(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096544
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 1/189 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B62D1/189
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000028
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】三谷 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】西久保 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武岡 達
(72)【発明者】
【氏名】川西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂元 亮宥
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DC03
3D030DD03
3D030DD25
3D030DD65
3D030DD79
(57)【要約】
【課題】操作性を向上させることができる作業車を提供する。
【解決手段】下側シャフト220と、上側シャフト210と、上側シャフト210の移動を規制する規制位置と、規制位置での規制を解除する規制解除位置と、に変位可能な規制部330と、上下方向に揺動操作可能に設けられ、揺動操作に伴い前記規制位置と前記規制解除位置とに前記規制部を変位させる操作部(操作レバー340)と、操作レバー340を、揺動方向上方側に位置した状態で保持する保持機構(保持部材312及び被係止部343)とを具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の操舵を行うステアリング機構側に接続される第一シャフトと、
前記第一シャフトに対して軸線方向に相対的に移動可能であり、ステアリングホイールが設けられた第二シャフトと、
前記第二シャフトの移動を規制する規制位置と、前記規制位置での規制を解除する規制解除位置と、に変位可能な規制部と、
上下方向に揺動操作可能に設けられ、前記揺動操作に伴い前記規制位置と前記規制解除位置とに前記規制部を変位させる操作部と、
前記操作部を、揺動方向上方側に位置した状態で保持する保持機構と、
を具備する作業車。
【請求項2】
前記操作部は、
揺動方向上方側に位置した状態で前記規制部を前記規制解除位置に位置させ、揺動方向下方側に位置した状態で前記規制部を前記規制位置に位置させる、
請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記第一シャフトを回転可能に支持する第一筒部と、
前記第二シャフトと一体的に移動可能に設けられ、前記第一筒部に対して前記軸線方向に相対的に移動可能な第二筒部と、
を具備し、
前記規制部は、
前記第二筒部の移動を規制する、
請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記操作部は、
前記第二筒部に支持され、
前記保持機構は、
前記操作部又は前記第二筒部のいずれか一方に設けられた係止部と、
前記操作部又は前記第二筒部のいずれか他方に設けられ、前記係止部に対して係止される被係止部と、
を具備する、
請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記係止部は、
前記操作部を所定の操作力以上で操作することで、前記被係止部に対する係止、及び係止の解除を可能に形成される、
請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記操作部は、
前記第二筒部に対して、揺動軸を介して揺動可能に支持される被支持部を具備し、
前記被支持部は、
前記作業車の車体の幅方向における前記第二筒部の両側部に揺動可能に連結される一対の揺動連結部と、
一対の前記揺動連結部同士を接続し、前記係止部又は前記被係止部のいずれか一方が設けられる接続部と、
を具備する、
請求項4に記載の作業車。
【請求項7】
前記操作部は、
前記第二シャフトの前記幅方向中心に対して偏移して配置され、操作者により把持される把持部を具備する、
請求項6に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、操縦ハンドルを、ハンドル軸の軸方向に移動させるテレスコ機構を備えるトラクタが記載されている。テレスコ機構には、左右方向に軸支されて上下方向に回動するテレスコレバーが設けられている。
【0004】
テレスコ機構は、テレスコレバーを回動させることで、操縦ハンドルの移動を規制する状態と、規制を解除する状態と、に切り替え可能に形成されている。トラクタのオペレータは、テレスコレバーの回動操作を行うことで、操縦ハンドルの位置の調整を行うことができる。
【0005】
しかしながら、上述のような上下に回動するテレスコレバーを有するテレスコ機構においては、操作者は一方の手でテレスコレバーを持ち上げながら他方の手で操縦ハンドルの位置を調節する必要があり、操作性の観点から改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の一態様は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、操作性を向上させることができる作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
本開示の一態様に係る作業車は、車輪の操舵を行うステアリング機構側に接続される第一シャフトと、前記第一シャフトに対して軸線方向に相対的に移動可能であり、ステアリングホイールが設けられた第二シャフトと、前記第二シャフトの移動を規制する規制位置と、前記規制位置での規制を解除する規制解除位置と、に変位可能な規制部と、上下方向に揺動操作可能に設けられ、前記揺動操作に伴い前記規制位置と前記規制解除位置とに前記規制部を変位させる操作部と、前記操作部を、揺動方向上方側に位置した状態で保持する保持機構と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、操作性を向上させることができる。
【0010】
本開示の一態様に係る前記操作部は、揺動方向上方側に位置した状態で前記規制部を前記規制解除位置に位置させ、揺動方向下方側に位置した状態で前記規制部を前記規制位置に位置させるものである。
本開示の一態様によれば、規制部を規制解除位置に位置させた状態で操作部を保持することができるため、ステアリングホイールの位置を調整する際の操作性を向上させることができる。
【0011】
本開示の一態様に係る作業車は、前記第一シャフトを回転可能に支持する第一筒部と、前記第二シャフトと一体的に移動可能に設けられ、前記第一筒部に対して前記軸線方向に相対的に移動可能な第二筒部とを具備し、前記規制部は、前記第二筒部の移動を規制するものである。
本開示の一態様によれば、第一筒部及び第二筒部を利用して第二筒部の移動を規制することができる。
【0012】
本開示の一態様に係る前記操作部は、前記第二筒部に支持され、前記保持機構は、前記操作部又は前記第二筒部のいずれか一方に設けられた係止部と、前記操作部又は前記第二筒部のいずれか他方に設けられ、前記係止部に対して係止される被係止部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、第二筒部に、保持機構の一部である係止部又は被係止部を設けることで、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0013】
本開示の一態様に係る前記係止部は、前記操作部を所定の操作力以上で操作することで、前記被係止部に対する係止、及び係止の解除を可能に形成されるものである。
本開示の一態様によれば、操作部の保持及び保持の解除を容易に行うことができる。
【0014】
本開示の一態様に係る前記操作部は、前記第二筒部に対して、揺動軸を介して揺動可能に支持される被支持部を具備し、前記被支持部は、前記作業車の車体の幅方向における前記第二筒部の両側部に揺動可能に連結される一対の揺動連結部と、一対の前記揺動連結部同士を接続し、前記係止部又は前記被係止部のいずれか一方が設けられる接続部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、操作部の被支持部を利用して、保持機構の一部である係止部又は被係止部を設けることができる。
【0015】
本開示の一態様に係る前記操作部は、前記第二シャフトの前記幅方向中心に対して偏移して配置され、操作者により把持される把持部を具備するものである。
本開示の一態様によれば、係止部及び被係止部の一方を設けるスペースを確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の一態様に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【
図2】一部を省略したステアリング装置を示した斜視図。
【
図3】テレスコピック装置を規制位置とした状態のステアリング装置を示した側面図。
【
図7】規制位置のテレスコピック装置を示した側面断面図。
【
図8】(a)テレスコピック装置を示した平面断面図。(b)第一筒部を示した正面図。
【
図9】テレスコピック装置を規制解除位置とした状態のステアリング装置を示した側面図。
【
図10】規制解除位置のテレスコピック装置を示した側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0019】
まず、本開示の一態様に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
【0020】
図1に示すトラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、ボンネット4、ミッションケース5、前輪6、後輪7、フェンダ8、昇降装置9、キャビン10及びステアリング装置20等を具備する。
【0021】
機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2の後部にはエンジン3が固定される。エンジン3は、ボンネット4に覆われる。エンジン3の後部には、動力伝達機構(不図示)を収容するミッションケース5が固定される。
【0022】
機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪6に支持される。ミッションケース5の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪7に支持される。左右一対の後輪7は、概ね上方からフェンダ8によって覆われる。
【0023】
ミッションケース5の後部には、昇降装置9が設けられる。昇降装置9には、各種の作業装置(例えば、耕運機等)を装着することができる。昇降装置9は油圧シリンダ等のアクチュエータによって、装着された作業装置を昇降させることができる。
【0024】
エンジン3の動力は、変速装置(不図示)等で変速された後、前記フロントアクスル機構に伝達されると共に、当該フロントアクスル機構を経て前輪6に伝達可能とされる。また、変速装置で変速された動力は、前記リアアクスル機構を経て後輪7に伝達可能とされる。このように、エンジン3の動力によって前輪6及び後輪7が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。またエンジン3の動力によって、昇降装置9に装着された作業装置を駆動させることができる。
【0025】
エンジン3の後方にはキャビン10が設けられる。キャビン10は車体(ミッションケース5等)に載置される。キャビン10の内部には、運転者が搭乗する居住空間が形成される。居住空間には、運転者が着座するための座席11が配置される。また、キャビン10の前部には、ステアリング装置20が配置される。
【0026】
以下では、
図2から
図8までを用いて、ステアリング装置20について説明する。ステアリング装置20は、ステアリングホイール100の操作量に応じて前輪6の角度(切れ角)を変更するものである。本実施形態では、ステアリング装置20として、油圧を用いて操舵の補助を行うパワーステアリングを採用している。ステアリング装置20は、ステアリングホイール100の操作を、前輪6の角度を変更するステアリング機構(例えばフロントアクスル機構に設けられたステアリングシリンダ)に伝える。具体的には、ステアリング装置20は、ステアリングホイール100の操作量に応じて、ステアリングバルブ(不図示)を駆動させ、油圧によりステアリングシリンダを動作させることで、前輪6の角度を変更する。
【0027】
ステアリング装置20は、ステアリングホイール100、ステアリングシャフト200、テレスコピック装置300、操舵力付与装置400、チルト装置500及びカバー部600を具備する。
【0028】
図1及び
図2に示すステアリングホイール100は、ステアリング装置20を操作するためのものである。ステアリングホイール100は、ステアリング装置20の上端部に位置する。ステアリングホイール100は、操作者の操作に応じて、後述するステアリングシャフト200の軸回りに回転する。
【0029】
図7に示すステアリングシャフト200は、ステアリングホイール100を用いた操作力を、ステアリング機構側に伝達するものである。ステアリングシャフト200は、略上下方向(斜め前下がりに傾斜する方向)に軸線を向けて配置される。ステアリングシャフト200は、軸回り(周方向)に回転可能に設けられる。ステアリングシャフト200は、上側シャフト210、下側シャフト220及び接続部230を具備する。
【0030】
上側シャフト210は、ステアリングシャフト200の上部を構成するものである。上側シャフト210は、略上下方向に軸線を向けた略円柱形状に形成される。上側シャフト210の上端部には、ステアリングホイール100が固定される。
【0031】
下側シャフト220は、ステアリングシャフト200の下部を構成するものである。下側シャフト220は、略上下方向に軸線を向けた略円柱形状に形成される。また、下側シャフト220の下端部は、ステアリング機構側の部材に接続される。
【0032】
接続部230は、上側シャフト210及び下側シャフト220の軸線方向の相対的な移動を許容するように、上側シャフト210の下端側と、下側シャフト220の上端側と、を接続するものである。接続部230は、上側シャフト210の下端側及び下側シャフト220の上端側を挿通可能な、略円筒形状に形成されている。接続部230の内径は、上側シャフト210及び下側シャフト220の外径に応じた寸法に形成されている。
【0033】
接続部230は、上側シャフト210及び下側シャフト220をスプライン構造により接続する。これにより、上側シャフト210及び下側シャフト220の軸線方向の相対的な移動が許容されると共に、回転方向の相対的な移動は規制される。下側シャフト220に対して上側シャフト210を軸線方向に移動(摺動)させることで、ステアリングシャフト200を伸縮させることができる。
【0034】
図3、
図4及び
図7に示すテレスコピック装置300は、ステアリングシャフト200の長さを変更することで、ステアリングホイール100の位置調整を行うものである。テレスコピック装置300は、上側シャフト210及び下側シャフト220の接続部分(接続部230が位置する部分)に設けられる。テレスコピック装置300は、上側筒部310、下側筒部320、規制部330及び操作レバー340を具備する。
【0035】
図3、
図4、
図7及び
図8に示す上側筒部310は、上側シャフト210を支持すると共に、上側シャフト210を径方向外側から覆う略筒形状の部材である。より詳細には、上側筒部310は、後述する操舵力付与装置400を介して、上側シャフト210を回転可能、かつ軸線方向に移動不能に支持する(
図7を参照)。
図7に示すように、上側筒部310の内側には、円筒形状のブッシュ310aが固定されている。本実施形態では、軸線方向に分割された2つのブッシュ310aを設けている。本実施形態では、各ブッシュ310aの対向する端部同士を当接させている。以下では、ブッシュ310aの内周面を、「上側筒部310の内周面」として説明する。上側筒部310は、揺動軸311、保持部材312及び調整機構313を具備する。
【0036】
図3及び
図4に示す揺動軸311は、後述する操作レバー340の揺動中心となる軸である。
図4に示すように、揺動軸311は、左右方向に軸線を向けた略円柱形状に形成される。揺動軸311は、上側筒部310の下部における外周面から突出するように設けられる。また、
図8(a)に示すように、揺動軸311は、上側筒部310の内周面側にも突出するように設けられる。揺動軸311は、上側筒部310の左右両側に位置するように一対設けられる。
【0037】
図3及び
図4に示す保持部材312は、後述する操作レバー340の位置を保持するものである。保持部材312は、上側筒部310の後面から、斜め後方(後下方)に突出するように形成される。保持部材312は、開口部を斜め前方(前上方)へ向けた背面視略U字状(左右一対の側面、及び底面を有する形状)に形成される。保持部材312は、略板形状の部材を折り曲げて形成される。保持部材312は、係止部312aを具備する。
【0038】
係止部312aは、後述する操作レバー340の被係止部343を係止する部分である。係止部312aは、保持部材312の突出方向先端面(後下方に向く面)に設けられる。係止部312aは、丸棒状の部材を、着脱自在に係止可能な形状に形成される。本実施形態では、係止部312aを、側面視において後下方に向けて開口する略C字形状に形成している。係止部312aは、合成樹脂等の可撓性を有する材料により形成される。また、本実施形態では、係止部312aを左右方向に間隔を開けて一対設けている。
【0039】
図7及び
図8に示す調整機構313は、後述する規制部330が、上側筒部310の下端部に当接した際の当たりの強さ(規制部330による規制力)を調整可能なものである。調整機構313は、テーパー部313a、スリット313b、調整部材313c及び締結部313fを具備する。
【0040】
図7に示すテーパー部313aは、上側筒部310の下端部の内周面に形成されたテーパー形状の部分である。テーパー部313aは、下端部側に向かうに従い徐々に内径が拡径する(厚みが薄くなる)ように形成される。
【0041】
図7及び
図8に示すスリット313bは、上側筒部310の下端側における前面側の部分を切り欠いた部分である。スリット313bは、上側筒部310の下端部から、軸線方向途中部に至るように形成される。
【0042】
調整部材313cは、規制部330による規制力を調整するための部材である。調整部材313cは、板形状の部材を略L字形状に折り曲げて形成される。調整部材313cは、スリット313bの左右両側に位置するように、一対設けられる。一対の調整部材313cは、左右対称な形状に形成される。調整部材313cは、固定部313d、調整部313eを具備する。
【0043】
固定部313dは、上側筒部310に対して固定される部分である。固定部313dは、上側筒部310の外周面に沿う円弧状に屈曲した形状に形成される。固定部313dは、上側筒部310の外周面の周方向に所定の幅(例えば、調整部材313cの板厚以上の幅)を有するように形成される。固定部313dは、上側筒部310の外周面の周方向の幅の範囲で、溶接等により上側筒部310に対して固定される。これによって固定部313dは、固定部313dの周方向幅の全域に亘って上側筒部310に対して固定される。なお、固定部313dと上側筒部310の固定方法は溶接に限らず、例えば接着剤等を用いることも可能である。
【0044】
図8(a)に示すように本実施形態では、軸線方向に見て、上側筒部310の軸心Oを中心とした中心角の角度θが、180度未満の円弧の範囲内に位置するように、一対の固定部313dを上側筒部310の外周面に配置している。また、本実施形態では、一対の固定部313dを、上側筒部310の左右の幅に納まるように配置している。これによれば、固定部313dと、後述する操作レバー340と、の干渉を避けることができる。また、本実施形態では、角度θを、60度以上、120度以下の範囲に設定している。より詳細には、角度θを90度程度に設定している。
【0045】
調整部313eは、固定部313dのスリット313b側の端部から、前方に向けて突出する部分である。調整部313eには、左右方向に貫通する孔部が形成されている。
【0046】
締結部313fは、一対の調整部材313cを締結するものである。締結部313fは、調整部313eの孔部に挿通されるボルトと、当該ボルトに係合するナットにより形成される。
【0047】
図8に示すように、一対の調整部材313cは、スリット313bを挟んで、調整部313e同士が対向するように配置される。調整機構313は、締結部313fを用いた操作を行うことで、一対の調整部材313c(固定部313d)の相対距離を調節することができる。
【0048】
具体的には、
図8(a)に示すように、締結部313fによる締結を行うと、調整部材313c同士が近接する方向に力がかかる。この際に、固定部313dと接する上側筒部310の一部(スリット313bの両側部分)が、各調整部材313cと共に周方向中央側に引き寄せられる。これにより、スリット313bの下端部の幅寸法を狭めるように、上側筒部310の下端部の一部を変形させることができる。これにより、後述する規制部330(楔部331)による規制力を強くすることができる。また、締結部313fによる締結を緩めると、スリット313bの下端部の幅寸法を締結前の状態に戻すことができる。
【0049】
本実施形態では、周方向に延出する固定部313dを、周方向の所定の幅の範囲で上側筒部310に対して固定しているので、締結部313fによる締結を行う場合に、例えば調整部313eのみを溶接したものと比べて、上側筒部310の多くの領域を引き寄せることができる。これにより、より効果的に規制部330による規制力を強くすることができる。
【0050】
図4及び
図7に示す下側筒部320は、下側シャフト220を支持すると共に、下側シャフト220を径方向外側から覆う略筒形状の部材である。より詳細には、下側筒部320は、下側シャフト220を回転可能、かつ軸線方向に移動不能に支持する(
図7を参照)。下側筒部320の内径は、接続部230の外径よりも大きく形成される。下側筒部320の外径は、上側筒部310の内径よりも僅かに小さく形成される。
【0051】
図7に示すように、下側筒部320の下端部は、後述するチルト装置500に固定される。下側筒部320が上側筒部310に挿入された状態では、下側筒部320に対する上側筒部310の軸線方向の移動(摺動)を行うことができる。下側筒部320は、長孔部321及び面取部322を具備する。
【0052】
長孔部321は、下側筒部320の左右両側において軸線方向に延びるように形成された孔である。長孔部321は、上側筒部310の揺動軸311に対応する位置に形成される。長孔部321に、揺動軸311が挿通されることで(
図8(a)を参照)、下側筒部320に対する上側筒部310の軸線方向の移動をガイドすることができる。
【0053】
図7に示す面取部322は、下側筒部320の上端部において面取りが形成された部分である。面取部322は、下側筒部320の上端部における外周面に形成された面取り(C面取り)である。本実施形態では、上記面取部322と下側筒部320の外周面との角部に、曲面による面取りであるR面取部322aを形成している。上記R面取部322aを形成したことで、面取部322と下側筒部320の外周面との角部が、上側筒部310の内周面に対して引っ掛かることを抑制し、上側筒部310に対する下側筒部320の摺動抵抗を低減することができる。また、本実施形態では、上側筒部310の各ブッシュ310aの端部同士を隙間なく当接させているので、ブッシュ310aの角部に下側筒部320がひっかかるのを防止し、上記摺動抵抗をより効果的に低減することができる。
【0054】
図3及び
図7に示す規制部330は、下側筒部320に対する上側筒部310の軸線方向の移動を規制可能なものである。規制部330は、下側筒部320の外径と概ね同寸法の内径を有する略筒形状に形成される。規制部330は、例えば合成樹脂等の材料により形成される。
図7に示すように、規制部330は、下側筒部320が挿入されると共に、上側筒部310の下方に位置するように配置される。規制部330は、楔部331及び軸部332を具備する。
【0055】
図7及び
図10に示す楔部331は、規制部330の軸線方向上側(上側筒部310側)の部分である。楔部331は、軸線方向上側に向かうに従い、徐々に外径が縮径する(厚みが薄くなる)テーパー形状に形成される。楔部331の先端側の部分の外径は、上側筒部310のテーパー部313aの下端側の内径よりも小さく形成される。また、楔部331の基端側(下端側)の部分の外径は、テーパー部313aの上端側の内径よりも大きく形成される。
【0056】
図3、
図4及び
図9に示す軸部332は、後述する操作レバー340の操作力が伝達される部分である。
図4に示すように、軸部332は、左右方向に軸線を向けた略円柱形状に形成される。軸部332は、規制部330の外周面から突出するように設けられる。軸部332は、規制部330の左右両側に位置するように一対設けられる。
【0057】
図7に示すように、楔部331が、上側筒部310(テーパー部313a)の内周面と、下側筒部320の外周面と、の間の隙間に差し込まれることで、下側筒部320に対する上側筒部310の軸線方向の移動が規制される。以下では
図7に示す状態を「規制位置」と称する。また、
図10に示すように、楔部331を上記隙間から抜くことで、上側筒部310の軸線方向の移動の規制が解除される。以下では
図10に示す状態を「規制解除位置」と称する。
【0058】
図3から
図6までに示す操作レバー340は、規制位置と規制解除位置とに規制部330を変位させるための操作を行うものである。操作レバー340は、上側筒部310の揺動軸311を中心として、上下方向に揺動可能に設けられる。本実施形態では、操作レバー340を下側に位置させた状態で規制部330が規制位置となり、操作レバー340を上側に位置させた状態で規制部330が規制解除位置となるように、操作レバー340を形成している。
図3及び
図4では、下側に位置させた状態の操作レバー340を示している。操作レバー340の主たる構造体は、板形状の部材を組み合わせて形成される。操作レバー340は、被支持部341、把持部342及び被係止部343を具備する。
【0059】
被支持部341は、上側筒部310に対して揺動可能に支持される部分である。被支持部341は、操作レバー340の基端側(上側筒部310側)を構成する。被支持部341は、揺動連結部341a及び接続部341dを具備する。
【0060】
揺動連結部341aは、上側筒部310に対して揺動可能に連結される部分である。揺動連結部341aは、厚さ方向が左右方向に向くように配置される。揺動連結部341aは、上側筒部310の左右両側に位置するように一対設けられる。揺動連結部341aは、軸孔部341b及びガイド孔341cを具備する。
【0061】
図4及び
図8(a)に示す軸孔部341bは、揺動軸311が挿通される孔である。軸孔部341bは、揺動連結部341aの上側部分に形成される。
【0062】
ガイド孔341cは、操作レバー340の揺動操作に伴い、規制部330を移動させる部分である。
図3に示すように、ガイド孔341cは、略前後方向に延びる長孔形状に形成される。ガイド孔341cは、軸孔部341bよりも下方に設けられる。ガイド孔341cは、後端部から前端部に向かうに従い、揺動軸311(軸孔部341b)に対して離間する(揺動軸311までの距離が大きくなる)ように形成されている。ガイド孔341cには、規制部330の軸部332が挿入される。操作レバー340が揺動すると、ガイド孔341c内に配置された軸部332が当該ガイド孔341cの縁と当接して上方又は下方に押されることによって、規制部330が上方又は下方に移動する。
【0063】
接続部341dは、一対の揺動連結部341aの後端部同士を接続するものである。接続部341dは、厚さ方向が概ね前後方向に向くように配置される。
【0064】
図5及び
図6に示す把持部342は、操作者により把持される部分である。把持部342は、被支持部341から後方へ延出するように形成される。本実施形態では、把持部342を、被支持部341の左端側に位置するように配置している。把持部342の後端部には、グリップ342aが設けられる。把持部342は、延出方向の途中部が、下方に凹むように屈曲した形状に形成されている。把持部342を上記形状に形成したことで、把持部342を上側に位置させたときに、操作レバー340の上方に設けられた部材(例えば、後述する操舵力付与装置400や、カバー部600等)との干渉を避けることができる。
【0065】
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、1枚の平板と、1枚の屈曲された板(屈曲板)と、を組み合わせて被支持部341及び把持部342を形成している。具体的には、被支持部341及び把持部342は、左側の揺動連結部341a及び把持部342を形成する平板と、右側の揺動連結部341a、接続部341d及び把持部342を形成する屈曲板と、により形成されている。
【0066】
被係止部343は、上側筒部310の保持部材312に設けられた係止部312aに対して係止される部分である。被係止部343は、丸棒状の部材を、開口部を下方に向けた背面視略U字状に屈曲して形成される。より詳細には、被係止部343は、左右方向に延びる中央部343aと、中央部の両端部から下方に延びる一対の側部343bと、を有する形状に形成される。被係止部343は、接続部341dの後面に固定される。被係止部343の中央部343aが、係止部312aの開口に嵌め入れられることで、被係止部343は保持部材312に係止される。
【0067】
図3及び
図7に示す操舵力付与装置400は、トラクタ1の操舵を自動で実行するものである。操舵力付与装置400は、トラクタ1を直進させる場合や、旋回させる場合など、トラクタ1の種々の操舵を自動的に実行する際に利用することができる。操舵力付与装置400は、ステアリングホイール100の下方であって、テレスコピック装置300の上部側(上側筒部310)に固定される。操舵力付与装置400は、ステアリングシャフト200の上側シャフト210を回転させることで操舵を行う。操舵力付与装置400は、本体部410及び取付部420を具備する。
【0068】
本体部410は、操舵力付与装置400の主たる部分である。本体部410の中央部(ステアリングシャフト200の軸線方向に見た中央部)には、上側シャフト210が貫通する孔部が形成されている。本体部410は、モータ411及び減速部412を具備する。
【0069】
モータ411は、操舵力付与装置400の駆動源を構成する部分である。減速部412は、モータ411の駆動力を減速すると共に、上側シャフト210に伝達するものである。減速部412は、中空状の筐体と、筐体の内部に配置されたギヤにより形成される。モータ411の駆動力で減速部412のギヤを駆動させ、上記ギヤの駆動力で上側シャフト210を回転させることで、トラクタ1の操舵を実行することができる。
【0070】
本体部410は、トラクタ1の走行を制御可能な制御装置等にハーネス410aを介して接続されている(
図3を参照)。ハーネス410aは、操舵力付与装置400の前方側に延びるように配策される。本体部410は、制御装置からハーネス410aを介して伝達される信号に基づいて、モータ411を駆動する。
【0071】
取付部420は、上側筒部310に対して本体部410を取り付けるものである。取付部420は、ステアリングシャフト200の軸線方向に厚さを向けた略板形状に形成される。取付部420には、上側筒部310の上端部が貫通する孔部が形成されている。取付部420は、上記孔部を介して上側筒部310の上端部と固定されている。取付部420の上面には、本体部410が取り付けられる。取付部420は、配線保持部421を具備する。
【0072】
図3に示す配線保持部421は、本体部410のハーネス410aを保持する部分である。配線保持部421は、取付部420の下面に設けられる。配線保持部421は、例えば板形状の部材を略L字形状に折り曲げて形成される。配線保持部421は、例えば、ハーネス410aをテレスコピック装置300の右側に誘導するように設けられる。これによれば、操舵力付与装置400の下方のうち、左右方向中央部分の空間を空けることで、テレスコピック装置300とハーネス410aとの干渉を避けることができる。これにより、例えば操作レバー340と保持部材312とによってハーネス410aを挟み込むようなことを回避することができる。
【0073】
上述したように、操舵力付与装置400は上側筒部310に固定されているため、テレスコピック装置300を用いたステアリングホイール100の位置調整を行う場合には、操舵力付与装置400は上側筒部310と一体的に軸線方向に移動する。
【0074】
上述のように、本実施形態に係るステアリング装置20では、テレスコピック装置300の上方に操舵力付与装置400を配置している。これによって、キャビン10の内部(居住空間)の足元の空間を確保することができる。また、本実施形態では、操作レバー340の把持部342を、操作レバー340の左端部に位置させたことで、ステアリング装置20の左右方向中央に位置する操舵力付与装置400が、操作レバー340の操作の邪魔になることを抑制することができる。
【0075】
図3に示すチルト装置500は、ステアリング装置20の座席11に対する角度を調節可能なものである。チルト装置500は、テレスコピック装置300を支持する。チルト装置500は、第一支持フレーム510、第二支持フレーム520及び角度調整機構530を具備する。
【0076】
第一支持フレーム510は、テレスコピック装置300の下側筒部320の下端部が固定される部分である。第一支持フレーム510には、下側筒部320の下端部が貫通する孔部が形成されている。第一支持フレーム510は、上記孔部を介して下側筒部320の下端部と固定されている。
【0077】
第二支持フレーム520は、第一支持フレーム510を上下に揺動可能に支持するものである。第二支持フレーム520は、軸線を左右方向に向けた揺動軸520aを介して、第一支持フレーム510と接続されている。
【0078】
角度調整機構530は、第二支持フレーム520に対する第一支持フレーム510の角度(揺動軸520a回りの角度)を調整するものである。角度調整機構530は、操作者の操作に応じて、第二支持フレーム520に対する第一支持フレーム510の揺動を規制する状態と、規制を解除する状態と、に切り替えられる。
【0079】
図2及び
図3に示すカバー部600は、上述したステアリング装置20の各部のうち、ステアリングホイール100等を除く部分を覆うものである。カバー部600には、テレスコピック装置300を用いたステアリングホイール100の位置調整に伴って伸縮可能な蛇腹が形成されている。また、カバー部600には、テレスコピック装置300の操作レバー340(把持部342)との干渉を避けるためのスリット610が形成されている。スリット610は、上下に延びるように形成されている。
【0080】
以下では、上述したテレスコピック装置300によるステアリングホイール100の位置調整の様子について説明する。
【0081】
まず、規制部330を規制位置から規制解除位置に変更する際の操作について説明する。
図3及び
図7では、規制部330が規制位置に位置している状態を示している。この状態では、操作レバー340は下側に位置しており、規制部330の軸部332は、操作レバー340のガイド孔341cの後端部に位置している。
【0082】
この状態で操作レバー340を引き上げた場合、操作レバー340の上側への揺動に伴い、規制部330の軸部332は、ガイド孔341cに沿って相対的に移動する。具体的には、軸部332は、ガイド孔341cの前端部側に相対的に移動する。これにより、規制部330を下方に向けて押圧する力が掛かり、規制部330は下側筒部320に沿って下方に移動し、
図9及び
図10に示す規制解除位置に切り替えられる。この際には、被係止部343の中央部343aが、保持部材312の係止部312aに係合する。これにより、操作レバー340は上側に位置した状態で保持される。
【0083】
この状態では、下側筒部320に対する上側筒部310の軸線方向の移動が許容されるため、ステアリングシャフト200の伸縮が可能となる。これにより、操作者は、ステアリングホイール100の軸線方向の位置を所望の位置へ変更することができる(
図9を参照)。
【0084】
次に、規制部330を規制解除位置から規制位置に変更する際の操作について説明する。上側に位置する操作レバー340を、一定以上の力で押し下げた場合、保持部材312に対する被係止部343の係合が解除され、操作レバー340が下側へ揺動する。操作レバー340の下側への揺動に伴い、規制部330の軸部332は、ガイド孔341cの後端部側に移動する(
図9を参照)。これにより、規制部330を上方に向けて押圧する力が掛かり、規制部330は下側筒部320に沿って上方に移動して規制位置に切り替えられる。この際には、上側筒部310の内周面と、下側筒部320の外周面と、の間の隙間に楔部331が差し込まれ、下側筒部320に対する上側筒部310の軸線方向の移動が規制される。上述のような操作を行うことで、ステアリングシャフト200の長さを変更し、座席11に対するステアリングホイール100の軸線方向の位置の調整を行うことができる。
【0085】
上述の如きステアリング装置20は、テレスコピック装置300に保持部材312及び被係止部343を設けたことで、操作レバー340を上側へ位置させた状態(規制解除位置の状態)を保持することができ、振動や自重により操作レバー340が下方に揺動することを抑制することができる。これにより、規制解除位置の規制部330が意図せず規制位置側に変位し、上側筒部310が摺動し難くなる(半ロック状態となる)ことで、ステアリングホイール100の位置調整の作業が困難になるようなことを回避することができる。
【0086】
また、本実施形態では、保持部材312に対する被係止部343の係合及び係合の解除をワンタッチ(操作レバー340を片手で揺動する動作のみ)で行うことができる。このように、本実施形態に係るテレスコピック装置300は、操作レバー340の保持及び保持の解除を容易に行うことができる。
【0087】
また、本実施形態では、操作レバー340を上方に位置させた場合に規制解除位置となり、操作レバー340を下方に位置させた場合に規制位置となるように、テレスコピック装置300を形成している。これにより、仮に振動等により操作レバー340が下方に揺動した場合でも、規制部330が規制位置側に移動するため、意図せずステアリングホイール100の位置が変化するようなことを回避することができる。
【0088】
また、上記操舵力付与装置400を設けたことで、ステアリング装置20のうちの可動側(ステアリングホイール100や上側筒部310側)の重量が増大する。このため、テレスコピック装置300には、規制位置において上記可動側を保持する力(保持力)が求められる。本実施形態では、
図8(a)に示すように、テレスコピック装置300の調整部材313cにより、上側筒部310の一部を変形させることで、当該部分において、上側筒部310(テーパー部313a)の内周面と、下側筒部320の外周面と、の間の隙間を小さくすることができる。これにより、上側筒部310の上記変形させた部分における、上記隙間に差し込まれる楔部331の当たり(楔部331による規制力)を強くすることができ、テレスコピック装置300の保持力を向上させることができる。
【0089】
また、
図3及び
図7に示すように、ステアリング装置20は後方に向けて傾いているため、ステアリング装置20には、操舵力付与装置400等の重量により後方に倒れる方向の力が掛かる。このため、上側筒部310が下側筒部320に対して若干傾斜することで、下側筒部320の上端側の角部が上側筒部310に押し当てられ、摺動の際の抵抗になる。そこで、本実施形態では、上記下側筒部320の上端側の角部にR面取部322aを形成し、摺動抵抗の低減を図っている。
【0090】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、
車輪(前輪6)の操舵を行うステアリング機構側に接続される第一シャフト(下側シャフト220)と、
前記下側シャフト220の上方に配置されると共に、ステアリングホイール100が設けられ、前記下側シャフト220に対して軸線方向に相対的に移動可能な第二シャフト(上側シャフト210)と、
前記上側シャフト210の移動を規制する規制位置と、前記規制位置での規制を解除する規制解除位置と、に変位可能な規制部330と、
上下方向に揺動操作可能に設けられ、前記揺動操作に伴い前記規制位置と前記規制解除位置とに前記規制部を変位させる操作部(操作レバー340)と、
前記操作レバー340を、揺動方向上方側に位置した状態で保持する保持機構(保持部材312及び被係止部343)と、
を具備するものである。
【0091】
このように構成することにより、操作性を向上させることができる。すなわち、操作レバー340を揺動方向上方側に位置した状態で保持することができるため、操作者の手で操作レバー340を保持する必要がなくなり、操作性を向上させることができる。
【0092】
また、前記操作レバー340は、
揺動方向上方側に位置した状態で前記規制部330を前記規制解除位置に位置させ、揺動方向下方側に位置した状態で前記規制部330を前記規制位置に位置させるものである。
【0093】
このように構成することにより、規制部330を規制解除位置に位置させた状態で操作レバー340を保持することができるため、ステアリングホイール100の位置を調整する際の操作性を向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態に係るトラクタ1は、
前記下側シャフト220を回転可能に支持する第一筒部(下側筒部320)と、
前記上側シャフト210と一体的に移動可能に設けられ、前記下側筒部320に対して前記軸線方向に相対的に移動可能な第二筒部(上側筒部310)と、
を具備し、
前記規制部330は、
前記上側筒部310の移動を規制するものである。
【0095】
このように構成することにより、上側筒部310及び下側筒部320を利用して、規制部330による規制を行うことができる。
【0096】
また、前記操作レバー340は、
前記上側筒部310に支持され、
前記保持機構(保持部材312及び被係止部343)は、
前記操作レバー340又は前記上側筒部310のいずれか一方に設けられた係止部(保持部材312)と、
前記操作レバー340又は前記上側筒部310のいずれか他方に設けられ、前記保持部材312に対して係止される被係止部343と、
を具備するものである。
【0097】
このように構成することにより、ステアリングホイール100の位置を調節するための上側筒部310に、保持機構の一部(保持部材312)を設けることで、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0098】
また、前記保持部材312は、
前記操作レバー340を所定の操作力以上で操作することで、前記被係止部343に対する係止、及び係止の解除を可能に形成されるものである、
【0099】
このように構成することにより、操作レバー340の保持及び保持の解除を容易に行うことができる。すなわち、保持部材312に対する被係止部343の係止、及び係止の解除をワンタッチ(操作レバー340を片手で揺動する動作のみ)で行うことができる。
【0100】
また、前記操作レバー340は、
前記上側筒部310に対して、揺動軸を介して揺動可能に支持される被支持部341を具備し、
前記被支持部341は、
前記トラクタ1の車体の幅方向における前記上側筒部310の両側部に揺動可能に連結される一対の揺動連結部341aと、
一対の前記揺動連結部341a同士を接続し、前記保持部材312又は前記被係止部343のいずれか一方が設けられる接続部341dと、
を具備するものである。
【0101】
このように構成することにより、操作レバー340の被支持部341を利用して、保持機構の一部(被係止部343)を設けることができる。
【0102】
また、前記操作レバー340は、
前記上側筒部310の前記幅方向中心に対して偏移して配置され、操作者により把持される把持部342を具備するものである。
【0103】
このように構成することにより、把持部342を上側筒部310の幅方向中心に対して偏移させることで、保持機構の一部(被係止部343)を設けるスペースを確保することができる。また、ステアリング装置20の幅方向中央側に位置する部材(例えば操舵力付与装置400)と、把持部342と、の干渉を避けることができる。
【0104】
また、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、
車輪(前輪6)の操舵を行うステアリング機構側に接続される第一シャフト(下側シャフト220)と、
前記下側シャフト220の上方に配置されると共に、ステアリングホイール100が設けられ、前記下側シャフト220に対して軸線方向に相対的に移動可能な第二シャフト(上側シャフト210)と、
前記下側シャフト220を回転可能に支持する下側筒部320と、
前記上側シャフト210を回転可能に支持すると共に、前記下側筒部320が挿入され、前記下側筒部320に対して摺動可能に設けられる上側筒部310と、
前記下側筒部320に対する前記上側筒部310の摺動を規制する規制位置と、前記規制位置での規制を解除する規制解除位置と、に変位可能な規制機構(規制部330及び操作レバー340)と、
前記上側筒部310に設けられ、前記上側シャフト210に操作力を付与することで、前記ステアリング機構を用いた操舵を自動で行う操舵力付与装置400(操舵力付与機構)と、
を具備するものである。
【0105】
このように構成することにより、操作性を向上させることができる。すなわち、操舵力付与装置400を上側筒部310に設けたことで、キャビン10の内部の足元側の空間を確保することができ、操舵力付与装置400が足元側の操作の邪魔になるようなことを回避することができる。また、操舵力付与装置400の下側に規制機構を配置し易くすることができる。これにより、ステアリングホイール100の位置を調整する機構(テレスコピック装置300)と、操舵力付与装置400と、の組み合わせを好適な形で実現することができる。
【0106】
また、例えば、操舵力付与装置400による自動運転中(自動操舵中)に、テレスコピック装置300を用いてステアリングホイール100を上方へと移動させておくことにより、運転者が自動運転中に後方を向く姿勢をとり易くなる。これによって、自動運転中に後方の作業機や作業状態などが確認し易くなる。また、例えば、操舵力付与装置400による自動運転中(自動操舵中)に、テレスコピック装置300を用いてステアリングホイール100を下方へと移動させておくことにより、ステアリングホイール100の前方に配置されたモニタ等が視認し易くなる。これによって、自動運転中に各種の情報(例えば、自動運転に関する情報や、トラクタ1の走行状態、作業状態等に関する情報等)が確認し易くなる。
【0107】
また、前記規制機構(規制部330及び操作レバー340)は、
前記規制位置において、前記下側筒部320の上端部における外周面と、前記上側筒部310の下端部における内周面と、の間の隙間に差し込まれることで前記上側筒部310の摺動を規制する楔部331と、
操作に応じて、前記楔部331を前記規制位置と前記規制解除位置とに変位させる操作部(操作レバー340)と、
を具備し、
前記楔部331による規制力を調整可能な調整機構313を更に具備し、
前記調整機構313は、
前記上側筒部310の下端部から上方に延びるように形成されたスリット313bと、
前記上側筒部310の外周面に沿って周方向に延出する形状に形成され、前記スリット313bの前記周方向両側に位置するように前記上側筒部310の外周面に固定された一対の固定部313dと、
一対の前記固定部の相対距離を調整可能な調整部313eと、
を具備するものである。
【0108】
このように構成することにより、規制機構(テレスコピック装置300)の保持力を向上させることができる。すなわち、上側筒部310に操舵力付与装置400を設けたことで、ステアリングホイール100の位置を調整する際の可動側の部分の重量が増大するため、テレスコピック装置300にはより強い保持力が求められる。調整機構313を設けたことで、上側筒部310に対する楔部331の当たり(規制力)が強くなるように、上側筒部310の一部を変形させることができる。これにより、テレスコピック装置300の保持力を向上させることができる。
【0109】
また、一対の前記固定部313dは、
前記上側筒部310の外周面のうち、前記軸線方向に見て、前記上側筒部310の軸心Oを中心とする中心角θが180度未満の円弧の範囲内に位置するように配置されるものである。
【0110】
このように構成することにより、上側筒部310の一部を好適に変形させることができる。
【0111】
また、一対の前記固定部313dは、
前記上側筒部310の左右方向の幅内に納まるように配置されるものである。
【0112】
このように構成することにより、一対の固定部313dが、上側筒部310の左右方向外側に配置される他の部材(操作レバー340等)と干渉することを抑制することができる。
【0113】
また、前記操作部(操作レバー340)は、
上下方向に揺動操作可能に設けられ、
前記操作レバー340を、揺動方向上方側に位置した状態で保持する保持機構(保持部材312及び被係止部343)を具備するものである。
【0114】
このように構成することにより、操作性をより向上させることができる。すなわち、操作レバー340を揺動方向上方側に位置した状態で保持することができるため、操作者の手で操作レバー340を保持する必要がなくなり、操作性を向上させることができる。
【0115】
また、前記下側筒部320の上端部における外周面には、R面取部322aが形成されているものである。
【0116】
このように構成することにより、操作性をより向上させることができる。すなわち、上側筒部310に操舵力付与装置400を設けたことで、下側筒部320に対する上側筒部310の面圧が増大するため、下側筒部320の端部に角が形成されていると当該角が上側筒部310の内周面に引っ掛かり、摺動抵抗が増大するおそれがある。下側筒部320の上端部における外周面にR面取部322aを設けたことで、摺動抵抗を低減することができる。
【0117】
また、本実施形態に係るトラクタ1は、
前記操舵力付与装置400の底面に設けられ、前記操舵力付与装置400に接続された線状部材(ハーネス410a)と、前記規制機構(規制部330及び操作レバー340)と、の干渉を防ぐように前記ハーネス410aを保持する配線保持部421を具備するものである。
【0118】
このように構成することにより、規制機構(規制部330及び操作レバー340)によるハーネス410aの挟み込み等を抑制することができる。
【0119】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る保持部材312及び被係止部343は、保持機構の一形態である。
また、本実施形態に係る上側筒部310は、第二筒部の一形態である。
また、本実施形態に係る下側筒部320は、第一筒部の一形態である。
また、本実施形態に係る上側シャフト210は、第二シャフトの一形態である。
また、本実施形態に係る下側シャフト220は、第一シャフトの一形態である。
また、本実施形態に係る規制部330及び操作レバー340は、規制機構の一形態である。
また、本実施形態に係る操作レバー340は、操作部の一形態である。
また、本実施形態に係るハーネス410aは、線状部材の一形態である。
また、本実施形態に係る操舵力付与装置400は、操舵力付与機構の一形態である。
【0120】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0121】
例えば、上記実施形態において説明した各部材(テレスコピック装置300等)の形状等は一例であり、上述した形状等に限定されない。上記各部材の形状等は、任意の形状に変更可能である。
【0122】
また、上記実施形態では、操作レバー340を上方に位置させた場合に規制解除位置となり、操作レバー340を下方に位置させた場合に規制位置となるように、テレスコピック装置300を形成した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、操作レバー340を下方に位置させた場合に規制解除位置となり、操作レバー340を上方に位置させた場合に規制位置となるように、テレスコピック装置300を形成してもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、被係止部343及び保持部材312により形成される保持機構を用いて、保持部材312に対して操作レバー340を保持させる例を示したが、このような態様に限定されない。保持機構としては、例えばバネ付きのクランプ(フック)や、磁石を用いたもの等、保持部材312に対して操作レバー340を保持可能な種々の態様を採用可能である。
【0124】
また、上記実施形態では、上側筒部310に保持部材312を設け、操作レバー340に被係止部343を設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、上側筒部310に被係止部343を設け、操作レバー340に保持部材312を設けてもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、C面取り状の面取部322と下側筒部320の外周面との角部に、R面取部322aを設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、C面取り状の面取部322に代えて、下側筒部320の上端部の全体にR面取部322aを形成してもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、操作レバー340の把持部342を、操作レバー340の左側に配置した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、把持部342を操作レバー340の右側に配置してもよい。また、把持部342を操作レバー340の左右方向中央に配置してもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、作業車として、トラクタ1を例示したが、このような態様に限られない。例えば作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 トラクタ
20 ステアリング装置
100 ステアリングホイール
200 ステアリングシャフト
300 テレスコピック装置
400 操舵力付与装置