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特開2024-96555マスターバッチ、及び、発泡成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096555
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】マスターバッチ、及び、発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20240709BHJP
   C08J 9/06 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08J3/22 CER
C08J9/06 CEZ
C08L101/00
C08L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000100
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲谷 文祐
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA18
4F070AA32
4F070AB08
4F070AC16
4F070AC43
4F070AC47
4F070AC83
4F070AC88
4F070AE02
4F070AE12
4F070FB03
4F070FC06
4F074AA32D
4F074AA33D
4F074AA36
4F074AA48A
4F074AA65
4F074AD11
4F074AG02
4F074BA03
4F074BA13
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA35
4F074DA54
4J002AA001
4J002BC061
4J002BG042
4J002BG051
4J002BG052
4J002CD162
4J002CF032
4J002CF042
4J002CF192
4J002DE206
4J002DF006
4J002EA016
4J002EH097
4J002EH147
4J002EQ016
4J002ER016
4J002ES006
4J002EW047
4J002FB286
4J002FD022
4J002FD027
4J002FD326
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】発泡剤と加工助剤を含有しており、熱可塑性樹脂に配合することで良好な発泡成形体を作製可能なマスターバッチの提供。
【解決手段】化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)、重量平均分子量が150,000~7,000,000である第一重合体(b1)を含む加工助剤(B)、及び、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ化植物油、及び、アクリルオリゴマー系可塑剤からなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤(C)を含有するマスターバッチ。前記マスターバッチ中の前記可塑剤(C)の含有割合が10~60重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターバッチであって、
化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)、
重量平均分子量が150,000~7,000,000である第一重合体(b1)を含む加工助剤(B)、及び、
フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ化植物油、及び、アクリルオリゴマー系可塑剤からなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤(C)を含有し、
前記マスターバッチ中の前記可塑剤(C)の含有割合が10~60重量%である、マスターバッチ。
【請求項2】
前記第一重合体(b1)が、第一重合体(b1)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~99重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物1~50重量%を構成単量体として含む重合体である、請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
重量平均分子量が15,000~120,000である第三重合体(d1)を含む流動性改良剤(D)を更に含有する、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
【請求項4】
ペレット状である、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
【請求項5】
化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)、
重量平均分子量が150,000~7,000,000である第一重合体(b1)を含む加工助剤(B)、及び、
フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ化植物油、及び、アクリルオリゴマー系可塑剤からなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤(C)を、
マスターバッチ中の前記可塑剤(C)の含有割合が10~60重量%となる量で、
前記化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)が分解又は膨張しない温度にて混錬する工程を含む、マスターバッチの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のマスターバッチを、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合し、発泡成形用樹脂組成物を得る工程と、該樹脂組成物を発泡成形する工程とを含む、発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
前記非オレフィン系熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂、AS系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、及びポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチ及びその製造方法、並びに、該マスターバッチを利用した発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量の低減を目的とした軽量化や断熱性能付与を目的として、発泡製品のニーズが高まっている。熱可塑性樹脂の発泡成形体は、建材、車両等様々な分野において、軽量化、断熱性、切断、釘打ち等の二次加工性に優れる特性を活かし、幅広く使用されている。
【0003】
発泡成形には、熱可塑性樹脂の中でも非晶性樹脂が適しており、PVC、AS系樹脂、ポリスチレン等の汎用樹脂が多く使用されている。
【0004】
発泡成形としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、重曹、熱膨張型マイクロカプセル等の発泡剤を使用し、発泡剤の熱分解または膨張により発泡させる化学または物理発泡法や、発泡スチロールに代表されるビーズ状の樹脂にガスを含浸させ、後加熱で発泡させるビーズ法がある。
【0005】
上記の化学または物理発泡に使用する熱可塑性樹脂には、化学発泡剤やマイクロカプセルの熱分解または膨張に樹脂が追従して破泡しないよう、溶融張力を付与する必要がある。一般的には、PMMA系やSAN系等の高分子物(以下、加工助剤ともいう)を樹脂に添加・混練することで溶融張力を付与した上で、化学発泡剤又はマイクロカプセルを添加し、又は両成分を同時に予備混練したコンパウンドを使用して、押出成形または射出成形で発泡成形体を得ている。
【0006】
近年は環境に配慮して、リサイクル材料の使用が推奨又は義務化される場合がある。リサイクル材料は成形品の粉砕物であることが多いため、PVCなどの樹脂では予備混練時に発泡剤と加工助剤を同時にコンパウンドすることが難しい。
【0007】
予備混練を行わない場合はペレットまたは粉砕物に粉体の加工助剤および発泡剤を混合し成形するが、形状・比重の違いにより分級が発生し、安定した成形品が得ることが困難である。分級の予防方法として成型機で混合する方法もあるが、使用する添加剤が粉体であるため、飛散などの作業環境の悪化が課題となっている。
【0008】
一方、発泡剤をオレフィン樹脂等のキャリアレジンに混合した発泡剤マスターバッチが市販されている。しかし、このような発泡剤マスターバッチには加工助剤は含まれていない。
【0009】
特許文献1では、熱膨張性マイクロカプセルと、重量平均分子量が8.000~350,000であるアクリル系樹脂と、重量平均分子量が1,000~20,000である可塑剤とを含む、ポリカーボネート系樹脂用のマスターバッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2019/208653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来知られている発泡成形体の製造においては、加工助剤又は加工助剤及び発泡剤を予備混練にて樹脂に練り込んだコンパウンドを使用するか、又は発泡剤マスターバッチの併用が必要であった。
【0012】
しかし、事前に発泡剤がコンパウンドされている場合は、組成上決められた発泡倍率しか得ることができず、各発泡倍率に応じた専用設計が必要となり、発泡倍率の調整が困難であった。
【0013】
また、発泡成形に必要な溶融張力を付与できる加工助剤と発泡剤を安定的に添加、分散させることが必要であるにも関わらず、特に近年要求の多いリサイクル材料をマトリックス樹脂として使用する場合、両成分を樹脂中に均一に分散させることが困難であった。発泡剤マスターバッチを使用しても加工助剤の均一な分散は達成できない。
【0014】
そこで、発泡剤と加工助剤の双方を含むマスターバッチを使用することを検討したが、加工助剤は高分子量で融点が高いため、発泡剤が分解又は膨張しない低温では加工助剤と発泡剤の混錬が困難で、発泡剤と加工助剤の双方を含むマスターバッチを製造することはできなかった。
【0015】
本発明は、上記現状に鑑み、発泡剤と加工助剤を含有しており、熱可塑性樹脂に配合することで良好な発泡成形体を作製可能なマスターバッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が鋭意研究を行った結果、発泡剤と加工助剤に対し、一定量の可塑剤を添加することにより、発泡剤が分解又は膨張しない低温での混練が可能となり、マスターバッチの作製が可能となることを見出し、本発明に至った。
即ち本発明は、マスターバッチであって、
化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)、
重量平均分子量が150,000~7,000,000である第一重合体(b1)を含む加工助剤(B)、及び、
フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ化植物油、及び、アクリルオリゴマー系可塑剤からなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤(C)を含有し、
前記マスターバッチ中の前記可塑剤(C)の含有割合が10~60重量%である、マスターバッチに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発泡剤と加工助剤を含有しており、熱可塑性樹脂に配合することで良好な発泡成形体を作製可能なマスターバッチを提供することができる。発泡剤を分解又は膨張させることなく、発泡剤と加工助剤を含有するマスターバッチを提供することができる。
【0018】
本発明の好適な態様によると、AS系樹脂、PVC等の非オレフィン系熱可塑性樹脂から構成される、一般的なバージンペレットや粉砕物に対して、前記マスターバッチを混合し発泡成形することにより、発泡倍率が高く、表面性が良好な発泡成形体を得ることができる。また、前記マスターバッチの添加量を調節することで、必要な発泡倍率を容易に達成することができる。
本発明の好適な態様によると、前記マスターバッチはペレット状のものであるため、飛散しにくく、作業環境が改善され、他の成形品へのコンタミを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
本開示に係るマスターバッチは、少なくとも、化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)、重量平均分子量が150,000~7,000,000である第一重合体(b1)を含む加工助剤(B)、及び、可塑剤(C)を含有する。当該マスターバッチは、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合して、得られた樹脂組成物を発泡成形するために使用することができる。
【0020】
<化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)>
本開示に係るマスターバッチは、化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)を含有する。前記マスターバッチは、両者のうちいずれか一方を含有してもよいし、双方を含有してもよい。以下では、両者を総称して「発泡剤(A)」という場合がある。該発泡剤は、加熱下で、熱可塑性樹脂を発泡させるために使用される。
【0021】
前記化学発泡剤とは、加熱により分解しガスを発生して熱可塑性樹脂を発泡させる添加剤を指す。化学発泡剤としては、無機系化学発泡剤および有機系化学発泡剤のいずれであってもよく、両者を併用してもよい。
【0022】
無機系化学発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩が挙げられる。
有機系化学発泡剤としては、例えば、アゾ化合物(例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロジニトリル、アゾジアミノベンゼン、アゾへキサヒドロべンゾニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート等)、ニトロソ化合物(例えば、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルテレフタルアミド、t-ブチルアミノニトリル等)、ヒドラジド化合物[例えば、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等]、ヒドラゾン化合物(例えばp-トルエンスルホニルアセトンヒドラゾン等)等が挙げられる。
中でも、炭酸塩、アゾ化合物、ヒドラジド化合物が好ましく、重炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ヒドラジド化合物がより好ましい。これらは、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
前熱膨張性マイクロカプセルとは、液状の低沸点化合物をポリマーのシェルで包んだカプセル状の発泡剤のことを指す。加熱によって気化した低沸点化合物の圧力によって、カプセルが膨張し、これによって熱可塑性樹脂を発泡させる。熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えば、特開2011-16884号公報に記載されているものを好適に用いることができる。具体的には、熱膨張性マイクロカプセルは、コアシェル構造を有し、コアは沸点が10℃以上330℃以下である化合物の1種以上で構成され、シェルはコアを内包しており、熱可塑性ポリマーで構成されているものであってよい。
【0024】
前記コアは、沸点が10℃以上330℃以上である化合物から選択した1種以上で構成されることが好ましい。コアを構成する化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。炭化水素類としては、特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、及び、これらの炭化水素の構造異性体等が挙げられる。コアを構成する化合物は、好ましくは、沸点が10℃以上330℃以下の炭化水素類であり、より好ましくは沸点が30℃以上280℃以下の炭化水素類であり、さらに好ましくは沸点が30℃以上200℃以下の炭化水素類である。沸点が10℃以上の化合物を用いることで、熱膨張性マイクロカプセルのマスターバッチ化が容易となる。また、沸点が330℃以下の化合物を用いることで、重合時に分散性が良好になり、熱膨張性マイクロカプセルを製造することが容易となる。
【0025】
熱膨張性マイクロカプセルのシェルを構成する熱可塑性ポリマーの単量体成分としては、例えば、ニトリル系単量体、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体、ジエン系単量体、カルボキシル基を有するビニル系単量体、並びにメチロール基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選択される1種以上の反応性官能基を有する単量体からなる群より選択される1種以上の単量体を用いることができる。
【0026】
前記ニトリル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。
【0027】
前記(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。本願において、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートであってもよく、アクリレートであってもよい。
【0028】
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、p-ニトロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0029】
前記ジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0030】
前記カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、及びその無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられる。
【0031】
前記メチロール基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選択される1種以上の反応性官能基を有する単量体(以下において、単に「反応性官能基を有する単量体」とも記す。)としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシスチレン、ブロックイソシアネート等が挙げられる。ブロックイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート化合物(ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等)のフェノール、アルコール、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、オキシム、ジメチルピラゾール、メチルエチルケトンオキシム、カプロラクタム等によるブロックイソシアネート等が挙げられる。本願において、「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミドであってもよく、アクリルアミドであってもよい。
【0032】
中でも、前記シェルを構成する熱可塑性ポリマーの単量体成分は、ニトリル系単量体、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体、及びカルボキシル基を有するビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0033】
また、前記シェルを構成する熱可塑性ポリマーを製造する際には、連鎖移動剤を適宜使用してもよい。
連鎖移動剤としては、通常のラジカル重合で使用されるものであれば良く、特に限定されない。具体的には、メルカプタン系化合物を用いることができる。メルカプタン系化合物としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタン、α-メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸2-エチルヘキシル等が好適に使用できる。
【0034】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、膨張する前の平均粒子径が0.5μm以上50μm以下であることが好ましく、0.7μm以上50μm以下がより好ましく、1.0μm以上45μm以下がさらに好ましく、1.0μm以上40μm以下がよりさらに好ましく、1.0μm以上35μm以下が特に好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの膨張後の最大粒子径は、膨張する前の平均粒子径からおよそ3倍以上5倍以下の範囲であってよい。これにより、発泡成形体の強度を良好なものとすることができる。熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径は、粒度分布測定装置、具体的には島津製作所製の粒度分布測定装置SALD-3000Jで測定することができる。
【0035】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、最大膨張温度(最大発泡温度とも称される。)が180℃以上300℃以下であることが好ましく、190℃以上290℃以下がより好ましく、200℃以上280℃以下がさらに好ましく、210℃以上270℃以下が特に好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの最大膨張温度は、特許第5484673号に記載されている測定方法で測定することができる。熱膨張性マイクロカプセルの最大膨張温度が上述した範囲内にあると、低密度かつ強度が高い発泡成形体が得られやすい。
【0036】
本開示に係るマスターバッチ中の発泡剤(A)の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができるが、マスターバッチの使用によって高い発泡倍率を達成する観点から、例えば、1~50重量%であることが好ましい。下限は5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。上限は40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましい。
【0037】
<加工助剤(B)>
本開示に係るマスターバッチは、第一重合体(b1)を含む加工助剤(B)を含有する。該加工助剤(B)は、後述する非オレフィン系熱可塑性樹脂に溶融張力を付与して、該熱可塑性樹脂の発泡時に破泡を抑制し、得られる発泡成形体の表面性を向上させるための添加剤である。
【0038】
加工助剤(B)は、高分子量の重合体である第一重合体(b1)を少なくとも含む。好適な態様に係る加工助剤(B)は、製造時の造粒性に優れていることから、第一重合体(b1)に加えて、第二重合体(b2)を含むことが好ましい。
【0039】
第一重合体(b1)は、非オレフィン系熱可塑性樹脂への均一な混合性を確保するため、ビニル系化合物及び/(メタ)アクリレート系単量体の重合体であることが好ましい。そのモノマー組成は特に限定されないが、具体的には以下のような態様を例示することができる。
【0040】
ある態様によると、第一重合体(b1)は、第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含むものであってよい。第一重合体(b1)が芳香族ビニル系化合物およびシアン化ビニル系化合物を前記割合で含むことにより、非オレフィン系熱可塑性樹脂との相溶性が良好となり、また、発泡剤(A)及び可塑剤(C)との混合性が良好となるため、本開示に係るマスターバッチを利用して非オレフィン系熱可塑性樹脂を効率良く発泡させ、良好な発泡成形体を製造することができる。芳香族ビニル系化合物の含有率は55~70重量%であることが好ましく、シアン化ビニル系化合物の含有率は7~20重量%であることが好ましく、共重合可能なその他のビニル系化合物の含有率は10~38重量%であることが好ましい。
【0041】
芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
シアン化ビニル系化合物としては、アクリロニトリル、メタアクリルニトリル等が挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
前記共重合可能なその他のビニル系化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1~20の直鎖アルキル(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート等の炭素数3~20の分枝鎖アルキル(メタ)アクリレート;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等の炭素数3~20の環状アルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、メチルフェニル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-(p-メチルフェニル)マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のα,β-不飽和ジカルボン酸のイミド化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等のアミノ基含有不飽和化合物;3-ヒドロキシ-1-プロペン、4-ヒドロキシ-1-ブテン、シス-4-ヒドロキシ-2-ブテン、トランス-4-ヒドロキシ-2-ブテン、3-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロペン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレン等の水酸基含有不飽和化合物;ビニルオキサゾリン等のオキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
別の態様によると、第一重合体(b1)は、第一重合体(b1)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~99重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物1~50重量%を構成単量体として含むものであってよい。第一重合体(b1)がアルキルメタクリレートを前記割合で含むことにより、非オレフィン系熱可塑性樹脂との相溶性が良好となり、また、発泡剤(A)及び可塑剤(C)との混合性が良好となるため、本開示に係るマスターバッチを利用して非オレフィン系熱可塑性樹脂を効率良く発泡させ、良好な発泡成形体を製造することができる。また、アルキルメタクリレート60~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~40重量%を構成単量体として含むことが好ましく、アルキルメタクリレート70~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~30重量%を構成単量体として含むことがより好ましい。その他のビニル系化合物としては、上述した化合物を用いることができる。
【0045】
アルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクデシルメタクリレート等の炭素数1~20の直鎖アルキルメタクリレート;イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソウンデシルメタクリレート、イソドデシルメタクリレート、イソトリデシルメタクリレート、イソテトラデシルメタクリレート、イソペンタデシルメタクリレート、イソヘキサデシルメタクリレート、イソヘプタデシルメタクリレート、イソオクタデシルメタクリレート等の炭素数3~20の分枝鎖アルキルメタクリレート;シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート等の炭素数3~20の環状アルキルメタクリレート等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
アルキルメタクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは1~14、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~10、さらにより好ましくは1~8、特に好ましくは1~6である。前記のうち、直鎖アルキルメタクリレートがより好ましく、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0047】
第一重合体(b1)の重量平均分子量は、非オレフィン系熱可塑性樹脂に適正な溶融張力を付与し、表面性が良好な発泡成形体を製造する観点から、150,000~7,000,000であることが好ましい。より好ましくは200,000~5,000,000であり、さらに好ましくは250,000~4,000,000であり、特に好ましくは300,000~1,500,000である。
【0048】
第二重合体(b2)は任意の成分であり、含有しなくてもよい。しかし、加工助剤(B)が第二重合体(b2)を含む場合、第二重合体(b2)は、第一重合体(b1)の外側に存在しており、第一重合体(b1)を覆うように存在していることが好ましい。第一重合体(b1)と第二重合体(b2)は互いに化学結合していないことが好ましい。
【0049】
第二重合体(b2)は、第二重合体(b2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~50重量%を構成単量体として含むことが好ましい。第二重合体(b2)のアルキルメタクリレートの割合が比較的高いことにより、後述するように第二重合体(b2)のTg(ガラス転移温度)を高くすることができ、加工助剤(B)の造粒性をより向上させることができる。
【0050】
第二重合体(b2)は、第二重合体(b2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート60~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~40重量%を構成単量体として含むことがより好ましく、アルキルメタクリレート70~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~30重量%を構成単量体として含むことがさらに好ましい。その他のビニル系化合物としては、上述の第一重合体(b1)において例示した化合物を用いることができる。
【0051】
第一重合体(b1)の外側に第二重合体(b2)が存在し、その第二重合体(b2)のTgが30~110℃であることによって、加工助剤(B)の造粒性をより向上させることができる。第二重合体(b2)のTgは、60~100℃であることが好ましく、35~80℃であることがより好ましい。Tgは、「ポリマーハンドブック第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社1998年発行に記載のホモポリマーのTgから各モノマーのTgを算出したものでもよく、示差熱分析または示差走査熱量分析により算出したものであってもよい。
【0052】
第二重合体(b2)の重量平均分子量は、特に限定されないが、第一重合体(b1)の重量平均分子量より小さい値であることが好ましく、具体的には、20,000~300,000であることが好ましく、20,000~150,000がより好ましい。
【0053】
加工助剤(B)が第二重合体(b2)を含む場合、加工助剤(B)による発泡成形性向上と、加工助剤(B)の造粒性改善のバランスの観点から、加工助剤(B)は、第一重合体(b1)と第二重合体(b2)の合計を100重量%とし、第一重合体(b1)を60~90重量%、第二重合体(b2)を10~40重量%含むことが好ましく、第一重合体(b1)を65~85重量%、第二重合体(b2)を15~35重量%含むことがより好ましく、第一重合体(b1)を70~85重量%、第二重合体(b2)を15~30重量%含むことが更に好ましい。
【0054】
〔加工助剤(B)の製造方法〕
加工助剤(B)は、例えば、回収の容易性、重合物の低臭気性、ハンドリング性、耐ブロッキング性および経済性等の観点から、乳化重合法、懸濁重合法等の水を媒体とした重合法によって得ることができる。このうち、発泡剤(A)、可塑剤(C)、及び非オレフィン系熱可塑性樹脂との混合性の観点から、乳化重合法がより好ましい。さらに、粒子構造体を得ることができる乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、滴下懸濁重合法は、二以上の重合体構造を得るのに特に好ましい重合法である。
【0055】
乳化重合法に用いる乳化剤としては、従来公知のものを使用でき、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホコハク酸ジエステル塩などのアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩等のカチオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン性乳化剤等が挙げられる。なかでも、耐衝撃性又は耐熱性が改善されたり、非オレフィン系熱可塑性樹脂の分解が抑制され、湿熱条件下での耐衝撃性の低下や高温下での色調変化が抑制され得ることから、前記乳化剤としては、リン酸系乳化剤またはスルホン酸系乳化剤が好ましく、スルホン酸系乳化剤が特に好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、重合の助触媒としてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、硫酸第一鉄等、ラテックスの粘度調整剤として硫酸ナトリウム等、pH調整剤として水酸化ナトリウム等を用いてもよい。
【0056】
第一重合体(b1)又は第二重合体(b2)の重量平均分子量は、これらに含まれるモノマー比を変更することにより、調節することが可能である。また、これらの重量平均分子量は、ラジカル開始剤および必要に応じて使用される連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間等を変更することにより、調節することも可能である。
【0057】
乳化重合法に用いるラジカル開始剤としては、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシラウレイト等の有機ハイドロパーオキサイド類;前記有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化剤と、亜硫酸塩、亜硫酸水素、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤との組み合わせによるレドックス系の開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2-カルバモイルアザイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物等を使用することができる。なかでも、ラジカル開始剤は、有機ハイドロパーオキサイド類であることが好ましく、t-ブチルハイドロパーオキサイドであることがより好ましい。
【0058】
ラジカル開始剤の使用量(好ましくは第一重合体(b1)の重合時のラジカル開始剤の使用量)は、使用されるモノマー100重量部に対して、例えば0.01~5.0重量部であってよく、好ましくは0.1~3.5重量部であり、より好ましくは0.5~3.0重量部である。ラジカル開始剤量が多いと、重量平均分子量が低下する傾向があり、ラジカル開始剤量が少ないと、重量平均分子量が上昇する傾向がある。
【0059】
乳化重合法に用いる連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;テトラエチルチウラムスルフィド、四塩化炭素、臭化エチレン、ペンタンフェニルエタン等の炭化水素塩類;テルペン類、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2-エチルヘキシルチオグリコール、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。なかでも、連鎖移動剤は、メルカプタン類であることが好ましく、t-ドデシルメルカプタンであることがより好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
連鎖移動剤の使用量(好ましくは第一重合体(b1)の重合時の連鎖移動剤の使用量)は、モノマー100重量部に対し、通常0~3重量部であってよい。連鎖移動剤を使用する場合、連鎖移動剤の使用量は、例えば0.01~3重量部であってよく、好ましくは0.1~3重量部であり、より好ましくは0.5~2.5重量部である。
【0061】
重合時間は、使用するモノマー、乳化剤、ラジカル開始剤、必要に応じて使用される連鎖移動剤やそれらの量に応じて変更され得るが、例えば1時間~50時間であってよく、好ましくは5時間~24時間である。
【0062】
重合温度は、使用するモノマー、乳化剤、ラジカル開始剤、必要に応じて使用される連鎖移動剤やそれらの量に応じて調節され得るが、例えば10℃~90℃であってよく、好ましくは40℃~80℃である。
【0063】
ラテックス中の加工助剤(B)の体積平均粒子径は、例えば0.030μm以上0.500μm以下であってよい。体積平均粒子径は、粒度分析計(日機装株式会社製、Nanotracwave)により算出することができる。
【0064】
次に、得られた加工助剤(B)を含むラテックスを例えば凝固法により粉末化してもよい。加工助剤(B)を粉末化する場合、前記乳化重合法で得られたラテックスを塩凝固、酸凝固等の凝固法で処理する方法、ラテックスを噴霧乾燥によって粉体を得る方法等を用いることができる。
【0065】
塩凝固、酸凝固等の凝固法では、ラテックスを、無機塩類(好ましくは2価の無機塩類、より好ましくは塩化カルシウム)、酸類などの凝固剤に接触させればよい。凝固した後に、更に熱処理、脱水、洗浄、乾燥工程等を行って、加工助剤(B)を調製してもよい。
【0066】
加工助剤(B)の市販品として、例えば、カネエース(登録商標)PA-20(株式会社カネカ製)、カネエース(登録商標)PA-40(株式会社カネカ製)、カネエース(登録商標)PA-60(株式会社カネカ製)、カネエース(登録商標)PA-80(株式会社カネカ製)、PA-310(株式会社カネカ製)、Blendex864(Galata Chemicals)等が挙げられる。
【0067】
本開示に係るマスターバッチ中の加工助剤(B)の配合量は、特に限定されず、適宜設定することができるが、マスターバッチの使用によって優れた発泡特性を達成する観点から、例えば、1~70重量%であることが好ましい。下限は5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、30重量%以上が特に好ましい。上限は60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下がより好ましい。
【0068】
本開示に係るマスターバッチ中における発泡剤(A)と加工助剤(B)の配合比についても特に限定されず、発泡剤(A)と加工助剤(B)の物性を考慮して適宜設定することができるが、加工助剤(B)/発泡剤(A)の重量比が、0.1~10であることが好ましく、0.5~8がより好ましく、1~5がさらに好ましい。
【0069】
<可塑剤(C)>
本開示に係るマスターバッチは、発泡剤(A)及び加工助剤(B)と共に、特定の可塑剤(C)を含有する。可塑剤(C)は、加工助剤(B)の第一重合体(b1)よりも分子量が低い物質であり、発泡剤(A)と加工助剤(B)の混錬可能な温度を低下させることができる。可塑剤(C)を含有することによって、発泡剤(A)を分解又は膨張させることなく、加工助剤(B)を半溶融状態で、発泡剤(A)に練り込むことが可能となり、発泡剤(A)及び加工助剤(B)の混合が可能になる。
【0070】
可塑剤(C)としては、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ化植物油、及び、アクリルオリゴマー系可塑剤からなる群より選択される可塑剤を使用することができる。これら可塑剤は加工助剤(B)との相溶性が良好であり、加工助剤(B)との均一な混合が可能である。可塑剤(C)としては1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0071】
フタル酸エステル系可塑剤としては特に限定されないが、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソウンデシル、フタル酸ビスブチルベンジルなどがあげられるが、好ましくはジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ブチルベンジルフタレート等が挙げられる。
【0072】
アジピン酸エステル系化合物としては特に限定されないが、例えば、ジエチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどが挙げられる。
【0073】
トリメリット酸エステル系可塑剤としては特に限定されないが、例えば、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ(n-オクチル)、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸ジ(n-オクチル)モノ(n-デシル)、トリメリット酸ジイソオクチルモノイソデシル等が挙げられる。
【0074】
ポリエステル系可塑剤としては特に限定されないが、例えば、フタル酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、ポリカプロラクトン等が挙げられる。ポリエステル系可塑剤の重量平均分子量は、例えば、1,000以上20,000以下であってよく、1,000以上18,000以下であることが好ましく、1,000以上15,000以下がより好ましく、1,000以上13,000以下がさらに好ましい。
【0075】
リン酸エステル系可塑剤としては特に限定されないが、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリ-2-エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジル等が挙げられる。
【0076】
クエン酸エステル系可塑剤としては特に限定されないが、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチル2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0077】
エポキシ化植物油としては特に限定されないが、例えば、ポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化トール油脂肪酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0078】
アクリルオリゴマー系可塑剤としては特に限定されないが、一般にアクリル系可塑剤として知られているものを用いることが可能であり、無官能タイプのアクリル系可塑剤を用いることが好ましい。アクリル系可塑剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステル-芳香族ビニルモノマー共重合体等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル重合体が好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、メタクリル酸アルキルエステルの単独重合体、アクリル酸アルキルエステル同士の共重合体、メタクリル酸アルキルエステル同士の共重合体、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの共重合体を含む。アクリル系可塑剤を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステルを適宜用いることができる。また、アクリル系可塑剤を構成する芳香族ビニルモノマーとしては、特に限定されず、例えば、上述したものを適宜に用いることができる。
【0079】
アクリルオリゴマー系可塑剤の重量平均分子量は、例えば、1,000以上20,000以下であってよく、1,000以上18,000以下であることが好ましく、1,000以上15,000以下がより好ましく、1,000以上13,000以下がさらに好ましい。
【0080】
アクリルオリゴマー系可塑剤の具体例としては、特に限定されないが、東亞合成社製の製品名「UP-1000」、「UP-1010」、「UP-1020」、「UP-1021」、「UP-1061」、及び「UP-1500」等のアルフォン UP-1000シリーズ等の市販の無官能基タイプのアクリル系可塑剤が挙げられる。
【0081】
本開示に係るマスターバッチ中の可塑剤(C)の含有割合は、マスターバッチの製造可能性の観点から、10重量%以上であることが好ましく、12重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。また、可塑剤(C)の使用量が多くなると発泡特性を低下させる恐れがあるため、上限は60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下がより好ましく、40重量%以下がさらに好ましく、30重量%以下が特に好ましい。
【0082】
<流動性改良剤(D)>
本開示に係るマスターバッチは、さらに、流動性改良剤(D)を含有してもよい。流動性改良剤(D)を併用することにより、非オレフィン系熱可塑性樹脂の粘度をさらに低下させ、マスターバッチの使用によって得られる発泡成形体の発泡特性を向上させることができる。特に、非オレフィン系熱可塑性樹脂が硬質の樹脂(特に、塩化ビニル系樹脂)である場合に、流動性改良剤(D)を使用することが好ましい。
【0083】
該流動性改良剤(D)は、少なくとも第三重合体(d1)を含む。好適な態様に係る流動性改良剤(D)は、製造時の造粒性に優れていることから、第三重合体(d1)に加えて、第四重合体(d2)を含むことが好ましい。
【0084】
〔第三重合体(d1)〕
第三重合体(d1)は、当該第三重合体(d1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含むことが好ましい。当該モノマー組成は第一重合体(b1)と同様であるので、記載を省略する。
【0085】
第三重合体(d1)の重量平均分子量は、第一重合体(b1)よりも小さい値であり、15,000~120,000であることが好ましい。上限は、より好ましくは100,000以下であり、さらに好ましくは80,000以下であり、特に好ましくは60,000以下である。下限は、20,000以上が好ましく、25,000以上がより好ましく、30,000以上がさらに好ましい。
【0086】
〔第四重合体(d2)〕
第四重合体(d2)は任意の成分であり、含有しなくてもよい。しかし、流動性改良剤(D)が第四重合体(d2)を含む場合、第四重合体(d2)は、第三重合体(d1)の外側に存在しており、第三重合体(d1)を覆うように存在していることが好ましい。第三重合体(d1)と第四重合体(d2)は互いに化学結合していないことが好ましい。
【0087】
第四重合体(d2)は、第四重合体(d2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート10~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~90重量%を構成単量体として含むことが好ましい。第四重合体(d2)がアルキルメタクリレートを含有することにより、第四重合体(d2)のTg(ガラス転移温度)を高くすることができ、流動性改良剤(D)の造粒性を向上させることができる。
【0088】
第四重合体(d2)は、第四重合体(d2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート60~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~40重量%を構成単量体として含むことがより好ましく、アルキルメタクリレート70~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~30重量%を構成単量体として含むことがさらに好ましい。その他のビニル系化合物としては、上述の第一重合体(b1)において例示した化合物を用いることができる。
第四重合体(d2)のモノマー組成及び重量平均分子量は第二重合体(b2)と同様であるので、記載を省略する。
【0089】
流動性改良剤(D)が第四重合体(d2)を含む場合、流動性改良剤(D)による非オレフィン系熱可塑性樹脂の溶融粘度の低減及び発泡特性の向上と、流動性改良剤(D)の造粒性改善のバランスの観点から、流動性改良剤(D)は、第三重合体(d1)と第四重合体(d2)の合計を100重量%とし、第三重合体(d1)を60~90重量%、第四重合体(d2)を10~40重量%含むことが好ましく、第三重合体(d1)を65~85重量%、第四重合体(d2)を15~35重量%含むことがより好ましく、第三重合体(d1)を70~80重量%、第四重合体(d2)を20~30重量%含むことが更に好ましい。
流動性改良剤(D)は、加工助剤(B)と同様の手法によって製造することができる。
【0090】
本開示に係るマスターバッチ中の流動性改良剤(D)の配合量は、特に限定されず、適宜設定することができるが、例えば、0.1~30重量%程度であってもよく、1~20重量%であることが好ましい。
【0091】
<他の添加剤>
本開示に係るマスターバッチは、発泡剤(A)、加工助剤(B)、可塑剤(C)、及び任意の流動性改良剤(D)のみから構成されるものであってもよいが、一般的な発泡成形用樹脂組成物に配合され得る他の添加剤をさらに含有するものであってもよい。そのような他の添加剤としては、難燃剤、強化材、充填材、酸化防止剤、顔料、染料、導電性付与剤、加水分解抑制剤、増粘剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、離型剤、相溶化剤、熱安定剤等が挙げられる。
【0092】
前記充填剤としては特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、カオリン、ガラスフレーク、板状アルミナ、合成ハイドロタルサイト、ワラストナイト、中空ガラスバルーン、炭素繊維、アラミド繊維、ウィスカー等が挙げられる。充填剤としては1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0093】
前記滑剤としては特に限定されないが、例えば、天然ワックス、合成ワックス、酸化または非酸化のポリオレフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン、高分子量パラフィンワックス等のワックス類;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、ポリメチルシロキサン等のシリコーンオイル等が挙げられる。滑剤としては1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0094】
<マスターバッチの製造方法>
本開示に係るマスターバッチは、発泡剤(A)、加工助剤(B)、可塑剤(C)、任意の流動性改良剤(D)、及び任意の他の添加剤を、押出機等を用いて、均一に混錬することで製造できる。可塑剤(C)を配合することによって混錬可能な温度が低下する。そのため、発泡剤(A)の分解温度又は膨張温度よりも低い温度で、発泡剤(A)と加工助剤(B)を均一に混錬することができる。結果、発泡剤(A)を分解又は膨張させることなく、発泡剤(A)と加工助剤(B)を共に含有するマスターバッチを製造することができる。
【0095】
マスターバッチを製造する際の最高温度は、発泡剤(A)の分解温度又は膨張温度よりも低い温度であれば特に限定されないが、例えば、70~140℃程度であってよく、80~120℃が好ましい。このような低温であっても、可塑剤(C)が存在することで加工助剤(B)を半溶融状態で、発泡剤(A)と練り込むことができ、発泡剤(A)と加工助剤(B)の混錬が可能となる。
【0096】
マスターバッチの製造に使用できる押出機としては特に限定されず、コニカル押出機や、単軸押出機、二軸パラレル押出機等を使用することができる。一般的に樹脂の混練に使用されるバンバリーミキサー、加圧ニーダー、コ・ニーダ等も使用することができる。また、他の添加剤を混合する際には、スーパーミキサーや、リボンブレンダー等の、粉体と液状物を混合できる機器を使用してもよい。
マスターバッチは押出機から押出した後、ペレット化することができる。また、3本ロール、2本ロールにてシートを作製した後、シートペレタイザーにてペレット化してもよい。
【0097】
<発泡成形体の製造方法>
本開示に係るマスターバッチを非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合し、得られた樹脂組成物を、発泡剤(A)の分解温度又は膨張温度以上の温度で発泡成形することにより、発泡成形体を製造することができる。本開示に係るマスターバッチは発泡剤(A)及び加工助剤(B)の双方を含有するため、該マスターバッチを使用することで、発泡成形体製造過程での予備混錬などの工程数を削減することができ、成形安定性を改善することができる。
【0098】
本開示に係るマスターバッチは可塑剤(C)が含まれているため高温下でほぐれやすい。そのため、該マスターバッチを使用することで、発泡剤(A)及び加工助剤(B)を非オレフィン系熱可塑性樹脂中に均一に分散しやすいという利点がある。
【0099】
また、非オレフィン系熱可塑性樹脂がリサイクルされた粉砕品であっても、本開示に係るマスターバッチを使用することで、混合時の分級の発生が抑制され、発泡剤(A)及び加工助剤(B)を熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。そのため、リサイクルされた粉砕品から、発泡倍率が高く、表面性が良好な発泡成形体を好適に製造することができる。
【0100】
発泡成形体の製造で使用可能な非オレフィン系熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、AS系樹脂(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂等)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(メタクリル酸メチル-スチレン))、ポリエステル(PET、PET-G)、ポリ乳酸、ポリスチレン等が挙げられる。
【0101】
発泡成形体を製造する時の、本開示に係るマスターバッチの使用量は、所望の発泡倍率に応じて適宜設定することができるが、例えば、前記非オレフィン系熱可塑性樹脂100重量部に対して、1~30重量部程度であってよく、2~20重量部が好ましく、3~15重量部がより好ましい。
【0102】
発泡成形体を製造する手法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば、押出成形、射出成形、カレンダ一成形、流延成形、プレス成形、注型などの任意の成形方法によって、種々の形状や構造の発泡成形体または発泡性成形体(発泡前の成形体)に成形することができる。成形加工と同時に発泡を行わせる場合は、成形加工の少なくともある段階で発泡剤(A)の分解温度又は膨張温度以上の温度に加熱すればよい。発泡剤の種類によってその分解温度又は膨張温度は異なるが、発泡剤(A)は一般に150~250℃の範囲で分解又は膨張するので、発泡体を製造するには150~250℃又はそれ以上の温度に加熱すればよい。
【0103】
成形に使用出来る成型機としては、2軸コニカル押出機、二軸パラレル押出機、単軸押出機等の一般的な成型機を使用できる。発泡成形方法も特に限定されず、フリー法、セルカ法、パーシャルセルカ法を使用することができる。射出成型も使用することができる。
【0104】
また、未発泡のシート、フィルム、板、管、積層体、その他の成形品を一旦製造した後に、それを加熱して発泡させることもできる。この場合は、発泡性熱可塑性樹脂組成物を該組成物の成形加工が可能な温度であって且つ発泡剤(A)が分解又は膨張しない温度で成形加工して未発泡の成形品を製造し、次いで、該未発泡の成形品を発泡剤の分解温度又は膨張温度以上に加熱して発泡させることにより発泡成形体を得ることができる。
【0105】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
マスターバッチであって、
化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)、
重量平均分子量が150,000~7,000,000である第一重合体(b1)を含む加工助剤(B)、及び、
フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ化植物油、及び、アクリルオリゴマー系可塑剤からなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤(C)を含有し、
前記マスターバッチ中の前記可塑剤(C)の含有割合が10~60重量%である、マスターバッチ。
[項目2]
前記第一重合体(b1)が、第一重合体(b1)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~99重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物1~50重量%を構成単量体として含む重合体である、項目1に記載のマスターバッチ。
[項目3]
重量平均分子量が15,000~120,000である第三重合体(d1)を含む流動性改良剤(D)を更に含有する、項目1又は2に記載のマスターバッチ。
[項目4]
ペレット状である、項目1~3のいずれかに記載のマスターバッチ。
[項目5]
化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)、
重量平均分子量が150,000~7,000,000である第一重合体(b1)を含む加工助剤(B)、及び、
フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ化植物油、及び、アクリルオリゴマー系可塑剤からなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤(C)を、
マスターバッチ中の前記可塑剤(C)の含有割合が10~60重量%となる量で、
前記化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセル(A)が分解又は膨張しない温度にて混錬する工程を含む、マスターバッチの製造方法。
[項目6]
項目1~4のいずれかに記載のマスターバッチを、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合し、発泡成形用樹脂組成物を得る工程と、該樹脂組成物を発泡成形する工程とを含む、発泡成形体の製造方法。
[項目7]
前記非オレフィン系熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂、AS系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、及びポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種である、項目6に記載の製造方法。
【実施例0106】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
〔測定方法〕
製造例では以下の手法に従って物性等を測定した。
【0108】
<重合体の重量平均分子量>
測定対象である重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分に対して、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)を使用することにより、重量平均分子量を求めた(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系、注入量:1mL)。
【0109】
<製造例1>
あらかじめ水に溶解したジオクチルコハク酸ナトリウム0.5部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0032部及び硫酸第一鉄0.0008部を攪拌機付き反応器に入れ、さらに水を加えて水の全量を200部とした。
反応器内を窒素置換して空間部および水中の酸素を除去した。その後、撹拌するとともに、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.06部を撹拌機付き反応器に入れ、内容物を60℃まで昇温した後に、メチルメタクリレート80部及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.05部の混合物を200分かけて連続追加しながら重合を行った。連続追加の50分の時点と100分の時点とにそれぞれジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3部を追加した。以上により第一重合体(b1)を形成した。
重合終了後、そこに更にメチルメタクリレート8部、ブチルアクリレート12部及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.05部の混合物を50分かけて連続追加して重合を行った。
共重合成分の追加終了後も内容物を60℃に保ったまま攪拌を1時間以上続けることにより重合を完結させた。以上により第二重合体(b2)を形成した。その後、内容物を冷却し、加工助剤(B-1)のラテックスを得た。
45℃の温度条件で、濃度1重量%に希釈した塩化カルシウム水溶液5部に、得られた加工助剤(B-1)のラテックスを加えて凝固を行った。次いで熱処理、脱水、洗浄および乾燥を行ない、重量平均分子量が750,000の第一重合体(b1)と第二重合体(b2)を含む、加工助剤(B-1)の粉末を得た。
【0110】
<製造例2>
製造例1と同様の製法で、第一重合体(b1)を形成するためにメチルメタクリレート70部、ブチルアクリレート10部、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.0002部の混合物を300分かけて連続追加しながら重合を行った。その後の連続追加は製造例2と同様に行い、加工助剤(B-2)のラテックスを得、製造例2と同様の粉体製法で重量平均分子量が6,000,000の第一重合体(b1)と第二重合体(b2)を含む、加工助剤(B-2)の粉末を得た。
【0111】
<製造例3>
あらかじめ水に溶解したジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.0部(重量部、以下同様)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0050部および硫酸第一鉄0.0025部を攪拌機付き反応器に入れ、さらに水を加えて水の全量を200部とした。
【0112】
反応器内を窒素置換して空間部および水中の酸素を除去した。その後、撹拌するとともに、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.4部を撹拌機付き反応器に入れ、内容物を75℃まで昇温した後に、アクリロニトリル12.6部、スチレン43.4部、ブチルアクリレート6.0部、メチルメタクリレート18.0部、t-ドデシルメルカプタン0.8部、t-ブチルハイドロパーオキサイド1部の混合物を200分かけて連続追加しながら重合を行った。連続追加の50分の時点と100分の時点とにそれぞれジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3部を追加した。また、連続追加の100分の時点で、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.15部を追加した。以上により第三重合体(d1)を形成した。
【0113】
重合終了後、そこに更にブチルアクリレート4部、メチルメタクリレート16部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.3部の混合物を50分かけて連続追加して重合を行った。連続追加の終了後にホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2部を追加した。
【0114】
共重合成分の追加終了後も内容物を75℃に保ったまま攪拌を1時間以上続けることにより重合を完結させた。以上により第四重合体(d2)を形成した。その後、内容物を冷却し、流動性改良剤(D-1)のラテックスを得た。
【0115】
45℃の温度条件で、濃度1重量%に希釈した塩化カルシウム水溶液5部に、得られた流動性改良剤のラテックスを加えて凝固を行った。次いで熱処理、脱水、洗浄および乾燥を行ない、重量平均分子量が40,000の第三重合体(d1)と第四重合体(d2)を含む流動性改良剤(D-1)の粉末を得た。
【0116】
<実施例1~11及び比較例1~3>
表1に示した配合に従って、カワタ製スーパーミキサーにて各添加剤を混合後、東洋精機ラボプラスト 2軸コニカル押出機を用いて、C1/90℃、C2/100℃、C3/100℃、D/100℃に設定し、30rpmにて、樹脂温度100℃前後で、リングブレーカー、及び3mm径のダイスを使用して押出ペレット化を行った。混練時の樹脂温度は発泡剤の分解温度160℃以下であった。
【0117】
発泡剤(A):
・ADCA(アゾジカルボンアミド)+重曹:FE-512
・重曹:CC-P
加工助剤(B):
・製造例1で得た加工助剤(B-1)
・製造例2で得た加工助剤(B-2)
可塑剤(C):
・フタル酸エステル系可塑剤:jプラス社製DINP
・ポリエステル系可塑剤:アデカ社製PN-250
・アクリルオリゴマー系可塑剤:東亜合成社製アルフォンUP-1020
流動性改良剤(D)
・製造例3で得た流動性改良剤(D-1):MF-100
充填剤:
・タルク:富士タルク社製
顔料:
・酸化チタン:CR90
滑剤:
・ステアリン酸マグネシウム
・PEWAX:エミリー社製AC-629A
・エステル系WAX:リケンビタミン社製SL-02
【0118】
(ペレット化評価)
上記の条件にてペレットが得られたものを〇と評価し、得られなかったものを×と評価した。
【0119】
(成形評価)
ABS樹脂(テクノUMB社 テクノABS150;事前に80℃、3時間乾燥したものを使用)、硬質PVCコンパウンド(昭和化成社 硬質錫配合コンパウンド 874M)、又は、樹脂窓枠粉砕品(PVC複合サッシ部材由来)100重量部に対し、各マスターバッチ5重量部を添加し、東洋精機ラボプラスト 2軸コニカル押出機を用いて、C1/180℃、C2/160℃、C3/16℃、D/155℃で、30rpmにて、ブレーカープレート、3×10mmの平板のダイスを使用し、フリー発泡成形を行って、発泡成形品を得た。得られた発泡成形品の発泡倍率と表面性を確認した。
【0120】
発泡倍率が2.5倍以上であったものを◎と評価し、2~2.5倍であったものを〇と評価し、2倍未満であったものを×と評価した。
【0121】
表面性は、発泡成形品の表面における破泡による肌荒れの有無に基づいて評価した。発泡セルの破泡が確認されず、表面が滑らかな状態のものを◎と評価し、発泡セルの破泡は確認されないものの、使用上問題がない範囲で表面に凹凸があるものを〇と評価し、多くの破泡が確認され、表面がザラザラしているものを×と評価した。
各評価結果を表1に示した。
【0122】
【表1】
【0123】
表1から以下のことが分かる。実施例1~11は、発泡剤と加工助剤を含むペレットを製造することができ、該ペレットを様々な非オレフィン系熱可塑性樹脂に配合して製造した発泡成形品は、発泡性、表面性いずれも良好であった。
【0124】
一方、比較例1では、可塑剤(C)量が少ないため、上記設定温度では押出機の負荷が高くなり押出ができなかった。しかし、押出可能な設定温度まで上げると、ペレットが発泡し、良好なペレットが得られなかった。
比較例2では、加工助剤(B)を含まないため、発泡成形時にセル保持ができず破泡し、発泡倍率が上がらず、また、表面性が悪かった。
比較例3では、可塑剤量(C)が多いため、混合物の押出性が悪かった。但し、ロールでのペレット化は可能であった。しかし、得られたペレットを用いて発泡成形体の製造を試みたものの、発泡倍率が上がらず、表面性が悪かった。
【0125】
尚、実施例4と実施例6を比較すると、実施例6のほうが良好な発泡性を示した。これは、実施例6で使用した加工助剤(B)の分子量が実施例4で使用したものよりも高いため、効率良く溶融張力を付与でき、発泡性に優れるためである。
【0126】
一般的に発泡成形に使用されるPVCの重合度は700~800程度であるが、サッシ部材由来の粉砕品には重合度が1000程度のPVC樹脂が使用されている。実施例8では、流動性改良剤(D)を併用することにより、樹脂の粘度を下げ、発泡特性を向上させている。