(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096464
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240705BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652N
H01L29/78 652F
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078283
(22)【出願日】2024-05-13
(62)【分割の表示】P 2022161120の分割
【原出願日】2018-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇介
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
(57)【要約】
【課題】ゲートパッド部の横方向の電圧降下を抑制し、少数キャリア(正孔)の注入を抑制し、大電流でもボディダイオードがオンしないようにできる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1導電型の半導体基板1のおもて面に設けられた第1導電型の第1半導体層2と、第2導電型の第2半導体層3と、第1導電型の第1半導体領域7と、を備える。また、半導体装置は、ゲート電極10が、複数のトレンチのうちの一部の第1トレンチ18の内部にゲート絶縁膜を介して設けられ、導電層15が、複数のトレンチのうちの、第1トレンチ以外の第2トレンチ19の内部に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面視でゲート電極パッド方向に延びる第1トレンチおよび第2トレンチと、
少なくとも一部が前記第1トレンチおよび前記第2トレンチの上方に設けられたソース電極部と、
ゲート電極パッドを含むゲートパッド部と、
前記第1トレンチの内部に埋め込まれる第1埋込部と前記第1トレンチの上方に突出して設けられた突出部とを含むゲート電極と、
前記第2トレンチの内部に埋め込まれる第2埋込部を含む導電層と、
を備え、
前記ソース電極部は、上面視で前記突出部と前記ゲート電極パッドとの間に設けられる第1のソース電極接続部と、上面視で前記第1のソース電極接続部との間に前記突出部を挟む第2のソース電極接続部と、を含み、
前記第2トレンチは、前記導電層が前記第1のソース電極接続部に接続する第1のソース接続トレンチを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1のソース接続トレンチは、前記ゲート電極パッドの下方に延びていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2トレンチは、前記導電層が前記第2のソース電極接続部に接続する第2のソース接続トレンチを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
上面視で前記第1のソース接続トレンチの少なくとも一部が前記ゲート電極パッド方向において前記第1トレンチと対向して配置されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
上面視で、前記突出部は前記ゲート電極パッド方向と直交する第2方向に延びる部分を有することを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記突出部は、前記第1トレンチの上方から、前記ゲート電極パッド方向における前記第1埋込部の外側に向かって設けられていることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2のソース接続トレンチは、隣り合う前記第1トレンチ間に、前記第1トレンチと平行かつ前記第1トレンチと離れて配置されていることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
当該半導体装置は、炭化珪素半導体基体を含んで構成され、
前記ゲート電極の前記第1埋込部は、ゲート絶縁膜を介して前記炭化珪素半導体基体に接し、
前記導電層の前記第2埋込部は、前記炭化珪素半導体基体の少なくとも一部に接していることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記炭化珪素半導体基体は、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の上方に設けられる第2導電型のベース層と、
前記ベース層の表面側に選択的に設けられる、前記ベース層よりも不純物濃度の高い第2導電型の高濃度コンタクト領域と、
前記ベース層の表面側に選択的に設けられる、前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型の高濃度ソース領域と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2のソース接続トレンチの内部に埋め込まれる前記第2埋込部は、前記高濃度コンタクト領域の少なくとも一部に接していることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記炭化珪素半導体基体は、前記ベース層の表面側であって、前記第1のソース電極接続部の下に選択的に設けられる前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型の高濃度領域を含むことを特徴とする請求項9または10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記炭化珪素半導体基体は、前記第1トレンチまたは前記第2トレンチの下に設けられる第2導電型のトレンチ下ベース層を含むことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ソース電極部は、ソース電極パッドを含み、
前記第1のソース電極接続部は、前記第1のソース接続トレンチの前記導電層を当該ソース電極部に電気的に接続するソースコンタクト部であり、
前記第2のソース電極接続部は、前記第2のソース接続トレンチの前記導電層を当該ソース電極部に電気的に接続するソース電極であることを特徴とする請求項3から12のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワー半導体素子においては、素子のオン抵抗の低減を図るため、トレンチ構造を有する縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が作製(製造)されている。縦型MOSFETでは、チャネルが基板表面に対して平行に形成されるプレーナ構造よりも基板表面に対して垂直に形成されるトレンチ構造の方が単位面積当たりのセル密度を増やすことができるため、単位面積当たりの電流密度を増やすことができ、コスト面から有利である。
【0003】
トレンチゲート構造は、炭化珪素からなる半導体基体(以下、炭化珪素基体とする)に形成したトレンチ内にMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)を埋め込んで、トレンチ側壁に沿った部分をチャネル(反転層)として利用した3次元構造である。このため、同じオン抵抗(Ron)の素子同士で比べた場合、トレンチゲート構造は、炭化珪素基体上に平板状にMOSゲートを設けたプレーナゲート構造よりも素子面積(チップ面積)を圧倒的に小さくすることができ、将来有望なデバイス構造といえる。
【0004】
トレンチ型MOSFETにおいて、隣り合うゲートトレンチ間にショットキーダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)用トレンチを形成し、トレンチ側面にショットキー接合を形成した構造がある。
図13は、従来のSBD内臓トレンチ型炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
図13において、中央に記載した省略破線の左側は、素子構造が形成されオン時に電流の流れる活性部21の構成を示し、中央に記載した省略破線の右側は、ゲートパッド部20の構成を示す。
【0005】
図13に示すように、従来のトレンチ型炭化珪素半導体装置は、活性部21において、n型炭化珪素基板1のおもて面に、トレンチ型のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造と、トレンチ型SBDを埋め込んだコンタクトトレンチ19と、を備える。活性部21とは、オン時に流れる電流を担う領域である。具体的には、n型炭化珪素基板1は、ドレイン層であるn型炭化珪素基板1上にn
-型ドリフト層2となるn
-型層をエピタキシャル成長させてなる。n型炭化珪素基板1のおもて面(n
-型ドリフト層2側の面)側に、p型ベース層6、n
+型ソース領域7、p
+型コンタクト領域8、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10からなるMOSゲート構造が設けられている。
【0006】
ゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19の底部においてゲート絶縁膜9にかかる電界を緩和するため、p+型ベース領域3が設けられている。メサ部には、ゲートトレンチ18と同程度の深さでコンタクトトレンチ19が設けられている。
【0007】
n+型ソース領域7は、隣り合うゲートトレンチ18とコンタクトトレンチ19との間において、p型ベース層6の内部に選択的に設けられている。n+型ソース領域7と、コンタクトトレンチ19の内壁に露出するp型ベース層6とは、層間絶縁膜11を深さ方向に貫通するコンタクトホールに露出されている。n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8にオーミックコンタクトするソース電極13とコンタクトトレンチ19に埋め込まれたショットキー電極15に接触するようにコンタクトホールを介しておもて面電極としてソース電極パッド14が設けられ、p型ベース層6およびn+型ソース領域7に接する。n型炭化珪素基板1の裏面(n-型ドリフト層2と反対の面)には、裏面電極としてドレイン電極(不図示)が設けられている。
【0008】
ゲートパッド部20は、ゲート電極10と電気的に接続されるゲート電極パッド17が設けられる部分であり、ゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19等の素子構造が形成されていない。
図13に示すように、オン時に電流Sはドレイン電極側から活性部21のソース電極13側に流れる。
【0009】
このような構造のトレンチ型MOSFETの内蔵SBDでは、MOSFETとドリフト領域を共用できるため外付けSBDとMOSFETとを合わせたチップ面積より小さくできる。また、外付けSBDの場合は、SBDのVF(順電圧)がMOSFETのp型ベース層6とn-型ドリフト層2とで形成されるボディダイオードのビルトイン電圧以上になると、ボディダイオードがオンになり、ボディダイオードのバイポーラ動作により経時的に特性が変化(経年劣化)し、信頼性が低減する。
【0010】
一方、内蔵SBDでは、外付けSBDのカソードに相当するMOSFETのドレインの電圧がボディダイオードのビルトイン電圧以上になってもボディダイオードを構成するpn接合付近の電位差は、ドリフト領域で電圧を保持するため低くなっており、ボディダイオードに電流が流れ難い。このため大電流までボディダイオードに電流が流れず、バイポーラ動作による劣化を起こしにくい。
【0011】
また、ゲートパッド部の破壊を防止するため、素子部が、ゲートトレンチよりも深く形成されている複数の第1保護トレンチと第1埋込層とを有する第1トレンチ構造を有し、ゲートパッド部が、複数の第2保護トレンチと、ショットキー接触を形成する金属層からなり、ソース電極層と電気的に接続されている第2埋込層とを有する第2トレンチ構造を有する半導体装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2016/006696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、ゲートパッド部20では、耐圧を確保するため通常p型領域(p+型ベース領域3、p型ベース層6)が形成される。これらのp型領域は、活性部21のp型領域と比較して面積が広いため、広がり抵抗による横方向の電圧降下が起こる。これにより、p型領域とn-型ドリフト層からなるpn接合が順方向にバイアスされた場合、少数キャリア(正孔)が注入され、ゲートパッド部20では比較的小さな電流密度でもボディダイオードに電流が流れる。このように、ゲートパッド部20のボディダイオードは、バイポーラ動作により経時的に特性が変化し、信頼性が低下するという課題がある。
【0014】
この発明は、上述した課題を解消するため、ゲートパッド部の横方向の電圧降下を抑制し、少数キャリア(正孔)の注入を抑制し、大電流でもボディダイオードがオンしないようにできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。上面視でゲート電極パッド方向に延びる第1トレンチおよび第2トレンチと、少なくとも一部が前記第1トレンチおよび前記第2トレンチの上方に設けられたソース電極部と、ゲート電極パッドを含むゲートパッド部と、前記第1トレンチの内部に埋め込まれる第1埋込部と前記第1トレンチの上方に突出して設けられた突出部とを含むゲート電極と、前記第2トレンチの内部に埋め込まれる第2埋込部を含む導電層と、を備える。前記ソース電極部は、上面視で前記突出部と前記ゲート電極パッドとの間に設けられる第1のソース電極接続部と、上面視で前記第1のソース電極接続部との間に前記突出部を挟む第2のソース電極接続部と、を含む。前記第2トレンチは、前記導電層が前記第1のソース電極接続部に接続する第1のソース接続トレンチを含む。
【0016】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第1のソース接続トレンチは、前記ゲート電極パッドの下方に延びていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2トレンチは、前記導電層が前記第2のソース電極接続部に接続する第2のソース接続トレンチを含むことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、上面視で前記第1のソース接続トレンチの少なくとも一部が前記ゲート電極パッド方向において前記第1トレンチと対向して配置されていることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、上面視で、前記突出部は前記ゲート電極パッド方向と直交する第2方向に延びる部分を有することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記突出部は、前記第1トレンチの上方から、前記ゲート電極パッド方向における前記第1埋込部の外側に向かって設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2のソース接続トレンチは、隣り合う前記第1トレンチ間に、前記第1トレンチと平行かつ前記第1トレンチと離れて配置されていることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、当該半導体装置は、炭化珪素半導体基体を含んで構成され、前記ゲート電極の前記第1埋込部は、ゲート絶縁膜を介して前記炭化珪素半導体基体に接し、前記導電層の前記第2埋込部は、前記炭化珪素半導体基体の少なくとも一部に接していることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記炭化珪素半導体基体は、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層の上方に設けられる第2導電型のベース層と、前記ベース層の表面側に選択的に設けられる、前記ベース層よりも不純物濃度の高い第2導電型の高濃度コンタクト領域と、前記ベース層の表面側に選択的に設けられる、前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型の高濃度ソース領域と、を含むことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2のソース接続トレンチの内部に埋め込まれる前記第2埋込部は、前記高濃度コンタクト領域の少なくとも一部に接していることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記炭化珪素半導体基体は、前記ベース層の表面側であって、前記第1のソース電極接続部の下に選択的に設けられる前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型の高濃度領域を含むことを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記炭化珪素半導体基体は、前記第1トレンチまたは前記第2トレンチの下に設けられる第2導電型のトレンチ下ベース層を含むことを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ソース電極部は、ソース電極パッドを含み、前記第1のソース電極接続部は、前記第1のソース接続トレンチの前記導電層を当該ソース電極部に電気的に接続するソースコンタクト部であり、前記第2のソース電極接続部は、前記第2のソース接続トレンチの前記導電層を当該ソース電極部に電気的に接続するソース電極であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる半導体装置によれば、ゲートパッド部の横方向の電圧降下を抑制し、少数キャリア(正孔)の注入を抑制し、大電流でもボディダイオードがオンしないようにできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す
図3のY-Y’断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す
図3のX-X’断面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す上面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す
図3のA部拡大図である。
【
図5】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の
図3のY-Y’断面における電流の流れを示す図である。
【
図6】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である(その1)。
【
図7】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である(その2)。
【
図8】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である(その3)。
【
図9】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である(その4)。
【
図10】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である(その5)。
【
図11】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド部の構成を示す断面図である。
【
図12】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド部の他の構成を示す断面図である。
【
図13】従来のSBD内臓トレンチ型炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および-を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
(実施の形態1)
本発明にかかる半導体装置は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態1においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製された炭化珪素半導体装置について、MOSFETを例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す
図3のY-Y’断面図である。
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す
図3のX-X’断面図である。
図3は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す上面図である。
【0032】
図1に示す実施の形態1にかかる半導体装置は、活性部21において、半導体基体(半導体チップ)のおもて面側に、ゲートトレンチ(第1トレンチ)18と、コンタクトトレンチ(第2トレンチ)19と、を備えたトレンチ型SiC-MOSFETである。活性部21とは、オン状態のときに電流が流れる領域である。ゲートトレンチ18とは、ゲート絶縁膜9を介してゲート電極10が埋め込まれたトレンチである。コンタクトトレンチ19とは、後述する導電層15によるショットキー接合を有するSBDを埋め込んだトレンチである。
【0033】
具体的には、
図1、
図2に示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、n型炭化珪素基板(第1導電型の半導体基板)1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)、にn
-型ドリフト層(第1導電型の第1半導体層)2が堆積されている。
【0034】
n型炭化珪素基板1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。n-型ドリフト層2は、n型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている低濃度n型ドリフト層である。n-型ドリフト層2の、n型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面は、n型高濃度領域5が形成されている。n型高濃度領域5は、n型炭化珪素基板1よりも低くn-型ドリフト層2よりも高い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている高濃度n型ドリフト層である。以下、n型炭化珪素基板1とn-型ドリフト層2と後述するp型ベース層(第2導電型の第2半導体層)6とを併せて炭化珪素半導体基体とする。
【0035】
また、n型炭化珪素基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体の裏面)には、裏面電極(不図示)が設けられている。裏面電極は、ドレイン電極を構成する。
【0036】
炭化珪素半導体基体の第1主面側(p型ベース層6側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、ゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19は、p型ベース層6のn型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面からp型ベース層6を貫通してn-型ドリフト層2に達する。ゲートトレンチ18の内壁に沿って、ゲートトレンチ18の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、ゲートトレンチ18内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極10が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極10が、n-型ドリフト層2およびp型ベース層6と絶縁されている。ゲート電極10の一部は、ゲートトレンチ18の上方(ソース電極パッド14側)からゲート電極パッド17側に突出してもよい。
【0037】
コンタクトトレンチ19は、活性部21では、隣り合うゲートトレンチ18間に、ゲートトレンチ18に平行に、かつゲートトレンチ18と離して、X-X’方向に延びるストライプ状の平面レイアウトに配置されている。例えば、すべてのメサ部にコンタクトトレンチ19を配置する場合、ゲートトレンチ18およびコンタクトトレンチ19は、X-X’方向と直交するY-Y’方向に互いに離して交互に繰り返し配置される。コンタクトトレンチ19は、炭化珪素半導体基体の第1主面側からp型ベース層6を貫通してn-型ドリフト層2に達する。コンタクトトレンチ19の深さは、ゲートトレンチ18の深さと同等程度である。
【0038】
n-型ドリフト層2のn型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面層には、p+型ベース領域3が選択的に設けられている。p+型ベース領域3は、ゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19の下に形成されており、p+型ベース領域3の幅はゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19の幅よりも広い。p+型ベース領域3は、例えばアルミニウムがドーピングされている。また、p+型ベース領域3は、p型ベース層6と離れて設けられる。なお、ゲートトレンチ18及びコンタクトトレンチ19下のp+型ベース領域3は図示しない場所で互いに接続されていてもよい。また、高濃度n型ドリフト層5はp+型ベース領域3より深い位置まで形成されていてもよい。
【0039】
n-型ドリフト層2の基体第1主面側には、p型ベース層6が設けられている。p型ベース層6の内部には、基体第1主面側にn+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7およびp+型コンタクト領域8が選択的に設けられている。n+型ソース領域7はゲートトレンチ18に接している。また、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8は互いに接する。
【0040】
図1では、2つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0041】
層間絶縁膜11は、炭化珪素半導体基体の第1主面側の全面に、ゲートトレンチ18に埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。また、ゲートパッド部20において、層間絶縁膜11は、コンタクトトレンチ19に埋め込まれた導電層15を覆うように設けられている。ソース電極(第1電極)13は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8に接する。ソース電極13は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極13上には、ソース電極パッド14が設けられている。ソース電極13と層間絶縁膜11との間に、例えばソース電極13からゲート電極10側への金属原子の拡散を防止するTi又はTiN等を単層又は積層としたバリアメタル12が設けられている。
【0042】
炭化珪素半導体基体おもて面およびコンタクトトレンチ19の内壁に沿って、例えばTiシリサイド(TiSi)からなる導電層15が設けられている。導電層15は、異なる材料による電極を積層している構成としてもよい。導電層15は、ソース電極13とともにおもて面電極として機能する。導電層15は、炭化珪素半導体基体おもて面からコンタクトトレンチ19の側壁にわたってp+型コンタクト領域8に接する。
【0043】
また、導電層15は、コンタクトトレンチ19の底部からコーナー部の全面にわたってp+型ベース領域3に接する。導電層15は、コンタクトトレンチ19の側壁においてn型高濃度領域5に接し、n型高濃度領域5とのショットキー接合を形成する。これにより、コンタクトトレンチ19内の導電層15と、n型高濃度領域5とからなるショットキーバリアダイオードが形成される。なお、n型高濃度領域5を設けない場合は、コンタクトトレンチ19の側壁においてn-型ドリフト層2とのショットキー接合が形成され、コンタクトトレンチ19内の導電層15と、n-型ドリフト層2とからなるショットキーバリアダイオードが形成される。
【0044】
ゲートパッド部20に、ゲート電極10と電気的に接続するゲート電極パッド17が設けられる。ゲート電極パッド17は、層間絶縁膜11によって、導電層15と電気的に絶縁されている。
【0045】
コンタクトトレンチ19は、ゲートパッド部20にも設けられている。ゲートパッド部20では、導電層15はゲートパッド部20の周辺部でソース電極13に接続する。ゲートパッド部20の周辺部とは、ゲートパッド部20の活性部21との境界の部分である。また、ゲートパッド部20の中央部に例えば部分的にゲート電極10がない部分B(
図3参照)を設けて、その内部でゲート電極パッド17下のSBDのアノード電極とソース電極13を接続するソースコンタクト部24を設けてもよい。
【0046】
図4は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す
図3のA部拡大図である。
図4に示すように、ソースコンタクト部24の下(n型炭化珪素基板1側)にオーミックコンタクトのため、n
+型領域25を設けることが好ましい。また、
図1、
図4では、ゲートパッド部20のp
+型ベース領域3間の間隔W1は、活性部21のコンタクトトレンチ19の底面を覆うp
+型ベース領域3とゲートトレンチ18の底面を覆うp
+型ベース領域3との間隔W2と同様の幅となっている。ただし、例えば、ゲートパッド部20のコンタクトトレンチ19間の間隔を狭くすることにより、間隔W1を間隔W2より狭くしてもよい。これは、活性部21はMOS構造が設けられており、間隔W2を狭くすると、電流が通る領域が狭くなりオン抵抗が増加するため、間隔W2を狭くすることができない。一方、ゲートパッド部20では、SBDが導通する場合、pn接合が順バイアスであることにより空乏層が縮むため狭くすることができる。
【0047】
図5は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の
図3のY-Y’断面におけるpn接合順バイアス時の電流の流れを示す図である。ゲートパッド部20に活性部21と同様にSBDを設けることで、
図5のようにゲートパッド部20下でもSBD電流S1を流すことができ、この電流によりゲートパッド部20下の横方向の電圧降下を抑制し、少数キャリア(正孔)の注入を抑制することができる。
【0048】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図6~
図10は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。
【0049】
まず、n型の炭化珪素でできたn型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn型炭化珪素基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子をドーピングしながら炭化珪素でできたn
-型ドリフト層2を、エピタキシャル成長させる。ここまでの状態が
図6に示されている。
【0050】
次に、n-型ドリフト層2の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、p+型ベース領域3を形成する。
【0051】
次に、n-型ドリフト層2の表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした、n型高濃度領域5の一部である下部n型高濃度領域を形成する。次にn型エピタキシャル層を形成する。
【0052】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、n
-型ドリフト層2の表面領域の一部に、上部n型高濃度領域を設ける。この上部n型高濃度領域と下部n型高濃度領域は少なくとも一部が接するように形成され、n型高濃度領域5を形成する。ただし、このn型高濃度領域5が基板全面に形成される場合と、形成されない場合がある。ここまでの状態が
図7に示されている。
【0053】
次に、n
-型ドリフト層2の表面上に、アルミニウム等のp型不純物をドーピングしたp型ベース層6をエピ成長により形成する。次に、p型ベース層6および露出したn
-型ドリフト層2の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部にリン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型ベース層6の表面の一部にn
+型ソース領域7を形成する。n
+型ソース領域7の不純物濃度は、n型高濃度領域5の不純物濃度より高くなるように設定する。次に、n
+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p型ベース層6の表面の一部にアルミニウム等のp型の不純物をイオン注入し、p
+型コンタクト領域8を設ける。p
+型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型ベース層6の不純物濃度より高くなるように設定する。ここまでの状態が
図8に示されている。なお、p型ベース層6はエピ成長ではなくアルミニウム等のp型不純物をイオン注入することにより形成してもよい。
【0054】
次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、p+型ベース領域3、n+型ソース領域7、p+型コンタクト領域8の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
【0055】
次に、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型ベース層6を貫通し、n
-型ドリフト層2に達するゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19を形成する。ゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19の底部はn
-型ドリフト層2に形成されたp
+型ベース領域3に達してもよい。ゲートトレンチ18は活性部21に形成し、コンタクトトレンチ19は活性部21とゲートパッド部20に形成する。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。ここまでの状態が
図9に示されている。
【0056】
次に、ゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19の底部および開口部の角を丸めるためのアニールを行う。アニールを行う前にゲートトレンチ18、コンタクトトレンチ19のダメージを除去するための等方性エッチングを行ってもよい。
【0057】
次に、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8の表面と、ゲートトレンチ18の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0058】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はゲートトレンチ18内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、ゲートトレンチ18内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する。
【0059】
次に、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8の表面と、コンタクトトレンチ19の底部および側壁と、に沿って導電層15を形成する。この導電層15は、Tiシリサイドで形成してもよい。
【0060】
次に、ゲート絶縁膜9、ゲート電極10および導電層15を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。次に、層間絶縁膜11を覆うように、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)からなるバリアメタル12を形成する。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングしn+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。
【0061】
次に、コンタクトホール内および層間絶縁膜11の上にソース電極13となるニッケル(Ni)等の導電性の膜を設ける。この導電性の膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、コンタクトホール内にのみソース電極13を残す。ここまでの状態が
図10に示されている。
【0062】
次に、n型炭化珪素半導体基板1の第2主面上に、ニッケル等の裏面電極(不図示)を設ける。この後、1000℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理を行って、n+型ソース領域7、p+型コンタクト領域8およびn型炭化珪素半導体基板1とオーミック接合するソース電極13および裏面電極を形成する。
【0063】
次に、n+炭化珪素半導体基板1の第1主面上に、スパッタ法によって5μm程度の厚さのアルミニウム膜を堆積し、フォトリソグラフィによりソース電極13および活性部21の層間絶縁膜11を覆うようにアルミニウムを除去し、ソース電極パッド15を形成する。次に、同様の方法でゲートパッド部20の層間絶縁膜11を覆うようにゲート電極パッド17を形成する。
【0064】
次に、裏面電極の表面に、例えばチタン(Ti)、ニッケルおよび金(Au)を順に積層することによって、ドレイン電極パッド(不図示)を形成する。以上のようにして、
図1、
図2に示す炭化珪素半導体装置が完成する。
【0065】
以上、説明したように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置によれば、ゲートパッド部に活性部と同様にSBDが設けられる。これにより、ゲートパッド部下でもSBD電流を流すことができ、ゲートパッド部下の横方向の電圧降下を抑制し、少数キャリア(正孔)の注入を抑制することができる。このため、大電流でもボディダイオードがオンしないようにできる。
【0066】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図11は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド部の構成を示す断面図である。
図12は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド部の他の構成を示す断面図である。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の活性部21の構造は、実施の形態1と同様であるため記載を省略する(
図1参照)。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる点は、ゲートパッド部20にコンタクトトレンチ19が設けられておらず、ゲートパッド部20のp型領域(p
+型ベース領域3’、p型ベース層6’)がフローティングとなっている点である。
【0067】
ゲートパッド部20のp型領域は、ソース電位のp型領域(p+型ベース領域3、p型ベース層6)とn型高濃度領域5により、所定の距離W3で離れている。このように、ゲートパッド部20のp型領域をフローティングとすることにより、p+型ベース領域3’とn-型ドリフト層2からなるpn接合に順バイアス時に継続的な少数キャリアの注入を防止することができる。
【0068】
また、フローティングによるpn接合の逆バイアス時の耐圧低下を防止するため、ソース電位のp型領域とゲートパッド部20のp型領域は、所定の距離W3を離して設けることが好ましい。この所定の距離W3は、活性部21のp
+型ベース領域3間の間隔W2(
図1参照)以下が好ましい。W3を小さくすることによりpn接合の逆バイアス時に活性領域21のp
+型ベース領域3から伸びた空乏層が容易にp
+型ベース領域3’に到達しパンチスル―状態になりp
+型ベース領域3’の電位がp
+型ベース領域3に近づくとp
+型ベース領域3’からも空乏層がn型ドリフト領域に伸びるため耐圧が低下しない。
【0069】
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。活性部21の製造方法は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法と同様であるため省略する。ゲートパッド部20では、n-型ドリフト層2を形成後、n型高濃度領域5を挟んで、p+型ベース領域3とp+型ベース領域3’とを所定の距離W3離して形成する。
【0070】
次に、p型ベース層6をエピタキシャル成長で形成後、エッチング工程において、ゲートパッド部20およびその周辺をエッチングすることでp型ベース層6を選択的に除去する。ここで、p型ベース層6の除去は、
図11のようにゲートパッド部20全体で除去してもよいし、
図12のように、ゲートパッド部20の周辺部のみ除去してもよい。また、OUTエッチング工程とは、p型ベース層6があると耐圧構造部を形成できないため、チップ周辺部(耐圧構造部)のp型ベース層6を除去する工程である。なお、p型ベース層6をイオン注入により形成する場合は、マスクによりp型ベース層6を所定の距離W3離して形成すればよい。なお、p
+型ベース領域3’は
図11および
図12のようにpベース層6’と接続するように形成してもよいし活性部と同様離して形成してもよい。
【0071】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、ゲートパッド部のp型領域は、ソース電位のp型領域と分離されている。これにより、ゲートパッド部のp型領域がフローティングとなり、p型領域とn-型ドリフト層からなるpn接合に順バイアス時に継続的な少数キャリアの注入を防止することができる。このため、大電流でもボディダイオードがオンしないようにできる。
【0072】
また、本発明の実施の形態では、トレンチ型MOSFETを例に説明したが、これに限らず、プレーナゲート型MOSFETやIGBTなどのMOS型半導体装置など様々な構成の半導体装置に適用可能である。また、上述した各実施の形態では、ワイドバンドギャップ半導体として炭化珪素を用いた場合を例に説明したが、窒化ガリウム(GaN)など炭化珪素以外のワイドバンドギャップ半導体を用いた場合においても同様の効果が得られる。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明にかかる半導体装置は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるパワー半導体装置に有用であり、特にトレンチゲート構造の半導体装置に適している。
【符号の説明】
【0074】
1 n型炭化珪素基板
2 n-型ドリフト層
3、3’ p+型ベース領域
5 n型高濃度領域
6、6’ p型ベース層
7 n+型ソース領域
8 p+型コンタクト領域
9 ゲート絶縁膜
10 ゲート電極
11 層間絶縁膜
12 バリアメタル
13 ソース電極
14 ソース電極パッド
15 導電層
16 フィールド酸化膜
17 ゲート電極パッド
18 ゲートトレンチ
19 コンタクトトレンチ
20 ゲートパッド部
21 活性部
24 ソースコンタクト部
25 n+型領域