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  • 特開-土砂改質システムおよび土砂改質方法 図1
  • 特開-土砂改質システムおよび土砂改質方法 図2
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  • 特開-土砂改質システムおよび土砂改質方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096550
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】土砂改質システムおよび土砂改質方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/06 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
E02D23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000066
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修二
(72)【発明者】
【氏名】浅利 誠也
(57)【要約】
【課題】土砂ピットを設けずとも掘削土砂を改質することができ、その結果、掘削土砂の搬出作業の効率化を図ることができる土砂改質システムおよび土砂改質方法を提案する。
【解決手段】ニューマチックケーソン工法において、函内掘削機5よって掘削された掘削土砂の改質を作業室61内で行う土砂改質システム1である。土砂改質システム1は、改質材を作業室61内に圧送する改質材圧送管路2と、改質材圧送管路2に接続された改質材散布手段3とを備えている。改質材圧送管路2は、作業室61の天井スラブ62を貫通している。また、改質材散布手段3は、改質材圧送管路2を介して作業室内の圧力よりも高い圧力で圧送された改質材Mを作業室61内において掘削土砂に向けて散布可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソン工法において、函内掘削機よって掘削された掘削土砂の改質を作業室内で行う土砂改質システムであって、
改質材を前記作業室内に圧送する改質材圧送管路と、
前記改質材圧送管路に接続された改質材散布手段と、を備えており、
前記改質材圧送管路は、前記作業室の天井スラブを貫通しており、
前記改質材散布手段は、前記改質材圧送管路を介して前記作業室内の圧力よりも高い圧力で圧送された改質材を、前記作業室内において掘削土砂に向けて散布可能であることを特徴とする、土砂改質システム。
【請求項2】
前記改質材圧送管路は、前記天井スラブに形成された埋設配管と、前記埋設配管の上端に接続された圧送管と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の土砂改質システム。
【請求項3】
前記埋設配管と前記圧送管との接続部に逆止弁が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の土砂改質システム。
【請求項4】
改質材散布範囲を照射する照明装置を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の土砂改質システム。
【請求項5】
前記改質材散布手段の少なくとも一部が可撓性配管で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の土砂改質システム。
【請求項6】
請求項1に記載の土砂改質システムを利用して前記函内掘削機よって掘削された掘削土砂の改質を前記作業室内で行う土砂改質方法であって、
前記改質材圧送管路を介して前記改質材を圧送するとともに、前記改質材散布手段を操作して、前記改質材を前記掘削土砂に向けて散布する工程と、
前記函内掘削機を利用して前記改質材が散布された前記掘削土砂を撹拌する工程と、を備えていることを特徴とする、土砂改質方法。
【請求項7】
前記改質材散布手段を遠隔操作することにより、前記改質材を散布することを特徴とする、請求項6に記載の土砂改質方法。
【請求項8】
照明装置により照射された範囲に前記改質材を散布することを特徴とする、請求項7に記載の土砂改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法における掘削土砂の土砂改質システムおよびこれを利用した土砂改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューマチックケーソン工法では、作業室における掘削作業により発生した掘削土砂をアースバケット等により地上の土砂ホッパーに移送する(例えば、特許文献1参照)。土砂ホッパーに投入された掘削土砂は、処分場へ搬出する前に、ダンプトラックなどの搬出車両により土砂ピットに運搬し、この土砂ピットにおいて改質材と撹拌混合して改質する場合がある。
なお、土砂ホッパーの土槽の下に、搬出車両を配置可能な空間が確保されている場合がある。この場合には、土槽の下に搬出車両を配置した状態で、土槽の底部に設けた開閉扉を開くことで、土槽内部の土砂を搬出車両の荷台に落下させるのが一般的である。しかし、軟弱粘土層等の掘削により発生した掘削土砂のように、高含水で粘着力がある土砂は、土槽の壁面や開閉扉に張り付いてしまい、土槽から落下し難くなる場合がある。
また、施工現場が狭隘な場合には、土砂ピットを設置するスペースが確保できない。このような場合には、搬出前に掘削土砂を改質できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7014930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、土砂ピットを設けずとも掘削土砂を改質することができ、その結果、掘削土砂の搬出作業の効率化を図ることができる土砂改質システムおよび土砂改質方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の土砂改質システムは、ニューマチックケーソン工法において、函内掘削機よって掘削された掘削土砂の改質を作業室内で行う土砂改質システムであって、改質材を前記作業室内に圧送する改質材圧送管路と、前記改質材圧送管路に接続された改質材散布手段とを備えている。前記改質材圧送管路は、前記作業室の天井スラブを貫通しており、前記改質材散布手段は、前記改質材圧送管路を介して前記作業室内の圧力よりも高い圧力で圧送された改質材を、前記作業室内において掘削土砂に向けて散布可能である。
また、前記土砂改質システムを利用した土砂改質方法は、前記改質材圧送管路を介して前記改質材を圧送するとともに、前記改質材散布手段を操作して前記改質材を前記掘削土砂に向けて散布する工程と、前記函内掘削機を利用して前記改質材が散布された前記掘削土砂を撹拌する工程とを備えている。
かかる土砂改質システムおよび土砂改質方法によれば、作業室内において掘削土砂に改質材を添加することが可能なため、地上部に移送された段階では、掘削土砂に改質材が混合された状態となる。そのため、軟弱粘土層などの掘削により発生した掘削土砂であっても、改質された状態で地上に搬出されるため、土砂ホッパーに付着することが抑制される。ゆえに、土砂の搬出作業を効率的に行うことができる。また、地上部に掘削土砂の改質を目的とした土砂ピットを設ける必要もない。すなわち、改質を目的とした土砂ピットを設ける用地を確保できない場合であっても、掘削土砂を改質した状態で搬出できる。
【0006】
なお、前記改質材圧送管路は、前記作業室の天井スラブに形成された埋設配管と、前記埋設配管の上端に接続された圧送管とを備えているのが望ましい。すなわち、中埋めコンクリートを打設するために予め作業室天井スラブに設けられた埋設配管を改質材圧送管路の一部に使用することで、改質材圧送管路を別途配管する手間を省略できる。このとき、前記埋設配管と前記圧送管との接続部に逆止弁が設けられていれば、改質材の逆流を抑制できる。
また、改質材散布範囲を照射する照明装置を備えていれば、改質材を散布する領域を目視で確認できる。カメラなどの撮影画像を確認しながら改質剤散布手段を遠隔操作する場合であっても、改質剤散布範囲を確認しやすい。
さらに、前記改質材散布手段の少なくとも一部が柔軟性のある素材で構成されていれば、改質材を散布する際の操作性が向上する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の土砂改質システムおよび土砂改質方法によれば、掘削土砂を改質した状態で、作業室から搬出することで、掘削土砂の搬出作業の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ニューマチックケーソン工法の施工状況の例を示す断面図である。
図2】第一実施形態の作業室内を示す断面図である。
図3】土砂改質方法の手順を示すフローチャートである。
図4】第二実施形態の作業室内を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
第一実施形態では、ニューマチックケーソン工法において、掘削土砂の搬出作業の効率化を図る場合について説明する。図1にニューマチックケーソン工法における施工状況の概要を示す。
図1に示すように、ニューマチックケーソン工法では、ケーソン6の作業室61内において函内掘削機5により地盤を掘削する。掘削により発生した掘削土砂Eは、作業室61からアースバケット71を備えたクレーン7より地上部に搬出した後、土槽72に投入される。土槽72に投入された掘削土砂は、ダンプトラック等の搬送手段8の荷台に投下されて、当該搬送手段8により輸送される。
本実施形態では、高含水で粘着力がある掘削土砂を、作業室61内で改質したうえで搬出する。掘削土砂の改質は、土砂改質システムにより行う。
【0010】
図2に土砂改質システムの概要を示す。図2に示すように、土砂改質システム1は、改質材を作業室内に圧送する改質材圧送管路2と、改質材圧送管路2に接続された改質材散布手段3と、改質材散布範囲を照射する照明装置4とを備えている。
改質材圧送管路2は、作業室61の天井スラブ62を貫通している。改質材圧送管路2は、天井スラブ62に形成された埋設配管21と、埋設配管21の上端に接続された圧送管22とを備えている。埋設配管21と圧送管22との接続部には、逆止弁23が設けられている。
改質材散布手段3は、改質材圧送管路2を介して作業室61内の圧力よりも高い圧力で圧送された改質材を、作業室61内において掘削土砂Eに向けて散布可能である。改質材散布手段3は、埋設配管21の下端(作業室内側端部)に接続されていて、例えば埋設配管21の軸回りに回転可能である。改質材散布手段3は、遠隔操作により方向転換させることができる。改質材散布手段3には、圧縮空気を圧送する空気圧送管(図示せず)が接続されていて、改質材と圧縮空気とを合流させた状態で噴霧する。また、改質材散布手段3は、吐出量を制御可能なノズルを備えている。本実施形態の改質材散布手段3は、遠隔操作により散布方向を制御する。本実施形態では、改質材散布手段3の全体を方向転換させることで改質材を多方向に散布可能としたが、ノズルを回転可能にすることで改質材を多方向に散布可能としてもよい。また、異なる方向を向いた複数のノズルにより、改質材を多方向に向けて散布可能としてもよい。
改質材は、例えば、土砂を団粒化する凝集系固化材(アクリル系水溶性ポリマーを主成分としたエマルジョンなど)や吸水系固化材である。
照明装置4は、函内掘削機5の近傍の作業室天井スラブ62に固定されていて、掘削土砂を一時的に集積する領域を照射する。本実施形態の照明装置4は、複数のLEDからなり、掘削土砂Sの集積場所を取り囲むように光を照射する。
作業室61には、複数のカメラ(図示せず)が設けられていて、作業室61内の状況を確認することができる。函内掘削機5や改質材散布手段3の操作は、カメラの撮影画像を確認しながら遠隔操作により行う。
【0011】
以下、土砂改質システム1を利用して函内掘削機5よって掘削された掘削土砂の改質を作業室61内で行う土砂改質方法について説明する。図3に土砂改質方法の手順を示す。
土砂改質方法は、図3に示すように、掘削工程S1と、改質材散布工程S2と、土砂撹拌工程S3とを有している。
掘削工程S1は、函内掘削機5により地盤Gを掘削する工程である。函内掘削機5により掘削した掘削土砂Sは、図2に示すように、照明装置4により照査された範囲(照射範囲A)に集積する。函内掘削機5の操作は、作業室61内に設けられたカメラの映像を確認しながら、遠隔操作により行う。
改質材散布工程S2は、改質材Mを掘削土砂Sに向けて散布する工程である。本実施形態の改質材Mは、液体状である。改質材Mは、改質材圧送管路2を介して圧送し、改質材散布手段3を遠隔操作することで、照明装置4により照射された範囲に散布する。
土砂撹拌工程S3は、函内掘削機5を利用して改質材Mが散布された掘削土砂Sを撹拌する工程である。函内掘削機5の操作は、作業室61内に設けられたカメラの映像を確認しながら、遠隔操作により行う。
改質材Mと撹拌された掘削土砂Sは、アースバケット71に投入して、地上部(土層72)へ搬出する。
【0012】
以上、本実施形態の土砂改質システム1および土砂改質方法によれば、ケーソン6の底版(天井スラブ62)下に設けた作業室61内において掘削土砂に改質材を添加することが可能なため、地上部に移送された段階では、掘削土砂Sに改質材Mが混合されている。そのため、軟弱粘土層などの掘削により発生した掘削土砂であっても、改質された状態(例えば団粒化した状態)で地上に搬出される。改質された掘削土砂は、土砂ホッパー(土層72)に付着し難いため、土砂の搬出作業を効率的に行うことができる。
また、地上部に掘削土砂の改質を目的とした土砂ピットを設ける必要もない。すなわち、改質を目的とした土砂ピットを設ける用地を確保できない場合であっても、掘削土砂を改質した状態で搬出できる。
また、改質材圧送管路2は、中埋めコンクリートを打設するために予め作業室61の天井スラブ62に設けられた埋設配管21を使用することで、改質材圧送管路2を別途配管する手間を省略できる。このとき、埋設配管21と圧送管22との接続部に逆止弁23が設けられているため、改質材Mの逆流を抑制できる。
また、改質材散布範囲を照射する照明装置4を備えているため、改質材Mを散布する領域をカメラの画像を介して目視で確認できる。そのため、カメラなどの撮影画像を確認しながら改質剤散布手段3を遠隔操作する際に改質剤散布範囲を確認しやすい。
【0013】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、ニューマチックケーソン工法において、掘削土砂の搬出作業の効率化を図る場合について説明する(図1参照)。
本実施形態では、高含水で粘着力がある掘削土砂を、作業室内で改質したうえで搬出する。掘削土砂の改質は、土砂改質システム10により行う。
【0014】
図4に第二実施形態の土砂改質システム10の概要を示す。図4に示すように、土砂改質システム10は、改質材を作業室61内に圧送する改質材圧送管路2と、改質材圧送管路2に接続された改質材散布手段30とを備えている。
改質材圧送管路2は、作業室61の天井スラブ62を貫通している。改質材圧送管路2は、天井スラブ62に形成された埋設配管21に挿通した圧送管22からなる。
改質材散布手段30は、改質材圧送管路2を介して作業室61内の圧力よりも高い圧力で圧送された改質材を、作業室61内において掘削土砂Eに向けて散布可能である。改質材散布手段30は、圧送管22の下端(作業室内側端部)に接続されている。改質材散布手段30には、圧縮空気を圧送する空気圧送管(図示せず)が接続されていて、改質材と圧縮空気とを合流させた状態で噴霧する。空気圧送管は、埋設配管21を挿通して改質剤散布手段3に接続されている。改質材散布手段30の少なくとも一部は、可撓性配管など柔軟性のある素材で構成されていて、改質材散布手段30による改質材の散布方向の変更が可能である。
【0015】
以下、土砂改質システム10を利用して函内掘削機5よって掘削された掘削土砂Sの改質を作業室61内で行う土砂改質方法について説明する。
土砂改質方法は、掘削工程S1と、改質材散布工程S2と、土砂撹拌工程S3とを有している。
掘削工程S1は、函内掘削機5により土砂を掘削する工程である。函内掘削機5による掘削により発生した掘削土砂Sは、所定の領域に集積する。
改質材散布工程S2は、改質材Mを掘削土砂Sに向けて散布する工程である。改質材Mは、改質材圧送管路2を介して圧送し、作業室61内において作業員Pが改質材散布手段30を操作することで、掘削土砂Gに散布する。
土砂撹拌工程S3は、函内掘削機5を利用して改質材Mが散布された掘削土砂Sを撹拌する工程である。
改質材Mと撹拌された掘削土砂Sは、アースバケット71に投入して、地上部へ搬出する。
【0016】
以上、本実施形態の土砂改質システム10および土砂改質方法によれば、改質剤散布手段30が柔軟性のある素材で構成された部分を有しているため、作業員Pによって噴射方向を自在に変化させることができ、掘削土砂Sに対して満遍なく改質材Mを噴射できる。
この他の第二実施形態の土砂改質システム10および土砂改質方法の作用効果は、第一実施形態の土砂改質システム1および土砂改質方法の作用効果と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0017】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 土砂改質システム
2 改質材圧送管路
21 埋設配管
22 圧送管
23 逆止弁
3 改質剤散布手段
4 照明装置
5 函内掘削機
6 ケーソン
61 作業室
62 天井スラブ
A 照射範囲
E 掘削土砂
G 地盤
M 改質材
P 作業員
S1 掘削工程
S2 改質剤散布工程
S3 土砂撹拌工程
図1
図2
図3
図4