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特開2024-96537定着ローラー、定着装置、及び、画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096537
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】定着ローラー、定着装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000021
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向山 泉
(72)【発明者】
【氏名】前田 誠亮
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA35
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB17
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】UFPの原因となる低分子シロキサンの放出を抑制することができる定着ローラー、定着装置、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ローラーは、弾性層の外周面に形成され、フッ素樹脂が添加された材料で構成されたフッ素樹脂含有層を備え、フッ素樹脂含有層のフッ素樹脂添加量は、15vol%以上60vol%以下であり、フッ素樹脂含有層の厚みは、7μm以上30μm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着装置に用いられる定着ローラーであって、
回転軸を構成する芯金の外周面に形成されたシリコーンゴムで構成される弾性層と、
前記弾性層の外周面に形成され、フッ素樹脂が添加された材料で構成されたフッ素樹脂含有層と、を備え、
前記フッ素樹脂含有層のフッ素樹脂添加量は、15vol%以上60vol%以下であり、前記フッ素樹脂含有層の厚みは、7μm以上30μm以下である
定着ローラー。
【請求項2】
前記フッ素樹脂含有層の表面における低分子シロキサンのIR吸光面積値Pが0.2<P<0.6である
請求項1に記載の定着ローラー。
【請求項3】
前記フッ素樹脂含有層に添加されるフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレンを含んだ樹脂である
請求項1に記載の定着ローラー。
【請求項4】
記録媒体に担持されたトナー画像を前記記録媒体に定着させる定着装置であって、
前記記録媒体のトナー画像が形成された面側に配置され、熱源によって直接又は間接的に加熱される定着ローラーと、
前記定着ローラーに付勢可能に構成された加圧ローラーと、を備え、
前記定着ローラーは、請求項1~3のいずれか一項に記載の定着ローラーで構成される
定着装置。
【請求項5】
記録媒体に所望のトナー画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体に形成されたトナー画像を前記記録媒体に定着させる定着装置とを備え、
前記定着装置は、請求項1~3のいずれか一項に記載の定着ローラーを備える
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラー、定着装置、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、用紙に形成されたトナー像を用紙に定着させるための定着装置を備える。定着装置に用いられる定着ローラーは、トナー像を用紙に加圧圧着させるために弾性層を有する。弾性層は、主にシリコンゴムから構成されているが、加熱されると低分子シロキサンが発生することが知られている。そして、この低分子量シロキサンはUFP(超微粒子粉塵:Ultra Fine Particle)の要因であることが知られている。
【0003】
従来、環境負荷低減のためにUFPの放出を抑制することが望まれていた。そこでUFP除去装置を備えた画像成形装置(特許文献1)が提案されている。特許文献1では、定着ローラーの両端部近傍に超微粒子除去装置を設置し、UFPの低減を図っている。また、特許文献2では、定着ローラーの両端に封止部を備えることで、UFPが機内に放出されることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-047790号公報
【特許文献2】特開2017-125930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2では、放出されたUFPを除去するための部材を設置することで、機内に飛散するUFPを抑制している。しかしながら、UFPを除去するための部材を設置したとしても、一度、定着ローラーからUFPが放出された場合、機内にUFPが飛散することを完全に防ぐことは難しい。したがって、定着ローラーからのUFPの放出自体を抑制することが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、UFPの原因となる低分子シロキサンの放出を抑制することができる定着ローラー、定着装置、及び、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の定着ローラーは、回転軸を構成する芯金の外周面に形成されたシリコーンゴムで構成される弾性層と、弾性層の外周面に形成され、フッ素樹脂が添加された材料で構成されたフッ素樹脂含有層と、を備える。フッ素樹脂含有層は、フッ素樹脂添加量が、15vol%以上60vol%以下であり、フッ素樹脂含有層の厚みは、7μm以上30μm以下である。
【0008】
本発明の定着装置は、記録媒体に担持されたトナー画像を前記記録媒体に定着させる定着装置であって、記録媒体のトナー画像が形成された面側に配置され、熱源によって直接又は間接的に加熱される定着ローラーと、定着ローラーに付勢可能に構成された加圧ローラーと、を備える。そして、定着ローラーは、上述の構成を有する。
【0009】
本発明の画像形成装置は、記録媒体に所望のトナー画像を形成する画像形成部と、記録媒体に形成されたトナー画像を記録媒体に定着させる定着装置とを備える。そして、定着装置は、上述した本発明の定着ローラーを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定着ローラーから排出される低分子シロキサンを低減することにより、UFPの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の全体構成図である。
図2】定着ローラー63の断面構成図である。
図3】定着ローラー63におけるフッ素樹脂含有層3の吸光度を示した図である。
図4】フッ素樹脂含有層3の厚み、及び、フッ素樹脂添加量を異ならせて作成した試料a~pと、各試料a~pにおける評価結果を示した図である。
図5図4に示した評価結果を、フッ化樹脂の添加量とフッ素樹脂含有層3の厚みとに対応付けて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る定着ローラー、定着装置、及び、画像形成装置の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0013】
1.画像形成装置
図1に、画像形成装置100の全体構成を概略的に示す。図1に示すように、画像形成装置100は、画像読取り部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、及び、定着部60(本発明の定着装置に相当)を備える。
【0014】
画像形成装置100は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置100は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、給紙トレイユニット51a~51cから送出された用紙Sに二次転写することにより、画像を形成する。
【0015】
また、画像形成装置100には、YMCKの各色に対応する4つの感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0016】
図1に示すように、画像読取り部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0017】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0018】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取り部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0019】
図1に示すように、操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部(図示を省略する)から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部101に出力する。
【0020】
画像処理部30は、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0021】
画像形成部40は、印刷ジョブの設定に基づいて用紙Sに画像を形成する。画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0022】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0023】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0024】
感光体ドラム413は、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなる。
【0025】
帯電装置414は、例えば帯電チャージャーであり、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0026】
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。その結果、感光体ドラム413の表面のうちレーザー光が照射された画像領域には、背景領域との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0027】
現像装置412は、二成分逆転方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分の現像剤を付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0028】
現像装置412には、例えば帯電装置414の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、または交流電圧に帯電装置414の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加される。その結果、露光装置411によって形成された静電潜像にトナーを付着させる反転現像が行われる。
【0029】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に当接され、弾性体よりなる平板状のドラムクリーニングブレード等を有し、中間転写ベルト421に転写されずに感光体ドラム413の表面に残留するトナーを除去する。
【0030】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0031】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置される駆動ローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0032】
中間転写ベルト421は、導電性及び弾性を有するベルトであり、表面に高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部101からの制御信号によって回転駆動される。
【0033】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0034】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0035】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側、つまり一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0036】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側、つまり二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0037】
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0038】
定着部60は、用紙Sの定着面、つまりトナー像が形成されている面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面つまり定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを挟持して搬送する定着ニップが形成される。
【0039】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
【0040】
上側定着部60Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62及び定着ローラー63を有する。加熱ローラーは、中空円筒形状の部材であり、内部に熱源を内蔵している。熱源は、例えば、ハロゲンヒーターで構成されている。加熱ローラー62は、熱源により所定の温度に加熱される。
【0041】
定着ローラー63は、加熱ローラー62の近傍に設けられ、定着ベルト61を介して下側定着部を構成する加圧ローラー64に対向するように配置されている。定着ローラー63は、回転軸となる芯金と、芯金の周囲に構成された弾性層とで構成された円柱状の部材であり、そのローラー径は60mm以上に構成されている。本実施形態では、定着ローラー63の構成に特徴を有する。定着ローラー63の詳しい構成については、後で詳述する。
【0042】
定着ベルト61は、加熱ローラー62及び定着ローラー63の外周部に所定の張力を有するように巻き掛けられた無端状のベルトである。定着ベルト61は、加熱ローラー62との接触位置において、加熱ローラー62により加熱される。これにより、定着ベルト61は、定着温度に必要な所定の温度に加熱可能に構成されている。
【0043】
下側定着部60Bは、裏面側支持部材である加圧ローラー64を有する。加圧ローラー64は、定着ローラー63と対向する位置に配置された円柱状の部材である。加圧ローラー64は、モーターによって回転駆動されている。加圧ローラー64は、バネ等の弾性体により、定着ローラー63側に付勢可能に構成されている。加圧ローラー64が定着ローラー63に向かう方向に付勢された場合、加圧ローラー64が定着ベルト61に圧接されることによって用紙Sを挟持して搬送する定着ニップ部を形成する。定着ニップ部に用紙が挟持された状態で搬送されることにより、用紙Sに形成されたトナー像が定着ベルト61によって加熱され、用紙Sに定着する。
【0044】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。
【0045】
搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対、用紙Sを画像形成部40及び定着部60を通過させ、画像形成装置100の機外に排出する通常搬送路53b等を有する。
【0046】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。画像形成部40においては、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により画像形成装置100外に排紙される。
【0047】
2.定着ローラー
次に、本実施形態の定着部60に用いられている定着ローラー63について説明する。図2は、定着ローラー63の断面構成図である。
【0048】
図2に示すように、本実施形態の定着ローラー63は、中心軸側から順に構成された芯金1、弾性層2、及び、フッ素樹脂含有層3で構成されている。
【0049】
芯金1は、例えば、アルミニウム、鉄、又は銅等から構成された円柱形の部材で構成されている。弾性層2は、芯金1の外周面に所定の厚みで設けられた層であり、シリコーンゴムで構成された弾性を有する層で構成されている。
【0050】
フッ素樹脂含有層3は、弾性層2の外周面に設けられた弾性を有する層であり、フッ素樹脂(PTFE:polytetrafluoroethylene)が添加されたシリコーン素材で構成されている。フッ素樹脂含有層3の厚みは、7μm以上30μm以下であることが好ましい。また、フッ素樹脂含有層3におけるフッ素樹脂の添加量は、15Vol%以上60Vol%以下であることが好ましい。
【0051】
本実施形態の定着ローラー63は、芯金1に、弾性層2となるシリコーンを塗布した後、フッ素樹脂含有層3となるフッ素樹脂を添加したシリコーンを弾性層2の外側に塗布し、加硫形成することで形成することができる。
【0052】
以下に、フッ素樹脂含有層3の厚み、及び、フッ素樹脂含有層3におけるフッ素樹脂添加量を異ならせた場合において、定着部60における定着品質、及び、定着ローラーから発生する低分子シロキサンの量を調べた実験結果について説明する。
【0053】
フッ素樹脂含有層3の厚みについては、フッ素樹脂含有層3の厚みを異ならせた試料を作成し、トナー画像が形成された用紙Sに対する各試料を使用した場合の定着品質(分離性を含む)を調べることで評価した。ここで、定着品質に関する良、不良は、コールドオフセット又はホットオフセットの発生があったか否かによって決定した。コールドオフセットは、トナーが充分溶けきれずに、トナー画像が一部欠ける等、用紙Sへのトナー画像の定着が為されない状態をいう。ホットオフセットは、トナーが過加熱されることにおり、トナー画像の一部がローラー側(定着ベルト側)に取りさられる状態をいう。
【0054】
フッ素樹脂含有層3のフッ素樹脂添加量については、フッ素樹脂添加量を異ならせた試料を作成し、顕微Ge-ATR法を用いて各試料を測定し、各試料の測定値から得られる低分子シロキサンのIR吸光面積値によって評価した。
【0055】
ここで、本実験で用いた顕微Ge-ATR法について説明する。顕微Ge-ATR法は、試料に、ATRプリズムを接触圧0.2Nm-2で押し付けた後、ATRプリズムを試料から離して吸光度を測定することで、試料からにじみ出る成分を測定することができる。本実験では、測定装置として、日本分光株式会社製のマクロGe-ATRを用いた。
【0056】
図3は、測定装置で測定されるフッ素樹脂含有層3の吸光度を示した図である。図3の横軸は波数(cm-1)であり、縦軸は吸光度である。なお、図3の実線で示す測定値及び破線で示す測定値は、それぞれ、弾性層2及びフッ素樹脂含有層3の塗布方法が異なる試料の測定値を示している。
【0057】
図3において、吸光度スペクトルの波数1200cm-1~950cm-1の範囲の面積値(積算値であり図3でグレーに色付けされた範囲の面積)が低分子シロキサンのIR吸光面積値である。本実施形態では、各試料のIR吸光面積値を測定することで、試料から染み出る低分子シロキサンの量を評価した。
【0058】
図4は、フッ素樹脂含有層3の厚み、及び、フッ素樹脂添加量を異ならせて作成した試料a~pと、各試料a~pにおける評価結果を示した図である。また、図5は、図4に示した評価結果を、フッ化樹脂の添加量とフッ素樹脂含有層3の厚みとに対応付けて示した図である。なお、図5では、フッ素樹脂含有層3の厚みを定着品質に対応付けて示し、フッ素樹脂の添加量を低分子シロキサンIR吸光面積値から求められる低分子シロキサンの染み出し量に対応付けて示した。
【0059】
図4に示すように、フッ素樹脂含有層3の厚みが7μm未満の試料a、e、iでは、ホットオフセットによって定着品質が悪く、30μmよりも厚い試料d、h、lでは、コールドオフセットによって定着品質が悪くなる結果となった。さらに、フッ素樹脂含有層3の厚みが7μm以上30μm以下であっても、フッ素樹脂添加量が61vol%の場合(試料m、o)では、表層割れに起因して定着品質が悪くなってしまう結果となった。フッ素樹脂含有層3の厚みが、7μm以上30μm以下であり、フッ素樹脂添加量が60vol%である試料j、kに関しては、定着品質は良好であった。
【0060】
また、図4に示すように、フッ素樹脂添加量が、14vol%の試料a、b、c、dでは、低分子シロキサンIR吸光面積値が、フッ素樹脂添加量15vol%とされた試料e、f、g、hに比較して急激に大きくなっていることがわかる。したがって、低分子シロキサンIR吸光面積値の染み出しを防ぐためには、フッ素樹脂添加量が15vol%であることが好まし。
【0061】
一方、図4に示すように、フッ素樹脂添加量が61vol%の試料m、n、o、pには、フッ素樹脂添加量が60vol%の試料i、j、k、lに比較して低分子シロキサンIR吸光面積値が急激に大きくなっていることがわかる。これは、フッ素樹脂添加量が多くなると、フッ素樹脂含有層の弾性が弱くなり、表層が割れることに起因する。したがって、定着ローラーの表層割れを防ぐため、フッ素樹脂添加量は、60vol%以下であることが好ましい。この結果から、フッ素樹脂含有層3におけるフッ素樹脂添加量は、15vol%以上60vol%以下であることが好ましい。
【0062】
このように、上述した定着品質、及び、低分子シロキサンのIR吸光面積値の結果から、フッ素樹脂含有層3の厚み及び、フッ素樹脂添加量が、図5に示す領域A~Iのうち、領域Eの範囲にあるときに、低分子シロキサンの染み出しが少ない状態で、かつ、定着品質が良好に維持されることがわかる。すなわち、フッ素樹脂含有層の厚みは、7μm以上30μm以下であることが好ましく、フッ素樹脂添加量は、15vol%以上60vol%以下であることが好ましい。
【0063】
なお、定着品質が良好に維持され、かつ、低分子シロキサンの染み出しが許容範囲以下であるときの低分子シロキサンIR吸光面積値Pは、図4に示す実験結果から、0.2<P<0.6(100分の1の位は切り上げ)と設定することができる。
【0064】
以下に、フッ化樹脂添加量、及びフッ素樹脂含有層3の厚みを異ならせた実施例、及び比較例に係る定着ローラーを作成し低分子シロキサンのIR吸光面積値を測定した結果について説明する。
【0065】
[実施例]
実施例として、芯金の外周にシリコーンからなる弾性層を形成した後、フッ素樹脂添加量が50%、厚み8μmのフッ素樹脂含有層を弾性層の外周に塗布し加硫形成して定着ローラーを作成した。実施例に係る定着ローラーにおいて、低分子シロキサンのIR吸光面積値は0.35であった。
【0066】
[比較例1]
比較例1として、芯金の外周にシリコーンからなる弾性層を形成した後、フッ素樹脂添加量が50%、厚み5μmのフッ素樹脂含有層を弾性層の外周に塗布し加硫形成して定着ローラーを作成した。比較例1に係る定着ローラーにおいて、低分子シロキサンのIR吸光面積値は1.32であった。
【0067】
[比較例2]
比較例2として、芯金の外周にシリコーンからなる弾性層を形成した後、フッ素樹脂添加量が61%、厚み8μmのフッ素樹脂含有層を弾性層の外周に塗布し加硫形成した定着ローラーを作成した。比較例2に係る定着ローラーにおいて、低分子シロキサンのIR吸光面積値は2.57であった。
【0068】
以上の実施例、比較例1及び比較例2の結果からも、フッ素樹脂添加量が15vol%以上60vol%以下であり、厚みが7μm以上30μm以下であるフッ素樹脂含有層を定着ローラーの表面に形成することで、低分子シロキサンのIR吸光面積値を十分に低くすることができることがわかる。
【0069】
以上のように、本実施形態の定着ローラーを用いることで、定着品質を損なうことなく、UFPの発生を抑えることができる。本実施形態では、定着ベルト61を介して加圧ローラー64に対向するように配置された定着ローラー63に本発明の構成を適用したが、これに限られるものではない。例えば、内部に熱源が内蔵された定着ローラーに、本発明の構成を適用してもよい。内部に熱源が内蔵された定着ローラーは、例えば、低速の画像形成装置に適用される定着装置に用いられる定着ローラーである。この場合、内部に熱源が設けられた定着ローラーとこの定着ローラーに対向するように配置された加圧ローラーとで定着ニップ部が構成される。
【0070】
上述した実施形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成について他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
100…画像形成装置、1…芯金、2…弾性層、3…フッ素樹脂含有層、10…画像読取り部、20…操作表示部、30…画像処理部、40…画像形成部、41…画像形成ユニット、42…中間転写ユニット、50…用紙搬送部、51…給紙部、51a…給紙トレイユニット、52…排紙部、60…定着部、60A…上側定着部、60B…下側定着部、61…定着ベルト、62…加熱ローラー、63…定着ローラー、64…加圧ローラー
図1
図2
図3
図4
図5