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特開2024-9648コーティング組成物、積層体、意匠性シート、および保護フィルム
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  • 特開-コーティング組成物、積層体、意匠性シート、および保護フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009648
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】コーティング組成物、積層体、意匠性シート、および保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20240116BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240116BHJP
   B05D 7/24 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C09D133/00
B32B27/30 A
B05D7/24 302P
B05D7/24 302Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111335
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】諏訪部 千佳
(72)【発明者】
【氏名】白石 欣也
(72)【発明者】
【氏名】植木 克行
(72)【発明者】
【氏名】蜂屋 祐香
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CA02
4D075CA13
4D075CA32
4D075DA04
4D075DB33
4D075DB34
4D075DB36
4D075DB37
4D075DB38
4D075DB43
4D075DB48
4D075DB53
4D075DC03
4D075DC12
4D075EA07
4D075EB22
4D075EB38
4D075EB43
4D075EB45
4D075EB56
4D075EC30
4D075EC47
4F100AH03B
4F100AK03A
4F100AK25B
4F100AK52B
4F100AL01B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA44B
4F100CA02B
4F100CA05B
4F100CC01B
4F100EH46
4F100EJ86
4J038CG141
4J038CG142
4J038DG262
4J038GA03
4J038GA15
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA12
4J038KA20
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA11
4J038NA12
4J038PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明が解決しようとする課題は、各種積層シートの保護層などにおいてクラックや剥離の起きない耐候性に優れたコーティング組成物、及び積層体を提供することである。
【解決手段】コーティング組成物は、一般式(1)の構造を有しない第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と、有する第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)と、硬化剤(C)と、溶剤(D)とを含み、(B)が、一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位、および有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)由来の構造単位を含み、(B)の含有率および(b-1)由来の構造単位の含有率が、特定の範囲であることを特徴とする。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)の構造を有しない第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と、下記一般式(1)の構造を有する第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)と、硬化剤(C)と、溶剤(D)とを含むコーティング組成物であって、
前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)が、下記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位、および下記一般式(1)の構造を有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)由来の構造単位を含み、
前記第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)との合計質量に対して、第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有率が、10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計質量に対して、下記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位の含有率が、4質量%以上20質量%以下であることを特徴とするコーティング組成物。

一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1~5のアルキル基を示し、複数存在するRは相互に同一であっても異なっていてもよく、nは1~1000の整数である。)
【請求項2】
前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)中、一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構成単位の含有率が、20質量%以上80質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記溶剤(D)が、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテルおよびイソプロピルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤(d1)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)が、水酸基を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)が水酸基を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)が、ポリジメチルシロキサン構造を有する(メタ)アクリル系単量体であることを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記硬化剤(C)が、イソシアネート系硬化剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
さらに紫外線吸収剤(E)およびヒンダードアミン系光安定剤(F)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
少なくとも基材と、請求項1または2に記載のコーティング組成物を用いて形成されたコーティング層とを有する積層体。
【請求項10】
前記コーティング層において、前記共重合体(A)を含有する連続層中に前記共重合体(B)を含有する分散相が存在していることを特徴とする請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
さらに前記共重合体(B)が、コーティング層の基材層側に局在化していることを特徴とする請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記基材が、非極性基材を有することを特徴とする請求項9に記載の積層体。
【請求項13】
請求項9記載の積層体を具備することを特徴とする意匠性シート。
【請求項14】
請求項9記載の積層体を具備することを特徴とする保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種積層シートの保護層などにおいてクラックや剥離の起きない耐候性に優れたコーティング組成物、積層体、意匠性シート、および保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーティング剤は、プラスチックフィルムや積層シート、印刷物および金属板など様々な素材の最外層に塗工され、様々な外部因子から塗膜を守る目的で表面保護層として使用される。
【0003】
近年、建築物用途として使用される建材用シートは、内装用途だけでなく、屋外での使用が拡大しており、屋外用建材用シートの表面保護層としては屋外での使用に耐え得る耐候性と二次加工のための柔軟性、耐擦傷性等が求められているが、紫外線や降雨による劣化で表面保護層にクラックや基材との剥離が発生してしまうことが課題であった。
【0004】
化粧シートの加工性を維持したまま耐候性を付与するために、従来は有機系材料、とくにアクリル樹脂を主成分としたがコーティング剤が表面保護層として用いられることが多い。しかし、紫外線による酸化劣化が生じやすく、屋外での使用には適さなかった。
【0005】
一般的に、Si-O結合を含むコーティング塗膜は、高い結合エネルギーをもつため、紫外線による劣化が少ない点で好まれていることは公知である。そのため、アクリル樹脂にポリオルガノシロキサン骨格を含んだ樹脂を用いたコーティング組成物が知られている。例えば、特許文献1には、アクリル重合体にポリオルガノシロキサン鎖を有するアクリル共重合体を混合することで表面にポリオルガノシロキサン鎖を偏析させた耐候性に優れたコーティング剤が報告されている。しかし、耐候試験結果の具体的な記載はない。
【0006】
また、さらに耐候性を付与するため特許文献2には、ポリオルガノシロキサン鎖を有するアクリル共重合体に加え、紫外線吸収能を有する無機金属酸化物粒子を添加するコーティング組成物が知られている。しかし、無機粒子を有機アクリル樹脂中に添加する方法では、劣化の進行により、粒子と樹脂間で界面剥離が発生する恐れから、塗膜のクラックが発生してしまう懸念があるが、耐候試験結果としては黄変の抑制効果の記載しかない。
【0007】
一方、特許文献3では、無機粒子を添加する代わりに、塗膜中にポリオルガノシロキサン鎖を有するアクリル共重合体の凝集体を形成させることで長期耐候性を付与できることが知られている。しかし、実施例中には、ポリオルガノシロキサンの含有率、どのような凝集体を形成するかの具体的記載はなく、耐候試験結果としては白化の抑制効果の記載しかなく、塗膜のクラックや剥離の抑制ができるかは不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3240949号
【特許文献2】特開2006-257318号公報
【特許文献3】特開2003-37281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、各種積層シートの保護層などにおいてクラックや剥離の起きない耐候性に優れたコーティング組成物、及び積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定の(メタ)アクリル系単量体由来の構造単位を有する共重合体を一定の配合比で用いることで、良好な耐候性が得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)の構造を有しない第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と、下記一般式(1)の構造を有する第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)と、硬化剤(C)と、溶剤(D)とを含むコーティング組成物であって、
前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)が、下記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位、および下記一般式(1)の構造を有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)由来の構造単位を含み、
前記第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)との合計質量に対して、第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有率が、10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計質量に対して、下記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位の含有率が、4質量%以上20質量%以下であることを特徴とするコーティング組成物に関する。

一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1~5のアルキル基を示し、複数存在するRは相互に同一であっても異なっていてもよく、nは1~1000の整数である。)
【0012】
また、本発明は、前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)中、一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構成単位の含有率が、20質量%以上80質量%以下であることを特徴とする前記コーティング組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記溶剤(D)が、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテルおよびイソプロピルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤(d1)を含むことを特徴とする前記コーティング組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、前記第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)が、水酸基を含有することを特徴とする前記コーティング組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)が水酸基を含有することを特徴とする前記コーティング組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、前記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)が、ポリジメチルシロキサン構造を有する(メタ)アクリル系単量体であることを特徴とする前記コーティング組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、前記硬化剤(C)が、イソシアネート系硬化剤を含むことを特徴とする前記コーティング組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、さらに紫外線吸収剤(E)およびヒンダードアミン系光安定剤(F)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする前記コーティング組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、少なくとも基材と、前記コーティング組成物を用いて形成されたコーティング層とを有する積層体に関する。
【0020】
また、本発明は、前記コーティング層において、前記共重合体(A)を含有する連続層中に前記共重合体(B)を含有する分散相が存在していることを特徴とする前記積層体に関する。
【0021】
また、本発明は、さらに前記共重合体(B)が、コーティング層の基材層側に局在化していることを特徴とする前記積層体に関する。
【0022】
また、本発明は、前記基材が、非極性基材を有することを特徴とする前記積層体に関する。
【0023】
また、本発明は、前記積層体を具備することを特徴とする意匠性シートに関する。
【0024】
また、本発明は、前記積層体を具備することを特徴とする保護フィルムに関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、各種積層シートの保護層などに用いた場合に、クラックや剥離の起きない耐候性に優れたコーティング組成物、及び積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例1で作成した積層体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明のコーティング組成物の各構成成分について説明する。
なお、本願では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を表すものとする。
【0028】
本発明のコーティング組成物は、下記一般式(1)の構造を有しない第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と、下記一般式(1)の構造を有する第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)と、硬化剤(C)と、溶剤(D)とを含むコーティング組成物であって、
前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)が、下記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位、および下記一般式(1)の構造を有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)由来の構造単位を含み、
前記第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)との合計質量に対して、第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有率が、10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記第二の(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計質量に対して、下記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位の含有率が、4質量%以上20質量%以下であることを特徴とする。

一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1~5のアルキル基を示し、複数存在するRは相互に同一でも異なってもよく、nは1~1000の整数である。)
【0029】
本発明のコーティング組成物を用いてコーティング層を形成した場合に、前記共重合体(A)を含有する連続層中に前記共重合体(B)を含有する分散相が形成し、海島の相分離構造を形成することが好ましく、基材との界面に前記共重合体(B)を含有する局在相を形成することがさらに好ましい。このような分散相や局在相により優れた耐候性を得られる理由は以下のように推察できる。
【0030】
前記共重合体(B)は、一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位を含むことにより、柔軟性に富む。また、Si-O結合由来の高い結合エネルギーをもつため、紫外線による劣化が少ない。一般的なアクリル樹脂を主成分としたコーティング剤では、紫外線による劣化で塗膜が硬く脆くなってしまい、クラック、基材との剥離が発生してしまうことが課題であったが、このような特徴をもつ前記共重合体(B)を含有する分散相が形成することで、塗膜が硬く脆くなっていくのを応力緩和することができ、クラック、基材との剥離を大幅に防止することができる。更に、基材との界面に前記共重合体(B)を含有する局在相を形成することで、より効果的に基材との界面に働く応力を緩和することができ、基材との剥離を大幅に防止することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0031】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)>
(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系単量体としては、下記一般式(1)の構造を有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)であればよい。(メタ)アクリル系単量体(b-2)の例としては、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体と、水酸基を含有しない(メタ)アクリル系単量体との共重合体が好ましく用いられる。水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基と1個以上の水酸基を含有するモノマーであればよい。
水酸基を含有するモノマーを用いる場合には、構成単位として、(メタ)アクリル系共重合体(A)中、5~50質量%を含むことが好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【0032】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を用いることで、水酸基を含有した共重合体(A)を形成し、塗工後に、共重合体(A)に含まれる水酸基と硬化剤とを反応させて、基材と密着した硬質な塗膜を形成させることができるが、硬化剤と反応させることができる架橋性の官能基を有していれば特に水酸基には限定されない。
【0033】
[水酸基含有(メタ)アクリル系単量体(b-2)]
前記水酸基含有モノ(メタ)アクリル系単量体(b-2)は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(商品名4HBA、三菱化学)、α-ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(商品名プラクセルFシリーズ、ダイセル化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル等を挙げることができる。
【0034】
[水酸基を含有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)]
水酸基を含有しない(メタ)アクリル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。さらに、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマーあるいはその無水物や、スチレン、酢酸ビニル等のアクリル系以外のビニルモノマーも使用することができる。
【0035】
(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル系共重合体(B)と混合、塗膜形成時に相分離構造を形成しやすい点で、炭素数8以下のアルキル基を含むことが好ましい。具体的には、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体(b-2)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、水酸基を含有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)としては、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
<(メタ)アクリル系共重合体(B)>
(メタ)アクリル系共重合体(B)を構成する(メタ)アクリル系単量体としては、下記一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)、および下記一般式(1)の構造を有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)を含むことを特徴とする。

一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1~5のアルキル基を示し、複数存在するRは相互に同一でも異なってもよく、nは1~1000の整数である。)
【0037】
[一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)]
一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)としては、1分子中に一般式(1)の構造単位と、1個の(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーであればよく、(メタ)アクリル系単量体(b-1)の例としては、一般式(1)中のRがメチル基であるポリジメチルシロキサン構造を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましく用いられる。
【0038】
ポリジメチルシロキサン構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)としては、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。ポリジメチルシロキサン構造を有する(メタ)アクリル系単量体を合成する方法として、従来既知の方法、例えば、末端にエポキシ基を有するポリジメチルシロキサン化合物と水酸基もしくはカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体化合物とのエポキシ開環反応、水酸基を有するシロキサン化合物とエポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体化合物とのエポキシ開環反応、水酸基を有するシロキサン化合物とイソシアネート基を有する(メタ)アクリル系単量体化合物とのウレタン化反応等が挙げられる。一方、ポリジメチルシロキサン構造を有する(メタ)アクリル系単量体の市販品として、信越化学工業株式会社製のKF-2012、X-22-174ASX、X-22-174BX、X-22-2404、X-22-2426;JNC株式会社製のサイラプレーンFM-0711、FM-0721、FM-0725等がある。
【0039】
一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)としては、nは5以上100以下であることが好ましい。nが5以上であると、ポリシロキサンのもつ柔軟性の効果が十分に得られるため好ましく、nが100以内であると、(メタ)アクリル系共重合体(A)と(B)の相溶性が良好であり、均一な塗膜が得られ、印刷適正が優れるため、好ましい。
【0040】
[一般式(1)の構造を有しない(メタ)アクリル系単量体(b-2)]
(メタ)アクリル系単量体(b-2)の例としては、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体と、水酸基を含有しない(メタ)アクリル系単量体との共重合体が好ましく用いられる。水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基と1個以上の水酸基を含有するモノマーであればよい。例としては、前記記載の通りである。
水酸基を含有するモノマーを用いる場合には、構成単位として、(メタ)アクリル系共重合体(B)中、5~50質量%を含むことが好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル系共重合体(B)中、一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構成単位の含有率は、相分離構造の形成しやすさの観点から20質量%以上80%以下であることが好ましい。より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
【0042】
(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)との合計質量に対して、共重合体(B)の含有率は、10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上50質量%以下である。
【0043】
また、前記共重合体(A)と前記共重合体(B)の合計質量に対して、一般式(1)の構造を有する(メタ)アクリル系単量体(b-1)由来の構造単位の含有率は、4質量%以上20質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。4質量%以上20質量%以下であれば、前記共重合体(A)を含有する連続層中に前記共重合体(B)を含有する分散相と基材界面での局在相を形成し、耐候性が優れるため好ましい。10質量%以上20質量%以下であれば、前記共重合体(A)を含有する連続層中に前記共重合体(B)を含有する直径1μm~10μmの分散相が形成するため、クラックの発生防止に優れるためより好ましい。さらに、12質量%以上20質量%以下であれば、前記記載の前記共重合体(B)を含有する分散相の形成に加え、基材との界面に共重合体(B)を含有する局在相がより広範囲にわたり形成し、密着性に優れるためより好ましい。4質量%未満であると、塗膜形成時に相分離構造を形成しないため好ましくなく、20質量%より大きいと、均一な塗膜が得られず印刷適正が悪いため好ましくない。
【0044】
(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)の分子量としては、特に限定されないが、相分離構造の形成しやすさの観点から重量平均分子量が1万以上30万以下であることが好ましく、3万以上20万以下であることがより好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)は、合成の際に有機溶剤を使用しても良い。有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、また、これらの混合物が挙げられる。(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)が有機溶剤を含有する場合、好ましい固形分は10wt%~70wt%であり、さらに好ましくは20wt%~60wt%である。
【0046】
<(メタ)アクリル系共重合体の合成方法>
(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B) の合成方法としては前記有機溶剤の存在下でのアニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、ラジカル重合、及びリビングラジカル重合等、公知の方法が使用できる。
【0047】
ラジカル重合法の場合は、重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤としては例えば、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、または2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、またはジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。反応温度は好ましくは40~150℃、より好ましくは50~120℃、反応時間は好ましくは3~30時間、より好ましくは5~20時間である。
【0048】
<硬化剤(C)>
本発明に用いる硬化剤(C)としては、(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)中の架橋性の官能基と架橋反応するものであれば特に限定はされないが、基材との密着性が良い点でイソシアネート硬化剤が好ましい。構造に関しては特に制限は無いが、イソシアヌレート系、アダクト系およびビウレット系から選ばれる少なくとも一種のイソシアネート化合物であることが好ましい。これらのイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。イソシアヌレート系イソシアネート化合物とは、分子中にイソシアネート基を2つ以上有するジイソシアネートが3量体となってイソシアヌレート環構造となっている形態をいい、ビウレット系イソシアネート化合物とは、ビウレット構造を有するイソシアネート化合物をいい、アダクト系イソシアネート化合物とは、トリメチロールプロパン等の3官能アルコール化合物とジイソシアネートが反応してアダクト体となったイソシアネート化合物をいう。これらのイソシアネート化合物は、下記に挙げる芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどから合成することができる。
【0049】
芳香族ジイソシアネートとしては例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0050】
脂肪族ジイソシアネートとしては例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
脂環族ジイソシアネートとしては例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、やダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
これらのうち、耐候性の観点から、脂肪族ジイソシアネートから合成されたイソシアネート化合物が好ましい。
【0053】
(メタ)アクリル共重合体と硬化剤(C)との配合比率については特に限定されないが、十分に架橋させ密着性を発現するために、共重合体(A)と共重合体(B)の合計100質量%に対して、硬化剤(C)の含有率が、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
<溶剤(D)>
本発明のコーティング組成物は、(メタ)アクリル共重合体溶剤(A)と共重合体(B)、硬化剤(C)および溶剤(D)を混合して得られる。溶剤(D)は、塗膜形成時に相分離構造を形成させる目的で重要である。溶剤(D)としては、共重合体(A)と共重合体(B)の両方を溶解できるものであれば特に限定されない。
【0055】
かかる有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルといったエステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、nブチルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール系有機溶剤、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートといったグリコールエーテル系溶剤、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフランなど公知の溶剤を使用でき、これらの混合溶剤として含有することが好ましい。
中でも、基材界面に共重合体(B)を含有する層が一層存在しやすい点で、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテルおよびイソプロピルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤(d1)を含むことが好ましい。
【0056】
<紫外線吸収剤(E)>
本発明のコーティング組成物は、耐候性を付与する目的で、紫外線吸収剤、光安定剤を含有することが特に好ましい。紫外線吸収剤とは、一般的に波長約200~400nmの紫外線を吸収して熱や赤外線などのエネルギーに変化させて放出させる効能を有する化合物である。紫外線吸収剤としては、例えば、無機系紫外線吸収剤として、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物微粒子を用いることができる。また有機系紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,トリアジン系紫外線吸収剤,ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤,ジフェニルメタノン系紫外線吸収剤,2-シアノプロペン酸エステル系紫外線吸収剤、アントラニレート系紫外線吸収剤、ケイヒ酸誘導体系紫外線吸収剤、カンファー誘導体系紫外線吸収剤、ベンザルマロネート誘導体系紫外線吸収剤、レゾルシノール系紫外線吸収剤、オキザリニド系紫外線吸収剤、クマリン誘導体系紫外線吸収剤等が使用できる。中でもトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0057】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス-(ジイソブチル4’-アミノ-ベンザルマロネート)-s-トリアジン、4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等を挙げることができる。中でも好ましくは2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノールである。
【0058】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6[(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール等を挙げることができる。
【0059】
ジフェニルメタノン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジフェニルメタノン、メチルジフェニルメタノン、4-ヒドロキシジフェニルメタノン、4-メトキシジフェニルメタノン、4-オクトキシジフェニルメタノン、4-デシルオキシジフェニルメタノン、4-ドデシルオキシジフェニルメタノン、4-ベンジルオキシジフェニルメタノン、4,2′,4′-トリヒドロキシジフェニルメタノン、2′-ヒドロキシ-4,4′-ジメトキシジフェニルメタノン、4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ-ジフェニルメタノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾインエチルエーテルなどが挙げられる。
【0060】
2-シアノプロペン酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、エチルα-シアノ-β,β-ジフェニルプロペン酸エステル、イソオクチルα-シアノ-β,β-ジフェニルプロペン酸エステル等が挙げられる。
【0061】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸イソセチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸フェニルなどが挙げられる。
【0062】
アントラニレート系紫外線吸収剤としては、例えば、メンチルアントラニレート等が挙げられる。
【0063】
ケイヒ酸誘導体系紫外線吸収剤としては、例えば、エチルヘキシルメトキシシンナメート、イソプロピルメトキシシンナメート、イソアミルメトキシシンナメート、ジイソプロピルメチルシンナメート、グリセリル-エチルヘキサノエートジメトキシシンナメート、メチル-α-カルボメトキシシンナメート、メチル-α-シアノ-β-メチル-p-メトキシシンナメート等が挙げられる。
【0064】
カンファー誘導体紫外線吸収剤としては、例えば、ベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸、カンファーベンザルコニウムメトスルフェート、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー等が挙げられる。
【0065】
レゾルシノール系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4-tert-ブチルベンゾイルレゾルシノール)等が挙げられる。
【0066】
オキザリニド系紫外線吸収剤としては、例えば、4,4′-ジ-オクチルオキシオキザニリド、2,2′-ジエトキシオキシオキザニリド、2,2′-ジ-オクチルオキシ-5,5′-ジ-tert-ブチルオキザニリド、2,2′-ジ-ドデシルオキシ-5,5′-ジ-tert-ブチルオキザニリド、2-エトキシ-2′-エチルオキザニリド、N,N′-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)オキザニリド、2-エトキシ-5-tert-ブチル-2′-エトキシオキザニリド等が挙げられる。
【0067】
クマリン誘導体系紫外線吸収剤としては、例えば、7-ヒドロキシクマリン等が挙げられる。
【0068】
紫外線吸収剤(E)の配合比率については特に限定されないが、コーティング組成物の固形分100質量%に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0069】
<光安定剤>
光安定剤とは、光劣化で発生するラジカルを捕捉するものであり、例えば、チオール系、チオエーテル系、ヒンダードアミン系化合物等のラジカル捕捉剤を使用することができ、これらは単独又は2種以上を併用して使用してもよい。なかでも、相溶性及び耐光安定性をより向上できる観点から、ヒンダードアミン系光安定剤(F)を使用することが好ましい。
【0070】
ヒンダードアミン系光安定剤(F)としては、例えば、シクロヘキサンと過酸化N-ブチル2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン-2,4,6-トリクロロ1,3,5-トリアジンとの反応生成物と2-アミノエタノールとの反応生成物(商品名:チヌビン152(BASF(株)製))、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル(商品名:チヌビン123(BASF(株)製))、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、等のアミノエーテル基を有するヒンダードアミン化合物、N-アセチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン(商品名:Hostavin3058(クラリアントジャパン(株)製))等のN-アセチル系ヒンダードアミン化合物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名:サノールLS765(BASFジャパン(株)製))、ビス(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4-ピペリジル){[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル}ブチルマロネート商品名:Tinuvin(登録商標)144(BASFジャパン(株)製))、コハク酸ジメチルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物(商品名:Tinuvin(登録商標)622LD(BASFジャパン(株)製))、プロバンジオイックアシッド[{4-メトキシフェニル}メチレン]-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)エステル(商品名:Hostavin(登録商標)PR-31(クラリアントジャパン(株)製))のN-アルキル系ヒンダードアミン化合物ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、2,2’-チオビス(4-t-オクチルフェノレート)アルキルアミンニッケル、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミン・N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物等を挙げることができる。中でも好ましくはデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルである。
【0071】
ヒンダードアミン系光安定剤(F)の配合比率については特に限定されないが、コーティング組成物の固形分100質量%に対して、0.05質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0072】
紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤は、添加剤としてコーティング組成物に添加しても良いし、反応性官能基を有するような紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤を、(メタ)アクリル系共重合体と反応させて用いても良いし、他の樹脂と反応させて用いても良い。(メタ)アクリル共重合体と反応させる方法としては例えば、紫外線吸収基含有(メタ)アクリル系単量体もしくはヒンダードアミン系光安定基含有(メタ)アクリル系単量体をその他の(メタ)アクリル系単量体と共重合させる方法が挙げられる。
【0073】
(その他の添加剤)
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて可塑剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、キレート剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分、シリカ粒子、マット剤等の通常用いられる各種添加剤を含ませることができる。また更に、油、難燃剤、充填剤、安定剤、補強剤、艶消し剤、研削剤、有機微粒子、無機微粒子、高分子化合物( アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン( ウレア) 樹脂、等) 等を配合することも可能である。
【0074】
(コーティング組成物の製造)
本発明コーティング組成物の製造方法としては、必要なそれぞれの原料をディスパーなどで30分~3時間程度撹拌することにより製造することができる。なお、混合しにくく、粘度等が不均一になりやすい場合はローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いても良い。
【0075】
<積層体>
本発明の積層体は、少なくとも基材と、上述のコーティング組成物を用いて形成されたコーティング層とを有する。
【0076】
<基材>
本発明に使用できる基材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系基材、ポリノルボルネン、水添ポリノルボルネン、ポリジシクロペンタジエン、水天ポリジシクロペンタジエンなどの脂環式ポリオレフィン系基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系基材、ポリカーボネート系基材、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系基材、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系基材、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース等の繊維素系基材、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系基材、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリスチレン基材、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系基材等が挙げられ、フィルム状またはシート状であることが好ましい。基材層は、これらの熱可塑性樹脂から一種又は二種以上から選ばれた混合物を用いて得られる。基材層は、化粧シートのような積層体であってもよい。また、コロナ処理などの表面処理が施されていても良い。また、上記熱可塑性樹脂に着色剤が混練された着色基材を用いても良い。当該着色剤は特に限定は無く、上記の有機顔料、無機顔料などを適宜使用できる。中でも、基材界面に共重合体(B)を含有する層が一層存在しやすい点で、ポリオレフィン系基材、脂環式ポリオレフィン系基材、フッ素系樹脂などの非極性基材が好ましく、ポリオレフィン系基材がより好ましい。
【0077】
<積層体中の相分離構造>
本発明のコーティング組成物を用いてコーティング層を形成した場合に、共重合体(A)を含有する連続層中に共重合体(B)を含有する分散相が形成し、海島の相分離構造を形成することが好ましく、基材との界面に前記共重合体(B)を含有する局在相を形成することがさらに好ましい。このような相分離構造は、積層体断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、エネルギー分散型X線分光分析(EDX)により(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる単量体(b-1)中のケイ素原子のマッピングを行うことで、評価することが可能である。
【0078】
本発明の積層体は、基材とコーティング層に加えて、必要に応じてアンカーコート層、プライマー層、印刷層、接着剤層を設けることが可能である。
【0079】
本発明の積層体は例えば、意匠性シートや保護フィルムとして使用することができる。意匠性シートとしては例えば、化粧材として各種の建材、家具、壁、床等への使用や、自動車内外装用部材として車体のラッピングシートでの使用を挙げることができる。保護フィルムとしては例えば、自動車内装用部材のパネル等を保護するための保護フィルムとしての使用や、自動車輸送時の保護フィルムとしての使用を挙げることができる。
【0080】
<積層体の製造>
本発明の積層体は、基材上に本発明のコーティング組成物を塗工することで作成できる。塗工方法としては特に限定されるものではなく、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、フローコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、ロール、スピン、ディスペンサー、インクジェット印刷、スクリーン印刷等のようなウェットコーティング法が挙げられるが、グラビア印刷による塗工方法がより好ましい。
【0081】
本発明コーティング組成物を塗工後、硬化剤の架橋反応が必要であり、例えば、硬化剤がイソシアネート系硬化剤の場合には、イソシアネートで熱架橋させるための架橋条件としては40℃から60℃の温度で3日程度あれば架橋反応は完了する。確認方法としてはIRスペクトルにてイソシアネート由来のピークの減少を追えば架橋反応の終点を割り出すことができる。
【0082】
硬化後の膜厚としては、通常1~ 30μmであることが好ましく、3~20μmであることがより好ましい。
【実施例0083】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、特に断りのない限り、実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0084】
実施例に先立ち、重量平均分子量の測定方法について説明する。
【0085】
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量は、TSKgelカラム(東ソー社製)とRI検出器とを備えるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製、HLC-8420GPC)を用いて、展開溶媒にTHFを使用して測定したポリスチレン換算の値である。
【0086】
本明細書における略号を以下に示す。
MMA:メタクリル酸メチル
BMA:メタクリル酸ブチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
LMA:メタクリル酸ラウリル
2HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
4HBA:メタクリル酸4-ヒドロキシブチル
AA:アクリル酸
BA:アクリル酸ブチル
RUVA93:反応型紫外線吸収剤 (大塚化学株式会社製)
FA-711MM:ペンタメチルピペリジルメタクリレート(昭和電工マテリアルズ社製)
FM0711:サイラプレーンFM0711、ポリジメチルシロキサンモノメタクリレート、平均分子量1000(JNC株式会社製)
FM0721:サイラプレーンFM0721、ポリジメチルシロキサンモノメタクリレート、平均分子量5000(JNC株式会社製)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
HI100:BASONAT HI100、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(BASF社製)
E402-80B:DURANATE E402-80B、HDIアダクト体(旭化成社製)
MEK:メチルエチルケトン
酢エチ:酢酸エチル
酢ブチ:酢酸イソブチル
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
IPA:イソプロピルアルコール
THF:テトラヒドロフラン
LA46:アデカスタブLA-46/トリアジン系紫外線吸収剤/2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール(株式会社ADEKA製)
Tin.479:Tinuvin479/ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製)
Tin.329:Tinuvin329/ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤/2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製)
Tin.123:Tinuvin123/ヒンダードアミン系光安定剤/デカン二酸ビス[2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピぺリジン-4-イル](BASF社製)
Tin.292:Tinuvin292/ヒンダードアミン系光安定剤/ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートの混合物(BASF社製)
FOR:二軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm(フタムラ化学株式会社社製)
PE:化粧シート用ポリエチレン 厚み40μm
M-6:ポリエチレンフィルム、厚み50μm(タマポリ株式会社製)
ゼオノア:ゼオノアフィルムZB、二軸延伸シクロオレフィンフィルム(日本ゼオン株式会社製)
PET:E5100 厚み50μm(東洋紡株式会社製)
【0087】
<共重合体(A),(B)の合成>
(製造例1)
冷却管、撹拌装置、温度計および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、MMA87部、2HEMA13部、MEKを52部仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら昇温した。フラスコ内の温度が75℃になったらこの温度を合成温度として維持し、開始剤AIBN:0.5部をMEK16部に希釈した溶液を2時間かけて滴下した。開始剤滴下終了6時間後、不揮発分測定から溶液中の未反応モノマーが5%以下になったことを確認した。MEK126部で希釈し、冷却して反応を終了し、固形分約32%の(メタ)アクリル系共重合体(A-1)溶液を得た。(メタ)アクリル系共重合体(A-1)は、Mw:140,000であった。
【0088】
(製造例2~38)
製造例1で使用した原料、配合量を、表1に示す内容に変更した以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体(A-2)~(A-18)、(B-1)~(B-20)を合成した。
【0089】
【表1】
【0090】
<コーティング組成物の調製>
[実施例1]
上記製造例で得られた(メタ)アクリル系共重合体(A-1)を固形分換算で75部、(メタ)アクリル系共重合体(B-1)を25部、硬化剤(C-1)を26部、LA46を9部、及びTin.123を3部、室温で混合した。さらに、溶剤(D):MEK193部で希釈し、コーティング組成物(X-1)を得た。
【0091】
[実施例2~57、比較例1~8]
実施例1で使用した原料、配合量を、表2に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、コーティング組成物(X-1)~(X-57)及び(CX-1)~(CX-8)を得た。
【0092】
<コーティング組成物の評価>
得られたコーティング組成物について、以下の方法で相分離構造、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
(相分離構造)
バーコーターを用いて、表2に示す基材上にコーティング組成物を、乾燥後の厚みが9μmとなるように塗工した。塗工物を60℃72時間保持することで積層体を得た。次に、積層体を剃刀破断し、断面を得、白金蒸着した後に積層体断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、エネルギー分散型X線分光分析(EDX)により(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる単量体(b-1)中のケイ素原子のマッピングを行うことで、相分離構造を評価した。相分離の形成有無の評価としては、下記の2つの観点で、それぞれ下記の判断基準で評価を実施した。
【0094】
《共重合体(B)を含む分散相の形成有無》
(メタ)アクリル系共重合体(B)を含む分散相(島)が連続相(海)中に形成し、海島相分離構造を形成しているかどうか評価した。判断基準は下記の通りである。なお、分散相(島)が楕円形の場合には、長径を直径とした。

○:直径1μm~10μmのケイ素原子の相が観察される
△:直径1μm以下のケイ素原子の相がわずかに観察される
×:ケイ素原子の分布が全く観察されず、均一である
××:凹凸の激しい膜厚の不均一な塗膜である
【0095】
《基材界面への共重合体(B)を含む局在相の形成有無》
(メタ)アクリル系共重合体(B)を含む相が基材界面に形成しているかどうか評価した。判断基準は下記の通りである。
◎:厚さ0.1μm~5μm以下のケイ素原子の相が基材界面の9割以上の部分で観察される
○:厚さ0.1μm~5μm以下のケイ素原子の相が基材界面の5割以上9割未満の部分で観察される
△:厚さ0.1μm~5μm以下のケイ素原子の相が基材界面の1割以上5割未満の部分で観察される
×:厚さ0.1μm~5μm以下のケイ素原子の相が基材界面の1割未満の部分で観察される
××:凹凸の激しい膜厚の不均一な塗膜である
【0096】
(耐候性評価)
バーコーターを用いて、表2に示す基材上にコーティング組成物を、乾燥後の厚みが9μmとなるように塗工した。塗工物を60℃72時間保持することで積層体を得た。得られた積層体を以下の試験条件下で700時間放置する耐候試験を行った。耐候試験後の積層体を観察し、以下の2つの観点で、それぞれ下記の判断基準で評価を実施した。
【0097】
《クラックの防止》
◎:顕微鏡で観察してもクラックは全く観察されなかった。
○:顕微鏡で観察するとごく一部にクラックが観察された。
×:顕微鏡で観察すると広範囲にわたって顕著なクラックが観察された。
【0098】
《密着の維持》
◎:顕微鏡で観察しても剥離は全く観察されなかった。
○:顕微鏡で観察するとごく一部に剥離が観察された。
△:狭い範囲ではあるが剥離が目視で観察された。
×:広範囲にわたって顕著な剥離が目視で観察された。
【0099】
(耐候性試験 試験条件)
700時間の試験時間中、以下の照射条件、シャワー、結露条件、及びシャワーの順番で繰返した。
試験装置:超促進耐候性試験機(アイスーバーUVテスター SUV-W161、岩崎電気株式会社製)
照射条件
照度:70mW/cm
ブラックパネル温度:63℃
湿度:50%
時間:20時間
結露条件
照度:0mW/cm
湿度:98%
時間:4時間
シャワー:30秒間
【0100】
【表2】

【0101】
【表2】
【0102】
図1に実施例1で得られた積層体断面の観察結果を示す。図1中の黒点がSi元素分布位置を示しており、(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる単量体(b-1)中のケイ素原子の分散相(島)が連続相(海)中に形成し、海島相分離構造を形成していることが確認できる。さらに、厚さ0.1μm~5μm以下のケイ素原子の相が基材界面に局在化していることが確認できる。
本発明のコーティング組成物である実施例1~57は、いずれも共重合体(B)を含む分散相と基材界面での局在相を形成し、耐候試験でのクラック防止、密着の維持に優れていた。一方、共重合体(B)を含む分散相と基材界面での局在相を形成しなかった比較例1~8は、耐候試験後、クラック、剥離ともに発生し、耐候性に劣った。
【0103】
特に、基材界面に共重合体(B)を含む局在相が9割以上の界面で形成した実施例16、19~21、31、33~35、38~40、42、43では、耐候試験後の密着維持が特に優れた結果であった。これは、基材界面の共重合体(B)を含む局在相中のポリオルガノシロキサン鎖の効果で応力緩和し、密着が維持できたためと推測している。
【0104】
特に、共重合体(B)中の(b-1)由来の構成単位の含有率が、20質量%以上80%以下である実施例1~53は、20質量%より小さく、80%より大きい条件である実施例56、57と比較して、相分離構造を形成しやすく、耐候試験でのクラック防止、密着の維持に優れていた。
【0105】
(メタ)アクリル系共重合体(A)中に、炭素数8以上のアルキル基を含まない実施例1~7は、炭素数8以上のアルキル基を含んだ実施例8と比較して、基材界面に共重合体(B)を含む局在相が形成しやすく、耐候試験後の密着維持が優れた結果であった。これは、(メタ)アクリル系共重合体(A)中に炭素数8以上のアルキル基を含まないことで、(メタ)アクリル系共重合体(A)と(B)の相溶性が低く、基材界面に共重合体(B)を含む局在相が形成しやすかったためと推測している。
【0106】
(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計質量に対して、(メタ)アクリル系単量体(b-1)の含有率が、10質量%以上20質量%以下の実施例1~16、19~31、33~51では、共重合体(B)を含有する直径1μm~10μmの分散相が形成するため、クラックの発生防止が特に優れた結果であった。
【0107】
(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計質量に対して、(メタ)アクリル系単量体(b-1)の含有率が、12質量%以上20質量%以下の実施例19~21、33~35では、9割以上の基材界面に共重合体(B)を含む局在相が形成し、密着性が特に優れた結果であった。
【0108】
溶剤(D)に酢酸ブチル、PGM、IPAを用いた実施例38~40、42、43では、その他の溶剤を用いた実施例1、36、37、41と比較し、9割以上の基材界面に共重合体(B)を含む局在相が形成し、耐候試験後の密着性が特に優れた結果であった。一方、溶剤(D)にTHFを用いた実施例41では、基材界面の共重合体(B)を含む局在相は1割以上~5割未満にとどまり、耐候試験後の密着力はやや低下した。
【0109】
基材にFOR,PE,M-6、ゼオノアなどの非極性基材を用いた実施例1、44、45、46では、PET基材を用いた実施例47と比較し、基材界面に共重合体(B)を含む局在相が形成しやすく、耐候試験後の密着維持が優れた結果であった。これは、共重合体(B)と基材の間の親和性が高く、基材界面に共重合体(B)を含む局在相が形成しやすかったためと推測している。
【0110】
(メタ)アクリル系共重合体(A)、(B)のいずれかに重量平均分子量16万以上のものを用いた実施例16、31では、9割以上の基材界面に共重合体(B)を含む局在相が形成し、耐候試験後の密着性が特に優れた結果であった。一方、(メタ)アクリル系共重合体(A)、(B)のいずれかに重量平均分子量6万以下のものを用いた実施例15、30では、基材界面の共重合体(B)を含む局在相は1割以上~5割未満にとどまり、耐候試験後の密着力はやや低下した。さらに、(メタ)アクリル系共重合体(A)、(B)の両方に重量平均分子量3万以下のものを用いた実施例54,55では、相分離構造はわずかに形成したのみで、耐候性のやや劣る結果であった。これは、アクリル系共重合体の分子量が小さいと、共重合体(A)、(B)間の相溶性が向上し、相分離が形成しにくくなったためと推測している。
【符号の説明】
【0111】
1 基材
2 コーティング層
3 分散相(島)
4 連続層(海)
5 基材界面局在相


図1