(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096573
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240709BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20240709BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240709BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H05K7/14 C
H05K1/14 E
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000137
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 稔
【テーマコード(参考)】
5E322
5E344
5E348
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA11
5E322AB01
5E322AB02
5E322AB09
5E322BA01
5E322EA10
5E344AA01
5E344AA12
5E344AA15
5E344AA26
5E344BB02
5E344CD18
5E344EE02
5E344EE12
5E348AA03
5E348AA08
5E348AA16
5E348AA32
5F136BB03
5F136BC03
5F136DA27
(57)【要約】
【課題】従来の電子機器は、小型化が難しいと共に、独立した放熱部材を用いるので、構造的に製造コストが増すという問題点があった。
【解決手段】上段基板2と下段基板3を上下に積み重ねた構造を有し、上段基板2と下段基板3の間に介装した固定具5と、上段基板2及び下段基板3の夫々に配置され且つ互いに接続されるコネクタ6,7と、下段基板3に配置され且つ接続したコネクタ6.7同士を収容する樹脂製のハウジング8とを備え、ハウジング8の外側面に、同ハウジング8の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱体9を備えた電子機器1とし、小型化及び低コスト化を実現しつつ抜熱性の向上を実現した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上段基板と下段基板を上下に積み重ねた構造を有し、
前記上段基板と前記下段基板の間に介装した固定具と、
前記上段基板及び前記下段基板の夫々に配置され且つ互いに接続されるコネクタと、
前記下段基板に配置され且つ接続した前記コネクタ同士を収容する樹脂製のハウジングとを備え、
前記ハウジングの外側面に、同ハウジングの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱体を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記固定具が、前記上側基板及び前記下側基板の周縁部同士に沿う環状を成して前記ハウジングを含む前記下段基板の中央領域を囲繞していると共に、前記ハウジングが、前記固定具の内面に近接して配置してあり、
前記放熱体が、前記固定具の内面との相対向面に設けた外側放熱部と、その反対側面に設けた内側放熱部とを有し、
前記外側放熱部の熱伝導率が、前記内側放熱部の熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項3】
前記固定具が、前記ハウジングと相対向する位置に、同固定具の内外の空間を連通させる開口部を有することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記下段基板が、回路の熱を放出させる放熱パターンを有し、
前記放熱体が、前記放熱パターンに接続してあることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記放熱体が、外側に突出する複数のリブを有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車用インバータ等に用いられる電子機器に関し、とくに、上段基板と下段基板を上下に積み重ねた構造を有する電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、上記したような電子機器としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、上段のベースプレート、下段の配線基板、配線基板上に配置した半導体パッケージ、及びベースプレートと配線基板の間に介装して半導体パッケージを覆う放熱部材を備え、半導体パッケージのリード線を接続した配線パターンに放熱部材をはんだ接合し、半導体パッケージと放熱部材との間に冷却風を流通させる用にした電子モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したような従来の電子モジュール(電子機器)は、半導体パッケージ及び放熱部材をベースプレートと配線基板とで挟んだ特殊な構造であるため、小型化が難しいと共に、放熱専用に独立した放熱部材を用いるので、構造的に製造コストが増すという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に課題に着目して成されたものであり、上段基板と下段基板を備えた電子機器において、小型化及び低コスト化を実現しつつ抜熱性に優れた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる電子機器は、上段基板と下段基板を上下に積み重ねた構造を有する。この電子機器は、上段基板と下段基板の間に介装した固定具と、上段基板及び下段基板の夫々に配置され且つ互いに接続されるコネクタと、下段基板に配置され且つ接続したコネクタ同士を収容する樹脂製のハウジングとを備えている。そして、電子機器は、ハウジングの外側面に、同ハウジングの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱体を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる電子機器は、上記構成を採用したことにより、小型化及び低コスト化を実現しつつ優れた抜熱性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係わる電子機器の第1実施形態を示す分解状態の断面説明図である。
【
図2】
図1に示す分解状態から組み立てた状態を示す断面説明図である。
【
図6】下段基板における熱の流れを示す断面説明図である。
【
図7】ハウジングにおける熱の流れを示す側面図である。
【
図8】第2実施形態におけるハウジングを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、図面に基づいて、本発明に係わる電子機器の第1実施形態を説明する。以下の説明に用いる図面では、理解し易くする都合上、構成部位を簡素化して示しており、構成部位の数や大きさ、及び形状等を限定するものではない。
【0010】
図1及び
図2に示す電子機器1は、上段基板2と下段基板3を上下に積み重ねた構造を有し、下段基板3の下側にベース4を備えた三段構造である。この電子機器1は、具体例として電動車用インバータである。この場合、上段基板2はモータコントローラ基板、下段基板3は半導体駆動基板、ベース4は半導体モジュールであり、夫々の回路部2C,3C,4Cを有している。
【0011】
上記の電子機器1は、上段基板2と下段基板3同士の間に介装した固定具5と、上段基板2及び下段基板3の夫々に配置され且つ互いに接続されるコネクタ6,7と、下段基板2に配置され且つ接続したコネクタ6,7同士を収容する樹脂製のハウジング8とを備えている。よって、上段基板2のコネクタ6は、同基板2の下面に配置してある。下段基板3のコネクタ及びハウジング8は、同基板3の上面に配置してある。そして、電子機器1は、ハウジング8の外側面に、同ハウジング8の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱体9を備えている。
【0012】
固定具5は、樹脂製であって、
図3に示すように、上側基板2及び下側基板3の周縁部同士に沿う矩形の環状を成しており、ハウジング8及び回路部3Cを含む下段基板3の中央領域を囲繞している。この固定具5は、少なくとも上段基板2、下段基板3及びベース4を連結するブラケットの役割を有し、図示を省略したが、複数箇所にねじの挿通穴や止着部を有している。この固定具5は、電子機器1が電動車用インバータである場合、各基板を連結して全体の剛性を高める働きをする。
【0013】
コネクタ6,7及びハウジング8は、固定具5の片側(
図3中で左側)の内面に近接して配置してある。ハウジング8は、
図4に示すように、上下に開放された矩形の箱形を成している。
【0014】
放熱体9は、その材料が限定されるものではないが、熱伝導率の高い金属製の板部材により構成する。放熱体9は、
図4及び
図5に示すように、ハウジング8の長辺側の面に、固定具5の内面との相対向面に設けた外側放熱部9Aと、その反対側面に設けた内側放熱部9Bとを有し、さらに、ハウジング8の短辺側の面に、内外の放熱部9A,9Bを繋ぐ端面放熱部9Cを有する。外側及び内側の放熱部9A,9Bは、熱膨張による変形に対処するために、中央にスリットSを有している。
【0015】
また、電子機器1は、より好ましい実施形態として、外側放熱部9Aの熱伝導率を内側放熱部)Bの熱伝導率よりも高い構成にし、
図3に示すように、固定具5におけるハウジング8との相対向位置に、同固定具5の内外の空間を連通させる開口部10を有する構成にし得る。
【0016】
さらに、電子機器1は、より好ましい実施形態として、
図6に示すように、下段基板3が、放熱パターン11を有しており、放熱体9を放熱パターン11に接続した構成にすることができる。
図6に示す下段基板3は、回路部3Cが、発熱部品12を接続する放熱パターン11を有し、この放熱パターン11に、
図5に示す放熱体9の脚端子13をはんだ付けする。
【0017】
上記構成を備えた電子機器1は、ハウジング8の外側面に、同ハウジング8の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱体9を備えているので、熱抵抗が低い放熱体9側に熱が流れ易くなり、ハウジング8内の熱及び下段基板3上の熱が外に放出され易くなる。また、上記の電子機器1は、回路の構成部品を覆うような専用の放熱部材が不要であって、既存のハウジング8に放熱体9を設けた簡単な構成であり、小型軽量で且つ製造費も廉価である。このようにして、電子機器は1、小型化及び低コスト化を実現しつつ優れた抜熱性を確保することができ、例えば、車載用電子機器への適用に非常に有効である。
【0018】
また、上記の電子機器1では、ハウジング8によってコネクタ6,7の放熱が妨げられる。そこで、上記の電子機器1は、環状を成す固定具5を用いると共に、この固定具5の内面に近接して配置したハウジング8において、外側放熱部9Aの熱伝導率が内側放熱部)Bの熱伝導率よりも高い構造にすることで、熱抵抗が低い側に熱が流れ易くし、下段基板3上の熱が外に放熱されやすくなる。上記の電子機器1は、とくに、車両用のパワートレインに使用される積層構造の基板において、固定具5により、外部からの振動に耐えると共に、全体の剛性を高めている。
【0019】
なお、本発明の電子機器1では、下段基板3上におけるハウジング8の位置等に応じて、放熱体9の外側放熱部9A及び内側放熱部9Bの熱伝導率を同等にしても良く、この場合には、
図7中に矢印で示すように、内外均等に放熱が行われることとなる。
【0020】
さらに、上記の電子機器1は、固定具5が、ハウジング8と相対向する位置に、同固定具5の内外の空間を連通させる開口部10を有するので、固定具5の内外の通気性が向上すると共に、下段基板3上の熱及び防熱体9(とくに外側放熱部9A)の熱が開口部10から外部に放出される。これにより、電子機器1は、
図6中の矢印で示すように、固定具5の内側から開口部10を通して外部に至る流れが発生し、効率の良い放熱を行うことができ、抜熱性のさらなる向上を実現する。
【0021】
さらに、上記の電子機器1は、下段基板3の放熱パターン11に放熱体9が接続してあるので、下段基板3の抜熱性のさらなる向上を実現することができ、放熱パターン11としては、グランドラインを用いることができ、太い配線にすることにより、放熱的及び耐ノイズ的に一層望ましいものになる。
【0022】
<第2実施形態>
図8は、本発明に係わる電子機器の第2実施形態における放熱体を説明する図である。なお、この実施形態では、第1実施形態と同じ構成部位に同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0023】
図8に示すハウジング8は、その外面に放熱体9として、内側放熱部9A、外側放熱部9B、及び端面放熱部9Cを有し、内側放熱部9A及び外側放熱部9Bに、外側に突出する複数のリブ14が設けてある。
【0024】
上記のハウジング8及び放熱体9を備えた電子機器は、第1実施形態と同様に、小型化及び低コスト化を実現しつつ優れた抜熱性を確保することができ、とくに、内側放熱部9A及び外側放熱部9Bに設けたリブ14により、放熱体9の放熱面積が拡大され、放熱機能の向上に伴って抜熱性のさらなる向上を実現する。
【0025】
本発明に係わる電子機器は、その構成が上記各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能であり、例えば、上記実施形態で説明した上段基板2及び下段基板3の構造を上下反転させた構造にしても、同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 電子機器
2 上段基板
3 下段基板
5 固定具
6 コネクタ(上段基板のコネクタ)
7 コネクタ(下段基板のコネクタ)
8 ハウジング
9 放熱体
9A 外側放熱部
9B 内側放熱部
10 開口部
11 放熱パターン
14 リブ