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特開2024-96541画像不良原因判定装置、画像不良原因判定方法、画像不良原因判定プログラム、及び、印刷システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096541
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】画像不良原因判定装置、画像不良原因判定方法、画像不良原因判定プログラム、及び、印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20240709BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240709BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J29/38 301
G03G21/00 510
G03G21/00
B41J29/393 105
B41J29/38 801
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000025
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 浩一
【テーマコード(参考)】
2C061
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS02
2C061HJ07
2C061HK11
2C061HK19
2C061HN15
2C061HV01
2C061HV31
2H134QA01
2H270KA70
2H270LA20
2H270LA22
2H270LA71
2H270LA77
2H270LA79
2H270LA80
2H270LA98
2H270LC02
2H270LC04
2H270LD03
2H270LD09
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB32
2H270MB33
2H270MB40
2H270MB43
2H270NC01
2H270NC09
2H270NC10
2H270NC12
2H270QA13
2H270QA23
2H270QA31
2H270QA34
2H270RA02
2H270RA08
2H270RB09
2H270RC05
2H270RC11
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
(57)【要約】
【課題】サービス訪問時の無駄な部品交換をなくすことができる画像不良原因判定装置(方法)を提供する。
【解決手段】本発明画像不良原因判定装置60は、サービス訪問時の無駄な部品交換をなくすための装置であり、画像形成部に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データと、用紙上に形成された画像を読み取る画像読取部による読取画像の検品結果データと、印刷に使用した用紙に関する用紙情報データと、に基づいて、画像不良の発生原因を判定する判定制御部61を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データと、
用紙上に形成された画像を読み取る画像読取部による読取画像の検品結果データと、
印刷時に使用した用紙に関する用紙情報データと、
に基づいて、画像不良の発生原因を判定する判定制御部
を備える画像不良原因判定装置。
【請求項2】
前記判定制御部は、前記読取画像の検品結果データに基づいて前記読取画像の不良が検知されたことを受けて、前記状態履歴データ及び前記用紙情報データを用いて画像不良の発生原因を判定する
請求項1に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項3】
前記判定制御部は、前記読取画像の検品結果データに基づいて前記読取画像の不良が検知されたタイミングで、前記状態履歴データ及び前記用紙情報データを用いて画像不良の発生原因を判定する
請求項2に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項4】
前記判定制御部は、前記読取画像の検品結果データに基づいて前記読取画像の不良が検知されたジョブの終了後に、前記状態履歴データ及び前記用紙情報データを用いて画像不良の発生原因を判定する
請求項2に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項5】
前記判定制御部は、前記読取画像の検品結果データに基づいて前記読取画像の不良が複数回検知されたタイミングで、前記状態履歴データ及び前記用紙情報データを用いて画像不良の発生原因を判定する
請求項2に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項6】
前記判定制御部は、前記読取画像の検品結果データに基づいて前記読取画像の不良が検知されたタイミングで、前記状態履歴データ及び前記用紙情報データを用いて画像不良の発生原因を判定する第1判定モードと、前記読取画像の検品結果データに基づいて前記読取画像の不良が検知されたジョブの終了後に、前記状態履歴データと前記用紙情報データとを用いて画像不良の発生原因を判定する第2判定モードと、を有し、前記読取画像の検品結果データで前記読取画像の不良が検知されたときの不良レベルに応じて、前記第1判定モードと前記第2判定モードとを切り替える
請求項2に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項7】
前記判定制御部は、前記状態履歴データを用いて画像不良の発生原因として前記画像形成部材を絞り込んだ後に、前記用紙情報データを用いて画像不良の発生原因が用紙起因か画像形成部材起因かを判定する
請求項1に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項8】
前記画像不良の発生原因は、前記画像形成部材であり、
前記画像形成部材は、ドラムユニット、露光器、現像器、転写器、及び、定着器を含む前記画像形成部の画像形成プロセスに必要な少なくとも1つである
請求項1~7のいずれか1項に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項9】
前記状態履歴データは、前記画像形成部材の状態に対応した値の変化を測定したデータである
請求項8に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項10】
前記画像形成部材の状態に対応した値は、前記画像形成部の画像形成プロセスを行って得られるセンシングデータの値である
請求項9に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項11】
前記読取画像の検品結果データ、前記状態履歴データ、及び、前記用紙情報データは、それぞれのデータ生成タイミングの同期がとれている状態で記憶部に記憶される
請求項1に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項12】
前記判定制御部は、メディア検知部の検知結果に基づいて前記用紙情報データを取得する
請求項1に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項13】
前記用紙情報データは、用紙の種類を示すデータである
請求項12に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項14】
前記用紙情報データは、用紙の物性情報を示すデータである
請求項12に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項15】
前記用紙の物性情報は、含水率、表面性、紙厚、及び、坪量の少なくとも1つである
請求項14に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項16】
前記判定制御部は、ジョブの設定に基づいて前記用紙情報データを取得する
請求項1に記載の画像不良原因判定装置。
【請求項17】
画像形成部に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データを参照するステップと、
用紙上に形成された画像を読み取る画像読取部による読取画像の検品結果データを参照するステップと、
印刷時に使用した用紙に関する用紙情報データを参照するステップと、
前記状態履歴データ、前記検品結果データ、及び、前記用紙情報データの各参照結果に基づいて、画像不良の発生原因を判定するステップと、
を有する画像不良原因判定方法。
【請求項18】
画像形成部に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データを参照するステップと、
用紙上に形成された画像を読み取る画像読取部による読取画像の検品結果データを参照するステップと、
印刷時に使用した用紙に関する用紙情報データを参照するステップと、
前記状態履歴データ、前記検品結果データ、及び、前記用紙情報データの各参照結果に基づいて、画像不良の発生原因を判定するステップと、
の各処理をコンピュータに実行させるための画像不良原因判定プログラム。
【請求項19】
給紙装置から供給される用紙の情報を検知するメディア検知装置と、
前記メディア検知装置を経た用紙に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置が形成した画像を読み取る画像読取部を有する画像検査装置と、
前記画像形成装置が形成した画像の不良原因を判定する画像不良原因判定装置と、
を具備する印刷システムであって、
前記画像不良原因判定装置は、
前記画像形成装置における画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データと、
前記画像読取部による読取画像の検品結果データと、
前記メディア検知装置で検知した用紙情報データと、
に基づいて、画像不良の発生原因を判定する判定制御部を備える
印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像不良原因判定装置、画像不良原因判定方法、画像不良原因判定プログラム、及び、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置を含む印刷システムにおいては、常にユーザーが満足できる品質の画像を出力することが求められる一方、部品の耐久等により、一般的に、用紙に出力される画像は、徐々にではあるが不可避的に劣化してゆく性質を有している。このため、用紙上に出力された画像に対する品質検査、及び、画像品質が低下した場合の原因究明、さらには、部品の交換や清掃などのメンテナンス作業を定期的に行う必要があり、実際、メンテナンス作業を行うためのサービスマンが定期的にユーザーの元に訪問している。
【0003】
画像品質への満足度はユーザーごとに異なり、文字等の低印字率の画像を多く出力するユーザーにあっては、多少白スジが出ていても気にならない傾向にあるが、一方、写真や図などの高印字率の画像を多く出力するユーザーにあっては、少しの白スジでも品質に問題があると判断することが多い。このため、サービス訪問する際には、高印字率の画像を多く出力するユーザーが要求する装置の品質を、画像品質への要求が低いユーザーにも適用することがある。この場合、未だ十分に使用できる部品を交換することになるため、無駄な部品交換が行われる、換言すれば、必要性の低いメンテナンス作業が行われることによって、生産性が低下する等の不利益が発生していることが知られている。
【0004】
これに対し、特許文献1に記載の従来技術では、サービス訪問時に、画像不良の発生原因となる不良部品を特定する際に、メモリに記憶されている各部品の使用履歴を参照または加味することによって、不良部品の特定を行うようにしている。各部品の使用履歴は、駆動時間、物性推移(抵抗値の変化)、湿度や気温、日内のプリント枚数、サービスマンの各部品の清掃等の作業内容などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-39267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の従来技術では、各部品の使用履歴を参照または加味しているものの、部品の使用履歴として印刷時に使用している用紙に関する情報、例えば用紙の物性情報を見ていない。そのため、例えば、物性情報の含水率が低い用紙にて画像不良が発生した場合、含水率が低いために用紙転写時の合成抵抗値(転写部材+用紙+画像)が高くなる。これにより、用紙の状態に起因して発生した画像不良であるにもかかわらず、転写部材の物性推移だけで判断すると、転写部品の耐久による抵抗値上昇によって画像不良が発生したと判断してしまい、画像不良の発生原因ではない転写部材を交換してしまうこことになる。その結果、サービス訪問時の無駄な部品交換によってお客様のダウンタイムが発生するとともに、メーカ側のマテリアルコスト(サービス費用)が発生することになる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、サービス訪問時の無駄な部品交換をなくすことができる画像不良原因判定装置、画像不良原因判定方法、画像不良原因判定プログラム、及び、印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の画像不良原因判定装置は、画像形成部に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データと、用紙上に形成された画像を読み取る画像読取部による読取画像の検品結果データと、印刷時に使用した用紙に関する用紙情報データと、に基づいて、画像不良の発生原因を判定する判定制御部を備える。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明の画像不良原因判定方法は、画像形成部に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データを参照するステップと、用紙上に形成された画像を読み取る画像読取部による読取画像の検品結果データを参照するステップと、印刷時に使用した用紙に関する用紙情報データを参照するステップと、状態履歴データ、検品結果データ、及び、用紙情報データの各参照結果に基づいて、画像不良の発生原因を判定するステップと、を有する。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の画像不良原因判定プログラムは、画像形成部に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データを参照するステップと、用紙上に形成された画像を読み取る画像読取部による読取画像の検品結果データを参照するステップと、印刷時に使用した用紙に関する用紙情報データを参照するステップと、状態履歴データ、検品結果データ、及び、用紙情報データの各参照結果に基づいて、画像不良の発生原因を判定するステップと、の各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0011】
また、上記課題を解決するための本発明の印刷システムは、給紙装置から供給される用紙の情報を検知するメディア検知装置と、メディア検知装置を経た用紙に画像を形成する画像形成装置と、画像形成装置が形成した画像を読み取る画像読取部を有する画像検査装置と、画像形成装置が形成した画像の不良原因を判定する画像不良原因判定装置と、を具備する印刷システムであって、画像不良原因判定装置は、画像形成装置における画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データと、画像読取部による読取画像の検品結果データと、メディア検知装置で検知した用紙情報データと、に基づいて、画像不良の発生原因を判定する判定制御部を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サービス訪問時の無駄な部品交換をなくすことができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成、及び、効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る画像不良原因判定装置を含む印刷システムの全体のシステム構成例を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る印刷システムの制御系の第1の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る印刷システムの制御系の第2の構成例を示すブロック図である。
図4】出力画像読取部による読取画像の検品(検査)についての説明図である。
図5】画像不良原因判定装置が画像不良の発生原因を特定する判定処理を開始する具体的なタイミングについて説明するタイミングチャートである。
図6】お客様要求画像に対する印刷後画像の検品結果を示す図である。
図7】画像形成部に含まれる画像形成部材の一例である画像形成ユニットの構成の概略を示す概略構成図である。
図8】画像形成ユニットにおける画像を形成するための各ユニットの処理例を示す図である。
図9】印刷中の感光体ドラムの表面電位の変化を示す図である。
図10】印刷・時間経過後の2次転写抵抗の変化の一例を示す図である。
図11】印刷中の定着温度の変化の一例を示す図である。
図12】メディア検知装置のメディア検知部の具体例を示す概略構成図である。
図13】読取画像の検品結果、画像形成部材の状態履歴、及び、用紙情報の各データの保存状態のフォーマットを示す図である。
図14】画像不良が発生した原因を判定する画像不良原因判定処理の一例の流れを示すフローチャートである。
図15】印刷システムにおける操作表示部の操作画面の一例を示す図である。
図16】本発明の変形例に係る印刷システムの全体のシステム構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0016】
<印刷システムの構成例>
まず、本発明の実施形態に係る印刷システムの全体構成、即ち、本発明の実施形態に係る画像不良原因判定装置を含む印刷システムの全体構成について説明する。
【0017】
[システム構成例]
図1は、本発明の実施形態に係る画像不良原因判定装置を含む印刷システム1の全体のシステム構成例を示す概略図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る印刷システム1は、給紙装置10、メディア検知装置20、画像形成装置30、画像検査装置40、後処理装置50、及び、画像不良原因判定装置60を備えている。給紙装置10と、メディア検知装置20と、画像形成装置30と、画像検査装置40と、後処理装置50とは、それぞれ、用紙の搬送方向(図の右側から左側の方向)において、上流側から下流側に向けて順に配置されている。
【0019】
給紙装置10は、印刷する用紙のサイズ等の用紙の種類ごとに用紙を格納する例えば3つの用紙格納部(用紙格納部1,2,3)を備えており、指定された用紙を画像形成装置30に供給する。
【0020】
メディア検知装置20は、印刷する用紙に関する情報を検知するメディア検知部21を有している。用紙に関する情報(以下、単に「用紙情報」と記載する場合がある)としては、用紙の種類(普通紙、上質紙、カラー紙、塗工紙など)や、用紙の物性情報(含水率、表面性、用紙抵抗値、用紙の目方向、剛度、紙厚、坪量、紙サイズなど)を例示することができる。
【0021】
メディア検知部21は、第1のメディアセンサ211と第2のメディアセンサ212とから構成されている。第1のメディアセンサ211は、用紙搬送経路22に設けられ、搬送中の用紙について、例えば、含水率、紙厚、坪量などの物性情報をリアルタイムで検知する。第2のメディアセンサ212は、用紙排出経路23に設けられ、例えば、表面性、用紙抵抗値、剛度などの物性情報を、用紙の搬送を停止した状態で検知する。
【0022】
第2のメディアセンサ212で物性情報が検知された用紙は、排出トレイ24に排出される。第2のメディアセンサ212で検知された物性情報は、2枚目以降の用紙に対して反映される。
【0023】
メディア検知部21で検知された用紙の物性情報、具体的には、第1のメディアセンサ211で検知された含水率、紙厚、坪量などの物性情報、及び、第2のメディアセンサ212で検知された表面性、用紙抵抗値、剛度などの物性情報は、用紙情報データとして画像不良原因判定装置60に供給される。
【0024】
画像形成装置30は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式の画像形成装置であり、トナー(現像剤)を用紙に付着させることによって用紙に画像を形成(作像)する画像形成部31を有している。
【0025】
画像形成部31は、ドラムユニット、感光体、露光器、現像器などの画像形成ユニット311、感光体ドラム上に形成されたトナー像を中間転写ベルトに転写する転写ユニット312、及び、用紙に形成された画像に熱と圧力を加えて用紙に画像を定着させる定着ユニット313などによって構成されている。
【0026】
画像形成装置30においては、画像作成・定着・搬送等による印刷の実行に伴って、画像形成部31に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データの取得が行われる。ここで、画像形成部31に含まれる画像形成部材は、画像形成ユニット311のドラムユニット、感光体、露光器、現像器など、転写ユニット312の転写器など、定着ユニット313の定着器などである。画像形成装置30で取得された状態履歴データは、画像不良原因判定装置60に供給される。
【0027】
画像検査装置40は、画像形成装置30で用紙に形成された画像を読み取る出力画像読取部41を有している。出力画像読取部41は、例えば、光学センサによって構成されている。光学センサとしては、例えば、用紙幅方向に亘って画素がライン状に配置され、一次元画像を読み取るCCDセンサやCMOSセンサ等のラインセンサを例示することができる。
【0028】
画像検査装置40では、用紙に形成された画像を出力画像読取部41によって読み取り、その読取画像に基づいて所望の印刷結果を得ることができたか否かの検査(検品)が行われる。画像検査装置40での検査結果は、検品結果データとして画像不良原因判定装置60に供給される。
【0029】
後処理装置50は、例えば、用紙を所定サイズに切断する等の後処理を行う。
【0030】
[画像不良が発生する際のメカニズム例]
上記構成の画像形成装置30を含む印刷システム1において、画像不良が発生する際のメカニズム例としては、以下2点が考えられる。
【0031】
画像不良が発生する際のメカニズム例の1点目は、画像形成部材の一例であるドラムユニットの動作結果がバラつくと(例えば、時間単位でドラム表面電位が3Vの差異)、提供する印刷画像には細かいスジが発生してしまい、お客様に画像不良と視認されるため、クレームにつながってしまう。
【0032】
画像不良が発生する際のメカニズム例の2点目は、お客様が使用する用紙の物性に応じたプロセス条件を満たせずに制御してしまうことで、画像不良が発生し、クレームにつながってしまう。印刷を生業とするお客様が使用する用紙は、発注元の依頼に応えるために多種多様な用紙で印刷を行う。そのため、印刷システムでは、用紙の物性によって動作モードを変更しながら、用紙にあった制御を提供し、お客様の要求に応えている。
【0033】
[実施形態に係る画像不良原因判定装置]
そこで、本発明の実施形態に係る画像不良原因判定装置60では、お客様の印刷システムにおいて、画像不良が発生した際には、「画像形成部材が有する状態の変化を示す状態履歴データ」と、「印刷に使用した用紙に関する用紙情報」とを使用し、画像不良が発生した原因を特定する。
【0034】
上述したように、本発明の実施形態に係る印刷システム1は、お客様が使用する用紙に関する用紙情報(具体的には、お客様が使用する用紙の物性情報)を取得するためにメディア検知装置20(より具体的には、メディア検知部21)を搭載している。メディア検知部21は、主に、以下の物性情報を検知する。
・用紙に含まれる水分(含水率/含水量)を検知する。
・用紙表面の粗さ(表面性)を検知する。
・用紙が持つ抵抗(用紙抵抗値)を検知する。
【0035】
なお、用紙の物性情報としては、上記の物性情報に限られるものではなく、他の物性物性として、用紙の目方向・剛度・紙厚・坪量・紙サイズなど例示することができる。
【0036】
本実施形態に係る画像不良原因判定装置60は、判定制御部61による制御の下に、メディア検知装置20で取得された用紙情報データと、画像形成部31に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データと、出力画像読取部41による読取画像の検品結果データと、に基づいて、画像不良が発生した原因を判定(特定)する。
【0037】
このように、画像形成部材が有する状態の変化を示す状態履歴データの他に、印刷に使用した用紙に関する用紙情報を用いて、画像不良が発生した原因を特定することにより、サービス訪問時の無駄な部品交換を無くすことができる。これにより、無駄な部品交換によるお客様のダウンタイムの削減、及び、メーカ側のマテリアルコスト(サービス費用)の削減を図ることができる。
【0038】
[印刷システムの制御系の構成例]
ここで、印刷システム1の制御系の構成例として、第1の構成例及び第2の構成例について説明する。
【0039】
(第1の構成例)
図2は、本発明の実施形態に係る印刷システムの制御系の第1の構成例を示すブロック図である。
【0040】
図2に示すように、本実施形態に係る印刷システム1は、先述したメディア検知部21、画像形成部31、及び、出力画像読取部41の他に、操作表示部70、画像処理部80、記憶部91、通信部92、及び、制御部100を有する構成となっている。
【0041】
操作表示部70は、例えば、タッチパネル付きの液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部71及び操作部72の各機能部を有している。表示部71は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部72は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを有し、ユーザーによる各種入力操作を受けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0042】
画像処理部80は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路部等を備えている。例えば、画像処理部80は、制御部100による制御の下に、記憶部81内の階調補正テーブルLUTに基づいて階調補正を入力画像データに対して行う。また、画像処理部80は、階調補正の他に、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す処理を入力画像データに対して行う。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部31において用紙に画像が形成される。
【0043】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、及び、RAM(Random Access Memory)103等を有するパーソナルコンピュータ構成となっている。
【0044】
CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、この展開したプログラムと協働して画像形成装置30の各機能ブロックの動作について集中制御を行う。この集中制御の際、CPU101は、記憶部81に格納されている各種データを参照する。記憶部81は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(所謂、フラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0045】
第1の構成例に係る印刷システム1では、画像不良原因判定装置60の判定制御部61の機能を制御部100が有することになる。すなわち、第1の構成例に係る印刷システム1は、印刷システム内に画像不良原因判定装置60が組み込まれ(インライン)、画像不良が発生した原因を判定するための処理を、印刷動作を制御するリソース(制御部100)と同様のリソースによって実施するシステム構成となっている。この場合、ROM102には、画像不良が発生した原因を特定する処理を、パーソナルコンピュータ構成の制御部100に、具体的には、CPU101に実行させるためのプログラム(画像不良原因判定プログラム)が格納される。
【0046】
(第2の構成例)
図3は、本発明の実施形態に係る印刷システムの制御系の第2の構成例を示すブロック図である。
【0047】
図3に示すように、第2の構成例は、印刷システム1の外に画像不良原因判定装置60を設置し(オフライン接続)、画像不良が発生した原因を判定するための処理を、画像不良原因判定装置60固有のリソース(判定制御部61)を用いて実施するシステム構成となっている。
【0048】
画像不良原因判定装置60は、判定制御部61の他に、通信部62を有している。判定制御部61は、CPU611、ROM612、及び、RAM613等を有するパーソナルコンピュータ構成となっている。ROM612には、画像不良が発生した原因を特定する処理を、パーソナルコンピュータ構成の判定制御部61に、具体的には、CPU611に実行させるためのプログラム(画像不良原因判定プログラム)が格納される。
【0049】
第2の構成例に係る印刷システムにおいて、画像不良原因判定装置60は、通信部62を用いて直接、印刷システム1の通信部92と通信を行う。画像不良原因判定装置60の接続方式については、直接、印刷システム1と通信するだけでなく、画像不良原因判定装置60と印刷システム1との間にクラウドシステムなどの第三者を介在させる構成とすることもできる。
【0050】
[読取画像の検品について]
ここで、画像検査装置40における出力画像読取部41による読取画像の検品(検査)について説明する。図4は、出力画像読取部41による読取画像の検品(検査)についての説明図である。図4の左側の図は、お客様が要求する画像であり、右側の図は、用紙に印刷した後の出力画像である。この例の場合、印刷後の出力画像に、多くの欠落箇所が生じていることから、読取画像の検品結果は、お客様が要求する画像を再現できていない画像不良、即ち、印刷結果がNGとなる。
【0051】
例えば、図3に示すシステム構成において、画像不良原因判定装置60の判定制御部61は、出力画像読取部41による読取画像の不良が検知されたことを受けて、画像形成部31に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データ、及び、メディア検知装置20で取得された用紙情報データを用いて画像不良の発生原因を判定(特定)する処理を実行する。
【0052】
画像不良原因判定装置60の判定制御部61が画像不良の発生原因を特定する判定処理を開始する具体的なタイミングについて、図5のタイミングチャートを用いて説明する。ここでは、一例として、印刷枚数が5枚のジョブにおいて、3枚目の用紙について画像不良が発生した場合を例に挙げている。
【0053】
第1の判定タイミング(Type1)の場合、判定制御部61は、ジョブ実施中の3枚目の用紙の検査完了したタイミングで、即ち、出力画像読取部41による読取画像の不良が検知されたタイミングで、即時、状態履歴データ及び用紙情報データを用いて画像不良の発生原因の判定処理を実施する。
【0054】
第2の判定タイミング(Type2)の場合、判定制御部61は、出力画像読取部41による読取画像の不良が検知されたジョブの終了後に、状態履歴データ及び用紙情報データを用いて画像不良の発生原因の判定処理を実施する。
【0055】
第3の判定タイミング(Type3)の場合、判定制御部61は、出力画像読取部41による読取画像の不良が複数回検知されたタイミングで、状態履歴データ及び用紙情報データを用いて画像不良の発生原因の判定処理を実施する。図5のType3の例では、ジョブ実施中において、3枚目の用紙と4枚目の用紙で連続して2回読取画像の不良が検知された場合に、4枚目の用紙の画像不良が検知されたタイミングで、画像不良の発生原因の判定処理を実施する。
【0056】
ここでは、画像不良が複数回検知される閾値を2回としているが、2回に限られるものではない。また、同一のジョブ内において、画像不良が複数回検知された場合に限られるものではなく、複数のジョブをまたいで画像不良が所定回数検知されたタイミングで、例えば、1つ目の用紙最終用紙と2つ目のジョブの先頭用紙で画像不良が検知されたタイミングで、画像不良の発生原因の判定処理を実施するようにしてもよい。さらには、複数のジョブをまたいで“累積”で所定回数画像不良が検知されたタイミングで、画像不良の発生原因の判定処理を実施するようにしてもよい。
【0057】
[画像不良の不良レベルと判定レベルについて]
判定制御部61について、第1の判定タイミング(Type1)の場合を第1判定モード、第2の判定タイミング(Type2)の場合を第2判定モードとして有し、読取画像の不良が検知されたときの不良レベルに応じて、第1判定モードと第2判定モードとを切り替えるようにしてもよい。第1判定モードは、読取画像の不良が検知されたタイミングで、画像不良の発生原因を判定するモードである。第2判定モードは、読取画像の不良が検知されたジョブの終了後に、画像不良の発生原因を判定するモードである。
【0058】
図6は、お客様要求画像に対する印刷後画像の検品結果を示す図である。ここでは、印刷後画像の検品結果として、不良レベル1、不良レベル2、及び、不良レベル3の3つの不良レベルを例示している。
【0059】
上述したように、第1の判定タイミング(Type1)の場合を第1判定モード、第2の判定タイミング(Type2)の場合を第2判定モードとしている。図6に示すように、印刷後画像の検品結果がお客様要求画像をどれだけ実現できていないかに応じて不良レベルを、不良レベル1、不良レベル2、及び、不良レベル3の段階に設定している。
【0060】
例えば、不良レベル3は、黒スジの幅が広く、お客様の要求を確実に応えることができなくなっており、クレームが発生してしまう印刷環境であることを示している。不良レベル2は、黒スジの幅が不良レベル3よりは狭いが、クレームが発生してしまう確率が高い印刷環境であることを示している。不良レベル1は、黒スジの幅が視認できるレベルで、お客様によってはクレームが入るか入らないかの印刷環境になってしまった状態を示している。
【0061】
そのため、不良レベル3及び不良レベル2に対しては、このまま印刷を継続してもヤレ紙を増やしてしまい、無駄な時間を費やしてしまうだけなので、第1の判定タイミング(Type1)である第1判定モードにて判定処理を実施し、即座にお客様の要求に応えることができる印刷環境に戻すことを優先させる。
【0062】
不良レベル1に対しては、即座に判定処理を実施して印刷環境のメンテナンスを実施してしまうと、お客様によっては要求に応えることができる印刷環境であるにも関わらず、無駄なメンテナンスによってジョブ完了時間の遅延を発生させてしまう可能性があるため、第2の判定タイミング(Type2)である第2判定モードにて判定処理を実施し、ジョブ完了を優先させる。
【0063】
[画像形成部材の例]
ここで、状態履歴データの取得対象の画像形成部材について説明する。状態履歴データは、画像形成部31に含まれる画像形成部材の状態の変化を示すデータである。画像形成部31に含まれる画像形成部材としては、画像形成ユニット311のドラムユニット、感光体、露光器、現像器などなど、転写ユニット312の転写器など、定着ユニット313の定着器などを例示することができる。
【0064】
以下では、画像形成部31に含まれる画像形成部材の一例として、画像形成ユニット311の構成の概略について説明する。図7は、画像形成部31に含まれる画像形成部材の一例である画像形成ユニット311の構成の概略を示す概略構成図である。また、画像形成ユニット311における画像を形成するための各ユニットの処理例を図8に示す。
【0065】
画像形成ユニット311は、入力画像データに基づいて、Y(イエロー)成分、M(マゼンタ)成分、C(シアン)成分、K(ブラック)成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット311Y、311M、311C、311K等を備えている。
【0066】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット311Y、311M、311C、311Kは、同様の構成を有している。ここでは、便宜上、Y成分用の画像形成ユニット311Yを例に挙げて、その構成の概略について説明する。
【0067】
Y成分用の画像形成ユニット311Yは、現像器3111、露光器3112、感光体ドラム3113、帯電器3114、ドラムクリーニング部3115、及び、除電部3116等を備える構成となっている。
【0068】
図7には、画像形成ユニット311の他に、転写ユニット312についても図示している。転写ユニット312は、中間転写ベルト3121、2次転写ローラー(上)3122、2次転写ローラー(下)3123、2次転写ベルト3124、及び、2次転写ベルトクリーニングのためのブレード3125等を備える構成となっている。
【0069】
図7及び図8において、Step1は、帯電プロセスであり、感光体ドラム3113上に電荷層を形成する機能を持っている。Step2は、レーザー露光プロセスであり、感光体ドラム3113上に静電潜像を形成する機能を持っている。Step3は、現像プロセスであり、静電潜像を可視像にする機能を持っている。Step4は、キャリア回収プロセスであり、感光体ドラム3113上に付着しているキャリアを除去する機能を持っている。Step5は、中間転写プロセスであり、Y成分、M成分、C成分、K成分の各感光体ドラム3113上の単色(YMCK)可視像を、中間転写ベルト3121上で合成して画像を形成する機能を持っている。Step6は、2次転写プロセスであり、中間転写ベルト3121上の画像を用紙へ転写する機能を持っている。Step7は、分離プロセスであり、トナー転写後の用紙を、中間転写ベルト3121から分離する機能を持っている。
【0070】
Sub step1は、補助除電のプロセスであり、1次転写後の中間転写ベルト3121上のトナー層と、1次転写後の感光体ドラム3113の表面を除電する機能を持っている。Sub step2は、ドラムクリーニングのプロセスであり、1次転写後の感光体ドラム3113の表面に付着しているトナーを除去する機能を持っている。Sub step3は、帯電前露光のプロセスであり、ドラムクリーニング終了後の感光体ドラム3113に対して、表面に残留する電位を除去する機能を持っている。Sub step4は、中間転写ベルトクリーニングのプロセスであり、2次転写終了後の中間転写ベルト3121の表面に付着しているトナーを除去する機能を持っている。Sub step5は、2次転写終了後の2次転写ベルト3124に付着しているトナーを除去する機能を持っている。Sub step6は、トナー回収のプロセスであり、Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット311Y、311M、311C、311Kから排出されたトナー、キャリア、または、現像剤を回収する機能を持っている(図7では、図示を省略)。
【0071】
上述したY成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット311Y、311M、311C、311Kの動作結果は、お客様の要求や処理の繰り返し経過時間などによって変化していくことがある。図9に、印刷中の感光体ドラム3113の表面電位の変化の一例を示し、図10に、印刷・時間経過後の2次転写抵抗の変化の一例を示し、図11に、印刷中の定着温度の変化の一例を示す。
【0072】
印刷中の感光体ドラム3113の表面電位の変化、印刷・時間経過後の2次転写抵抗、及び、印刷中の定着温度の変化の値、即ち、画像形成部31の画像形成プロセスを行って得られるセンシングデータの値は、画像形成部31に含まれる画像形成部材の状態の変化を示す状態履歴データである。この状態履歴データは、例えば、図3に示すシステム構成の場合には、画像不良原因判定装置60の判定制御部61によって取得され、記憶部の一例であるRAM613に記憶される。
【0073】
[メディア検知装置の具体例]
次に、お客様が使用する用紙に関する用紙情報、具体的には、お客様が使用する用紙の物性情報を取得するメディア検知装置20のメディア検知部21の具体例について説明する。図12は、メディア検知装置20のメディア検知部21の具体例を示す概略構成図である。
【0074】
第1のメディアセンサ211及び第2のメディアセンサ212から構成されるメディア検知部21において、第1のメディアセンサ211は、坪量検知部2111、紙厚検知部2112、及び、含水率(含水量)検知部2113を有し、第2のメディアセンサ212は、用紙抵抗値検知部2121、剛度検知部2122、及び、表面性検知部2123を有している。
【0075】
第1のメディアセンサ211の検知結果から、用紙の物性情報を取得することができる。また、第2のメディアセンサ212の検知結果から、用紙の種類(普通紙、上質紙、カラー紙、塗工紙など)を判断することができる。例えば、図3に示すシステム構成の場合には、画像不良原因判定装置60の判定制御部61は、これらの用紙に関する情報を収集し、記憶部の一例であるRAM613に記憶し、画像不良の発生原因の判定処理に使用する。
【0076】
以上のように、印刷動作に伴って生成した読取画像の検品結果データ、画像形成部材の状態履歴データ、及び、用紙情報データは、例えば、図13に示すフォーマットのとおり、記憶部の一例であるRAM613に記憶される。図13に示すフォーマットは、取得するそれぞれのデータが紐づくように、それぞれのデータ生成タイミングの同期がとれている状態で保存されており、所定の印刷処理に対して、検品結果、そのときの画像形成部材の状態履歴、及び、そのときの用紙の状態を連携させて活用できる状態になっている。
【0077】
[画像不良原因判定処理]
続いて、読取画像の検品結果に基づいて印刷した画像に不良が発生したことを検知したとき、その画像不良が発生した原因を判定(特定)する画像不良原因判定処理について具体的に説明する。
【0078】
図14は、画像不良が発生した原因を判定する画像不良原因判定処理の一例の流れを示すフローチャートである。本処理は、例えば、図3に示すシステム構成において、マイクロコンピュータ構成の判定制御部61のCPU611が、ROM612に格納されている画像不良原因判定プログラムに従って、RAM613に記憶されている各種データを参照しつつ制御を行うことによって実行される。
【0079】
CPU611は、先ず、RAM613に記憶されている画像形成部材の状態履歴データを参照し(ステップS11)、次いで、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット311Y、311M、311C、311Kの全ユニットについて判定処理が完了したか否かを判断する(ステップS12)。
【0080】
CPU611は、ステップS12の判断処理において、全ユニットについて判定処理が完了したと判定した場合は(S12のYES)、RAM613に記憶されている用紙情報データを参照し(ステップS13)、次いで、画像不良が用紙起因であるか、画像形成部材起因であるかを判断する(ステップS14)。
【0081】
CPU611は、ステップS14の判断処理において、画像不良が用紙起因であると判定した場合は(S14の用紙起因)、画像不良の発生原因(異常起因)を用紙起因とし(ステップS15)、しかる後、画像不良が発生した原因を判定するための一連の判定処理を終了する。CPU611は、ステップS14の判断処理において、画像不良が画像形成部材起因であると判定した場合は(S14の部材起因)、そのまま一連の判定処理を終了する。
【0082】
CPU611は、ステップS12の判断処理において、全ユニットについて判定処理が完了していないと判定した場合は(S12のNO)、画像形成部材について判定部材を設定し(ステップS16)、次いで、画像形成部材の状態履歴データに基づいて、その設定した判定部材について異常データが有るか否かを判断する(ステップS17)。
【0083】
CPU611は、ステップS17の判断処理において、設定した判定部材について異常データが無いと判定した場合は(S17のNO)、ステップS12に戻り、異常データが有ると判定した場合は(S17のYES)、異常データ有りと判定した部材を画像不良の発生原因(異常起因)と設定し(ステップS18)、しかる後、ステップS13に移行する。
【0084】
上述した一連の処理を実行することにより、即ち、読取画像の検品結果に基づいて印刷した画像に不良が発生したことを検知したときに上述した一連の処理を実行することにより、画像形成部材の状態履歴データ及び用紙情報データに基づいて、画像不良の発生原因を判定(特定)することができる。
【0085】
<変形例>
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0086】
また、上述した実施形態では、お客様が使用する用紙に関する用紙情報(具体的には、お客様が使用する用紙の物性情報)を、メディア検知装置20のメディア検知部21の検知結果から収集するとしたが、ユーザーが印刷システム1の操作表示部70(図2図3参照)から入力した情報を使用するようにしてもよい。具体的には、用紙の種類や坪量等について、例えば、図15に示す操作表示部70において、印刷システム1に対して印刷指示を登録する際に、ユーザーによって設定された値を使用するようにしてもよい。この場合、画像不良原因判定装置60の判定制御部61は、操作表示部70でのユーザーによるジョブの設定に基づいて、用紙に関する情報(用紙情報データ)を取得し、画像不良原因の判定処理に使用することになる。
【0087】
図16は、本発明の変形例に係る印刷システムの全体のシステム構成例を示す概略図である。例えば、RAM613に記憶されている、図13のフォーマットに示す各データについては、印刷システム・画像不良原因判定装置外の領域で使用するため外部、例えば、クラウドシステム200へ転送するシステム構成とすることもできる。このシステム構成をとる場合、例えば、クラウドシステム200内に画像不良原因判定装置60を配置するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0088】
1…印刷システム、10…給紙装置、20…メディア検知装置、21…メディア検知部、30…画像形成装置、31…画像形成部、40…画像検査装置、41…出力画像読取部、50…後処理装置、60…画像不良原因判定装置、61…判定制御部、100…制御部、311…画像形成ユニット、312…転写ユニット、313…定着ユニット、200…クラウドシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16