(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096548
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/48 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B60T8/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000032
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽亮
(72)【発明者】
【氏名】藤川 暢介
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB01
3D246HA02A
3D246HA64A
3D246HA86A
3D246HA93A
3D246LA15Z
3D246LA16A
3D246LA35A
3D246LA38A
3D246LA65A
3D246LA67Z
3D246LA72Z
(57)【要約】
【課題】簡易的にABS制御を行うことのできるブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】ブレーキ装置(10;10A;10B;10C)は、マスターシリンダ(12)と、キャリパ(13)と、マスターシリンダ(12)からキャリパ(13)までを接続している油路(20)と、を有している。油路(20)は、互いに並列に設けられ共にオイルが通過可能な第1油路(21)と、第2油路(22)と、を含む。油路(20)には、第1油路(21)又は第2油路(22)の一方を開き、他方を閉じることが可能なバルブ(32)が設けられ、第1油路(21)には、オイルを循環させることが可能なポンプ(33)と、このポンプ(33)が作動することにより変位しバルブ(32)の開度を変更可能なプランジャ(60)と、が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを圧送可能なマスターシリンダと、
このマスターシリンダから送られるオイルによって作動するキャリパと、
前記マスターシリンダから前記キャリパまでを接続し前記マスターシリンダから送られるオイルが流れる油路と、を有し、
前記油路は、互いに並列に設けられ共にオイルが通過可能な第1油路と、第2油路と、を含み、
前記油路には、前記第1油路又は前記第2油路の一方を開き、他方を閉じることが可能なバルブが設けられ、
前記第1油路には、オイルを循環させることが可能なポンプと、このポンプが作動することにより変位し前記バルブの開度を変更可能なプランジャと、が設けられ、
前記ポンプの停止時には、前記第1油路は、前記バルブによって閉じられ、前記第2油路は、オイルが通過可能に開放され、
前記ポンプの作動時には、前記第1油路は、オイルが通過可能に開放される、ブレーキ装置。
【請求項2】
前記流路は、前記マスターシリンダから前記キャリパへ向かうオイルの流れを基準として、前記第1油路と前記第2油路とに分岐する分岐部と、前記第1油路と前記第2油路とが合流する合流部と、を有し、
前記バルブは、前記分岐部に配置される第1バルブと、前記合流部に配置される第2バルブと、を有し、
前記プランジャは、前記第1バルブと前記第2バルブとの間に設けられ、
前記第1バルブは、前記第1油路を閉じることが可能な第1弁体と、この第1弁体に当接し前記第1油路を閉じる向きの力を付与する第1弾性体と、を有し、
前記第2バルブは、前記第1油路を閉じることが可能な第2弁体と、この第2弁体に当接し前記第1油路を閉じる向きの力を付与する第2弾性体と、を有している、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記第1油路が閉じられている状態を基準として、前記プランジャの受圧面積は、前記バルブの受圧面積よりも大きい、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記バルブは、弁体が球状又は円錐状に形成され、
前記プランジャは、円柱状に形成された本体部と、この本体部から前記弁体に向かって延びるロッド状の突起部と、を有する、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記プランジャは、スプール弁によって構成されている、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記第1流路には、過剰なオイルを収納可能なリザーバが設けられている、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記第2流路には、前記第2流路内の油圧を調整可能な調圧弁が設けられている、請求項1に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ABS制御を行うことのできるブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両のブレーキ装置は、ブレーキ時において車輪がロックすることを抑制するために、キャリパに過剰な油圧が加わった際にABS制御を行なうことが可能とされている。このようなブレーキ装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、ブレーキ制御装置は、2輪車のハンドルに設けられたブレーキレバーと、ブレーキレバーの操作力に応じたブレーキ液圧を発生するレバーマスターシリンダと、ブレーキキャリパと、レバーマスターシリンダとブレーキキャリパとを接続するブレーキ液圧回路と、を備えている。ブレーキ液圧回路中には、液圧ポンプと、複数の液圧調整弁と、が設けられている。
【0004】
ブレーキ制御装置によれば、液圧ポンプと液圧調整弁とを制御することにより、キャリパに加わる液圧が過剰に高くなることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたブレーキ装置によれば、複数の液圧調整弁(ソレノイド)を設け、これらとポンプを制御する必要があるため、制御が複雑になる。より簡易的にABS制御を行うことのできるブレーキ装置の提供が望まれる。
【0007】
本発明は、簡易的にABS制御を行うことのできるブレーキ装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、オイルを送ることのできるポンプと、このポンプが作動することにより油圧によって変位するプランジャと、プランジャが変位することにより油路を開閉するバルブと、を設けることにより、ABS制御を行うことができることを知見した。本発明は、当該知見に基づいて完成させた。
【0009】
以下、本開示について説明する。
【0010】
本開示によれば、オイルを圧送可能なマスターシリンダと、
このマスターシリンダから送られるオイルによって作動するキャリパと、
前記マスターシリンダから前記キャリパまでを接続し前記マスターシリンダから送られるオイルが流れる油路と、を有し、
前記油路は、互いに並列に設けられ共にオイルが通過可能な第1油路と、第2油路と、を含み、
前記油路には、前記第1油路又は前記第2油路の一方を開き、他方を閉じることが可能なバルブが設けられ、
前記第1油路には、オイルを循環させることが可能なポンプと、このポンプが作動することにより変位し前記バルブの開度を変更可能なプランジャと、が設けられ、
前記ポンプの停止時には、前記第1油路は、前記バルブによって閉じられ、前記第2油路は、オイルが通過可能に開放され、
前記ポンプの作動時には、前記第1油路は、オイルが通過可能に開放される、ブレーキ装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易的にABS制御を行うことのできるブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1によるブレーキ装置の模式図である。
【
図3】
図2に示したポンプの作動直後における作用を説明する図である。
【
図4】
図3からさらにポンプが作動し続けた場合の作用を説明する図である。
【
図5】
図4とはポンプを逆に作動させた場合の作用を説明する図である。
【
図6】実施例2によるブレーキ装置に用いられる油路切替装置の断面図である。
【
図7】実施例3によるブレーキ装置に用いられる油路切替装置の断面図である。
【
図8】実施例4によるブレーキ装置に用いられる油路切替装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。
【0014】
<実施例1>
図1を参照する。ブレーキ装置10は、例えば、鞍乗り型車両の前輪用ブレーキとして用いられる。ブレーキ装置10は、ハンドルHnの前方に設けられ乗員がスイング操作可能なブレーキレバー11と、このブレーキレバー11が操作されることによりオイルを圧送するマスターシリンダ12と、このマスターシリンダ12から送られるオイルによって作動するキャリパ13と、前輪と共に回転可能に設けられキャリパ13が作動することにより回転が止められるブレーキディスク14と、マスターシリンダ12からキャリパ13までを接続しマスターシリンダ12から送られるオイルが流れる油路20と、この油路20上に設けられオイルの流れる油路20を切り替えることが可能な油路切替装置30と、を有している。
【0015】
なお、1つのマスターシリンダ11によって操作されるキャリパ13の数は、2つ以上であっても良い。また、例えば、マスターシリンダ12と油路切替装置30との間にオイルを一時的に逃がすことのできるリザーバタンクを配置することもできる。
【0016】
図2を併せて参照する。油路20は、油路切替装置30の内部において第1油路21と第2油路22とに分岐され、合流する。第1油路21と第2油路22とは、互いに並列に設けられている。
【0017】
油路切替装置30は、油路20、第1油路21、第2油路22が形成されているハウジング31に、第1油路21又は第2油路22の一方を開き、他方を閉じることが可能なバルブ32と、オイルを循環させることが可能なポンプ33と、このポンプ33が作動することにより変位しバルブ32の開度を変更可能なプランジャ60と、ポンプ33の作動・停止を制御する制御部35と、制御部35に情報を送信可能なセンサ部36と、が設けられている。
【0018】
ハウジング31には、油路20(第1油路21、第2油路22を含む。)の他に、マスターシリンダ12からキャリパ13へ向かうオイルの流れ(
図2の矢印に沿った方向)を基準として、第1油路21と第2油路22とに分岐する分岐部23と、第1油路21と第2油路22とが合流する合流部24と、ポンプ33が収納されているポンプ収納部25と、プランジャ60が変位可能に収納されているプランジャ収納部26と、が形成されている。プランジャ収納部26は、分岐部23と合流部24との間に形成されている。
【0019】
これらの分岐部23、合流部24、ポンプ収納部25、プランジャ収納部26もオイルが流れる部位であり、油路20の一部ということができる。
【0020】
さらに、ポンプ収納部25と、プランジャ収納部26とは、共に第1油路21の一部を構成している。ポンプ収納部25と、プランジャ収納部26とは、それぞれ並列に形成されている。つまり、第1油路21は、一部が並列に分岐されており、並列に形成されている一方の油路にポンプ収納部25が形成され、他方にプランジャ収納部26が形成されている。
【0021】
バルブ32は、分岐部23に配置される第1バルブ40と、合流部24に配置される第2バルブ50と、を有している。
【0022】
第1バルブ40は、第1油路21を閉じることが可能な球状の第1弁体41と、この第1弁体41に当接し第1油路21を閉じる向きの力を付与する第1弾性体42と、を有する。
【0023】
第2バルブ50は、第1油路21を閉じることが可能な球状の第2弁体51と、この第2弁体51に当接し第1油路21を閉じる向きの力を付与する第2弾性体52と、を有する。
【0024】
第1弁体41及び第2弁体51には、球状の他、円錐状等任意の形状の弁体を用いることができる。また、第1弁体41と第2弁体51とで形状の異なる弁体や大きさの異なる弁体を用いることもできる。以下、第1弁体41及び第2弁体51を、バルブ32の弁体41、51と言うことがある。
【0025】
第1弾性体42及び第2弾性体52には、コイルばねや板ばね等任意の弾性体を用いることができる。第1弾性体42と第2弾性体52とで異なる種類の弾性体を用いることもできる。また、第1弾性体42と第2弾性体52とで異なる弾性定数の弾性体を用いることもできる。
【0026】
ポンプ33は、例えば、外接歯車ポンプを用いることができる。ポンプ33は、制御部35からの電気信号によってモータ33aが作動し、歯車33b、33cが回転することにより、オイルが送られる。ポンプ33には、外接歯車ポンプの他、内接歯車ポンプや二軸スクリューポンプを用いることができる。
【0027】
プランジャ60は、第1バルブ40と第2バルブ50との間に設けられている。プランジャ60は、円柱状に形成された本体部61と、この本体部61から第1弁体41に向かって延びるロッド状の第1突起部62と、本体部61から第2弁体51に向かって延びるロッド状の第2突起部63と、を有する。以下、第1突起部62を単に「突起部62」ということがある。また、第2突起部63を単に「突起部63」ということがある。
【0028】
本体部61は、軸線方向の略中央に他の部位よりも小径とされた小径部61aを含む。本体部61の一方の端面(
図2右側の端面)のうち第1突起部62の面積を除いた面積は、一方の受圧面ということができる。一方の受圧面の面積は、第1弁体41の第1油路21に臨んでいる部位の面積よりも大きく、第2弁体51の第1油路21に臨んでいる部位の面積よりも大きい。また、一方の受圧面の面積は、第1弁体41の第1油路21に臨んでいる部位の面積と、第2弁体51の第1油路21に臨んでいる部位の面積との和よりも大きい。つまり、プランジャ60の受圧面積は、バルブ32の受圧面積よりも大きい、ということが言える。
【0029】
本体部61の他方の端面(
図2左側の端面)についても同様である。他方の受圧面の面積は、第1弁体41の第1油路21に臨んでいる部位の面積よりも大きく、第2弁体51の第1油路21に臨んでいる部位の面積よりも大きい。また、他方の受圧面の面積は、第1弁体41の第1油路21に臨んでいる部位の面積と、第2弁体51の第1油路21に臨んでいる部位の面積との和よりも大きい。つまり、プランジャ60の受圧面積は、バルブ32の受圧面積よりも大きい、ということが言える。
【0030】
制御部35は、センサ部36からの情報に基づき、ポンプ33を作動させ、又は停止させるよう、通電を行う。制御部35は、例えば、CPUと、このCPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、不揮発性メモリであるEEPROMと、を備えている。
【0031】
センサ部36は、複数のセンサからなるセンサ群である。センサ群は、例えば、車速を検知する車速センサ、加減度を検知する加速度センサ、車輪の回転速度を検知する車輪速センサ、前輪のブレーキレバー11が操作されたことを検知する前輪ブレーキセンサ、後輪ブレーキが操作されたことを検知する後輪ブレーキセンサ、前車との距離を検知するカメラ、車体がどれだけ傾いているかを検知する傾斜センサ等の任意の複数のセンサからなる。
【0032】
分岐部23の第1油路21に臨む部位は、第1弁体41が当接している第1弁座部23aとされている。また、分岐部23の第2油路22に臨む部位は、第1弁体41の移動端を規定する第1ストッパ部23bとされている。
【0033】
合流部24の第1油路21に臨む部位は、第2弁体51が当接している第2弁座部24aとされている。また、合流部24の第2油路22に臨む部位は、第2弁体51の移動端を規定する第2ストッパ部24bとされている。
【0034】
以上に説明したブレーキ装置10の作用について以下に説明する。
【0035】
図1及び
図2を参照する。通常時において、ポンプ33は作動していない。ポンプ33の停止時には、第1油路21は、バルブ32によって閉じられ、第2油路22は、オイルが通過可能に開放されている。
【0036】
この状態で乗員がブレーキレバー11を握ると、マスターシリンダ12からオイルが油路20に向かって送られる。油路20に送られるオイルは、油路切替装置30を通過する際には、第2油路22を通過する。第2油路22を通過したオイルはキャリパ13に送られ、キャリパ13はブレーキディスク14を挟み込み、鞍乗り型車両が減速する。
【0037】
乗員がブレーキレバー11を離すと、キャリパ13が元の位置に戻り、ブレーキディスク14から離間する。キャリパ13が元の位置に戻ることにより、オイルは第2油路22を通過してマスターシリンダ12に戻る。
【0038】
図1及び
図3を参照する。乗員がブレーキレバー11を握った際に、オイルが過剰にキャリパ13に向かって流れること等により、車輪がロックすることがある。センサ部36からの車輪の回転速度等の情報により、車輪がロックしていることを検出した場合には、制御部35は、ABS制御を行うべくポンプ33を作動させる。
【0039】
制御部35がモータ33a(
図1参照)に通電することにより、モータ33aが作動し、歯車33b、33cが回転する。歯車33b、33cが回転することにより、プランジャ60の本体部61と第2弁体51との間のオイルが、本体部61と第1弁体41との間に送られる。これにより、プランジャ60が第2弁体51に向かって変位し、第2突起部63が第2弾性体52の付勢力に抗して、第2弁体51を開放する。
【0040】
プランジャ60は、第2弁体51が第2ストッパ部24bに当接する位置まで、第2弁体51を押し込むことができる。
【0041】
図4を参照する。第2弁体51が開放された状態で歯車33b、33cが回転し続けることにより、合流部24からキャリパ13(
図1参照)までの油路20内のオイルが第1油路21内に流れる。このオイルの油圧によって、第1弁体41が開放される。これにより分岐部23からマスターシリンダ12に向かってオイルを流すことができる。つまり、ポンプ33の作動時には、第1油路21は、オイルが通過可能に開放される、ということができる。キャリパ13側からマスターシリンダ12側へオイルを戻すことにより、車輪のロック状態を解除する。
【0042】
図5を参照する。ブレーキ装置10によれば、乗員がブレーキレバー11(
図1参照)を操作した場合以外にも、センサ部36からの情報に基づいてブレーキを作動させることができる。例えば、後輪ブレーキのみが操作されている場合や、車速に比して前車との車間距離が短い場合等に、乗員の操作によらずブレーキを作動させることができる。
【0043】
自動ブレーキを作動させる場合には、制御部35はモータ33a(
図1)に通電する。モータ33aが作動することにより、歯車33b、33cが回転する。自動ブレーキの際には、ABSの際とは逆側に歯車33b、33cを回転させる。
【0044】
これにより、本体部61と第1弁体41との間のオイルが、本体部61と第2弁体51との間に送られる。これにより、プランジャ60が第1弁体41に向かって変位し、第1弁体41を押下げる。
【0045】
さらに歯車33b、33cが回転し続けることにより、分岐部23からマスターシリンダ12までの油路20内のオイルが第1油路20内に流れる。このオイルの油圧によって、第2弁体51が開放される。これにより合流部24からキャリパ13に向かってオイルを流すことができる。キャリパ13へオイルが流されることにより、乗員の操作によらずブレーキを作動させることができる。
【0046】
なお、ブレーキ装置10をブレーキ・バイ・ワイヤによって構成することも可能である。この場合には、乗員のブレーキレバー11の操作をセンサ部36が検知し、この情報に基づいて、制御部35がポンプ33を作動させてブレーキを作動させる。
【0047】
<実施例2>
次に、実施例2を図面に基づいて説明する。
【0048】
図6を参照する。
図6には、実施例2によるブレーキ装置10Aに用いられる油路切替装置30Aが示されている。実施例2によるブレーキ装置10Aは、プランジャ60がスプール弁によって構成されている。その他の基本的な構成は、上記ブレーキ装置10と共通する。ブレーキ装置10と共通する構成については、符号を流用すると共に、詳細な説明を適宜省略する。
【0049】
第2油路22は、先端がプランジャ収納部26に向かって延びる2カ所の延出部22a、22bを有している。ポンプ33が停止している状態を基準として、延出部22a、22bの先端は、プランジャ60の小径部61aの外周面に臨んでいる。
【0050】
ポンプ33の停止時(通常のブレーキ時)には、第2油路22を通過するオイルは、一方の延出部22aからプランジャ収納部26と小径部61aの外周とによって形成された空間を経由して、他方の延出部22bから再び第2油路22に戻る。ポンプ33の作動時(例えば、ABS作動時)には、想像線で示すように、延出部22a、22bの少なくとも一方は、プランジャ60によって塞がれる。つまり、第2油路22が閉鎖され、オイルが逆流することを防止する。つまり、プランジャ60は、スプール弁によって構成されている、ということができる。
【0051】
<実施例3>
次に、実施例3を図面に基づいて説明する。
【0052】
図7を参照する。
図7には、実施例3によるブレーキ装置10Bに用いられる油路切替装置30Bが示されている。実施例3によるブレーキ装置10Bは、過剰なオイルを収納可能なリザーバ27が第1油路21に設けられている。その他の基本的な構成は、上記ブレーキ装置10と共通する。ブレーキ装置10と共通する構成については、符号を流用すると共に、詳細な説明を適宜省略する。
【0053】
第1油路21は、ポンプ収納部25とリザーバ27とに分岐する部位を有している。これにより、リザーバ27は、ポンプ33の近傍に配置されている。リザーバ27は、ハウジング31の内部に円柱状に抉られた穴によって構成されている。リザーバ27には、内周面に沿って変位可能なピストン27aと、このピストン27aに当接しオイルをリザーバ27内から押し出す方向の付勢力を与えるばね27bと、を有する。
【0054】
<実施例4>
次に、実施例4を図面に基づいて説明する。
【0055】
図8を参照する。
図8には、実施例4によるブレーキ装置10Cに用いられる油路切替装置30Cが示されている。実施例4によるブレーキ装置10Cは、第2油路20内の油圧を調整可能な調圧弁70が設けられてなる。その他の基本的な構成は、上記ブレーキ装置10と共通する。ブレーキ装置10と共通する構成については、符号を流用すると共に、詳細な説明を適宜省略する。
【0056】
調圧弁70は、マスターシリンダ12(
図1参照)からキャリパ13(
図1参照)へ向かうオイルの油圧が所定値を超えた場合に、第2油路22を開放する第1調圧弁71と、キャリパ13からマスターシリンダ12へ向かうオイルの油圧が所定値を超えた場合に、第2油路22を開放する第2調圧弁72と、を有する。第1調圧弁71と、第2調圧弁72とは、例えば、チェック弁によって構成される。
【0057】
第1調圧弁71は、球状の第1調圧弁体71aと、この第1調圧弁体71aに当接し第2油路22を閉じる方向に付勢している第1調圧ばね71bと、を有する。
【0058】
第2調圧弁72は、球状の第2調圧弁体72aと、この第2調圧弁体72aに当接し第2油路22を閉じる方向に付勢している第2調圧ばね72bと、を有する。
【0059】
第1調圧弁体71aと第2調圧弁体72aとは、同じ弁体を用いることもできるし、互いに形状や大きさの異なる弁体を用いることもできる。また、第1調圧ばね71bと第2調圧ばね72bとは、同じばねを用いることもできるし、互いに形状や弾性係数の異なるばねを用いることもできる。
【0060】
第2油路22には、第1調圧弁71が収納される第1調圧弁収納部22cと、第2調圧弁72が収納される第2調圧弁収納部22dと、が形成されている。第1調圧弁収納部22cと、第2調圧弁収納部22dとは、互いに並列に設けられている。
【0061】
第1調圧弁収納部22cは、第1調圧弁71の弁箱及び弁座の役割も果たす。また、第2調圧弁収納部22dは、第2調圧弁72の弁箱及び弁座の役割も果たす。
【0062】
なお、以上に説明した実施例は、適宜組み合わせることができる。例えば、プランジャ60をスプール弁によって構成したブレーキ装置10A(
図6参照)に、リザーバ27(
図7参照)及び/又は調圧弁70(
図8参照)を設けることもできる。また、リザーバ27を設けたブレーキ装置10B(
図7参照)に、調圧弁70を設けることもできる。
【0063】
以上に説明したブレーキ装置10、10A、10B、10Cについて、以下纏める。
【0064】
図1、
図2、
図5乃至
図7を参照する。第1に、ブレーキ装置10、10A、10B、10Cは、オイルを圧送可能なマスターシリンダ12と、このマスターシリンダ12から送られるオイルによって作動するキャリパ13と、マスターシリンダ12からキャリパ13までを接続しマスターシリンダ12から送られるオイルが流れる油路20と、を有している。
【0065】
油路20は、互いに並列に設けられ共にオイルが通過可能な第1油路21と、第2油路22と、を含む。油路20には、第1油路21又は第2油路22の一方を開き、他方を閉じることが可能なバルブ32が設けられている。第1油路21には、オイルを循環させることが可能なポンプ33と、このポンプ33が作動することにより変位しバルブ32の開度を変更可能なプランジャ60と、が設けられている。
【0066】
ポンプの停止時には、第1油路21は、バルブ32によって閉じられ、第2油路22は、オイルが通過可能に開放されている。
図4を併せて参照する。ポンプ33の作動時には、第1油路21は、オイルが通過可能に開放される。
【0067】
図2、
図5乃至
図7を参照する。ブレーキ装置10、10A、10B、10Cは、オイルを送ることのできるポンプ33と、このポンプ33が作動することにより油圧によって変位するプランジャ60と、プランジャが変位することにより油路20を開閉するバルブ32と、を有する。ポンプ33を作動させることによりプランジャ60を変位させ、バルブ32を開閉することにより、ABS制御を行うことができる。ABS制御を行なう際に、ポンプ33のみを制御すればよく、ABS制御を簡易的に行うことができる。つまり、簡易的にABS制御を行うことのできるブレーキ装置10、10A、10B、10Cを提供することができる。
【0068】
第2に、第1のブレーキ装置10、10A、10B、10Cであって、油路20は、マスターシリンダ12(
図1参照)からキャリパ13(
図1参照)へ向かうオイルの流れを基準として、第1油路21と第2油路22とに分岐する分岐部23と、第1油路21と第2油路22とが合流する合流部24と、を有している。バルブ32は、分岐部23に配置される第1バルブ40と、合流部24に配置される第2バルブ50と、を有している。プランジャ60は、第1バルブ40と第2バルブ50との間に設けられている。
【0069】
第1バルブ40は、第1油路21を閉じることが可能な第1弁体41と、この第1弁体41に当接し第1油路21を閉じる向きの力を付与する第1弾性体42と、を有し、第2バルブ50は、第1油路21を閉じることが可能な第2弁体51と、この第2弁体51に当接し第1油路21を閉じる向きの力を付与する第2弾性体52と、を有している。バルブ32を2つのチェック弁によって構成することにより、部品代を安価に抑えることができ、ブレーキ装置10、10A、10B、10C全体としても安価にすることができる。
【0070】
第3に、第1又は第2のブレーキ装置10、10A、10B、10Cであって、第1油路21が閉じられている状態を基準として、プランジャ60の受圧面積は、バルブ32の受圧面積よりも大きい。バルブ32よりも先にプランジャ60を変位させることができ、より確実にブレーキ装置10、10A、10B、10Cを作動させることができる。
【0071】
第4に、第1乃至第3のいずれかのブレーキ装置10、10A、10B、10Cであって、バルブ32は、弁体41、51が球状に形成されている。プランジャ60は、円柱状に形成された本体部61と、この本体部61から弁体41、51に向かって延びるロッド状の突起部62、63と、を有する。バルブ32及びプランジャ60を簡便な構成とすることができ、ブレーキ装置10、10A、10B、10Cを安価にすることができる。なお、弁体41、51が円錐状に形成されている場合にも同様の効果を奏する。
【0072】
図6を参照する。第5に、第1乃至第4のいずれかのブレーキ装置10Aであって、プランジャ60は、スプール弁によって構成されている。プランジャ60がスプール弁によって構成されることにより、ポンプ33の作動中にプランジャ60によって第2油路22を閉じることができる。第1油路21及び第2油路22の切り替えをより確実に行うことができる。また、オイルが逆流することによりバルブ32に開方向の力が付与されることを抑制することができる。ブレーキ装置10Aをより確実に制御することができる。
【0073】
図7を参照する。第6に、第1乃至第5のいずれかのブレーキ装置10Bであって、第1油路21には、過剰なオイルを収納可能なリザーバ27が設けられている。リザーバ27が設けられることにより、プランジャ60やバルブ32に加わる油圧を一定にすることができ、より確実にブレーキ装置10Bを制御することができる。
【0074】
図8を参照する。第7に、第1乃至第6のいずれかのブレーキ装置10Cであって、第2油路20には、第2油路20内の油圧を調整可能な調圧弁70が設けられている。所定の油圧を超えた場合にのみ第2油路22をオイルが通過可能とすることができる。
【0075】
なお、本発明によるブレーキ装置は、鞍乗り型車両の前輪に用いられる例によって説明したが、鞍乗り型車両の後輪用として用いることもできる。この場合には、マスターシリンダは、ハンドルの前方に設けられたレバーによって作動させることもできるし、フットペダルによって作動させることも可能である。また、1台の鞍乗り型車両にブレーキ装置を2つ搭載し、前輪用、後輪用として用いることもできる。さらには、3輪以上の鞍乗り型車両のそれぞれの車輪に対応させてブレーキ装置を搭載することも可能である。また、ブレーキ装置は、鞍乗り型車両以外の車両にも用いることができる。
【0076】
また、各実施例は、適宜組み合わせることができる。例えば、
図7や
図8のブレーキ装置10B、10Cのプランジャを、
図6に示すスプール弁によって構成することも可能である。また、
図6や
図8のブレーキ装置10A、10Cに対して
図7に示すリザーバ27を設けることも可能である。また、
図6や
図7のブレーキ装置10A、10Bに対して
図8に示す調圧弁70を設けることも可能である。また、これらを重畳的に適用することも可能である。
【0077】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のブレーキ装置は、鞍乗り型車両に好適である。
【符号の説明】
【0079】
10、10A、10B、10C…ブレーキ装置
12…マスターシリンダ
13…キャリパ
20…油路
21…第1油路
22…第2油路
23…分岐部
24…合流部
27…リザーバ
32…バルブ
33…ポンプ
40…第1バルブ
41…第1弁体
42…第1弾性体
50…第2バルブ
51…第2弁体
52…第2弾性体
60…プランジャ
61…本体部
62…第1突起部(突起部)
63…第2突起部(突起部)
70…調圧弁