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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096546
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20240709BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G06F1/20 A
G06F1/20 C
H01L23/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000030
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】518133201
【氏名又は名称】富士通クライアントコンピューティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA01
5F136CA06
5F136CC26
5F136DA25
(57)【要約】
【課題】受熱効率の低下を抑制して冷却効率の向上を図る。
【解決手段】情報処理装置1は、プロセッサ10と冷却部20を有する。プロセッサ10と冷却部20は、情報処理装置1内の基板1a上に搭載される。冷却部20は、冷却部材21、熱伝導体22および熱拡散板23を備える。冷却部材21には、相変化物質が封入されている。熱伝導体22は、一端が冷却部材21に接続されている。熱拡散板23は、一方の面が放熱体である熱伝導体22に接し、他方の面が発熱体であるプロセッサ10のチップ表面に接して、プロセッサ10からの熱を受熱して熱伝導体22に向けて熱拡散を行う。また、冷却部材21は、フローティング構造によって基板1aに設置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載されたプロセッサと、
相変化物質が封入された冷却部材と、前記冷却部材に一端が接続される熱伝導体と、前記熱伝導体に一方の面が接し他方の面が前記プロセッサのチップ表面に接して、前記プロセッサからの熱を受熱して前記熱伝導体に向けて熱拡散を行う熱拡散板とを備え、前記冷却部材がフローティング構造によって前記基板に設置されている冷却部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記冷却部は、前記熱伝導体の両端の間に取り付け部材が設けられ、前記取り付け部材と前記基板とがネジ締結されて前記基板に搭載される、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記冷却部材は、前記基板に設けられたスタッドに対してネジ締結される突起部を備え、ネジが前記突起部に設けられた孔に貫通して前記スタッドに嵌合した場合に前記ネジと前記突起部との間に段差が形成される前記フローティング構造によって前記基板に設置される、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記熱伝導体の他端には、前記基板に対して固定設置されている冷却フィンが接続される、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記冷却フィンの近傍には、空冷ファンが設置される、請求項4記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記冷却部材の表面には、筐体と接する放熱ゴムが設けられる、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記熱伝導体の他端には、前記冷却部材がさらに接続され、前記熱伝導体の他端に接続される前記冷却部材は、前記基板に対して固定設置される、請求項1記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置が有するCPU(Central Processing Unit)は、高負荷な処理が継続するとCPUの温度が上昇して発熱によって故障の原因となる場合がある。このため、情報処理装置には、CPUの温度上昇を抑えるための冷却機構が備えられている。
【0003】
関連技術としては、例えば、CPUが液相冷媒に浸漬された状態となるように筐体内で固定されてCPUを冷却する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-116481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CPUの冷却機構として、CPUのチップ表面に一部が接することでCPUからの熱を受熱して放熱させるヒートシンクがある。このようなヒートシンクを有する情報処理装置では、基板に対してヒートシンクがネジ締結により設置されるが、ネジの締め付け力には偏りが生じやすいため、ヒートシンクに歪み(ヒートシンク部品の変形)が生じる可能性がある。
【0006】
設置されたヒートシンクに歪みが生じていると、CPUのチップ表面に対してヒートシンクが偏当たりする状態になりやすく、CPUのチップ表面にヒートシンクが均等に接することができなくなるため、CPUからの受熱効率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、受熱効率の低下を抑制して冷却効率の向上を図った情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、情報処理装置が提供される。情報処理装置は、基板に搭載されたプロセッサと、相変化物質が封入された冷却部材と、冷却部材に一端が接続される熱伝導体と、熱伝導体に一方の面が接し他方の面がプロセッサのチップ表面に接して、プロセッサからの熱を受熱して熱伝導体に向けて熱拡散を行う熱拡散板とを備え、冷却部材がフローティング構造によって基板に設置されている冷却部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
1側面によれば、受熱効率の低下を抑制して冷却効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】情報処理装置に備えられる冷却部の一例を示す図である。
図2】ヒートシンクの構成の一例を示す図である。
図3】フローティング構造の一例を示す図である。
図4】PCMパッケージの表面に放熱ゴムが設けられている構成の一例を示す図である。
図5】情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
図6】ヒートシンクの構成の変形例を示す図である。
図7】冷却機構の改善前のCPUの消費電力と温度の関係の一例を示す図である。
図8】冷却機構の改善後のCPUの消費電力と温度の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0012】
図1は情報処理装置に備えられる冷却部の一例を示す図である。情報処理装置1は、ノートパソコンやタブレットパソコン等であり、プロセッサ10と冷却部20を有する。プロセッサ10は例えば、CPU、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等である。プロセッサ10と冷却部20は、情報処理装置1内の基板1a上に搭載される。
【0013】
冷却部20は、冷却部材21、熱伝導体22および熱拡散板23を備える。冷却部材21には、相変化物質(PCM:Phase Change Material)が封入されている。相変化物質は、例えば、パラフィン類を使用したマイクロカプセルであって、熱を繰り返し吸放出する特性を有しており、固体・液体へ相変化する場合には潜熱を放出し、固体が加熱される場合には融解熱を吸収し、液体が冷却される場合には凝固熱を放出する。相変化物質は、特定温度で相変化している場合はその特定温度を維持するという特性があるため、蓄熱蓄冷作用を発生させる。
【0014】
熱伝導体22は、加わった熱(プロセッサ10からの発熱)を熱伝導体22の端部まで伝導する部品であり、図1では、熱伝導体22の一端には、冷却部材21が接続されている。熱伝導体22としては、例えば、熱伝導性の高い銅やアルミニウム等で形成された中空状のパイプの中に揮発性の高い液体が封入されたヒートパイプを使用することができる。
【0015】
熱拡散板23は、一方の面が放熱体である熱伝導体22に接し、他方の面が発熱体であるプロセッサ10のチップ表面に接して、プロセッサ10からの熱を受熱して熱伝導体22に向けて熱拡散を行う部品である。
【0016】
ここで、冷却部材21は、フローティング構造によって基板1aに設置されている。例えば、冷却部材21は突起部2a1、2a2を備えており、突起部2a1、2a2に設けられた孔にネジが貫通して基板1aに設置される場合に、ネジに対して冷却部材21が所定の範囲で可動できる状態で締結される(フローティング構造の詳細は後述する)。
【0017】
このように、冷却部20の端側に位置する冷却部材21がフローティング構造により基板1aに設置されるので、冷却部20の所定箇所をネジ締結によって基板1aに実装した場合に、ネジ締結によって生じていた冷却部20の歪みを、フローティング構造によって発生させた公差によって吸収することができる。
【0018】
したがって、情報処理装置1の冷却機構では、冷却部20を基板1aに対して水平に保って実装することが可能になるので、プロセッサ10のチップ表面に対して冷却部20内の熱拡散板23が偏当たりすることなく均等に接することができ、受熱効率の低下を抑制して冷却効率を向上させることが可能になる。
【0019】
次に冷却部20の構成について詳しく説明する。なお、以降の説明では、プロセッサをCPU、冷却部材をPCMパッケージ、熱伝導体をヒートパイプ、熱拡散板をヒートスプレッダ、冷却部をヒートシンクと呼ぶ場合がある。
【0020】
図2はヒートシンクの構成の一例を示す図である。ヒートシンク20aの平面図を示している。ヒートシンク20aは、PCMパッケージ21a、ヒートパイプ22a、ヒートスプレッダ23a、冷却フィン24aおよび空冷ファン25aを備える。
【0021】
ヒートパイプ22aの一端にはPCMパッケージ21aが接続され、ヒートパイプ22aの他端には冷却フィン24aが接続される。PCMパッケージ21aは突起部2a1、2a2を有している。
【0022】
PCMパッケージ21aは、突起部2a1、2a2を通じてフローティング構造によって基板1aに設置される。冷却フィン24aは、基板1aに対して固定設置され(非フローティング構造による設置)、冷却フィン24aの近傍には、空冷ファン25aが基板1aに設置される。
【0023】
ヒートパイプ22aの両端の間の直下には、ヒートスプレッダ23aが配置される。ヒートスプレッダ23aの一方の面はヒートパイプ22aに接し、ヒートスプレッダ23aの他方の面は、基板1aに搭載されているCPU10aのチップ表面に接する。
【0024】
また、ヒートシンク20aは、ヒートパイプ22aの両端の間に、取り付け部材26a1、26a2が設けられており、取り付け部材26a1、26a2と基板1aとがネジ締結されて基板1aに搭載される(非フローティング構造による設置)。
【0025】
図2の例では、取り付け部材26a1、26a2は、ヒートパイプ22aの両端の間に位置するヒートスプレッダ23aに接続されている。なお、以降では、突起部2a1、2a2を総称して突起部2aと呼ぶ場合がある。また、取り付け部材26a1、26a2を総称して取り付け部材26aと呼ぶ場合がある。
【0026】
このような構成のヒートシンク20aでは、CPU10aが発熱すると、ヒートパイプ22aを通じて熱がヒートパイプ22aの両端部に伝導する。CPU10aの発熱初期時には、空冷ファン25aの回転数は上がらないために、空冷ファン25aによる冷却フィン24aを介した排熱量は低い。ただし、PCMパッケージ21aは潜熱を利用するため、空冷ファン25aの稼働を要さずにPCMパッケージ21a側にて排熱が行われる。
【0027】
その後、空冷ファン25aの回転数が上昇してくると、空冷ファン25aによる冷却も促進されていくので、PCMパッケージ21aおよび空冷ファン25aの両方で冷却が行われることになる。
【0028】
図3はフローティング構造の一例を示す図である。PCMパッケージ21aに設けられている突起部2aにおけるネジ締結部分の横断面を示している。基板1aには、突起部2aに設けられている孔に対応する箇所にスタッド(Stud)sdが埋設されている。
【0029】
基板1aに対してPCMパッケージ21aが設置される場合、ネジsrが突起部2aに設けられた孔に貫通してネジsrがスタッドsdに嵌合する。この場合、スタッドsdと突起部2aとの間に段差Δdが形成された状態で、ネジsrがスタッドsdに嵌合して締結される。したがって、PCMパッケージ21aが基板1aに設置された場合、段差Δdの分だけPCMパッケージ21aが可動することができる。
【0030】
仮に、PCMパッケージ21aの基板1aへの実装をフローティング構造にせずに固定的なネジ締結で設置した場合、取り付け部材26aを介してネジ締結によって基板1aに実装されているヒートシンク20aに対して、例えば、ヒートシンク20aがPCMパッケージ21a側に沈むような歪みが生じる可能性がある。この場合、ヒートスプレッダ23aがCPU10aのチップ表面に偏当たりしてしまい、受熱効率の低下が引き起こされる。
【0031】
これに対し、図3に示すようなフローティング構造による実装では、ヒートシンク20aが取り付け部材26aを介してネジ締結によって基板1aに対して固定的に実装された場合、取り付け部材26aのネジ締結によって生じるヒートシンク20aの歪みを、フローティング構造によって発生させた公差によって吸収することができる。
【0032】
このため、ヒートシンク20aを基板1aに対して水平に保って実装することが可能になる。したがって、CPU10aのチップ表面に対してヒートシンク20aに備えられるヒートスプレッダ23aが偏当たりすることなく均等に接することができ、受熱効率の低下を抑制して冷却効率を向上させることが可能になる。
【0033】
図4はPCMパッケージの表面に放熱ゴムが設けられている構成の一例を示す図である。ヒートシンク20a-1は、PCMパッケージ21aの表面に放熱ゴム3が設けられている。その他の構成は図2と同じである。
【0034】
放熱ゴム3は、例えば、シリコーン系樹脂などが配合されている熱伝導性のゴムである。放熱ゴム3は、PCMパッケージ21aの表面に設けられるので一方の面がPCMパッケージ21aに接する。また、放熱ゴム3の他方の面は、情報処理装置1の筐体(情報処理装置1の外装カバー)に対して接する。
【0035】
このような構成にすることにより、PCMパッケージ21aに封入されているPCMの完全融解後にも筐体への熱伝達が可能になる。また、放熱ゴム3によりPCMパッケージ21aと筐体とが熱的接続がなされることになるので、PCMが液体から個体になる過程においてPCMの凝固スピードを速めることができる。
【0036】
さらに、放熱ゴム3によって、PCMパッケージ21aのフローティング構造による実装部分の厚み方向の部材のあばれを抑制できるという効果も奏している。なお、放熱ゴム3は、PCMパッケージ21aと筐体との両方に接することができる任意の位置および任意の個数で取り付けることができる。
【0037】
図5は情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。冷却機構としてヒートシンク20a-1を備える情報処理装置1の内部構成を示している。情報処理装置1がノートパソコンなどの場合にはバッテリ4などが内蔵されるために実装スペースに制限があるが、このような装置に対しても、本発明の構成のヒートシンク20a-1を実装することができる。
【0038】
図6はヒートシンクの構成の変形例を示す図である。ヒートシンク20a-2は、PCMパッケージ21a-1、21a-2、ヒートパイプ22aおよびヒートスプレッダ23aを備える。ヒートパイプ22aの一端にはPCMパッケージ21a-1が接続され、ヒートパイプ22aの他端にはPCMパッケージ21a-2が接続される。
【0039】
PCMパッケージ21a-1は、基板1aに対してフローティング構造により設置され、PCMパッケージ21a-2は、基板1aに対して固定設置される(非フローティング構造による設置)。
【0040】
このように、ヒートシンク20a-2は、ヒートパイプ22aの一端と他端のそれぞれに対して、PCMパッケージ21a-1、21a-2を設ける構成としたものである。なお、ヒートシンク20a-2の実装状態に応じて、PCMパッケージ21a-1、21a-2の両方をフローティング構造で基板1aに設置してもよい。
【0041】
また、当初設置されていた冷却フィン24aおよび空冷ファン25aを除去してPCMパッケージ21a-2を設置した場合は、空冷ファン制御を無効とする設定を行ってファンエラーが発生しないようにする。
【0042】
次にCPUのターボブースト機能を備えた情報処理装置に対して冷却機構の改善前と改善後の動作のシミュレーション結果について説明する。近年、CPUのターボブースト機能を備えた情報処理装置が開発されている。ターボブーストは、CPUのクロック周波数を動的に上げて高速に動作させる機能である。
【0043】
CPUをターボ駆動させた場合、クロック周波数が高いほどCPUを高速に動作させることができるが、消費電力もその分高くなるので発熱量が増え、故障の原因となる可能性がある。このため、CPUをターボ駆動させたときの高消費電力を見据えた冷却が重要となる。
【0044】
図7は冷却機構の改善前のCPUの消費電力と温度の関係の一例を示す図である。左縦軸は温度(°C)、右縦軸は消費電力(W)、横軸は時間である。また、太実線グラフk1は冷却機構の改善前のCPU10aの消費電力を示し、太点線グラフk2は冷却機構の改善前のCPU10aの温度を示している。
【0045】
(CPU10aの消費電力)
〔時刻t1-時刻t2〕CPU10aのターボ動作が開始されてクロック周波数が大きくなっていき消費電力が上昇する。
【0046】
〔時刻t2-時刻t4〕CPU10aがターボ動作を行う。この場合、ターボ動作のクロック周波数が最大周波数に達して消費電力がピークになる。
〔時刻t4-時刻t7〕CPU10aの温度がスロットリング温度(CPU10aの温度が上昇しすぎたときにクロック周波数を低下させる温度)に達し、スロットリング温度に達してから一定時間経過後の時刻t4でターボ動作が終了する。ターボ動作の終了に伴って、クロック周波数が小さくなっていき消費電力が下降する。
【0047】
〔時刻t7-時刻t10〕CPU10aは、低負荷状態におけるクロック周波数で動作し、低負荷時の消費電力が維持される。
(CPU10aの温度)
〔時刻t1-時刻t3〕CPU10aのターボ動作の開始により温度が上昇する。
【0048】
〔時刻t3-時刻t5〕時刻t3でCPU10aの温度がスロットリング温度に達する。また、時刻t4でCPU10aのターボ動作が終了しているが、時刻t5までスロットリング温度の状態が持続している。
【0049】
〔時刻t5-時刻t6〕CPU10aのターボ動作が終了しているため、温度が下降していく。
〔時刻t6-時刻t10〕CPU10aは、低負荷状態の動作における温度状態が持続する。
【0050】
ここで、冷却機構の改善前では、CPU10aのターボ動作に伴いCPU10aの温度も急上昇している。このため、スロットリング温度に即座に達してしまうので、ターボ動作時間が短くなり、CPU10aのターボブースト機能を充分に活用できていないことになる。
【0051】
図8は冷却機構の改善後のCPUの消費電力と温度の関係の一例を示す図である。左縦軸は温度(°C)、右縦軸は消費電力(W)、横軸は時間である。また、太実線グラフk1aは冷却機構の改善後のCPU10aの消費電力を示し、太点線グラフk2aは冷却機構の改善後のCPU10aの温度を示している。
【0052】
(CPU10aの消費電力)
〔時刻t1-時刻t2〕CPU10aのターボ動作が開始されてクロック周波数が大きくなっていき消費電力が上昇する。
【0053】
〔時刻t2-時刻t8〕CPU10aがターボ動作を行う。この場合、CPU10aのターボ動作のクロック周波数が最大周波数に達して消費電力がピークになる。
〔時刻t8-時刻t10〕CPU10aの温度がスロットリング温度に達し、スロットリング温度に達してから一定時間経過後の時刻t8でターボ動作が終了する。CPU10aのターボ動作の終了に伴って、クロック周波数が小さくなっていき消費電力が下降する。
【0054】
(CPU10aの温度)
〔時刻t1-時刻t2〕CPU10aのターボ動作の開始により温度が上昇する。
〔時刻t2-時刻t6〕CPU10aは、最大クロック周波数でターボ動作を行っているが本発明の冷却機構によってCPU10aの温度上昇が抑えられ、スロットリング温度以下の一定温度が持続している。
【0055】
〔時刻t6-時刻t7〕CPU10aのターボ動作により温度が徐々に上昇していき、時刻t7でCPU10aの温度がスロットリング温度に達する。
〔時刻t7-時刻t9〕時刻t8でCPU10aのターボ動作が終了しているが、時刻t9までスロットリング温度の状態が持続している。
【0056】
〔時刻t9-時刻t10〕CPU10aのターボ動作が終了しているため、温度が下降していく。
ここで、冷却機構の改善後では、CPU10aのターボ動作に伴いCPU10aの温度の急上昇が抑制されているため、図7の場合と比べてターボ動作時間が延長している。このように、冷却部20を備える情報処理装置1では、ターボ動作時間を延長させることができるので、CPU10aのターボブースト機能の活用時間を増大させることができる。
【0057】
以上説明したように、本発明によれば、PCMパッケージ21aのフローティング構造による基板設置により、ヒートシンク20aの一部がCPU10aのチップ表面に対して均等に安定して接することができ、受熱効率の低下を抑制することができる。
【0058】
また、放熱ゴム3を設けることにより、PCMパッケージ21aと筐体との間の空気のギャップを無くして、PCMパッケージ21aからの放熱を放熱ゴム3が筐体に熱伝達させることができ、冷却効率をさらに向上させることが可能になる。さらに、冷却効率を高めたことにより、CPU10aのターボ動作時間を延長させることができる。
【0059】
なお、上記では、プロセッサ10の発熱の冷却を行う場合について説明したが、プロセッサ10以外の発熱体に対しても、本発明の冷却部20による冷却を適用することが可能である。
【0060】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 情報処理装置
1a 基板
2a1、2a2 突起部
10 プロセッサ
20 冷却部
21 冷却部材
22 熱伝導体
23 熱拡散板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8