で維持した。C57BL/6Jマウスを、Envigo Italy SRL社(Udine、イタリア)から購入した。P347SマウスはEnrico Suraceから好意で提供されたものである。P347Sトランスジェニックマウスを、それらをそれら自身と交配することによってF0として維持し、そしてC57BL/6マウスと交配して実験マウスを作出した。
【0181】
Rho-P23Hノックイン[15](P23Hと呼ばれる)マウスを、Jackson Laboratoryから輸入した。マウスを、ホモ接合の雌と雄を交配することによって維持した。P23Hマウスは、マウスRho遺伝子の第1のエクソンにおいてP23H突然変異についてノックインであり、ネオマイシンカセットと一緒に挿入した。実験ヘテロ接合動物を、ホモ接合P23HマウスをC57BL/6マウスと交配することによって作出した。マウスの遺伝子型を、ゲノムDNA(マウス指節先端から抽出)のPCR分析によって確認した。ホモ接合型マウスは、530bpのPCR産物を示し、一方、ヘテロ接合型マウスは530bpと399bpの産物を示した。野生型マウスは399bpPCR産物のみを示した。
PCR増幅に使用したプライマーは以下の通りである:
Fwd:5'-TGGAAGGTCAATGAGGCTCT-3'(配列番号34)
Rev:5'-GACCCCACAGAGACAAGCTC-3'(配列番号35)
【0182】
MPS VIマウスは、ARSB遺伝子についてノックアウトであり、治療用ARSBタンパク質に対する耐性を生じる短縮型ヒトARSBを発現するトランスジェニックである。これは、MPS VI患者の免疫学的状態を再現する。MPS VIマウスをヘテロ接合体として維持し、交配させてホモ接合体ノックアウト実験マウスを作出した。マウスの遺伝子型を、ゲノムDNA(マウス指節先端から抽出)のPCR分析によって確認した。ノックアウトマウスは1400bpのPCR産物を示し、ヘテロ接合マウスは1400bpと別の234bpのバンドの両方を示した。野生型マウスは234bpのバンドのみを示した。PCR増幅に使用したプライマーは以下の通りである:
Fwd:5'-TGGGCAGACTAGGTCTGG-3'(配列番号36)
Rev:5'-TGTCTTCCACATGTTGAAGC-3'(配列番号37)
【0183】
本研究で使用した大ヨークシャー種雌ブタ(Azienda Agricola Pasotti、Imola、イタリア)は、LWHerd Book of the Italian National Pig Breeders' Associationにおいて純血種として登録されたものであり、Centro di Biotecnologie A.O.R.N. Antonio Cardarelli (Naples、イタリア)に収容し、12時間の明/暗サイクル下で維持した。
【0184】
マウス及びブタにおけるAAVベクターの網膜下注射
本研究は、the Association for Research in Vision and Ophthalmology Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research、及び動物処置のためのthe Italian Ministry of Health regulationに従って実行した(Ministry of Health承認番号147/2015-PR)。手術は全身麻酔下で行い、動物の苦痛を最小限に抑えるべくあらゆる努力がなされた。
【0185】
マウス(1~4週齢)を、ケタミン/キシラジン2mL/体重100gの腹腔内注射により麻酔し、次いで、AAV2/8ベクターをLiangら[42]によって記載の通りに、経強膜経脈絡膜(trans-scleral trans-choroidal)アプローチを介して網膜下に送達した。眼にベクター溶液1uLを注射した。AAV2/8用量(GC/眼)を、各ベクター/眼について1×109から2.5×109GCの間とした;したがって、共注射は、最大で5×109GC/眼となった。
【0186】
ブタ網膜へのAAV2/8ベクターの網膜下送達は、以前に記載の通りに実施した[43]。眼(n=3)にAAV2/8ベクター溶液100uLの2ブレブで注射した。AAV2/8の用量は各ベクター/ブレブ2×1011GCとした;したがって、トリプルAAVベクターの共注射により、合計4×1011GC/ブレブ及び8×1011GC/眼となった。
【0187】
側頭静脈を介する新生児の静脈内注射
p1-p2新生児マウスに、Gombash Lampeらが公開したプロトコル[44]に従って注射した。総容量を35uLとした。注射用量を、総用量8×1013GC/Kgについて、各ベクター4×1013GC/Kgとした。
【0188】
眼窩後叢を介した静脈内注射
4週齢C57BL/6マウスに、各ベクターについて1.3×1013又は4×1013GC/kgである、総容量360uLの注射用量を、眼窩後叢を介して注射した。
【0189】
電気生理学的記録
網膜電図検査分析のために、P347S又はP23Hマウスを3時間暗順応させた。マウスを麻酔し、暗赤色灯下で定位固定装置に位置決めした。瞳孔を0.5%トロピカミド(Visufarma社、Rome、イタリア)一滴で散大し、体温を37.5度に維持した。
【0190】
閃光を、ガンツフェルト刺激装置(CSO、Costruzione Strumenti Oftalmici社、Florence、イタリア)によって発生させた。電気生理学的シグナルを、角膜と接触している下眼瞼の下に挿入した金メッキ電極を通して記録した。各眼の電極を、対応する前頭領域のレベルで皮下に挿入した針電極に参照した。別々の電極を2チャンネル増幅器に接続した。暗順応条件(暗所視)で得た応答の完了後、記録セッションを、光応答(明所視)を媒介する錐体経路を解剖する目的で継続した。ノイズを最小限とするために、光によって惹起される様々な応答を各輝度段階に対して平均した。杆体及び錐体の最大暗所視応答を、0.7Hzの2回のフラッシュと20cd s/m2の光強度での暗条件(暗所視)で測定し、明所視錐体応答を、0.7Hzの10回のフラッシュと20cd s/m2の光強度で、50cd s/m2の連続背景白色光での明条件で分離した。
【0191】
血清中のARSB酵素活性評価のためのアッセイ
血清ARSB活性を、以前に記載の通りに[26]、特定の抗hARSBポリクローナル抗体(Covalab社)の使用に基づく免疫捕捉アッセイによって測定した。要約すると、96ウェルプレート(Nunclon)を、0.1M NaHCO3中の5μg/mlでコーティング(100μL/ウェル)し、4℃で一晩(O/N)インキュベートした。翌日、プレートを1%ミルクでブロックした;2時間のインキュベーション後、50μLの標準試料と未知試料(1:10に希釈)を各ウェルに添加した。プレートを4℃でO/Nでインキュベートした。翌日、5mM 4-メチルウンベリフェリルサルフェートカリウム塩(4-MUS;Sigma-Aldrich社)基質100μLを各ウェルに添加し、次いで、37℃で4時間インキュベートした。反応を、停止溶液100μL/ウェル(0.2Mグリシン)を添加することによって停止させた。プレートを、室温で10分間振とうし、マルチプレート蛍光光度計(Infinite F200;TECAN社)で蛍光を読み取った(365nmの励起/460nmの発光)。血清ARSBを、rhARSB(Naglazyme;BioMarin Europe社)標準曲線に基づいて決定したが、ミリリットルあたりのピコグラムとして表す。
【0192】
尿中のGAG蓄積の定量的分析
以前に記載の通りに[45]、GAGアッセイのために、尿試料を水で1:50に希釈してGAG含有量を測定した。GAG濃度を、デルマタン硫酸標準曲線(Sigma-Aldrich社)に基づいて決定した。組織GAGを、タンパク質1ミリグラムあたりのGAGのマイクログラムとして表した。尿中GAGを、クレアチニンアッセイキット(Quidel社、San Diego、米国)で測定したクレアチニン含有量に対して標準化した。したがって、尿中GAGの単位を、クレアチニン1マイクロモルあたりのGAGのマイクログラムで与える。尿中GAGを、AF対照マウスのパーセンテージとして報告する。最新の観察時点での、尿中GAGレベルを各群について平均した。
【0193】
血清アルブミンの定量化
血清試料を、製造元の取扱説明書に従ってマウスアルブミンELISAキット(Abcam社、Cambridge、英国)を用いて、分析した。試料を30,000倍に希釈し、プレートに結合するビオチン化アルブミンの競合に基づいて、アルブミンを決定した。血清アルブミンを、血清1ミリリットルあたりのアルブミンのミリグラムとして表した。
【0194】
網膜の解剖
網膜の耳側部及び鼻部を分離するために、マウス屠殺後、眼の耳側域を焼灼した。採眼後、ライカM205FA実体顕微鏡(Leica社、Wetzlar、ドイツ)の下で眼を解剖して、耳側域のGFP蛍光を確認した。耳側域及び鼻域を解剖して2つの別々のチューブに入れた。
【0195】
組織学及び光学顕微鏡検査及び蛍光顕微鏡検査
in vitro蛍光イメージング
in vitroでHITI後のDsRed発現を評価するために、1×106の密度で6ウェルにプレーティングした、HEK293細胞を、以前に記載の通りにトランスフェクトした。トランスフェクション48時間後、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)で10分間固定し、PBSで3回洗浄し、DAPIを含むVectashield(Vector Lab社、Peterborough、英国)でマウントした。ZENソフトウェア(Carl Zeiss社)を備えたAxio Observer Z1(Carl Zeiss社、Oberkochen、ドイツ)の下で、EGFP、DsRed、及びDAPI向けの適切な励起及び検出設定を使用して、細胞を分析した。
【0196】
網膜凍結切片及び蛍光イメージング
組織切片におけるHITI後の網膜におけるDsRed発現を評価するために、C57BL/6Jマウス及び大ヨークシャー種ブタ[43]にIRBP-Cas9ベクター及びドナーDNA AAVベクターを網膜下に注射した。1カ月後、マウス及びブタを屠殺し、眼を4%パラホルムアルデヒドで一晩固定し、30%スクロースを一晩浸透させた:次いで、角膜及び水晶体を解剖し、眼杯を最適な切断温度のコンパウンド(OCTマトリックス;Kaltek社、Padua、イタリア)に包埋した。10マイクロメートル厚の連続網膜凍結切片を水平軸に沿って切り出し、スライド上で漸次分散させ、DAPIを含んだVectashield(Vector Lab社、Peterborough、英国)でマウントした。次いで、適切な励起及び検出設定を使用して、共焦点LSM-700顕微鏡(Carl Zeiss社、Oberkochen、ドイツ)の下で凍結切片を分析した。AAV投与の後のマウス網膜凍結切片におけるHITI効率の評価の場合、2切片/眼に関して最も高い形質導入領域を40倍率で選択及び取得し、次いでImageJソフトウェア(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を使用して分析した。DAPI染色によって特定した最低でも500PRを各画像についてカウントした。DsRed発現に適合するシグナルを持つPRを、分析切片のzスタックで観察したそれらの形状、並びにDsRed+外節の存在に基づいて一意に特定した。
【0197】
網膜外顆粒層の厚さの評価
HITI処置後の網膜外顆粒層の厚さを評価するために、P23HマウスにIRBP-Cas9ベクター及びドナーDNA AAVベクターを網膜下に注射した。3カ月後、マウスを屠殺し、眼を、Davidsonの固定液(脱イオン水、10%酢酸、20%ホルマリン、35%エタノール)及び連続エタノール中一晩脱水で固定し、次いで、パラフィンブロックに包埋した。10マイクロメートル厚のマイクロ切片を水平軸に沿って切り出し、スライド上で漸次分散させ、ヘマトキシリン-エオジンで染色した。次いで、切片を顕微鏡(Leica Microsystems GmbH社;DM5000)の下で分析し、倍率20×で取得した。各眼について、眼の中央部におけるスライスの耳側の注射した側からの1画像を分析のために使用した。ImageJソフトウェアの「フリーハンドライン」手段を使用して、遺伝子型/処置群にマスクした状態で、ONL厚さに関して3つの測定値を各画像で取った。
【0198】
肝臓凍結切片及び蛍光イメージング
HITI後の肝臓でのDsRed発現を評価するために、C57BL/6Jマウスにp2にて又は4週齢にてのいずれかで注射し、心臓灌流によって注射1カ月後に屠殺した。肝臓を採取し、ライカ実体顕微鏡(Leica社、Wetzlar、ドイツ)で倍率25×で撮影した。次いで、各葉の小片を解剖し、すべての片を4%パラホルムアルデヒドで一晩固定し、15%スクロースを終日及び30%スクロースを一晩浸透させた後、凍結切片用にO.C.T.マトリックス(Kaltek社、Padua、イタリア)に含めた。5マイクロメートル厚の網膜凍結切片を切り出し、スライド上で分散し、DAPIを含んだVectashield(Vector Lab社、Peterborough、英国)でマウントした。次いで、適切な励起及び検出設定を使用して、共焦点LSM-700顕微鏡(Carl Zeiss社、Oberkochen、ドイツ)下で凍結切片を分析した。マウス肝臓凍結切片におけるHITI効率を評価するために、各肝臓の3画像を20倍率で取得し、次いで、ImageJソフトウェア(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を使用して分析した。核のDAPI染色によって特定した最低でも850個の肝細胞を各画像についてカウントした。DsRedの発現に適合するシグナルを持つ肝細胞を、その形状に基づいて一意に特定した。
【0199】
DNA切断分析
DNA抽出
試料(GFP+又はGFP+/DsRed+で選別したHEK293細胞、網膜組織又は肝組織)を、それぞれ、市販の溶解緩衝液(GeneArt(商標)Genomic Cleavage Detection Kit、Invitrogen社、Carlsbad、California、米国)又は組織からのDNA抽出用の従来の溶解緩衝液(400mM NaCl、1%SDS、20mM TRIS-CL(pH8.0)、5mM EDTA(pH8.0))で溶解した。溶解緩衝液にプロテイナーゼKを補充し、これは、80度で15分間溶解した後に不活化させた。それぞれ、pCMV-mRho-P23Hプラスミドからの又はマウスゲノムからのCas9標的部位(RHOの第1のエクソン)を含む領域のPCR増幅に、DNA 50~200ngを使用した。使用したプライマーをTable 4(表26)に示す。
【0200】
【0201】
P347S-Indelプライマーは444bpのPCR産物を生成した。pCMV-mRho-Indelプライマーは634bpのPCR産物を生成した。mRho-HITI-Indelプライマーは、426bpのPCR産物を生成した。pRHO-Indelプライマーは341bpのPCR産物を生成した。mAlb-HITI-Indelプライマーは592bpのPCR産物を生成した。
【0202】
Surveyorアッセイ
GeneArt(商標)Genomic Cleavage Detection Kitの製造元の推奨に従って、PCR産物1~3uL(PCR効率による)をSurveyorアッセイに使用した。要するに、DNAを99℃で脱アニールし、サーモサイクラーで緩徐な温度勾配によって再アニールした。再アニール後、検出酵素(T7エンドヌクレアーゼ)1uLを添加し、試料を37度で1時間インキュベートした。インキュベーション後、インデルの存在に起因するDNA切断産物を検出するために、試料を2%アガロースゲルでランした。
【0203】
Tracking of INDELs by Decomposition法
mRho-HITI-Indel、pRHO-Indel及びmAlb-HITI-Indelの各PCR産物もサンガー配列決定に使用した。次いで、配列を、インデル頻度のTIDEソフトウェア(https://tide.deskgen.com/)分析に使用した。
【0204】
HITI接合部特徴付け
接合部PCR増幅
網膜又は肝組織から抽出したDNAを、HITI接合部のPCR増幅に使用した。組み込みの5'と3'の両方の接合部を増幅した。5'接合部の場合、mRho遺伝子又はmAlb遺伝子の第1のエクソンの上流の領域を認識するフォワードプライマー及びDsRedコード配列を認識するリバースプライマーを使用した。3'接合部の場合、ドナーDNAのbGHポリA配列を認識するフォワードプライマー、及び切断部位の後の、mRhoの第1のエクソン又はmAlbの第2のエクソンを認識するリバースプライマーを設計した。Table 5(表27)に使用したプライマーを示す。
【0205】
【0206】
5'接合部プライマーは663bpのPCR産物を生成した。3'接合部プライマーは455bpのPCR産物を生成した。両方のPCR産物をPCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen社、Carlsbad、California、米国)にクローニングし、それぞれのクローンを配列決定して、NGS分析の前にPCR産物の同一性を確認した。
【0207】
ライブラリー調製及び次世代配列決定:
ライブラリー調製の場合、HITI接合部PCR産物からのDNA計47.5ngを、配列決定用のSMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit(Takara Bio USA社、Mountain View、CA、米国)を用いたDNAライブラリーの合成向けのインプットとして使用した。軽微な修正を加えて、製造元の推奨プロトコルに従った。SMART-Seq v4 Kitで生成したcDNA 75pgを、推奨プロトコルに従って、NEXTERA XT DNA Library Preparation kit (Illumina社、San Diego、CA、米国)を使用したライブラリー調製に使用した。ライブラリーの品質を、DNA高感度チップ(Agilent Technologies社、Santa Clara、CA、米国)でBioanalyzer DNA Analysisを使用することによって評価し、Qubit 4 Fluorometer(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、米国)を使用することによって定量化した。試料を、NextSeq 500/550 Mid Output v2 kitを使用して150+150ペアエンドランで配列決定した。データをGEO:GSE10717に寄託した。Illuminaベースコールの生データを、bcl2fastqソフトウェア(バージョンv2.20.0.422、Illumina社、San Diego、米国)を通してfastqファイルに変換した。
【0208】
Cutadaptソフトウェアを使用して配列リードをトリミングし、リード長を600bpから350bpまでに短縮した。カスタム参照配列を、目的の遺伝子座においてCas9によって媒介されるNHEJ媒介組み込みを予測することによって構築した。切断したドナーDNA配列を、gRNA配列の-3塩基と-4塩基の間に挿入した。すべての配列決定リードを、BWASWソフトウェアを使用してそれぞれの参照配列とアラインメントし、切断部位に対応する各位置でのインデルを定量化した。アライメントを、BWA-SWソフトウェア(MIT、Boston、米国)を使用して実行した。アライメントを取ったbamファイルに含まれるインデルの総数と特定のヌクレオチドカウントを、deepSNV[46]パッケージを用いて推定した。インデルの長さを、アドホックRアルゴリズムを通してBAM CIGAR文字列から得た。リードが0.5%未満の頻度であるインデルは、インデル長さのグラフ表示には含めなかった。
【0209】
(実施例1)
網膜におけるHITI
光受容体におけるHITIによる優性網膜色素変性症の遺伝子治療
ほとんどの努力が、AAVを使用して、機能喪失に起因する劣性状態において本来なら突然変異である遺伝子の正常なコピーを供給することに、歴史的には着目してきた。しかし、RHO突然変異(RP4)に起因するadRPでは、治療効果を達成するためには、正常なRHOコピーを付加するよりもむしろRHO突然変異型対立遺伝子をノックアウトする必要がある[47、48]。対立遺伝子非依存的又は対立遺伝子特異的方法で突然変異型RHOをノックダウンするために、様々な戦略が使用されてきた。対立遺伝子非依存的戦略には、AAV媒介RHO発現と一体となった短ヘアピンRNAによるRHOサイレンシング[49-51]及び不活性転写因子を使用したRHOサイレンシング[21]が含まれる。対立遺伝子特異的戦略には、対立遺伝子特異的サイレンシング及び対立遺伝子特異的ゲノム編集が含まれる。CRISPR/Cas9(Cas9)によるゲノム編集が、優性IRDの処置向けの汎用性且つ効率的な戦略としてここ数年で浮上してきた[4、48]。PRは最終分化細胞であるので、切断後のHDR修正の効率は低い[10、52]。一方、NHEJは、PRにおける主要なDNA修復メカニズムである。生じるインデルは通常、標的遺伝子をノックアウトするために使用される[3]。このことが、網膜色素変性症の種々のモデルの網膜で対立遺伝子特異的RHOノックアウトを誘導するのに使用されてきた。2つの異なるグループが、それぞれmRho遺伝子座及びRHO遺伝子座における一般的P23H突然変異を標的化した。どちらの場合も、マウスモデルの網膜における対立遺伝子特異的ゲノム編集により、RP4の部分修正が得られた[23、53]。同様に、Bakondiらは、トランスジェニックラットモデルにおいてmRhoのSer334-Ter突然変異を標的化した[22]。Yuらは、NRL遺伝子座を標的化し、マウスにおいて網膜変性の予防を認めた[54]。この方法は、Burnrightらによってもex vivoで使用されて、遺伝子修正の人工多能性幹細胞を作出したが、この細胞は、網膜治療に潜在的に使用可能性である[55]。しかし、このようなアプローチは、GOF対立遺伝子での双方のgRNA/PAMの組合せのアベイラビリティによって限定されるとともに、突然変異特異的であり、このことが、RP4の遺伝的異質性に起因してその臨床的適用性を限定している[19、48]。
【0210】
例えば優性網膜色素変性症のような機能突然変異の獲得によって引き起こされる疾患の処置に関して対立遺伝子特異的ノックアウトの限定を考慮し、本発明者らは、対立遺伝子非依存的アプローチの開発を目標とし、両方の内因性対立遺伝子をサイレンシングすること、及びそれらを機能的なコード配列に置き換えることをねらいとした。これは、非分裂細胞を標的化する場合に特に有利になると思われる。本発明者らは、戦略の概念実証として、光受容体における遺伝子修正を達成することにした。HDRは分化したニューロンでは極めて非効率的であると予想されるので、本発明者らは、突然変異型ロドプシンをWTのものに置き換えるHITIシステムを開発した。このために、本発明者らは、突然変異型対立遺伝子とWT対立遺伝子の両方を認識すると思われる、mRHOの第1のエクソンに対するgRNAを設計した。次いで、本発明者らは、3つの考えられるフレームにストップコドン、翻訳開始配列(TIS)、レポーター遺伝子dsRED及びBgHポリAを保有するドナーDNA配列を生成した。このドナーDNA配列は、mRHOに対するgRNAが認識するのと同じgRNA標的部位が5'と3'にて隣接しているが、逆転している(例えば、逆位標的部位)(
図1)。これによって方向性組み込みが可能になるが、なぜなら、ドナーDNAが反対方向に組み込まれた場合、Cas9はその標的部位を再び認識し、切断することができることになるからである。正常な方向に組み込むと、Cas9は標的部位をもはや切断できなくなるであろう。
【0211】
本発明者らは、マウスモデルにおいてin vivoでコザック配列及びIRES配列の両方について試験することとした。in vitroでmRho遺伝子座においてHITIを試験するために、本発明者らは、異なるTISを備える2つのバージョンのドナーDNAをコードするプラスミドを生成した:一方は、コザック配列を保有し、他方は小さい合成50bp IRESを保有した。各ドナーDNAを、Rho特異的gRNA及びマウスゲノムの配列を1つも認識しないスクランブルgRNAでクローン化した。このプラスミドを、CBh-SpCas9-2A-EGFPプラスミド、更にはCMVプロモーターの制御下にあるmRhoP23Hをコードする別のプラスミドと一緒に、トランスフェクトした(
図2A)。このCMV-mRhoP23Hプラスミドを、Cas9切断及びドナーDNA組み込みの鋳型として使用した。
【0212】
本発明者らは、HITIを行った後、CMVのプロモーター作用(promotorial action)によってDsRedが発現されることを期待した。トランスフェクションの48時間後、蛍光顕微鏡検査では、gRNAで処理した細胞にのみDsRed+細胞が多数存在し、スクランブルで処理した細胞には存在しないことが示された(
図2B)。
【0213】
Cas9トランスフェクト細胞はEGFP+を発現したので、本発明者らは、コザック又はIRESによってより高いDsRedの発現又はより高い組み込み効率を達成したかどうかを評価するために、FACSソーティングを使用してDsRed+細胞とEGFP+細胞との間の比率を決定した(
図2C)。コザックとIRESの間に有意差は見られなかったが、コザックがわずかに良好な成績であると思われた(34%と比べて47%)(
図2D)。この場合も、FACSによってスクランブルで処理した細胞にDsRed+細胞がまったく存在しないことが実証され、DsRed陽性がgRNAの存在に依存していることを確認した。
【0214】
DsRed発現が鋳型CMV-RhoP23HプラスミドにおけるCas9切断の結果であったことを確認するために、本発明者らは、EGFP+選別細胞からDNAを抽出し、gRNA標的部位周辺のプラスミドの領域をPCR増幅した。Surveyorアッセイによって、gRNAで処理した細胞においてのみインデルの存在が示され(
図3)、これはDsRedの発現と相関していた。
【0215】
本発明者らはまた、hRHO-T2A-dsREDを保有するドナーDNAを生成した(
図11A)。このドナーDNAは、mRho遺伝子をヒトロドプシンのコピーに置き換えることができ、更には修正した光受容体でdsREDの発現を生じることができるはずである。発明者らは、HITIの効率がインサートのサイズの差異によって変化するかどうかを判定するために、in vitroでこのドナーDNAを試験し、これを元々のdsREDドナーDNAと比較した。hRHO-T2A-dsREDドナーDNAがdsREDドナーの長さの2倍(1.2kBではなく2.4kB)であっても、蛍光イメージング(
図11B)及びFACSソーティング(
図11C)は、両方のインサートによって組み込みに関してまったく同じ効率が示され(67%)、この場合でも、mRho特異的gRNAの代わりにスクランブルが使用された場合、組み込みはなかった。
【0216】
HITIがマウス光受容体で実現可能かどうかを評価するために、本発明者らは、コザック配列又はIRES配列を有するドナーDNA、並びにmRho特異的gRNA又はスクランブルgRNA向けのgRNA発現カセットを保有するAAV2/8ベクターを生成した(
図4A)。これらのベクターを、既に記載のIRBP-SpCas9-shpolyAベクターと一緒に注射した。各ベクターについて網膜下注射2.5×10
9GC/眼を、4週齢C57BL/6マウスで実施した。注射の1カ月後、網膜凍結切片の蛍光顕微鏡検査では、gRNA処理網膜においてのみ注射域の近傍にDsRed+光受容体が存在すること、スクランブル処理網膜では存在しないことが示された。興味深いことに、IRESはin vivoでkozakよりも成績が大幅に良好であるように思われた(3%と比較して9.2%)(
図4B、
図4C)。
【0217】
光受容体におけるHITIの特徴付け:
光受容体においてHITIがいかに精密であるかをよりよく理解するために、本発明者らは、組み込みの5'接合部及び3'接合部を増幅するために2つのプライマーペアを設計した(
図5A)。両方のプライマーペアは、gRNA処理網膜から抽出したDNAでのみ予想サイズのPCR産物を増幅することができたが、スクランブル処理網膜からのDNAでは増幅できなかった。(
図5B)。
【0218】
続いて、これらのPCR断片をNGS分析に使用した。各接合部について150万から300万の間のリードを得た。NGSリードの分析では、5'接合部において、特にCas9切断部位(位置1)において、挿入(5%)と欠失(15%)の存在が低いことが示された(
図6)。最も共通の欠失は1から9bpの間の範囲であった。興味深いことに、本発明者らは、本発明者らがAAV ITR配列の一部であると特定した40bp配列及び48bp配列の共通の2つの挿入を観察した(
図6)。これと異なって、3'接合部では驚くほど多数のlbp挿入(71%)を示したが、これはほとんどシトシン又はチミンであり、2bp挿入がいくつかあり、欠失はほとんど存在しなかった(
図6)。
【0219】
加えて、マウス網膜から抽出したDNAを、潜在的なオフターゲットHITI組み込みのNGS分析に使用した。DsRedを標的化するプローブを使用して、ドナーDNAを含むゲノム内の配列に対して濃縮した。驚くべきことに、RHO遺伝子座においてさえ、完全なドナーDNAを含有するゲノム配列は見いだされなかった。このことは、リード数が低いこと、観察された組み込みの効率が低いこと、並びにDNA抽出にあたってDsRed+光受容体のみの選択ができないこと、したがって、抽出したDNA全体で編集ゲノムが希釈されていること、で説明可能である。
【0220】
HITIはブタの光受容体で効率的である:
ヒトの眼に関する解剖学をよりよく再現する動物モデルにおいてHITI効率を特徴付けるために、本発明者らは、重要な前臨床モデルであるブタの眼を使用することにした。このために、本発明者らは、ブタロドプシン(pRho)遺伝子の第1のエクソンに特異的なgRNA、及び以前の実験で使用したものと同一であるがpRho標的部位が隣接しているドナーDNAを設計した。これらを用いて、本発明者らは、
図14に示したベクターの同じタイプを生成した。各ベクター2.5×10
11GC/ブレブの網膜下注射を、各網膜あたり2ブレブで3カ月齢大ヨークシャー種で実施した。注射の1カ月後、網膜凍結切片の蛍光顕微鏡検査では、gRNA処理網膜の注射域にDsRed+光受容体が存在すること、スクランブル処理網膜では存在しないことが示された。(
図7A)。この場合も、IRESは、コザックよりもかなり良好な成績であった(
図7B)。
【0221】
DsRed発現がpRho遺伝子におけるCas9媒介DSBと相関していたかどうかを判定するために、本発明者らは、ブタの網膜及びRPEからゲノムDNAを抽出し、Surveyorアッセイを実施した。本発明者らは、gRNA処理網膜においてのみインデルの存在を観察し、スクランブル処理網膜ではこれを観察しなかった。本発明者らが予想したように、インデルは網膜においてのみ存在し、RPEには存在しなかったが、このことは、IRBPプロモーターによるCas9の光受容体特異的発現と一致している(
図8A)。切断の効率をいっそうよく特徴付けるために、本発明者らは、TIDE分析を使用したが、これについては、Surveyorアッセイに使用したのと同じPCR断片をSANGER配列決定に使用した。得られたクロマトグラムを、TIDEソフトウェアへのインプットとして使用した。RPE試料からのクロマトグラムを陰性対照として使用し、これと他のクロマトグラムを比較した。TIDEでは、gRNA処理網膜で22%の切断効率が示され、スクランブル処理網膜では無視できるインデルが示された(
図8B)。
【0222】
mRho遺伝子座でのHITIは、AdRPのマウスモデルにおいて視力を部分的に回復する:
HITI効率がAdRP表現型を修正するのに十分であるかどうかを評価するために、本発明者らは、IRES配列及びhRHO遺伝子のコード配列(hRHO CDS)を備えるドナーDNA、並びにmRho gRNA又はスクランブルgRNAを保有する2つのAAV2/8ベクターを生成した(
図9A)。これらのベクターを、AAV2/8-IRBP-SpCas9ベクターと一緒に注射した。
【0223】
20日齢P23H+/-マウスに各ベクター2.5×10
9GCの網膜下注射を投与した。p60で、ERG分析では、分析した2つの最も高い光刺激にて小さいとはいえ有意な改善が示された(
図9B)。しかし、観察された改善は一時的なものであり、p90にて消失したが、このことから、修正の効率が、この動物モデルで観察された急速な網膜変性を相殺するには十分ではなかったことが示唆される。実際、pl20での組織学的解析では、gRNA群とスクランブル群の間で網膜外顆粒層(ONL)の厚さに有意差がなかった(
図10A、
図10B)。これは、周囲の網膜構造の変性によって機能している光受容体の死滅が生じる可能性がある、という報告と一致する[56]。
【0224】
HITIはヒトRHO遺伝子で実行することができる:
本発明者らのアプローチに関する重要な問題とは、本発明者らがマウス及びブタのRho配列を標的化したことである。臨床適用性のためには、ヒトRHO遺伝子を標的にする必要がある。本発明者らは、ヒトRHO遺伝子を標的化するgRNA及びドナーDNAを開発した。本発明者らは、HEK-293細胞においてin vitroでこのアプローチについて試験した。mRNAからのdsREDの翻訳を最適化するために、発明者らは2つの異なる翻訳開始配列について試験した:コザック配列及び小50bp IRES配列[38]。本発明者らはまた、リボソームスキッピングT2A配列についても試験した(
図11A)。CMVプロモーターの制御下でhRHOをコードするプラスミド、hRHO特異的gRNAを含むCas9-GFPをコードする第2のプラスミド、及びドナーDNAを保有する第3のプラスミドを、HEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後の蛍光顕微鏡検査及びFACSソーティングが示したところは、特にdsREDの強度に関して、IRESとT2Aの両方がコザックより控えめに成績が良かったことである(35.6%に対して39.4%及び40.3%)(
図11B、
図11C)。
【0225】
治療用タンパク質の安定した肝臓発現のためのアルブミン遺伝子座のHITI
AAVによる肝臓指向遺伝子治療には、肝細胞の細胞分裂過程でのベクター希釈に起因していくつかの限定がある。このようなことが、最も重度な症状の一部を回避又は少なくとも調整する可能性がある、いくつかの遺伝性疾患の新生児又は小児の処置を妨げている。これ及びその他の理由のため、ゲノム編集の分野は、肝臓からの導入遺伝子の安定した発現を達成する戦略の開発に着目してきた。治療用タンパク質の発現のためにアルブミン遺伝子座でZFN媒介HDRを使用する2つの治験が、それぞれMPSI及びMPSIIに対して承認されてきた(治験番号NCT02702115及びNCT03041324)。肝臓からの治療用タンパク質の組み込み及び発現のための「セーフハーバー」としてアルブミン遺伝子座を標的化する本アプローチは、他のいくつかの疾患の動物モデルに適用されてきたが[9、57-59]、小児患者において使用可能であった従来のGTの代替法として将来おおいに有望である。
【0226】
本発明は、MPS VIの処置のために、酵素ARSBの産生及び安定した分泌向けの工場という点で肝臓を変換することを目的とする。本発明者らは、マウスアルブミン遺伝子の第2エクソンに特異的なgRNAを設計した(
図12A)。次いで、本発明者らは、2つのAAV2/8ベクターを生成した:肝臓特異的ハイブリッド肝臓プロモーター(HLP)の制御下でSpCas9をコードし、短合成ポリA(shポリA)を有する、第1のベクター[60]。gRNA発現カセット及びドナーDNAをコードする第2のベクター。Alb特異的又はスクランブルgRNAはU6プロモーターの制御下とした。ドナーDNAは、逆位アルブミンgRNA標的部位が隣接し、PAMを含んだ。ドナーDNAには、3つのフレームすべてにストップコドン、翻訳開始を駆動するコザックシグナル、導入遺伝子DsRed、及びbGHポリAを含有させた(
図12B)。本発明者らは、静脈内送達後、両方のベクターが肝臓に到達し、Cas9が発現すると、これがアルブミン遺伝子座とドナーDNAの両方を切断し、その結果、ドナーDNAのアルブミン遺伝子座へのNHEJ媒介組み込みが生じることになると(
図12C)、予想した。
【0227】
HITIはマウス肝細胞で実現可能かつ効率的である
新生児マウスにおいてアルブミン遺伝子座でのHITIが実行可能かどうかを判定するために、2日齢C57BL/6マウスにAAV2/8の静脈内注射を投与した(各ベクターの用量:4×10
13GC/Kg)。注射の1カ月後に肝臓を採取し、蛍光実体顕微鏡の下で観察した。gRNA処理肝臓は、DsRed+フォーカスが多数存在することを示し、これは、注射後の肝細胞の予想されるクローン増殖と一致した(
図13A)。スクランブル処理肝臓は、DsRed+フォーカスを示さなかった。肝臓凍結切片の蛍光顕微鏡検査では、gRNA処理肝臓においてDsRed+肝細胞が3.26%であること、及びスクランブル処理肝臓においてそれらが非存在であることが示された(
図13B、
図13C)。興味深いことに、DsRed+肝細胞はクローン増殖と一致するクラスターを形成しているようであった。(
図13B)。本発明者らはまた、IRES-DsRedドナーDNAを保有するAAV2/8ベクターを生成し、これらを同じ条件に従って注射した。この場合、gRNA処理肝臓とスクランブル処理肝臓の両方がDsRed+肝細胞の存在を示したが、これは、Hepa1.6細胞で確認したIRES配列の肝細胞限定のプロモーター活性(promotorial activity)が原因である可能性がある(データ示さず)。この理由ため、本発明者らは、以下の実験についてはスタートシグナルとしてコザックのみを使用した。
【0228】
マウス肝細胞のアルブミン遺伝子座におけるCas9インデル頻度
DsRed+肝細胞の存在とアルブミン遺伝子座のCas9媒介切断を関連付けるために、本発明者らは、注射した肝臓からDNAを抽出し、Cas9標的部位周辺の領域のPCR増幅を実施した。続いて、PCR断片をSurveyorアッセイに使用したが、アッセイでは、gRNA処理肝臓においてのみインデルが存在し、スクランブル処理肝臓においては存在しないことを示された(
図14A)。次いで、本発明者らは、TIDE分析を使用して、生じたインデルの頻度及びタイプを評価した。本発明者らは、gRNA処理肝臓で9.9%のインデル効率を、PBSを注射した肝臓のスクランブル処理で無視できるインデルを観察した(
図14B)。興味深いことに、NHEJ修復によるほとんどの欠失が1から6bpの間であると思われる場合でも、すべてのgRNA処理肝臓において、本発明者らは7bp欠失が非常に高頻度であることを観察した(
図20A、青色矢印)。インデル予測のためのShenらが使用したモデルに基づく配列分析[61]よって、DSBの両サイドに2つの小4bpマイクロホモロジー領域を特定することができたが、これらはこの7bpの欠失を介して効率的なMMEJ修復をもたらす(
図14C)。
【0229】
マウス肝細胞のAlb遺伝子座におけるHITI精度の特徴付け:
次に、本発明者らは、標的化組み込み後に5'接合部及び3'接合部を増幅するためにPCRプライマーを設計した。5'接合部の場合、Fwdプライマーはアルブミンの第1のイントロンを認識し、一方、RevプライマーはドナーDNAを認識した。3'接合部の場合、FwdプライマーはドナーDNAを認識し、一方、Revプライマーはアルブミンの第2のエクソンを認識した(
図15A)。両方の場合において、本発明者らは、インデルとDsRed+肝細胞の両方の存在と一致して、gRNA処理肝臓においてのみ予想サイズのPCR産物の増幅を観察した。スクランブル処理肝臓より抽出したDNAから、PCR産物は増幅されなかった(
図15B、
図15C)。次いで、増幅PCR産物を精製して、次世代配列決定分析に使用した。各接合部について80,000から350,000の間のリードが得られた。細菌クローン配列決定からのデータと一致して、5'接合部において、本発明者らは、挿入頻度が低いこと及び欠失頻度が38%であることを観察した(
図16A)。ほとんどの挿入はlbpのものであったが、欠失は1から47bpまでに大部分が範囲し、lbpの欠失が最も共通のものであった(
図16C)。3'接合部では、本発明者らは、切断部位でlbp挿入が高頻度であること(
図16B、
図16C)、並びに2bp挿入がいくつかあることを観察した。全体的に見て、欠失はより頻度が高いが(52%)、また切断部位の周りにより多く分布しており、切断部位より1bpから38bpまでの範囲に及んだ。(
図16B)。最も共通の欠失は1から18bpの間であり、本発明者らはまた、共通の42bp欠失を特定した。
【0230】
HITIは成体マウスの肝臓で効率的且つ用量依存的である
次に、本発明者らは、HITIが、新生児マウスにおけるのと同様の効率で成体マウスの肝臓においても実施され得るかどうかを評価することを望んだ。この理由のために、4週齢C57BL/6マウスに、各ベクターについて、新生児マウスで使用した同じ用量4×10
13GC/Kg(高用量、HD)、又は低用量、1.3×10
13GC/kg(低用量、LD)を静脈内注射した。注射の1カ月後、本発明者らは、蛍光顕微鏡検査を使用して、DsRed+肝細胞の存在を評価した。本発明者らは、DsRed+肝細胞がHD群で2.76%、LD群で1.25%であることを観察した。DsRed+肝細胞は、使用したベクター用量とは無関係に、スクランブル処理肝臓では存在しなかった(
図17A、
図17B)。しかし、HITIの効率は、どちらの場合も新生児注射で得られたものよりも低かった。これは、新生児肝臓でのより良好な形質導入効率によって又は改変肝細胞のクローン増殖によって説明可能であるが、理論的には、アルブミン遺伝子座でのDsRedのHITIは選択優位性を付与しないはずである。
【0231】
アルブミン遺伝子座からのARSB発現はMPS VI表現型を部分的にレスキューする
次に、本発明者らは、HITIを使用して、MPS VIマウスのアルブミン遺伝子座にアリールスルファターゼB(ARSB)のコード配列を組み込むことにした。そのために、本発明者らは、既に記述のAAV2/8-HLP-Cas9-shpolyAベクターを使用したが、本発明者らは、アルブミン特異的gRNA又はスクランブルgRNA向けの発現カセット、並びに3つのフレームのSTOPシグナル、翻訳を開始するコザックシグナル、ARSBのコード配列、及びbGHポリAをコードする標的隣接ドナーDNAを保有する別のベクターを生成した(
図18)。本発明者らは、DsRedドナーDNAを使用して3'接合部において観察していた欠失を考慮して、bGH配列における望ましくない欠失を回避するために、bGHとCas9標的部位との間に200bpスタッファーDNAを付加した。2日齢MPS VI-/-マウスに、各ベクターについて、6×10
13GC/Kgを静脈内注射した。ARSBの血中レベルの毎月測定では、gRNA処理マウスの血清においてのみARSBが存在することが示されたが、スクランブル処理マウスではARSBはまったく存在しなかった。すべてのgRNA処理マウスが、注射後1カ月でARSB発現を示した(
図19)。2匹のマウスが1カ月目と2カ月目の間でARSBレベルの相対的な減少を示したが、2カ月目以後はARSBレベルは安定した。得られたレベルは、非罹患マウスにおいて内因性レベルである、AAV2/8-TBG-ARSB 2×10
11GC/Kgの注射後に得られたレベルの1/6から1/3の間の範囲であり、最高の成績であったマウスは2572pg/mLに達した(
図19)。成体MPS VIマウスにおいてAAV2/8-TBG-ARSBベクター2×10
11GC/Kgの注射後に得られたレベル[29]が、HITIアプローチで観察されたものよりも高かったため、本発明者らは、HITIに使用したのと同じ用量でこの同じベクターを新生児に注射することによってより高いレベルのARSB発現を達成することができるかどうかを試験することにした。このために、新生児MPS VI-/-マウスにAAV8-TBG-ARSBベクター6×10
13GC/Kgを注射した。予想通り、p30でのARSBレベルは分析した3匹のマウスで非常に高かったが、p60で減少し、次いでp90で安定した状態のままであった(
図19)。この減少が後の時点で継続するかどうかを評価するために、且つこの戦略で得られたレベルをHITIで得られたレベルと比較するために、更なる解析が実施されている。到達した血清ARSBレベルがMPS VI表現型を修正するのに十分であるかどうかを判定するために、著者らは注射の3カ月後に尿中GAGレベルを定量化し、スクランブル処理マウスと比較してgRNA処理マウスでGAGレベルが46%減少することを観察したが(
図20)、このことから、得られた血清ARSBレベルは、組織内のGAG消失をヘテロ接合MPS VI+/-マウスに匹敵するレベルまでに回復するのに十分であることが、示唆される。同様に、AAV8-TBG-ARSBを注射したマウスはGAGの50%減少を示し、gRNA処理マウスに対して統計的有意差は観察されなかった。心臓弁のような組織におけるGAG蓄積を定量化するために、より長い時点でのMPS VI表現型修正の更なる特徴付けが屠殺時に実行されるであろう。
【0232】
アルブミン遺伝子座でのHITIは血清アルブミンレベルに影響を及ぼさない
Albを標的化するために提案されている戦略に関連した重大な懸念とは、ゲノム編集後のAlbのノックアウトが考えられることである。この理由のため、Cas9及びAlb特異的gRNAによる処理が、処理されたMPS VIマウスにおいて血清アルブミンレベルを減少する恐れがあるかどうかを評価することにした。このために、血清アルブミンレベルをp90にて測定した。スクランブル処理又は非注射のマウスと比較した場合、gRNA処理マウスではアルブミンレベルの相対的な低下が観察されたが、この低下は有意ではなく、観察されたレベルはこの年齢のマウスにとって正常範囲にあると思われた(
図21)。
【0233】
考察
優性遺伝性疾患は、遺伝子治療により標的化することが常に困難であった。ゲノム編集は、GOF突然変異の処置戦略を開発するための重要な手段となる可能性がある。
【0234】
HITIとは、遺伝子修正の景観を変える可能性のある非常に柔軟な手段である。HDRには非分裂細胞では厳しい限定があり、必要な相同性アームのサイズによって、AAVにより挿入することができるドナーDNAのサイズが限定されている可能性がある。その代わりに、HITIは分裂細胞と非分裂細胞の両方で働くことが証明されてきたが、そのin vivo効率を向上するためにCas9切断の増加又はドナーDNAの存在が必要かどうかを理解するには、より多くの研究を行う必要がある。本発明者らは、HITIを使用して、目的の遺伝子の正常なコピーを挿入し、その結果、突然変異型対立遺伝子を置き換えることができることを示した。IRESが最良の選択肢であるように見えるが、このことは、本発明者らが実施した挿入が標的遺伝子のATGの前ではないという事実と一致していると思われるが、また、kozak配列及びT2A配列は特定のアプローチ次第で機能する可能性がある。本発明者らはまた、エクソンの代わりにイントロンにドナーを組み込み、その結果、GOF対立遺伝子と野生型対立遺伝子の両方を切断するCas9に由来する潜在的な毒性を回避するためのシステムの開発に取り組んでいる最中である。とにかく、HITIは光受容体修正のために網膜の遺伝子修正に使用することができるが、その効率については更に向上させることができる。HITIは、治療用タンパク質の生産向けの工場という点で肝臓を変換することを目的としたアプローチのためにHDRの代替として使用することもできる。発生中の肝臓に処置を送達する必要がある場合、ゲノム編集アプローチは従来の遺伝子送達に勝って好ましいが、これは、ゲノム編集は持続的であり、導入遺伝子の発現は時間とともに失われることはないからである。転写活性が非常にアクティブであるアルブミン遺伝子座にて導入遺伝子を挿入することで、たとえHITIの効率が低くても治療用タンパク質の発現と分泌が高いことが確保される。本発明者らは、このアプローチが、小児患者において使用して、骨格成長における欠陥を回避することができる可能性のある、MPS VIに対する新生児治療戦略として、肝臓におけるAAV媒介ARSB発現を置換するのに十分であることを証明した。全体として、ゲノム編集、特にHITIプラットフォームによって、遺伝的疾患の処置の可能性が新たな高みへと広がりつつあり、数年間以内に実施される研究が、ヒト使用へのその適用可能性の景観を定めることになるであろう。
【0235】
結論
まとめると、これらの結果が示すところは、ロドプシン遺伝子座でのHITIは、異なる種の網膜でin vivoで効率的であり、両方のAAVベクターによる形質導入並びにgRNAの効率に高度に依存していることである。HITIは、両方の対立遺伝子をノックアウトし、ドナーDNAからの正常な対立遺伝子に置き換えることにより、優性遺伝性疾患の対立遺伝子非依存的治療に使用することができる。
【0236】
参考文献
1. Cong, L., et al., Multiplex genome engineering using CRISPR/Cas systems. Science, 2013. 339(6121): p. 819-23.
2. Jiang, W., et al., RNA-guided editing of bacterial genomes using CRISPR-Cas systems. Nat Biotechnol, 2013. 31(3): p. 233-9.
3. Tu, Z., et al., CRISPR/Cas9: a powerful genetic engineering tool for establishing large animal models of neurodegenerative diseases. Mol Neurodegener, 2015. 10: p. 35.
4. Yanik, M., et al., In vivo genome editing as a potential treatment strategy for inherited retinal dystrophies. Prog Retin Eye Res, 2017. 56: p. 1-18.
5. Nishiyama, J., T. Mikuni, and R. Yasuda, Virus-Mediated Genome Editing via Homology-Directed Repair in Mitotic and Postmitotic Cells in Mammalian Brain. Neuron, 2017. 96(4): p. 755-768 e5.
6. Anguela, X.M., et al., Robust ZFN-mediated genome editing in adult hemophilic mice. Blood, 2013. 122(19): p. 3283-7.
7. Barzel, A., et al., Promoterless gene targeting without nucleases ameliorates haemophilia B in mice. Nature, 2015. 517(7534): p. 360-4.
8. Li, H., et al., In vivo genome editing restores haemostasis in a mouse model of haemophilia. Nature, 2011. 475(7355): p. 217-21.
9. Sharma, R., et al., In vivo genome editing of the albumin locus as a platform for protein replacement therapy. Blood, 2015. 126(15): p. 1777-84.
10. Bakondi, B., In vivo versus ex vivo CRISPR therapies for retinal dystrophy. Expert Rev Ophthalmol, 2016. 11(6): p. 397-400.
11. Lackner, D.H., et al., A generic strategy for CRISPR-Cas9-mediated gene tagging. Nat Commun, 2015. 6: p. 10237.
12. Suzuki, K., et al., In vivo genome editing via CRISPR/Cas9 mediated homology-independent targeted integration. Nature, 2016. 540(7631): p. 144-149.
13. Brunetti-Pierri N, A.A., Gene Therapy of Human Inherited Diseases, in The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Diseases, S. R, Editor. 2010, McGraw Hill: New York.
14. Ehrhardt, A., H. Xu, and M.A. Kay, Episomal persistence of recombinant adenoviral vector genomes during the cell cycle in vivo. J Virol, 2003. 77(13): p. 7689-95.
15. Sakami, S., et al., Probing mechanisms of photoreceptor degeneration in a new mouse model of the common form of autosomal dominant retinitis pigmentosa due to P23H opsin mutations. J Biol Chem, 2011. 286(12): p. 10551-67.
16. Olsson, J.E., et al., Transgenic mice with a rhodopsin mutation (Pro23His): a mouse model of autosomal dominant retinitis pigmentosa. Neuron, 1992. 9(5): p. 815-30.
17. Fernandez-San Jose, P., et al., Prevalence of Rhodopsin mutations in autosomal dominant Retinitis Pigmentosa in Spain: clinical and analytical review in 200 families. Acta Ophthalmol, 2015. 93(1): p. e38-44.
18. Ziviello, C., et al., Molecular genetics of autosomal dominant retinitis pigmentosa (ADRP): a comprehensive study of 43 Italian families. J Med Genet, 2005. 42(7): p. e47.
19. Mendes, H.F., et al., Mechanisms of cell death in rhodopsin retinitis pigmentosa: implications for therapy. Trends Mol Med, 2005. 11(4): p. 177-85.
20. Li, T., et al., Transgenic mice carrying the dominant rhodopsin mutation P347S: evidence for defective vectorial transport of rhodopsin to the outer segments. Proc Natl Acad Sci U S A, 1996. 93(24): p. 14176-81.
21. Botta, S., et al., Rhodopsin targeted transcriptional silencing by DNA-binding. Elife, 2016. 5: p. e12242.
22. Bakondi, B., et al., In Vivo CRISPR/Cas9 Gene Editing Corrects Retinal Dystrophy in the S334ter-3 Rat Model of Autosomal Dominant Retinitis Pigmentosa. Mol Ther, 2016. 24(3): p. 556-63.
23. Latella, M.C., et al., In vivo Editing of the Human Mutant Rhodopsin Gene by Electroporation of Plasmid-based CRISPR/Cas9 in the Mouse Retina. Mol Ther Nucleic Acids, 2016. 5(11): p. e389.
24. E Neufeld, J.M., The mucopolysaccharidoses, in The mucopolysaccharidoses, A.B. CR Scriver, WS Sly, DM Valle, Editor. 2001, McGraw-Hill: New York (2001). p. 3421-3452.
25. Cotugno, G., et al., Impact of age at administration, lysosomal storage, and transgene regulatory elements on AAV2/8-mediated rat liver transduction. PLoS One, 2012. 7(3): p. e33286.
26. Ferla, R., et al., Similar therapeutic efficacy between a single administration of gene therapy and multiple administrations of recombinant enzyme in a mouse model of lysosomal storage disease. Hum Gene Ther, 2014. 25(7): p. 609-18.
27. Ferla, R., et al., Gene therapy for mucopolysaccharidosis type VI is effective in cats without pre-existing immunity to AAV8. Hum Gene Ther, 2013. 24(2): p. 163-9.
28. Tessitore, A., et al., Biochemical, pathological, and skeletal improvement of mucopolysaccharidosis VI after gene transfer to liver but not to muscle. Mol Ther, 2008. 16(1): p. 30-7.
29. Alliegro, M., et al., Low-dose Gene Therapy Reduces the Frequency of Enzyme Replacement Therapy in a Mouse Model of Lysosomal Storage Disease. Mol Ther, 2016. 24(12): p. 2054-2063.
30. Ferla, R., et al., Non-clinical Safety and Efficacy of an AAV2/8 Vector Administered Intravenously for Treatment of Mucopolysaccharidosis Type VI. Mol Ther Methods Clin Dev, 2017. 6: p. 143-158.
31. Cotugno, G., et al., Long-term amelioration of feline Mucopolysaccharidosis VI after AAV-mediated liver gene transfer. Mol Ther, 2011. 19(3): p. 461-9.
32. Giugliani, R., et al., Natural history and galsulfase treatment in mucopolysaccharidosis VI (MPS VI, Maroteaux-Lamy syndrome)--10-year follow-up of patients who previously participated in an MPS VI Survey Study. Am J Med Genet A, 2014. 164A(8): p. 1953-64.
33. Desnick, R.J. and E.H. Schuchman, Enzyme replacement therapy for lysosomal diseases: lessons from 20 years of experience and remaining challenges. Annu Rev Genomics Hum Genet, 2012. 13: p. 307-35.
34. Neufeld, E.F., Lysosomal storage diseases. Annu Rev Biochem, 1991. 60: p. 257-80.
35. Ran, F.A., et al., Genome engineering using the CRISPR-Cas9 system. Nat Protoc, 2013. 8(11): p. 2281-2308.
36. Auricchio, A., et al., Isolation of highly infectious and pure adeno-associated virus type 2 vectors with a single-step gravity-flow column. Hum Gene Ther, 2001. 12(1): p. 71-6.
37. Maddalena, A., et al., Triple Vectors Expand AAV Transfer Capacity in the Retina. Mol Ther, 2018. 26(2): p. 524-541.
38. Venkatesan, A. and A. Dasgupta, Novel fluorescence-based screen to identify small synthetic internal ribosome entry site elements. Mol Cell Biol, 2001. 21(8): p. 2826-37.
39. Swiech, L., et al., In vivo interrogation of gene function in the mammalian brain using CRISPR-Cas9. Nat Biotechnol, 2015. 33(1): p. 102-6.
40. Doria, M., A. Ferrara, and A. Auricchio, AAV2/8 vectors purified from culture medium with a simple and rapid protocol transduce murine liver, muscle, and retina efficiently. Hum Gene Ther Methods, 2013. 24(6): p. 392-8.
41. Drittanti, L., et al., High throughput production, screening and analysis of adeno-associated viral vectors. Gene Ther, 2000. 7(11): p. 924-9.
42. Liang, F.Q., et al., Intraocular delivery of recombinant virus. Methods Mol Med, 2001. 47: p. 125-39.
43. Mussolino, C., et al., AAV-mediated photoreceptor transduction of the pig cone-enriched retina. Gene Ther, 2011. 18(7): p. 637-45.
44. Gombash Lampe, S.E., B.K. Kaspar, and K.D. Foust, Intravenous injections in neonatal mice. J Vis Exp, 2014(93): p. e52037.
45. de Jong, J.G., et al., Dimethylmethylene blue-based spectrophotometry of glycosaminoglycans in untreated urine: a rapid screening procedure for mucopolysaccharidoses. Clin Chem, 1989. 35(7): p. 1472-7.
46. Gerstung, M., E. Papaemmanuil, and P.J. Campbell, Subclonal variant calling with multiple samples and prior knowledge. Bioinformatics, 2014. 30(9): p. 1198-204.
47. Dalkara, D. and J.A. Sahel, Gene therapy for inherited retinal degenerations. C R Biol, 2014. 337(3): p. 185-92.
48. Trapani, I. and A. Auricchio, Seeing the Light after 25 Years of Retinal Gene Therapy. Trends Mol Med, 2018. 24(8): p. 669-681.
49. O'Reilly, M., et al., RNA interference-mediated suppression and replacement of human rhodopsin in vivo. Am J Hum Genet, 2007. 81(1): p. 127-35.
50. Chadderton, N., et al., Improved retinal function in a mouse model of dominant retinitis pigmentosa following AAV-delivered gene therapy. Mol Ther, 2009. 17(4): p. 593-9.
51. Millington-Ward, S., et al., Suppression and replacement gene therapy for autosomal dominant disease in a murine model of dominant retinitis pigmentosa. Mol Ther, 2011. 19(4): p. 642-9.
52. Suzuki, K. and J.C. Izpisua Belmonte, In vivo genome editing via the HITI method as a tool for gene therapy. J Hum Genet, 2018. 63(2): p. 157-164.
53. Giannelli, S.G., et al., Cas9/sgRNA selective targeting of the P23H Rhodopsin mutant allele for treating retinitis pigmentosa by intravitreal AAV9.PHP.B-based delivery. Hum Mol Genet, 2018. 27(5): p. 761-779.
54. Yu, W., et al., Nrl knockdown by AAV-delivered CRISPR/Cas9 prevents retinal degeneration in mice. Nat Commun, 2017. 8: p. 14716.
55. Burnight, E.R., et al., Using CRISPR-Cas9 to Generate Gene-Corrected Autologous iPSCs for the Treatment of Inherited Retinal Degeneration. Mol Ther, 2017. 25(9): p. 1999-2013.
56. Bovolenta, P. and E. Cisneros, Retinitis pigmentosa: cone photoreceptors starving to death. Nat Neurosci, 2009. 12(1): p. 5-6.
57. Porro, F., et al., Promoterless gene targeting without nucleases rescues lethality of a Crigler-Najjar syndrome mouse model. EMBO Mol Med, 2017. 9(10): p. 1346-1355.
58. Ou, L., et al., ZFN-Mediated In Vivo Genome Editing Corrects Murine Hurler Syndrome. Mol Ther, 2019. 27(1): p. 178-187.
59. Laoharawee, K., et al., Dose-Dependent Prevention of Metabolic and Neurologic Disease in Murine MPS II by ZFN-Mediated In Vivo Genome Editing. Mol Ther, 2018. 26(4): p. 1127-1136.
60. McIntosh, J., et al., Therapeutic levels of FVIII following a single peripheral vein administration of rAAV vector encoding a novel human factor VIII variant. Blood, 2013. 121(17): p. 3335-44.
61. Shen, M.W., et al., Predictable and precise template-free CRISPR editing of pathogenic variants. Nature, 2018. 563(7733): p. 646-651.
62. Kim, E., et al., In vivo genome editing with a small Cas9 orthologue derived from Campylobacter jejuni. Nat Commun, 2017. 8: p. 14500.