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特開2024-96551光学モジュール、画像投影用光学エンジン、グラスディスプレイ、検体検査装置、光学モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096551
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】光学モジュール、画像投影用光学エンジン、グラスディスプレイ、検体検査装置、光学モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20240709BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240709BHJP
   G02B 27/02 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
G02B26/08 E
G02B26/10 104Z
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000072
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】福澤 英明
(72)【発明者】
【氏名】水野 友人
(72)【発明者】
【氏名】小巻 壮
(72)【発明者】
【氏名】アルダラン・ヘシュマティ
(72)【発明者】
【氏名】林 杰曙
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
2H199
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC06
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141ME25
2H141MF28
2H141MZ03
2H141MZ16
2H141MZ18
2H141MZ22
2H141MZ24
2H199CA12
2H199CA29
2H199CA34
2H199CA87
(57)【要約】
【課題】レーザー発光素子とミラーとをそれぞれ基板に搭載した後に、光軸調整を行うことが可能な光学モジュール、およびこれを用いた画像投影用光学エンジン、グラスディスプレイ、検体検査装置、光学モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】第1基板の一主面にレーザー発光素子が形成されたレーザー光源部と、第2基板の一主面に光走査ミラー素子が形成されたミラー部とを有し、前記第1基板と前記第2基板とは、金属接合層を介して接合されており、前記レーザー発光素子から出射されたレーザー光を前記光走査ミラー素子で反射させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の一主面にレーザー発光素子が形成されたレーザー光源部と、
第2基板の一主面に光走査ミラー素子が形成されたミラー部とを有し、
前記第1基板と前記第2基板とは、金属接合層を介して接合されており、
前記レーザー発光素子から出射されたレーザー光を前記光走査ミラー素子で反射させることを特徴とする光学モジュール。
【請求項2】
前記金属接合層は、少なくとも金、またはスズを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項3】
前記第1基板および前記第2基板は、それぞれ、シリコン基板、酸化アルミニウム基板、窒化アルミニウム基板、石英基板のうち、いずれか1つから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学モジュール。
【請求項4】
前記レーザー発光素子は、380nm以上、800nm未満の波長範囲の可視光域レーザー光を出射することを特徴とする請求項1または2に記載の光学モジュール。
【請求項5】
前記レーザー発光素子は、800nm以上、1800nm未満の波長範囲の近赤外域レーザー光を出射することを特徴とする請求項1または2に記載の光学モジュール。
【請求項6】
前記第1基板には前記レーザー発光素子に接続される第1配線層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学モジュール。
【請求項7】
前記第2基板には前記光走査ミラー素子に接続される第2配線層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学モジュール。
【請求項8】
前記光走査ミラー素子はMEMSデバイスであり、反射角度を任意に調整可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学モジュール。
【請求項9】
前記レーザー光源部は複数形成され、それぞれの前記レーザー光源部を構成する前記第1基板が、前記金属接合層を介して、それぞれ前記ミラー部を構成する前記第2基板に接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学モジュール。
【請求項10】
前記光走査ミラー素子の鏡面部の表面は、中心点を通る断面が放物線状を成す凹面鏡であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学モジュール。
【請求項11】
請求項1または2に記載の光学モジュールと、
前記第1基板と前記第2基板とを載置する1つの共通基板と、
前記共通基板に形成され、前記レーザー発光素子および前記光走査ミラー素子を制御する集積回路と、を有することを特徴とする画像投影用光学エンジン。
【請求項12】
請求項11に記載の画像投影用光学エンジンと、
眼鏡状のフレームと、を有し、
前記画像投影用光学エンジンは、前記フレームのテンプル部に配されることを特徴とするグラスディスプレイ。
【請求項13】
請求項11に記載の画像投影用光学エンジンと、
検査用の検体を載置するステージと、を有し、
前記画像投影用光学エンジンから前記レーザー光を前記ステージに向けて照射させることを特徴とする検体検査装置。
【請求項14】
請求項1または2に記載の光学モジュールの製造方法であって、
前記第1基板、または前記第2基板のうち、少なくとも一方の端面に前記金属接合層の構成材料からなる接合材料をディップする接合材料形成工程と、
前記接合材料を挟んで前記レーザー光源部と前記ミラー部とを隣接させて配置する配置工程と、
前記レーザー発光素子を発光させたレーザー光を前記光走査ミラー素子で反射させ、反射させたレーザー光を光学検出装置に入射させるとともに、前記レーザー光源部と前記ミラー部との相対位置を調整して、前記レーザー光の光軸を前記光走査ミラー素子の中心位置に合わせる調整工程と、
熱線を照射して前記接合材料を溶解し、前記第1基板と前記第2基板とを前記調整工程での調整位置で接合する接合工程と、
を有することを特徴とする光学モジュールの製造方法。
【請求項15】
前記熱線は、YAGレーザー装置から照射される赤外レーザー光であることを特徴とする請求項14に記載の光学モジュールの製造方法。
【請求項16】
前記接合工程において、前記熱線は、前記第2基板の端面に照射させることを特徴とする請求項14に記載の光学モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学モジュール、画像投影用光学エンジン、グラスディスプレイ、検体検査装置、および光学モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AR(Augmented Reality:拡張現実)グラス、VR(Virtual Reality:仮想現実)グラスは小型のウェアラブルデバイスとして期待されている。このようなデバイスにおいて、フルカラーの可視光を発光する発光素子は、高品質な画像を描画するための中心的な素子の1つである。かかるデバイスにおいては、発光素子が例えば可視光を表現するRGBの3色の各々の強度を独立に高速に変調し、所望の色で動画を表現している。
【0003】
このような発光素子として、特許文献1には可視光のレーザーを導波路に入射して、各色のレーザーチップの出射強度を電流により制御することによりカラーの動画を出射する発光素子が開示されている。また、引用文献2には、光ファイバを介して電気光学効果を有する基板に形成された導波路を有する外部変調器にレーザー光を入射して、外部変調器によりRGBの3色の各々の強度を独立に変調する変調器が開示されている。
【0004】
ARグラス、VRグラスのようなウェアラブルデバイスにおいては、発光モジュールは通常の眼鏡型のサイズに各機能が収まるように小型化されることが普及に対するカギとなっている。こうしたウェアラブルデバイスに適用可能な小型化された発光モジュールは、発光素子から出射されたレーザー光を、導波路などを介することなくミラーによって表示面に向けて直接反射させる構成が考えられている。例えば、特許文献3では、1つの共通の基板上に、レーザー発光素子とミラーとを搭載した光学モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-86976号公報
【特許文献2】特許第6728596号公報
【特許文献3】米国特許公開第2020/0110331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示された光学モジュールは、1つの共通基板上にレーザー発光素子とミラーと設け、このミラーを基板に形成した傾斜面に固着させた構成であるため、光学モジュールの製造後にミラーに入射するレーザー光の光軸位置を調整することはできなかった。このため、光学モジュールをデバイスに搭載する際に、レーザー光を表示面の所定位置に出射させるために、光学モジュールの搭載位置の調整が煩雑になるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、レーザー発光素子とミラーとをそれぞれ基板に搭載した後に、光軸調整を行うことが可能な光学モジュール、およびこれを用いた画像投影用光学エンジン、グラスディスプレイ、検体検査装置、光学モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)本発明の第1態様に係る光学モジュールは、第1基板の一主面にレーザー発光素子が形成されたレーザー光源部と、第2基板の一主面に光走査ミラー素子が形成されたミラー部とを有し、前記第1基板と前記第2基板とは、金属接合層を介して接合されており、前記レーザー発光素子から出射されたレーザー光を前記光走査ミラー素子で反射させる。
【0009】
(2)本発明の第2態様に係る光学モジュールは、第1態様において、前記金属接合層は、少なくとも金、またはスズを含んでいてもよい。
【0010】
(3)本発明の第3態様に係る光学モジュールは、第1又は第2態様において、前記第1基板および前記第2基板は、それぞれ、シリコン基板、酸化アルミニウム基板、窒化アルミニウム基板、石英基板のうち、いずれか1つから構成されていてもよい。
【0011】
(4)本発明の第4態様に係る光学モジュールは、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記レーザー発光素子は、380nm以上、800nm未満の波長範囲の可視光域レーザー光を出射してもよい。
【0012】
(5)本発明の第5態様に係る光学モジュールは、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記レーザー発光素子は、800nm以上、1800nm未満の波長範囲の近赤外域レーザー光を出射してもよい。
【0013】
(6)本発明の第6態様に係る光学モジュールは、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記第1基板には前記レーザー発光素子に接続される第1配線層が形成されていてもよい。
【0014】
(7)本発明の第7態様に係る光学モジュールは、第1から第6のいずれか1つの態様において、前記第2基板には前記光走査ミラー素子に接続される第2配線層が形成されていてもよい。
【0015】
(8)本発明の第8態様に係る光学モジュールは、第1から第7のいずれか1つの態様において、前記光走査ミラー素子はMEMSデバイスであり、反射角度を任意に調整可能であってもよい。
【0016】
(9)本発明の第9態様に係る光学モジュールは、第1から第8のいずれか1つの態様において、前記レーザー光源部は複数形成され、それぞれの前記レーザー光源部を構成する前記第1基板が、前記金属接合層を介して、それぞれ前記ミラー部を構成する前記第2基板に接合されていてもよい。
【0017】
(10)本発明の第10態様に係る光学モジュールは、第1から第9のいずれか1つの態様において、前記光走査ミラー素子の鏡面部の表面は、中心点を通る断面が放物線状を成す凹面鏡であってもよい。
【0018】
(11)本発明の第11態様に係る画像投影用光学エンジンは、第1から第10のいずれか1つの態様の光学モジュールと、前記第1基板と前記第2基板とを載置する1つの共通基板と、前記共通基板に形成され、前記レーザー発光素子および光走査ミラー素子を制御する集積回路と、を有する。
【0019】
(12)本発明の第12態様に係るグラスディスプレイは、第11態様の画像投影用光学エンジンと、眼鏡状のフレームと、を有し、前記画像投影用光学エンジンは、前記フレームのテンプル部に配される。
【0020】
(13)本発明の第13態様に係る検体検査装置は、第11態様の画像投影用光学エンジンと、検査用の検体を載置するステージと、を有し、前記画像投影用光学エンジンから前記レーザー光を前記ステージに向けて照射させる。
【0021】
(14)本発明の第14態様に係る光学モジュールの製造方法は、第1から第10のいずれか1つの態様の光学モジュールの製造方法であって、前記第1基板、または前記第2基板のうち、少なくとも一方の端面に前記金属接合層の構成材料からなる接合材料をディップする接合材料形成工程と、前記接合材料を挟んで前記レーザー光源部と前記ミラー部とを隣接させて配置する配置工程と、前記レーザー発光素子を発光させたレーザー光を前記光走査ミラー素子で反射させ、反射させたレーザー光を光学検出装置に入射させるとともに、前記レーザー光源部と前記ミラー部との相対位置を調整して、前記レーザー光の光軸を前記光走査ミラー素子の中心位置に合わせる調整工程と、熱線を照射して前記接合材料を溶解し、前記第1基板と前記第2基板とを前記調整工程での調整位置で接合する接合工程と、を有する。
【0022】
(15)本発明の第15態様に係る光学モジュールの製造方法は、第14態様において、前記熱線は、YAGレーザー装置から照射される赤外レーザー光である。
【0023】
(16)本発明の第16態様に係る光学モジュールの製造方法は、第14又は15態様において、前記接合工程において、前記熱線は、前記第2基板の端面に照射させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、レーザー発光素子とミラーとをそれぞれ基板に搭載した後に、光軸調整を行うことが可能な光学モジュール、およびこれを用いた画像投影用光学エンジン、グラスディスプレイ、検体検査装置、光学モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態の光学モジュールを示す外観斜視図である。
図2図1に示す光学モジュールの断面図である。
図3】本実施形態の光学モジュールの製造方法を段階的に示したフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態の光学モジュールを示す外観斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態の光走査ミラー素子の作用を示す模式図である。
図6】本発明の第2実施形態の他の構成の光走査ミラー素子の作用を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態の画像投影用光学エンジンを示す外観斜視図である。
図8】本発明の一実施形態のグラスディスプレイを示す要部拡大斜視図である。
図9】本発明の一実施形態の検体検査装置を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した一実施形態である光学モジュール、およびこれを用いた画像投影用光学エンジン、グラスディスプレイ、検体検査装置、光学モジュールの製造方法について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0027】
[光学モジュール:第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の光学モジュールを示す外観斜視図である。また、図2は、図1に示す光学モジュールの断面図である。
本実施形態の光学モジュール10は、レーザー光源部11と、ミラー部12と、金属接合層13とを有している。
【0028】
レーザー光源部11は、第1基板(サブキャリア)21と、この第1基板21の一主面21aに形成されるレーザー発光素子23と、を有している。
第1基板21は、シリコン(Si)基板、酸化アルミニウム(Al)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、石英(SiO)基板などから構成されている。こうした第1基板21は、ミラー部12を構成する第2基板22と同一の材料を用いても良く、第2基板22とは異なる材料を用いてもよい。
【0029】
レーザー発光素子23は、レーザー光Lを出射可能な素子、例えば、LEDから構成されている。レーザー発光素子23は、レーザー光Lを入射させる対象物に応じて、任意の波長のレーザー光Lを出射することができればよい。
【0030】
例えば、レーザー発光素子23は、波長が380nm以上、800nm未満の波長範囲の赤色レーザー光、緑色レーザー光、青色レーザー光など、可視光域のレーザー光を出射可能な可視光LED素子を用いることができる。また、例えば、レーザー発光素子23は、800nm以上、1800nm未満の波長範囲の近赤外域のレーザー光を出射可能な赤外線LED素子を用いることもできる。
【0031】
レーザー発光素子23は、第1基板21に対して、例えば金属層27を介して接合されている。金属層27は、例えば、第1金属層27aと、第2金属層27bの2層の金属層から構成されていればよい。こうした金属層27は、例えばスパッタ、蒸着、ペースト化した金属の塗布等の公知の手法によって形成可能である。
【0032】
第1金属層27aは、例えば、金(Au)とスズ(Sn)との合金、スズ(Sn)と銅(Cu)との合金、インジウム(In)とビスマス(Bi)との合金及びスズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系はんだ合金(SAC)等から構成されていればよい。第2金属層27bは、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びニッケル(Ni)等から構成されていればよい。
【0033】
第1基板21の一主面21aには、一端側がレーザー発光素子23に接続される第1配線層25が形成されている。第1配線層25は、レーザー発光素子23に駆動電流を供給するための電気配線であり、例えば、金、銀、アルミニウムなどからなる金属薄膜を所定のパターンで形成したパターン配線であればよい。こうした第1配線層25の他端側には、第1電極(電極パッド)28が形成されていればよい。第1電極(電極パッド)28は、例えば、外部の駆動電源や制御用の集積回路に接続される。
【0034】
ミラー部12は、第2基板(サブキャリア)22と、この第2基板22の一主面22aに形成される光走査ミラー素子24と、を有している。
【0035】
第2基板22は、シリコン(Si)基板、酸化アルミニウム(Al)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、石英(SiO)基板などから構成されている。第2基板22は、一主面22aに対して所定の角度、例えば45°で傾斜した傾斜面22bを有する傾斜部22Sを有している。
【0036】
傾斜部22Sの傾斜部22Sは、傾斜面22bの一部が一主面22aよりも厚み方向に深い位置まで広がるように形成されている。こうした傾斜部22Sの傾斜面22bに、光走査ミラー素子24が載置される。なお、傾斜面22bの一主面22aに対する傾斜角度は、例えば、10°~70°の範囲内であればよい。
【0037】
光走査ミラー素子(MEMSミラー)24は、例えば、シリコンウェーハを微細加工することによって得られるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスである。本実施形態の光走査ミラー素子24は、基体24aの中央に配された円形の鏡面部24bと、この鏡面部24bを支持する梁部24cと、梁部24cを屈曲させる印加電極(図示略)とを有している。鏡面部24bの表面(反射面)は、例えば、平面状に形成されている。なお、鏡面部24bは、本実施形態では円形に形成されているが、円形に限定されるものではなく、任意の形状、例えば矩形や多角形形状に形成されていてもよい。
【0038】
こうした光走査ミラー素子24は、印加電極に所定の電圧を印加することによって静電力を発生させる。そして、この静電力を発生させる位置に応じて梁部24cを局所的に屈曲させ、これにより、梁部24cに支持された鏡面部24bの角度を2次元的(水平方向(X方向)および垂直方向(Y方向))に変化させる。こうした鏡面部24bの角度の変化によって、鏡面部24bで反射されるレーザー光Lの反射角度を変化させる。即ち、鏡面部24bでレーザー光Lを走査させて、レーザー光Lによる表示面に任意の文字や図形を表示させることができる。
【0039】
第2基板22の一主面22aには、一端側が光走査ミラー素子24に接続される第2配線層26が形成されている。第2配線層26は、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの角度を変化させる駆動電流を供給するための電気配線であり、例えば、金、銀、アルミニウムなどからなる金属薄膜を所定のパターンで形成したパターン配線であればよい。こうした第2配線層26の他端側には、第2電極(電極パッド)29が形成されていればよい。第2電極(電極パッド)29は、例えば、外部の駆動電源や制御用の集積回路に接続される。
【0040】
レーザー光源部11とミラー部12とは隣接して配されている。そして、レーザー光源部11を構成する第1基板21と、ミラー部12を構成する第2基板22とは、互いに金属接合層13を介して直接接合されている。即ち、レーザー光源部11とミラー部12とは、金属接合層13によって一体化され、光学モジュール10を構成している。
【0041】
金属接合層13は、第1基板21の構成材料と第2基板22の構成材料に対して共に接合可能な金属材料、例えば、少なくとも金、またはスズを含む金属材料から構成される。より具体的には、金系はんだ材として、金スズはんだ(Au-Sn)、金ゲルマニウムはんだ(Au-Ge)、金シリコンはんだ(Au-Si)などが挙げられる。また、スズ系はんだ材として、共晶はんだ(Sn-Pb)、鉛フリーはんだ(Sn-Ag)、銅スズはんだ(Sn-Cu)などが挙げられる。これら金属接合層13の構成材料は、第1基板21や第2基板22の構成材料に応じて適宜選択されればよい。
【0042】
なお、金属接合層13は、1層に限定されるものではない。例えば、第1基板21と第2基板22とが互いに異なる材料からなる場合、それぞれの基板材料の接合に最適な金属材料を用いた2層からなる金属接合層によって、第1基板21と第2基板22とを接合することもできる。あるいは、互いに異なる材料によって3層以上の金属接合層を形成することもできる。
【0043】
[光学モジュールの製造方法]
以上のような構成の第1実施形態の光学モジュールの製造方法、および第1実施形態の光学モジュールの作用、効果を説明する。
図3は、本実施形態の光学モジュールの製造方法を段階的に示したフローチャートである。
【0044】
第1実施形態の光学モジュール10を製造する際には、まず、第1基板21の一主面21aに金属層27を介してレーザー発光素子23を接合する。また、第1基板21の一主面21aに、第1配線層25、および第1電極28を形成する。これにより、レーザー光源部11を得る(レーザー光源部形成工程S1)。
【0045】
また、第2基板22を構成する傾斜部22Sの傾斜面22bに、例えば接着層を介して光走査ミラー素子24を接合する。また、第2基板22の一主面22aに、第2配線層26、および第2電極29を形成する。これにより、ミラー部12を得る(ミラー部形成工程S2)。
【0046】
次に、レーザー光源部11を構成する第1基板21、またはミラー部12を構成する第2基板22の端面のうち、少なくとも一方、または両方に、金属接合層13の構成材料からなる接合材料をディップする。本実施形態ではミラー部12を構成する第2基板22の端面に接合材料をディップしている(接合材料形成工程S3)。
【0047】
次に、接合材料を挟んでレーザー光源部11とミラー部12とを隣接させて配置(仮置き)する(配置工程S4)。
【0048】
次に、レーザー発光素子23に第1配線層25を介して電源を接続してレーザー発光素子23を駆動させ、ミラー部12を構成する光走査ミラー素子24の鏡面部24bに向けてレーザー光Lを照射させる。また、鏡面部24bで反射されたレーザー光Lを光学検出装置、例えばフォトディテクターに入射させる。そして、この状態で第1基板21と第2基板22の互いの端面を接近させていき、レーザー光Lの光軸が光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心位置に合致するように、フォトディテクターの測定値を参照しつつ、レーザー光源部11とミラー部12との相対位置を調整する(調整工程S5)。
【0049】
そして、調整工程S5で調整された位置において、第2基板22の端面に向けて熱線を照射して接合材料を溶解する。そして第1基板21と第2基板22の端面同士を、溶解した接合材料が冷却固化されものからなる金属接合層13を介して接合する(接合工程S6)。こうした接合工程S6で用いる熱線は、例えば、YAGレーザー装置から照射される波長1064μmを主体とした固体レーザー光であればよい。
【0050】
以上のような工程を経て、第1実施形態の光学モジュール10を製造することができる。
第1実施形態の光学モジュール10によれば、レーザー発光素子23を載置する基板(第1基板21)と光走査ミラー素子24を載置する基板(第2基板22)とを互いに別個の基板とし、こうした基板どうしを金属接合層13を介して接合する構成であるため、製造時に第1基板21と第2基板22との相対位置を調整して、レーザー光Lの光軸が光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心位置に合致するように、レーザー光Lの光軸位置のアライメントを行うことができる(アクティブアライメント)。これにより、例えば、レーザー発光素子とミラー素子とを1つの共通基板に載置した従来の光学モジュールと比較して、強い光量を保ったレーザー光Lを、高い位置精度で照射することが可能な光学モジュール10を得ることができる。
【0051】
また、レーザー発光素子23を載置する基板(第1基板21)と光走査ミラー素子24を載置する基板(第2基板22)とを互いに別個の基板として構成するため、後述する第2実施形態の光学モジュールの製造も容易である。
【0052】
[光学モジュール:第2実施形態]
次に、第2実施形態の光学モジュールの構成を説明する。第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図4は、本発明の第2実施形態の光学モジュールを示す外観斜視図である。
【0053】
第2実施形態の光学モジュール30は、3つのレーザー光源部31A,31B,31Cをそれぞれ構成する第1基板41A,41B,41Cが、1つのミラー部32を構成する第2基板42に対して、それぞれ金属接合層13を介して接合された構成となっている。
【0054】
レーザー光源部31Aを構成するレーザー発光素子43Aは、例えば、赤色レーザー光RLを出射する赤色LEDから構成されている。また、レーザー光源部31Bを構成するレーザー発光素子43Bは、例えば、緑色レーザー光GLを出射する緑色LEDから構成されている。更に、レーザー光源部31Cを構成するレーザー発光素子43Cは、例えば、青色レーザー光BLを出射する青色LEDから構成されている。
【0055】
これらレーザー光源部31A,31B,31Cからそれぞれ出射されるレーザー光は、ミラー部32を構成する光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心に向けて集光させている。そして、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの表面は、例えば、凹面状の反射面(凹面鏡)となっている。
【0056】
より詳しくは、図5に示すように、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心を通る断面が放物線状を成す凹面鏡となっている。このように、レーザー光の出射位置が互いに異なるレーザー光源部31A,31B,31Cからそれぞれ出射されるレーザー光RL,GL,BLは、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの表面に対して、互いに異なる角度で入射する。しかしながら、本実施形態のように、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの表面を、凹面状の反射面(凹面鏡)にすることで、互いに異なる角度で入射するレーザー光RL,GL,BLを、互いに平行な平行光として反射させることができる。
【0057】
これにより、レーザー光RL,GL,BLのそれぞれの出射位置が異なっていても、鏡面部24bの投影位置の物理的距離、位置関係が固定している限り、任意の1領域に向けて、互いに平行なレーザー光RL,GL,BLを照射されるようにすることが可能となる。
【0058】
こうした第2実施形態の光学モジュール30によれば、レーザー光源部31A,31B,31Cをそれぞれ任意のタイミングで走査させることで、光走査ミラー素子24の鏡面部24bで反射されるレーザー光WLによって、任意の色調の画像、例えば、フルカラー画像を外部の表示面に表示させることができる。
【0059】
そして、こうした光学モジュール30においても、第1基板41A,41B,41Cが、1つの第2基板42に対して、それぞれ金属接合層13を介して接合された構成にすることで、光学モジュール30の製造時に、レーザー光源部31A,31B,31Cと、光走査ミラー素子24との光軸位置のアライメントを行うことができる(アクティブアライメント)。これにより、3つのレーザー光RL,GL,BLを、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心部に向けて、正確に集光させることが可能になり、鮮明でブレの無いフルカラー画像を外部の表示面に表示させることが可能になる。
【0060】
また、第2実施形態の光学モジュール30によれば、レーザー光源部31A,31B,31Cからそれぞれ出射されるレーザー光を、直接、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心部に集光させる構成であるため、従来のように、複数のレーザー光を合波させるための光導波路ユニットなどが不要になり、コンパクトで軽量なフルカラー画像対応の光学モジュール30を実現することができる。
【0061】
なお、第2実施形態の変形例として、図6に示すように、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心を通る断面が放物線状を成す凹面鏡にすれば、R,G,B3つのレーザー光源部を2組有する構成にして、一方の組のレーザー光源部31aから3つのレーザー光RL1,GL1,BL1を出射させて鏡面部24bの中心付近の一領域で反射させ、他方の組のレーザー光源部31bから3つのレーザー光RL2,GL2,BL2を出射させて鏡面部24bの中心付近の他の一領域で反射させる構成にすることもできる。
【0062】
これにより、互いに平行なレーザー光RL1,GL1,BL1、およびRL2,GL2,BL2からなる、互いに平行な2組のRGBのレーザー光を、外部の表示面などに照射することができる。
【0063】
[画像投影用光学エンジン]
次に、本発明の一実施形態の画像投影用光学エンジンの構成を説明する。なお、第1実施形態の光学モジュールと同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図7は、本発明の一実施形態の画像投影用光学エンジンを示す外観斜視図である。
【0064】
本実施形態の画像投影用光学エンジン50は、第1実施形態の光学モジュール10と、集積回路51と、共通基板52とを有している。
集積回路51は、レーザー光源部11を構成するレーザー発光素子23(図1、2を参照)の発光制御や、ミラー部12を構成する光走査ミラー素子24(図1、2を参照)の角度制御を行う。
【0065】
こうした画像投影用光学エンジン50によれば、小型化されたコンパクトな形状のレーザー画像投影手段として機能する。例えば、ウェアラブルデバイスにこうした画像投影用光学エンジン50を組み込むことで、違和感のない程度の着用感を確保しつつ、鮮明な画像投影が可能なウェアラブルデバイスを実現することができる。
【0066】
[グラスディスプレイ]
次に、本発明の一実施形態の画像投影用光学エンジンの構成を説明する。なお、前述した実施形態の画像投影用光学エンジンと同様の構成部分には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図8は、本発明の一実施形態のグラスディスプレイを示す要部拡大斜視図である。
【0067】
本実施形態のグラスディスプレイ60は、前述した実施形態の画像投影用光学エンジン50と、眼鏡状のフレーム61と、を有している。
フレーム61を構成するテンプル部62には、小型化された画像投影用光学エンジン50が内蔵されている。
【0068】
こうした画像投影用光学エンジン50は、フレーム61を構成するフロント枠63に支持されたグラス64に向けて、画像光を構成するレーザー光を出射させる。グラス64は、例えばハーフミラーであり、画像投影用光学エンジン50から出射されたレーザー光Lによる画像が投影される。グラスディスプレイ60の着用者は、グラス64の内側面に投影された画像を直接観察することができる。
【0069】
このように、本実施形態のグラスディスプレイ60によれば、コンパクトで軽量な画像投影用光学エンジン50を用いることによって、スペースに制約のある眼鏡状のフレーム61のテンプル部62を大きく膨らませることなく、良好な装着感を維持したグラスディスプレイ60を実現することができる。
【0070】
[検体検査装置]
次に、本発明の一実施形態の検体検査装置の構成を説明する。なお、前述した実施形態の画像投影用光学エンジンと同様の構成部分には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図9は、本発明の一実施形態の検体検査装置を示す要部拡大斜視図である。
【0071】
本実施形態の検体検査装置70は、前述した実施形態の画像投影用光学エンジン50と、検査用の検体を載置するステージ71と、を有している。
画像投影用光学エンジン50は、検体に作用する波長のレーザー光、例えば、800nm以上、1800nm未満の波長範囲の近赤外域レーザー光をステージ71に向けて出射する。ステージ71に載置された検体Mは、画像投影用光学エンジン50によって照射された近赤外域レーザー光Lによって、特定の反応が生じる。こうしたレーザー光による反応後の検体を分析することによって、検体を組成や病変などを分析することが可能になる。
【0072】
本実施形態の検体検査装置70によれば、コンパクトで軽量な画像投影用光学エンジン50を用いることによって、小型で低コストな、生体の光分析などを行う検体検査装置70を実現することができる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
10…光学モジュール
11…レーザー光源部
12…ミラー部
13…金属接合層
21…第1基板(サブキャリア)
22…第2基板(サブキャリア)
23…レーザー発光素子
24…光走査ミラー素子(MEMSミラー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9