(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096586
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60L 58/25 20190101AFI20240709BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20240709BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240709BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240709BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240709BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240709BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240709BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20240709BHJP
H02J 7/00 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
B60L58/25
B60K11/02
B60K1/04 Z
B60L9/18 J
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/26
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000162
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大野 航平
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB06
3D038AC22
3D038AC23
3D235AA14
3D235BB36
3D235BB41
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC15
3D235HH08
3D235HH32
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB11
5G503DA04
5G503DA07
5G503FA06
5G503GD03
5H125AA20
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA00
5H125BB00
5H125BC05
5H125BC19
5H125CD06
5H125CD09
5H125DD02
5H125EE15
5H125EE21
5H125EE25
5H125FF22
5H125FF23
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】電動アクチュエータに駆動用電力を供給するバッテリー、および、バッテリー に車体外部の電源から充電するための充電部が備えられている作業車において、作業前に バッテリーが冷えていても、作業時には、バッテリーが効率よく出力する電力を使用することを可能にする。
【解決手段】バッテリー15を充電中に放電状態に操作可能な放電操作装置35が備えられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータに駆動用電力を供給するバッテリーと、
前記バッテリーに車体外部の電源から充電するための充電部と、
前記バッテリーを充電中に放電状態に操作可能な放電操作装置と、が備えられている作業車。
【請求項2】
油圧アクチュエータに操作油路を介して接続され、前記油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、前記操作油路に設けられ、前記油圧アクチュエータの制御を行う操作弁と、前記操作油路のうち、前記操作弁よりも上流側の箇所に接続されたリリーフ油路と、前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、が備えられ、
前記放電操作装置は、前記バッテリーから前記電動モータに電力が供給されるように前記バッテリーと前記電動モータとを接続することによって前記バッテリーを放電状態にする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記バッテリーが充電中であることを検出する充電検出機構が備えられ、
前記放電操作装置は、前記充電検出機構による検出情報を基に前記バッテリーを充電中に放電状態に操作する放電制御部を備えている請求項1または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記バッテリーの温度を検出するバッテリー温度検出機構を備え、
前記放電制御部は、前記バッテリー温度検出機構による検出バッテリー温度が設定バッテリー温度より低温であると充電中の前記バッテリーを放電状態に操作し、前記検出バッテリー温度が前記設定バッテリー温度以上であると充電中の前記バッテリーを非放電状態に操作する請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記バッテリーに接続された電力機器と、
前記電力機器の冷却が可能な冷却装置と、
前記電力機器の温度を検出する機器温度検出機構と、
前記機器温度検出機構による検出情報に基づいて前記冷却装置を操作する冷却制御装置と、が備えられ、
前記冷却制御装置は、前記機器温度検出機構による検出機器温度が設定機器温度以上であると前記冷却装置を稼動するように操作し、前記検出機器温度が前記設定機器温度よりも低温であると前記冷却装置を停止するように操作する請求項1に記載の作業車。
【請求項6】
前記電力機器は、インバータである請求項5に記載の作業車。
【請求項7】
前記バッテリーに接続された電動機器と、
前記電動機器の冷却が可能な機器冷却装置が備えられている請求項1に記載の作業車。
【請求項8】
前記バッテリーの冷却が可能なバッテリー冷却装置が備えられている請求項1に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、電動アクチュエータ(走行用モータ、作業用モータ)と、電動アクチュエータに駆動用電力を供給するバッテリー(バッテリ、補助バッテリ)と、が備えられた作業車(電動トラクタ)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した作業車にあっては、寒冷地などでバッテリーが冷えた場合、バッテリーの温度が高い場合に比べ、バッテリーの化学反応が鈍くてバッテリーが効率よく出力せず、バッテリーからの電力によって駆動される電動アクチュエータの出力が低下して作業を効率よく行えない。
【0005】
本発明は、作業前にバッテリーが冷えていても、作業時には、バッテリーが効率よく出力する電力を使用することができる作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による作業車は、
電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータに駆動用電力を供給するバッテリーと、前記バッテリーに車体外部の電源から充電するための充電部と、前記バッテリーを充電中に放電状態に操作可能な放電操作装置と、が備えられている。
【0007】
本構成によると、作業前にバッテリーを充電しているとき、バッテリーを放電操作装置によって放電状態にさせてバッテリーを放電によって昇温させることができるので、作業前にバッテリーが冷えていても、作業時には、バッテリーが作業前よりも昇温していてバッテリーが効率よく出力する電力を使用することができる。
【0008】
本発明においては、
油圧アクチュエータに操作油路を介して接続され、前記油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、前記操作油路に設けられ、前記油圧アクチュエータの制御を行う操作弁と、前記操作油路のうち、前記操作弁よりも上流側の箇所に接続されたリリーフ油路と、前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、が備えられ、前記放電操作装置は、前記バッテリーから前記電動モータに電力が供給されるように前記バッテリーと前記電動モータとを接続することによって前記バッテリーを放電状態にすると好適である。
【0009】
本構成によると、放電操作装置によって放電状態にされたバッテリーが放電する電力によって電動モータが駆動され、油圧ポンプが電動モータによって駆動されて作動油を操作油路に供給する。バッテリーの充電中にあっては、操作弁が中立位置にされており、操作油路に供給された作動油がリリーフ油路に流入してリリーフ油路からタンクに戻る。すると、作動油の温度が上昇して作動油の粘度が低下し、作動油が流動し易くなる。つまり、作業時には、バッテリーの充電前に比べ、作動油が油圧アクチュエータに向けて流動し易くなり、油圧アクチュエータを操作し易い。
【0010】
本発明においては、
前記バッテリーが充電中であることを検出する充電検出機構が備えられ、前記放電操作装置は、前記充電検出機構による検出情報を基に前記バッテリーを充電中に放電状態に操作する放電制御部を備えていると好適である。
【0011】
本構成によると、バッテリーに充電する操作を行えば、バッテリーが充電中になり、充電検出機構による検出情報を基に放電制御部が放電操作装置を制御し、バッテリーが放電操作装置によって放電状態に操作されるので、バッテリーを放電状態にするための特別な手間を掛けずに楽にバッテリーを放電によって昇温できる。
【0012】
本発明においては、
前記バッテリーの温度を検出するバッテリー温度検出機構を備え、前記放電制御部は、前記バッテリー温度検出機構による検出バッテリー温度が設定バッテリー温度より低温であると充電中の前記バッテリーを放電状態に操作し、前記検出バッテリー温度が前記設定バッテリー温度以上であると充電中の前記バッテリーを非放電状態に操作すると好適である。
【0013】
本構成によると、バッテリーが放電して昇温し、バッテリー温度検出機構による検出バッテリー温度が設定バッテリー温度以上になると、放電制御部がバッテリーを非放電状態に操作してバッテリーが放電を停止するので、設定バッテリー温度を適切に設定することにより、バッテリーが放電によって昇温し過ぎることを防止できる。
【0014】
本発明においては、
前記バッテリーに接続された電力機器と、前記電力機器の冷却が可能な冷却装置と、
前記電力機器の温度を検出する機器温度検出機構と、前記機器温度検出機構による検出情報に基づいて前記冷却装置を操作する冷却制御装置と、が備えられ、前記冷却制御装置は、前記機器温度検出機構による検出機器温度が設定機器温度以上であると前記冷却装置を稼動するように操作し、前記検出機器温度が前記設定機器温度よりも低温であると前記冷却装置を停止するように操作すると好適である。
【0015】
本構成によると、機器温度検出機構による検出機器温度と設定機器温度とを基に冷却制御装置が冷却装置を操作し、電力機器が設定機器温度以上に昇温しないようにしながら、かつ、電力機器が設定機器温度よりも低温にならないようにしながら電力機器の冷却が行われるので、電力機器の温度上昇や温度低下による故障あるいは性能低下を防止できる。
【0016】
本発明においては、
前記電力機器は、インバータであると好適である。
【0017】
本構成によると、インバータの温度上昇や温度低下による故障あるいは性能低下を防止できる。
【0018】
本発明においては、
前記バッテリーに接続された電動機器と、前記電動機器の冷却が可能な機器冷却装置が備えられていると好適である。
【0019】
本構成によると、電動機器を機器冷却装置によって冷却することができるので、たとえば電動機器の駆動による異常昇温を防止して電動機器の温度上昇による故障を回避することができる。
【0020】
本発明においては、
前記バッテリーの冷却が可能なバッテリー冷却装置が備えられていると好適である。
【0021】
本構成によると、バッテリーをバッテリー冷却装置によって冷却することができるので、たとえばバッテリーの放電による異常昇温を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、電動トラクタ(「作業車」の一例)の走行車体に関し、
図1に示される矢印Fの方向を「車体前側」、
図1に示される矢印Bの方向を「車体後側」、
図1に示される矢印Uの方向を「車体上側」、
図1に示される矢印Dの方向を「車体下側」、
図1の紙面表側の方向を「車体左側」、
図1の紙面裏側の方向を「車体右側」とする。
【0024】
〔電動トラクタの全体の構成〕
図1に示されるように、電動トラクタは、左右一対の前車輪1、左右一対の後車輪2を有する走行車体3を備えている。左右一対の前車輪1は、操向可能かつ駆動可能に備えられている。左右一対の後車輪2は、駆動可能に備えられている。走行車体3の車体フレーム4は、車体フレーム4の前部を構成する前部フレーム5、前部フレーム5の後部に連結され、車体フレーム4の後部を構成するミッションケース6を備えている。走行車体3の前部に、前車輪1および後車輪2を駆動する電動アクチュエータとしての走行電動モータ7などを備える原動部8が設けられている。走行車体3の後部に、作業者が搭乗する運転部9が設けられている。運転部9には、運転座席10、前車輪1を操向操作するステアリングホィール11、ロプス12が備えられている。車体フレーム4のうちのミッションケース6の後部に、ロータリ耕耘装置(図示せず)などの各種の作業装置を昇降操作可能に連結するリンク機構13、および、ミッションケース6の内部から作業用動力を取り出し、取り出した動力を連結された作業装置に伝達する動力取出軸14が備えられている。
【0025】
〔原動部〕
図1に示されるように、原動部8には、走行電動モータ7の他に、走行電動モータ7に駆動用電力を供給するバッテリー15、バッテリー15からの直流電力を交流電力に変換して走行電動モータ7に供給するインバータ16が備えられている。バッテリー15は、前部フレーム5の上部に備えられたバッテリー載置台5bに支持されている。インバータ16は、バッテリー15の後方に配置されている。走行電動モータ7は、バッテリー15およびインバータ16の下方において前部フレーム5における左右のサイドフレーム部分5aの間に配置された状態で前部フレーム5に支持されている。
【0026】
走行電動モータ7がバッテリー15からインバータ16を介して供給される電力によって駆動され、走行電動モータ7の出力がミッションケース6の前部に備えられた静油圧式の無段変速装置6aに回転軸17を介して入力され、無段変速装置6aの出力がミッションケース6に内装されたギヤミッション(図示せず)に伝達されてギヤミッションから後車輪2に伝達されることにより、後車輪2の走行電動モータ7による駆動が可能にされている。無段変速装置6aからギヤミッションに伝達された動力がミッションケース6から車体前側に向けて延びる回転軸18を介して前輪駆動ケース19に入力されることにより、前車輪1の走行電動モータ7による駆動が可能にされている。
【0027】
〔リンク機構〕
リンク機構13は、
図1に示されるように、ミッションケース6の下部から後向きに上下揺動可能に延びる左右一対のロアリンク20、ミッションケース6の上部から後向きに上下揺動可能に延びるトップリンク21、ミッションケース6の上部に上下揺動可能に支持された左右一対のリフトアーム22、左のリフトアーム22と左のロアリンク20とを連結する左のリフトロッド23、右のリフトアーム22と右のロアリンク20とを連結する右のリフトロッド23を備えている。
【0028】
リンク機構13においては、左右のロアリンク20およびトップリンク21が作業装置に連結されることによって作業装置がミッションケース6に昇降可能に連結される。左右のリフトアーム22が昇降操作されることによって左のロアリンク20が左のリフトアーム22によって左のリフトロッド23を介して昇降操作され、右のロアリンク20が右のリフトアーム22によって右のリフトロッド23を介して昇降操作され、作業装置が走行機体に対して昇降操作される。
【0029】
図1に示されるように、左右のリフトアーム22の回転支軸22aに連結された油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ24がミッションケース6の内部に設けられ、リフトシリンダ24に作動油を供給する油圧ポンプ25、および、油圧ポンプ25を駆動する電動モータ26がミッションケース6の上部に設けられ、リンク機構13の昇降操作が可能にされている。
【0030】
詳述すると、
図2に示されるように、油圧ポンプ25とリフトシリンダ24とが操作油路27を介して接続され、操作油路27にリフトシリンダ24の制御を行う操作弁28が設けられている。操作油路27のうち、操作弁28よりも上流側の箇所にリリーフ油路29が接続されている。油圧ポンプ25は、電動モータ26によって駆動され、作動油を作動油タンク31から取り出して操作油路27に供給する。
【0031】
操作弁28は、中立位置[n]、上昇位置[a]および下降位置[b]に切換え可能に構成されている。操作弁28が上昇位置[a]に切換え操作されると、油圧ポンプ25からの作動油が操作弁28を介してリフトシリンダ24に供給されてリフトシリンダ24が伸長作動し、左右のリフトアーム22がリフトシリンダ24によって上昇操作されて左右のロアリンク20が上昇操作される。操作弁28が下降位置[b]に切換え操作されると、リフトシリンダ24に位置する作動油が操作弁28を介して排油路30に排出されてリフトシリンダ24が作業装置の荷重によって短縮作動し、左右のリフトアーム22がリフトシリンダ24によって下降操作されて左右のロアリンク20が下降操作される。操作弁28が中立位置[n]に切換え操作されると、リフトシリンダ24への作動油の供給、および、リフトシリンダ24からの作動油の排出が操作弁28によって停止されてリフトシリンダ24が伸縮作動を停止、左右のリフトアーム22がリフトシリンダ24によって停止操作されて左右のロアリンク20がリフトアーム22の停止位置に対応する揺動位置に維持される。この場合、油圧ポンプ25からの作動油がリリーフ油路29のリリーフ弁29aを開き操作してリリーフ油路29から排油路30に排出される。排油路30に排出された作動油は、排油路30から作動油タンク31に戻される。
【0032】
〔バッテリーの充電、放電〕
図2に示されるように、バッテリー15に充電部としての充電ポート32が接続されている。充電ポート32は、
図1に示されるように、原動部8においてバッテリー15などを覆うカバー8aの内側に設けられている。充電ポート32は、車体外部に設けられた電源33から延ばされた充電コネクタ34が接続されることにより、バッテリー15と電源33とを接続してバッテリー15に電源33から充電するように構成されている。
【0033】
充電中のバッテリー15を放電状態に操作可能な放電操作装置35が走行車体3に備えられている。放電操作装置35は、
図2に示されるように、インバータ16と電動モータ26とにわたって設けられた放電回路36、および、放電回路36に連係された放電制御部37を備えている。
【0034】
図2に示されるように、放電回路36は、インバータ16と電動モータ26とにわたって設けられた作業用のモータ駆動回路38とは別に、インバータ16と電動モータ26とにわたって設けられている。放電回路36は、放電スイッチ36aを有し、放電スイッチ36aが[入]に切換えられると、インバータ16と電動モータ26とを接続することによってバッテリー15と電動モータ26とを接続し、バッテリー15を放電状態にする。放電回路36は、バッテリー15を放電状態にすると、バッテリー15と電動モータ26とを接続していることにより、放電状態のバッテリー15からの電力を電動モータ26に供給して電動モータ26を駆動させる。放電回路36は、放電スイッチ36aが[切]に切換えられると、インバータ16と電動モータ26との接続を絶つことによってバッテリー15と電動モータ26との接続を絶ち、バッテリー15を非放電状態にする。
【0035】
図2に示されるように、放電制御部37は制御装置39に備えられている。制御装置39は、マイクロコンピュータを利用して構成されている。制御装置39には、バッテリー15が充電中であることを検出する充電検出機構40、バッテリー15の温度を検出するバッテリー温度検出機構41、および、操作弁28が中立位置[n]であることを検出する操作弁位置検出機構42が連係されている。
【0036】
充電検出機構40は、充電ポート32に備えられ、充電ポート32に充電コネクタ34が接続されたことを検出することによってバッテリー15が充電中であると検出する検出状態になり、充電コネクタ34が充電ポート32から外されると非検出状態になる。操作弁位置検出機構42は、操作弁28を切換え操作する昇降レバー43に連係され、操作弁28が中立位置[n]に操作されると、昇降レバー43の操作位置に基づいて操作弁28が中立位置[n]であることを検出する検出状態になり、操作弁28が中立位置[n]以外の上昇位置[a]および下降位置[b]に操作されると非検出状態になる。制御装置39には、バッテリー温度設定部44が備えられている。バッテリー温度設定部44は、バッテリー15を昇温させる必要な温度範囲とバッテリー15を昇温させる必要がない温度範囲との境界のバッテリー温度を設定バッテリー温度[SB]として設定している。
【0037】
放電制御部37は、
図3に示されるように、充電検出機構40による検出情報を基にバッテリー15が充電中であるか否かを判断し、バッテリー15が充電中ではないと判断した場合、放電スイッチ36aを[切]に切換え操作する。バッテリー15が充電中であると判断した場合、バッテリー温度検出機構41による検出バッテリー温度[KB]、および、バッテリー温度設定部44による設定バッテリー温度[SB]を入力し、検出バッテリー温度[KB]と設定バッテリー温度[SB]とを比較して検出バッテリー温度[KB]が設定バッテリー温度[SB]よりも低温であるか否かを判断する。検出バッテリー温度[KB]が設定バッテリー温度[SB]よりも低温ではないと判断した場合、放電スイッチ36aを[切]に切換え操作する。検出バッテリー温度[KB]が設定バッテリー温度[SB]よりも低温であると判断した場合、操作弁位置検出機構42による検出情報を基に操作弁28が中立位置[n]であるか否かを判断する。操作弁28が中立位置[n]ではないと判断した場合、放電スイッチ36aを[切]に切り換え操作する。操作弁28が中立位置[n]であると判断した場合、放電スイッチ36aを[入]に切り換え操作する。
【0038】
作業時は、充電ポート32に充電コネクタ34が接続されておらず、バッテリー15が充電中でないので、充電検出機構40が検出状態でない情報を基に放電操作装置35が放電制御部37によって放電スイッチ36aを[切]に切換え操作し、バッテリー15と電動モータ26とが放電回路36によって接続されない。しかし、作業時は、モータ駆動回路38に備えられているポンプスイッチ38aが[入]に作業者によって切換え操作され、インバータ16と電動モータ26とがモータ駆動回路38によって接続されてバッテリー15からの電力が電動モータ26に供給されて電動モータ26が駆動され、油圧ポンプ25が電動モータ26によって駆動されて油圧ポンプ25から操作油路27に作動油が供給される。これにより、作業時は、操作弁28によってリフトシリンダ24を制御してリンク機構13によって連結された作業装置を昇降操作することができる。
【0039】
充電ポート32に充電コネクタ34が接続されると、電源33からバッテリー15に充電される。バッテリー15が充電中になった場合、バッテリー15の温度が設定バッテリー温度[SB]より低温になっており、かつ、操作弁28が中立位置[n]になっていると、充電検出機構40が検出状態になっており、かつ、操作弁位置検出機構42が検出状態になっており、充電検出機構40による検出情報、バッテリー温度検出機構41による検出情報、操作弁位置検出機構42による検出情報およびバッテリー温度設定部44による設定バッテリー温度[SB]を基に放電操作装置35が放電制御部37によって放電スイッチ36aを[入]に切換え操作してバッテリー15が放電状態にされ、バッテリー15の放電によってバッテリー15の温度が上昇し、バッテリー15が昇温前よりも効率よく出力する状態になる。さらに、放電状態のバッテリー15が出力する電力がインバータ16及び放電回路36を介して電動モータ26に供給されて電動モータ26が駆動され、油圧ポンプ25が駆動されて作動油が操作油路27に供給される。操作弁28が中立位置[n]に切り換えられており、操作油路27に供給された作動油がリリーフ弁29aを開いてリリーフ油路29から排出されて作動油の温度が上昇し、作動油が昇温前よりも流動し易くなる。
【0040】
バッテリー15が充電中であることを充電検出機構40が検出しても、バッテリー15の温度が設定バッテリー温度[SB]以上である場合、あるいは、操作弁28が中立位置[n]でない場合、あるいは、バッテリー15の温度が設定バッテリー温度[SB]以上であり、かつ、操作弁28が中立位置[n]でない場合、バッテリー温度検出機構41による検出情報、バッテリー温度設定部44による設定バッテリー温度[SB]、操作弁位置検出機構42が非検出状態である情報を基に放電操作装置35が放電制御部37によって放電スイッチ36aを[切]に切換え操作してバッテリー15が非放電状態にされる。
【0041】
バッテリー15が充電中の場合は非作業時である。非作業時には、ポンプスイッチ38aが[切]に作業者によって切り換え操作されてインバータ16と電動モータ26とがモータ駆動回路38によって接続されない。したがって、バッテリー15が充電中の場合、放電スイッチ36aの[入]によるバッテリー15の放電状態、および、放電スイッチ36aの[切]によるバッテリー15の非放電状態が現出される。
【0042】
作業時は、バッテリー15には充電ポート32による充電が行われず、放電スイッチ36aが[切]に切り換えられて放電回路36によるインバータ16と電動モータ26との接続が絶たれるが、ポンプスイッチ38aが[入]に作業者によって切り換え操作されてインバータ16と電動モータ26とがモータ駆動回路38によって接続される。これにより、作業時は、電動モータ26をバッテリー15からの電力によって駆動して油圧ポンプ25を駆動することができる。
【0043】
動力取出軸14に対する動力伝達を入り切りする作業クラッチを備え、充電中のバッテリー15が放電状態にされる条件に作業クラッチの操作状態を加え、作業クラッチが切りであると充電中のバッテリー15が放電状態にされるように構成することが可能である。
【0044】
〔インバータの冷却〕
図2に示されるように、バッテリー15に接続された電力機器としてのインバータ16に冷却装置45が備えられ、冷却装置45に冷却制御装置55が連係されている。
【0045】
冷却装置45は、
図2に示されるように、インバータ16に付設され、インバータ16を冷却水との熱交換によって冷却する冷却装置本体46、冷却装置本体46と冷却水タンク47との間で冷却水を循環させる循環水路48、循環水路48に設けられ、冷却水を循環させる循環ポンプ49、循環ポンプ49を駆動する電動冷却モータ50を備えている。循環水路48のうちの循環ポンプ49と冷却装置本体46との間の部位に、冷却水クーラ51が設けられている。
【0046】
冷却制御装置55は、
図2に示されるように、電動冷却モータ50とインバータ16とにわたって設けられたモータ駆動回路56、制御装置39に備えられた冷却制御部57を備えている。
【0047】
図2に示されるように、モータ駆動回路56は、冷却スイッチ56aを有し、冷却スイッチ56aが[入]に切換えられると、インバータ16と電動冷却モータ50とを接続してバッテリー15からの電力を電動冷却モータ50に供給し、電動冷却モータ50を駆動して冷却装置45を稼動させるように稼動状態に切り換えられる。モータ駆動回路56は、冷却スイッチ56aが[切]に切換えられると、インバータ16と電動冷却モータ50との接続を絶ってバッテリー15から電動冷却モータ50への電力供給を停止し、電動冷却モータ50を停止させて冷却装置45を停止させるように停止状態に切り換えられる。
【0048】
図2に示されるように、制御装置39は、機器温度検出機構としてのインバータ温度検出機構58に連係されている。制御装置39には、機器温度設定部としてのインバータ温度設定部59が備えられている。インバータ温度設定部59は、機器設定温度としての設定インバータ温度[SI]を設定している。設定インバータ温度[SI]としては、インバータ16の冷却が必要な温度範囲とインバータ16の冷却が不要な温度範囲との境界のインバータ温度が設定されている。
【0049】
冷却制御部57は、
図4に示されるように、インバータ温度検出機構58による検出インバータ温度[KI]、および、インバータ温度設定部59による設定インバータ温度[SI]を入力し、検出インバータ温度[KI]と設定インバータ温度[SI]とを比較して検出インバータ温度[KI]が設定インバータ温度[SI]以上であるか否かを判断する。検出インバータ温度[KI]が設定インバータ温度[SI]以上ではないと判断した場合、冷却スイッチ56aを[切]に切換え操作する。検出インバータ温度[KI]が設定インバータ温度[SI]以上であると判断した場合、冷却スイッチ56aを[入]に切り換え操作する。
【0050】
インバータ16の温度が設定インバータ温度[SI]以上になると、インバータ温度検出機構58による検出情報、インバータ温度設定部59による設定インバータ温度[SI]を基に冷却制御装置55が冷却制御部57によって冷却スイッチ56aを[入]に切換え操作して電動冷却モータ50を駆動して冷却装置45を稼動させ、インバータ16の冷却装置45による冷却が行われる。
【0051】
インバータ16が冷却装置45によって冷却されてインバータ16の温度が低下した場合など、インバータ16の温度が設定インバータ温度[SI]よりも低温になると、インバータ温度検出機構58による検出情報、インバータ温度設定部59による設定インバータ温度[SI]を基に冷却制御装置55が冷却制御部57によって冷却スイッチ56aを[切]に切換え操作して電動冷却モータ50を停止して冷却装置45を停止させ、インバータ16の冷却装置45による冷却が停止される。
【0052】
図2に示されるように、バッテリー15にバッテリー冷却装置60が備えられている。作業が進むと、バッテリー15の放電時間が長くなってバッテリー15の温度が上昇する。この場合、バッテリー15をバッテリー冷却装置60によって冷却することを可能にされている。
【0053】
バッテリー冷却装置60は、
図2に示されるように、バッテリー15に備えられ、バッテリー15を冷媒としての冷却水によって冷却する冷却部61、冷却部61と冷却水タンク47との間で冷却水を循環ポンプ62によって循環させる循環水路63を有している。循環ポンプ62は、電動モータ64によって駆動されるように構成されている。電動モータ26の温度が設定温度以上になると、循環ポンプ68が駆動されるように電動モータ70が駆動される冷却制御装置を採用することが可能である。バッテリー15の温度が設定冷却開始温度に上昇すると循環ポンプ62を駆動するように電動モータ64が駆動され、バッテリー15の温度が設定冷却停止温度に下降すると循環ポンプ62を停止させるように電動モータ64が停止される冷却制御装置を採用することが可能である。
【0054】
図2に示されるように、バッテリー15に接続された電動機器としての電動モータ26に機器冷却装置66が備えられている。作業が進むと、電動モータ26の駆動時間が長くなって電動モータ26の温度が上昇する。この場合、電動モータ26を機器冷却装置66によって冷却して電動モータ26の焼き付きを回避することを可能にされている。
【0055】
機器冷却装置66は、電動モータ26に備えられ、電動モータ26を冷媒としての冷却水によって冷却する冷却水ジャケット67、冷却水ジャケット67と冷却水タンク47との間で冷却水を循環ポンプ68によって循環させる循環水路69を有している。循環ポンプ68は、電動モータ70によって駆動されるように構成されている。電動モータ26の温度が設定温度以上になると、循環ポンプ68が駆動されるように電動モータ70が駆動される冷却制御装置を採用することが可能である。
【0056】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、充電検出機構40および放電制御部37を備え、放電操作装置35が充電中のバッテリー15を自動的に放電状態に操作するように構成した例を示したが、これに限らず、放電操作装置35が充電検出機構40および放電制御部37を備えず、バッテリー15の充電中には、放電操作装置を作業者が操作することによってバッテリー15を放電状態にするものであってもよい。
【0057】
(2)上記した実施形態では、操作弁28が中立位置[n]であることがバッテリー15を放電状態にする条件にされた例を示したが、操作弁の操作位置を条件にしないものであってもよい。
【0058】
(3)上記した実施形態では、冷却装置45および冷却制御装置55を備えた例を示した例を示したが、冷却装置45および冷却制御装置55を備えないものであってもよい。
【0059】
(4)上記した実施形態は、電力機器としてインバータを採用した例を示したが、これに限らず電力機器としては、変圧器、DCDCコンバータなどが採用されたものであってもよい。
【0060】
(5)上記した実施形態は、電動機器として電動モータを採用した例を示したが、これに限らず電動機器としては、電動シリンダなどが採用されたものであってもよい。
【0061】
(6)上記した実施形態では、バッテリー冷却装置60、機器冷却装置66を備えた例を示したが、バッテリー冷却装置60、機器冷却装置66を備えないものであってもよい。
【0062】
(7)上記した実施形態では、バッテリー15の放電中にバッテリー15からの電力によって駆動される電動モータ26および油圧ポンプ25を設けた例を示したが、電動モータ26および油圧ポンプ25を備えず、放電中のバッテリー15が単に放電するだけのものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電動アクチュエータに駆動用電力を供給するバッテリー、および、バッテリーに車体外部の電源から充電するための充電部が備えられた作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
7 走行電動モータ(電動アクチュエータ)
15 バッテリー
16 インバータ(電力機器)
32 充電ポート(充電部)
35 放電操作装置
24 リフトシリンダ(油圧アクチュエータ)
25 油圧ポンプ
27 操作油路
28 操作弁
29 リリーフ油路
26 電動モータ(電動機器)
37 放電制御部
40 充電検出機構
41 バッテリー温度検出機構
45 冷却装置
55 冷却制御装置
58 インバータ温度検出機構(機器温度検出機構)
60 バッテリー冷却装置
66 機器冷却装置
KB 検出バッテリー温度
KI 検出インバータ温度(検出機器温度)
SB 設定バッテリー温度
SI 設定インバータ温度(設定機器温度)