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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009645
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/17 20150101AFI20240116BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20240116BHJP
【FI】
H04B17/17
H04B17/29 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111331
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇司
(57)【要約】
【課題】通信システムが有する通話用の音声通信経路について、健全性の確認を自動的に実施できるようにする。
【解決手段】指令卓10と移動局70の間を中央制御装置30および基地局50を介して接続する通話用の音声通信経路の健全性を確認するための仕組みとして、指令卓10が、トーン信号を生成して移動局側(下り方向)へ送出するトーン生成部15と、トーン信号を検出するトーン検出部16とを備え、中央制御装置30が、トーン生成部15から送出されたトーン信号を音声通信経路の途中で指令卓側(上り方向)へ折り返すループ経路の形成および解除を制御する経路診断制御部41とを備える。そして、ループ経路により折り返されたトーン信号のトーン検出部16による検出結果に基づいて、音声通信経路の健全性を確認するように構成される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令卓と移動局の間を中央制御装置および基地局を介して接続する通話用の音声通信経路を有する通信システムにおいて、
トーン信号を生成して指令卓側または移動局側へ送出するトーン生成部と、
前記トーン信号を検出するトーン検出部と、
前記トーン生成部から送出されたトーン信号を前記音声通信経路の途中で折り返すループ経路の形成および解除を制御する経路制御部とを備え、
前記ループ経路により折り返されたトーン信号の前記トーン検出部による検出結果に基づいて、前記音声通信経路の健全性を確認することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記経路制御部は、前記音声通信経路の複数の位置に前記ループ経路を形成させることが可能であり、
前記ループ経路を形成する位置を変化させながら前記トーン信号の送出および検出を繰り返すことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の通信システムにおいて、
前記経路制御部は、前記ループ経路を前記指令卓から近い位置の順に形成させることを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記トーン生成部は、周波数を切り替えながらトーン信号を生成して送出し、
前記トーン検出部による各周波数のトーン信号の検出結果に基づいて、前記音声通信経路の障害状態を絞り込むことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記トーン検出部は、前記トーン信号の周波数とは異なる周波数の信号を検出可能であり、
前記トーン検出部による前記異なる周波数の信号の検出結果を更に考慮して、前記音声通信経路の健全性を確認することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記中央制御装置は、前記指令卓と前記移動局の間で通話が行われていない不通話期間か否かを判定し、前記不通話期間と判定された場合に、前記音声通信経路の健全性の確認を開始させることを特徴とする通信システム。
【請求項7】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記トーン生成部および前記トーン検出部を、前記指令卓が有することを特徴とする通信システム。
【請求項8】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記トーン生成部および前記トーン検出部を、前記中央制御装置が有することを特徴とする通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指令卓と移動局の間を中央制御装置および基地局を介して接続する通話用の音声通信経路を有する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指令卓と移動局の間を中央制御装置および基地局を介して接続する通話用の音声通信経路(音声ライン)を有する通信システムにおいて、音声ラインの健全性の確認が手動で行われている。具体的には、通信システムに不具合などが生じた際に、測定器などを用いて音声ラインの任意の箇所からトーン信号を入力し、トーン信号の折り返し位置を手動で変化させながらトーン信号の検出を実施することで、不具合箇所の絞り込みを行っていた。また、通話システムの導入時や定期点検時には、音声ラインの全パスの検査を行っており、指令卓や基地局の数にもよるが、多大な作業が発生していた。
【0003】
本発明に関連する従来技術として、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、網制御装置に所定の電話回線を閉結させる指令を発して、電話回線からダイヤルトーン信号を受信したか否かを判定することにより、電話回線を通じた通話路の試験を行うようにする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3037718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、通信システムが有する通話用の音声通信経路について、健全性の確認を自動的に実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る通信システムは、以下のように構成される。
すなわち、指令卓と移動局の間を中央制御装置および基地局を介して接続する通話用の音声通信経路を有する通信システムにおいて、トーン信号を生成して指令卓側または移動局側へ送出するトーン生成部と、トーン信号を検出するトーン検出部と、トーン生成部から送出されたトーン信号を音声通信経路の途中で折り返すループ経路の形成および解除を制御する経路制御部とを備え、ループ経路により折り返されたトーン信号のトーン検出部による検出結果に基づいて、音声通信経路の健全性を確認する。
【0007】
ここで、経路制御部は、音声通信経路の複数の位置にループ経路を形成させることが可能であり、ループ経路を形成する位置を変化させながらトーン信号の送出および検出を繰り返すようにしてもよい。このとき、経路制御部は、ループ経路を指令卓から近い位置の順に形成させるようにしてもよい。
【0008】
また、トーン生成部は、周波数を切り替えながらトーン信号を生成して送出し、トーン検出部による各周波数のトーン信号の検出結果に基づいて、音声通信経路の障害状態を絞り込むようにしてもよい。
【0009】
また、トーン検出部は、トーン信号の周波数とは異なる周波数の信号を検出可能であり、トーン検出部による異なる周波数の信号の検出結果を更に考慮して、音声通信経路の健全性を確認するようにしてもよい。
【0010】
また、中央制御装置は、指令卓と移動局の間で通話が行われていない不通話期間か否かを判定し、不通話期間と判定された場合に、音声通信経路の健全性の確認を開始させるようにしてもよい。
【0011】
また、トーン生成部およびトーン検出部は、指令卓が有してもよく、または、中央制御装置が有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信システムが有する通話用の音声通信経路について、健全性の確認を自動的に実施できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
図2図1の通信システムにおけるトーン生成部の構成例を示す図である。
図3図1の通信システムにおけるトーン検出部の構成例を示す図である。
図4A図1の通信システムによる音声健全性確認シーケンスの例を示す図である。
図4B図1の通信システムによる音声健全性確認シーケンスの続きを示す図である。
図5図1の通信システムの拡張例を説明する図である。
図6】本発明の別の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る通信システムについて、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成例を示してある。本例の通信システムは、概略的に、指令卓10と、中央制御装置30と、基地局50と、移動局70とで構成される。
【0015】
指令卓10は、通信システム内の特定の拠点(例えば、監視室)に設置された端末装置である。中央制御装置30は、指令卓10と基地局50を接続すると共に、回線制御などを行って通信システム全体を統括的に制御する装置である。基地局50は、指令卓10と移動局70の間の通話の中継拠点として地上に設置された無線通信設備である。移動局70は、基地局50がカバーする無線通信エリア内の任意の位置で、基地局50との無線通信を介して指令卓10との通話を提供する移動無線端末装置である。
【0016】
本通信システムは、指令卓10と移動局70の間を中央制御装置30および基地局50を介して接続する通話用の音声通信経路(音声ライン)を有する。以下では、指令卓10から移動局70に向かう下り方向の音声通信経路を下り経路とし、その逆の上り方向の音声通信経路を上り経路として区別する。また、図1では、説明の簡略化のために基地局50や移動局70を各1台のみ示しているが、これらは一般に複数台が存在する。通信システムによっては、指令卓10も複数台が存在し得る。
【0017】
指令卓10は、A/D変換部11と、バッファ部12と、バッファ部13と、A/D変換部14と、トーン生成部21と、トーン検出部22とを有する。A/D変換部11は、指令卓10のマイクに入力された通話音声をアナログ信号からデジタル信号に変換し、移動局70へ伝送するために下り経路へ送出する。A/D変換部14は、移動局70から上り経路を介して伝送されてきた通話音声をデジタル信号からアナログ信号に変換し、指令卓10のスピーカから拡声出力する。バッファ部12は、下り経路における中央制御装置30とのインタフェース付近に配置される。バッファ部13は、上り経路における中央制御装置30とのインタフェース付近に配置される。トーン生成部21は、トーン信号を生成して下り経路に出力する。トーン検出部22は、上り経路からトーン信号を検出する。
【0018】
中央制御装置30は、バッファ部31と、エンコーダ部32と、バッファ部33と、IP部34と、バッファ部35と、デコーダ部36と、バッファ部37と、経路診断制御部41とを有する。エンコーダ部32は、指令卓10から受信した下り方向の通話音声を所定の符号化方式で符号化する。デコーダ部36は、基地局50から受信した上り方向の通話音声を符号化方式に対応する復号方式で復号する。IP部34は、基地局50との間でIP通信を行う通信ユニットである。バッファ部31は、下り経路における指令卓10とのインタフェース付近に配置される。バッファ部33は、下り経路におけるエンコーダ部32とIP部34の間に配置される。バッファ部35は、上り経路におけるIP部34とデコーダ部36の間に配置される。バッファ部37は、上り経路における指令卓10とのインタフェース付近に配置される。経路診断制御部41は、後述する音声健全性確認シーケンスの全体的な制御を行って、音声通信経路の健全性を確認する。
【0019】
基地局50は、IP部51と、バッファ部52と、RF部53と、バッファ部54とを有する。IP部51は、中央制御装置30との間でIP通信を行う通信ユニットである。RF部53は、移動局70との無線通信を行う通信ユニットである。バッファ部52は、下り経路におけるIP部51とRF部53の間に配置される。バッファ部54は、上り経路におけるRF部53とIP部51との間に配置される。
【0020】
指令卓10内のバッファ部12とバッファ部13の間には、これらを配線接続または切断する配線切替回路を有する。バッファ部12とバッファ部13を配線接続することで、下り経路を進むトーン信号を途中で折り返して上り経路にショートカットさせるループ経路R1を形成できる。また、バッファ部12とバッファ部13の配線接続を切断することで、ループ経路R1を解除できる。
【0021】
中央制御装置30内のバッファ部31とバッファ部37の間、中央制御装置30内のバッファ部33とバッファ部35の間、基地局50内のバッファ部52とバッファ部54の間も同様であり、各々の位置でループ経路R2、R3、R4の形成または解除を行うことができる。なお、上述した各バッファ部の位置、すなわち、ループ経路を形成する位置は例示に過ぎず、音声通信経路内の任意の位置にループ経路を形成または解除することが可能である。
【0022】
指令卓10内のトーン生成部21およびトーン検出部22について、図2図3を参照して説明する。トーン生成部21は、図2に示すように、n個の周波数送出回路23(すなわち、周波数1送出回路23-1~周波数n送出回路23-n)と、周波数合成部24とを有する。各周波数送出回路23は、それぞれ異なる周波数のトーン信号を生成するように構成されている。これら周波数は、例えば、通話の際に使用される周波数帯をカバーするように設定される。各周波数送出回路23はスイッチ回路を有しており、いずれか1つの周波数送出回路のみがトーン信号を出力し、他の周波数送出回路はトーン信号の出力を停止するように制御される。周波数合成部24は、各周波数送出回路23の出力を合成することで、選択された周波数送出回路23により生成されたトーン信号を下り経路へ出力する。これにより、トーン生成部21は、出力するトーン信号の周波数を任意に切り替えることが可能となる。本例のトーン生成部21は、周波数1~周波数nをループするトーン信号を生成する。
【0023】
トーン検出部22は、図3に示すように、n個の周波数検波回路25(すなわち、周波数1検波回路25-1~周波数n検波回路25-n)を有する。各周波数検波回路25には、上り経路を伝搬する信号が分岐して入力される。各周波数検波回路25は、トーン生成部21の周波数送出回路23の出力周波数に対応させて、それぞれ異なる周波数を選択的に通過させるBPF(Band-Pass Filter)を有している。各周波数検波回路25は、BPFを用いて所望の周波数成分を抽出し、全波整流した後に、その信号レベルを所定の閾値と比較し、閾値以上である場合に、その周波数のトーン信号が検出されたことを示すトーン検出信号DETを出力する。これにより、トーン検出部22は、トーン生成部21により出力された各周波数のトーン信号を個別に検出することが可能となる。
【0024】
中央制御装置30内の経路診断制御部41は、上述したループ経路の形成または解除の制御を行う。また、経路診断制御部41は、トーン生成部21に対してトーン信号の送出を指示すると共にトーン検出部22によるトーン信号の検出結果を受信し、トーン信号の検出結果に基づいて、音声通信経路の健全性を確認する。音声通信経路に障害がある場合には、障害部位の絞り込みや障害状態の絞り込みも行う。経路診断制御部41による音声通信経路の健全性の確認結果は、所定の方式で出力される。例えば、中央制御装置30と通信可能に接続された表示端末により表示出力される。経路診断制御部41による上記の動作は、音声通信経路とは別の通信経路を用いて実施される。
【0025】
図1の通信システムにおける音声健全性確認シーケンスについて、図4Aおよび図4Bを参照して説明する。音声健全性確認シーケンスは、非通話時や保守時に自動的に開始することを想定している。非通話時か否かは、例えば、中央制御装置30が管理する通話情報を参照することで、判断することができる。また、保守時か否かは、例えば、事前設定された保守予定情報に基づいて、判断することができる。なお、ユーザによる手動の指示により、音声健全性確認シーケンスを開始してもよい。
【0026】
本例では、中央処理装置30内の経路診断制御部41は、指令卓10と移動局70の間での通話状況を確認して、通話が行われていない不通話期間か否かを判定する(ステップS11)。そして、不通話期間と判定された場合に、音声健全性確認シーケンスを開始する。音声健全性確認シーケンスは、ループ経路を指令卓10から近い位置の順(つまり、ループ経路R1、R2、R3、R4の順)に形成しながら、各ループ経路に対して実施される。
【0027】
経路診断制御部41はまず、ループ経路R1の確認(ステップS12)を開始し、ループ形成指示およびトーン送出指示を指令卓10に送信する。指令卓10は、ループ形成指示およびトーン送出指示に従って、指令卓10内にループ経路R1を形成し(ステップS13)、トーン生成部21によりトーン信号を生成して下り経路に出力する(ステップS14)。このトーン信号は、指令卓10内のループ経路R1によって下り経路から上り経路に折り返されて、トーン検出部22により検出される(ステップS15)。
【0028】
指令卓10は、トーン信号が検出された旨を示す検出結果通知を経路診断制御部41へ送信する。経路診断制御部41は、指令卓10からの検出結果通知を参照し、ループ経路R1までの音声通信経路は問題ないと判定する(ステップS16)。なお、指令卓10内のループ経路R1は、形成から一定時間が経過した後に、自動的に解除される。
【0029】
次に、経路診断制御部41は、ループ経路R2の確認(ステップS17)を開始し、トーン送出指示を指令卓10に送信すると共に、中央処理装置30内にループ経路R2を形成する(ステップS18)。指令卓10は、トーン送出指示に従って、トーン生成部21によりトーン信号を生成して下り経路に出力する(ステップS19)。このトーン信号は、指令卓10から中央制御装置30へ伝送され、中央処理装置30内のループ経路R2によって下り経路から上り経路に折り返され、中央制御装置30から指令卓10へ伝送されて、トーン検出部22により検出される(ステップS20)。
【0030】
指令卓10は、トーン信号が検出された旨を示す検出結果通知を経路診断制御部41へ送信する。経路診断制御部41は、指令卓10からの検出結果通知を参照し、ループ経路R2までの音声通信経路は問題ないと判定する(ステップS21)。なお、中央処理装置30内のループ経路R2は、形成から一定時間が経過した後に、自動的に解除される。
【0031】
次に、経路診断制御部41は、ループ経路R3の確認(ステップS22)を開始し、トーン送出指示を指令卓10に送信すると共に、中央処理装置30内にループ経路R3を形成する(ステップS23)。指令卓10は、トーン送出指示に従って、トーン生成部21によりトーン信号を生成して下り経路に出力する(ステップS24)。このトーン信号は、指令卓10から中央制御装置30へ伝送され、中央処理装置30内のループ経路R3によって下り経路から上り経路に折り返され、中央制御装置30から指令卓10へ伝送されて、トーン検出部22により検出される(ステップS25)。
【0032】
指令卓10は、トーン信号が検出された旨を示す検出結果通知を経路診断制御部41へ送信する。経路診断制御部41は、指令卓10からの検出結果通知を参照し、ループ経路R3までの音声通信経路は問題ないと判定する(ステップS26)。なお、中央処理装置30内のループ経路R3は、形成から一定時間が経過した後に、自動的に解除される。
【0033】
次に、経路診断制御部41は、ループ経路R4の確認(ステップS27)を開始し、トーン送出指示を基地局50に送信する。基地局50は、ループ形成指示に従って、基地局50内にループ経路R4を形成し(ステップS28)、ループ形成が完了した旨を示すループ形成通知を中央制御装置30へ送信する。経路診断制御部41は、基地局50からのループ形成通知を受信した後に、トーン送出指示を指令卓10に送信する。指令卓10は、トーン送出指示に従って、トーン生成部21によりトーン信号を生成して下り経路に出力する(ステップS29)。
【0034】
このトーン信号は、本来であれば、指令卓10から中央制御装置30を介して基地局50へ伝送され、基地局50内のループ経路R4によって下り経路から上り経路に折り返され、基地局50から中央制御装置30を介して指令卓10へ伝送されて、トーン検出部22により検出される。しかしながら、基地局50内の音声通信経路に障害がある場合には、トーン生成部21によるトーン信号の送出から一定時間が経過しても、トーン検出部22でトーン信号を検出できない。つまり、トーン検出部22によるトーン信号の検出に失敗する(ステップS30)。
【0035】
この場合、指令卓10は、トーン信号の検出に失敗した旨を示す検出結果通知を経路診断制御部41へ送信する。経路診断制御部41は、指令卓10からの検出結果通知に基づき、ループ経路R3とループ経路R4の間の音声通信経路に障害があると判定する(ステップS31)。なお、基地局50内のループ経路R4は、形成から一定時間が経過した後に、自動的に解除される。
【0036】
ここで、上記の説明では、ループ経路の解除を各装置が自動的に行っているが、経路診断制御部41がループ経路を指定したループ解除指示を送信するようにし、これを各装置が受信した際に、指定されたループ経路を解除するようにしてもよい。また、トーン検出部22におけるトーン信号の検出の待ち時間は、各ループ経路で共通であってもよく、トーン生成部21やトーン検出部22からループ経路までの距離が大きいほど長くしてもよく、トーン信号の折り返しに必要な時間が確保されればよい。また、上記の説明では、指令卓10や基地局50の台数を考慮していないが、指令卓10や基地局50の台数に応じて、音声健全性確認シーケンスの所要ステップが繰り返されることは言うまでもない。
【0037】
以上のように、本例の通信システムは、指令卓10と移動局70の間を中央制御装置30および基地局50を介して接続する通話用の音声通信経路の健全性を確認するための仕組みとして、指令卓10が、トーン信号を生成して移動局側(下り方向)へ送出するトーン生成部21と、トーン信号を検出するトーン検出部22とを備え、中央制御装置30が、トーン生成部21から送出されたトーン信号を音声通信経路の途中で指令卓側(上り方向)へ折り返すループ経路の形成および解除を制御する経路診断制御部41とを備えている。そして、ループ経路により折り返されたトーン信号のトーン検出部22による検出結果に基づいて、音声通信経路の健全性を確認するように構成されている。このような構成により、通信システムが有する通話用の音声通信経路について、健全性の確認を自動的に実施できるようになる。
【0038】
また、経路診断制御部41は、音声通信経路の複数の位置にループ経路を形成させることが可能であり、ループ経路を形成する位置を変化させながらトーン信号の送出および検出を繰り返すように構成されている。これにより、音声通信経路に障害があるか否かを判定できるだけでなく、音声通信経路の障害部位がどのあたりかを絞り込むことも可能である。また、経路診断制御部41は、ループ経路を指令卓10から近い位置の順に形成させるように構成されている。これにより、音声通信経路の障害部位を効率的に絞り込むことが可能である。
【0039】
また、トーン生成部21は、周波数を切り替えながらトーン信号を生成して送出し、トーン検出部22は、各周波数のトーン信号を検出できるように構成されている。これにより、通話の際に使用される周波数帯の一部に問題がある場合に、どの周波数に問題があるかを特定することが可能である。
【0040】
次に、図1に示した通信システムの拡張例について説明する。本例では、音声通信経路にLPF(Low-Pass Filter)が実装されていることを前提とする。また、トーン生成部21の出力周波数およびトーン検出部22の検波周波数として、周波数1~周波数nが設定される。周波数番号が小さいほど低い周波数で、周波数番号が上がるほど高い周波数となっている。なお、周波数nは、LPFでフィルタリングされる高周波であるものとする。
【0041】
本拡張例に関し、図5には、各種障害状態におけるトーン生成部21のトーン送信条件およびトーン検出部22の検波状態の一例を表形式で示してある。図5の表において、障害状態「正常」「経路断」「LPF特性劣化」については、トーン生成部21のトーン送信条件として、周波数1~周波数nを全て送信することとする。また、障害状態「異音」については、トーン生成部21のトーン送信条件として、周波数1~周波数nを全て送信しないこととする。
【0042】
障害状態が「正常」の場合、周波数1~周波数n-1までループしたトーン信号を検出できるが、LPFでフィルタリングされる周波数nのみ検波されない。つまり、周波数1~周波数n-1のトーン信号の送出に対し、周波数1~周波数n-1までを検出し、LPFで除去される周波数nのみ検出できない場合に、「正常」と判定される。
【0043】
障害状態が「経路断」の場合、周波数1~周波数nまでループしたトーン信号を検出できない。つまり、周波数1~周波数n-1のトーン信号の送出に対し、周波数1~周波数nまでの全てで検出できない場合に、「経路断」と判定される。
【0044】
障害状態が「LPF特性劣化」の場合、周波数1~周波数n-1までループしたトーン信号を検出でき、更に、本来はLPFでフィルタリングされる周波数nも検波できてしまう。つまり、周波数1~周波数n-1のトーン信号の送出に対し、周波数1~周波数n-1だけでなく、LPFで除去されるはずの周波数nも検出できた場合に、「LPF特性劣化」と判定される。
【0045】
障害状態が「異音」の場合、トーン生成部21からトーン信号が送出されないため、本来はトーン検出部22ではいずれの周波数も検波できないが、図5の表では周波数3や周波数nが検波されている。図5の表は一例であり、トーン信号を停止した状態であるにもかかわらず、いずれかの周波数が検波された場合に、「異音」と判定される。
【0046】
このように、上記の拡張例によれば、音声通信経路の障害部位の絞り込みだけでなく、音声通信経路の障害状態を絞り込むことが可能である。なお、これまでの説明では、トーン生成部21の出力周波数とトーン検出部22の検波周波数を一致させているが、トーン検出部22の検波周波数をトーン生成部21の出力周波数より広くしてもよい。これにより、LPFの実装がないようなシステム構成において、トーン生成部21の出力周波数以外の周波数(すなわち、本来は検出されないはずの周波数)が検出された場合に、音声通信経路の異常と判断することが可能である。
【0047】
次に、図1に示した通信システムの変形例について、図6を参照して説明する。図6に示す変形例では、図1の指令卓10内のトーン生成部21およびトーン検出部22に代えて、中央制御装置30内にトーン生成部42,44およびトーン検出部43,45を設けてある。
【0048】
トーン生成部42およびトーン検出部43は、それらの位置よりも上流側の音声通信経路の健全性を確認するためのものである。トーン生成部42は、トーン信号を生成して上り経路に出力する。トーン検出部43は、ループ経路R1またはループ経路R2を介して折り返されたトーン信号を下り経路から検出する。
【0049】
トーン生成部44およびトーン検出部45は、それらの位置よりも下流側の音声通信経路の健全性を確認するためのものである。トーン生成部44は、トーン信号を生成して下り経路に出力する。トーン検出部45は、ループ経路R3またはループ経路R3を介して折り返されたトーン信号を上り経路から検出する。
【0050】
以上のように、変形例の通信システムは、指令卓10と移動局70の間を中央制御装置30および基地局50を介して接続する通話用の音声通信経路の健全性を確認するための仕組みとして、中央制御装置30が、トーン信号を生成して指令卓側(上り方向)または移動局側(下り方向)へ送出するトーン生成部42,44と、トーン信号を検出するトーン検出部43,45とを備え、中央制御装置30が、トーン生成部42,44から送出されたトーン信号を音声通信経路の途中で指令卓側(上り方向)または移動局側(下り方向)へ折り返すループ経路の形成および解除を制御する経路診断制御部41とを備えている。そして、ループ経路により折り返されたトーン信号のトーン検出部43,45による検出結果に基づいて、音声通信経路の健全性を確認するように構成されている。このような構成によっても、通信システムが有する通話用の音声通信経路について、健全性の確認を自動的に実施できるようになる。
【0051】
なお、これまでの説明では、指令卓10や中央制御装置30が、トーン生成部およびトーン検出部を備えているが、基地局50がトーン生成部およびトーン検出部を備えても構わない。また、音声通信経路の途中に別の装置を介在させ、この別の装置がトーン生成部およびトーン検出部を備えてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、指令卓と移動局の間を中央制御装置および基地局を介して接続する音声通信経路を有する通信システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10:指令卓、 11,14:A/D変換部、 12,13:バッファ部、 21:トーン生成部、 22:トーン検出部、 23-1~23-n:周波数送出回路、 24:周波数合成部、 25-1~25-n: 周波数検波回路、 30:中央制御装置、 31,33,35,37:バッファ部、 32:エンコーダ部、 34:IP部、 36:デコーダ部、 41:経路診断制御部、 42,44:トーン生成部、 43,45:トーン検出部、 50:基地局、 51:IP部、 52,54:バッファ部、 53:RF部、 70:移動局

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6