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特開2024-96508コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法
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  • 特開-コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法 図1
  • 特開-コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法 図2
  • 特開-コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法 図3
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  • 特開-コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法 図7
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  • 特開-コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法 図9
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  • 特開-コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096508
(43)【公開日】2024-07-16
(54)【発明の名称】コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20240708BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/06 311A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208417
(22)【出願日】2022-12-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(71)【出願人】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC15
2D054AD23
2D054FA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オープンシールド工法において、簡易な設備で函体推進時に函体上面に配設したフリクションカットプレートが函体と共に移動することを防止することができるコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置と固定方法を提供する。
【解決手段】発進立坑に設けた支圧壁の前に元押ジャッキを設置し、この元押ジャッキでコンクリート函体を推進させる場合において、コンクリート函体上面に敷設して並列するフリクションカットプレート端部上に横架する掛止桁と前記支圧壁と元押ジャッキの間に配置する支持部材と、これら掛止桁と支持部材とを連結する枠組みからなる固定装置を使用し、前記元押しジャッキ伸長時に元押しジャッキ後端へ伝達されるコンクリート函体推進反力によりフリクションカットプレートの移動を防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑に設けた支圧壁の前に元押ジャッキを設置し、この元押ジャッキでコンクリート函体を推進させる場合において、コンクリート函体上面に敷設して並列配置するフリクションカットプレート端部上に横架する掛止桁と、前記支圧壁と元押ジャッキの間に配置する支持部材と、これら掛止桁と支持部材とを連結する枠組みからなることを特徴としたコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置。
【請求項2】
発進立坑に設けた支圧壁の前に元押ジャッキを設置し、この元押ジャッキでコンクリート函体を推進させる場合において、コンクリート函体上面に敷設して並列配置するフリクションカットプレート端部上に横架する掛止桁と、前記支圧壁と元押ジャッキの間に配置する支持部材と、これら掛止桁と支持部材とを連結する枠組みからなることを特徴としたコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置を使用し、前記元押しジャッキ伸長時に元押しジャッキ後端へ伝達されるコンクリート函体の推進反力によりフリクションカットプレートの移動を防止することを特徴としたコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋が両側に密着したような狭隘な施工箇所や、既設橋下を横断しての函渠敷設、鉄道などの高架橋下の横断施工等、架空制限がある場合などでは、左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したオープンシールド機を使用したオープンシールド工法が採用されることがあり、オープンシールド機をコンクリート函体を反力にシールドジャッキにより推進し、コンクリート函体を発進立坑内に設置した元押ジャッキにより順次推進・敷設する。
【0003】
前記オープンシールド工法でのオープンシールド機1は布設するコンクリート函体の幅とシールド機の幅が同一で、前記側壁板1aと底板の先端を刃口として形成し、また側壁板1aの中央又は後端近くにシールドジャッキ3を後方に向け上下に並べて配設する。前記刃口のうち、側壁部分はスライド式土留17として分割して可動に形成されている(図11参照)。
【0004】
図9図10に示すように、発進立坑8にはジャッキ架台27に配置する元押ジャッキ14、および前記元押しジャッキ14の伸長によるコンクリート函体4の推進反力を支持するための支圧壁9を設置する。支圧壁9は鋼材を井桁状に組み、または無筋コンクリートを打設するものとし必要に応じ鉄筋コンクリートとする。
【0005】
また、発進立坑8にH鋼をレール状に並べその上の全面に鉄板を設置してシールド機の据付及び発進のための受台18を形成する。
【0006】
発進立坑8内にオープンシールド機1を設置し、推進させ、オープンシールド機1と元押ジャッキ14との間にコンクリート函体4を設置し、元押ジャッキ14で推進させる。コンクリート函体4の上部に砂等の埋戻土を施す。
【0007】
図中23は函体と埋戻土の縁を切り、函体のみを推進させるために設置するフリクションカットプレートで、帯状の薄鉄板等からなり、コンクリート函体4の上に並列に敷設して、一枚一枚は順次短尺のものを溶接等で繋げることで長く形成し、発進立坑8から外に出た所から設置していく。
【0008】
オープンシールド機1の推進は、布設したコンクリート函体4を反力にシールド機内部に装置したシールドジャッキ3により推進させる。
【0009】
その次に、支圧壁9を反力に元押ジャッキ14を前方へ伸長し、発進立坑8内に布設した全てのコンクリート函体4を推進させる函体推進工程に移行する。
【0010】
コンクリート函体4の上面に並列で敷設する前記フリクションカットプレート23はその端部の上に掛止桁25を横架し、フリクションカットプレート23に突設した三角形状の係止フランジ24でこの掛止桁25にフリクションカットプレート23を固定する。
【0011】
前記掛止桁25はその端部を発進立坑8前面の坑口部両端の鏡土留矢板11に係合させた。
【0012】
このようにしてコンクリート函体4の推進時に生じる函体上部と函体上部の埋戻土または地山とのフリクションによるフリクションカットプレート23が前方に引っ張られる力に対して、前記発進立坑8前面の坑口部両端の鏡土留矢板11と掛止桁25が係合した部分の鏡土留矢板11前方の地山の受働土圧で支持する。
【0013】
なお、下記特許文献にはフリクションカット部材を地下道外郭構造体の接触面での摩擦抵抗により共動しないように、タイロッド部材や油圧ジャッキなどで反力壁に固定することが示されている。
【特許文献1】特開2008-144377号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記図9図10に示す従来の方法では、函体推進時に掛止桁25に伝達されるフリクションカットプレート23が受ける函体との摩擦抵抗による引張り力は、前記フリクションカットストッパー25と坑口部両端の鏡土留矢板11との係合部分のみで支持されるものである。
【0015】
したがって、坑口部分の土留が変形し周辺地盤への影響が大きくなる懸念がある。特に、発進立坑8が家屋等に近接している場合はその影響が大きく懸念される。
【0016】
また、前記特許文献1ではタイロット部材数が多く、これが発進立坑内へのコンクリート函体の吊り下ろしに支障をきたす。
【0017】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、発進立坑坑口部分に負担を掛けることなく、発進立坑からコンクリート函体を前方へ推進させる場合に生じるフリクションカットプレートの移動などを防止し、かつ構造簡易なので立坑内作業にも支障をきたさないコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため本発明は、コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置としては、発進立坑に設けた支圧壁の前に元押ジャッキを設置し、この元押ジャッキでコンクリート函体を推進させる場合において、コンクリート函体上面に敷設して並列するフリクションカットプレート端部上に横架する掛止桁と前記支圧壁と元押ジャッキの間に配置する支持部材と、これら掛止桁と支持部材とを連結する枠組みからなることを要旨とするものである。
【0019】
コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定方法としては、発進立坑に設けた支圧壁の前に元押ジャッキを設置し、この元押ジャッキでコンクリート函体を推進させる場合において、コンクリート函体上面に敷設して並列するフリクションカットプレート端部上に横架する掛止桁と前記支圧壁と元押ジャッキの間に配置する支持部材と、これら掛止桁と支持部材とを連結する枠組みからなる固定装置を使用し、前記元押しジャッキ伸長時に元押しジャッキ後端へ伝達される函体推進反力によりフリクションカットプレートの移動を防止することを要旨とするものである。
【0020】
本発明によれば、フリクションカットプレート後端は掛止桁を介して支圧壁と元押ジャッキの間に配置する支持部材で係止するので、元押しジャッキ伸長時に元押しジャッキ後端へ伝達される函体推進反力によりフリクションカットプレートの移動を防止することができる。
【0021】
また、掛止桁と支持部材とを連結する枠組みからなるので大掛かりな設備とならず設置作業が少なく施工日数が少なく、設置費用も少なくて済み経済的である。
【0022】
さらに、枠組みにより発進立坑中央部の開口が充分大きくとれる状態で設置されるため、発進立坑内のコンクリート函体や元押しジャッキには平面的に干渉せず、また発進立坑内へコンクリート函体の吊り下ろし作業等に支障をきたすこともないので、発進立坑での上下作業も安全に行える。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように本発明のコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法は、発進立坑坑口部分に負担を掛けることなく、発進立坑からコンクリート函体を前方へ推進させる場合に生じるフリクションカットプレートの移動などを防止し、かつ構造簡易なので立坑内作業にも支障をきたさないものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法の1実施形態を示す平面図である。
図2】本発明のコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法の1実施形態を示す縦断側面図である。
図3図1のA-A線矢視図である。
図4図1のB-B線矢視図である。
図5図1のC部拡大図である。
図6図1のC部拡大断面図である。
図7図2のE部拡大図である。
図8】本発明のコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法の1実施形態を示す要部の縦断正面図である。
図9】従来例を示す平面図である。
図10】従来例を示す縦断側面図である。
図11】オープンシールド工法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法の1実施形態を示す平面図、図中8は発進立坑を示す。
【0026】
この発進立坑8はオープンシールド工法におけるシールド機の発進立坑であり、オープンシールド工法は図11に示すように、左右の側壁板1aとこれら側壁板1aに連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機であるオープンシールド機1を使用するもので、オープンシールド機1は布設するコンクリート函体4の幅とシールド機の幅が同一で、前記側壁板1aと底板の先端を刃口2として形成し、また側壁板1aの中央又は後端近くにシールドジャッキ3を後方に向け上下に並べて配している。
【0027】
前記刃口2は側壁部分は掘削時に側部の地山崩壊を防止するためスライド式土留17として分割して可動に形成されている。
【0028】
発進立坑8は鋼矢板工法、親杭横矢板工法、ライナープレート工法等により築造され、シートパイル等の土留矢板10および支保工12で構成される。
【0029】
発進立坑8にはコンクリート函体4を発進立坑の所定の位置に据え付け後、前方へ函体4を推進させるための元押ジャッキ14と、前記元押しジャッキ14の伸長による函体4の推進反力を支持するための支圧壁9とを設置した。
【0030】
支圧壁9は鋼材を井桁状に組み、または無筋コンクリートを打設するものとし、必要に応じ鉄筋コンクリートとする。元押しジャッキ14は鋼材を組んで形成するジャッキ架台27に収納する。
【0031】
発進立坑8内では、砕石基礎20の上に均しコンクリート19を敷設し、その上にH鋼をレール状に並べその上の全面に鉄板を設置して構成したシールド機の据付及び発進のための受台18を形成した。
【0032】
図示は省略するが、発進立坑8内にオープンシールド機を設置し、推進させ、オープンシールド機と元押ジャッキ14との間にコンクリート函体4を設置し、元押ジャッキ14で推進させる。
【0033】
このようなコンクリート函体4の推進に際し、フリクションカットプレート23をコンクリート函体4の上面に敷設して並列配設するが、その固定装置としては、並列するフリクションカットプレート23端部上に横架する掛止桁25と前記支圧壁9と元押ジャッキ14の間に配置する支持部材32と、これら掛止桁25と支持部材32とを連結する枠組みからなるものとした。
【0034】
掛止桁25はフリクションカットプレート23に突設した三角形状の係止フランジ24でフリクションカットプレート23に固定する。掛止桁25は鏡土留矢板11に係合させた。
【0035】
前記支持部材32には縦向きの支圧鋼材を利用し、これを縦並びの元押ジャッキ14に係合するように左右に1対並び、前記枠組はこの支持部材32に架け渡す横桁である鋼材桁31と前記掛止桁25と掛止桁25と鋼材桁31を連結する連結部材29で形成した。枠組は全体としてロの字状のものである。
【0036】
前記連結部材29にはアングル状鋼材やチャンネ状鋼材、I型鋼などが利用でき、その両端は接続用ボルト・ナット30で前記掛止桁25と鋼材桁31に固定する。
【0037】
なお、元押しジャッキ14を載せているジャッキ架台27と支持部材32は溶接等で固定してもよい。
【0038】
次に前記本発明の固定装置の使用法について説明する。コンクリート函体4の推進時、コンクリート函体4とその上面に配設したフリクションカットプレート23の接触面の摩擦により、フリクションカットプレート23はコンクリート函体4の推進方向へ引っ張られようとする。
【0039】
それに伴って、鏡土留矢板11に係合している掛止桁25も引っ張られようとするが、掛止桁25に伝達された引張力は鏡土留矢板11を介して埋戻土5に支持された状態になっており、その埋戻し土5による受働土圧が反力として抵抗する。
【0040】
それに加えて、フリクションカットプレート23の引張力が掛止桁25および連結部材29、鋼材桁31による枠組を介して支持部材32に伝達され、元押しジャッキ14を伸長してコンクリート函体4を前方へ推進する推進反力がこの支持部材32を支圧壁9とジャッキ架台27とで挟み込むことでフリクションカットプレート23の前方への移動を防止する。
【0041】
なお、コンクリート函体4の大きさや埋戻土の土被りが大きいほど、フリクションカットプレート23とコンクリート函体4の接触面との摩擦力は大きくなるが、元押しジャッキ14も多数配設され、また元押しジャッキ14の伸長に伴い鋼材桁31、支持部材32に伝達される推進反力による押し圧も大きくなるので、フリクションカットプレート23は堅固に固定することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…オープンシールド機 1a…側壁板
2…刃口 3…シールドジャッキ
4…コンクリート函体 5…埋戻土
8…発進立坑 9…支圧壁
10…土留矢板 11…鏡土留矢板
12…支保工 14…元押しジャッキ
17…スライド式土留 18…受台
19…均しコンクリート 20…砕石基礎
23…フリクションカットプレート
24…係止フランジ 25…掛止桁
27…ジャッキ架台 28…坑口鋼材
29…連結部材 30…接続用ボルト・ナット
31…鋼材桁 32…支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11