(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096509
(43)【公開日】2024-07-16
(54)【発明の名称】受益権複層化信託設計システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240708BHJP
G06Q 40/00 20230101ALI20240708BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000011
(22)【出願日】2023-01-03
(71)【出願人】
【識別番号】721000985
【氏名又は名称】株式会社耶馬台コーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】宮地忠継
【テーマコード(参考)】
5L040
5L049
5L050
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB00
5L049CC32
5L050CC32
5L055BB00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】収益財産を対象として民事信託を組成するときに、受益権を収益受益権と元本受益権に分ける場合、収益財産の諸条件、民事信託の諸条件により形成される各受益権の計数を把握する受益権複層化信託設計システムを提供する。
【解決手段】委託者及びコンサルタントが受益権複層化信託の諸条件を決め、端末に入力してサーバにあるデータベースに記録し、その条件のもとに計算される収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税及び収益受益者所得税損失額を計算、出力させる。委託者又はコンサルタントは、信託の諸条件を変更して端末入力しサーバーに計算させ、一定の満足すべき結果を得る。次に収益受益者、元本受益者が端末よりこの数字を取得し自身の立場を形成し、不満ならば、端末より自身の要望条件を入力し、諸条件を変更して再度諸条件を変えて計算し、満足ならばその条件を受託者に連絡する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収益財産を対象として民事信託を組成するときに、受益権を収益受益権と元本受益権に分けた場合、その各々の価値と税額および収益受益権者の所得税損失額を計算し、インターネット上でも使用できる計算プログラム
【請求項2】
収益財産を対象として民事信託を組成するときに、受益権を収益受益権と元本受益権に分けた場合、その各々の価値と税額および収益受益者の所得税損失額の計算のため、収益財産の広さ、路線価、建物価格、収入金額(賃料)、経費、法定耐用年数、民事信託期間、基準年利率、収益非課税金額、収益贈与税率、収益控除額、元本非課税金額、元本贈与税率、元本控除額、収益受益者所得税率、収益受益者所得税控除額を入力し、データベースを作る。次に個別案件計算プログラムとして収益受益者の利益金額の計算をする場合、減価償却費を控除するかしないかの選択をし、指図してシステムに収益受益権金額、収益贈与税額、元本受益権金額、元本贈与税額、収益受益者所得税損失の金額を計算させ、出力させ、データベースに記録させる、請求項1の一部をなすコンピュータープログラム
【請求項3】
収益財産を対象として民事信託を組成するときに、受益権を収益受益権と元本受益権に分けた場合、その各々の価値と税額および収益受益者の所得税損失額の計算のため、収益財産の広さ、路線価、建物価格、収入金額(賃料)、経費、法定耐用年数、民事信託期間、基準年利率、収益非課税金額、収益贈与税率、収益控除額、元本非課税金額、元本贈与税率、元本控除額、収益受益者所得税率、収益受益者所得税控除額を入力し、データベースを作る。次に個別案件計算プログラムとして収益受益者の利益金額の計算をする場合、減価償却費を控除するかしないかの選択をし、指図してシステムに収益受益権金額、収益贈与税額、元本受益権金額、元本贈与税額、収益受益者所得税損失の金額を計算させ、出力させ、データベースに記録させるが、この時、収益受益権者、元本受益権者にとり最も有利な状態を実現するためには、これらの入力項目を多角的に変化させて計算しなければならない。この計算をするために、これらの入力項目を変更し、データベースを変更しなければならない。この変更をする、請求項1の一部をなすコンピュータープログラム
【請求項4】
システム公開に備えて、システムの最善を保つために、案件入力プログラム、個別案件計算プログラム、個別案件データプログラム、案件削除プログラムにIDとパスワードを設定した、請求項1の一部をなすコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収益財産を対象として民事信託を組成するときに、受益権を収益受益権と元本受益権に分ける場合、収益財産の諸条件、民事信託の諸条件により形成される各受益権の計数を把握する受益権複層化信託設計システム
【背景技術】
【0002】
我が国の信託は従来、免許を受けた大手金融機関などが受託者となる商事信託が中心であった。ところが、産業社会の進展により、個人が自分の財産に関し、自分の家族、あるいは自分の身近なものに任せる民事信託の必要性が認識され、平成19年に新しい信託法が施行され受託者に免許の必要のない民事信託が可能になった。この民事信託において、信託の利益を享受する受益者が指定されるのであるが、その受益者の持つ受益権については信託法はそれについての制限は規定しておらず、どのような形の受益権も可能であると解釈されている。ここに必然的に信託の収益を受け取る収益受益権と、信託の元本を受け取る元本受益権とを分けて受益者を設定するいわゆる受益権複層化信託が作られるようになる。例えば収益不動産を信託財産とした場合に、信託設定者である委託者が収益受益権を保有して、子供を元本受益者として将来に備えるとか、あるいは委託者の配偶者を収益受益者としてその経済を確保してやり、子供を元本受益者とする形などが人々が目指すところとなる。現にアメリカなどでは、そもそも民事信託というのは、夫人を収益受益者とし、子供を元本受益者とする、そういうものであるというような認識のある模様である。
しかるにわが国では、民事信託の歴史が浅いことが原因であると思われるが、受益権複層化信託は言うまでもなく、民事信託そのものもまだそれほど普及してはいない。
然しながら我が国のように高度に発達した資本主義国においては、従来からの相続法一本が法律制度的裏付けのため、相続に関して様々な制度的不備、不満、争いが多発し、その改善が求められている。財産がたくさんある人の相続の場合、どの財産がいくらの価値があり、そして誰が相続するのかで争いがおこる。また財産を夫人に相続する場合、そして子供がいない夫婦であった場合、その財産から出る収益についてはそれを夫人に与えるのは被相続人の意図するところであるが、夫人亡きあとは財産を被相続人の一族に与えたいと考える人もいる。特に先祖伝来の財産の場合にこういう要請がある。こういう場合その対応は従来の相続法ではなかなかむつかしかったものを、民事信託を使えば簡単に解決できる。例えば例に挙げた前者のケースでは、いくつかある財産を全部まとめて民事信託にし、相続人たる受益者には一定の比率で割り当てれば、だれがどの財産を取るかという争いは無くなる。もっとも従来型相続においても比率の相続はできるが、相続法はあくまでも各相続人の所有を前提としており、この場合は相続人の共有であり、財産処分には全員の同意が必要だが、信託の場合は、処分は受託者の単独判断でできる。また後者のケースでは、夫人に収益受益権を与え、元本受益権は被相続人の一族のその家系を継ぐべき人に与えれば目的を遂げられる。
このように民事信託は非常に有用なのであるが、日常生活、あるいは相続において本人が所有権を持つことを当然としてきたため、民事信託においては、表面上は委託者が対象財産の所有権を、たとえ一族の一人であろうとも、受託者に与えてしまうという点が根本で、そこがなかなか了解されず、浸透が遅い。従来からのやり方で財産を法人に与えたり、現物出資する方式もあるが、それはあくまでも別人格に対する譲渡である。民事信託で財産を移すときは、それは一見受託者に渡しているように見えるが、実は実質的な中身だけを受託者の裏にいる受益者に渡しているのである。
このような状況のもとに、更に一歩前進した受益権複層化信託が出てきた。
受益権複層化信託は、信託の受益者を多数にしたりすることではなく、受益権の内容そのものを色々に分解するのである。
こういう受益権複層化の方式は考え方によっては従来の仕組みでもできる。収益不動産に例を取る。
この場合は収益不動産の所有者が自分の土地、建物を例えば息子に譲るが、その時に同時にその収益不動産につき元の所有者宛の借地権、借家権を設定しそれの転貸借で収益を取り、借地権、借家権に期限を設け、この期間の間は土地、建物の賃料は無料であるというようなものであろう。この場合は従来型の評価で、息子の土地の評価は底地権割合となる。こういう場合、元の所有者本人の権利の評価は、借地権割合、そして建物は借家権割合となるのだが、新信託法に対する税制ではそういう風には考えなかった。元の所有者(この場合の信託契約のもとでは収益受益者)の権利の評価を収益還元法的に考えたのである。ここから必然的に、息子に与えられる土地、建物の評価は『収益物件の価格 ー 元の所有者の権利の評価』となる。これは税法の判断・決定である。
ここで、この税法の対応を見るに、そもそも収益還元法は不動産を売買するときの評価方法である。この評価方法についてみるに、民事信託において、収益を受け取れる収益受益権を元の所有者である委託者が保有している時は矛盾が表面化しないが、収益受益権を他者(例えば夫人)に与えるとなると贈与税が発生し、矛盾が出てくるが、そこは不問になっている。我が国の贈与税は、相続税逃れを防止するために非常に高くなっているが、民事信託に適用するときに問題が発生している。この問題に対する一つの相続法的解決が、相続法改正によって登場してきた配偶者居住権であるが、問題が完全に解決したとは言えない。さて、こういうような論点があるにしても、新信託法は開始され、受益権の複層化が登場してきた。
そして色々論点ははあるにせよ、受益権複層化信託は必要であり、民事信託の中の重要分野として認識はされつつある。
ここで、受益権複層化信託を実現するためには、対象財産の諸条件、民事信託の諸条件を色々な角度より定めて、それを基にそれぞれの条件の下での収益受益権の価格、元本受益権の価格、そして想定される税額を計算しなくてはならず、更にこのような色々な条件を変更した場合の各受益権の計数を計算できなければならないのだが、このようなコンピューターシステムはまだ登場していない。
文献としては受益権複層化信託を正面より捉え、これの向かうところと税務との矛盾を論じた『受益権複層化信託の法務と税務』(非特許文献1参照)、民事信託一般と税の取り扱いを説明している『相続対策で信託を使いこなす』(非特許文献2参照)があり、また新信託法施行直後から、各法律条文について、多様な解釈論を討論している『信託法セミナー1~4』(非特許文献3)がある。また、色々な適用場面を小説風に説明した『物語から見る民事信託』(非特許文献4)がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】高橋倫彦 「受益権複層化信託の法務と税務」日本法令 2020年8月20日発行
【非特許文献2】税理士宮田房枝 「相続対策で信託を使いこなす」中央経済社 2014年10月15日発行
【非特許文献3】能見義久、道垣内弘人 「信託法セミナー1~4」 有斐閣 2013年10月10日発行
【非特許文献4】宮地忠継 「物語から見る民事信託」プラチナ出版 2019年8月5日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
民事信託は非常に有用なのであり、その中の受益権複層化信託も今後のニーズは多いと思われる。しかしながらその実行のためにはいろいろな準備が必要である。先ずどの収益財産を選ぶかという事。そしてその選択の為にはそれぞれの収益財産についてその収益受益権価格、想定される収益贈与税額、元本受益権価格、想定される元本贈与税額および収益受益者が毎年の所得の計算において、減価償却費を計上しなかった場合に収益受益者に発生する所得税の損失額が計算できなければならない。この計算のためには各財産ごとの収益財産の現在価値(広さ×路線価+建物価格)、収入金額、経費、法定耐用年数、民事信託期間、基準年利率、収益受益者の減価償却費控除の可否、また収益、元本ごとの非課税金額、贈与税率、控除額、および収益受益者の減価償却費の現在価値、所得税率、控除額を把握し記録しなければならない。ちなみに贈与税額というのは、収益受益権を委託者が保持している時は委託者に発生はしないが、これを配偶者等に与えた時はその人に発生する。そして元本受益権を計算するときは以下の算式となる。
収益財産の現在価値 ー 収益受益権価格 = 元本受益権価格
ここで元本受益権を子供等の特定の人に与えるときはそこに贈与税が発生する。また、対象物件の減価償却費を収益受益者が収益の計算において控除するかの判断により収益受益権価格が変化し、それにより元本受益権価格が変化する。つまり、受益権複層化信託を検討する場合は、各受益権の価格を知ることはもとより、更にそれぞれの税額及び収益受益者の所得税損失額(減価償却を取らないことによる損失)を知らねばならないのである。そして、これらの項目(収益財産の広さ、路線価、建物価格、収入金額(賃料)、経費、法定耐用年数、民事信託期間、基準年利率、収益非課税金額、収益贈与税率、収益控除額、元本非課税金額、元本贈与税率、元本控除額、収益受益者所得税率、収益受益者所得税控除額そして減価償却費控除の可否)を変化させるごとに、収益受益権価格、元本受益権価格また各贈与税額、収益受益者の所得税損失は大きく変動する。この計算を具体的物件ごとに行わなければならなく、そしてその時当事者の納得を得ながら行わなくてはならない。
この計算は例えばエクセルなどを使ってできることはできるのであるが、作業に時間がかかり、また物件ごとのデータを記憶させておくことはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決する手段として、コンピューター入力による諸条件(収益財産の広さ、路線価、建物価格、収入金額(賃料)、経費、法定耐用年数、民事信託期間、基準年利率、収益非課税金額、収益贈与税率、収益控除額、元本非課税金額、元本贈与税率、元本控除額、収益受益者所得税率、収益受益者所得税控除額そして減価償却費控除の可否)の入力、その際のID、パスワードの活用、そしてそれらのデータのデータベースへの記録、そして、これらの項目の変更処理と、そのデータベースへの変更処理、データベースのデータによる個別案件ごとの収益受益権、元本受益権及び各贈与税額と所得税損失額の計算、そしてそれらの処理のインターネットにおいての利用がある事を見出し、そのプログラムを作り発明を完成するに至った。すなわち、本発明は収益財産を対象として民事信託を組成するときに、受益権を収益受益権と元本受益権に分けた場合、その各々の価値と税額および収益受益権者の所得税損失額を計算し、インターネット上でも使用できる計算プログラムである。。
【発明の効果】
【0006】
受益権複層化信託を設定する場合に、収益受益権の価格と贈与税額、元本受益権の価格と贈与税額、収益受益者の所得税損失額を計算するが、本発明によりそれを非常に短時間で計算できるようになり、またデータをデータベースに記録しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明の全体構成で、プログラムを処理するサーバとネットワークを通じて入出力する情報処理端末を示している 。
【
図2】
図2は委託者又はコンサルタントが受益権複層化信託の諸条件を端末を通じて入力し、サーバにより収益受益権、元本受益権、各贈与税額、所得税損失額の計算をさせ、受益者にも開示した後、更に信託諸条件の変更により各受益権、各税額および所得税損失額の変更を見、委託者による最終決定に至るプログラムの連続を示すシークエンス図である。
【
図3】
図3は主として委託者又はコンサルタント及び受益者がインターネットに入り、自己の行動を選択するための入力プログラムの入力画面である。
【
図4】
図4は委託者又はコンサルタントが受益権複層化信託を設定するために諸条件をデータベースに入力するための入力プログラムの入力画面である。
【
図5】
図5は
図4で入力されたデータからの受益権複層化信託による、収益受益権価格、元本受益権価格、それぞれの贈与税額を出力させるための複層化受益権出力プログラム(個別案件計算プログラム)の入力画面である。ここで収益受益者が減価償却費を控除するかどうかを決める。
【
図6】
図6は
図4及び
図5で入力された受益権複層化信託による、収益受益権価格、元本受益権価格、それぞれの贈与税額および収益受益者の所得税損失額を出力する複層化受益権出力プログラム(個別案件計算プログラム)の出力画面である。
【
図7】
図7は物件番号ごとの個別のデータベース内容を見るための出力プログラムである。
【
図8】
図8から
図25までは信託設定における諸条件の変更プログラムである。
図8は案件の広さ変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図9】
図9は案件の路線価変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図10】
図10は案件の物件価格変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図11】
図11は案件の建物価格変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図12】
図12は案件の収入(賃料)変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図13】
図13は案件の経費変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図14】
図14は案件の法定耐用年数変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図15】
図15は案件の減価償却費変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図16】
図16は案件の信託期間変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図17】
図17は案件の基準年利率変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図18】
図18は案件の収益受益者非課税金額変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図19】
図19は案件の収益受益者贈与税率変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図20】
図20は案件の収益受益者控除額変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図21】
図21は案件の元本受益者非課税金額変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図22】
図22は案件の元本受益者贈与税率変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図23】
図23は案件の元本受益者控除額変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図24】
図24は案件の収益受益者所得税率変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図25】
図25は案件の所得税控除額変更のための入力プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図26】
図26は案件の削除プログラムである。(出力はデータベースに対する変更のみ)
【
図27】
図27は世田谷区梅ヶ丘のアパートの民事信託モデルケースである。
【
図29】
図29は中野区上鷺のマンションの民事信託のモデルケースである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明の実施形態にかかわるサーバ100を含むネットワークの構成を示した構成図である。サーバ100はインターネット等の通信ネットワークを介して、複数の情報処理端末200のそれぞれと通信可能に接続されている。サーバ100は情報処理端末200を通じて民事信託の委託者またはコンサルタントによりまず信託情報が設定され、その後条件を変更し計算が行われる。更に情報処理端末200を操作する民事信託の受益者も適宜インターネットからの計数を見ながら、信託の条件に理解を示したり、また要望条項を入力する。サーバ100はこのようにして本システムを動かしていく。
サーバ100は一般的なコンピューターとしての構成を有する。すなわちサーバ100はCPUまたはGPUとして使われるプロセッサ101と、DRAM等によって構成されデータやプログラムを一時的に記憶するメモリ105と、民事信託の委託者又はコンサルタントが自身による計算あるいは受益者との間で情報のやり取りを行う入出力インターフェイス121と、有線または無線の通信を制御する通信インターフェイス122と、磁気ディスクまたはフラッシュメモリ等によって構成されデータやプログラムを記憶するストレージ130とを備える。プロセッサ101はストレージ130に記憶されているプログラムをメモリに呼び込んで当該プログラムに含まれている命令を実行する。
入出力インターフェイス121はキーボード、マウス、カメラ等により構成され、通信インターフェイス122はネットワークアダプター、各種の通信ソフトウェアー等によって構成される。
本実施形態においてストレージ130は民事信託の委託者又はコンサルタントが自身による計算あるいは受益者との間の条件確認・変更のために使う複層化受益権入力プログラム、複層化受益権出力プログラム、データベース出力プログラム、広さ変更プログラム、路線価変更プログラム、建物価格変更プログラム、収益(賃料)変更プログラム、経費変更プログラム、法定耐用年数変更プログラム、信託期間変更プログラム、基準年利率変更プログラム、非課税金額変更プログラム(収益・元本)、贈与税率変更プログラム(収益・元本)、控除額変更プログラム(収益・元本)、収益受益者所得税率変更プログラム、所得税控除額変更プログラム、削除プログラムとそれらにより形成されたデータを記録するデータベース133を格納している。
情報処理端末200はパソコン、タブレット、スマートフォン等を使用しており、コンピューターとしての機能を備える。
【0009】
図2は委託者又はコンサルタントおよび受益者が自分自身での計算又は相互に絡んで受益権複層化信託の諸条件を決めていく処理の流れを示したシークエンス図である。
まず委託者及びコンサルタントが受益権複層化信託の諸条件を決め、端末に入力してサーバにあるデータベースに記録し、次にその条件のもとに計算される収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税、収益受益者所得税損失額を計算、出力させるが、その数字が委託者の満足するものであるとは限らない。委託者又はコンサルタントは信託の諸条件を変更して端末入力しサーバーに計算させ、一定の満足すべき収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税、収益受益者所得税損失額に到達する。次に収益受益者、元本受益者が端末よりこの数字を取得し自身の立場を形成する。不満の場合は、端末より自身の要望条件を入力し、諸条件を変更する。委託者はこれらの変更事項及びその条件のもとの収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税、収益受益者所得税損失額を見て、不満ならば再度諸条件を変えて計算し、満足ならばその条件を受託者に連絡する。受託者了解のもとに受益権複層化信託の条件が整い、委託者と受託者の間で民事信託が契約される。
【0010】
図3は委託者又はコンサルタントおよび受益者が信託設定および条件変更に際して使用するプログラムの一覧図であり、関係者はこの図より必要なプログラムを選択する。
委託者又はコンサルタントは信託設定において、複層化受益権入力、複層化受益権出力、データベース出力の各プログラムにより信託を設定し、収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税、収益受益者所得税損失額のデータを得る。この数字に満足しない時は、広さ変更プログラム以下の変更プログラムで条件を変更し新たな収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税、収益受益者所得税損失額を得る。これらの計数を収益受益者、元本受益者に検討させ、不満があるときは、これらの受益者が変更プログラムで変更点を入力する。尚これらの場合、システムの公開に備えて、システムの最善を保つために、案件入力プログラム(複層化受益権入力)、個別案件計算プログラム(複層化受益権出力)、個別案件データプログラム(データベース出力)、案件削除プログラムにIDとパスワードを設定し、管理者が管理できるようにした。
【0011】
図4は委託者およびコンサルタントによる当初の信託条件の設定プログラムである。各入力条件について論点ある場合は、この後の各条件の変更プログラムで説明する。この当初の入力の段階では収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税、期間中の減価償却額、所得税損失は分からないので入力する必要は無い。
【0012】
図5について述べる。
図4で入力されたデータは一旦ベータベースに蓄積されている。そこでデータベースから引用してきて計算し、収益受益権価格、元本受益権価格、それぞれの贈与税額、受益者所得税損失額を算出、出力するのだが、それをする個別案件計算プログラム(複層化受益権出力プログラム)を稼働させるための入力プログラムである。ここで収益受益者が減価償却費を控除するかどうかを決める。
【0013】
図6は
図4の段階で入力されたものについて、
図5の段階で指示されて、物件番号入力により結果を出力させたものである(個別案件計算プログラム)。収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税、収益受益者所得税損失額を出す。本システムの中枢をなすプログラムが使われる。収益受益権価格は収益受益者が将来受けるべき利益の価額ごとに、現時点からそれぞれの時期までの期間に対して基準年利率による複利原価率を乗じて計算した金額の合計額である。
元本受益権価格は以下の算式による。
収益財産の現在価値(広さ×路線価+建物価格)ー 収益受益権価格 = 元本受益権価格
各税額については上記収益受益権価格、元本受益権価格に対して、
図4で入力した各贈与税率及び控除額により計算される。
収益受益者所得税損失額は収益受益者が毎年の利益を計算するに当たり、減価償却を取らなかった場合の自己の損失額であり、信託期間の毎年の減価償却費に対し、現時点からそれぞれの時期までの期間に対して基準年利率による複利原価率を乗じて計算した金額の合計額を算出し、その金額に対し、所得税率、控除額を適用して得る金額である。。
【0014】
図7は個別の物件番号(信託番号)ごとの
図4、
図5、
図6で入力あるは形成されたもののデータベースの出力である。本システムではデータの入力、形成によって目的たる収益受益権価格、収益受益者贈与税、元本受益権価格、元本受益者贈与税、収益受益者所得税損失額がどんどん変動するが、そのときに、これらの入力された信託条件全体を再度検討することも多い。こういう時に、このプログラムを使ってデータベースを見る。
【0015】
図8は収益財産として収益不動産が利用されるときに、物件価格を算出するため
図4により広さが入力されるが、それの変更プログラムの入力画面である。
【0016】
図9は収益財産として収益不動産が利用されるときに、物件価格を算出するため
図4により路線価が入力されるが、それの変更プログラムの入力画面である。
【0017】
図10は信託の取り扱う物件価格の変更プログラムである。ここには何を入れてもよいのだが、そもそも目的が収益受益権や元本受益権の価格や贈与税額を算出するところにあるのだから、主として、相続税や贈与税の課税価格を入れることになる。実際には課税価格はすでに広さと路線価と建物価格の入力によって計算されているので、このプログラムは、更にデータベースの物件価格を修正したいときに使われるのだが、計算に使う物件価格の変更は広さと路線価と建物価格の変更によって行われるので、稼働される機会はあまりない。
【0018】
図11は収益財産として収益不動産が利用されるときに、物件価格を算出するため
図4により建物価格が入力されるが、それの変更プログラムの入力画面である。
【0019】
図12は信託の取り扱う収入変更のための入力プログラムである。収入に関しては信託期間中一定している場合その数字を入れればよいのだが。一定していない場合がありうる。将来の数字が確定している場合はその数字も考慮に入れ、全体の平均値を入れるなどの工夫が必要である。
【0020】
図13は信託の取り扱う経費変更のための入力プログラムである。経費の場合にも信託期間中一定している場合その数字を入れればよいのだが。一定していない場合がありうる。将来の数字が確定している場合はその数字も考慮に入れ、全体の平均値を入れるなどの工夫が必要である。
【0021】
図14は信託の取り扱う法定耐用年数変更のための入力プログラムである。各年度の減価償却費は建物価格を法定耐用年数で除して計算される。中古建物の場合は、当該中古建物の残存耐用年数をここの法定耐用年数に入れ替えて減価償却費を計算する。
【0022】
図15は信託の取り扱う減価償却費変更のための入力プログラムである。システムの中で減価償却費は建物価格と法定耐用年数から計算されるので、ここのデータは、単にデータベースに記録するときだけに使われる。物件価格と同じように、あまり稼働される機会はない。
【0023】
図16は信託の取り扱う信託期間変更のための入力プログラムである。信託期間が伸びれば、収益受益権価格はそれに連動して増加することになる。しかし、収益受益権者の年齢に比して、あまりに大きな期間は、税務上不自然と取られる可能性がある。
【0024】
図17は信託の取り扱う基準年利率変更のための入力プログラムである。この数字の活用により、収益受益権の現在価値を出す。この数字は、相続税法の基本通達の中に記述されていている。(2022年11月12日現在は0.5%)基本的には公定歩合等の市場金利に連動している。基準年利率が上がれが、収益受益権の現在価値は減少するし、下がれば増加する。
【0025】
図18は案件の収益受益者非課税金額変更のための入力プログラムである。委託者が自分で収益受益者になるときは、贈与税の問題は発生しないが、配偶者や子供を収益受益者に指定するときは贈与税が発生する。この時は、贈与税の課税価格につき非課税金額を控除できる。原則は一人1年間につき1,100,000円であるが、相続時精算課税を活用すると25,000,000円が可能であるが、活用後は毎年の非課税金額を使えないので、活用は多くない。現在毎年の非課税金額の利用可能性も検討されていて、税制改正の場合は相続時精算課税の利用も増える可能性がある。
【0026】
図19は案件の収益受益者贈与税率変更のための入力プログラムである。税率は累進課税になっているため、贈与税率を入力しても、更に控除税額により金額を控除しなければ正確な税の計算はできない。
【0027】
図20は案件の収益受益者控除額変更のための入力プログラムである。贈与税の税率は累進課税になっているため、贈与税率を入力しても、更に控除税額により金額を控除しなければ正確な税の計算はできない。贈与税率を変更した時には、それに対応する控除税額も変更する必要がある。
【0028】
図21は案件の元本受益者非課税金額変更のための入力プログラムである。今現在資金を必要としない委託者の子供などが元本受益者になる事が多い。この場合贈与税が発生する。この時は、贈与税の課税価格につき非課税金額を控除できる。原則は一人1年間につき1,100,000円であるが、相続時精算課税を活用すると25,000,000円が可能であるが、活用後は毎年の非課税金額を使えないので、活用は多くない。現在毎年の非課税金額の利用可能性も検討されていて、税制改正の場合は相続時精算課税の利用も増える可能性がある。
【0029】
図22は案件の元本受益者贈与税率変更のための入力プログラムである。税率は累進課税になっているため、贈与税率を入力しても、更に控除税額により金額を控除しなければ正確な税の計算はできない。
【0030】
図23は案件の元本受益者控除額変更のための入力プログラムである。贈与税の税率は累進課税になっているため、贈与税率を入力しても、更に控除税額により金額を控除しなければ正確な税の計算はできない。贈与税率を変更した時には、それに対応する控除税額も変更する必要がある。
【0031】
図24は案件の収益受益者所得税率変更のための入力プログラムである。収益受益者が信託内の自己の利益計算において、減価償却を利用しなかった場合、計算上はその受益者が減価償却を取らなかったことによる損失が発生することになる。この損失は所得税上の損失のため、所得税率が適用になる。所得税は累進課税のため、課税金額が変化すると税率も変わる。税率の変更入力が必要になる。
【0032】
図25は案件の収益受益者所得税控除額変更のための入力プログラムである。収益受益者が減価償却を利用しなかったとき、計算上収益受益者所得税損失が発生するが、所得税は累進課税のため、税率を適用した際は、控除額を控除しなければならない。税率を変更した時には、控除額の変更も必要になる。
【0033】
図26は案件をデータベース上削除するときの入力プログラムである。案件終了、取り消しなどで使う。
【0034】
図27は委託者が収益受益者になり、子供が元本受益者になった場合のモデルケ-スのデータベースの出力である。本件、複層化信託では極めて一般的なタイプである。対象物件はアパート、土地・建物合わせて1億8170万円であり、うち建物は築20年の中古住宅であり価格は2000万円である。中古なので耐用年数は6年となる。土地100坪で建蔽率60%容積率200%のところに2階建のアパートを建てるから、総床面積は120坪である。賃料は坪当たり9000円とすると年間賃料収入は1296万円である。経費は年間100万円、信託期間15年、基準年利率0.5%である。この場合委託者が持つ収益受益権の金額は1億7242万2831円となる。子供の元本受益権の金額は927万7169円となり、元本受益者贈与税額は155万3100円となる。
【0035】
図28は
図27のケースの修正版である。関係者と協議の結果、信託期間が15年では長すぎるにで、12年にしようということになった。他の条件は変えないことにした。この結果、息子の元本受益権の金額は4273万7572円となり、贈与税額は1666万8700円となった。
信託年数を短縮したのでやむなしというところか。
【0036】
図29は
図27と同じく委託者が収益受益者になり、子供が元本受益者になったモデルケースである。対象物件はマンション、土地・建物合わせて4億1361万円であり、うち建物は築20年の中古住宅であり価格は当初の建築価格4億5000万円より年数経過により2億5851万円となっている。中古マンションなので耐用年数は31年となる。土地100坪で建蔽率60%容積率500%のところに5階建のマンションを建てるから、総床面積は300坪であるが専用面積比率を80%とすると賃貸面積は240坪である。。賃料は坪当たり1万円とすると年間賃料収入は2880万円である。経費は年間150万円、信託期間15年、基準年利率0.5%である。この場合委託者が持つ収益受益権の金額は3億9357万3853円となる。子供の元本受益権の金額は2003万6147円となり、元本受益者贈与税額は587万1200円となる。
【0037】
図30は
図29のケースの修正版である。委託者は子供の元本受益権の価格をもう少し下げたいと考えた。知り合いの不動産鑑定士に頼んでマンション建物の鑑定価格を出してもらった。何とか1500万円下げが実現した。元本受益権価格は503万6147円となり、贈与税は49万400円となった。
これらにおいて、受益権金額や贈与税金額などのような計算の結果出る数字以外の諸条件はすべて変更できるので、色々に変更し、瞬時に計算結果が出る。システムが民事信託の設定に大いに役立つこととなる。
【0038】
信託期間中の収益受益者の死亡の場合の処置は、信託契約で決めておく必要があるが、一般的には、その場合には残っている収益受益金の金額が、元本受益者に対する相続財産となり、そこに対して相続税がかかる。元本受益権は、当初から元本受益権者のものだから、相続税はかからない。
【0039】
複層化信託についての考察
複層化信託には、大まかに言うと2種類あり。一つは収益受益権を委託者が保持している。場合であり、一つは収益受益権を配偶者あるいは障害者等が保持している場合である。後者は収益受益権設定の時に、受益者がそれなりの贈与税を払っている。そして物件価格から収益受益権価格を控除したものが元本受益権なので、そこで元本受益権者がまた贈与税を払い、全体がそれなりに筋が通っているように見える。前者の場合にどうなるか。この場合は、委託者が自分で収益受益権を保持しているので、贈与税は起きない。そして計算上出てきた収益受益権価格を物件価格より控除したものが元本受益権価格なので、ここでは全体で元本受益権の設定に対する贈与税しか発生していないように見え、税務上多少のメリットがあるように見える。しかしこれは、本当にメリットなのであろうか。この事の裏には、論理的な大きな矛盾と、また土地に対するある種の楽観論が潜んでいる。
ここでは分かりやすくするために、題材を収益不動産に絞る。収益不動産の場合、まず収益不動産の価格が問題になる。本システムにおける、『物件価格』である。この場合、建前としては一応、時価となっている。(相続税法22条:相続、遺贈、または贈与により取得した財産の価額は当該財産の取得の時における時価による) しかし時価が分からないので、多くの場合相続税評価額を使う。この場合は、土地の路線価と、建物の固定資産税評価額が基準となる。相続税評価額が時価(つまり物件の収益力)と合わない場合どうなるか。分かりやすくするため、具体的に考えてみよう。
まずは路線活が高くて実際には収益の上がらない物件を持っている場合には、収益受益権の金額が小さくなり、元本受益権の金額が大きくなる。これにより贈与税の金額が大きくなる。逆に路線価がまだ高くなっていないのだが、実際の物件の収益力が高い場合には、元本受益権の金額は極端に小さくなりうる。こういう事を論理的に調整することは難しい。
ここで、元本受益権価格が小さいからと言って、メリットがあると言っても、それは法律制度そのものの構造の問題であり、非難したりすべきことではない。
次に、この前提があるとして、更に元本受益権そのものについて考える。例えば信託期間を15年とする。この場合、元本受益者には15年間は何も来ない。元本受益権というのはそういう権利なのである。しかし、世の多くの人々は楽観的な意識を持っており、15年後の信託終了では元本受益者は大きな財産が貰えると思っている。しかし本当にそうであろうか。15年後の事がどこまで分かっているのか。昨今でも、世界は色々の事で変動を起こしている。土地の利用形式、人々の生活様式、またその建物に対する修理、修繕の実行、その他で、不動産を取り巻く状況はどんどん変わる。信託終了時には、その建物、あるいはその土地は何の価値も生み出さないかもしれないし、あるいは大きな価値になっているかもしれない。この辺は全く分からない。
だから、当初の信託設定時に、元本受益者が、物件価格から収益受益権価格を控除したものについて、授与されたものとされ、贈与税をはらうのは当然のこととし、その先の市場の変化は問われないのは当然の事なのである。一般的に、通常の不動産や、株式を贈与を受けた人は、その先にそれがどういう価格になろうが、売却しない限り税金はかからないのである。こう考えると、複層化信託において、元本受益権に一定の贈与税をかけ、それで終了とすることは何ら不思議な事ではなく、むしろ当然の事なのである。
つまり、このスキームはたとえ税のメリットを狙って使われたとしても、メリットがあるかどうかは分からないのである。収益財産を持つ人が、その財産の実態は自分の所にとどめておいて、将来的な、価値の不確定の財産を信託を使って贈与しようとすればこういう構造にならざるを得ず、きわめて自然なストラクチャーなのである。