(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096594
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】転倒防止機構および無人搬送車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B66F9/24 J
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000174
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 和也
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333FA09
(57)【要約】
【課題】走行時において駆動輪の輪荷重を床荷重の制限内に抑制するとともに、荷役時における転倒を防止する。
【解決手段】転倒防止機構2は、アッパーリンク20aと、水平プレート21aと、スプリング23aと、アクチュエータ27と、を備えている。アッパーリンク20aは、第1回転軸28aを介して第1端部を車体フレーム10aに上下に揺動可能に連結され、第2端部を駆動輪12に連結されている。水平プレート21aは、第1回転軸28aを支点に揺動可能に構成されている。調整ばね23は、水平プレート21aを上方に付勢し、前後のリンク20を下方に揺動させて駆動輪12を地面に押し付けている。アクチュエータ27は、水平プレート21aを下方に押し下げ可能に構成されており、荷役時に水平プレート21aを下方に押し下げて駆動輪12に対する押付力を低減させるよう構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車に設けられる転倒防止機構であって、
前記無人搬送車は、
上下に延びる左右の車体フレームを有する車体と、
前記車体の前後左右に配置された従動輪と、
前後の前記従動輪の間にそれぞれ配置された左右の駆動輪と、
前後方向に移動可能に構成された荷役装置と、を備え、
前記転倒防止機構は、
前記無人搬送車の左右にそれぞれ設けられており、
回転軸を介して第1端部を前記車体フレームに上下に揺動可能に連結され、第2端部を前記駆動輪に連結された前後のリンクと、
前記回転軸から前記駆動輪と反対方向に延び前記回転軸を支点に揺動可能に構成された水平プレートを有する水平部と、
前記水平プレートを上方に付勢し、前記前後のリンクを下方に揺動させて前記駆動輪を地面に押し付けるよう構成されている調整ばねと、
前記車体フレームに固定され、前記水平プレートを下方に押し下げ可能に構成されたアクチュエータと、を備え、
前記アクチュエータは、荷役時に前記水平プレートを下方に押し下げて前記駆動輪に対する押付力を低減させるよう構成されている、転倒防止機構。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記無人搬送車の荷役時に、前記水平プレートを下方に押し下げて前記駆動輪を地面から完全に浮かすよう構成されている、請求項1に記載の転倒防止機構。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記無人搬送車走行時に、前記水平プレートを押し下げないよう構成されている、請求項1に記載の転倒防止機構。
【請求項4】
ジャッキ本体とジャッキアームとを有し、前記ジャッキアームを地面に押圧可能に構成されており、前記従動輪よりも前方に配置された左右のジャッキユニットをさらに備え、
前記ジャッキアームは、前記無人搬送車の走行時に地面から離され、前記無人搬送車の荷役時に地面を押圧するよう構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の転倒防止機構。
【請求項5】
前記アクチュエータは、油圧シリンダから構成されている、請求項1に記載の転倒防止機構。
【請求項6】
前記アクチュエータは、水平方向に延びるシャフトを有し、
前記転倒防止機構は、前記水平プレートに固定されており前記シャフトを上下方向に案内するガイドをさらに備え、
前記アクチュエータは、前記シャフトを下降させることにより前記水平プレートを下方に押し下げるよう構成されている、請求項1に記載の転倒防止機構。
【請求項7】
前記無人搬送車は、ドライブユニットをさらに備え、
前記前後のリンクは、前記ドライブユニットを介して前記駆動輪に連結されており、
前記ドライブユニットは、前記駆動輪とともに昇降させられるよう構成されている、請求項1に記載の転倒防止機構。
【請求項8】
前記ドライブユニットは、ドライブユニットフレームと、駆動モータと、ブレーキと、ステアリングモータと、旋回ベアリングとを有し、
前記前後のリンクは、前記ドライブユニットフレームを介して前記駆動輪に連結されている、請求項7に記載の転倒防止機構。
【請求項9】
前記荷役装置は、マストと、フォークとを有する、請求項1に記載の転倒防止機構。
【請求項10】
請求項1に記載の転倒防止機構を備えた、無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
無人搬送車用の転倒防止機構および当該転倒防止機構を備えた無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律して荷役作業を行う無人搬送車として、例えば、特許文献1に開示の無人搬送車がある。この無人搬送車は、車体と、車輪と、荷役部(荷役装置)と、を備えている。荷役部は、マストと、フォークとを有し、フォークによって荷をすくい上げるよう構成されている。マストは、接続部を介して前後方向に移動可能に構成されており、接続部には、4つの車輪が設けられている(特許文献1の
図4参照)。この無人搬送車は、車体が停止した状態で円滑に舵角を調節することができるよう、荷役部の位置を調整することにより、操舵対象の車輪に加わる荷重を調整するよう構成されている。
【0003】
ところで、床荷重の制限がある施設では、走行時にも車輪に加わる荷重を調整する必要があるが、特許文献1に開示の無人搬送車は、停止状態における車輪への荷重を調整することのみを課題としている。また、特許文献1に開示の無人搬送車は、荷役時においてフォークを車体の前方に移動させたとき、フォークですくい上げた荷が想定よりも重いと、フォーク側に転倒する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、走行時における駆動輪の輪荷重を床荷重の制限内に抑制するとともに、荷役時における転倒を防止することができる無人搬送車の転倒防止機構および当該転倒防止機構を備えた無人搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る転倒防止機構は、無人搬送車に設けられる転倒防止機構であって、無人搬送車は、上下に延びる左右の車体フレームを有する車体と、車体の前後左右に配置された従動輪と、前後の従動輪の間にそれぞれ配置された左右の駆動輪と、前後方向に移動可能に構成された荷役装置と、を備え、転倒防止機構は、無人搬送車の左右にそれぞれ設けられており、回転軸を介して第1端部を車体フレームに上下に揺動可能に連結され、第2端部を駆動輪に連結された前後のリンクと、回転軸から駆動輪と反対方向に延び回転軸を支点に揺動可能に構成された水平プレートを有する水平部と、水平プレートを上方に付勢し、前後のリンクを下方に揺動させて駆動輪を地面に押し付けるよう構成された調整ばねと、車体フレームに固定され、水平プレートを下方に押し下げ可能に構成されたアクチュエータと、を備え、アクチュエータは、荷役時に水平プレートを下方に押し下げて駆動輪に対する押付力を低減させるよう構成されていることを特徴とする。
【0007】
上記転倒防止機構は、好ましくは、アクチュエータが、無人搬送車が荷役をする際、水平プレートを下方に押し下げて駆動輪を地面から完全に浮かすよう構成されている。
【0008】
上記転倒防止機構は、好ましくは、アクチュエータが、無人搬送車走行時において水平プレートを押し下げないよう構成されている。
【0009】
上記転倒防止機構は、好ましくは、左右のジャッキアームをさらに備えている。各ジャッキアームは、ジャッキ本体とジャッキアームとを有し、ジャッキアームを地面に押圧可能に構成されており、従動輪よりも前方に配置されており、無人搬送車の走行時に地面から離され、無人搬送車の荷役時に地面を押圧するよう構成されている。
【0010】
上記転倒防止機構は、好ましくは、アクチュエータが、油圧シリンダから構成されている。
【0011】
上記転倒防止機構は、好ましくは、アクチュエータが、水平方向に延びるシャフトを有し、転倒防止機構は、水平プレートに固定されておりシャフトを上下方向に案内するガイドをさらに備え、アクチュエータは、シャフトを下降させることにより水平プレートを下方に押し下げるよう構成されている。
【0012】
上記転倒防止機構は、好ましくは、無人搬送車がドライブユニットをさらに備え、前後のリンクは、ドライブユニットを介して駆動輪に連結されており、ドライブユニットは、駆動輪とともに昇降させられるよう構成されている。
【0013】
上記転倒防止機構は、好ましくは、ドライブユニットが、ドライブユニットフレームと、駆動モータと、ブレーキと、ステアリングモータと、旋回ベアリングとを有し、前後のリンクは、ドライブユニットフレームを介して駆動輪に連結されている。
【0014】
上記転倒防止機構は、例えば、荷役装置が、マストと、フォークとを有する。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る無人搬送車は、上記転倒防止機構を備えている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る転倒防止機構および無人搬送車は、走行時における駆動輪の輪荷重を床荷重の制限内に抑制するとともに、荷役時における転倒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無人搬送車の概略平面図であり、Aはフォークが車体側に収納されているところを示し、Bはフォークを車体の前方に移動させたところを示している。
【
図2】ドライブユニット、および転倒防止機構の一部を示す概略側面図である。
【
図4】
図1A右側の転倒防止機構の一部を示す概略平面図である。
【
図5】転倒防止機構の一部を示す概略正面図であり、Aは走行時の状態を示し、Bは荷役時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の転倒防止機構および無人搬送車の一実施形態について説明する。本発明における前後方向は、荷役装置の移動方向を基準にしており、図中の矢印Xは左右方向を示し、矢印Yは前後方向を示し、矢印Zは上下方向を示している。
【0019】
<無人搬送車>
まず、無人搬送車1の構成について説明する。
図1は本実施形態に係る無人搬送車1の平面図である。本実施形態に係る無人搬送車1はサイドフォーク車両であるが、本発明に係る無人搬送車1は、サイドフォーク車両に限定されるものではない。例えば、無人搬送車1は、車体10の向きを変えずに前・左右3方向への荷役が可能な3wayタイプのフォークリフトであってもよい。
【0020】
図1Aに示すように、無人搬送車1は、車体10と、4つの従動輪14と、左右の駆動輪12と、左右のドライブユニット15と、荷役装置16と、左右の転倒防止機構2と、を備えている。
【0021】
車体10は、上下に延びる車体フレーム10aを左右に有する。4つの従動輪14は、車体10の前後左右にそれぞれ配置されている。左右の駆動輪12は、前後の従動輪14の間にそれぞれ配置されている。
【0022】
図2は、ドライブユニット15および転倒防止機構2の一部を示す側面図である。
図2に示すように、ドライブユニット15は、ドライブユニットフレーム15aと、旋回ベアリング15bと、駆動モータ15cと、電磁ブレーキ15d(本発明のブレーキに相当)と、第1ギア15eと、第2ギア15fと、ステアリングモータ15gと、複数のチェーン(図示略)と、を有する。
【0023】
旋回ベアリング15bは、ドライブユニットフレーム15aの中央に設けられており、駆動輪12は、旋回ベアリング15bを介してドライブユニットフレーム15aに連結されている。駆動モータ15cおよび電磁ブレーキ15dは、駆動輪12に隣接して設けられており、駆動モータ15cは、駆動輪12を回転させ、電磁ブレーキ15dは、駆動輪12の回転を停止させる。ドライブユニットフレーム15aは、側面視、駆動輪12、駆動モータ15cおよび電磁ブレーキ15dを囲むように形成されている。なお、電磁ブレーキ15dは単なる一例であって、本発明のブレーキはこれに限定されない。
【0024】
第1ギア15eは、駆動輪12と連結されており、第2ギア15fは、ステアリングモータ15gに連結されている。ステアリングモータ15gは、ドライブユニットフレーム15aに固定されており、第1および第2ギア15e、15fに架け渡されたチェーンと、第1および第2ギア15e、15fとを介して、駆動輪12のステアリング角を調整するよう構成されている。
【0025】
図1Aに示すように、荷役装置16は、マスト16aと、フォーク16bと、を有する。フォーク16bは、マスト16aに沿って昇降するよう構成されており、昇降することより荷をすくい上げたり載置したりする。また、荷役装置16は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、前後方向に移動可能に構成されている。荷役装置16は、油圧によって動作するよう構成されているが単なる一例であって、荷役装置16の動力はこれに限定されない。
【0026】
図3は、無人搬送車1の機能ブロック図である。
図3に示すように、無人搬送車1は、さらに油圧装置3と、制御部4と、を備えている。
【0027】
油圧装置3は、タンク、ポンプ、制御弁などから構成されている。油圧装置3は、荷役装置16に連結されており、制御部4は、油圧装置3に電気的に連結されている。制御部4は、油圧装置3を動作させることにより荷役装置16に作動油を給排して荷役装置16を動作させる。
【0028】
また、制御部4は、駆動モータ15c、ステアリングモータ15gおよび電磁ブレーキ15dと電気的に連結されている。制御部4は、駆動モータ15c、ステアリングモータ15gおよび電磁ブレーキ15dを制御して、無人搬送車1を走行、停止させるとともに、駆動輪12を操舵する。
【0029】
<転倒防止機構>
次に、転倒防止機構2の構成について説明する。
図4は、
図1A右側の転倒防止機構2の一部を示す概略平面図である。
図5は、転倒防止機構2の一部を示す正面図であり、Aは走行時の状態を示し、Bは荷役時の状態を示している。また、
図6は、転倒防止機構2の一部を示す透視図である。
【0030】
図1に示すように、転倒防止機構2は、無人搬送車1の左右にそれぞれ設けられており、各転倒防止機構2は、
図1および
図4~
図6に示すように、リンク20(20a、20b)と、水平部21(21a、21b)と、支持台22と、調整ばね23と、シム24と、ジャッキユニット25と、2つのガイド26と、油圧シリンダ27と、を有する。
【0031】
リンク20は、前後のアッパーリンク20aと、前後のロアリンク20bとを有する。前後のアッパーリンク20aが本発明の「リンク」に相当する。
【0032】
前後のアッパーリンク20aは、正面視V字状に形成されており、第1端部と第2端部とをそれぞれ有する。アッパーリンク20aの中央上方には、第1ギア15eに架け渡された不図示のチェーンが前後方向に配されており、アッパーリンク20aは、略V字状に形成されていることによりチェーンに接触することを防止されている。第1端部は、車体フレーム10aに第1回転軸28aを介して上下に揺動可能に連結されており、第2端部は、ドライブユニットフレーム15aを介して駆動輪12に連結されている。具体的には、第2端部は、第2回転軸28bを介してドライブユニットフレーム15aに揺動可能に連結されている。
【0033】
前後のロアリンク20bは、
図5Aに示すように、左右方向に延びるとともに第1端部と第2端部とをそれぞれ有する。第3端部は、第3回転軸28cを介して上下に揺動可能に車体フレーム10aに連結され、第4端部は、第4回転軸28dを介してドライブユニットフレーム15aに上下に揺動可能に連結されている。
【0034】
水平部21は、水平プレート21aと、4つのリブ21bと、を有する。
図5Aに示すように、水平プレート21aは、アッパーリンク20aの第1端部から駆動輪12と反対方向に水平に延びている。4つのリブ21bは、正面視、略三角状に形成されるとともに、水平プレート21aから立設されている。また、4つのリブ21bは、第1回転軸28aに固定されており、アッパーリンク20aの第1端部に連結されている。これにより、水平プレート21aは、第1回転軸28aを支点に上下に揺動可能であって、水平プレート21aが下方に揺動すると、アッパーリンク20aが第1回転軸28aを支点に上方に揺動する。
【0035】
支持台22は、車体フレーム10aから水平方向に延びており、支持台22の上には、調整ばね23(23a)が上下方向に延びて配置されている。調整ばね23は、4つのスプリング23aから構成されているが単なる一例であって、スプリング23aの数は特に限定されない。調整ばね23の上端には水平プレート21aが着座しており、調整ばね23は、水平プレート21aを上方に付勢している。水平プレート21aが上方に付勢されることにより、アッパーリンク20aが第1回転軸28aを支点に下方に揺動させられ、これにより、駆動輪12は、地面に押圧される。
【0036】
このように、無人搬送車1は、4つの従動輪14で無人搬送車1の総重量を分散して支えることにより駆動輪12の輪荷重が床荷重の制限を超えることを防止するとともに、調整ばね23の付勢力により駆動輪12を適切に地面に押し付けている。なお、4つのスプリング23aの下には、調整ばね23の付勢力(すなわち、駆動輪12を押し付ける押付力)を調整するためのシム24が数枚配置されている。ただし、シム24による付勢力の調整は単なる一例であって、調整ばね23の付勢力を調整する方法はこれに限定されず、転倒防止機構2は、シム24を備えなくてもよい。
【0037】
ジャッキユニット25は、ジャッキ本体(図示略)と、上下に伸縮するジャッキアーム(図示略)とを有する。ジャッキユニット25は、
図1に示すように、従動輪14よりも前方に配置されるとともに、
図3に示すように、油圧装置3に連結されている。ジャッキユニット25は、ジャッキアームを地面に押圧可能に構成されている。
【0038】
2つのガイド26は、上方が開放された、正面視、略U字状に形成されており、水平プレート21aの上面に前後に間隔をおいて固定されている。2つのガイド26は、後で説明するシャフト27cを上下方向に案内するよう構成されている。
【0039】
油圧シリンダ27は、シリンダチューブ27aと、ピストンロッド27bと、シャフト27cとを有し、ブラケット27dを介して、車体フレーム10aに固定されている。シャフト27cは、前後方向に延びるとともにピストンロッド27bの先端に固定されており、前後のガイド26のU字部内側に配置されている。油圧シリンダ27は、油圧装置3に連結されており、油圧装置3による作動油の給排によりシャフト27cを下降させられることで水平プレート21aを下方に押し下げ可能に構成されている。これにより、油圧シリンダ27は、
図5Bに示すように、シャフト27cによってガイド26を介して水平プレート21aを下方に押し下げ、それによって、アッパーリンク20aを第1回転軸28aを支点に上方に揺動させ、駆動輪12を地面から浮かせるよう構成されている。また、油圧シリンダ27は、無人搬送車1の走行時においては、ピストンロッド27bを引き込み、水平プレート21aを押し下げないよう構成されている。
【0040】
<転倒防止機構の動作>
次に、転倒防止機構2の動作について説明する。
【0041】
(1)走行時において、転倒防止機構2は、ジャッキアームを引き込んでジャッキアームを地面から浮かせるとともに、
図5Aに示すように、ピストンロッド27bを引き込んでシャフト27cをガイド26から浮かせた状態で無人搬送車1を走行させる。
【0042】
(2)次いで、転倒防止機構2は、無人搬送車1が荷役位置に到着すると、ジャッキアームを伸長させ、ジャッキアームを地面に押圧させる。
【0043】
(3)次いで、転倒防止機構2は、
図5Bに示すように、ピストンロッド27bを伸長させ、水平プレート21aを押し下げることにより駆動輪12を地面から浮かせる。これにより、無人搬送車1の車重は、4つの従動輪14と、2つのジャッキユニット25によって支持された状態になる。この状態で、制御部4は、荷役装置16を前方に移動させ、フォーク16bを昇降させることにより荷役作業を行う。荷役作業時には、駆動輪12が地面から浮き、かつジャッキユニット25が従動輪14よりも前方に配置されていることにより、車体10の前方に荷役装置16が移動しても、車体10が前方に傾くことを防止されている。
【0044】
(4)荷役作業が完了し、制御部4によって荷役装置16が車体10内に収納されると、転倒防止機構2は、ジャッキアームを引き込むとともに、ピストンロッド27bを引き込み、駆動輪12を再び地面に押し付ける。
【0045】
このように、転倒防止機構2は、走行時には、4つの従動輪14と2つの駆動輪12とによって車重を分散させ、輪荷重が床荷重の制限を超えることを防止している。また、駆動輪12の輪荷重は、調整ばね23によって調整しているので、荷役中の荷の重量による影響を受けない。しかも、転倒防止機構2は、荷役中においては、駆動輪12を完全に浮かすことにより、駆動輪12の押付力によって転倒が助長されることを完全に防止している。したがって、本発明に係る転倒防止機構2を備えた無人搬送車1は、荷役装置16を車体10の前方に移動させても転倒することがない。その結果、無人搬送車1は、床荷重に制限がある場所でも適切に荷役作業を行うことができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態に係る転倒防止機構2および無人搬送車1について説明してきたが、本発明の転倒防止機構2および無人搬送車1は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明は、以下変形例によって実施されてもよい。
【0047】
<変形例>
・転倒防止機構2は、駆動輪12に対する押付力を荷役時の無人搬送車1の転倒を防止することができる程度に低減することができれば、荷役時に駆動輪12を必ずしも浮かせるよう構成されなくてもよい。すなわち、本発明のアクチュエータ(油圧シリンダ27)は、荷役時に無人搬送車1の転倒を防止することができる程度に駆動輪12に対する押付力を低減するよう構成されてもよい。
【0048】
・本発明のアクチュエータは、油圧シリンダ27に限定されない。例えば、アクチュエータは、水平プレート21aを下方に押し下げることができれば、電気式、電磁式であってもよく特に限定されない。
【0049】
・本発明のアクチュエータは、走行時において駆動輪12に対する押付力を調整するために水平プレート21aを任意の力で押し下げることができるよう構成されていてもよい。この場合、無人搬送車1は、シム24を使用せずに、地面の状態に応じて駆動輪12に対する押付力を調整することができる。
【0050】
・転倒防止機構2は、荷役時において、駆動輪12に対する押付力を低減させることができれば、必ずしも駆動輪12とともにドライブユニット15を持ち上げる必要はない。例えば、転倒防止機構2は、荷役時において、駆動輪12を独立して持ち上げるよう構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 無人搬送車
10 車体
10a 車体フレーム
12 駆動輪
14 従動輪
15 ドライブユニット
15a ドライブユニットフレーム
15b 旋回ベアリング
15c 駆動モータ
15d 電磁ブレーキ
15e 第1ギア
15f 第2ギア
15g ステアリングモータ
16 荷役装置
16a マスト
16b フォーク
2 転倒防止機構
20 リンク
20a アッパーリンク
20b ロアリンク
21 水平部
21a 水平プレート
21b リブ
22 支持台
23 調整ばね
23a スプリング
24 シム
25 ジャッキユニット
26 ガイド
27 油圧シリンダ(アクチュエータ)
27a シリンダチューブ
27b ピストンロッド
27c シャフト
27d ブラケット
28a 第1回転軸
28b 第2回転軸
28c 第3回転軸
28d 第4回転軸
3 油圧装置
4 制御部