IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特開-電子機器および制御方法 図1
  • 特開-電子機器および制御方法 図2
  • 特開-電子機器および制御方法 図3
  • 特開-電子機器および制御方法 図4
  • 特開-電子機器および制御方法 図5
  • 特開-電子機器および制御方法 図6
  • 特開-電子機器および制御方法 図7
  • 特開-電子機器および制御方法 図8
  • 特開-電子機器および制御方法 図9
  • 特開-電子機器および制御方法 図10
  • 特開-電子機器および制御方法 図11
  • 特開-電子機器および制御方法 図12
  • 特開-電子機器および制御方法 図13
  • 特開-電子機器および制御方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096592
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電子機器および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20240709BHJP
   G06F 1/18 20060101ALI20240709BHJP
   G06F 3/00 20060101ALI20240709BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G06F1/26 306
G06F1/18 D
G06F3/00 Q
H02J1/00 308A
H02J1/00 307A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000172
(22)【出願日】2023-01-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 厚男
(72)【発明者】
【氏名】中田 宗文
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 眞
【テーマコード(参考)】
5B011
5G165
【Fターム(参考)】
5B011DA02
5B011EA04
5B011EB06
5B011GG03
5G165AA01
5G165CA01
5G165EA01
5G165EA06
5G165GA06
5G165GA07
5G165HA01
5G165HA07
5G165HA17
5G165JA07
5G165KA02
5G165LA01
5G165LA02
5G165MA01
5G165MA10
5G165NA02
5G165NA10
5G165PA01
(57)【要約】
【課題】簡便かつ経済的に電子機器を起動させる。
【解決手段】コネクタは伝送線路を用いて直流電源と接続可能とし、伝送線路は、電源線と信号線を有し、スイッチは信号線を切断または基準電位線に接続可能とし、コントローラは、信号線の電位を監視し、電位に基づいて信号線の再接続を検出するとき、ホストシステムを起動させる。本実施形態は、コネクタ、コントローラおよびホストシステムを備える電子機器と、当該電子機器の制御方法のいずれでも実現することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストシステムと、
コントローラと、
伝送線路を用いて直流電源と接続可能なコネクタと、を備え、
前記伝送線路は、電源線と信号線を有し、
前記信号線を切断または基準電位線に接続可能とするスイッチを備え、
前記コントローラは、
前記信号線の電位を監視し、
前記電位に基づいて前記信号線の再接続を検出するとき、前記ホストシステムを起動させる
電子機器。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記信号線の電位に基づいて前記信号線の一時的な切断を検出した後、
前記直流電源に電力供給を再開させる
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記信号線の電位に基づいて前記信号線の接続を検出し、かつ、前記電源線の電位に基づいて電力供給の停止を検出するとき、
前記直流電源に電力供給を再開させる
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記伝送線路は、第1伝送線路と第2伝送線路を備え、
前記第1伝送線路の一端は、前記直流電源に接続され、
前記第1伝送線路の他端は、前記第2伝送線路の一端に接続可能とし、
前記第2伝送線路の他端は、前記コネクタに接続可能とし、
前記第2伝送線路は、前記スイッチを備える
請求項2または請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記信号線は、第1信号線と第2信号線を含み、
前記スイッチは、前記第1信号線と前記第2信号線を切断または前記基準電位線に接続可能とし、
前記コントローラは、前記第1信号線と前記第2信号線の電位を監視し、
前記電位に基づいて前記第1信号線と前記第2信号線のいずれか一方の再接続の有無を判定する
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2伝送線路の一端は、前記第1伝送線路の他端と嵌合する第1コネクタを備え、
前記第2伝送線路の他端は、前記コネクタと嵌合する第2コネクタを備え、
前記第1コネクタと前記第2コネクタは、それぞれ前記第1信号線を終端する第1端子と、前記第2信号線を終端する第2端子を回転対称な位置に備える
請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
ホストシステムと、
コントローラと、
伝送線路を用いて直流電源と接続可能なコネクタと、
を備える電子機器における制御方法であって、
前記伝送線路は、電源線と信号線を有し、前記信号線を切断または基準電位線に接続可能とするスイッチを備え、
前記電子機器は、
前記信号線の電位を監視し、
前記電位に基づいて前記信号線の再接続を検出するとき、前記ホストシステムを起動させる
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電子機器および制御方法、例えば、電子機器の起動手順に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、使用時に電源ボタンが露出し、非使用時に覆われるように変形可能とする筐体を有するものがある。例えば、ノートブック型パーソナルコンピュータ(ノートPC:Personal Computer)は、2個の筐体を備え、一方の筐体が他方の筐体に対し、それぞれの一辺を回転軸として回動可能な構造を有する。一方の筐体にディスプレイが配置され、他方の筐体に電源ボタンが配置される。2個の筐体が閉じられた状態では電源ボタンが一方の筐体に覆われる。
【0003】
ノートPCなどの電子機器は、各種の入出力デバイスを接続して使用されることがある。接続される入出力デバイスは、例えば、外部ディスプレイ、キーボード、マウスなどである。外部の入出力デバイスを接続してノートPCを起動させる際、ユーザは、一方の筐体を開いて電源ボタンを露出させた後で、その電源ボタンを押下する必要がある。その後、ユーザは、一方の筐体を閉じ、その筐体に備わるディスプレイの機能を停止させる。電子機器を起動して外部ディスプレイを機能させる都度、筐体を開閉することはユーザにとり煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-219903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この点、筐体を操作せずにノートPCを起動するため、ドッキングステーション(docking station)を導入し、ノートPCと各種の入出力デバイスを接続することも考えられる。ドッキングステーションは、特許文献1に例示されるように、複数のデバイス間で統一した動作環境を提供する。ドッキングステーションは比較的高価なため、入出力デバイスの接続だけを目的として所望されないことがある。そこで、ノートPCの動作中にBIOS(Basic Input/Output System)の電源設定において、AC(Alternating Current)アダプタの接続時の起動(Power On with AC Attach)の項目に有効(Enabled)と設定しておくことも考えられる。通電状態のACアダプタを電源OFF状態のノートPCに接続するか、既に接続されたACアダプタを着脱してノートPCを起動させることも考えられる。それでもなお、ACアダプタを接続したままノートPCを運用したいという要望が残される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は上記の課題を解決するためになされたものであり、本願の第1の態様に係る電子機器は、ホストシステムと、コントローラと、伝送線路を用いて直流電源と接続可能なコネクタと、を備え、前記伝送線路は、電源線と信号線を有し、前記信号線を切断または基準電位線に接続可能とするスイッチを備え、前記コントローラは、前記信号線の電位を監視し、前記電位に基づいて前記信号線の再接続を検出するとき、前記ホストシステムを起動させる。
【0007】
上記の電子機器において、前記コントローラは、前記信号線の電位に基づいて前記信号線の一時的な切断を検出した後、前記直流電源に電力供給を再開させてもよい。
【0008】
上記の電子機器において、前記コントローラは、前記信号線の電位に基づいて前記信号線の接続を検出し、かつ、前記電源線の電位に基づいて電力供給の停止を検出するとき、前記直流電源に電力供給を再開させてもよい。
【0009】
上記の電子機器において、前記伝送線路は、第1伝送線路と第2伝送線路を備え、前記第1伝送線路の一端は、前記直流電源に接続され、前記第1伝送線路の他端は、前記第2伝送線路の一端に接続可能とし、前記第2伝送線路の他端は、前記コネクタに接続可能とし、前記第2伝送線路は、前記スイッチを備えてもよい。
【0010】
上記の電子機器において、前記信号線は、第1信号線と第2信号線を含み、前記スイッチは、前記第1信号線と前記第2信号線を切断または前記基準電位線に接続可能とし、前記コントローラは、前記第1信号線と前記第2信号線の電位を監視し、前記電位に基づいて前記第1信号線と前記第2信号線のいずれか一方の再接続の有無を判定してもよい。
【0011】
上記の電子機器は、前記第2伝送線路の一端は、前記第1伝送線路の他端と嵌合する第1コネクタを備え、前記第2伝送線路の他端は、前記コネクタと嵌合する第2コネクタを備え、前記第1コネクタと前記第2コネクタは、それぞれ前記第1信号線を終端する第1端子と、前記第2信号線を終端する第2端子を回転対称な位置に備えてもよい。
【0012】
本願の第2の態様に係る制御方法は、ホストシステムと、コントローラと、伝送線路を用いて直流電源と接続可能なコネクタと、を備える電子機器における制御方法であって、前記伝送線路は、電源線と信号線を有し、前記信号線を切断または基準電位線に接続可能とするスイッチを備え、前記電子機器は、前記信号線の電位を監視し、前記電位に基づいて前記信号線の再接続を検出するとき、前記ホストシステムを起動させる。
【発明の効果】
【0013】
本願の実施形態によれば、簡便かつ経済的に電子機器を起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る電子機器のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
図2】本実施形態に係る電子機器の外観構成例を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係るスイッチの第1配置例を示す図である。
図4】本実施形態に係るスイッチの第2配置例を示す図である。
図5】本実施形態に係る電子機器とACアダプタの間のCC信号線の接続状態の一例を示す図である。
図6】CC信号線と電源線の電位の時間変化の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る電子機器とACアダプタの間のCC信号線の接続状態の他の例を示す図である。
図8】CC信号線と電源線の電位の時間変化の他の例を示す図である。
図9】本実施形態に係る伝送線路におけるスイッチの一配置例を示す図である。
図10】本実施形態に係る伝送線路におけるスイッチの他の配置例を示す図である。
図11】本実施形態に係る信号線の一接続例を示す図である。
図12】本実施形態に係る信号線の他の接続例を示す図である。
図13】本実施形態に係るスイッチの第3配置例を示す図である。
図14】本実施形態に係るスイッチの第4配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本実施形態に係る電子機器1の概要について説明する。
電子機器1は、ホストシステムと、コントローラと、伝送線路を用いて直流電源と接続可能なコネクタを備える。伝送線路は、電源線と信号線を有し、信号線を切断または基準電位線に接続可能とするスイッチに接続される。コントローラは、信号線の電位を監視し、監視した電位に基づいて信号線の接続状態を検出し、直流電源からの電力供給が断絶し、その後、再開されるとき、ホストシステムを起動させる。
【0016】
以下の説明では、電子機器1がノートPCであり、伝送線路がUSB(Universal Serial Bus) Type-Cケーブルである場合を主とする。USB type-Cは、入出力機器ならびに伝送線路の代表的な標準規格の1つである。
【0017】
図1は、本実施形態に係る電子機器1のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。電子機器1は、プロセッサ11と、メインメモリ12と、ビデオサブシステム13と、ディスプレイ14と、IOコントローラ21と、BIOSメモリ22と、補助記憶装置23と、オーディオシステム24と、WLANカード25と、USBアダプタ26と、EC31と、入力部32と、電源回路33と、バッテリ34と、電源ボタン36と、PDコントローラ40と、を備える。
【0018】
プロセッサ11は、各種のソフトウェア(プログラム)に記述された命令で指示される種々の演算処理を実行する。プロセッサ11には、少なくとも1個のCPUが含まれる。CPUは、電子機器1全体の動作を制御する。CPUは、例えば、OS(Operating System)、BIOS、アプリケーションプログラム(本願では、「アプリ」と呼ぶこともある)など、ソフトウェアに基づく処理を実行する。なお、ソフトウェアに記述された指令(コマンド)で指示される処理を実行することを、「ソフトウェアを実行する」と呼ぶことがある。
【0019】
メインメモリ12は、プロセッサ11の実行プログラムの読み込み領域として、または、実行プログラムの処理データを書き込む作業領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップで構成される。実行プログラムには、OS、周辺機器などのハードウェアを操作するための各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリ等が含まれる。プロセッサ11とメインメモリ12は、電子機器1の主たるコンピュータシステム(即ち、ホストシステム)を構成する最小限のハードウェアである。
【0020】
ビデオサブシステム13は、画像表示に関連する機能を実現するためのサブシステムであり、ビデオコントローラを含む。ビデオコントローラは、プロセッサ11からの描画命令を処理し、処理した描画情報をビデオメモリに書き込むとともに、ビデオメモリからこの描画情報を読み出して、ディスプレイ14に表示情報を示す表示データとして出力するビデオサブシステム13は、1個または複数個のGPU(Graphic Processing Unit)を含んで構成されてもよい。
【0021】
ディスプレイ14は、ビデオサブシステム13から出力された描画データ(表示データ)に基づく表示画面を表示する。ディスプレイ14は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode、有機発光ダイオード)ディスプレイなどのいずれであってもよい。
【0022】
IOコントローラ21は、複数のコントローラを備え、複数のデバイスと各種のデータを入出力できるように接続可能とする。コントローラは、例えば、USB(Universal Serial Bus)、シリアルATA(AT Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、および、LPC(Low Pin Count)などのバスコントローラのいずれか1個または組み合わせに相当する。複数のデバイスとして、例えば、後述するBIOSメモリ22、補助記憶装置23、オーディオシステム24、WLANカード25、USBアダプタ26、および、EC31が含まれる。
【0023】
BIOS(Basic Input Output System)メモリ22は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュROMなど、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。BIOSメモリ22は、BIOSなどのシステムファームウェア、EC31その他のデバイスの動作を制御するためのファームウェアなどを記憶する。
【0024】
補助記憶装置23は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。補助記憶装置23は、プロセッサ11その他のデバイスの処理に用いられる各種のデータ、または、それらの処理により取得された各種のデータ、各種のプログラムなどを記憶する。補助記憶装置23は、例えば、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)などのいずれか1個またはいずれかの組み合わせであってもよい。
【0025】
オーディオシステム24は、マイクロホンとスピーカ(図示せず)が接続され、音声データの記録、再生および出力を行う。なお、マイクロホンとスピーカは、例えば、電子機器1に内蔵されてもよいし、電子機器1とは別体であってもよい。
【0026】
WLAN(Wireless Local Area Network、無線LAN)カード25は、無線LANに接続し、無線LANに直接または間接的に接続された他の機器との間でデータ通信を行う。無線LANは、所定の無線通信方式(例えば、IEEE802.11)に従って機器間で各種のデータを送受信可能とする。無線LANでは、機器間の通信がアクセスポイントを経由して実行される。アクセスポイントは、自局を含んで構成される無線LAN内の機器、または、他のネットワークとデータを送受信可能に接続する基地局である。
【0027】
USBアダプタ26は、USB規格に基づく通信機能(本願では「USB通信機能」と呼ぶことがある)を有する各種のデバイス(本願では、「外部デバイス」と呼ぶことがある)を電気的に接続するためのコネクタ26c(後述)を備える。コネクタ26cは、例えば、USB-C規格に準拠したUSB-Cコネクタである。コネクタ26cは、自装置内のUSBを終端する端子を備え、別個のUSBコネクタと電気的に接続されるように嵌合可能な形態を有する。別個のUSBコネクタはUSB-Cケーブルの他端を終端し、コネクタ26cと嵌合可能な形態を有する。
【0028】
USB-Cケーブルは、電源線(power line)と信号線(signal line)を備え、これらを一括して束ねて構成された伝送線路である。個々のUSB-Cケーブルに備わる端子は、電源線と信号線をそれぞれ終端し、伝送線路の一部をなす。従って、USBアダプタ26は、外部デバイスとの間で伝送線路を用いて各種のデータを送受信可能としてUSB通信機能を実現するとともに、電力を送受電可能とする。
【0029】
USBアダプタ26は、電子機器1を構成するIOコントローラ21、電源回路33およびPDコントローラ40に物理的に接続される。USBアダプタ26は、電子機器1のホストシステムの動作状態に関わらず、電源回路33と外部デバイスとの間で電力を送受電可能に接続する。USBアダプタ26は、IOコントローラ21およびPDコントローラ40のそれぞれとの間でデータを送受信可能に接続される。接続可能とする外部機器には、ACアダプタ136(後述)も含まれうる。ACアダプタ136は、外部電源から供給される交流電力を電圧が一定となる直流電力に変換し、変換された電力をUSBアダプタに供給する。ACアダプタ136は、USBアダプタ26との間で電力の他、制御信号が入出力されてもよい。制御信号の入出力は、所定の規格に従って実行される。所定の規格として、例えば、USB Type-Cを用いることができる。
【0030】
EC(Embedded Controller)31は、電子機器1のホストシステムの動作状態に関わらず、各種デバイス(周辺装置やセンサ等)を監視して制御するワンチップマイコン(One-Chip Microcomputer)である。EC31は、プロセッサ11とは別個にCPU、ROM、RAM、複数チャネルのA/D(Analog-to-Digital)入力端子、D/A(Digital-to-Analog)出力端子、タイマおよびデジタル入出力端子(図示せず)を備える。EC31のデジタル入出力端子には、例えば、入力部32、電源回路33、PDコントローラ40などが接続され、EC31は、これらの動作を制御する。
【0031】
入力部32は、ユーザの操作を検出し、検出した操作に応じた操作信号をEC31に出力する入力デバイスを備える。入力部32には、例えば、キーボードや、タッチパッドなどが含まれる。入力部32をなすタッチセンサは、ディスプレイ14と一体に重なり合い、タッチパネルとして構成されてもよい。
【0032】
電源回路33は、USBアダプタ26、または、バッテリ34から供給される直流電力の電圧を、電子機器1を構成する各デバイスの動作に要する電圧に変換し、変換した電圧を有する電力を供給先のデバイスに供給する。電源回路33は、EC31の制御に従って、電力供給を実行する。電源回路33は、自器に供給される電力の電圧を変換するDC/DC(Direct)変換器と、電圧が変換された電力をバッテリ34に供給する給電器を備える。給電器は、USBアダプタ26から電力が供給されている場合、各デバイスにおいて消費されずに残された電力をバッテリ34に供給する。USBアダプタ26から電力が供給されない場合、または、USBアダプタ26から供給される電力が不足する場合には、動作電力としてバッテリ34から放電される電力をDC/DC変換器を用いて各デバイスに供給する。
バッテリ34として、二次電池が用いられる。二次電池は、充電および放電とも可能な蓄電池である。二次電池は、例えば、リチウムイオン電池である。
【0033】
電源ボタン36は、押下操作が受け付けられる都度、電子機器1の全体に対する電力の供給状態として、電源投入(Power ON)および電源断(Power OFF)のいずれかに制御する。押下操作が受け付けられるとき、電源ボタン36は、押下を示す押下信号をEC31に出力する。EC31は、電子機器1が電源断であって電源ボタン36から押下信号が入力されるとき、電源回路33に対して電子機器1の各デバイスへの電力供給を開始させる(電源投入)。プロセッサ11は、自部への電力供給の開始を検出するとき、BIOSメモリ22からBIOSを読み取り、メインメモリ12にロードし、BIOSに記述された各種の指令に従って起動処理(ブート)を実行する。起動処理において、プロセッサ11は、補助記憶装置23に退避させていたデータをメインメモリ12にロードする。その後、プロセッサ11は、OSを起動し、OSの起動が完了した後、補助記憶装置23などのデバイスの制御に係るデバイスドライバの実行を開始する(起動処理)。
【0034】
他方、EC31は、電子機器1に電源投入され、かつ、電源ボタン36から押下信号が入力されるとき、プロセッサ11に停止処理(シャットダウン)を実行させる。プロセッサ11は、停止処理において、その時点で作業領域に存在するデータを補助記憶装置23その他の補助記憶装置に退避させる。プロセッサ11は、データの退避を終了した後、その時点で実行しているアプリ、補助記憶装置23などのデバイスドライバ、その他のプログラムによる処理を停止する(停止処理)。その後、プロセッサ11は、停止処理の完了をEC31に通知する。EC31は、電源回路33に電子機器1の各デバイスへの電力供給を停止させる。
【0035】
PD(Power Delivery)コントローラ40は、USBアダプタ26と外部デバイスとの接続状態を検出し、検出した接続状態に応じて外部デバイスとの送受電を制御する。また、PDコントローラ40は、検出した接続状態をEC31に通知する。
【0036】
次に、本実施形態に係る電子機器1の外観構成例について説明する。図2は、本実施形態に係る電子機器1の外観構成例を示す斜視図である。電子機器1は、第1筐体101、第2筐体105を備え、ヒンジ機構121a、121bを用いて結合される。ヒンジ機構121a、121bは、それぞれ第1筐体101の一辺と第2筐体105の一辺に固定される。第1筐体101と第2筐体105の一辺を回転軸として第1筐体101と第2筐体105の一方は、他方に対して相対的に回動可能とする。即ち、第1筐体101の主面と第2筐体105の主面とのなす角度θ(本願では、「開き角」と呼ぶ)が可変となる。
【0037】
第1筐体101の主面には、ディスプレイ14が配置され、その大部分を占める。第2筐体105の主面には、キーボード32kと、タッチパッド32tと、電源ボタン36が配置される。かかる配置により、電子機器1は、第1筐体101と第2筐体105が開いた状態で使用される。開いた状態とは、第1筐体101の主面と第2筐体105の主面の一方が他方に遮蔽されずに開放する状態である。開いた状態では、開き角θは、典型的には90°~180°の範囲内となる。開いた状態では、電源ボタン36が第2筐体105に遮られずに露出する。閉じた状態では、電源ボタン36は第2筐体105に遮られ、押下操作をなしえない。EC31は、第1筐体101と第2筐体105が開いた状態から閉じた状態に変化したことを検出し、開いた状態において動作中であったホストシステムの動作状態を、より消費電力が低い状態(即ち、スリープ状態)または停止することがある。なお、第2筐体105の側面には、USBアダプタ26が装着されている。USBアダプタ26は、第1筐体101と第2筐体105との開閉状態に関わらず露出するため、伝送線路を用いた他の機器との着脱を容易になしうる。
【0038】
本実施形態に係る電子機器1は、第1筐体101と第2筐体105を開いた状態にせず、閉じた状態のままで電源投入を実現する。そこで、BIOSの電源設定(power setting)において、AC接続時電源投入(Power On with AC Attach)の項目を予め有効(Enabled)と設定しておく。この設定により、CPU11が、自身に供給される電力を検出するとき、ホストシステムの起動処理を開始する。他方、PDコントローラ40は、直流電源となるACアダプタ136との接続を検出するとき、ACアダプタ136からの電力の供給を受け、電源回路33を経由してCPU11に供給された電力を供給させる。
また、本実施形態では、電子機器1とACアダプタ136とを電気的に接続する伝送線路UCにおいて、伝送線路UCをなすCC信号線(Configuration Channel line)を操作に応じて切断または基準電位線に接続可能とするスイッチを備える。これにより、ACアダプタ136の接続または着脱しなくても、簡便にホストシステムを起動させることができる。
【0039】
次に、電子機器1とACアダプタ136とを接続する伝送線路UCとスイッチBSの例について説明する。以下の説明では、伝送線路UCが、USB-Cケーブルである場合を主とする。図3は、本実施形態に係るスイッチBSの第1配置例を示す図である。伝送線路UCは、電子機器1とACアダプタ136とを電気的に接続する。伝送線路UCは、信号線と電源線VBUSを含む。信号線には、CC信号線とUSB信号線が含まれる。CC信号線は、主に送受電の制御情報の伝送に用いられる。USB信号線は、接続先となる相手先機器との間で、各種のデータの伝送に用いられる。電源線は、電源(source)から負荷(sink)への電力の供給に用いられる。
【0040】
図3の例では、伝送線路UCは、CC信号線、USB電源線VBUSおよび基準電位線GNDを備える。CC信号線は途中で分断され、CC信号線の一部は電子機器1のUSBアダプタ26に接続され、CC信号線の他部はACアダプタ136に接続される。スイッチBSは、CC信号線の一部と他部を係合するようにスイッチBSが設置されている。スイッチBSは、ボタンと切片を備える。ボタンの一端は、操作による押下を受け付け、他端に支持される切片を移動させる。切片は、導体からなる。ボタンが押下されず、解除された状態では、切片の一端はCC信号線の一部に短絡(ショート)し、切片の他端はCC信号線の他部に短絡する。CC信号線の一部と他部が閉じられるので、CC信号線全体として電気的に接続された状態となる(NC:Normally Closed Type)。ボタンが押下された状態では、切片はCC信号線から離脱する。CC信号線の一部と他部が開放されるので、CC信号線は全体として電気的に絶縁された状態となる。
【0041】
図5は、電子機器1とACアダプタ136の間におけるCC信号線の接続状態の一例を示す図である。図5の例では、ACアダプタ136、USBアダプタ26を備える電子機器1は、それぞれ電源、負荷として機能する。CC信号線の一端には、ACアダプタ136により、プルアップ抵抗Rpを介して所定の電源電圧が印加される。CC信号線の他端は、USBアダプタ26によりプルダウン抵抗Rdを介して基準電位(即ち、0V)を与える基準電位線GNDに接続される。従って、ボタンが押下されていない状態では、CC信号線の電位は、0Vよりも有意に高い一定の正の電位に保たれる。ボタンが押下された状態では、CC信号線の電位は所定の電位よりも有意に低下し、基準電位と等しくなる。
【0042】
そこで、PDコントローラ40は、USBアダプタ26のCC信号線の端子における電位を監視する。PDコントローラ40は、監視した電位が所定のCC信号の電位よりも有意に低下するとき(例えば、0V)、CC信号線の断絶を検出する。このとき、PDコントローラ40は、ACアダプタ136から電源回路33への電力の供給を停止する。PDコントローラ40が、監視した電位が所定の電位以上に回復し、その状態が所定の継続時間以上継続するとき、CC信号線の接続を検出することができる。このとき、PDコントローラ40は、ACアダプタ136から電源回路33への電力の供給を開始する。CPU11は、直流電力の供給を検出して、起動処理を開始することができる。
【0043】
図6は、図3に例示されるスイッチBSのボタン押下によるCC信号線と電源線VBUSの電位の時間変化を例示する。図6の例では、当初、CC信号線の電位、電源線VBUSの電位は、それぞれ1.8V、20Vである。ボタン押下期間において、CC信号線は開放されるのでCC信号線の電位は0Vとなる。このとき、PDコントローラ40は、CC信号線の断絶を検出し、電源回路33への電力の供給を停止する。電源線VBUSの電位は、0Vに低下する。ボタンの押下を解除すると、CC信号線の電位は、当初の1.8Vに戻る。このとき、PDコントローラ40は、CC信号線の接続を検出し、電源回路33への電力の供給を再開する。電力供給の再開当初における電源線VBUSの電位は、USB Type-Cに規定の初期値(図6の例では、5.0V)となる。その後、PDコントローラ40は、自器の内部に予め設定された消費電力もしくはEC31から通知される消費電力に基づいて電子機器1に供給すべき電圧を要求電圧として定め、定めた要求電圧を示す要求電圧情報をACアダプタ136に送信する。ACアダプタ136は、要求電圧情報で指示される要求電圧を有する電力の供給を開始する。これに応じ、電源線VBUSの電位は、初期値5Vから要求電圧20Vに相当する電位に変化する。
【0044】
図4は、本実施形態に係るスイッチBSの第2配置例を示す図である。図4の例では、スイッチBSは、ボタン、切片および2個の端子を備える。一方の端子はCC信号線に電気的に接続され、他方の端子は基準電位線GNDに接続される。ボタンが押下されず、解除された状態では、切片と2個の端子は絶縁され、CC信号線と基準電位線の間の電位差が保持される(NC:Normally Open Type)。ボタンが押下された状態では、切片の一端は一方の端子に接触し、切片の他端は他方の端子に接触するので、CC信号線の電位が基準電位と等しくなる。そのため、CC信号線は有効な電気信号を伝送できなくなる。
【0045】
図7は、電子機器1とACアダプタ136の間におけるCC信号線の接続状態の一例を示す図である。図7の例では、スイッチBSのボタンが押下されていない状態では、CC信号線と基準電位線GNDとの電位差は、ほぼ一定に保たれる。ボタンが押下された状態では、CC信号線の電位は所定の電位よりも有意に低下し、0Vとなる。
【0046】
図8は、図4に例示されるスイッチBSのボタン押下によるCC信号線と電源線VBUSの電位の時間変化を例示する。図8の例では、当初、CC信号線の電位、電源線VBUSの電位は、それぞれ1.8V、20Vである。ボタン押下期間において、CC信号線は基準電位線GNDに電気的に接触するため、CC信号線の電位は0Vとなる。これに対し、電源線VBUSの電位は、20Vに維持される。PDコントローラ40は、電源線VBUSの電位とCC信号線の電位との関係における異常の有無を判定する。このとき、電源線VBUSの電位が電力供給時に取り得る範囲内であるのに対し、CC信号線の電位が0Vと、CC信号線による通信時には取り得ない値となりうる。そのため、PDコントローラ40は、異常判定を行う(エラー検出)。このとき、PDコントローラ40は、電源回路33への電力の供給を停止する。このとき、電源線VBUSの電位は0Vに低下する。ボタンの押下を解除すると、CC信号線の電位は当初の1.8Vに戻る。
【0047】
その後、PDコントローラ40は、電源回路33への電力の供給を再開する。電力供給の再開当初における電源線VBUSの電位は、初期値5.0Vとなる。その後、PDコントローラ40は、自器の内部に予め設定された消費電力もしくはEC31から通知される消費電力に応じて要求電圧を定め、定めた要求電圧を示す要求電圧情報をACアダプタ136に送信する。ACアダプタ136は、要求電圧情報で指示される要求電圧を有する電力の供給を開始する。これに応じ、電源線VBUSの電位は、初期値5Vから要求電圧に相当する電位20Vに変化する。
【0048】
図3、4、5、7の例では、スイッチBSが伝送線路UCのほぼ中央部に設置されているが、スイッチBSの位置は、CC信号線の断続または基準電位線との接続の有無を切り替えることができる位置であれば、これには限られない。図9に例示されるように、スイッチBSは、伝送線路UCの一端に設置されたコネクタ126に併設されていてもよい。伝送線路UCの他端には、ACアダプタ136が接続されている。ACアダプタ136は、外部電源138から供給される交流電力を直流電力に変換し、伝送線路UCに送出する。
【0049】
上記の例では、ACアダプタ136とUSBアダプタ26の間の伝送線路が1本である場合を主としたが、これには限られない。複数の伝送線路が直列に接続され、ACアダプタ136とUSBアダプタ26の間で電気的に1系統の伝送線路が形成されてもよい。ある伝送線路Xの一端と、他の伝送線路Yの他端には、それぞれコネクタX、Yが設置され、コネクタX、Yの間で、互いに嵌合可能な形状を有していてもよい。例えば、一方のコネクタXは凸型端子(plug)を備え、他方のコネクタYは凹型端子(receptacle)を備える。スイッチBSは、複数の伝送線路のうち、少なくともいずれか1本の伝送線路に配設されていればよい。
【0050】
図10の例では、ACアダプタ136には、伝送線路UCと延長線路(延長ケーブル)UCeが直列に接続されている。伝送線路UCの一端、他端は、それぞれACアダプタ136、延長線路UCeの一端に接続されている。伝送線路UCの他端、延長線路UCeの一端には、それぞれコネクタ126、126rが設置されている。コネクタ126、126rは、それぞれ凸型端子、凹型端子を有する。延長線路UCeの他端には、コネクタ126pが設置されている。コネクタ126pは、凸型端子を有する。コネクタ126pには、スイッチBSが装着されている。
【0051】
コネクタ126、126r、126p、26cは、それぞれ複数の端子を有する。個々の端子は、それぞれ対応する線路を終端する。図11の例では、コネクタ126、126r、126p、26cは、それぞれUSB Type-Cに準拠し、24個の端子を有する。24個の端子は、個々のコネクタの終端面に2列に並列されている。各列における端子の個数は12個である。列ごとに12個の異なる種類の線路が接続される。
【0052】
図11の例では、コネクタ126の第1列には、端子A1~A12として、GND、TX1+、TX1-、VBUS、CC、D+、D-、SBU1、VBUS、RX2-、RX2+およびGNDのそれぞれの端子が、その順に配列されている。そのうち、2個のGNDは、それぞれ基準電位線、もしくは、その端子を示す。TX1+とTX1-の対は、USB3.0以降の規定に基づく信号の送信に用いられる信号線、もしくは、その端子を示す。2個のVBUSは、それぞれ電源線、もしくは、その端子を示す。CCは、CC信号線、もしくは、その端子を示す。RX2-、RX2+の対は、USB3.0以降の規定に基づく信号の受信に用いられる信号線、もしくは、その端子を示す。D+、D-の対は、USB2.0以前の規定に基づく各種信号の伝送に用いられる信号線、もしくは、その端子を示す。SBU1は、予備の線路、もしくは、その端子を示す。
【0053】
コネクタ126の第2列に配列されている端子ごとの線路の種類は、コネクタ126の長手方向に沿って第1列とは概ね逆の順序に配列されている。コネクタ126の第2列には、端子B1~B12として、GND、TX2+、TX2-、VBUS、VCONN、SBU2、VBUS、RX1-、RX1+およびGNDのそれぞれの端子が、その順に配列されている。但し、中央の2個の端子には線路が割り当てられていない。VCONNは、USB Type-Cケーブルの電源線の1つである。VCONNはUSB Type-Cケーブルに付随する各種の電子回路への電力の供給を主目的とする線路、もしくは、その端子を示す。但し、USB Type-Cケーブルは、2本のCC信号線を有し、一方がVCONNとして用いられ、他方がCC信号線として制御情報の伝送に用いられる。2本のCC信号線に係る端子(CC、VCONN)は、コネクタ126の終端面において互いに回転対称な位置関係を有する。
【0054】
コネクタ126rの端子の配列は、コネクタ126の端子の配列と概ね左右対称である。即ち、コネクタ126rの第1列、第2列の端子は、コネクタ126の第2列、第1列の端子と同様である。但し、コネクタ126rの第1列にも、その中央部にD+、D-が割り当てられ、第2列のD+、D-とは順序が逆転している。コネクタ126rには、第1列、第2列において、VCONN、CCに代え、CC2、CC1が割り当てられている。コネクタ126pの終端面においても、2本のCC信号線CC1、CC2に係る端子は互いに回転対称な位置関係を有する。
【0055】
なお、コネクタ126pの端子の配列は、コネクタ126の端子の配列と同様である。コネクタ26cの端子の配列は、コネクタ126rの端子の配列と同様である。端子の配列の回転対称性は、一方のコネクタと他方のコネクタとが、互いに逆方向に接続される可能性に備えるためである。コネクタ126、126rの接続方向は、着脱により意図せずに反転することがある。
【0056】
図11の例では、コネクタ126の第1列、第2列は、長手方向の向きを変えずに、それぞれコネクタ126rの第2列、第1列に接続する。コネクタ126のCC端子は、コネクタ126rのCC1端子に接続され、ひいては、コネクタ126pのCC端子に接続される。コネクタ126pの第1列、第2列は、長手方向の向きを変えずに、それぞれコネクタ126rの第2列、第1列に接続する。コネクタ126pのCC端子は、コネクタ26cのCC1端子に接続する。
【0057】
図12の例では、コネクタ126の第2列、第1列は、向きを反転して、それぞれコネクタ126rの第1列、第2列に接続する。コネクタ126のCC端子は、コネクタ126rのCC2端子に接続され、ひいては、コネクタ126pのVCONN端子に電気的に接続される。コネクタ126pの第1列、第2列が、それぞれコネクタ126rの第2列、第1列に接続する。コネクタ126pのVCONN端子は、コネクタ26cのCC2端子に電気的に接続する。
【0058】
コネクタ126、126rの向きは、着脱により反転する可能性があるが、コネクタ126から出力されるCC信号線に伝送される電気信号は、コネクタ26cのCC1、CC2のいずれか一方に伝送される。
PDコントローラ40は、CC1信号線、CC2信号線それぞれの電圧を監視し、上記のように、いずれか一方において有意な電圧の低下を検出するとき、ACアダプタ136に電力供給を指示する。但し、CC1信号線、CC2信号線のスイッチBSに対する操作による電圧変化が生ずるか否かは、コネクタ126、126rの向きに依存するので、PDコントローラ40には予め知得されない。
そこで、延長線路UCeには2個のスイッチBS1、BS2を備える。2個のスイッチBS1、BS2は連動するように構成される。スイッチBS1、BS2のいずれか一方のボタンに対する押下に応じて、CC1信号線とCC2信号線のいずれも断絶または基準電位線に接触させる。
【0059】
図13は、本実施形態に係るスイッチBS1、BS2の第3配置例を示す図である。スイッチBS1、BS2は、1個のスイッチ群SGを形成する。延長線路UCeは、2本のCC信号線CC1、CC2、電源線VBUSおよび基準電位線GNDを含む。スイッチBS1、BS2は、それぞれボタンと切片を備える。スイッチBS1、BS2それぞれのボタンは支持材を用いて連接される。よって、支持材または一方のボタンの押下により両方のボタンが移動する。両方のボタンの移動により、CC信号線CC1、CC2は、それぞれの切片が離れ、開放される。そのため、電子機器1のコネクタ26cにおけるCC信号線の電位は0Vとなる。支持材またはボタンの押下が解除されるとき、CC信号線CC1、CC2は、それぞれの切片と導通する。CC信号線CC1、CC2は、それぞれ導通するため、電子機器1のコネクタ26cにおけるCC信号線の電位は、0Vよりも有意に高い正値となる。
【0060】
図14は、本実施形態に係るスイッチBS1、BS2の第4配置例を示す図である。スイッチBS1の切片の一端は抵抗素子Rb1を用いてCC信号線CC1に接続され、スイッチBS2の切片の一端は抵抗素子Rb2を用いてCC信号線CC2に接続される。スイッチBS1、BS2それぞれの切片の他端は、いずれも基準電位線GNDに接続される。よって、支持材または一方のボタンの押下により両方のボタンが移動する。両方のボタンの移動により、CC信号線CC1、CC2は、それぞれ切片を経由して基準電位線GNDと短絡する。そのため、電子機器1のコネクタ26cにおけるCC信号線CC1、CC2の電位は0Vとなる。支持材またはボタンの押下が解除されるとき、CC信号線CC1、CC2から、それぞれの切片が離れる。CC信号線CC1、CC2は、それぞれ基準電位線GNDから絶縁されるため、電子機器1のコネクタ26cにおけるCC信号線CC1、CC2の電位は有意に0Vより高い正値となる。
【0061】
上記の説明では、電子機器1がノートPCである場合を主としたが、これには限られない。電子機器1は、タブレット端末装置、携帯電話機など、その他の形態の汎用の情報機器として構成されてもよいし、映像投影装置(プロジェクタ)本体など、特定の機能を主機能として有する機器として構成されてもよい。特に電子機器1が、非使用時に筐体の一部が電源ボタン36を遮蔽し、使用時に電源ボタン36が筐体に遮られずに開放される形態を備える場合に有用である。例えば、電子機器1は、ヒンジ機構に代え、第1筐体101が第2筐体105に対して平行移動可能とするスライド機構(図示せず)を備え、電源ボタン36が第1筐体101に覆われずに露出される状態で、動作するものであってもよい。
【0062】
上記の説明では、コネクタ26c、126、126p、126r、伝送線路UCおよび延長線路UCeがUSB Type-Cに従って各種の信号と電力を入出力する場合を例にしたが、これには限られない。本実施形態は、他の入出力方式、USB Type-Cの後継規格、または、これに類する規定に従うものであってもよい。また、CC信号線の切断に係るスイッチBS、BS1、BS2は、機械式スイッチに限らず、電磁式スイッチ、など、他の動作原理に基づくものであってもよい。また、スイッチBS1、BS2の連動は、支持材を用いた機械的手法に限らず、電気回路を用いて実現されてもよい。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態に係る電子機器1は、ホストシステムと、コントローラ(例えば、PDコントローラ40)と、伝送線路(例えば、伝送線路UC)を用いて直流電源(例えば、ACアダプタ136)と接続可能なコネクタ(例えば、コネクタ26c)と、を備える。伝送線路は、電源線(例えば、電源線VBUS)と信号線(例えば、CC信号線)を有し、信号線を切断または基準電位線(例えば、基準電位線GND)に接続可能とするスイッチ(例えば、スイッチBS)を備える。コントローラは、信号線の電位を監視し、監視した電位に基づいて信号線の再接続を検出するとき、ホストシステムを起動させる。
この構成によれば、簡素なスイッチ操作により信号線の接続状態が変動し、信号線の電位に基づいて信号線の再接続が検出されるとき、特段の機材を追加せずに、電子機器1のホストシステムを起動させることができる。そのため、簡便かつ経済的に電子機器1を起動させることができる。
【0064】
コントローラは、信号線の電位に基づいて信号線の一時的な切断を検出した後、直流電源に電力供給を再開させてもよい。
この構成によれば、信号線が一時的に断絶した後、直流電源に動作に要する電力を電子機器1に供給させることができる。
【0065】
コントローラは、信号線の電位に基づいて信号線の接続を検出し、かつ、電源線の電位に基づいて電力供給の停止を検出するとき、直流電源に電力供給を再開させてもよい。
この構成によれば、スイッチ操作後に信号線が再接続し、直流電源から電力が供給されない場合には、直流電源に動作に要する電力を電子機器1に供給させることができる。
【0066】
伝送線路は、第1伝送線路と第2伝送線路を備え、第1伝送線路の一端は、直流電源に接続され、第1伝送線路の他端は、第2伝送線路の一端に接続可能とし、第2伝送線路の他端は、コネクタに接続可能とし、第2伝送線路は、スイッチを備えてもよい。
この構成によれば、直流電源に直接接続される第1伝送線路と電子機器1のコネクタとがスイッチを備える第2伝送線路を用いて接続される。そのため、既存の第1伝送線路を利用しながら、第2伝送線路に備わるスイッチに対する操作に基づいて電子機器1を起動させることができる。
【0067】
信号線は、第1信号線(例えば、CC信号線CC1)と第2信号線(例えば、CC信号線CC1)を含み、スイッチは、第1信号線と第2信号線を切断または基準電位線に接続可能とし、コントローラは、第1信号線と第2信号線の電位を監視し、監視により知得された電位に基づいて第1信号線と第2信号線のいずれか一方の再接続の有無を判定する。
この構成によれば、スイッチ操作により第1信号線と第2信号線のいずれも切断または基準電位線に接続可能とする。他方、第1信号線と第2信号線のいずれか一方の電位に基づいて、その再接続の有無が判定される。第1信号線と第2信号線の一方が利用され、他方が利用されない場合であっても、確実に再接続の有無を判定することができる。
【0068】
第2伝送線路の一端は、第1伝送線路の他端と嵌合する第1コネクタ(例えば、コネクタ126r)を備え、第2伝送線路の他端は、電子機器1に備わるコネクタと嵌合する第2コネクタ(例えば、コネクタ126p)を備え、第1コネクタと第2コネクタは、それぞれ第1信号線を終端する第1端子(例えば、CC1、CC)と、第2信号線を終端する第2端子(例えば、CC2、VCONN)とを回転対称な位置に備える。
この構成によれば、第1コネクタと第2コネクタの一方の向きが回転対称な向きに対向する他のコネクタと接続されても、第1伝送線路の第1信号線と第2信号線の少なくとも一方を電子機器1に電気的に接続することができる。
【0069】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…電子機器、11…プロセッサ、12…メインメモリ、13…ビデオサブシステム、14…ディスプレイ、21…IOコントローラ、22…BIOSメモリ、23…補助記憶装置、24…オーディオシステム、25…WLANカード、26…USBアダプタ、26c、126、126p、126r…コネクタ、31…EC、32…入力部、32k…キーボード、32t…タッチパッド、33…電源回路、34…バッテリ、36…電源ボタン、40…PDコントローラ、121a、121b…ヒンジ機構、136…ACアダプタ、BS、BS1、BS2…スイッチ、CC、CC1、CC2…CC信号線、VBUS…電源線、GND…基準電位線、UC…伝送線路、UCe…延長線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14