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特開2024-96518操作されたTGFBRIIバリアント及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096518
(43)【公開日】2024-07-16
(54)【発明の名称】操作されたTGFBRIIバリアント及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240708BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240708BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240708BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240708BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240708BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20240708BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240708BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240708BHJP
   C07K 14/495 20060101ALN20240708BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240708BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240708BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/00 C
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61K38/16
A61K39/395 E
A61K39/395 D
C07K14/495
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】50
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023197259
(22)【出願日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】63/436,822
(32)【優先日】2023-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523440260
【氏名又は名称】エフビーデー バイオロジクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジインタン
(72)【発明者】
【氏名】クオ パンシェン
(72)【発明者】
【氏名】チュオ ゾン シェン
(72)【発明者】
【氏名】ツェン チーリン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG26
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA23
4C084CA53
4C084MA55
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA13
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085DD62
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA30
4H045DA51
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】限定された毒性でTGFβRII経路を標的とするがん療法を提供する。
【解決手段】特定の配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、前記特定の配列のS49及びD118に対応する位置に1つ以上のアミノ酸変異を含む、操作されたTGFβRIIポリペプチドを提供する。また、操作されたTGFβRIIポリペプチド、又は操作されたTGFβRIIポリペプチドを含むタンパク質構築物を産生する方法を提供する。さらに、がんを有する対象を治療する方法であって、治療有効量の、操作されたTGFβRIIポリペプチド又はタンパク質構築物を含む組成物を、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号7のS49及びD118に対応する位置に1つ以上のアミノ酸変異を含む、操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項2】
(a)配列番号7のS49に対応するアミノ酸が、G、A、L、M、F、W、K、Q、E、P、V、I、C、Y、H、R、N、D、又はTであること、及び
(b)配列番号7のD118に対応するアミノ酸が、G、A、L、M、F、W、K、Q、E、S、P、V、I、C、Y、H、R、N、又はTであること
のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項3】
配列番号7のS49に対応するアミノ酸が、E又はQである、請求項1又は2に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項4】
配列番号7のD118に対応するアミノ酸が、Eである、請求項1~3のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項5】
配列番号7のS49に対応するアミノ酸が、Eである、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項6】
配列番号7の32位に対応するアミノ酸が、Dである、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項7】
配列番号7の119位に対応するアミノ酸が、Eである、請求項1~6のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項8】
配列番号7~12のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項9】
配列番号8と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項10】
配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項11】
配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項12】
配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項13】
配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項14】
前記操作されたTGFβRIIポリペプチドとTGFβ1との間のオフレートが、野生型TGFβRIIとTGFβ1との間のオフレートよりも低い、請求項1~13のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項15】
前記操作されたTGFβRIIポリペプチドとTGFβ3との間のオフレートが、野生型TGFβRIIとTGFβ3との間のオフレートよりも低い、請求項1~14のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項16】
TGFβ2に結合しない、請求項1~15のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項17】
TGFβ1におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する、請求項1~16のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項18】
TGFβ3におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する、請求項1~17のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項19】
水素結合相互作用を介して、TGFβ1におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項20】
水素結合相互作用を介して、TGFβ3におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する、請求項1~19のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項21】
TGFβ(例えば、TGFβ1)を捕捉し得、それによって、腫瘍微小環境を改善し得る、請求項1~20のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項22】
TGFβ(例えば、TGFβ1)とTGFβRIIとの間の結合をブロックし得るか又はそれに干渉し得る、請求項1~21のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項23】
TGFβ(例えば、TGFβ1)と、腫瘍細胞、線維芽細胞、又は免疫細胞の表面上で発現されたTGFβRIIとの間の結合をブロックし得るか又はそれに干渉し得る、請求項1~22のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項24】
CH2ドメイン及びCH3ドメインを更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項25】
ヒンジ領域を更に含む、請求項24に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項26】
前記CH2ドメインが、IgG CH2ドメインであり、前記CH3ドメインが、IgG CH3ドメインである、請求項24又は25に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項27】
任意選択でリンカー配列を通して、(a)前記ヒンジ領域若しくはCH2ドメインのN末端、又は(b)前記CH3ドメインのC末端のいずれかに連結されている、請求項24~26のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項28】
配列番号1~6のいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチドを含む、タンパク質構築物。
【請求項30】
2つ以上の操作されたTGFβRIIポリペプチドを含む、請求項29に記載のタンパク質構築物。
【請求項31】
前記操作されたTGFβRIIポリペプチドのうちの少なくとも2つが同一である、請求項30に記載のタンパク質構築物。
【請求項32】
前記操作されたTGFβRIIポリペプチドのうちの少なくとも2つが異なる、請求項30に記載のタンパク質構築物。
【請求項33】
Fc領域を更に含む、請求項29~32のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項34】
前記Fc領域が、IgG4 Fc領域である、請求項33に記載のタンパク質構築物。
【請求項35】
前記Fc領域が、IgG1 Fc領域(例えば、LALA変異又はLALA-PG変異を有する)である、請求項34に記載のタンパク質構築物。
【請求項36】
前記操作されたTGFβRIIポリペプチドが、前記Fc領域のC末端に連結されている、請求項33~35のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項37】
前記操作されたTGFβRIIポリペプチドが、ペプチドリンカーを介して前記Fc領域のC末端に連結されている、請求項33~35のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項38】
請求項1~28のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド、第1のCH2ドメイン、及び第1のCH3ドメインを含む、第1の融合ポリペプチドと、
第2のCH2ドメイン及び第2のCH3ドメインを含む、第2の融合ポリペプチドと
を含み、
前記第1の融合ポリペプチド及び前記第2の融合ポリペプチドが、互いに会合し、二量体を形成する、
タンパク質構築物。
【請求項39】
前記第2の融合ポリペプチドが、第2の操作されたTGFβRIIポリペプチドを更に含む、請求項38に記載のタンパク質構築物。
【請求項40】
請求項1~28のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド又は請求項29~39のいずれか一項に記載のタンパク質構築物と、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項41】
請求項1~28のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド又は請求項29~39のいずれか一項に記載のタンパク質構築物をコードする、核酸。
【請求項42】
請求項41に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項43】
請求項41に記載の核酸又は請求項42に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項44】
CHO細胞である、請求項43に記載の細胞。
【請求項45】
操作されたTGFβRIIポリペプチド、又は前記操作されたTGFβRIIポリペプチドを含むタンパク質構築物を産生する方法であって、
(a)請求項43又は44に記載の細胞を、前記細胞が前記操作されたTGFβRIIポリペプチド又は前記タンパク質構築物を産生するのに十分な条件下で培養することと、
(b)前記細胞によって産生された前記操作されたTGFβRIIポリペプチド又は前記タンパク質構築物を収集することと
を含む、前記方法。
【請求項46】
がんを有する対象を治療する方法であって、
治療有効量の、請求項1~28のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド又は請求項29~39のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を含む組成物を、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
前記対象が、固形腫瘍又は血液がんを有する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記がんが、乳がん、卵巣がん、神経膠腫、結腸がん、肝細胞がん、前立腺がん、腎細胞がん、黒色腫、肺がん、膵臓がん、又は肝がんである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
腫瘍増殖の速度を減少させる方法であって、
腫瘍細胞を、有効量の、請求項1~28のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド又は請求項29~39のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を含む組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項50】
腫瘍細胞を死滅させる方法であって、
腫瘍細胞を、有効量の、請求項1~28のいずれか一項に記載の操作されたTGFβRIIポリペプチド又は請求項29~39のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を含む組成物と接触させることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2023年1月3日に出願された、米国仮特許出願第63/436,822号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、52246-0011WO1_SL_ST26.xmlと名付けられたXMLファイルとして電子的に提出された配列表を含む。2023年10月4日に作成されたXMLファイルは、サイズが19,331バイトである。XMLファイル中の資料は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
技術分野
本開示は、操作されたTGFβRIIバリアント、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
2型TGFベータ受容体(TGFΒR2、TGFβRII、又はTβRII)は、TGF-βファミリーの全てのメンバーのリガンド結合受容体であり、線維芽細胞を含む事実上全ての細胞型において発現される。
【0005】
トランスフォーミング増殖因子(TGF)βシグナル伝達経路は、増殖、分化、接着、運動性及びアポトーシスを含む多くの細胞プロセスに関与する。これらの機能は、悪性細胞において頻繁に破壊され、II型TGFβ受容体(TGFβRII)は、その後、腫瘍抑制遺伝子(TSG)であることが実証された。TGFβシグナル伝達経路は、正常細胞においてTSGとしてのその役割に則して強力な増殖阻害を媒介し、がん細胞は、遺伝子機構及びエピジェネティック機構の両方を使用して、TGFβRIIを不活性化する。
【0006】
正常細胞及びがん細胞の両方におけるその役割を考慮すると、限定された毒性でTGFβRII経路を標的とするがん療法を開発することの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、操作されたTGFβRIIバリアント、及びその使用方法に関する。
【0008】
一態様では、本開示は、配列番号7と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号7のS49及びD118に対応する位置に1つ以上のアミノ酸変異を含む、操作されたTGFβRIIポリペプチドに関する。
【0009】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、
(a)配列番号7のS49に対応するアミノ酸が、G、A、L、M、F、W、K、Q、E、P、V、I、C、Y、H、R、N、D、又はTであること、及び
(b)配列番号7のD118に対応するアミノ酸が、G、A、L、M、F、W、K、Q、E、S、P、V、I、C、Y、H、R、N、又はTであること
のうちの1つ以上を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、E又はQである。
【0011】
いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、Eである。
【0012】
いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、Eである。
【0013】
いくつかの実施形態では、配列番号7の32位に対応するアミノ酸は、Dである。
【0014】
いくつかの実施形態では、配列番号7の119位に対応するアミノ酸は、Eである。
【0015】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号7~12のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号8と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドとTGFβ1との間のオフレートは、野生型TGFβRIIとTGFβ1との間のオフレートよりも低い。
【0022】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドとTGFβ3との間のオフレートは、野生型TGFβRIIとTGFβ3との間のオフレートよりも低い。
【0023】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、TGFβ2に結合しない。
【0024】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、TGFβ1におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する。
【0025】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、TGFβ3におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する。
【0026】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、水素結合相互作用を介して、TGFβ1におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する。
【0027】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、水素結合相互作用を介して、TGFβ3におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する。
【0028】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、TGFβ(例えば、TGFβ1)を捕捉し得、それによって、腫瘍微小環境を改善し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、TGFβ(例えば、TGFβ1)とTGFβRIIとの間の結合をブロックし得るか又はそれに干渉し得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、TGFβ(例えば、TGFβ1)と、腫瘍細胞、線維芽細胞、又は免疫細胞の表面上で発現されたTGFβRIIとの間の結合をブロックし得るか又はそれに干渉し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、CH2ドメイン及びCH3ドメインを更に含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、ヒンジ領域を更に含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、IgG CH2ドメインであり、CH3ドメインは、IgG CH3ドメインである。
【0034】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、任意選択によりリンカー配列を通して、(a)ヒンジ領域若しくはCH2ドメインのN末端、又は(b)CH3ドメインのC末端のいずれかに連結される。
【0035】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号1~6のいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を含む。
【0036】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される操作されたTGFβRIIポリペプチドを含む、タンパク質構築物に関する。
【0037】
いくつかの実施形態では、タンパク質構築物は、2つ以上の操作されたTGFβRIIポリペプチドを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドのうちの少なくとも2つは同一である。
【0039】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドのうちの少なくとも2つは異なる。
【0040】
いくつかの実施形態では、タンパク質構築物は、Fc領域を更に含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgG4 Fc領域である。
【0042】
Tいくつかの実施形態では、Fc領域は、IgG1 Fc領域(例えば、LALA変異又はLALA-PG変異を有する)である。
【0043】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、Fc領域のC末端に連結される。
【0044】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、ペプチドリンカーを介してFc領域のC末端に連結される。
【0045】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される操作されたTGFβRIIポリペプチド、第1のCH2ドメイン、及び第1のCH3ドメインを含む第1の融合ポリペプチドと、第2のCH2ドメイン及び第2のCH3ドメインを含む第2の融合ポリペプチドと、を含み、第1の融合ポリペプチド及び第2の融合ポリペプチドが、互いに会合し、二量体を形成する、タンパク質構築物に関する。
【0046】
いくつかの実施形態では、第2の融合ポリペプチドは、第2の操作されたTGFβRIIポリペプチドを更に含む。
【0047】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される操作されたTGFβRIIポリペプチド又は本明細書に記載されるタンパク質構築物と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物に関する。
【0048】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される操作されたTGFβRIIポリペプチド又は本明細書に記載されるタンパク質構築物をコードする、核酸に関する。
【0049】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される核酸を含む、ベクターに関する。
【0050】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される核酸又は本明細書に記載されるベクターを含む、細胞に関する。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞は、CHO細胞である。
【0052】
一態様では、本開示は、操作されたTGFβRIIポリペプチド、又は操作されたTGFβRIIポリペプチドを含むタンパク質構築物を産生する方法であって、
(a)本明細書に記載される細胞を、細胞が操作されたTGFβRIIポリペプチド又はタンパク質構築物を産生するのに十分な条件下で培養することと、
(b)細胞によって産生された操作されたTGFβRIIポリペプチド又はタンパク質構築物を収集することと
を含む、方法に関する。
【0053】
一態様では、本開示は、がんを有する対象を治療する方法であって、治療有効量の、本明細書に記載される操作されたTGFβRIIポリペプチド又は本明細書に記載されるタンパク質構築物を含む組成物を、対象に投与することを含む、方法に関する。
【0054】
いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍又は血液がんを有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、卵巣がん、神経膠腫、結腸がん、肝細胞がん、前立腺がん、腎細胞がん、黒色腫、肺がん、膵臓がん、又は肝がんである。
【0056】
一態様では、本開示は、腫瘍増殖の速度を減少させる方法であって、腫瘍細胞を、有効量の、本明細書に記載される操作されたTGFβRIIポリペプチド又は本明細書に記載されるタンパク質構築物を含む組成物と接触させることを含む、方法に関する。
【0057】
一態様では、本開示は、腫瘍細胞を死滅させる方法であって、腫瘍細胞を、有効量の、本明細書に記載される操作されたTGFβRIIポリペプチド又は本明細書に記載されるタンパク質構築物を含む組成物と接触させることを含む、方法に関する。
【0058】
本明細書で使用される場合、「操作されたTGFβRIIポリペプチド」という用語は、1つ以上の変異(例えば、挿入、欠失、又は置換)を有する野生型TGFβRIIポリペプチド又はその部分(例えば、TGFβRIIの細胞外領域)に由来するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、TGFβRIIの細胞外領域又は細胞外領域の部分を含むか、又はそれからなる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「タンパク質構築物」という用語は、1つ以上のポリペプチドを有する複合体を指す。いくつかの実施形態では、タンパク質構築物は、2つ以上のポリペプチドを有し、ここで、ポリペプチドは、互いに会合し得、二量体又は多量体を形成する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、制御されない自律的増殖のための能力を有する細胞を指す。そのような細胞の例としては、迅速に増殖する細胞増殖によって特徴付けられる異常な状態又は状況を有する細胞が挙げられる。この用語は、組織病理学的な型又は侵襲性の段階にかかわらず、がん増殖、例えば、腫瘍、発がんプロセス、転移性組織、及び悪性に形質転換された細胞、組織、又は臓器を含むように意味される。呼吸器系、心血管系、腎臓系、生殖器系、血液系、神経系、肝臓系、胃腸系、及び内分泌系などの様々な臓器系の悪性腫瘍、並びに大部分の結腸がん、腎細胞がん、前立腺がん及び/又は精巣腫瘍、非小細胞肺がん、及び小腸のがんなどの悪性腫瘍を含む腺がんもまた含まれる。「自然に生じる」がんには、対象中へのがん細胞の移植によって実験的に誘導されていない任意のがんが含まれ、例えば、自発的に生じるがん、発がん物質への患者の曝露によって引き起こされるがん、トランスジェニックがん遺伝子の挿入又は腫瘍抑制遺伝子のノックアウトから生じるがん、及び感染、例えば、ウイルス感染によって引き起こされるがんが含まれる。「がん腫」という用語は、当該技術分野で認識されており、上皮組織又は内分泌組織の悪性腫瘍を指す。この用語はまた、がん組織及び肉腫組織で構成される悪性腫瘍を含む、がん肉腫を含む。「腺がん」は、腺組織に由来するか、又はその中で腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成するがん腫を指す。「肉腫」という用語は、当該技術分野で認識されており、間葉系由来の悪性腫瘍を指す。「造血器新生物性障害」という用語は、造血起源の過形成性/新生物性細胞を伴う疾患を含む。造血器新生物性障害は、骨髄系統、リンパ系統若しくは赤血球系統、又はその前駆細胞から生じ得る。血液がんは、骨髄などの、造血組織において、又は免疫系の細胞において始まるがんである。血液がんの例としては、例えば、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫などが挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書全体を通して互換的に使用され、それに対して本発明の方法による治療が提供される動物、ヒト又は非ヒト、を記載する。獣医学的及び非獣医学的適用が、本開示において企図される。ヒト患者は、成人ヒト又は若年ヒト(例えば、18歳未満のヒト)であり得る。ヒトに加えて、患者には、限定されないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、フェレット、ネコ、イヌ、及び霊長類が含まれる。例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、ウサギ目、イノシシ属(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、及び他の家畜、農場動物、及び動物園動物が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、少なくとも2つのアミノ酸の任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すように互換的に使用される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」、及び「核酸配列」という用語は、少なくとも2つのヌクレオチドの任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指すように本明細書で互換的に使用され、限定されないが、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、及びそれらの修飾を含む。
【0064】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明における使用のための方法及び材料が本明細書に記載され、当該技術分野で知られている他の好適な方法及び材料もまた使用され得る。材料、方法、及び例は、単に例示であり、限定することを意図しない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾の場合、本明細書が、定義を含めて、支配する。
【0065】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から、そして特許請求の範囲から明らかになる。
【0066】
より具体的には、本発明は以下を提供する:
[1] 配列番号7と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号7のS49及びD118に対応する位置に1つ以上のアミノ酸変異を含む、操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[2] (a)配列番号7のS49に対応するアミノ酸が、G、A、L、M、F、W、K、Q、E、P、V、I、C、Y、H、R、N、D、又はTであること、及び
(b)配列番号7のD118に対応するアミノ酸が、G、A、L、M、F、W、K、Q、E、S、P、V、I、C、Y、H、R、N、又はTであること
のうちの1つ以上を含む、[1]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[3] 配列番号7のS49に対応するアミノ酸が、E又はQである、[1]又は[2]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[4] 配列番号7のD118に対応するアミノ酸が、Eである、[1]~[3]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[5] 配列番号7のS49に対応するアミノ酸が、Eである、[1]~[4]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[6] 配列番号7の32位に対応するアミノ酸が、Dである、[1]~[4]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[7] 配列番号7の119位に対応するアミノ酸が、Eである、[1]~[6]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[8] 配列番号7~12のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、[1]~[7]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[9] 配列番号8と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、[8]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[10] 配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、[8]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[11] 配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、[8]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[12] 配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、[8]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[13] 配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、[8]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[14] 前記操作されたTGFβRIIポリペプチドとTGFβ1との間のオフレートが、野生型TGFβRIIとTGFβ1との間のオフレートよりも低い、[1]~[13]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[15] 前記操作されたTGFβRIIポリペプチドとTGFβ3との間のオフレートが、野生型TGFβRIIとTGFβ3との間のオフレートよりも低い、[1]~[14]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[16] TGFβ2に結合しない、[1]~[15]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[17] TGFβ1におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する、[1]~[16]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[18] TGFβ3におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する、[1]~[17]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[19] 水素結合相互作用を介して、TGFβ1におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する、[1]~[18]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[20] 水素結合相互作用を介して、TGFβ3におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する、[1]~[19]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[21] TGFβ(例えば、TGFβ1)を捕捉し得、それによって、腫瘍微小環境を改善し得る、[1]~[20]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[22] TGFβ(例えば、TGFβ1)とTGFβRIIとの間の結合をブロックし得るか又はそれに干渉し得る、[1]~[21]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[23] TGFβ(例えば、TGFβ1)と、腫瘍細胞、線維芽細胞、又は免疫細胞の表面上で発現されたTGFβRIIとの間の結合をブロックし得るか又はそれに干渉し得る、[1]~[22]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[24] CH2ドメイン及びCH3ドメインを更に含む、[1]~[23]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[25] ヒンジ領域を更に含む、[24]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[26] 前記CH2ドメインが、IgG CH2ドメインであり、前記CH3ドメインが、IgG CH3ドメインである、[24]又は[25]の操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[27] 任意選択でリンカー配列を通して、(a)前記ヒンジ領域若しくはCH2ドメインのN末端、又は(b)前記CH3ドメインのC末端のいずれかに連結されている、[24]~[26]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[28] 配列番号1~6のいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を含む、[24]~[27]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド;
[29] [1]~[28]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチドを含む、タンパク質構築物;
[30] 2つ以上の操作されたTGFβRIIポリペプチドを含む、[29]のタンパク質構築物;
[31] 前記操作されたTGFβRIIポリペプチドのうちの少なくとも2つが同一である、[30]のタンパク質構築物;
[32] 前記操作されたTGFβRIIポリペプチドのうちの少なくとも2つが異なる、[30]のタンパク質構築物;
[33] Fc領域を更に含む、[29]~[32]のいずれか1つのタンパク質構築物;
[34] 前記Fc領域が、IgG4 Fc領域である、[33]のタンパク質構築物;
[35] 前記Fc領域が、IgG1 Fc領域(例えば、LALA変異又はLALA-PG変異を有する)である、[34]のタンパク質構築物;
[36] 前記操作されたTGFβRIIポリペプチドが、前記Fc領域のC末端に連結されている、[33]~[35]のいずれか1つのタンパク質構築物;
[37] 前記操作されたTGFβRIIポリペプチドが、ペプチドリンカーを介して前記Fc領域のC末端に連結されている、[33]~[35]のいずれか1つのタンパク質構築物;
[38] [1]~[28]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド、第1のCH2ドメイン、及び第1のCH3ドメインを含む、第1の融合ポリペプチドと、
第2のCH2ドメイン及び第2のCH3ドメインを含む、第2の融合ポリペプチドと
を含み、
前記第1の融合ポリペプチド及び前記第2の融合ポリペプチドが、互いに会合し、二量体を形成する、
タンパク質構築物;
[39] 前記第2の融合ポリペプチドが、第2の操作されたTGFβRIIポリペプチドを更に含む、[38]のタンパク質構築物;
[40] [1]~[28]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド又は[29]~[39]のいずれか1つのタンパク質構築物と、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物;
[41] [1]~[28]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド又は[29]~[39]のいずれか1つのタンパク質構築物をコードする、核酸;
[42] [41]の核酸を含む、ベクター;
[43] [41]の核酸又は[42]のベクターを含む、細胞;
[44] CHO細胞である、[43]の細胞;
[45] 操作されたTGFβRIIポリペプチド、又は前記操作されたTGFβRIIポリペプチドを含むタンパク質構築物を産生する方法であって、
(a)[43]又は[44]の細胞を、前記細胞が前記操作されたTGFβRIIポリペプチド又は前記タンパク質構築物を産生するのに十分な条件下で培養することと、
(b)前記細胞によって産生された前記操作されたTGFβRIIポリペプチド又は前記タンパク質構築物を収集することと
を含む、前記方法;
[46] がんを有する対象を治療する方法であって、
治療有効量の、[1]~[28]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド又は[29]~[39]のいずれか1つのタンパク質構築物を含む組成物を、前記対象に投与することを含む、前記方法;
[47] 前記対象が、固形腫瘍又は血液がんを有する、[46]の方法;
[48] 前記がんが、乳がん、卵巣がん、神経膠腫、結腸がん、肝細胞がん、前立腺がん、腎細胞がん、黒色腫、肺がん、膵臓がん、又は肝がんである、[46]の方法;
[49] 腫瘍増殖の速度を減少させる方法であって、
腫瘍細胞を、有効量の、[1]~[28]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド又は[29]~[39]のいずれか1つのタンパク質構築物を含む組成物と接触させることを含む、前記方法;並びに
[50] 腫瘍細胞を死滅させる方法であって、
腫瘍細胞を、有効量の、[1]~[28]のいずれか1つの操作されたTGFβRIIポリペプチド又は[29]~[39]のいずれか1つのタンパク質構築物を含む組成物と接触させることを含む、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1Aは、TGFβRII細胞外ドメインとそのリガンドTGFβ1との間の境界面の3D構造を示す。図1Bは、変異したTGFβRII細胞外ドメイン(S49及びD118における変異)とそのリガンドTGFβ1との間の境界面の3D構造を示す。
図2】G4_TGFβRIIタンパク質のアミノ酸配列を示す。
図3】産生及びCMC分析の結果の要約を示す。
図4A】ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβとの間の結合親和性を示す。
図4B】ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβとの間の結合親和性を示す。
図4C】ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβとの間の結合親和性を示す。
図5A】ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβとの間のオンレート結合能力を示す。
図5B】ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβとの間のオフレート結合能力を示す。
図5C】ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβとの間のオンレート結合能力についてのEC50を示す。
図6】BLI結合アッセイの結果を示す。
図7A】smad2レポーター活性アッセイからの結果を示す。
図7B】smad2レポーター活性アッセイからの結果を示す。
図7C】smad2レポーター活性アッセイからの結果を示す。
図8-1】本開示で考察される関係のあるタンパク質配列を列挙する。
図8-2】本開示で考察される関係のあるタンパク質配列を列挙する。
【発明を実施するための形態】
【0068】
詳細な説明
トランスフォーミング増殖因子(TGF)βシグナル伝達経路は、増殖、分化、接着、運動性及びアポトーシスを含む多くの細胞プロセスに関与する。これらの機能は、悪性細胞において頻繁に破壊され、II型TGFβ受容体(TGFβRII)は、その後、腫瘍抑制遺伝子(TSG)であることが実証された。TGFβシグナル伝達経路は、正常細胞においてTSGとしてのその役割に則して強力な増殖阻害を媒介し、がん細胞は、遺伝子機構及びエピジェネティック機構の両方を使用して、TGFβRIIを不活性化する。しかしながら、TGFβシグナル伝達経路とがんの進行との間の関係は複雑である。TGFβシグナル伝達の廃止は、早期悪性腫瘍に増殖優位性を提供するが、TGFβは、進行した腫瘍における転移促進的役割を担う。したがって、TGFβRIIの喪失は、不良な臨床成績と関連し、早期乳がんにおける不良な予後の予測因子であるが、TGFβリガンドの過剰発現は、多くの腫瘍における転移性表現型と関連している。TGFβのこの二重の性質は、増殖抑制効果を利用するためにTGFβシグナル伝達を回復させることに関して課題を呈する。
【0069】
哺乳動物系において、TGFβは、異なる遺伝子によってコードされるTGFβ1、TGFβ2、及びTGFβ3として分類されるが、それらは全て同じ受容体シグナル伝達系を通じて機能する。TGFβは、細胞外マトリックス中にTGFβを繋ぎ止める潜在型TGFβ結合タンパク質のような他の細胞外タンパク質に結合した潜在型複合体として分泌される。TGFβは、TGFβRII受容体にリガンドを提示する細胞表面でTGFβRIIIに結合する。細胞内シグナル伝達は、構成的に活性なSer/Thrキナーゼ活性を有するTGFβRIIホモ二量体への活性サイトカインの選択的結合に際して開始される。TGFβ結合に際して、TGFβRIIは、TGFβRIとヘテロ四量体を形成し、二量体TGFβに結合した2つの同一のTGFβRI/TGFβRII受容体ヘテロ二量体を構成する。一旦受容体複合体が形成されると、TGFβRIIは、トランスリン酸化し、TGFβRI Ser/Thrキナーゼを活性化する。TGFβRIの活性化は、タンパク質のSmadファミリーを介して下流のシグナル伝達を伝播する。TGFβRI受容体は、Smad2及びSmad3と直接相互作用し、これらをリン酸化する(受容体活性化Smad又はR-Smadとも称される)。これらのSmadは、Smad4に結合し(Co-Smadとも称される)、これは、核へのこの複合体の移行をもたらし、ここで、SmadはTGFβ応答性遺伝子発現を調節する。TGFβ受容体トラップの全身投与は、腫瘍細胞増殖を阻害し得る。これは、TGFβが、腫瘍発生の比較的早期において、サプレッサーではなくプロモーターとして作用することを示唆する。
【0070】
TGFβ、TGFΒR2、及びがんを治療するためのTGFβトラップの使用の詳細な説明は、例えば、Chowdhury,Sanjib,Sudhakar Ammanamanchi,and Gillian M.Howell.“Epigenetic targeting of transforming growth factor β receptor II and implications for cancer therapy.”Molecular and cellular pharmacology 1.1(2009):57、Bierie,B.,et al.“TGFβ:the molecular Jekyll and Hyde of cancer.”Nature Reviews Cancer 6.7(2006):506-520、Kim,B.,et al.“Novel therapies emerging in oncology to target the TGF-β pathway.”Journal of Hematology & Oncology 14.1(2021):1-20、及びLind,H.,et al.“Dual targeting of TGF-β and PD-L1 via a bifunctional anti-PD-L1/TGF-βRII agent:status of preclinical and clinical advances.”Journal for immunotherapy of cancer 8.1(2020)に記載されており、これらの各々は参照によりその全体が組み込まれる。
【0071】
本開示は、操作されたTGFβRIIバリアントを提供する。これらの操作されたTGFβRIIバリアントは、TGFβRII経路を標的にするために使用され得、一方、操作されたTGFβRIIバリアントとTGFβとの相互作用は、慎重に調節される。
【0072】
操作されたTGFβRIIバリアント
TGFβファミリーリガンドは、リガンド、2つのI型、及び2つのII型受容体からなる受容体複合体のアセンブリを通じてシグナル伝達を開始する。各受容体ECDは、3つのβストランドのスリーフィンガートキシン(three-finger toxin)折り畳みを示す約100残基からなる。I型受容体及びII型受容体の両方は、コアβシートに隣接する伸長したループを除いて、高度の相同性を示す。5つのII型受容体ECDのうちの4つ及び7つのI型受容体ECDのうちの4つは、単独で(II型:ActRIIA、TBRII、BMPII/I型:Alk1、Alk3、Alk5)又はリガンド-受容体複合体において(II型:ActRIIA、ActRIIB、TBRII、BMPII/I型:Alk1、Alk3、Alk5、Alk6)のいずれかで構造的に特徴付けられている。これらの構造は、各受容体におけるβシート構造を安定化する4つのジスルフィド結合の共通のセットを明らかにした。加えて、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、及びI型受容体は、β4-β5ループを安定化し、特にII型受容体について、リガンド結合を維持するために重大な領域である、受容体の表面の閉鎖を防止するための追加のジスルフィド結合を含む。TGFβRIIは、リガンド相互作用のための位置においてβ1-β2ループを繋ぎ止めるために2つの追加のジスルフィド結合を有する点で独特である。
【0073】
TGFβRIIは、TGFβクラス(TGFβ1~3)への結合に高度に特異的である。TGFβとの複合体形成の間、TGFβRIIはリガンドの遠位の指先で結合し、ここで、受容体のβシートは指のβストランドに対して直角である。具体的には、TGFβRIIのβ2は、TGFβリガンドによって共有される特徴である、正に荷電した残基(TGFβ1におけるArg303及びArg372)から形成される間隙内で意義深い接触を形成し、結合する。これらの残基は、TGFβRIIに対するTGFβのリガンド特異性を説明し、BMP又はアクチビンクラスのリガンドには存在しない。この相互作用は、TGFβRIIに限定されるβ1-β2ループにおける伸長によって更に安定化される。
【0074】
II型TGF-β受容体、TGFβRIIは、それが、別個の境界面、すなわち、より小さなβ1-β2シート、β2-ストランド、並びに隣接するβ1及びβ1’ストランド上のへりのβストランド(edge β-strand)を通してその同族リガンドに結合するという点で、ファミリーのI型及びII型受容体の間で独特である。この代替の境界面の使用は、ActRII、ActRIIB、及びBMPRIIと比較しての、TGFβRIIにおける2つの重要な構造的差異によって促進される。第一に、β4-β5ループは、他のII型受容体との比較で、TGFβRIIにおいて7~8残基だけ伸長されており、fジスルフィドを欠いている。このジスルフィドの非存在は、伸長したβ4-β5ループがβ4-β3-β5シートの凹面表面上に折り畳まれることを可能にし、したがって、この境界面を通したリガンド結合をブロックする。第二に、TGFβRIIにおけるβ1-β2ループは、AMHRIIを除く、ファミリーの全ての他のI型及びII型受容体と比較して、10超の残基だけ伸長されている。β1-β2ループは、I型受容体におけるのと同様の、その塩基におけるeジスルフィド、及びその先端付近のTGFβRII特異的gジスルフィドの両方によって更に安定化される。伸長したループは、β4-β3-β5シートの凸面表面上を包み、それに対して堅固にパックする。この通常でない構造的特徴は、3つのTGF-βアイソフォームに結合するためにTGFβRIIによって使用される一次構造エレメントを形成する、短いβ2ストランドの適正な位置決め及び支えに重要であるようである。
【0075】
本開示において提供されるTGFβRIIと複合体形成しているTGFβ1の構造に基づいて、相互作用する残基が決定される。図1Aにおいて、TGFβ1と水素結合を形成するTGFβRIIのアミノ酸残基(D32及びE119)が強調される。図1Bにおいて、TGFβ1と追加の水素結合を形成し得る変異したアミノ酸残基(S49及びD118)が強調される。
【0076】
更なる分析は、TGFβRIIにおける変異したS49及びD118がTGFβ1との相互作用に関与することを示す。したがって、いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、S49及びD118に1つ以上のアミノ酸変異を含み得る。位置番号は、配列番号7に基づいて決定される。
【0077】
いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、荷電した側鎖を有するアミノ酸、例えば、R、H、K、D、又はEである。いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、極性非荷電側鎖を有するアミノ酸、例えば、T、N、又はQである。いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、疎水性側鎖を有する、例えば、A、V、I、L、M、F、Y、又はW。いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、C、G、又はPである。いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、Sでない。いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、なお、Sである。
【0078】
いくつかの実施形態では、S49に対応するアミノ酸は、TGFβ1におけるK37と水素結合を形成する。いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、Eである。いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、Qである。
【0079】
いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、荷電した側鎖を有するアミノ酸、例えば、R、H、K、D、又はEである。いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、極性非荷電側鎖を有するアミノ酸、例えば、T、N、又はQである。いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、疎水性側鎖を有する、例えば、A、V、I、L、M、F、Y、又はW。いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、C、G、又はPである。いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、Dでない。いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、なお、Dである。
【0080】
いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、TGFβ1におけるK31と水素結合を形成する(配列番号15に基づく)。いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、Eである。
【0081】
いくつかの実施形態では、配列番号7のS49に対応するアミノ酸は、E又はQである。いくつかの実施形態では、配列番号7のD118に対応するアミノ酸は、Eである。
【0082】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、以下の変異のうちの1つ以上を有し得る:(a)配列番号7のS49に対応するアミノ酸がE又はQである、変異、(b)配列番号7のD118に対応するアミノ酸がEである、変異。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は10超の追加の変異を有し、ここで、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、TGFβ1及び/又はTGFβ2との同様の又は改善された結合親和性を有する。
【0083】
加えて、本開示における分析は、TGFβRIIのD32(TGFβ1のR94と相互作用する)及びE119(TGFβ1のR25と相互作用する)が、TGFβ1及びTGFβ3の結合親和性をTGFβ2から区別するための鍵となる残基であることを示す。したがって、いくつかの実施形態では、これらのアミノ酸残基は保持される。いくつかの実施形態では、そこでアミノ酸残基は変異される。
【0084】
したがって、一態様では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号7~12のいずれか1つと少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0085】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号7と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0086】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号8と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0087】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号9と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0088】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号10と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0089】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号11と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0090】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号12と少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0091】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、配列番号7~12のいずれか1つと比較して、少なくとも1個又は約1個(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40個、又は約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40個)のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を有し得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、S49及びD118に1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、S49に変異を有する。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、D118に変異を有する。位置番号は、配列番号7によって決定される。
【0093】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、以下の変異のうちの1つ以上を有する:
(a)配列番号7のS49に対応するアミノ酸がSでない、変異、
(b)配列番号7のD118に対応するアミノ酸がDでない、変異。
【0094】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、以下の変異のうちの1つ以上を有する:
(a)配列番号7のS49に対応するアミノ酸がE又はQである、変異、
(b)配列番号7のD118に対応するアミノ酸が、Eである、変異。
【0095】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個の変異を有する配列番号7~12のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0096】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、若しくは140個、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、若しくは140個のアミノ酸を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、又は160個以下のアミノ酸を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、操作されたTGFβRIIポリペプチドの細胞外ドメインからの、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、若しくは140個、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、若しくは140個の近接したアミノ酸を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、少なくとも1個又は約1個(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40個、又は約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40個)のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を有し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドにおけるTGFβ結合ドメインは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、若しくは140個、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、若しくは140個のアミノ酸を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドにおけるTGFβ結合ドメインは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、又は160個以下のアミノ酸を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドにおけるTGFβ結合ドメインは、操作されたTGFβRIIポリペプチドの細胞外ドメインからの、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、若しくは140個、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、若しくは140個の近接したアミノ酸を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントにおけるTGFβ結合ドメインは、少なくとも1個又は約1個(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40個又は約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40個)のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を有し得る。
【0098】
操作されたTGFβRIIポリペプチドは、追加の改変を有し得る。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチド(又はTGFβ結合ドメイン)は、FcのCH2ドメイン及び/又はCH3ドメインを有し得る。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチド(又はTGFβ結合ドメイン)は、CH2ドメインのN末端に連結され得る(例えば、任意選択のヒンジ領域又はGSリンカーを通して)。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチド(又はTGFβ結合ドメイン)は、CH3ドメインのC末端に連結され得る(例えば、任意選択のGSリンカーを通して)。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgGヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4ヒンジ領域)である。いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、IgG CH2ドメイン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4 CH2ドメイン)である。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、IgG CH3ドメイン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4 CH3ドメイン)である。
【0099】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、配列番号1~12のいずれか1つと少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0100】
TGFβRIIタンパク質構築物
本開示はまた、TGFβ(例えば、TGFβ1又はTGFβ3)に特異的に結合し得る操作されたTGFβRIIタンパク質構築物を提供する。いくつかの実施形態では、これらのタンパク質構築物は、TGFβ2に結合しない。いくつかの実施形態では、これらのタンパク質構築物は、TGFβRIIシグナル伝達経路をブロックし得る。いくつかの実施形態では、これらのタンパク質構築物は、腫瘍微小環境を改善し得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、Fcに連結される。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIポリペプチドは、FcのN末端(例えば、ヒンジ領域を通して)又はFcのC末端(例えば、リンカー配列を通して)に連結される。
【0102】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIタンパク質構築物は、本明細書に記載の任意の操作されたTGFβRIIバリアントを含む。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIタンパク質構築物は、配列番号1~6のいずれか1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である配列を有する。
【0103】
本開示はまた、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列、例えば、配列番号1~14と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。
【0104】
2つのアミノ酸配列の、又は2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列は、最適な比較目的のために整列させられる(例えば、ギャップが、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の一方又は両方に導入され得、非相同配列が、比較目的のために無視され得る)。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められているとき、分子はその位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある、ギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮しての、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。例えば、2つの配列の間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、及び5のフレームシフトギャップペナルティを用いたBlossum 62スコアリングマトリックスを使用して達成され得る。加えて、「に対応する」という用語は、ポリペプチドにおけるアミノ酸残基又は核酸におけるヌクレオチド残基などの、ポリマーにおける残基の位置/同一性を指定するためにしばしば使用される。当業者は、簡略化の目的のために、そのようなポリマーにおける残基が、参照ポリマーに基づく番号付けシステムを使用してしばしば指定され、そのため、例えば、参照ポリマーにおける49位における残基「に対応する」第1の配列における残基は、実際には第1のポリマーにおける49番目の残基である必要はなく、むしろアラインメントに基づいて参照ポリマーにおける49番目の位置に見出される残基に対応することを理解する。当業者は、特にポリマー配列比較のために設計された1つ以上の市販のアルゴリズムの使用を通じてのものを含めて、「対応する」アミノ酸を特定する方法を容易に理解する。
【0105】
操作されたTGFβRIIタンパク質構築物は、抗体のFc領域を更に含む。これらの抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgE1、IgE2)のものであり得る。いくつかの実施形態では、he Fc領域は、ヒトIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)に由来する。いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgG4 Fc領域(例えば、ヒトIgG4 Fc領域)である。
【0106】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、抗体ヒンジ領域(例えば、IgG、IgEヒンジ領域)を通してFc領域に連結される。加えて、Fc領域は、所望のエフェクター機能又は血清半減期を提供するように改変され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、リンカー配列(例えば、配列番号14)を通してFcに連結される。
【0108】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIタンパク質構築物は、抗体(例えば、二重特異性抗体)を更に含む。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、抗体(例えば、二重特異性抗体)のC末端に連結される。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、ペプチドリンカーを介して、抗体(例えば、二重特異性抗体)のC末端に連結される。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、抗体(例えば、二重特異性抗体)のN末端に連結される。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、抗体の抗原結合ドメインに連結される。
【0109】
操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物の特性
本明細書に記載される操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、TGFβ(例えば、TGFβ1及び/又はTGFβ2)と、腫瘍細胞、線維芽細胞、又は免疫細胞の表面上で発現されている内因性TGFβRIIとの間の結合をブロックし得る。いくつかの実施形態では、TGFβに結合することによって、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、TGFβの内因性TGFβRIIへの結合を阻害し得、それによって、TGFB/TGFβRII経路をブロックする。
【0110】
いくつかの実装態様では、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、0.1s-1未満、0.01s-1未満、0.001s-1未満、0.0001s-1未満、又は0.00001s-1未満の解離速度(koff)でTGFβ(例えば、ヒトTGFβ1、ヒトTGFβ3)に結合し得る。いくつかの実施形態では、解離速度(koff)は、0.01s-超、0.001s-1超、0.0001s-1超、0.00001s-1超、又は0.000001s-1超である。
【0111】
いくつかの実施形態では、動力学的会合速度(kon)は、1×10/Ms超、1×10/Ms超、1×10/Ms超、1×10/Ms超、又は1×10/Ms超である。いくつかの実施形態では、動力学的会合速度(kon)は、1×10/Ms未満、1×10/Ms未満、又は1×10/Ms未満である。
【0112】
親和性は、動力学的速度定数の商から演繹され得る(KD=koff/kon)。いくつかの実施形態では、KDは、1×10-6M未満、1×10-7M未満、1×10-8M未満、1×10-9M未満、又は1×10-10M未満である。いくつかの実施形態では、KDは、300nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、90pM、80pM、70pM、60pM、50pM、40pM、30pM、20pM、又は10pM未満である。いくつかの実施形態では、KDは、1×10-7M超、1×10-M超、1×10-9M超、1×10-10M超、1×10-11M超、又は1×10-12M超である。
【0113】
親和性を測定するための一般的な技術としては、例えば、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴(SPR)、及びバイオレイヤー干渉法(BLI)が挙げられる。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、サルTGFβ(例えば、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3)、及び/又はマウスTGFβ(例えば、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3)に結合し得る。いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、サルTGFβ(例えば、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3)、及び/又はマウスTGFβ(例えば、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3)に結合し得ない。
【0114】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアントは、TGFβ2(例えば、ヒトTGFβ2)に結合し得ない。
【0115】
いくつかの実施形態では、熱安定性が決定される。本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、又は95℃超のTmを有し得る。いくつかの実施形態では、Tmは、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、又は95℃未満である。
【0116】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物は、TGFβ1におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する。
【0117】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物は、TGFβ3におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する。
【0118】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物は、水素結合相互作用を介して、TGFβ1におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する。
【0119】
いくつかの実施形態では、操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物は、水素結合相互作用を介して、TGFβ3におけるR94、R25、K37、及び/又はK31と相互作用する。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物は、TGFβ(例えば、TGFβ1又はTGFβ3)を捕捉し得、それによって、腫瘍微小環境を改善し得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物は、腫瘍増殖を阻害し得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はタンパク質構築物は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、又は200%超である腫瘍増殖阻害パーセンテージ(TGI%)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はタンパク質構築物は、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、又は200%未満である腫瘍増殖阻害パーセンテージを有する。TGI%は、例えば、治療開始後3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30日、又は治療開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヶ月で決定され得る。本明細書で使用される場合、腫瘍増殖阻害パーセンテージ(TGI%)は、以下の式を使用して計算される。
【数1】
Tiは、i日目の治療群における平均腫瘍体積である。T0は、0日目の治療群における平均腫瘍体積である。Viは、i日目の対照群における平均腫瘍体積である。V0は、0日目の対照群における平均腫瘍体積である。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質構築物は、機能的Fc領域を有する。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、又はヒトIgG4である。いくつかの実施形態では、機能的Fc領域のエフェクター機能は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)である。いくつかの実施形態では、機能的Fc領域のエフェクター機能は、食作用である。いくつかの実施形態では、機能的Fc領域のエフェクター機能は、ADCC及び食作用である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質構築物は、エフェクター機能なしのFc領域を有する。いくつかの実施形態では、Fcは、ヒトIgG4 Fcである。いくつかの実施形態では、Fcは、機能的Fc領域を有しない。例えば、Fc領域は、LALA変異(EU番号付けにおけるL234A及びL235A変異)、又はLALA-PG変異(EU番号付けにおけるL234A、L235A、P329G変異)を有する。
【0124】
Fc領域に対するいくつかの他の改変がなされ得る。例えば、システイン残基がFc領域中に導入され得、それによって、この領域における鎖間ジスルフィド結合の形成が可能になる。このようにして生成されたホモ二量体融合タンパク質は、インビトロ及び/又はインビボでの任意の増加した半減期を有し得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、IgG4は、S228P変異を有する(EU番号付け)。S228P変異は、インビボ及びインビトロでのIgG4 Fabアーム交換を防止する。
【0126】
いくつかの実施形態では、Fc領域に付着した(直接的又は間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有するFc領域が提供される。例えば、そのようなFc領域組成におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析によって測定されるAsn297に付着した全ての糖構造(例えば、複合、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に対して相対的な、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域における約297位(Fc領域残基のEu番号付け、又はKabat番号付けにおける314位)に位置するアスパラギン残基を指す。しかしながら、Asn297はまた、Fc領域配列におけるマイナーな配列変動に起因して、297位の約±3アミノ酸上流又は下流、すなわち、294~300位に位置し得る。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。いくつかの実施形態では、グリカンの不均一性を低下させるために、Fc領域は、297位におけるアスパラギンをアラニンに置き換えるように(N297A)更に操作され得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、TGFβ(例えば、TGFβ1及び/又はTGFβ3)と本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はタンパク質構築物との間の結合親和性は、TGFβと野生型TGFβRII又はそのタンパク質構築物との間のものと比較して、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、又は50倍強い。
【0128】
いくつかの実施形態では、HPLC-SECの主ピークは、プロテインAカラムによる精製後の本明細書に記載される操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はタンパク質構築物の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%を占める。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はタンパク質構築物は、50mg/L超、100mg/L超、200mg/L超、300mg/L超、又は400mg/L超である発現収量を有する。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物は、ヒトTGFβとヒトTGFβRIIとの間の相互作用をブロックし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物は、HEK293T細胞におけるTGFβ誘導性シグナル伝達を阻害し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物のブロック能力は、その抗TGFβ参照抗体と比較して、少なくとも少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、又は少なくとも150%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物のブロック能力は、その野生型TGFβRII又はそのタンパク質構築物と比較して、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、又は50倍強い。いくつかの実施形態では、TGFβ/TGFβRII相互作用をブロックする、操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はそのタンパク質構築物のIC50値は、2nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.2nM未満、又は0.1nM未満である。
【0131】
操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物を作製する方法
本明細書に記載されるTGFβRIIのバリアントは、適切なヌクレオチド変化をTGFβRIIペプチド若しくはその一部をコードするDNA中に導入することによって、又はペプチド合成によって調製され得る。そのようなバリアントとしては、例えば、アミノ酸配列内の残基の欠失、挿入、又は置換が挙げられる。
【0132】
スクリーニングが行われ得る。そのようなバリアントの集団において、いくつかの操作されたTGFβRIIバリアントは、TGFβに対する増加した親和性を有する。欠失、挿入、及び/又は組み合わせの任意の組み合わせが、標的に対する増加した結合親和性を有するバリアントに到達するためになされ得る。バリアント中に導入されたアミノ酸変化はまた、グリコシル化部位の数を変化させること(例えば、増加若しくは減少させること)、グリコシル化部位の型を変化させること(例えば、細胞中に存在する酵素によって異なる糖が付着されるようにアミノ酸配列を変化させること)、又は新たなグリコシル化部位を導入することなど、ポリペプチド中への新たな翻訳後修飾を変更又は導入し得る。
【0133】
操作されたTGFβRIIバリアントは、哺乳動物を含む、動物の任意の種に由来し得る。TGFβRIIバリアントの非限定的な例としては、ヒト、霊長類、例えば、サル及び類人猿、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ラクダ科(例えば、ラクダ及びラマ)、ニワトリ、ヤギ、並びにげっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター及びウサギ)に由来するTGFβRIIバリアントが挙げられる。
【0134】
本開示はまた、本明細書に開示される単離されたポリヌクレオチド(例えば、本明細書に開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を含む組換えベクター(例えば、発現ベクター)、その中に組換えベクターが導入される(すなわち、宿主細胞がポリヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチドを含むベクターを含むように)宿主細胞、並びに組換え技術による組換えポリペプチド又はその断片の産生を提供する。
【0135】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、ベクターが宿主細胞に導入されるときに、1つ以上の目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に送達することができる任意の構築物である。「発現ベクター」は、1つ以上の目的のポリヌクレオチドを、コードされたポリペプチドとして、その中に発現ベクターが導入されている宿主細胞において送達し、発現させることができる。したがって、発現ベクターにおいて、目的のポリヌクレオチドは、目的のポリヌクレオチドが発現ベクターを用いて導入された宿主細胞において翻訳されるように、目的のポリヌクレオチドの組み込み部位において、又はその付近で若しくはそれに隣接して、ベクター内又は宿主細胞のゲノム中のいずれかで、プロモーター、エンハンサー、及び/又はポリAテールなどの調節エレメントと作動可能に連結されることによって、ベクターにおける発現のために配置される。
【0136】
ベクターは、当該技術分野で知られている方法、例えば、エレクトロポレーション、化学トランスフェクション(例えば、DEAE-デキストラン)、形質転換、トランスフェクション、及び感染及び/又は形質導入(例えば、組換えウイルスを用いる)によって宿主細胞中に導入され得る。したがって、ベクターの非限定的な例としては、ウイルスベクター(これは、組換えウイルスを生成するために使用され得る)、裸のDNA又はRNA、プラスミド、コスミド、ファージベクター、及びカチオン性縮合剤と会合したDNA又はRNA発現ベクターが挙げられる。
【0137】
いくつかの実装態様では、本明細書に開示されるポリヌクレオチド(例えば、本明細書に開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)は、ウイルス発現系(例えば、ワクシニア若しくは他のポックスウイルス、レトロウイルス、又はアデノウイルス)を使用して導入され、これは、非病原性(欠陥)の、複製能のあるウイルスの使用を伴い得るか、又は複製欠陥ウイルスを使用し得る。そのような発現系中にDNAを組み込むための技術は、当業者によく知られている。DNAはまた、「裸」であり得る。裸のDNAの取り込みは、細胞中に効率的に輸送される生分解性ビーズ上にDNAをコーティングすることによって増加され得る。
【0138】
発現のために、本明細書に開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNAインサートは、いくつか例を挙げると、ファージラムダPLプロモーター、大腸菌(E.coli) lac、trp及びtacプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター並びにレトロウイルスLTRのプロモーターなどの、適切なプロモーター(例えば、異種プロモーター)に作動可能に連結され得る。他の好適なプロモーターは当業者に知られている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。発現構築物は、転写開始、終結のための部位及び、転写される領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含み得る。構築物によって発現される成熟転写物のコード部分は、最初に翻訳開始を、そして翻訳されるポリペプチドの末端に適切に配置された終止コドン(UAA、UGA、又はUAG)を含み得る。
【0139】
示されるように、発現ベクターは、少なくとも1つの選択可能なマーカーを含み得る。そのようなマーカーとしては、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼ又はネオマイシン耐性、並びに大腸菌及び他の細菌における培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。適切な宿主の代表的な例としては、限定されないが、大腸菌、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、及びサルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)細胞などの、細菌細胞、酵母細胞などの、真菌細胞、ドロソフィラ属(Drosophila) S2及びスポドプテラ属(Spodoptera) Sf9細胞などの昆虫細胞、CHO、COS、Bowesメラノーマ、及びHK293細胞などの動物細胞、並びに植物細胞が挙げられる。本明細書に記載される宿主細胞のための適切な培養培地及び条件は、当該技術分野で知られている。
【0140】
細菌における使用のための非限定的なベクターとしては、Qiagenから入手可能な、pQE70、pQE60及びpQE-9、Stratageneから入手可能な、pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、並びにPharmaciaから入手可能なptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5が挙げられる。非限定的な真核生物ベクターとしては、Stratageneから入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1及びpSG、並びにPharmaciaから入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLが挙げられる。他の好適なベクターは当業者に容易に明らかとなる。
【0141】
使用に好適な非限定的な細菌プロモーターとしては、大腸菌 lacI及びlacZプロモーター、T3及びT7プロモーター、gptプロモーター、ラムダPR及びPLプロモーター並びにtrpプロモーターが挙げられる。好適な真核生物プロモーターとしては、CMV即時早期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、早期及び後期SV40プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のものなどの、レトロウイルスLTRのプロモーター、並びにマウスメタロチオネイン-Iプロモーターなどの、メタロチオネインプロモーターが挙げられる。
【0142】
酵母のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において、アルファファクター、アルコールオキシダーゼ、及びPGHなどの構成的又は誘導性プロモーターを含むいくつかのベクターが使用され得る。
【0143】
宿主細胞中への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の方法によってもたらされ得る。そのような方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Davis et al.,Basic Methods In Molecular Biology(1986)などの、多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0144】
高等真核生物による本開示のポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクター中に挿入することによって増加され得る。エンハンサーは、所与の宿主細胞型においてプロモーターの転写活性を増加させるように作用する、通常、約10~300bpの、DNAのシス作用エレメントである。エンハンサーの例としては、SV40エンハンサー(これは、塩基対100~270における複製起点の後期側に位置する)、サイトメガロウイルス早期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
【0145】
翻訳されたタンパク質の、小胞体の内腔中への、細胞周辺腔中への又は細胞外環境中への分泌のために、適切な分泌シグナルが、発現されるポリペプチド中に組み込まれ得る。シグナルは、ポリペプチドに対して内在性であり得るか、又は異種シグナルであり得る。
【0146】
ポリペプチド(例えば、TGFβRIIバリアント)は、融合タンパク質(例えば、GST融合物)として又はヒスチジンタグを有してなど、改変された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、追加の異種機能性領域もまた含み得る。例えば、宿主細胞における、精製の間の、又はその後の取り扱い及び貯蔵の間の安定性及び持続性を改善するために、追加のアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域が、ポリペプチドのN末端に付加され得る。また、ペプチド部分が、精製を容易にするために、ポリペプチドに付加され得る。そのような領域は、ポリペプチドの最終的な調製の前に除去され得る。とりわけ、分泌又は排出を生み出すため、安定性を改善するため、及び精製を容易にするための、ペプチド部分のポリペプチドへの付加は、当該技術分野においてよく知られた日常的な技術である。
【0147】
治療の方法
本開示の操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、様々な治療目的のために使用され得る。
【0148】
一態様では、本開示は、対象におけるがんを治療する方法、対象における腫瘍の体積の増加の速度を経時的に低下させる方法、転移が発達するリスクを低下させる方法、又は対象における追加の転移が発達するリスクを低下させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、治療は、がんの進行を中断させ得る、減速させ得る、遅延させ得る、又は阻害し得る。いくつかの実施形態では、治療は、対象におけるがんの1つ以上の症状の数、重症度、及び/又は持続時間の低下をもたらし得る。
【0149】
一態様では、本開示は、治療有効量の本明細書に開示される操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物を、それを必要とする対象(例えば、がんを有するか、又はがんを有するとして特定若しくは診断された対象)、例えば、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、カルチノイドがん、子宮頸がん、子宮内膜がん、神経膠腫、頭頸部がん、肝臓がん、肺がん、小細胞肺がん、リンパ腫、黒色腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、膀胱がん、尿道がん、又は血液悪性腫瘍に投与することを含む方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、切除不能な黒色腫若しくは転移性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、膀胱がん、又は転移性ホルモン不応性前立腺がんである。いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、がんは、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)、腎細胞がん(RCC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、又は結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、膵がん、中皮腫、血液悪性腫瘍、特に非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、慢性リンパ性白血病、又は進行固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、卵巣がん、神経膠腫、結腸がん、肝細胞がん、前立腺がん、腎細胞がん、黒色腫、肺がん、膵臓がん、又は肝がんである。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、がんのリスクがある患者の治療のために使用され得る。がんを有する患者は、当該技術分野で知られている様々な方法を用いて特定され得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、重篤な血液障害、例えば、貧血を治療するために使用され得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法又は本開示の操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、がん、嚢胞性線維症、及び/又は無効な赤血球生成によって引き起こされる貧血(例えば、骨髄異形成症候群関連貧血、後天性再生不良性貧血、若しくはファンコーニ貧血)を治療するために使用され得る。
【0153】
本明細書で使用される場合、「有効量」によって、有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量又は投薬量が意味される。いくつかの実施形態では、所望の結果は、疾患、例えば、がんの進行を中断させること、減速させること、遅延させること、又は阻害することを含み得る。有効量は、例えば、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、並びに/又はその組成物が投与される対象の年齢及び体重、症状の重症度並びに投与経路に応じて変動し、したがって、投与は個別に決定され得る。
【0154】
有効量は、1つ以上の投与において投与され得る。例として、操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はタンパク質構築物の有効量は、患者におけるがんの進行を寛解、停止、安定化、逆転、阻害、減速及び/若しくは先延ばしさせるのに十分な量であるか、又はインビトロで細胞(例えば、生検細胞、本明細書に記載されるがん細胞のいずれか、若しくは細胞株(例えば、がん細胞株))の増殖を寛解、停止、安定化、逆転、減速及び/又は先延ばしさせるのに十分な量である。当該技術分野で理解されるように、有効量は、とりわけ、患者病歴並びに使用される操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物の型(及び/又は投薬量)などの他の要因に応じて、変動し得る。
【0155】
操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物をコードするポリヌクレオチド、並びに/又は本明細書に開示される組成物を投与するための有効量及びスケジュールは経験的に決定され得、そのような決定を行うことは当該技術分野の技能の範囲内である。当業者は、投与されなければならない投薬量が、例えば、本明細書に開示される操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物、ポリヌクレオチド、及び/若しくは組成物を受ける哺乳動物、投与経路、ポリヌクレオチドの特定の型、並びに/又は使用される本明細書に開示される組成物及び哺乳動物に投与される他の薬物に応じて変動することを理解する。
【0156】
操作されたTGFβRIIバリアント及び/又はタンパク質構築物の有効量の典型的な1日投薬量は、0.1mg/kg~100mg/kg(患者体重kg当たりのmg)である。いくつかの実施形態では、投薬量は、100mg/kg、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、又は0.1mg/kg未満であり得る。いくつかの実施形態では、投薬量は、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、又は0.1mg/kg超であり得る。いくつかの実施形態では、投薬量は、約10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、又は1mg/kgである。いくつかの実施形態では、投薬量は、約1~10mg/kg、約1~5mg/kg、又は約2~5mg/kgである。
【0157】
本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、少なくとも1週に1回(例えば、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1日に1回、1日に2回、又は1日に3回)対象に投与され得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療用物質が、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物を投与する前、又は後に、対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療用物質は、対象において1つ以上の追加の治療用物質と操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物との生理活性期間の重複が存在するように対象に投与される。
【0159】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療用物質が対象に投与され得る。追加の治療用物質は、B-Rafの阻害物質、EGFR阻害物質、MEKの阻害物質、ERKの阻害物質、K-Rasの阻害物質、c-Metの阻害物質、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害物質、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害物質、Aktの阻害物質、mTORの阻害物質、二重PI3K/mTOR阻害物質、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害物質、並びにイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)及び/又はイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)の阻害物質からなる群から選択される1つ以上の阻害物質を含み得る。いくつかの実施形態では、追加の治療用物質は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1)(IDO1)の阻害物質(例えば、エパカドスタット)である。
【0160】
いくつかの実施形態では、追加の治療用物質は、HER3の阻害物質、LSD1の阻害物質、MDM2の阻害物質、BCL2の阻害物質、CHK1の阻害物質、活性化ヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害物質、及びエストロゲン受容体を選択的に分解する作用物質からなる群から選択される1つ以上の阻害物質を含み得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、追加の治療用物質は、トラベクテジン、nab-パクリタキセル、トレバナニブ、パゾパニブ、セジラニブ、パルボシクリブ、エベロリムス、フルオロピリミジン、IFL、レゴラフェニブ、レオリシン、アリムタ、ジカディア、スーテント、テムシロリムス、アキシチニブ、エベロリムス、ソラフェニブ、ヴォトリエント、パゾパニブ、IMA-901、AGS-003、カボザンチニブ、ビンフルニン、Hsp90阻害物質、Ad-GM-CSF、テマゾロミド(Temazolomide)、IL-2、IFNa、ビンブラスチン、サロミド、ダカルバジン、シクロホスファミド、レナリドミド、アザシチジン、レナリドミド、ボルテゾミド(bortezomid)、アムルビシン(amrubicine)、カルフィルゾミブ、プララトレキサート、及びエンザスタウリンからなる群から選択される1つ以上の治療用物質を含み得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、追加の治療用物質は、アジュバント、TLRアゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)アルファ、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、CX3CL1を標的とする治療、CXCL9を標的とする治療、CXCL10を標的とする治療、CCL5を標的とする治療、LFA-1アゴニスト、ICAM1アゴニスト、及びセレクチンアゴニストからなる群から選択される1つ以上の治療用物質を含み得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、カルボプラチン、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、ペメトレキセド、ゲムシタビン、FOLFOX、又はFOLFIRIが対象に投与される。
【0164】
いくつかの実施形態では、追加の治療用物質は、抗OX40抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗TGFβRII抗体、抗TGFβ抗体、抗LAG-3抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体、又は抗GITR抗体である。いくつかの実施形態では、追加の治療用物質は、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)又は抗EGF受容体抗体(例えば、セツキシマブ)である。
【0165】
医薬組成物及び投与経路
本明細書に記載される操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物を含有する医薬組成物もまた本明細書で提供される。医薬組成物は、当該技術分野で知られている任意の方法で製剤化され得る。
【0166】
医薬組成物は、それらの意図される投与経路(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は腹腔内)と適合性であるように製剤化される。組成物は、無菌希釈剤(例えば、無菌水若しくは生理食塩水)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール若しくは他の合成溶媒、抗菌若しくは抗真菌剤、例えば、ベンジルアルコール若しくはメチルパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸若しくは亜硫酸水素ナトリウム、キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、緩衝剤、例えば、酢酸、クエン酸、若しくはリン酸、及び等張剤、例えば、糖(例えば、デキストロース)、ポリアルコール(例えば、マンニトール若しくはソルビトール)、又は塩(例えば、塩化ナトリウム)、あるいはそれらの任意の組み合わせを含み得る。リポソーム懸濁物もまた薬学的に許容される担体として使用され得る。組成物の調製物は、製剤化され、アンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与バイアル中に封入され得る。必要とされる場合(例えば、注射用製剤におけるような)、適正な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティング、又は界面活性剤の使用によって維持され得る。前記剤の吸収は、吸収を先延ばしさせる作用物質(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を含めることによって延長され得る。あるいは、制御放出は、生分解性、生体適合性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸)を含み得る、移植物及びマイクロカプセル化送達システムによって達成され得る。
【0167】
本明細書に記載される操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物を含有する組成物は、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は腹腔内)投与のために、投薬量単位形態(すなわち、投与の容易さ及び投薬量の均一性のために予め決定された量の活性化合物を含有する物理的に分離した単位)で製剤化され得る。
【0168】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは無菌であり、実質的に等張であり、適正製造規範(GMP)条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与のための投薬量)で提供され得る。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又は補助剤を使用して製剤化され得る。製剤化は、選ばれた投与経路に依存する。注射のために、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、注射の部位における不快感を低下させるために、水溶液中、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液中で製剤化され得る。溶液は、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化物質(formulatory agent)を含有し得る。あるいは、操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物は、使用前の、好適なビヒクル、例えば、無菌パイロジェンフリー水を用いた構成のための凍結乾燥形態であり得る。
【0169】
組成物の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物(例えば、サル)において標準的な薬学的手順によって決定され得る。例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定し得、治療指数は、LD50:ED50の比率である。高い治療指数を示す剤が好ましい。剤が望ましくない副作用を示す場合、潜在的な損傷を最小化する(すなわち、望まれない副作用を低下させる)ように注意すべきである。毒性及び治療有効性は、他の標準的な薬学的手順によって決定され得る。
【0170】
例示的な用量としては、対象の体重1キログラム当たりの本明細書に記載される操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物のいずれかのミリグラム又はマイクログラム量(例えば、約1μg/kg~約500mg/kg、約100μg/kg~約500mg/kg、約100μg/kg~約50mg/kg、約10μg/kg~約5mg/kg、約10μg/kg~約0.5mg/kg、約1μg/kg~約50μg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、又は約1mg/kg~約5mg/kg)が挙げられる。これらの用量は広い範囲をカバーするが、当業者は、治療用物質はその効力が変動し得、有効量は当該技術分野で知られている方法によって決定され得ることを理解する。典型的には、比較的低い用量が初めに投与され、主治医療専門家若しくは獣医専門家(治療適用の場合)又は研究者(まだ開発段階で研究しているとき)は、適切な応答が得られるまで、その後徐々に用量を増加させ得る。加えて、任意の特定の対象に特異的な用量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、健康全般、性別、及び食事、投与の時間、投与経路、排泄の速度、並びにインビボでの操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物の半減期を含む種々の要因に依存することが理解される。
【0171】
医薬組成物は、容器、パック、又はディスペンサー中に、投与のための説明書と一緒に含まれ得る。本開示はまた、本明細書に記載の様々な使用のための操作されたTGFβRIIバリアント及びタンパク質構築物を製造する方法を提供する。
【実施例0172】
本発明を、以下の実施例において更に説明する。これは、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0173】
実施例1.操作されたTGFβRIIバリアントの設計
TGFβRII細胞外ドメインとそのリガンドTGFβ1との間の境界面の3D構造を図1Aに示す。
【0174】
TGFβRII/TGFβ1複合体構造の詳細な分析を行った。構造から、TGFβRIIのD32(TGFβ1のR94と相互作用する)及びE119(TGFβ1のR25と相互作用する)が、TGFβ1及びTGFβ3の結合親和性をTGFβ2から区別するための鍵となる残基であることが決定された。したがって、分析は、操作されたTGFβRIIバリアントが、好ましくはD32及びE119を保持するべきであることを示す。
【0175】
TGFβRIIとTGFβ1との間には、2つの主要な水素結合相互作用(D32-R94及びE119-R25)が存在する。TGFβRIIのTGFβ1への結合能力を増加させるために、追加の水素結合相互作用を加えることが望ましい。
【0176】
上記の知見に基づいて、TGFβRIIのS49及びD118における変異が、TGFβRIIのTGFβ1への結合親和性を増加させるために重要であり得ると判定された。なぜなら、変異したTGFβRIIは、2つの追加の水素結合相互作用(S49E/Q-K37及びD118E-K31)を有するからである。
【0177】
K31は、TGFβ1、TGFβ2、及びTGFβ3の間で保存されている。変異したTGFβRIIのTGFβ2への結合親和性が変化するかどうかを判定するために、結合親和性を調べた。
【0178】
野生型TGFβRIIよりも高いTGFβ1への結合親和性を有する操作されたTGFβRIIバリアントを見出すために、S49及び/又はD118を変異させた。アミノ酸位置は、野生型TGFβRII細胞外ドメインの配列(配列番号7)に基づく。
【0179】
操作されたTGFβRIIバリアント(G4_TGFβRIIタンパク質)を、図2に列挙される配列に従って、変異したTGFβRII細胞外ドメインをIgG4のFc領域に連結することによって設計した。
【0180】
実施例2.G4_TGFβRIIタンパク質についての産生及びCMC分析
G4_TGFβRIIタンパク質を、図2に列挙される配列に従って発現させた。
【0181】
発現されたタンパク質をプロテインAカラムによって精製し、続いてHPLC-SEC(サイズ排除クロマトグラフィーと結合した高速液体クロマトグラフィー、Agilent)を行い、高分子量ピークのパーセンテージ(HMW%)、主要ピークのパーセンテージ(主要(Major)%)、及び低分子量ピークのパーセンテージ(LMW%)を測定した。アミノ酸配列を、脱免疫化ツール(Immune Epitope Database And Analysis Resource、Dhanda et al.“Development of a strategy and computational application to select candidate protein analogues with reduced HLA binding and immunogenicity.”Immunology 153.1(2018):118-132)を使用して分析して、免疫原性領域を特定した。免疫原性は特定されなかった。
【0182】
図3は、産生及びCMC分析の結果の要約である。HMW%は、プロテインA精製後の試料中の高分子量種のパーセンテージを示した。主要%は、プロテインA精製後の試料中の主要分子量種のパーセンテージを示した。LMW%は、プロテインA精製後の試料中の低分子量種のパーセンテージを示した。
【0183】
発現収量を、CuBiAnXC(OPTOCELL technology)を使用し、高感度(hs)IgG Assayキット(4BioCell、カタログ番号:200112、800312)によって決定した。HPLC SECプロファイルを、AdvanceBio SEC 2.7 um Columns(Agilent Technologies,Inc.)を用いて、Waters E2695 Separations Module(Waters Corporation)によって決定及び分析した。
【0184】
図3におけるデータは、G4_TGFβRII_mt5が、比較的より低い発現収量及びより低い主要分子量種を有することを示した。G4_TGFβRII_mt5を、更なるインビトロ機能分析において使用しなかった。
【0185】
実施例3.ELISA結合アッセイ
G4_TGFβRIIタンパク質のヒトTGFβへの結合能力を決定するために、結合タイトレーションELISAアッセイを、示された濃度(1.1pM、6.4pM、38.6pM、231.5pM、1.4nM、8.3nM、50nM、又は300nM)のG4_TGFβRIIタンパク質を使用して行った。G4_TGFβRII(wt)を、陽性対照として使用した。IgG4アイソタイプ対照を、陰性対照として使用した。96ウェルEIAマイクロプレートを、0.5μg/mlのヒトTGFβ(TGFβ1、TGFβ2、又はTGFβ3)で一晩4℃でコーティングした。5%の脱脂乳を含有する1×PBSでのブロッキングの後、希釈したG4_TGFβRIIタンパク質(mt1、mt2、mt3、mt4)を添加し、室温(RT)で1時間インキュベートした。非結合タンパク質を、ウェルを1×PBST(0.05%のTween20を含有する1×PBS)で3回洗浄することによって除去した。HRPコンジュゲート二次抗体(1:5000)を、ウェルに室温(RT)で1時間添加した。インキュベーション後、過剰な二次抗体を、ウェルを1×PBSTで3回洗浄することによって除去した。最後に、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を発色のために添加した。反応を停止し、HRP活性を、分光光度計を使用して450nmで測定した。
【0186】
図4A~4Cは、ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβとの間の結合親和性を示す。データは、全ての試験したG4_TGFβRIIタンパク質が、TGFβ1及びTGFβ3に結合し得ることを示した。図4Aに示すように、TGFβ1について、G4_TGFβRII_mt1及びG4_TGFβRII_mt4は、G4_TGFβRII(wt)と比較して、より良い結合親和性を示した。G4_TGFβRII_mt2、G4_TGFβRII_mt3、及びG4_TGFβRII(wt)は、同様の結合親和性を示した。図4Cに示すように、TGFβ3について、G4_TGFβRII_mt1及びG4_TGFβRII_mt4は、G4_TGFβRII(wt)よりも良い結合親和性を示した。G4_TGFβRII_mt2及びG4_TGFβRII_mt3は、G4_TGFβRII(wt)よりも悪い結合親和性を示した。図4Bに示すように、試験したTGFβRIIタンパク質はいずれもTGFβ2への結合を示さなかった。
【0187】
実施例4.ELISA結合アッセイ(オンレート及びオフレート)
G4_TGFβRIIタンパク質のヒトTGFβ1へのオンレート及びオフレート結合能力を決定するために、結合タイトレーションELISAアッセイを、示された濃度(1.1pM、6.4pM、38.6pM、231.5pM、1.4nM、8.3nM、50nM、又は300nM)のG4_TGFβRIIタンパク質を使用して行った。G4_TGFβRII(wt)を、陽性対照として使用した。IgG4アイソタイプ対照を、陰性対照として使用した。オンレート結合能力については、96ウェルEIAマイクロプレートを、0.5μg/mlのヒトTGFβ(TGFβ1)で一晩4℃でコーティングした。5%の脱脂乳を含有する1×PBSでのブロッキングの後、希釈したG4_TGFβRIIタンパク質を添加し、室温(RT)で5分間インキュベートした。非結合タンパク質を、ウェルを1×PBST(0.1%のTween20を含有する1×PBS)で3回洗浄することによって除去した。HRPコンジュゲート二次抗体(1:5000)を、ウェルにRTで1時間添加した。インキュベーション後、過剰な二次抗体を、ウェルを1×PBSTで3回洗浄することによって除去した。最後に、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を発色のために添加した。反応を停止し、HRP活性を、分光光度計を使用して450nmで測定した。
【0188】
オフレート結合能力については、96ウェルEIAマイクロプレートを、0.5μg/mlのヒトTGFβ(TGFβ1)で一晩4℃でコーティングした。5%の脱脂乳を含有する1×PBSでのブロッキングの後、希釈したG4_TGFβRIIタンパク質を添加し、室温(RT)でI時間インキュベートした。非結合タンパク質を、ウェルを1×PBST(0.1%のTween20を含有する1×PBS)で、半時間ごとに洗浄緩衝液を交換しながら2時間800rpmシェーカーで洗浄することによって除去した。HRPコンジュゲート二次抗体(1:5000)を、ウェルにRTで1時間添加した。インキュベーション後、過剰な二次抗体を、ウェルを1×PBSTで3回洗浄することによって除去した。最後に、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を発色のために添加した。反応を停止し、HRP活性を、分光光度計を使用して450nmで測定した。
【0189】
図5Aは、ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβ1との間のオンレート結合能力を示す。図5Bは、ELISAによって測定した、G4_TGFβRIIタンパク質とヒトTGFβ1との間のオフレート結合能力を示す。図5Aに示すように、オンレートについて、G4_TGFβRII_mt1及びG4_TGFβRII_mt4は、G4_TGFβRII(wt)よりも良い結合能力を示した。G4_TGFβRII_mt2、G4_TGFβRII_mt3及びG4_TGFβRII(wt)は、同様の結合能力を示した。図5Bに示すように、オフレートについて、G4_TGFβRII_mt1及びm4は、G4_TGFβRII(wt)よりも良い結合能力を示した。G4_TGFβRII_mt3及びG4_TGFβRII(wt)は、同様の結合能力を示した。G4_TGFβRII_mt2は、G4_TGFβRII(wt)よりも悪い結合能力を示した。図5Cは、オンレート結合のEC50を示す。
【0190】
実施例5.BLIを使用する結合親和性決定
TGFβ結合親和性を、Octet Red96(Forebio)を使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)によって更に決定した。G4_TGFBRIIタンパク質を、anti-Human IgG Fc capture(AHC)Biosensors(Fortebio、カタログ番号18-5060)上に固定化した。アッセイ緩衝液(pH7.4の、0.1%のBSAを含む、0.05%のTween-20を含有する1×PBS)中で18.8nM~75nMに段階希釈したTGFβ1又はTGFβ3を、G4_TGFBRIIタンパク質のための分析物として使用した。結合動力学を、Fortebio Data Analysis 11.0 Software中の1:1 Langmuir結合モデルを使用して評価した。
【0191】
BLI結合アッセイの結果を図6に示す。図6に示すように、G4_TGFβRII_mt1及びG4_TGFβRII_mt4は、最も良いTGFβ1及びTGFβ3結合親和性を示した。更に、G4_TGFβRII_mt1及びG4_TGFβRII_mt4は、最も良いTGFβ1及びTGFβ3保持時間(koff)を示した。
【0192】
実施例6.TGFβ誘導性smad2レポーター活性の阻害
G4_TGFβRIIタンパク質がTGFβ1、TGFβ2、又はTGFβ3誘導性smad2レポーター活性を阻害する能力を決定した。G4_TGFβRIIタンパク質を、6.4pM、32pM、160pM、0.8nM、4nM、20nM、100nM、及び500nMの最終濃度に段階希釈(5倍)した。G4_TGFβRII(wt)を、陽性対照として使用した。IgG4アイソタイプ対照を、陰性対照として使用した。smad2レポーターを発現するトランスフェクトされたHEK293T細胞4×10個を、20ng/mLのTGFβ1、TGFβ2、又はTGFβ3のそれぞれと一緒に、希釈したG4_TGFβRIIタンパク質とともにインキュベートした。5%COインキューベータ中37℃での24時間のインキュベーションの後に、発光シグナルを、Varioskan(商標)LUXマルチモードマイクロプレートリーダー(Thermo)によって検出した。
【0193】
smad2レポーター活性アッセイからの結果を図7A~7Cに示す。図7Aに示すように、4つ全てのG4-TGFβRIIタンパク質は、TGFβ1媒介性smad2レポーター活性を阻害し得る。G4_TGFβRII_mt4及びG4_TGFβRII_mt1は、G4_TGFβRII(wt)よりも良い阻害効果を示した。G4_TGFβRII_mt2及びG4_TGFβRII_mt3は、G4_TGFβRII(wt)よりも悪い阻害効果を示した。図7Bに示すように、G4-TGFβRIIタンパク質はいずれもTGFβ2誘導性smad2レポーター活性を阻害しなかった。図7Cに示すように、4つ全てのG4-TGFβRIIタンパク質は、TGFβ3媒介性smad2レポーター活性を阻害し得る。G4_TGFβRII_mt4、G4_TGFβRII_mt1及びG4_TGFβRII_mt3は、G4_TGFβRII(wt)よりも良い阻害効果を示した。G4_TGFβRII_mt2は、G4_TGFβRII(wt)よりも悪い阻害効果を示した。
【0194】
他の実施形態
本発明を、その詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、例証することを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図しておらず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義されることを理解されたい。他の態様、利点、及び改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8-1】
図8-2】
【配列表】
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【外国語明細書】