(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009655
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】レーザ切断装置およびレーザ切断方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20240116BHJP
B23K 26/042 20140101ALI20240116BHJP
B23K 26/14 20140101ALI20240116BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/042
B23K26/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111342
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000150981
【氏名又は名称】日酸TANAKA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔太
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 徳弘
(72)【発明者】
【氏名】伊原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 直希
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB15
4E168CB19
4E168CB22
4E168DA28
4E168EA17
4E168EA24
4E168FA00
4E168FA03
4E168FB02
4E168FB03
4E168FC04
4E168JA02
4E168KB03
(57)【要約】
【課題】加工対象物の切断面の粗さがより小さいレーザ切断装置およびレーザ切断方法を提供する。
【解決手段】加工対象物Wをレーザ切断するレーザ切断装置であって、レーザLAを射出するレーザビーム照射部を有するレーザ照射装置と、レーザビーム照射部の加工対象物W側に配置されたレーザ加工ヘッドと、制御部と、を備え、レーザ加工ヘッドは、加工対象物W側の先端にノズル部12を有し、制御部は、レーザLAが、ノズル部12の内周面12sに干渉しつつ加工対象物Wに照射されるように、レーザ照射装置またはレーザ加工ヘッドのうち少なくとも一方を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物をレーザ切断するレーザ切断装置であって、
レーザを射出するレーザビーム照射部を有するレーザ照射装置と、
前記レーザビーム照射部の前記加工対象物側に配置されたレーザ加工ヘッドと、
制御部と、
を備え、
前記レーザ加工ヘッドは、前記加工対象物側の先端にノズル部を有し、
前記制御部は、前記レーザが、前記ノズル部の内周面に干渉しつつ前記加工対象物に照射されるように、前記レーザ照射装置または前記レーザ加工ヘッドのうち少なくとも一方を制御する、
レーザ切断装置。
【請求項2】
前記レーザ照射装置は、集光レンズを備え、
前記制御部は、前記レーザが、前記ノズル部の前記内周面に干渉しつつ前記加工対象物に照射されるように、前記集光レンズの位置を制御する、
請求項1に記載のレーザ切断装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記レーザが、前記ノズル部の前記内周面に干渉しつつ前記加工対象物に照射されるように、前記ノズル部の位置を制御する、
請求項1に記載のレーザ切断装置。
【請求項4】
前記ノズル部は、前記ノズル部に液体を流入させる冷却部を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ切断装置。
【請求項5】
前記レーザ加工ヘッドは冷却アダプタを有し、
前記冷却アダプタは、前記ノズル部の近傍に液体を流入させる冷却部を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ切断装置。
【請求項6】
加工対象物をレーザ切断するレーザ切断方法であって、
レーザをノズル部の内周面に干渉させつつ前記加工対象物に照射する、
レーザ切断方法。
【請求項7】
冷却部に液体を流入させて前記ノズル部を冷却する、
請求項6に記載のレーザ切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ切断装置およびレーザ切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工対象物にレーザを照射して切断するレーザ切断装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のレーザノズルおよびレーザ加工ヘッドのように、集光レンズに通過させて焦点位置を制御したレーザが、レーザ加工ヘッドの先端に設けられたレーザノズルの内部通路を通過して加工対象物に照射されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ切断装置は、レーザで金属等の加工対象物を溶融させて、溶融した金属をレーザと同軸で流れるアシストガスにより吹き飛ばす。この工程を、加工対象物の切断方向に連続的又は断続的に施すことで加工対象物を切断する。このとき、加工対象物の板厚方向(レーザの照射方向)に条痕が形成され、切断面が粗くなる。レーザ切断装置において、加工後の見栄え等の観点から粗さがより小さい切断面が求められる。
【0005】
上記事情を踏まえ、本発明は、加工対象物の切断面の粗さがより小さいレーザ切断装置およびレーザ切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のレーザ切断装置は、加工対象物をレーザ切断するレーザ切断装置であって、レーザを射出するレーザビーム照射部を有するレーザ照射装置と、前記レーザビーム照射部の前記加工対象物側に配置されたレーザ加工ヘッドと、制御部と、を備え、前記レーザ加工ヘッドは、前記加工対象物側の先端にノズル部を有し、前記制御部は、前記レーザが、前記ノズル部の内周面に干渉しつつ前記加工対象物に照射されるように、前記レーザ照射装置または前記レーザ加工ヘッドのうち少なくとも一方を制御する。
【0007】
本発明のレーザ切断方法は、加工対象物をレーザ切断するレーザ切断方法であって、レーザをノズル部の内周面に干渉させつつ前記加工対象物に照射する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレーザ切断装置およびレーザ切断の切断方法によれば、加工対象物の切断面の粗さがより小さいレーザ切断装置およびレーザ切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るレーザ切断装置の概略構成の一例を説明する概念図である。
【
図2】従来のレーザ切断装置におけるノズル部とレーザ照射位置の関係を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係るレーザ切断装置におけるノズル部とレーザ照射位置の関係を示す断面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係るレーザ切断装置の概略構成の一例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
本実施形態では、
図1に示すように、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸において、X軸は水平前後方向、Y軸は水平左右方向、Z軸は鉛直上下方向と定義する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るレーザ切断装置100の概略構成の一例を説明する概念図である。
レーザ切断装置100は、レーザ加工ヘッド10、レーザ照射装置20、アシストガス供給部30、サーボ制御部40および制御部50を備える。
【0012】
レーザ加工ヘッド10は、支持部11とノズル部12とを備える。支持部11はレーザ加工ヘッド10の基部であり、ノズル部12が取り外し可能に接続されている。
【0013】
ノズル部12は、略円筒形状であり、ノズル部12の内周面12sに囲われたレーザ通過領域PAを形成する。ノズル部12は、ストレート部1とテーパ部2と先端部3と冷却部4とを備える。
【0014】
ストレート部1、テーパ部2および先端部3は、銅を含む材料で形成され、ノズル部12の基部を形成する。ストレート部1、テーパ部2および先端部3は、Z軸上側からこの順で連なる略円筒形状であり、ストレート部1から先端部3に向けてテーパ部2が縮径している。すなわち、ストレート部1と、ストレート部1よりも径が小さい先端部3とが、テーパ部2を介して連なっている。
【0015】
ストレート部1の内周面1s、テーパ部2の内周面2sおよび先端部3の内周面3sによってノズル部12の内周面12sが形成される。
レーザ切断加工を行う際、レーザLAは、ストレート部1のZ軸上側の開口からレーザ通過領域PAに入り、レーザ通過領域PAを通過して、先端部3のZ軸下側の開口から加工対象物Wに照射される。
【0016】
冷却部4は、注水部4aと環状部4bと出水部4cとを備える。注水部4aは、略円筒形状であり、図示しない冷却装置と接続されている。注水部4aの中空部分に、冷却装置から水等の液体が流入する。環状部4bは、テーパ部2を囲って配置された中空の略円環体である。環状部4bは注水部4aに接続され、注水部4aに流入した液体が注水部4aの中空部分を通過して、環状部4bの中空部分に流入する。
【0017】
出水部4cは、略円筒形状であり、一方の開口が環状部4bと接続し、もう一方の開口が冷却装置と接続されている。環状部4bの中空部分から出水部4cの中空部分に液体が流入し、出水部4cの中空部分を通過して、冷却装置に排出される。
【0018】
例えば、冷却装置内で冷却した水を注水部4aから流入させ、環状部4bを通って出水部4cから冷却装置へ排出する。冷却装置に排出された水が冷却装置内で冷却され、再び注水部4aから流入して、注水部4aと環状部4bと出水部4cの内部を循環する。その結果、冷却装置で冷却された水がテーパ部2の周囲、かつ、近傍を流れ、テーパ部2が冷却される。テーパ部2を介してストレート部1および先端部3が冷却部4によって冷却され、ノズル部12の全体が冷却される。
【0019】
レーザ照射装置20は、レーザ発振器21とレーザビーム照射部22とコリメートレンズ23と集光レンズ24と保護ガラス25とを備える。レーザ照射装置20は、例えば、ファイバレーザ装置である。レーザビーム照射部22の一方の端部がレーザ発振器21に接続され、レーザ発振器21で生成したレーザLAを、レーザビーム照射部22に含まれる光ファイバを通過させて、レーザビーム照射部22のもう一方の端部に運搬して放射する。
【0020】
レーザビーム照射部22の端部から放射されたレーザLAの通過経路に、コリメートレンズ23と集光レンズ24と保護ガラス25とがこの順に配置されている。コリメートレンズ23は、レーザビーム照射部22の端部から放射されたレーザLAの進行方向を修正し、平行なコリメート光にする。集光レンズ24は、コリメートレンズ23で修正されたレーザを集光する。保護ガラス25は、レーザ切断時に加工対象物Wから飛散するヒューム又はスパッタ等から集光レンズ24を保護する。
【0021】
アシストガス供給部30は、レーザ加工ヘッド10に接続されている。アシストガス供給部30は、酸素ガス又は不活性ガス等をレーザ加工ヘッド10へ供給する。アシストガス供給部30から供給された酸素ガス又は不活性ガス等は、レーザ加工ヘッド10を介して加工対象物Wの加工対象箇所Tに供給される。
【0022】
サーボ制御部40は、レーザ加工ヘッド10の支持部11と接続されている。サーボ制御部40はレーザ加工ヘッド10の位置を制御する。例えば、レーザ加工ヘッド10をZ軸方向に移動し、レーザ加工ヘッド10と加工対象物WとのZ軸方向における距離を調整できる。また、レーザ加工ヘッド10のX軸方向又はY軸方向の位置を調整することで、レーザ加工ヘッド10を加工対象物Wの切断方向に移動できる。
【0023】
制御部50は、レーザ照射装置20とアシストガス供給部30とサーボ制御部40とに接続されている。制御部50からレーザ照射装置20へ指令を伝送することで、レーザ発振器21でのレーザLAの生成、生成するレーザLAの出力、集光レンズ24の位置等を制御できる。
【0024】
また、制御部50からアシストガス供給部30へ指令を伝送することで、アシストガス供給部30からレーザ加工ヘッド10へ供給するガスの圧力、流量および濃度等を制御できる。
【0025】
さらに、制御部50からサーボ制御部40へ指令を伝送することで、レーザ加工ヘッド10の位置又はレーザ加工ヘッド10が加工対象物Wを切断するために移動する切断経路等を制御できる。制御部50は、例えば、プロセッサとメモリと記憶部等を備えたプログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。
【0026】
制御部50の各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)又はGPU(Graphics Processing Unit;グラフィックスプロセッサ)のような1つ以上のプロセッサがプログラムメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。ただし、これら機能の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。また、上記機能の全部又は一部は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。記憶部は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory;読み出し専用メモリ)、又はRAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)等により実現される。
【0027】
次に、レーザ切断装置100を使用して加工対象物Wを切断する切断方法について説明する。
レーザ照射装置20は、制御部50から伝送された指令により集光レンズ24を所定の位置に配置する。さらに、レーザ発振器21は、制御部50から伝送された指令によりレーザLAを生成し、レーザ発振器21に接続されたレーザビーム照射部22へ送出する。レーザビーム照射部22は、レーザ発振器21と接続している端部の反対側の端部までレーザLAを運搬し、コリメートレンズ23にレーザLAを放射する。コリメートレンズ23は、レーザビーム照射部22から放射されたレーザLAの進行方向をZ軸方向に修正し、集光レンズ24に照射する。
【0028】
集光レンズ24は、コリメートレンズ23から照射されたレーザLAの進行方向を修正し、レーザLAを収束させて焦点(スポットS)を形成する。集光レンズ24から放射されたレーザLAは、保護ガラス25を透過して、ノズル部12へ照射される。
ノズル部12に照射されたレーザLAは、ストレート部1のZ軸上側の開口からレーザ通過領域PAに入り、レーザ通過領域PAを通過して、先端部3のZ軸下側の開口から加工対象物Wの加工対象箇所Tに照射される。
【0029】
図2および
図3は、ノズル部12とレーザ照射位置の関係を示す断面図である。
図2は、従来のレーザ切断装置におけるノズル部12とレーザ照射位置の関係を示す断面図であり、レーザLBは、ノズル部12の内周面12sと干渉せずに加工対象物Wへ照射される。
【0030】
図3は、本実施形態に係るレーザ切断装置100におけるノズル部12とレーザ照射位置の関係を示す断面図であり、レーザLAは、先端部3の内周面3sと干渉しつつ加工対象物Wへ照射される。こうすることで、加工対象物Wの切断面の粗さをより小さくすることができる。
【0031】
制御部50は、
図3に示すように、レーザLAが先端部3の内周面3sと干渉しつつ加工対象物Wへ照射されるように、集光レンズ24の位置を制御する。
こうして、加工対象物Wに放射されたレーザLAは、加工対象物WのレーザLAが照射された加工対象箇所Tを熱して溶融する。
【0032】
アシストガス供給部30は、制御部50から伝送された指令により、所定の圧力、流量および濃度の酸素ガス又は不活性ガス等を、レーザ加工ヘッド10を介して加工対象物Wの加工対象箇所Tに供給する。供給された酸素ガス又は不活性ガス等のアシストガスは、加工対象物Wの溶融した部分を吹き飛ばす。
【0033】
サーボ制御部40は、制御部50から伝送された指令により、レーザ加工ヘッド10を切断方向に移動させる。こうして、加工対象物WにレーザLAを照射し、加工対象物WのレーザLAで溶融した部分をアシストガスで吹き飛ばしつつ、レーザ加工ヘッド10を切断方向に移動させることで、加工対象物Wを切断する。
【0034】
上記レーザ切断装置100のレーザ切断方法において、レーザLAは、先端部3の内周面3sと干渉しつつ加工対象物Wへ照射される。そのため、レーザLAによって先端部3の温度が上昇して溶融する虞がある。
【0035】
冷却部4を冷却装置と接続し、冷却部4の内部に冷却装置から流入した液体を循環させることで、ノズル部12を冷却する。その結果、レーザLAとの干渉による先端部3の温度の上昇を抑制し、先端部3が溶融するのを抑制する。
【0036】
また、レーザ切断装置100は、ノズル部12に接続した図示しない倣いセンサ(静電容量式センサ)を用いて、切断中の倣い高さを検出している。レーザLAと先端部3の内周面3sとの干渉により上昇したノズル部12の温度が倣いセンサに伝わると、倣いセンサが誤作動を起こし、倣い高さが安定しない虞がある。
冷却部4によりノズル部12を冷却することで、倣いセンサの誤作動を防ぐ。
【0037】
本実施形態のレーザ切断装置100によれば、レーザLAが先端部3の内周面3sに干渉しつつ加工対象物Wへ照射されるため、加工対象物Wの切断面の粗さをより小さくすることができる。また、ノズル部12が冷却部4を備え、冷却部4に液体を流入させてノズル部12を冷却するため、レーザLAとの干渉により先端部3の温度が上昇するのを抑制し、先端部3が溶融するのを抑制できる。さらに、冷却部4がノズル部12を冷却することで倣いセンサの誤作動を防ぎ、安定して切断を行うことができる。
その結果、加工対象物Wの切断面の粗さがより小さいレーザ切断装置100およびレーザ切断方法を提供することができる。
【0038】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について、
図4を参照して説明する。以降の説明において、すでに説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図4は、本実施形態に係るレーザ切断装置100Aの概略構成の一例を説明する概念図である。
【0040】
レーザ加工ヘッド10Aは、支持部11Aとノズル部12Aと冷却アダプタ13とを備える。ノズル部12Aは、ストレート部1とテーパ部2と先端部3とを備える。すなわち、ノズル部12Aは、第一実施形態のノズル部12が備える冷却部4を備えない。
【0041】
ノズル部12Aおよび冷却アダプタ13は、支持部11Aに接続され、それぞれ取り外し可能である。冷却アダプタ13は、冷却部4Aを有する。冷却部4Aは、注水部4Aaと環状部4Abと出水部4Acとを備える。
【0042】
注水部4Aaは、略円筒形状であり、図示しない冷却装置と接続されている。注水部4Aaの中空部分に、冷却装置から水等の液体が流入する。環状部4Abは、ストレート部1を囲って冷却アダプタ13に配置された中空の略円環体である。環状部4Abは注水部4Aaに接続され、注水部4Aaに流入した液体が注水部4Aaの中空部分を通過して、環状部4Abの中空部分に流入する。
【0043】
出水部4Acは、略円筒形状であり、一方の開口が環状部4Abと接続し、もう一方の開口が冷却装置と接続されている。環状部4Abの中空部分から出水部4Acの中空部分に液体が流入し、出水部4Acの中空部分を通過して、冷却装置に排出される。
【0044】
例えば、冷却装置内で冷却した水を注水部4Aaから流入させ、環状部4Abを通って出水部4Acから冷却装置へ排出する。冷却装置に排出された水が冷却装置内で冷却され、再び注水部4Aaから流入して、注水部4Aaと環状部4Abと出水部4Acの内部を循環する。その結果、冷却装置で冷却された水がストレート部1の周囲、かつ、近傍を流れ、ストレート部1が冷却アダプタ13を介して冷却される。ストレート部1と連なるテーパ部2および先端部3が冷却アダプタ13の冷却部4Aによって冷却され、ノズル部12Aの全体が冷却される。
【0045】
また、ノズル部12Aおよび冷却アダプタ13は支持部11Aにそれぞれ接続されているため、冷却アダプタ13を支持部11Aに接続したまま、ノズル部12Aのみを支持部11Aから取り外すことができる。
【0046】
本実施形態のレーザ切断装置100Aによれば、レーザLAが先端部3の内周面3sに干渉しつつ加工対象物Wへ照射されるため、加工対象物Wの切断面の粗さをより小さくすることができる。また、レーザ加工ヘッド10Aが冷却アダプタ13を備え、冷却アダプタ13が有する冷却部4Aに液体を流入させてノズル部12Aを冷却するため、レーザLAとの干渉により先端部3の温度が上昇するのを抑制し、先端部3が溶融するのを抑制できる。さらに、冷却アダプタ13がノズル部12Aを冷却することで倣いセンサの誤作動を防ぎ、安定して切断を行うことができる。
その結果、加工対象物Wの切断面の粗さがより小さいレーザ切断装置100Aおよびレーザ切断方法を提供することができる。
【0047】
さらに、ノズル部12Aと冷却アダプタ13とがそれぞれ取り外し可能に支持部11Aに接続されているため、冷却アダプタ13を取り外すことなくノズル部12Aのみを支持部11Aから取り外すことができる。
その結果、ノズル部12Aを支持部11Aから取り外す際に、冷却アダプタ13と冷却装置との接続部等から液体が外部へ漏れることなく、ノズル部12Aを取り外すことができる。
【0048】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の各実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0049】
(変形例1)
上記第一実施形態において、環状部4bはテーパ部2の近傍に配置されているが、環状部の態様はこれに限定されない。環状部は、レーザLAと干渉する先端部3の内周面3sを冷却できればよく、例えば、ストレート部1又は先端部3の近傍に配置されてもよい。
【0050】
(変形例2)
上記第二実施形態において、環状部4Abはストレート部1の近傍に配置されているが、環状部の態様はこれに限定されない。環状部は、レーザLAと干渉する先端部3の内周面3sを冷却できればよく、例えば、テーパ部2又は先端部3の近傍に配置されてもよい。
【0051】
(変形例3)
上記各実施形態において、出水部4c(4Ac)は冷却装置に接続されているが、出水部の態様はこれに限定されない。出水部は、冷却装置に接続されずに、流入した液体を排水路等の外部へ排出してもよい。出水部を冷却装置に接続しない場合、例えば、冷却部と冷却装置との間で液体を循環させずに、新たな液体を冷却部へ連続的に流入させることでノズル部12(12A)を冷却する。
【0052】
(変形例4)
上記各実施形態において、レーザ切断装置100(100A)は冷却部4(4A)を備えるが、レーザ切断装置の態様はこれに限定されない。レーザ切断装置は、冷却部4(4A)を備えなくてもよい。冷却部4(4A)によりノズル部12を冷却しなくても、短時間の切断加工であれば安定して切断できる。
【0053】
(変形例5)
上記各実施形態において、レーザLAは、先端部3の内周面3sに干渉しつつ加工対象物Wへ照射されるが、レーザの態様はこれに限定されない。レーザは、ストレート部1の内周面1s又はテーパ部2の内周面2s等の、先端部3の内周面3s以外のノズル部12の内周面12sに干渉しつつ加工対象物Wへ照射されてもよい。
【0054】
(変形例6)
上記各実施形態において、制御部50は、集光レンズ24の位置を制御することでレーザLAとノズル部12(12A)とを干渉させるが、制御部の態様はこれに限定されない。制御部は、例えば、複数の集光レンズを切り替えることでレーザLAとノズル部とを干渉させてもよいし、ノズル部の位置又は角度等を制御することでレーザとノズル部を干渉させてもよい。
【0055】
以下実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
下記の条件のレーザ切断装置100にて、鋼材をレーザ切断した。また、レーザLAは、
図1に示すノズル部12の先端12tからスポットSまでのZ軸方向における距離を17.5mmとし、
図3に示すように先端部3の内周面3sに干渉させつつ鋼材に照射した。
出力:12000W、デューティ:100%
アシストガス圧:0.12MPa
切断速度:1200mm/min、倣い高さ:0.5mm
【0057】
(比較例1)
ノズル部の先端からスポットまでのZ軸方向における距離を13.5mmとし、
図2に示すようにレーザをノズル部に干渉させずに鋼材に照射した以外は、実施例1と同様の方法により鋼材をレーザ切断した。
【0058】
(実験1)
実施例1および比較例1の切断面において、下記の3箇所の十点平均粗さRzjisを測定した。
測定箇所(a):Z軸方向において、鋼材のレーザ照射した側の表面から3mmの位置。
測定箇所(b):Z軸方向において、鋼材の板厚の半分の位置。
測定箇所(c):Z軸方向において、鋼材のレーザ照射した側と反対側の表面から3mmの位置。
【0059】
(実験2)
実施例1および比較例1の切断面において、実験1の測定箇所(a)―(c)における最大高さRzを測定した。
【0060】
(実験結果)
図5は、実施例1の切断面を示す写真である。また、
図6は、比較例1の切断面を示す写真である。
図5および
図6の(a)、(b)および(c)は、測定箇所(a)―(c)を示している。実験1の結果を表1に示す。3箇所すべての測定箇所において、実施例1の切断面の十点平均粗さRzjisは、比較例1の切断面の十点平均粗さRzjisより小さい値であった。
【0061】
実験2の結果を表2に示す。3箇所すべての測定箇所において、実施例1の切断面の最大高さRzは、比較例1の切断面の最大高さRzより小さい値であった。
【0062】
【0063】
【符号の説明】
【0064】
100 レーザ切断装置
10 レーザ加工ヘッド
11 支持部
12 ノズル部
12s ノズル部の内周面
1 ストレート部
1s ストレート部の内周面
2 テーパ部
2s テーパ部の内周面
3 先端部
3s 先端部の内周面
4 冷却部
20 レーザ照射装置
21 レーザ発振器
22 レーザビーム照射部
23 コリメートレンズ
24 集光レンズ
30 アシストガス供給部
40 サーボ制御部
50 制御部
LA レーザ
PA レーザ通過領域
W 加工対象物
T 加工対象箇所