(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096591
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】転圧車両
(51)【国際特許分類】
E01C 19/26 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
E01C19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000170
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000182384
【氏名又は名称】酒井重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小竹 勇毅
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AB01
2D052BB01
2D052CA23
(57)【要約】
【課題】液体の散布不足や撒き過ぎを防止する転圧車両を提供する。
【解決手段】舗装面30を締め固める転圧車両10は、転圧輪12の表面に液体を散布する液体散布装置14を備えている。液体散布装置14は、転圧車両10が走り始めてから停止するために減速を開始するまでの間において、走り始めてから所定時間、液体を散布し、所定時間経過後、液体の散布を停止し液体の散布の停止状態を維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装面を締め固める転圧車両であって、
転圧輪の表面に液体を散布する液体散布装置を備えており、
前記液体散布装置は、前記転圧車両が走り始めてから停止するために減速を開始するまでの間において、走り始めてから所定時間、液体を散布し、前記所定時間経過後前記液体の散布を停止し前記液体の散布の停止状態を維持する、転圧車両。
【請求項2】
前記液体散布装置は、前記転圧車両の減速開始後に前記液体を散布する、請求項1に記載の転圧車両。
【請求項3】
前記所定時間を調整可能な所定時間設定部をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の転圧車両。
【請求項4】
前記液体散布装置は、前後進レバーの位置および車速の少なくとも一つに基づいて、前記液体の散布を開始する、請求項1または請求項2に記載の転圧車両。
【請求項5】
前記液体の散布の停止状態にかかわらず前記液体散布装置に液体を散布させる、オペレータによって操作可能な割り込み操作部をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の転圧車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転圧車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、走行しながらアスファルト合材で形成された舗装面を転圧輪により締め固める転圧車両を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、転圧車両により道路等をアスファルト舗装する際に、転圧輪が乾いた状態で舗装面の転圧を行うと、アスファルト合材が転圧輪の表面に付着し、そのまま転圧を続けるとその付着物が舗装面の平坦性及び平滑性を損ねることになる。
【0005】
そこで、従来から、転圧輪の表面にアスファルト付着防止剤や水などの液体を散布することにより、転圧輪の表面へのアスファルト合材の付着を防止している。しかしながら、液体の散布不足や液体の撒き過ぎにより、舗装面の品質を低下させてしまうことがある。
【0006】
本開示の目的は、液体の散布不足や撒き過ぎを防止する転圧車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、舗装面を締め固める転圧車両であって、
転圧輪の表面に液体を散布する液体散布装置を備えており、
前記液体散布装置は、前記転圧車両が走り始めてから停止するために減速を開始するまでの間において、走り始めてから所定時間、液体を散布し、前記所定時間経過後前記液体の散布を停止し前記液体の散布の停止状態を維持する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、液体の散布不足や撒き過ぎを防止する転圧車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る転圧車両の構成を示す側面図を例示している。
【
図2】制御部により実行される液体散布動作の制御フローを例示している。
【
図3】液体散布を実行する回路構成を例示している。
【
図4】液体散布を実行する回路構成の別例を示している。
【
図5】制御部により実行される液体散布動作の制御フローの別例を示している。
【
図6】液体散布を実行する回路構成の別例を示している。
【
図7】制御部により実行される液体散布動作の制御フローの別例を示している。
【
図8】液体散布を実行する回路構成の別例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、実施形態例について以下詳細に説明する。以下の説明に用いられる各図面においては、各要素を認識可能な大きさとするために縮尺が適宜変更されている。図面において、矢印Uは、図示された構造の上方向を示している。矢印Dは、図示された構造の下方向を示している。矢印Fは、図示された構造の前方向を示している。矢印Bは、図示された構造の後方向を示している。これらの方向は、
図1に示された転圧車両10について設定された相対的な方向であり、転圧車両10の運転席17に座った運転者(オペレータ)が向く方向を、転圧車両10の前方向とする。
【0011】
図1は、本実施形態に係る転圧車両10の構成を例示している。
転圧車両10は、前方向または後方向に走行しながら、車体11の前後に設けられた転圧輪12によりアスファルト合材で形成された舗装面30を締め固めるように構成されている。転圧輪12は、タイヤや鉄輪などである。
【0012】
転圧車両10は、前後進レバー13、液体散布装置14、制御部15、および液体散布メインスイッチ16を有している。
【0013】
前後進レバー13は、車体11の上部に配置された運転席17周りに配置されている。前後進レバー13は、転圧車両10の進行方向を前方向または後方向に切り替えるための運転者による操作を受け付ける操作部である。前後進レバー13は、ニュートラル位置から前後方向に傾斜可能に構成されている。転圧車両10は、前後進レバー13がニュートラル位置にあるときに走行停止となる。また、転圧車両10は、前後進レバー13がニュートラル位置から前方に傾斜されて前進位置にあるときに前方向に走行する。また、転圧車両10は、前後進レバー13がニュートラル位置から後方に傾斜されて後進位置にあるときに後方向に走行する。転圧車両10の走行速度は、前後進レバー13のニュートラル位置からの傾動角度に比例して変化する。
【0014】
液体散布装置14は、転圧輪12の表面へのアスファルト合材の付着を防止するために、転圧輪12の表面に液体を散布するように構成されている。液体の例としては、乳化剤を用いたアスファルト付着防止剤や水などが挙げられる。具体的には、液体散布装置14は、液体タンク141、液体散布ノズル142、配管路143、および液体ポンプ144を有している。液体タンク141は、転圧輪12の表面に散布される液体を貯留する。液体散布ノズル142は、液体が吐出される吐出口が転圧輪12の表面に向くように、車体11の前後に配置されている。配管路143は、液体タンク141と液体散布ノズル142とを接続している。液体ポンプ144は、配管路143上に設けられている。液体ポンプ144により液体タンク141内の液体が配管路143を通って液体散布ノズル142から転圧輪12の表面に向けて散布される。
【0015】
制御部15は、液体散布装置14の液体散布動作を制御するように構成されている。具体的には、制御部15は、転圧車両10が走り始めてから停止するために減速を開始するまでの間において、走り始めてから所定時間、液体を散布し、所定時間経過後、液体の散布を停止し、液体の散布の停止状態を維持するように、液体散布装置14を制御する。
【0016】
制御部15は、汎用メモリと、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサとにより実現される。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示される。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示される。ROMには、液体散布装置14の制御処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されている。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して液体散布装置14の制御処理を実行する。
【0017】
液体散布メインスイッチ16は、車体11の上部に配置された運転席17周りに配置される。液体散布メインスイッチ16は、液体散布装置14の液体散布動作の制御を実行させるための運転者による操作を受け付ける操作部である。液体散布メインスイッチ16としては、プッシュスイッチやダイヤルスイッチが例示される。
【0018】
例えば、液体散布メインスイッチ16は、液体散布装置14の液体散布動作の制御を開始させるための運転者による操作を受け付けるとメインスイッチ信号S1を出力し、液体散布装置14の液体散布動作の制御を終了させるための運転者による操作を受け付けるとメインスイッチ信号S1の出力を停止するように構成されている。
【0019】
制御部15は、メインスイッチ信号S1を受け取った場合、液体散布装置14の液体散布動作の制御を開始する。そして、制御部15は、メインスイッチ信号S1が入力されている間、液体散布装置14の液体散布動作の制御を実行し、メインスイッチ信号S1が入力された状態から入力されない状態に変化した場合に、液体散布装置14の液体散布動作制御を終了する。
【0020】
図2を用いて、制御部15により実行される液体散布装置14の液体散布動作の制御について説明する。
【0021】
制御部15は、メインスイッチ信号S1を受け取り液体散布装置14の液体散布動作制御を開始すると、転圧車両10が走り始めたかを判断する(STEP1)。制御部15は、転圧車両10が走り始めるまで、STEP1の処理を繰り返す(STEP1においてNO)。そして、制御部15は、転圧車両10が走り始めたと判断すると(STEP1においてYES)、液体を散布するように液体散布装置14を作動させる(STEP2)。
【0022】
例えば、
図1に示されるように、転圧車両10は、前後進レバー13の位置を検出するレバー位置検出センサ18を有している。レバー位置検出センサ18は、例えば、前後進レバー13がニュートラル位置にあることを検出するとニュートラル信号S2を出力し、レバー13が前進位置または後進位置にあるときにニュートラル信号S2を出力しないように構成されている。レバー位置検出センサ18としては、リミットスイッチが例示される。
【0023】
転圧車両10は、前後進レバー13がニュートラル位置から前進位置または後進位置に切替わると、走行停止状態から前方向または後方向への走行を開始する。したがって、制御部15は、ニュートラル信号S2に基づいて、転圧車両10が走り始めたかを判断できる。具体的には、制御部15は、ニュートラル信号S2が入力された状態から入力されない状態に変化した場合に、転圧車両10が走り始めたと判断する。すなわち、本実施形態においては、「液体散布を開始する転圧車両10の走り始め」とは、レバー位置検出センサ18から出力されるニュートラル信号S2が途絶えた瞬間とする。
【0024】
そして、制御部15は、転圧車両10が走り始めたと判断すると、液体ポンプ144を作動させるための制御信号CS1を液体ポンプ144へ出力する。これにより、液体タンク141内の液体が液体散布ノズル142から散布される。
【0025】
続いて、STEP3において、制御部15は、液体の散布を開始してから所定時間が経過したかを判断する(STEP3)。所定時間は、走り始めから所定速度に達するまでの時間や走り始めの転圧輪1回転に要する時間などに基づいて適宜設定される。所定時間は、例えば2~3秒である。制御部15は、液体の散布を開始してから所定時間経過するまで、STEP2の液体散布を継続する(STEP3においてNO)。
【0026】
続いて、制御部15は、液体の散布を開始してから所定時間が経過したと判断すると(STEP3においてYES)、液体の散布を停止するように液体散布装置14を制御する(STEP4)。例えば、
図1に示されるように、制御部15は、液体散布を開始してから所定時間経過したと判断すると、液体ポンプ144の動作を停止させるために制御信号CS1の出力を停止する。これにより、液体ポンプ144が停止され、液体の散布が停止される。
【0027】
そして、制御部15は、転圧車両10が走行停止するまで、STEP4の液体散布の停止を継続する(STEP5においてNO)。例えば、制御部15は、ニュートラル信号S2が入力されない状態が続く限り、転圧車両10が走行中であると判断し、ニュートラル信号S2が入力されると、転圧車両10が走行停止したと判断する。
【0028】
制御部15は、転圧車両10が走行停止したと判断すると(STEP5においてYES)、液体散布動作の制御を終了する指示を受け取るまで、STEP1からSTEP5の液体散布動作の制御処理を繰り返す(STEP6においてNO)。これにより、転圧車両10の進行方向が前方向または後方向に切替わる度に、液体散布装置14による液体の散布が所定時間行われる。
【0029】
そして、制御部15は、液体散布動作の制御を終了する指示を受け取ると(STEP6においてYES)、液体散布装置14の液体散布動作制御を終了する。例えば、制御部15は、メインスイッチ信号S1が入力されている状態から入力されない状態に変化した場合に、液体散布装置14の液体散布動作制御を終了する。
【0030】
また、制御部15は、STEP7において、液体の散布を継続している場合に(STEP3においてNO)、液体散布動作の制御を終了する指示を受け取ると(STEP7おいてYES)、液体の散布を停止するように液体散布装置14を制御する(STEP8)。これにより、液体散布を行っている間でも、運転者により液体散布動作制御を終了させるための操作がなされた場合は、液体散布が終了する。
【0031】
図3は、液体散布を実行する回路構成を例示している。
レバー位置検出センサ18は、制御部15に接続されている。前後進レバー13がニュートラル位置にある場合、レバー位置検出センサ18から制御部15にニュートラル信号S2が出力される。
【0032】
液体散布メインスイッチ16は、制御部15に接続されている。液体散布装置14の動作制御を実行するために運転者により液体散布メインスイッチ16が操作されると、液体散布メインスイッチ16から制御部15にメインスイッチ信号S1が出力される。
【0033】
本例においては、液体散布メインスイッチ16の端子1は、バッテリなどの電源を介して制御部15に接続されている。また、液体散布メインスイッチ16の端子2は、後述するリレー19のコイル端子1に接続されている。本例においては、液体散布メインスイッチ16は、プッシュスイッチである。液体散布装置14の動作制御を実行するために運転者により液体散布メインスイッチ16が押下されると、端子1は、端子2に接続される。
【0034】
液体ポンプ144は、制御部15に接続されている。液体ポンプ144は、制御部15から出力される制御信号CS1に基づき、所定時間、液体を散布するように作動する。
【0035】
本例においては、液体散布メインスイッチ16と制御部15の間には、リレー19が接続されている。リレー19の端子3は、制御部15の出力端子に接続しており、端子5は、制御部15の入力端子に接続されている。液体散布装置14の動作制御を実行するために運転者により液体散布メインスイッチ16が押下されると、電源から液体散布メインスイッチ16を介してリレー19のコイルに電流が流れる。そして、リレー19のコイルが励磁されて、リレー19の端子3は端子5に接続される。これにより、制御部15の入力端子には、制御部15の出力端子の出力電圧と同じ電圧が入力される。制御部15は、入力電圧に対応する所定時間、液体ポンプ144を作動させる。本例においては、制御部15の出力端子から5Vの電圧が出力されて、制御部15の入力端子には5Vの電圧が入力される。
【0036】
表1は、
図3の回路構成を有する転圧車両10の操作パターンを示している。なお、表1において、メインスイッチ信号S1またはニュートラル信号S2がONとは、液体散布メインスイッチ16またはレバー位置検出センサ18からメインスイッチ信号S1またはニュートラル信号S2が出力されていることを意味する。メインスイッチ信号S1またはニュートラル信号S2がOFFとは、液体散布メインスイッチ16またはレバー位置検出センサ18からメインスイッチ信号S1またはニュートラル信号S2が出力されないことを意味する。
【0037】
【0038】
表1において、操作パターンAでは、液体散布メインスイッチ16は液体散布装置14の液体散布動作制御を実行するための運転者による操作を受けておらず、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されていない。また、前後進レバー13はニュートラル位置にあり、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されている。すなわち、操作パターンAでは、転圧車両10は走行停止しており、また、液体散布装置14の液体散布動作の制御も開始されていないので、液体散布装置14は作動しない。
【0039】
操作パターンBでは、液体散布メインスイッチ16は液体散布装置14の液体散布動作制御を実行するための運転者による操作を受けており、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されている。また、前後進レバー13はニュートラル位置にあり、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されている。すなわち、操作パターンBでは、液体散布装置14の液体散布動作の制御は開始されているが、転圧車両10が走行停止しているので、液体散布装置14は作動しない。
【0040】
操作パターンCでは、液体散布メインスイッチ16は液体散布装置14の液体散布動作制御を実行するための運転者による操作を受けておらず、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されていない。また、前後進レバー13は前進位置または後進位置にあり、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されていない。すなわち、操作パターンCでは、液体散布装置14の液体散布動作の制御が開始されていないので、転圧車両10が走行している場合でも、液体散布装置14は作動しない。
【0041】
操作パターンDでは、液体散布メインスイッチ16は液体散布装置14の液体散布動作制御を実行するための運転者による操作を受けており、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されている。また、前後進レバー13は前進位置または後進位置にあり、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されていない。すなわち、操作パターンDでは、液体散布装置14の液体散布動作の制御は開始されており、転圧車両10が走行開始したとき、制御部15の入力端子に入力された電圧(本例においては、5V)に対応する所定時間、液体散布装置14が作動する。これにより、前後進レバー13がニュートラル位置から前進位置または後進位置に切替わる度に、所定時間、液体が散布される。
【0042】
ここで、液体散布装置14の動作制御としては、転圧輪12へのアスファルト合材の付着を防ぐために、連続的または間欠的に液体を散布するように制御することが考えられる。しかしながら、本発明者は、転圧車両10の走行中に常に液体を散布する必要はないことを見出した。例えば、転圧車両10の走り始めは転圧輪12の表面が舗装面30と接触する接触時間が長いので定速走行時の接触時間に比して転圧輪12の表面にアスファルト合材が付着しやすい。また、速度ゼロから転圧輪1回転分は少なくとも液体を噴霧し続ける必要がある。一方、走り始めてから定常走行時の所定速度に達すれば接触時間が短くなり転圧輪12の表面にアスファルト合材が付着しにくくなる。
【0043】
ここで、所定速度とは、転圧作業(締固め作業)を行う際の作業速度を意味し、単なる走行(回送)時はより速い速度で走行するのが一般的である。転圧作業時の急加減速は被転圧面である舗装面30を荒らすため、緩やかな加減速でなければならず、転圧車両10のような締固め機械は、他の建設機械や乗用車と比べて加減速度が緩やかに設定されている。緩やかな加減速でないと転圧作業できないが、緩やかな加減速であるから接触時間が長くなりアスファルト合材の付着を招く原因が増えることになる。
【0044】
このため、転圧車両10が走り始めてから所定時間、液体を散布すれば十分にアスファルト合材の付着を防止することができることを本発明者は見出した。
【0045】
また、実際の転圧作業においては、舗装面30が比較的短かいことが多かったり、あるいは長い舗装面30を複数の領域に分割して領域ごとに転圧作業を実施することが多い。このため、転圧車両10の走行中に連続的あるいは間欠的に液体を散布しなくても、転圧輪12の表面へのアスファルト合材の付着を抑制できることを本発明者は、見出した。
【0046】
すなわち、本実施形態に係る転圧車両10によれば、走り始めから所定時間だけ液体が散布されるので、液体の散布不足を防ぎつつ、走行中に連続的または間欠的に液体を常に散布する場合と比べて、過剰な液体の撒き過ぎを防ぐことができる。これにより、液体の使用コストを抑えることができる。また、例えば液体としてアスファルト付着防止剤が散布される場合、液体の撒き過ぎによる舗装面30の品質の悪化を未然に防止できる。
【0047】
また、本実施形態においては、前後進レバー13の位置に基づいて、転圧車両10の走り始めが検出されている。したがって、新たな装置などを追加することなく既存の装置の情報に基づいて散布開始を判断できる。
【0048】
なお、本実施形態においては、レバー位置検出センサ18は、前後進レバー13がニュートラル位置にあることを検出し、ニュートラル信号S2を出力するように構成されている。しかしながら、レバー位置検出センサ18は、前後進レバー13のニュートラル位置からの傾転角を検出し、検出信号を出力するように構成されてもよい。あるいは、レバー位置検出センサ18は、前後進レバー13がニュートラル位置から前後方向に傾いたことを検出し、検出信号を出力するように構成されてもよい。この場合、制御部15は、これらの検出信号に基づいて、転圧車両10が走り始めたかを判断するように構成されうる。
【0049】
また、本実施形態においては、液体散布メインスイッチ16が操作された場合に、液体散布装置14の液体散布動作の制御が行われる。これにより、例えば、転圧輪12による転圧作業を行う際にのみ、液体散布装置14の動作制御を実行することができる。したがって、転圧車両10の輸送中などの転圧作業以外の状況下において、液体散布装置14から液体が散布されることを防止できる。なお、転圧車両10が液体散布メインスイッチ16を備えない場合には、制御部15は、
図2のSTEP1~STEP5の処理を行うように構成される。
【0050】
(変形例1)
なお、上記の実施形態においては、液体を散布する所定時間は予め設定されている。しかしながら、転圧車両10は、液体を散布する所定時間を調整可能に構成されてもよい。
【0051】
例えば、
図1に例示されるように、転圧車両10は、所定時間設定スイッチ20を有する。所定時間設定スイッチ20は、所定時間設定部の一例である。例えば、所定時間設定スイッチ20は、車体11の上部に配置された運転席17周りに配置される。所定時間設定スイッチ20としては、ダイヤルスイッチが例示される。所定時間設定スイッチ20は、液体散布装置14を作動させる所定時間を調整するための運転者による操作を受け付ける操作部である。所定時間設定スイッチ20は、運転者による操作を受け付けた場合、操作量に応じた時間設定信号S3を出力するように構成されている。
【0052】
図4は、変形例1に係る液体散布を実行する回路構成を例示している。なお、
図3において既に説明された構成と同一の構成については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0053】
図4に例示されるように、リレー19の端子5と制御部15の入力端子の間には、可変抵抗21が接続されている。可変抵抗21の抵抗値は、所定時間設定スイッチ20により変更可能に構成されている。制御部15の入力端子に入力される電圧は、可変抵抗21の抵抗値の変化に応じて変化する。本例においては、制御部15の出力端子から5Vの電圧が出力されており、可変抵抗21の抵抗値が0~5kΩの間で変化することにより、制御部15の入力端子には、可変抵抗21により調整された0.7~4.3Vの電圧が入力される。制御部15は、調整された入力電圧に応じた所定時間、液体ポンプ144を作動させる。
【0054】
表2は、
図4の回路構成を有する転圧車両10の操作パターンを示している。なお、表1において既に説明された操作状態と同一の操作状態については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0055】
【0056】
表2において、操作パターンA1では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されておらず、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されている。すなわち、操作パターンA1では、液体散布装置14は作動しない。
【0057】
操作パターンB1では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されている。すなわち、操作パターンB1では、液体散布装置14は作動しない。
【0058】
操作パターンC1では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されておらず、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されていない。すなわち、操作パターンC1では、液体散布装置14は作動しない。
【0059】
操作パターンD1では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されていない。すなわち、操作パターンD1では、液体散布装置14の液体散布動作の制御は開始されており、転圧車両10が走行開始したとき、制御部15の入力端子に入力された電圧(本例においては、0.7V~4.3V)に対応する所定時間、液体散布装置14が作動する。これにより、前後進レバー13がニュートラル位置から前進位置または後進位置に切替わる度に、調整された入力電圧に応じた所定時間、液体が散布される。
【0060】
このように、変形例1に係る転圧車両10によれば、所定時間設定スイッチ20により液体を散布する所定時間を調整するので、施工環境に応じた運転者の判断に応じて、液体散布時間の調整が可能となる。
【0061】
(変形例2)
なお、上記の実施形態においては、液体散布を開始してから所定時間経過後は液体が散布されない。しかしながら、転圧車両10は、液体の散布の停止状態にかかわらず、運転者の操作により、液体散布装置14に液体を散布させるように構成されてもよい。
【0062】
例えば、
図1に例示されるように、転圧車両10は、手動スイッチ22を有する。手動スイッチ22は、割り込み操作部の一例である。例えば、手動スイッチ22は、車体11の上部に配置された運転席17周りに配置される。手動スイッチ22としては、プッシュスイッチやダイヤルスイッチが例示される。手動スイッチ22は、液体散布装置14に液体を散布させるための運転者による操作を受け付ける操作部である。例えば、手動スイッチ22は、液体散布装置14に液体を散布させるための運転者による操作を受け付けると手動スイッチ信号S4を出力し、液体散布装置14に液体の散布を終了させるための運転者による操作を受け付けると手動スイッチ信号S4の出力を停止するように構成されている。
【0063】
図5は、変形例2に係る制御部15により実行される液体散布装置14の液体散布動作の制御フローを示している。なお、
図2において既に説明された処理と同一の処理については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0064】
図5に例示されるように、STEP11において、制御部15は、転圧車両10が走行停止している間(STEP1においてNO)、液体散布装置14に液体を散布させるために運転者により手動スイッチ22が操作されたと判断すると(STEP11においてYES)、液体の散布を行うように液体散布装置14を制御する(STEP12)。これにより、転圧車両10が停車している場合でも、手動スイッチ22が操作されると、液体の散布が行われる。
【0065】
また、STEP3において、制御部15は、液体の散布を開始してから所定時間が経過した後(STEP3においてYES)に、液体散布装置14に液体を散布させるために運転者により手動スイッチ22が操作されたと判断すると(STEP13においてYES)、液体の散布を行うように液体散布装置14を制御する(STEP14)。これにより、転圧車両10が走り始めてから所定時間経過した後も、手動スイッチ22が操作されると、液体の散布が行われる。
【0066】
なお、STEP2において制御部15は、液体の散布を行っている間に、液体散布装置14に液体を散布させるために運転者により手動スイッチ22が操作されたと判断した場合に、手動スイッチ22が操作されている間、液剤の散布を行うように、液体散布装置14を制御するように構成されてもよい。
【0067】
図6は、変形例2に係る液体散布を実行する回路構成を例示している。なお、
図4において既に説明された構成と同一の構成については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0068】
図6に例示されるように、手動スイッチ22は、制御部15に接続されている。液体を散布するために運転者により手動スイッチ22が操作されると、手動スイッチ22から制御部15に手動スイッチ信号S4が出力される。
【0069】
本例においては、手動スイッチ22の端子1は、液体散布メインスイッチ16の端子2に接続されている。また、手動スイッチ22の端子2は、制御部15に接続されている。本例においては、手動スイッチ22は、プッシュスイッチである。液体を散布するために運転者により手動スイッチ22が押下されると、端子1は、端子2に接続される。これにより、手動スイッチ22は、液体散布メインスイッチ16を介して電源に接続される。なおこのときリレー19のコイルにも電流が流れてしまうが、制御部15は、手動スイッチ22から出力された手動スイッチ信号S4を優先して、液体ポンプ144を作動させる。
【0070】
表3は、
図6の回路構成を有する転圧車両10の操作パターンを示している。なお、表1または表2において既に説明された操作状態と同一の操作状態については、説明の便宜上、その説明は省略する。なお、表3において、手動スイッチ信号がONとは、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されていることを意味する。手動スイッチ信号がOFFとは、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されていないことを意味する。
【0071】
【0072】
表3において、操作パターンA2では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されておらず、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されている。また、手動スイッチ22は液体散布をするための運転者による操作を受けておらず、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されていない。すなわち、操作パターンA2では、転圧車両10は走行停止しており、また、液体散布装置14の液体散布動作の制御も開始されていないので、液体散布装置14は作動しない。
【0073】
操作パターンB2では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されている。また、手動スイッチ22は液体散布をするための運転者による操作を受けておらず、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されていない。すなわち、操作パターンB2では、液体散布装置14の液体散布動作の制御は開始されているが、転圧車両10が走行停止しており、また手動スイッチ22も操作されていないので、液体散布装置14は作動しない。
【0074】
操作パターンC2では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されておらず、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されている。また、手動スイッチ22は液体散布をするための運転者による操作を受けており、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されている。すなわち、操作パターンC2では、液体散布装置14の液体散布動作の制御は開始されていないので、手動スイッチ22が操作されている場合でも、液体散布装置14は作動しない。
【0075】
操作パターンD2では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されている。また、手動スイッチ22は液体散布をするための運転者による操作を受けており、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されている。すなわち、操作パターンD2では、液体散布装置14の液体散布動作の制御が実行されており、転圧車両10が走行停止しているものの、手動スイッチ22が操作されているので、液体散布装置14は作動する。例えば手動スイッチ22は、モーメンタリー式のプッシュスイッチであり、手動スイッチ22が押下されている間、液体が散布される。
【0076】
操作パターンE2では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されておらず、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されていない。また、手動スイッチ22は液体散布をするための運転者による操作を受けており、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されている。すなわち、操作パターンE2では、液体散布装置14の液体散布動作の制御は開始されていないので、転圧車両10は走行されており、また、手動スイッチ22も操作されているものの、液体散布装置14は作動しない。
【0077】
操作パターンF2では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されていない。また、手動スイッチ22は液体散布をするための運転者による操作を受けておらず、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されていない。すなわち、操作パターンF2では、液体散布装置14の液体散布動作の制御は開始されており、転圧車両10が走行開始したとき、制御部15の入力端子に入力された電圧(本例においては、0.7V~4.3V)に対応する所定時間、液体散布装置14が作動する。これにより、前後進レバー13がニュートラル位置から前進位置または後進位置に切替わる度に、調整された入力電圧に応じた所定時間、液体が散布される。
【0078】
操作パターンG2では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、レバー位置検出センサ18からニュートラル信号S2が出力されていない。また、手動スイッチ22は液体散布をするための運転者による操作を受けており、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されている。すなわち、操作パターンG2では、液体散布装置14の液体散布動作の制御は開始されており、手動スイッチ22が操作されているので、手動スイッチ22が押下されている間、液体散布装置14は作動する。
【0079】
このように、変形例2に係る転圧車両10によれば、液体散布が停止している間でも、運転者は、手動スイッチ22を操作することにより、液体を散布できる。例えば、舗装面30が長い場合、転圧車両10の走り始めに液体を散布するだけでは、走行途中で液体が不足しアスファルト合材が転圧輪12に付着し始めてしまう場合がある。このような場合、運転者は手動で液体の散布を行うことができるので、液体の散布不足を防止できる。
【0080】
(変形例3)
なお、上記の実施形態においては、転圧車両10の走り始めにのみ液体が散布されている。しかしながら、転圧車両10は、転圧車両10の走り始めに加えて、転圧車両10が停止するために減速を開始した後にも液体の散布するように液体散布装置14を制御するように構成されてもよい。
【0081】
図7を用いて、変形例3に係る制御部15により実行される液体散布装置14の液体散布動作の制御の別例について説明する。なお、
図2において既に説明された処理と同一の処理については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0082】
まず、STEP1において、制御部15は、転圧車両10が走り始めたと判断すると(STEP1においてYES)、液体を散布するように液体散布装置14を作動させる(STEP2)。例えば、
図1に示されるように、転圧車両10は、転圧車両10の走行速度(以下、単に車速と称する)を検出する速度センサ23を有している。速度センサ23は、車速に関する車速信号S5を出力するように構成されている。制御部15は、車速信号S5に基づいて、転圧車両10が走り始めたかを判断する。具体的には、制御部15は、車速が第一閾値以上となったと判断すると、転圧車両10が走り始めたと判断する。第一閾値は、例えば0.1km/hなど、転圧車両10が走り始めたと想定されうる車速に適宜設定される。
【0083】
そして、制御部15は、液体の散布を開始してから所定時間が経過したと判断すると(STEP3においてYES)、液体の散布を停止するように液体散布装置14を制御する(STEP4)。
【0084】
さらに本例では、制御部15は、転圧車両10の停止直前にも液体を散布するように制御する。具体的には、制御部15は、車速信号S5に基づいて、転圧車両10が停止するために減速を開始し、液体散布を開始する車速まで減速したと判断すると(STEP21においてYES)、液体の散布を行うように液体散布装置14を制御する(STEP22)。
【0085】
例えば、転圧車両10は、転圧作業中は第二閾値を超える車速で走行している。そして、制御部15は、車速が第二閾値を超えた状態から、車速が第二閾値以下となったと判断すると、転圧車両10が液体散布を開始する車速まで減速したと判断する。第二閾値は、第一閾値よりも大きく、例えば0.2km/hなど、転圧車両10の停止直前であり転圧輪12にアスファルト合材が付着しやすくなると想定される車速の最大値に設定される。
【0086】
そして、制御部15は、液体の散布を開始してから所定時間が経過するまで、液体散布を継続する(STEP23においてNO)。制御部15は、液体の散布を開始してから所定時間が経過したと判断すると(STEP23においてYES)、液体の散布を停止するように液体散布装置14を制御する(STEP24)。
【0087】
図8は、変形例3に係る液体散布を実行する回路構成を例示している。なお、
図5において既に説明された構成と同一の構成については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0088】
制御部15には、レバー位置検出センサ18の代わりに、モータ回転速度センサ231が接続されている。モータ回転速度センサ231は、転圧輪12を駆動するモータの回転数を検出するセンサである。モータ回転速度センサ231は、転圧輪12を駆動するモータの1秒間の回転数を示すモータ回転パルス信号を出力する。制御部15は、モータ回転パルス信号の周波数に基づき車速を算出できる。モータ回転速度センサ231は、速度センサ23の一例である。モータ回転パルス信号は、車速信号S5の一例である。
【0089】
表4は、
図8の回路構成を有する転圧車両10の操作パターンを示している。なお、表3において既に説明された操作状態と同一の操作状態については、説明の便宜上、その説明は省略する。なお、表4において、モータ回転パルス信号がONとは、液体散布が開始される車速に対応する周波数のモータ回転パルス信号が出力されていることを意味する。モータ回転パルス信号がOFFとは、液体散布が開始される車速に対応する周波数のモータ回転パルス信号が出力されていないことを意味する。例えば、転圧車両10の走り始めの車速(例えば0.1km/h)に対応するモータ回転パルス信号の周波数は30Hzであり、転圧車両10の停止直前の車速(0.2km/h)に対応するモータ回転パルス信号の周波数は60Hzである。
【0090】
【0091】
表4において、操作パターンA3では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されておらず、モータ回転速度センサ231から所定の周波数のモータ回転パルス信号が出力されていない。また、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されていない。すなわち、操作パターンA3では、液体散布装置14は作動しない。
【0092】
操作パターンB3では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、モータ回転速度センサ231から所定の周波数のモータ回転パルス信号が出力されていない。また、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されていない。すなわち、操作パターンB3では、液体散布装置14は作動しない。
【0093】
操作パターンC3では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されておらず、モータ回転速度センサ231から所定の周波数のモータ回転パルス信号が出力されていない。また、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されている。すなわち、操作パターンC3では、液体散布装置14は作動しない。
【0094】
操作パターンD3では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、モータ回転速度センサ231から所定の周波数のモータ回転パルス信号が出力されていない。また、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されている。すなわち、操作パターンD3では、手動スイッチ22が操作されている間、液体散布装置14が作動する。
【0095】
操作パターンE3では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されておらず、モータ回転速度センサ231から所定の周波数のモータ回転パルス信号が出力されている。また、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されている。すなわち、操作パターンE3では、液体散布装置14は作動しない。
【0096】
操作パターンF3では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、モータ回転速度センサ231から所定の周波数のモータ回転パルス信号が出力されている。また、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されていない。すなわち、操作パターンF3では、所定の周波数のモータ回転パルス信号が出力されると、制御部15の入力端子に入力された電圧(本例においては、0.7V~4.3V)に応じた所定時間、液体散布装置14が作動する。これにより、所定の周波数のモータ回転パルス信号が入力される度に、調整された入力電圧に応じた所定時間、液体が散布される。
【0097】
操作パターンG3では、液体散布メインスイッチ16からメインスイッチ信号S1が出力されており、モータ回転速度センサ231から所定の周波数のモータ回転パルス信号が出力されている。また、手動スイッチ22から手動スイッチ信号S4が出力されている。すなわち、操作パターンG3では、手動スイッチ22が押下されている間、液体散布装置14が作動する。
【0098】
ここで、車速が速いと転圧輪12が舗装面30と接触する時間が短くなるので転圧輪12にアスファルト合材が付着しにくい。一方、車速が遅いと転圧輪12と舗装面30との接触時間が長くなり、転圧輪12にアスファルト合材が付着しやすい。そこで、変形例3に係る転圧車両10によれば、転圧車両10の減速後、すなわち車速が低速の際に液体を散布することにより、転圧輪12にアスファルト合材が付着することを抑制できる。
【0099】
また、本例においては、車速に基づいて液体の散布を開始するので、新たな装置などを追加することなく既存の情報に基づいて散布開始を判断できる。
【0100】
なお、本例においては、速度センサ23として、モータの回転数を検出するモータ回転速度センサ231を例に挙げて説明している。しかしながら、速度センサ23として、転圧輪12の回転数を検出する転圧輪回転速度センサや、前後進レバー13の傾動角度を検出する傾動角度センサなどが用いられてもよい。
【0101】
また、本例においては、車速が第一閾値以上となってから所定時間経過するまで、液体が散布されている。しかしながら、例えば、車速が第一閾値以上となってから第二閾値を超えるまで、液体が散布されるように構成されてもよい。すなわち、制御部15は、車速信号S5に基づいて、車速が第一閾値よりも大きい第二閾値を超えたと判断すると、所定時間が経過したと判断してもよい。転圧車両10の走行が開始されると、ニュートラル状態から徐々に車速が増加していくため、車速が第二閾値を超えたら所定時間が経過したと判断するように構成できる。すなわち、本明細書において「液体散布の開始から液体散布を停止するまでの所定時間」とは、液体散布を開始した時から液体散布を停止するまでに計時された時間に限定されない。例えば、車速が、液体散布を開始するための基準である第一閾値以上となった時点から液体散布を停止するための基準である第二閾値を超えるまでに要した時間を含む。
【0102】
また、本例においては、車速が第二閾値以下となってから所定時間経過するまで、液体が散布されている。しかしながら、車速が第二閾値以下となってから転圧車両10が走行停止になるまで、液体が散布されるように構成されてもよい。すなわち、制御部15は、車速信号S5に基づいて、車速が第二閾値以下となり第一閾値未満となったと判断されるまで、液体を散布するように構成されてもよい。
【0103】
上記の各実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の各実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0104】
上記の実施形態において、液体散布装置14は、アスファルト付着防止剤を散布するように構成されている。しかしながら、液体散布装置14は、例えば水を散布するように構成されてもよい。あるいは、液体散布装置14は、アスファルト付着防止剤と水の両方を散布するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10:転圧車両
11:車体
12:転圧輪
13:前後進レバー
14:液体散布装置
141:液体タンク
142:液体散布ノズル
143:配管路
144:液体ポンプ
15:制御部
16:液体散布メインスイッチ
17:運転席
18:レバー位置検出センサ
19:リレー
20:所定時間設定スイッチ
21:可変抵抗
22:手動スイッチ
23:速度センサ
30:舗装面
231:モータ回転速度センサ
S1:メインスイッチ信号
S2:ニュートラル信号
S3:時間設定信号
S4:手動スイッチ信号
S5:車速信号