(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096556
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240709BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20240709BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20240709BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240709BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240709BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W30/182
B60W40/04
B60W60/00
G08G1/16 C
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000104
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 龍
(72)【発明者】
【氏名】豊田 英弘
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129DD13
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2F129GG04
2F129GG05
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2F129GG17
2F129HH20
2F129HH21
3D241BA11
3D241BA29
3D241BB40
3D241DC18Z
3D241DC41Z
3D241DC57Z
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB13
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
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5H181CC24
5H181FF04
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5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】狭路などを走行中のすれ違い走行に、適切に自動運転を継続できるようにする。
【解決手段】車両制御装置として、車両システムが少なくとも一部又は全部の運転タスクを実施する自動運転モードと、運転者又は遠隔監視者が運転タスクを実施する手動運転モードと、を遷移可能な車両を制御する車両制御装置である。車両制御装置は、外界センサの検知結果に基づいて、車両の周辺の状況を認識する認識部と、認識部により認識された車両の周辺の状況に基づいて、車両の現在位置から目標位置までの走行軌道を生成する走行軌道生成部と、自動運転モードで運転タスクを実施中に、自動運転モードから手動運転モードへ遷移可能な遷移可能位置を決定する遷移可能位置決定部と、を備える。走行軌道生成部は、現在位置から目標位置までの車両の走行軌道である第一走行軌道と、第一走行軌道上の点から遷移可能位置までの走行軌道である第二走行軌道とをそれぞれ生成する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両システムが少なくとも一部又は全部の運転タスクを実施する自動運転モードと、運転者又は遠隔監視者が運転タスクを実施する手動運転モードと、を遷移可能な車両を制御する車両制御装置において、
前記車両に備えられた外界センサの検知結果に基づいて、前記車両の周辺の状況を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記車両の周辺の状況に基づいて、前記車両の現在位置から目標位置までの走行軌道を生成する走行軌道生成部と、
前記自動運転モードで運転タスクを実施中に、前記自動運転モードから前記手動運転モードへ遷移可能な遷移可能位置を決定する遷移可能位置決定部と、を備え、
前記走行軌道生成部は、前記現在位置から前記目標位置までの前記車両の走行軌道である第一走行軌道と、前記第一走行軌道上の点から前記遷移可能位置までの走行軌道である第二走行軌道と、をそれぞれ生成し、
前記第一走行軌道又は前記第二走行軌道を用いて前記車両を制御すること、
を特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記第一走行軌道及び前記第二走行軌道は、道路上の座標位置の情報であり、座標位置を通過する時刻の情報を持たない
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第一走行軌道上で前記自動運転モードによる前記車両の制御の継続が困難であると判断された場合、前記第二走行軌道を用いて前記車両を前記遷移可能位置まで走行させ、前記遷移可能位置において前記自動運転モードから前記手動運転モードへと遷移させること、を特徴とする
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記遷移可能位置決定部は、前記自動運転モードによる運転タスクの開始位置、前記外界センサの死角領域、障害物の有無により定まる前記車両の走行危険度が閾値以下の位置、のいずれか1つの位置を前記遷移可能位置として決定すること、を特徴とする
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記走行軌道生成部は、前記車両が前記第一走行軌道を走行する場合の前記外界センサの検知結果と前記車両が前記第二走行軌道を走行する場合の前記外界センサの検知結果の差分を取得又は推定し、前記差分が閾値以上である場合に前記第一走行軌道又は前記第二走行軌道を更新すること、を特徴とする
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記走行軌道生成部は、前記第二走行軌道を生成する際に、前記車両に備えられた複数の外界センサの検知結果の差分から認識結果を補正して、適切な走行軌道を得る
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
車両システムが少なくとも一部又は全部の運転タスクを実施する自動運転モードと、運転者又は遠隔監視者が運転タスクを実施する手動運転モードと、を遷移可能な車両を制御する車両制御方法において、
前記車両に備えられた外界センサの検知結果に基づいて、前記車両の周辺の状況を認識する認識処理と、
前記認識処理により認識された前記車両の周辺の状況に基づいて、前記車両の現在位置から目標位置までの走行軌道を生成する走行軌道生成処理と、
前記自動運転モードで運転タスクを実施中に、前記自動運転モードから前記手動運転モードへ遷移可能な遷移可能位置を決定する遷移可能位置決定処理と、を含み、
前記走行軌道生成処理では、前記現在位置から前記目標位置までの前記車両の走行軌道である第一走行軌道と、前記第一走行軌道上の点から前記遷移可能位置までの走行軌道である第二走行軌道と、をそれぞれ生成し、生成した前記第一走行軌道又は前記第二走行軌道を用いて前記車両を制御すること、
を特徴とする車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両における自動運転技術の開発が進んでいる。自動運転を行う上では、走行する道路が、常に適切な道路幅であるとは限らない。
例えば、走行道路幅が狭い狭路において、自車両と対向車両がすれ違い困難な道路においては、すれ違いが可能な場所への退避を行うために、通常の走行時とは異なる制御が必要である。
特許文献1には、待避スペースが存在しないような道路を走行する場合において、狭路の入り口まで戻るように制御するために、自車の発進、停止、進行方向などの行動を計画する技術についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来提案された自動運転技術では、市街地の狭路などですれ違い時に自動走行を行う場合に、待避ための走行開始後にセンサの死角が存在するなどの理由で、制御不可能と判定される場合がある。このような場合には、制御装置は、自動運転できないと制御装置が判断してギブアップしてしまう。制御装置がギブアップすると、ギブアップした場所からドライバに権限移譲するが、ドライバにとっても走行困難になったり、手動でも運転できなくなったりするケースがある。また、自動運転が継続していても、待避路へ入った際に出庫できなくなりギブアップする可能性もあった。その結果、乗り心地や利便性が悪化することがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、狭路などを走行中のすれ違い時に、適切に自動運転を継続できる車両制御装置及び車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、車両制御装置として、車両システムが少なくとも一部又は全部の運転タスクを実施する自動運転モードと、運転者又は遠隔監視者が運転タスクを実施する手動運転モードと、を遷移可能な車両を制御する車両制御装置に適用したものである。
車両制御装置は、車両に備えられた外界センサの検知結果に基づいて、車両の周辺の状況を認識する認識部と、認識部により認識された車両の周辺の状況に基づいて、車両の現在位置から目標位置までの走行軌道を生成する走行軌道生成部と、自動運転モードで運転タスクを実施中に、自動運転モードから手動運転モードへ遷移可能な遷移可能位置を決定する遷移可能位置決定部と、を備える。
ここで、走行軌道生成部は、現在位置から目標位置までの車両の走行軌道である第一走行軌道と、第一走行軌道上の点から遷移可能位置までの走行軌道である第二走行軌道と、をそれぞれ生成し、第一走行軌道又は第二走行軌道を用いて車両を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自動でのすれ違い走行が不可能と判定される状態となった場合に、適切なバックアップ軌道を計画して、自動運転を継続できるようになる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置を搭載した車両の走行駆動系及びセンサの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置の滞留リスクマップ生成部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置による滞留リスクマップ生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置による狭路走行中のすれ違い走行の例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置の車両運転計画部の構成例を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置のすれ違い軌道計画部の構成例を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置による待機位置姿勢生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置による停車位置姿勢の制御例を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置によるすれ違い軌道生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置による終了位置候補の例を示す図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置によるすれ違い軌道の例を示す図である。
【
図13】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置による車両の動きと計画されたすれ違い軌道の例を示す図である。
【
図14】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置による車両の動きと計画されたバックアップ軌道の例を示す図である。
【
図15】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置によるギブアップ時のドライバ交代位置生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置によるギブアップ時のバックアップ軌道生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の第1の実施の形態例に係る車両制御装置の走行モード管理部の構成例を示すブロック図である。
【
図18】本発明の第2の実施の形態例に係る車両制御装置による車両の動きと計画されたバックアップ軌道の例を示す図である。
【
図19】本発明の第2の実施の形態例に係る車両制御装置によるギブアップ時のドライバ交代位置を示す図である。
【
図20】本発明の第3の実施の形態例に係る車両制御装置による車両の動きと車両搭載センサの検知範囲の例を示す図である。
【
図21】本発明の第3の実施の形態例に係る車両制御装置による車両の動きと計画されたバックアップ軌道の例を示す図である。
【
図22】本発明の第3の実施の形態例に係る車両制御装置によるギブアップ時のバックアップ軌道生成処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態例>
以下、本発明の第1の実施の形態例による車両制御装置及び車両制御方法を、
図1~
図17を参照して説明する。
【0010】
[車両の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態例による車両制御装置1を搭載した車両100の全体構成を示す。車両100は、車両制御装置1の制御で自動運転が行われる。
図1に示すように、車両100は、左前輪101FL、右前輪101FR、左後輪101RL、右後輪101RRを有する。
車両100には、外界を認識するセンサとして、前方認識センサ2、左側方認識センサ3、右側方認識センサ4、及び後方認識センサ5を備えており、自車と周囲車両の相対距離及び相対速度を検出することができる。これらのセンサ2、3、4、及び5の情報(検出信号)が、車両制御装置1に供給される。
【0011】
車両制御装置1は、センサ2、3、4、及び5の情報に基づき、車両100の進行方向を制御するためのステアリング制御機構10、ブレーキ制御機構13、及びスロットル制御機構20への指令値を演算する。また、車両100は、車両制御装置1からの指令値に基づきステアリング制御機構10を制御する操舵制御装置8と、車両制御装置1からの指令値に基づきブレーキ制御機構13を制御し各輪のブレーキ力配分を調整する制動制御装置15を備える。さらに、車両100は、車両制御装置1からの指令値に基づきスロットル制御機構20を制御しエンジンのトルク出力を調整する加速制御装置19と、車両100の走行計画や周辺に存在する移動体の行動予測等を表示する表示装置24とを備える。
【0012】
また、車両100は、路車間又は車々間の通信を行う通信装置23を備える。なお、
図1に示すセンサ構成は一例であり、
図1の例に限定されるものではない。センサの種類についても、超音波センサ、ステレオカメラ、赤外線カメラ、レーザ、ライダ(LiDAR)などの各種センサ、あるいはこれらのセンサの組み合わせで構成してもよい。
【0013】
車両制御装置1は、
図2で後述するように、例えばCPUやメモリなどを備えた演算処理装置として構成され、車両走行制御処理を行うプログラムが記憶され、そのプログラムの実行で走行計画を生成する。車両制御装置1は、生成した走行計画に従って車両走行を制御するための各アクチュエータ10、13、20の指令値を演算する。各アクチュエータ10、13、20の制御装置8、15、19は、車両制御装置1の指令値を通信により受信し、当該指令値に基づき各アクチュエータを制御する。
【0014】
図1に示すブレーキを作動させる構成について説明すると、ドライバが運転している状態では、ドライバがブレーキペダル12を踏むことで生じる踏力をブレーキブースタ(不図示)で倍力し、マスタシリンダ(不図示)によって、対応した油圧を発生させる。発生した油圧は、ブレーキ制御機構13を介して、各輪101FL~101RRに配置された16FL、16FR、16RL、16RRに供給される。
【0015】
ホイルシリンダ16FL~16RRは、シリンダ、ピストン、パッド等から構成されており、マスタシリンダ9から供給された作動液によってピストンが推進され、ピストンに連結されたパッドがディスクロータに押圧される。なお、ディスクロータは、各輪101FL~101RRを構成する車輪とともに回転している。そのため、ディスクロータに作用したブレーキトルクは、車輪と路面との間に作用するブレーキ力となる。以上の構成により、ドライバのブレーキペダル操作に応じて、各輪に制動力を発生させることができる。
【0016】
制動制御装置15は、車両制御装置1と同様に、例えばCPUやメモリなどを備えた演算処理装置として構成される。制動制御装置15には、前後加速度、横加速度、ヨーレートを検出可能なコンバインセンサ14と、各輪に設置された車輪速センサ11FL~11RRと、制動制御装置15からのブレーキ力指令と、後述する操舵制御装置8を介しハンドル角検出装置21からのセンサ信号が入力されている。また、制動制御装置15の出力は、ポンプ、制御バルブを有するブレーキ制御機構13に接続されており、ドライバのブレーキペダル操作とは独立に、各輪に任意の制動力を発生させることができる。
【0017】
制動制御装置15は、センサ信号の入力に基づいて、車両のスピン、ドリフトアウト、車輪のロックを推定し、それらを抑制するように該当輪の制動力を発生させて、ドライバの操縦安定性を高める役割を担っている。また、車両制御装置1が、制動制御装置15にブレーキ指令を送ることで、車両100に任意のブレーキ力を発生させることができ、ドライバの操作が生じない自動運転においては自動的に制動を行う役割を担っている。但し、制動を行う構成は、このような構成に限定されるものではなく、ブレーキバイワイヤ等のほかのアクチュエータを用いてもよい。
【0018】
次に、ステアリング動作を行う構成について説明する。
ドライバが車両を運転している状態で、操舵トルク検出装置7は、ドライバがハンドル6を介して入力した操舵トルクを検出し、ハンドル角検出装置21は、ハンドル角を検出する。これらの情報に基づいて、操舵制御装置8は、モータを制御しアシストトルクを発生させる。なお、操舵制御装置8も、車両制御装置1と同様に、例えばCPUやメモリなどを備えた演算処理装置として構成される。
ドライバの操舵トルクと、モータによるアシストトルクの合力により、ステアリング制御機構10が可動することにより、前輪が切れる。一方で、前輪の切れ角に応じて、路面からの反力がステアリング制御機構に伝わり、路面反力としてドライバに伝わる構成となっている。
【0019】
操舵制御装置8は、ドライバのステアリング操作とは独立に、モータによりトルクを発生し、ステアリング制御機構10を制御することができる。したがって、車両制御装置1は、操舵制御装置8に操舵力指令を通信することで、前輪を任意の切れ角に制御することができるので、ドライバの操作が生じない自動運転においては自動的に操舵を行う役割を担っている。但し、本実施の形態例は、
図1に示す操舵制御装置8に限定するものではなく、ステアバイワイヤ等のほかのアクチュエータを用いてステアリング動作を行う構成としてもよい。
【0020】
次に、アクセルの構成について説明する。
ドライバのアクセルペダル17の踏み込み量は、ストロークセンサ18で検出され、加速制御装置19に入力される。この加速制御装置19も、車両制御装置1と同様に、例えばCPUやメモリなどを備えた演算処理装置として構成される。
加速制御装置19は、アクセルペダル17の踏み込み量に応じてスロットル開度を調節し、エンジンを制御する。これにより、加速制御装置19は、ドライバのアクセルペダル操作に応じて車両を加速させることができる。また、加速制御装置19は、ドライバのアクセル操作とは独立にスロットル開度を制御することができる。したがって、車両制御装置1は、加速制御装置19に加速指令を通信することで、車両に任意の加速度を発生させることができ、ドライバの操作が生じない自動運転においては自動的に加速を行う役割を担っている。
【0021】
[車両制御装置の構成]
次に、本実施の形態例の車両用制御システムに実装されている自動運転用制御を行う車両制御装置1の構成について、
図2を用いて説明する。
車両制御装置1は、
図2に示すブロックの外側に示すように、例えば情報処理装置であるコンピュータにより構成される。
すなわち、車両制御装置1としてのコンピュータは、プロセッサであるCPU(中央処理ユニット:Central Processing Unit)211、メモリ212、入出力部213、及びインターフェース214を備える。
【0022】
メモリ212としては、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリの他、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置が使用される。メモリ212には、車両制御装置1として作動させるためのプログラムや、運転状況や履歴などの情報が記憶される。また、CPU211の制御でプログラムを読み出して実行することで、メモリ212には後述する処理機能部201~205が構成される。
【0023】
入出力部213は、
図1に示したセンサ2~5などの情報の入力処理を行うと共に、各アクチュエータ10、13、20の指令値などの出力処理を行う。
インターフェース214は、制動制御装置15などの車両100内の他の情報処理装置と情報の伝送処理を行うと共に、
図1に示す通信装置23を経由して外部との送受信の処理を行う。
【0024】
車両制御装置1に構成される処理機能部について説明すると、車両制御装置1には、自動運転計画部201、自動駐車計画部202、車両運動制御部203、アクチュエータ制御部204、及び滞留リスクマップ生成部205が構成される。これらの処理機能部201~205は、車両ネットワーク206により相互に通信を行うことができる。車両ネットワーク206は、有線接続の他、無線接続されている場合もある。
【0025】
自動運転計画部201は、車両100を目的地へ自動で運転するための自車両の動作を計画する。
自動駐車計画部202は、駐車場などで車両100を自動的に駐車枠に駐車させるための自車両の動作を計画する。
車両運動制御部203は、自動運転時に車両100の運動を制御するための指令値を生成する。
アクチュエータ制御部204は、エンジン、ブレーキ、ステアリングなどの各アクチュエータを制御する。
滞留リスクマップ生成部205は、対向車両などを含む自車両の周辺に存在する車両の滞留リスクマップを生成する。
なお、アクチュエータ制御部204は、エンジン制御用コントローラやブレーキ制御用コントローラなどの、車両制御装置1とは異なるハードウェアに実装される場合もある。
【0026】
[滞留リスクマップ生成部の構成]
図3は、車両制御装置1の滞留リスクマップ生成部205の構成を示す。
滞留リスクマップ生成部205には、レーダ301、ステレオカメラ302、車両センサ303、及びライダ304からの情報が供給される。
すなわち、レーダ301は、外界を認識するセンサとして、電波を対象物に向けて発射し、その反射波を測定することにより、対象物までの距離や方向を測ることができる。このレーダ301で得た対象物までの距離や方向の情報が、滞留リスクマップ生成部205に供給される。
また、ステレオカメラ302は、対象物を複数の異なる方向から同時に撮影することにより、その奥行き方向の情報を得ることができる。このステレオカメラ302で得た奥行き方向の情報が、滞留リスクマップ生成部205に供給される。
【0027】
さらに、車両センサ303は、車両の速度やタイヤの回転数に関する情報、GNSS(全球測位衛星システム)を用いた自動運転車両の平均位置を算出した情報、自動運転車両に乗員している人がナビゲーションシステムをインターフェースとして入力した目的地情報、及び電話回線などの無線通信を活用して遠隔地にいるオペレータなどが指定した目的地情報などを得るセンサである。これらの車両センサ303で得た情報が、滞留リスクマップ生成部205に供給される。
ライダ304は、パルス状に発光するレーザ照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離を検知する。このライダ304で得られた遠距離にある対象までの距離の情報が、滞留リスクマップ生成部205に供給される。
【0028】
滞留リスクマップ生成部205は、センサ情報処理部305、地図情報処理部306、立体物行動予測部307、記憶部308、滞留リスクマップ演算部309、及び自己位置推定処理部310を備える。
センサ情報処理部305には、レーダ301、ステレオカメラ302、車両センサ303、及びライダ304で構成される外界センサによる検知情報が入力され、センサ情報処理部305は、外界センサの検知情報から自車の周囲に存在する移動物体の物体情報を得る。
【0029】
具体的な物体情報としては、歩行者、自転車、車両などの属性情報や、それらの現在位置及び現在速度ベクトルが抽出される。ここで、移動物体としては、現時刻で得られた速度がゼロであったとしても、将来において動く可能性がある駐車車両なども含まれる。
センサ情報処理部305は、車両に備えられた外界センサの検知結果の情報に基づいて、車両100の周辺の状況を認識する認識処理を行う認識部として機能する。
【0030】
記憶部308には、自車両が自動運転を開始する地点から目標地点及びその周辺にある道路情報や信号機情報、現在位置から目標地点までのルート情報、走行する区間の交通ルールデータベースなどが記憶される。また、記憶部308には、自己位置推定処理部310で用いる点群データベースも記憶される。
地図情報処理部306は、記憶部308に記憶されている情報から、自動運転を行うために必要な道路の車線中心線情報や信号機情報を得る。そして、地図情報処理部306は、自動運転車両が通行予定である信号機の点灯情報などを整理して、これらの車線中心線情報や信号機情報を利用できる形式の情報とする。
さらに、自己位置推定処理部310は、車両センサ303などで得られた周辺情報と、点群データベース、車両のステアリング角度、車両速度、及びGNSSで得られた情報に基づいて、自車両が存在する場所を推定する。
【0031】
そして、センサ情報処理部305の出力と、地図情報処理部306の出力と、自己位置推定処理部310の出力は、立体物行動予測部307に供給される。
立体物行動予測部307は、これらの入力情報に基づいて、各移動物体の将来の位置及び速度情報(物体予測情報)を演算する。
立体物行動予測部307は、各移動物体の動きを予測するために、まず物体情報に基づいて各物体の将来時間Tにおける位置R(X(T),Y(T))を予測する。予測する具体的な方法として、移動物体の現在位置Rn0(Xn(0),Yn(0))、現在速度Vn(Vxn,Vyn)とした場合、立体物行動予測部307は、例えば、以下の線形予測式である[数1]式に基づいて、予測演算を行う。
【0032】
[数1]
Rn(Xn(T),Yn(T))=Vn(Vxn,Vyn)×T+ Rn0(Xn(0),Yn(0))
【0033】
[数1]式の演算は、各物体は将来時間において現在速度を維持して移動する等速直線運動を仮定して行われる。これにより、短時間に多くの物体の予測が可能となる。
また、別の演算手法として、センサなどによって得られた他車両の位置及び速度情報やカメラによって得られた画像情報を、学習済みのニューラルネットワークモデルに入力することにより他車両の将来時間における位置や速度情報の予測結果を得るようにしてもよい。この演算によれば、予測結果の信頼度を算出することも可能になる。
【0034】
滞留リスクマップ演算部309は、対向車両などの周辺車両の滞留リスクマップを演算処理で生成する。周辺に存在する車両や歩行者、自転車などのオブジェクトと協調的な行動を行わないと衝突やデッドロックが発生するようなシーンがある場合には、滞留リスクマップ演算部309は、協調行動対象のオブジェクトの目標行動に基づいて算出させる予測軌道を使って滞留リスクマップを生成し、生成した滞留リスクマップを出力する。
【0035】
[滞留リスクマップ生成処理]
図4は、滞留リスクマップ生成部205が滞留リスクマップを生成する処理の例を示すフローチャートである。
まず、滞留リスクマップ生成部205は、周辺情報を含む各種情報を取得する(ステップS11)。
次に、滞留リスクマップ生成部205は、取得した周辺情報に基づいて、自車と協調してすれ違い走行をする必要がある対向車両などの現在位置と速度情報、及び自車と対象車両が走行中の道路環境情報に基づいて、対象車両の目標行動を予測する(ステップS12)。なお、道路環境情報としては、道路形状や周辺に存在するオブジェクト情報、周辺の地図情報や混雑情報などが考えられる。
【0036】
そして、滞留リスクマップ生成部205は、対象車両が自車と協調行動が必要となる移動体であるか否かを判定する(ステップS13)。
ステップS13で協調行動が必要と判定された場合(ステップS13のYes)、滞留リスクマップ生成部205は、協調行動が必要になる対象車両の目標行動に基づいて、協調行動計画と滞留リスクマップを生成して出力する(ステップS14)。
また、ステップS13で協調行動が不要と判定された場合(ステップS13のNo)、滞留リスクマップ生成部205は滞留リスクマップを生成せずに処理を終了する。
【0037】
図5は、協調行動計画と滞留リスクマップの生成結果の一例を示す。
図5の上段の例、並びに
図5の下段の例は、いずれも、自車M1と協調行動が必要な対象の対向車M2が狭路においてすれ違いを行おうとしている状況を示している。
図5の上段の例は、自車M1の左側の道路境界741が直線状でなく退避路がある場合であり、
図5の下段の例は、自車M1の左側の道路境界741が直線状で、退避路が反対側(自車M1から見て右側)にある場合である。
【0038】
このように、
図5の上段及び下段に示す状況のとき、滞留リスクマップ生成部205は各種情報に基づいて、対向車M2が将来(協調行動が完了するまでの所定時間)の時刻において、到達目標地点742を予測する。
そして、滞留リスクマップ生成部205は、その予測地点へ対向車が到達するための経路を予測し、その経路を対向車が通過する際の領域を算出する。滞留リスクマップ生成部205が算出した結果は、
図5の上段、下段とも滞留リスクマップ701になる。
【0039】
また、滞留リスクマップ生成部205は、到達目標地点742及び滞留リスクマップ701に基づいて、自車M1が待避する自車待避位置731を算出する。そして、滞留リスクマップ生成部205は、自車M1及び対向車M2のそれぞれの行動が共に完了するために、各待避行動を直列もしくは並列に実行するシーケンスを検討し、それを実現することができるシーケンスを協調行動計画とする。
協調行動計画としては、最初に、滞留リスクマップ生成部205は、自車M1が自車待避位置731に入る計画をし、次に、対向車M2が自車M1の横を通過する計画を策定する。そして、最後に、自車M1が退避路から出る計画をする。
このような行動が完了するシーケンスが見つけられない場合には、再度到達目標地点や滞留リスクマップ、自車待避位置を見直し、再帰的にシーケンスを探索する。
【0040】
[自動運転計画部の構成]
図6は、自動運転計画部201の構成例を示す。
自動運転計画部201は、目標軌道を演算する自動運転計画作成部221と、走行モード管理部222と、軌道計画部230とを備える。
【0041】
自動運転計画作成部221には、滞留リスクマップ、協調行動計画、車線情報、地図情報、環境情報、ルート情報、UI情報などが供給される。
自動運転計画作成部221は、ルート情報や環境情報などに基づき、自車両が取り得る目標行動候補重みを算出する。目標行動候補重みとは、現在いる車線を維持するLK候補重み、現在いる車線から隣接車線へ車線変更するLC候補重み、前方に存在する障害物を回避するOA候補重み、他車両と協調行動するCO候補重みなどの、自車両が取り得る行動に対しての重みである。例えば、直線路を走行時において、前方に避けるべき車両や物体が存在せず、またルート情報からも隣接車線へ車線変更する必要がないと考えられる状況においては、LKの重み=100、LCの重み=0、OAの重み=0、COの重み=0などになる。
【0042】
軌道計画部230は、車線維持軌道生成部(LK)231、車線変更軌道生成部(LC)232、障害物回避軌道生成部(OA)233、協調行動軌道生成部(CO)234、軌道調停部235を備える。そして、軌道計画部230は、車両の現在位置から目標位置までの走行軌道を生成する走行軌道生成処理を行う走行軌道生成部として機能する。
車線維持軌道生成部231は、自車両が現在走行している車線の中央を維持するための軌道を生成する。
車線変更軌道生成部232は、自車両が現在走行している車線の隣接車線への車線変更行うための軌道を生成する。
【0043】
障害物回避軌道生成部233は、自車両が現在走行している車線内に存在する走行するために障害となる物体を避けるような軌道を生成する。
協調行動軌道生成部234は、周辺オブジェクトと協調行動を行うための軌道を生成する。
軌道調停部235は、車線維持軌道、車線変更軌道、障害物回避軌道、協調行動軌道に対して、周辺物体との安全度と目標行動候補重みに基づいて、各軌道の評価を行い、最も評価が良い軌道を選択して、目標軌道を生成する。
【0044】
走行モード管理部222は、軌道調停部235によって選択された目標走行モードと各行動候補に基づく軌道評価値、及び協調行動軌道生成部234による手動運転要求に基づいて、次回サンプリング時間における目標行動候補重みを算出するための前回選択情報を演算する。例えば、LK=60,LC=40,OA=0、C=0という評価値によって、LK(現在いる車線を維持:レーンキープ)が選択された場合には、次回サンプリング時間においても、行動の継続性のためにLKが選択される可能性が高くなるように前回選択されている現在走行情報を生成する。
【0045】
[協調行動軌道生成部の構成]
図7は、協調行動軌道生成部234の構成を示す。
協調行動軌道生成部234は、協調行動状態管理部241、待機位置姿勢生成部242、協調行動軌道算出部243、ギブアップ時の運転交代位置生成部244、バックアップ軌道生成部245、及び協調行動軌道選択部246を備える。この協調行動軌道生成部234には、滞留リスクマップ、協調行動計画情報、環境情報、車線情報、及び地図情報が供給される。
協調行動状態管理部241は、協調行動軌道を追従可能であるか否かを判断し、追従不可能である場合にはデッドロック状態であることを判断する。
待機位置姿勢生成部242は、協調行動計画における目標待機位置姿勢候補を生成する。
協調行動軌道算出部243は、協調行動モードでの走行軌道(第一走行軌道)を算出する。
【0046】
ギブアップ時の運転交代位置生成部244は、走行軌道上で、ギブアップ時の運転交代位置を生成する。運転交代位置は、例えば自動運転モードから手動運転モードへと遷移させるモード遷移の可能位置であり、運転交代位置生成部244は、遷移可能位置決定部として機能する。
バックアップ軌道生成部245は、協調行動モードで走行軌道を走行できない場合に、運転交代位置までのバックアップ軌道(第二走行軌道)を生成する。
協調行動軌道選択部246は、協調行動軌道算出部243が算出した協調行動軌道とバックアップ軌道生成部245が生成したバックアップ軌道の内の適切な軌道を選択して、車両100の走行を制御する。
【0047】
図8は、協調行動軌道生成部234内の待機位置姿勢生成部242が行う待機位置姿勢生成処理例を示すフローチャートである。
まず、待機位置姿勢生成部242は、滞留リスクマップ、協調行動計画情報、環境情報、車線情報、地図情報等の各種情報を取得する(ステップS21)。次に、待機位置姿勢生成部242は、協調行動計画における現在の協調行動ステップにおける目標待機位置姿勢候補を生成する(ステップS22)。
【0048】
図9は、ステップS22における目標待機位置姿勢候補の生成処理の例を示す。
図9の例では、自車両M1の前方に協調行動するべき対向車両M2が存在している。そして、自車両M1の前方左側に退避スペースが存在している。
図9では、道路境界741が示されている。
図9の例では、滞留リスクマップ生成部205によって生成された滞留リスクマップ701は、自車両M1の前方に存在している。このため、ここでの協調行動であるすれ違い走行を実現するために、自車両M1は、この滞留リスクマップ701が存在しない場所に移動し、待機する必要がある。そこで、滞留リスクマップ生成部205は、滞留リスクマップ701が存在せずに、周辺の走行可能領域(道路境界741の内側)である待避姿勢位置候補(N1,θ1)~(N5,θ5)を生成する。Nは平面位置座標、θは車両の車頭角度を表す。このとき生成する待避姿勢位置候補の数は任意であるが、生成する場所としては、自車両M1の大きさを考慮した範囲で滞留リスクマップ701に近い場所を選定する。
【0049】
[協調行動軌道生成処理]
図10は、協調行動軌道算出部243が協調行動軌道を生成する処理を示すフローチャートである。
まず、協調行動軌道算出部243は、滞留リスクマップ、協調行動計画情報、環境情報、車線情報、地図情報等の各種情報を取得する(ステップS31)。
そして、協調行動軌道算出部243は、退避位置を通過後に走行モードを協調行動モードから他のモードへ変更する到達位置である終了位置候補を生成する(ステップS32)。
その後、協調行動軌道算出部243は、退避位置候補と終了位置候補を通る軌道計画候補を生成する(ステップS33)。
【0050】
さらに、協調行動軌道算出部243は、生成した軌道候補を評価し、最適な軌道を選択する(ステップS34)。最後に、協調行動軌道算出部243は、ステップS34で選択した協調行動軌道情報を記憶部308に格納する。
【0051】
ここで、ステップS34における生成した軌道候補を評価し、最適な軌道を選択する処理について、以下に説明する。
生成した軌道候補に対して、最適な軌道を選択するために、各軌道候補の評価演算方法としては、例えば[数2]式の方程式を用いることが考えられる。前述したように、各待避可能姿勢位置候補と終了位置候補に対して、軌道候補が生成されているため、この候補の中で最適なものを選択する必要がある。そこで、それぞれの軌道候補に対して、以下の評価関数によって各軌道候補の総合評価値とした。
【0052】
【0053】
[数2]式では、5項目の個別評価値に対して、各項目の重み係数を設定し、重み係数と個別評価値の積の総和を計算している。5個の個別評価値としては、安全性の評価、利便性の評価、乗り心地の評価、違和感の評価、対向車両への圧迫感の評価とした。安全性の評価については、すれ違い経路を走行している際に、周辺のオブジェクトとの接触や接近を避けるために十分な距離が確保されているかが評価される。そのために、周辺のオブジェクトとの距離や顕在リスク値を使って安全性の評価量を算出する。例えば、道路と経路候補の最小距離の逆数や衝突リスクマップの値を評価値とする方法が考えられる。
【0054】
利便性の評価については、対向車両が存在している状況下では、協調行動、ここではすれ違いのための動作に時間がかかると、対向車両が待機する時間が長くなり、他車両や自車両の乗員が不信感を持つ可能性がある。そのため、自車の速度が経路の長さに依存せず一定であるためには、自車両の待避経路の長さを使って、利便性の評価量が算出される。例えば、入庫側の経路の長さを評価値とする方法が考えられる。
【0055】
乗り心地の評価としては、待避経路を自車両が追従する際に、車両に生じる加速度やジャークなどが大きくならないかを基に評価される。例えば、横加速度の大きさ及び横加速度が発生する時間が長い経路は乗り心地が悪いと考える。また、経路の旋回半径が小さい状態で、長い旋回角度が大きいほどを走行する乗心地に関する評価値が大きくなるのは乗り心地が良くない経路とする。これにより、(旋回半径の逆数)×(総旋回角度)の値を評価指標とすることが考えられる。
【0056】
違和感の評価については、自車両の乗員において、切り返しが必要となるすれ違い走行を行うことは違和感が生じると考え、切り返し回数を使って評価値が算出される。
対向車両への圧迫感の評価としては、対向車両に接近しすぎる経路は、自車両及び他車両の乗員に不信感や恐怖感を持たせる可能性がある。そのため、対向車両との候補経路との距離に基づいて、評価値が算出される。例えば、他車両の中心位置座標との経路候補との最小距離の逆数を評価指標とする方法が考えられる。
【0057】
[終了位置候補の生成処理]
図11は、ステップS32における終了位置候補の生成処理の例を説明する図である。
ここでの終了位置候補は、協調行動モードから他のモード(例えばレーンキープモード)に遷移することが予想される地点が選定される。
図11の例では、道路境界741によりすれ違いが可能な箇所が設定された状況で、地図情報に記憶されている自車両M1の走行車線の中心線上751でかつ、すれ違いモード開始地点と各待避姿勢位置候補による線対称(
図11でLの長さが等しい位置)とした位置を、終了位置候補とする。
【0058】
[協調行動軌道候補の生成処理]
図12は、ステップS33における協調行動軌道候補の生成処理の例を説明する図である。
協調行動軌道を生成するためには、協調行動目標経路が生成され、その後に生成した経路上を走行する協調行動目標速度が生成される。協調行動目標経路の生成処理としては、例えば、滞留リスクマップと待避可能姿勢位置候補を用いて、目標とする待避位置及び終了位置候補に対して、円弧と直線とクロソイド曲線が生成される。
図12では、自車両M1が現在位置から退避位置に向かう経路について、道路境界741が直線状で退避位置が始まるまでは中心線上751とほぼ平行な直線とし、道路境界741が変形した箇所で、円弧曲線を使った曲線状の経路として、退避位置(N3,θ3)に向かう経路としている。そして、対向車M2とすれ違い後は、中心線上751に戻る経路としている。
【0059】
図13は、自車両M1の前方に対向車両M2が存在する際の、協調行動走行と協調行動軌道の代表的なシーンの例を示す。
ここでは、
図13の上段に示すように、自車両M1と協調行動対象の対向車両M2が、すれ違い地点を挟んで走行している。自車両M1の左側には退避領域があり、自車両M1のセンサの死角領域700の中には障害物706が存在している。また、周辺環境と対向車M2の配置に基づいて計算された滞留リスクマップ701が取得されている。
このような状況のとき、
図13の下段に示すように、滞留リスクマップ701に基づいて、自車M1の待避位置702、及び、その待避位置702へ現在位置から向かう軌道704、並びに待避位置702から終了位置703に向かう軌道705が演算される。
【0060】
[協調行動軌道を追従できなくなる場合]
図14は、協調行動軌道を走行した際に、対向車や周辺環境によって計画した協調行動軌道を追従できなくなる場合の例を示す。
ここでは、
図14の上段に示すように、自車両M1は、協調行動軌道704及び705を追従することで、協調行動を実現しようとしている。その行動過程の途中において、協調行動軌道を計画した際には死角領域700の中に存在していた障害物706が検知された状態である。また、行動過程の途中において、協調行動対象の対向車両M2が自車M1に接近してきている。そのため自車M1は障害物706をさけるための経路を生成できず、また他車両M2に関しても、狭路であることなどから後退することも困難な状況となっている。そのため、お互いが協調行動を継続することが困難な状態となっている。
【0061】
この
図14の上段に示すような状況の場合、本実施の形態例の自車両M1の車両制御装置1は、協調行動の対象である対向車両M2と協調行動が実行できなくなったとして、協調行動走行モードを中止して安全な車両状態になった後に、乗員もしくは遠隔操作者に対して、協調行動走行モードが継続不可能であることを通知させる。この通知は、協調行動走行モードが中止になった時点で通知してもよい。
【0062】
なお、自車両M1の車両制御装置1は、協調行動軌道を生成し、待避位置へ待避しようとしている間に、協調行動対象の対向車両M2が接近してきて、衝突の危険性を考慮して速度がゼロとなった状況において、かつ自車両M1の後方に、後続車両(
図14では不図示)が迫っている場合には、自車両M1は前進及び後退ができなくなるデッドロック状態となる。
【0063】
このデッドロック状態が一定時間継続した場合には、自車両M1のみではこの状態を打開することが困難であると判定される。そのため、車両制御装置1は、乗員もしくは、遠隔地点にいる遠隔操作者に対して、車両M1がデッドロック状態であることを車両搭載の表示装置などに通知し、乗員もしくは遠隔操作者による運転を促す。但し、デッドロック状態を通知して、手動運転要求を出した場合には、協調行動対象の車両や周辺のオブジェクトなどと接近した状態が想定され、その状態から手動運転を実行することは、周辺オブジェクトとの衝突を避けつつデッドロック状態を解消する運転が必要となり、乗員もしくは円環操作者が負担と感じることが予想される。そのため、より安全で安心した状態でデッドロック状態を解消することができる場所に移動した後に、乗員もしくは遠隔操作者に手動運転操作を切り替えるほうが望ましい。
本実施の形態例の車両制御装置1は、
図7に示す運転交代位置生成部244及びバックアップ軌道生成部245により、デッドロック時に乗員に運転交代する位置までの適切なバックアップ軌道を生成する。
【0064】
[ギブアップ時に運転交代位置を生成する処理]
図15は、運転交代位置生成部244が、ギブアップ時に運転交代位置を生成する処理を示すフローチャートである。
まず、運転交代位置生成部244は、滞留リスクマップ、協調行動計画情報、環境情報、車線情報、地図情報等の各種情報を取得する(ステップS41)。そして、運転交代位置生成部244は、ギブアップ時の運転交代位置を生成する(ステップS42)。本実施の形態例では、ギブアップ時の運転交代位置は、レーンキープモードなどから協調行動モードを開始した地点、もしくは乗員によって協調行動モードが開始されたとき、などとする。
【0065】
このように、協調行動モードを開始した地点まで自車を自動で走行させて、乗員もしくは遠隔地点にいる遠隔操作者に対して運転交代を促すことができれば、運転交代者の運転負担が軽減されることができると考えられる。また、協調行動を開始した地点まで乗員などが手動で運転してきていた場合には、すれ違い運転支援の初期状態に戻ることになるため、運転者の負担を低減することができる。
【0066】
[バックアップ軌道生成処理]
図16は、バックアップ軌道生成部245がバックアップ軌道を生成する処理を示すフローチャートである。
まず、バックアップ軌道生成部245は、滞留リスクマップ、協調行動計画情報、環境情報、車線情報、地図情報等の各種情報を取得する(ステップS51)。そして、バックアップ軌道生成部245は、ギブアップ時の運転交代位置へ至るバックアップ軌道候補を生成する(ステップS52)。ここでの運転交代位置は、運転交代位置生成部244によって生成された位置である。運転交代位置に至る経路は
図12で説明したように、直線や円弧曲線などを利用して作成することが考えられる。また、ステップS52で生成されるバックアップ軌道候補は、前進や後退などを組み合わせることにより複数本生成するのが好ましい。
【0067】
次に、ステップS52で生成した候補が複数本である場合に、バックアップ軌道生成部245は、複数本の軌道候補を評価し、その結果から最適な軌道を選択する(ステップS53)。複数本の軌道候補を評価する処理としては、例えば、
図10のフローチャートのステップS34で説明した方法が適用可能である。
その後、バックアップ軌道生成部245は、選択したバックアップ軌道を記憶部308に格納する(ステップS54)。
【0068】
[走行モード管理部の構成]
図17は、走行モード管理部222(
図6)の構成例を示す。
走行モード管理部222は、
図17に示すように、手動運転モード251、自動運転システムのシステムオフモード252、自動運転モード253の3つの状態を管理する。
走行モード管理部222は、車両100の電源スイッチなどがオンされた際に、システムオフモード252から手動運転モード251などに遷移する。また、走行モード管理部222は、手動運転モード251などからドライバなどの自動運転スイッチオンなどにより、自動運転モード253に遷移する。
【0069】
自動運転モード253の中には、既に説明したように、レーンキープ(LK)やレーンチェンジ(LC)などが存在している。また、それらの間の状態として、遷移中間状態が存在している。協調行動モード(CO)の状態においてデッドロックが発生し、自動運転システムがギブアップする必要があると判断された場合には、バックアップ軌道が生成される。そして、走行モード管理部222は、運転交代位置まで自動で走行した後に、協調行動軌道選択部246(
図7)により、手動運転要求が出され、手動運転モード251に遷移する。
【0070】
[第1の実施の形態例による効果]
以上説明したように、本実施の形態例の車両制御装置1によると、自動運転時に対向車とのすれ違いが必要になった際に、対向車両や周辺状況に基づいて協調行動軌道を生成する同時にバックアップ軌道を生成する処理が行われる。これにより、自車両は対向車両と衝突することなく、適切にすれ違いが行えるようになる。また、バックアップ軌道を生成する際には、複数の候補を生成した上で、各軌道候補の総合評価値から適切なものが選択されるため、乗り心地や乗員に不安感を与えることなく、協調行動を実行することが可能になる。
【0071】
ここで、本実施の形態例の場合、協調行動による自動運転モードの開始位置を、モード遷移可能位置である運転交代位置としたことで、簡単かつ適切に、運転交代位置に戻ることができる。
【0072】
<第2の実施の形態例>
次に、本発明の第2の実施の形態例による車両制御装置及び車両制御方法を、
図18~
図19を参照して説明する。第2の実施の形態例において、車両100が備える車両制御装置1などの構成は、第1の実施の形態例で説明した構成と同じであり、バックアップ軌道生成部245が、ギブアップ時の運転交代位置をすれ違い開始位置以外の地点として軌道を生成する点が、第1の実施の形態例と相違する。
【0073】
[すれ違い開始位置以外を運転交代位置とする例]
図18の例は、すれ違い行動を実行中に途中ですれ違い行動が継続できないこととなっている。すなわち、
図18の上段の例では、自車両M1が待避位置702へ現在位置から向かう軌道704、並びに待避位置702から終了位置703に向かう軌道705を算出して移動中に、障害物706が発見された状態である。ここで、自車両M1の後方には、後続車M3が接近しており、すれ違い開始位置まで戻ることが出来なくなっている状態である。
【0074】
この場合、バックアップ軌道生成部245は、
図18の下段に示すように、すれ違い開始位置以外の場所で安全に運転交代を実施できる位置722を探索し、その場所に向かうバックアップ軌道721を生成する処理を行う。
【0075】
[運転交代位置の具体的な算出例]
図19は、バックアップ軌道生成部245が運転交代位置722を探索して設定する処理の例を示す。
まず、
図19の上段に示すように、自車M1は協調行動軌道を追従中に障害物706が発見され、現在の自車M1の位置からバックアップ軌道を生成している状態である。あるいは、障害物706が発見される前の段階で、バックアップ軌道を生成している状態である。
【0076】
この状態で、自車M1の後方から後続車両M3が接近しており、協調行動モード開始地点には戻ることができなくなっている。そのため、本実施の形態例では、自車両M1が通行している狭路において、バックアップ軌道生成部245は、自車両M1に搭載されている地図情報の中に設定されている車線中心線751や車両センサの死角情報に基づいて、運転交代位置を探索する。
例えば、バックアップ軌道生成部245は、車線中心線751上でかつ、待避路753の内部の長さ方向の中心位置751に、運転交代位置722を設定する。
【0077】
また少なくとも自車M1の外界センサの死角領域若しくは障害物の有無により定まる車両M1の走行危険度が閾値以下の位置を、運転交代位置722(モード遷移可能位置)として決定することが考えられる。走行危険度の算出方法としては、例えば、
図19の下段に示すように、周辺オブジェクトとの距離である、後続車M3との距離L1、対向車M2との距離L2、障害物との距離L3や、自車M1のセンサが検知できていない領域の大きさが少ないことなどから算出される。
【0078】
[第2の実施の形態例による効果]
本実施の形態例の車両制御装置1によると、運転交代した場合にも、周辺オブジェクトとの距離や安全性が一定程度確保できており、運転交代者に不安を与える可能性を低減させることができる。
特に本実施の形態例では、外界センサの死角領域がある場合に、モード遷移可能位置である運転交代位置を設定するようにしたことで、外界センサの死角領域を考慮した適切な運転交代位置が設定できるようになる。
また、本実施の形態例では、外界センサの死角領域若しくは障害物の有無により定まる車両M1の走行危険度が閾値以下の位置を、運転交代位置とすることでも、適切な運転交代位置が設定できるようになる。
【0079】
<第3の実施の形態例>
次に、本発明の第3の実施の形態例による車両制御装置及び車両制御方法を、
図20~
図22を参照して説明する。第3の実施の形態例において、車両100が備える車両制御装置1などの構成は、第1の実施の形態例で説明した構成と同じである。そして、第3の実施の形態例においては、バックアップ軌道を生成する処理が、第1の実施の形態例と相違する。
【0080】
[自車の死角と、死角を考慮したバックアップ軌道の例]
本実施の形態例の車両制御装置1は、協調行動実行中に将来位置における周辺の死角となっている状態や、他車両の行動を予測し、また自車両の周辺オブジェクトを検知するセンサの検知範囲を推定したバックアップ軌道を生成する。
図20は、自車の死角の例を示す。
図20の上段に示す例では、道路境界741付近に、死角発生要因物体761が存在している。これは高い壁や電柱などが想定される。この死角発生要因物体761によって、退避スペース付近に、センサ2の死角領域700が生じている。
【0081】
この
図20の上段の例では、待避位置702が生成できた場合であるが、その付近には障害物762が死角領域700に入っており、車両M1の通行を阻害する可能性がある。この場合、
図20の中段に示すように、自車両M1の前方を検知するセンサ2の前方検知範囲2aに入ったオブジェクト(障害物762)を検知することが可能である。
【0082】
一方、バックアップ軌道を使って、ギブアップ時の運転交代位置まで後退する場合には、自車両M1の後方を検知するセンサ5により、後方検知範囲5aに入ったオブジェクトを検知することが可能である。ただし、車両M1に搭載されるセンサの種類によっては検知できる範囲が異なる。また、光学カメラなどを認識センサとする場合、街灯などの周辺の照明環境や、周辺に存在する車両のヘッドランプの影響などにより、車両前方と車両後方では検知能力に差が生じる可能性がある。
【0083】
このため、たとえばすれ違い位置に向かって前進している場合には検知出来ていた障害物762に対して、ギブアップ時の運転交代位置に後退する場合には検知することができない場合や検知が不十分になっている場合が考えられる。
具体的には、
図20の下段に示すように、自車両M1の後方を検知するセンサ5の後方検知範囲5aに、障害物762が検知できないケースが想定される。
【0084】
本実施の形態例の車両制御装置1のバックアップ軌道生成部245は、このような場合を考慮して、将来の自車センサの検知状態を予測したすれ違い軌道上の各点からバックアップ軌道を生成する。
【0085】
図21の上段の例は、自車両M1は待避位置702に向かう協調行動軌道704を走行していた場合に、途中で前方認識センサが死角領域700内の障害物762を検知した場合を示している。ここで、車両制御装置1は、前方認識センサで検知した障害物762に対して、将来位置771から後方認識センサを使って障害物762を検知できるか否かを確認する。その手法として、自車両の周辺の壁などの周辺環境及び他車両、自車両のセンサなどの数値モデル化を行う。そして、バックアップ軌道生成部245は、数値モデルを使った演算で、将来位置771からバックアップ軌道を生成することができるか否かを演算する。
【0086】
図21の下段は、将来位置771からドライバ運転交代位置773までのバックアップ軌道772を算出した例を示す。ここで、バックアップ軌道772は、前方認識センサが検知した障害物762を避ける軌道とする必要がある。
【0087】
[自車の死角を考慮したバックアップ軌道の生成処理]
図22は、本実施の形態例における、バックアップ軌道生成部245がバックアップ軌道を生成する処理を示すフローチャートである。
まず、バックアップ軌道生成部245は、各種情報を取得する(ステップS61)。
次に、バックアップ軌道生成部245は、自車両及び搭載しているセンサ、落下物や壁や交通参加者などの周辺オブジェクト、協調行動対象となっている対向車などについて、数値モデル化を実行する(ステップS62)。車両を数値モデル化する場合には、バックアップ軌道生成部245は、二輪車モデルや四輪モデルなどを用いて車両の挙動をモデル化する。また車両の形状に関しても、カメラなどで検出した車両の形や色情報や、ライダなどの点群情報に基づく車両の大きさ情報に基づいてモデル化を行う。
【0088】
次に、運転交代位置生成部244は、すれ違い軌道である協調行動軌道の将来のギブアップ位置を予測する(ステップS63)。そして、バックアップ軌道生成部245は、運転交代位置生成部244が予測した協調行動軌道の将来位置(ギブアップ位置)からドライバ交代位置へ至る将来バックアップ軌道候補を生成する(ステップS64)。これにより、将来のバックアップ軌道候補の生成で、バックアップ軌道772が更新されることになる。ドライバ交代位置としては、協調行動開始位置や、第2の実施の形態例で説明した探索した結果などが利用される。なお、ここではバックアップ軌道772を更新するようにしたが、現在位置から待避位置702へ向かう軌道704(第一走行軌道)を更新してもよい。
【0089】
その後、協調行動軌道選択部246は、生成した将来バックアップ軌道候補を評価し、最適な軌道を選択する(ステップS65)。そして、協調行動軌道選択部246は、将来バックアップ軌道が生成出来ているか否かを確認する(ステップS66)。
ここでの確認時には、
図21の下段に示すように、車両M1が待避位置702へ現在位置から向かう軌道704(第一走行軌道)を走行する場合に、外界センサ(
図20に示す前方認識センサ2)の検知結果と、車両がバックアップ軌道772(第二走行軌道)を走行する場合の外界センサ(
図20に示す後方認識センサ5)の検知結果との差分を取得又は推定した上で、適切なバックアップ軌道772が得られているかを判断する。
【0090】
つまり、協調行動軌道選択部246は、複数の外界センサで、検知範囲や検知性能に差がある場合、検知結果との差分を考慮して、適切な将来バックアップ軌道が生成できているか否かを判断する。具体的には、
図20の中段に示すように、前方認識センサで障害物762が検知できているとき、後退時に
図20の下段に示すように、後方認識センサで障害物762が検知できない場合でも、前方認識センサで検知した結果から、障害物762ありと認識結果を補正して、その障害物762を避けたバックアップ軌道772を得るようにする。
【0091】
ステップS66において、両センサ2,5の検知結果の差分の取得又は推定を行った上で適切な将来バックアップ軌道が生成できている場合(ステップS66のYes)、協調行動軌道選択部246は、ステップS65で選択された将来バックアップ軌道情報を記憶部308に格納して処理を終了する(ステップS67)。なお、ステップS66でYesと判断する場合は、将来バックアップ軌道が生成できた場合の他に、現在位置から待避位置702へ向かう軌道704が更新された場合も含まれる。
【0092】
また、ステップS66において、両センサ2,5の検知結果の差分の取得又は推定を行った上で適切な将来バックアップ軌道が生成できていない場合(ステップS66のNo)、協調行動軌道選択部246は、手動運転モードへの遷移要求を行う(ステップS68)。
すなわち、将来バックアップ軌道が生成できていない状況で、このまま協調行動を継続すると、将来位置においてデッドロックが発生した際にバックアップ軌道が生成できずに、デッドロックした場所などでギブアップする可能性がある。そのため、デッドロックが生じる前に、手動運転モードへの要求をすることを実行する。あるいは、手動運転モードへの要求を行う代わりに、現時点で生成できているバックアップ軌道を利用して、運転交代位置に移動してもよい。
【0093】
[第3の実施の形態例による効果]
以上説明したように、本実施の形態例によると、死角領域が存在している状態におけるすれ違い走行において、将来位置からのバックアップ軌道を考慮した軌道を生成することにより、すれ違い走行の途中で目標待避位置姿勢や目標軌道が変更されることがなくなる。また、ギブアップする必要がある場合にも、乗員の乗り心地や不安感を与えることがなくなる。
さらに、車両に搭載された複数の外界センサの性能(検知範囲や検知性能など)に相違がある場合でも、各センサの検知結果の差分から障害物などを認識して、認識結果を補正して、適切なバックアップ軌道を生成することで、外界センサの性能差を考慮した適切なバックアップ軌道の生成が可能になる。
【0094】
<各実施の形態例の変形例>
なお、ここまで説明した各実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上述した実施の形態例で説明した構成や処理は、各種変形や変更が可能である。例えば、
図5などで説明したすれ違い動作は、道路の左側を通行する地域で、道路の左に自車を寄せてすれ違いを行う例であり、道路の右側を通行する地域では、すれ違いを行う際の左右の方向が逆になる。
【0095】
また、上述した各実施の形態例では、走行軌道(第一走行軌道、第二走行軌道)を生成(算出)して、その走行軌道を自動運転で走行させるようにした。一般に、走行軌道と述べた場合、道路上の座標位置と、その座標位置を通過する時刻の情報を持ち、本発明の場合にも、座標位置と時刻の情報で、走行を制御する。
これに対して、走行軌道として、車両が各座標位置を通過する時刻の情報を持たない、道路上の座標位置の情報だけを持った、いわゆる走行経路の情報としてもよい。すれ違い走行を行う上では、各時刻での対向車の位置を予測しながら、自車が各時刻でどの位置に移動するかを判断することが好ましいが、対向車が停止している状況などでは、走行軌道の代わりに、座標位置の情報だけを持った走行経路を生成してもよい。
このように走行経路を生成するようにしたことで、時間情報を扱う必要がなく、より簡単に走行軌道(走行経路)を生成できるようになる。
【0096】
また、
図2に示す構成では、コンピュータで構成された車両制御装置1が、上述した各実施の形態例の処理を行う装置として構成したが、既存の車両制御装置1に実装されたプログラムを修正して、同様の処理を行うようにしてもよい。
この場合のプログラムについては、
図2に示したコンピュータ内のメモリに用意する他に、外部のメモリ、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いて、転送してもよい。
さらに、車両制御装置1の一部又は全部を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0097】
また、
図2、
図3、
図6、
図7、
図17に示す構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。また、
図4、
図8、
図10、
図15、
図16、
図22に示すフローチャートについても、処理結果が同じであれば、処理順序を変更したり、複数の処理を同時に実行してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…車両制御装置、2…前方認識センサ、3…左側方認識センサ、4…右側方認識センサ、5…後方認識センサ、6…ハンドル、7…操舵トルク検出装置、8…操舵制御装置、9…マスタシリンダ、10…ステアリング制御機構、11FL…車輪速センサ、12…ブレーキペダル、13…ブレーキ制御機構、14…コンバインセンサ、15…制動制御装置、16FL,16FR,16RL,16RR…ホイルシリンダ、17…アクセルペダル、18…ストロークセンサ、19…加速制御装置、20…スロットル制御機構、21…ハンドル角検出装置、23…通信装置、24…表示装置、100…車両、101FL…左前輪、101FR…右前輪、101RL…左後輪、101RR…右後輪、201…自動運転計画部、202…自動駐車計画部、203…車両運動制御部、204…アクチュエータ制御部、205…滞留リスクマップ生成部、206…車両ネットワーク、211…CPU、212…メモリ、213…入出力部、214…インターフェース、221…自動運転計画作成部、222…走行モード管理部、230…軌道計画部、231…車線維持軌道生成部、232…車線変更軌道生成部、233…障害物回避軌道生成部、234…協調行動軌道生成部、235…軌道調停部、241…協調行動状態管理部、242…待機位置姿勢生成部、243…協調行動軌道算出部、244…運転交代位置生成部、245…バックアップ軌道生成部、246…協調行動軌道選択部、251…手動運転モード、252…システムオフモード、253…自動運転モード、301…レーダ、302…ステレオカメラ、303…車両センサ、304…ライダ、305…センサ情報処理部、306…地図情報処理部、307…立体物行動予測部、308…記憶部、309…滞留リスクマップ演算部、310…自己位置推定処理部、M1…自車両、M2…対向車、M3…後続車両