(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096616
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】異常検出装置、及びドア駆動回路
(51)【国際特許分類】
G05B 9/02 20060101AFI20240709BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20240709BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G05B9/02 A
H01H9/54 C
H03K17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000233
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】水野 敬友
【テーマコード(参考)】
5G034
5H209
5J055
【Fターム(参考)】
5G034AD01
5H209DD20
5H209EE01
5H209GG20
5H209HH04
5H209JJ03
5H209JJ05
5J055AX36
5J055AX38
5J055BX16
5J055EZ25
(57)【要約】
【課題】アクチュエータへの通電のオンオフを切り替えるスイッチング素子の異常を直ちにユーザに気付かせることができる異常検出装置、及びドア駆動回路を提供する。
【解決手段】異常検出装置26は、ユーザ操作されるスイッチ6が操作された場合に、直列接続された第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の両方をオンすることにより、アクチュエータ7を動作させる2重系の駆動回路5に使用される。検知部35は、第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の2つのスイッチング素子9の入出力を監視することにより、2つのスイッチング素子9の異常を検知する。制御部36は、2つのスイッチング素子9のどちらかに異常が検知された場合に、異常が検知されていない正常スイッチング素子を常にオフとすることにより、アクチュエータ7を駆動させないようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ操作されるスイッチが操作された場合に、直列接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の両方をオンすることにより、アクチュエータを駆動させる2重系の駆動回路に使用される異常検出装置であって、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の2つのスイッチング素子の入出力を監視することにより、前記2つのスイッチング素子の異常を検知する検知部と、
前記2つのスイッチング素子のどちらかに異常が検知された場合に、異常が検知されていない正常スイッチング素子を常にオフとすることにより、前記アクチュエータを駆動させないようにする制御部と、を備えた異常検出装置。
【請求項2】
前記検知部及び前記制御部は、1つのICから構成されている、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、スイッチング状態をオンに切り替える駆動信号を伝送するための信号線をGNDに落とすことにより、前記正常スイッチング素子を常にオフにする、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記スイッチのスイッチ信号に基づき、前記第1スイッチング素子の駆動を制御するスイッチング制御部を備えた、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記スイッチのオンに基づく信号を入力するとともに、前記スイッチング素子のオンを許可する許可命令を前記制御部から入力するとき、スイッチング状態をオンに切り替える駆動信号を前記スイッチング素子に出力する論理回路を備え、
前記制御部は、前記スイッチング素子に異常が検知された場合、前記許可命令の反転信号である非許可命令を前記論理回路に出力することにより、前記論理回路から前記正常スイッチング素子に前記駆動信号が出力されないようにして、前記正常スイッチング素子を常にオフにする、請求項4に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記スイッチング制御部に設けられ、
前記制御部は、単独の回路から構成されている、請求項4に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記スイッチング制御部は、前記スイッチが操作された場合に、一定時間、前記第1スイッチング素子をオンするタイマ回路である、請求項4に記載の異常検出装置。
【請求項8】
前記アクチュエータは、ドアを施錠するために設けられたドアラッチの施解錠を切り替えるときの駆動源である、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項9】
ユーザ操作されるスイッチが操作された場合に、直列接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の両方をオンすることにより、アクチュエータを駆動させる2重系のドア駆動回路であって、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の異常を検出するための異常検出装置を備え、
前記異常検出装置は、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の2つのスイッチング素子の入出力を監視することにより、前記2つのスイッチング素子の異常を検知する検知部と、
前記2つのスイッチング素子のどちらかに異常が検知された場合に、異常が検知されていない正常スイッチング素子を常にオフとすることにより、前記アクチュエータを駆動させないようにする制御部と、を備えたドア駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路の異常の有無を検出する異常検出装置、及びドア駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、複数のリレースイッチが並列に接続されたリレー装置において、各リレースイッチの異常を判定可能なリレー制御装置が周知である。このリレー制御装置は、全リレースイッチを開状態とするような異常判定信号が信号変換部に対して入力される場合に、信号変換部において全リレースイッチのうち少なくとも1つが閉状態となるように信号を変換して出力する。これにより、各リレースイッチの異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リレースイッチの異常には、例えば、スイッチがオンのままの状態をとってしまう「オン故障」がある。例えば、リレースイッチの1つがオン故障となった場合、このまま放置してしまうと、残りのリレースイッチもオン故障したときに、ユーザが意図せずに突然、負荷が動作してしまうことになる。よって、リレースイッチに異常が発生したとき、これを直ちにユーザに気付かせる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する異常検出装置は、ユーザ操作されるスイッチが操作された場合に、直列接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の両方をオンすることにより、アクチュエータを駆動させる2重系の駆動回路に使用される装置であって、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の2つのスイッチング素子の入出力を監視することにより、前記2つのスイッチング素子の異常を検知する検知部と、前記2つのスイッチング素子のどちらかに異常が検知された場合に、異常が検知されていない正常スイッチング素子を常にオフとすることにより、前記アクチュエータを駆動させないようにする制御部と、を備えた。
【0006】
前記課題を解決するためのドア駆動回路は、ユーザ操作されるスイッチが操作された場合に、直列接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の両方をオンすることにより、アクチュエータを駆動させる2重系の回路であって、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の異常を検出するための異常検出装置を備え、前記異常検出装置は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の2つのスイッチング素子の入出力を監視することにより、前記2つのスイッチング素子の異常を検知する検知部と、前記2つのスイッチング素子のどちらかに異常が検知された場合に、異常が検知されていない正常スイッチング素子を常にオフとすることにより、前記アクチュエータを駆動させないようにする制御部と、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、アクチュエータへの通電のオンオフを切り替えるスイッチング素子の異常を直ちにユーザに気付かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】異常検出装置の動作の仕方をまとめた表である。
【
図4】異常検出装置の動作の仕方をまとめた表である。
【
図5】論理回路を用いた異常検出装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態を説明する。
(ドア制御装置1)
図1に示すように、ドア2の施解錠を制御するドア制御装置1は、ドア制御装置1の動作を管理するECU(Electronic Control Unit)3を備える。ドア制御装置1は、例えば、車載用であって、車両のドア2の施解錠を切り替える。ECU3は、例えば、車両電源を管理するボディECUである。ドア2は、例えば、フロントドア、リアドア、及びバックドア、のいずれでもよい。
【0010】
(駆動回路5)
図1に示す通り、ドア制御装置1は、ユーザ操作されるスイッチ6のスイッチ信号Ssw(
図2参照)に基づきアクチュエータ7を駆動させる駆動回路(ドア駆動回路)5を備える。駆動回路5は、スイッチング制御部8、2つのスイッチング素子9(第1スイッチング素子10、及び第2スイッチング素子11)を備える。駆動回路5は、ユーザ操作されるスイッチ6が操作された場合に、直列接続された第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の両方をオンすることにより、アクチュエータ7を動作させる2重系である。
【0011】
アクチュエータ7は、例えば、モータである。アクチュエータ7は、例えば、ワイヤハーネス12を介してドアラッチ13に接続されている。このように、アクチュエータ7は、ドア2を施錠するために設けられたドアラッチ13の施解錠を切り替えるときの駆動源である。
【0012】
スイッチ6は、例えば、ドア2の施解錠を切り替えるときにユーザによって操作される。スイッチ6は、例えば、車両ドアの車外ドアハンドルに設けられたドアハンドルスイッチである。ドアハンドルスイッチは、例えば、ロック用及びアンロック用が各々個別に設けられてもよい。また、ドアハンドルスイッチは、操作される度にロック及びアンロックが交互に切り替わる共用スイッチでもよい。
【0013】
スイッチング制御部8は、スイッチ配線14を介してスイッチ6に接続されるとともに、第1スイッチング素子10に接続されている。スイッチング制御部8は、スイッチ6のスイッチ信号Sswに基づき、第1スイッチング素子10を制御する。具体的には、スイッチング制御部8は、スイッチ6からスイッチ信号Sswとしてオン信号を入力したとき、第1スイッチング素子10をオンする。スイッチング制御部8は、例えば、スイッチ6が操作された場合に、一定時間、第1スイッチング素子10をオンするタイマ回路15である。スイッチング制御部8は、電源16から電力を得て動作する。
【0014】
第1スイッチング素子10は、例えば、IPD(Intelligent Power Device)やFET(Field Effect Transistor)が使用される。第1スイッチング素子10は、電源16に接続された電源端子18と、スイッチング制御部8に接続された入力端子19と、第2スイッチング素子11に接続された出力端子20と、を有する。第1スイッチング素子10は、スイッチング制御部8から、スイッチング状態をオンに切り替える駆動信号Sa(
図2参照)を入力した場合に、オンする。
【0015】
第2スイッチング素子11は、例えば、IPDやFETが使用される。第2スイッチング素子11は、第1スイッチング素子10に接続された接続端子21と、ECU3に接続された入力端子22と、アクチュエータ7に接続された出力端子23と、を有する。第2スイッチング素子11は、ECU3から、スイッチング状態をオンに切り替える駆動信号Sb(
図2参照)を入力した場合に、オンする。
【0016】
(異常検出装置26)
図1に示す通り、駆動回路5は、駆動回路5における異常の有無を検出する異常検出装置26を備える。本例の異常検出装置26は、2重系の駆動回路5、すなわち、2つのスイッチング素子9がオンしたときにアクチュエータ7を動作させる駆動回路5において、異常有無を検出する。
【0017】
異常検出装置26は、駆動回路5における異常有無を検出するためのIC(Integrated Circuit)27を備える。IC27は、配線28によって第1スイッチング素子10の入力に接続されるとともに、配線29によって第1スイッチング素子10の出力に接続されている。IC27は、配線30によって第2スイッチング素子11の入力に接続されるとともに、配線31によって第2スイッチング素子11の出力に接続されている。IC27は、スイッチング制御部8に接続されるとともに、ECU3から第2スイッチング素子11に駆動信号Sbを伝送するための制御線32に接続されている。
【0018】
異常検出装置26は、スイッチング素子9に対する異常検知を実行する検知部35と、検知部35の検知結果に基づきユーザに対する異常認知の動作を実行する制御部36と、を備える。本例の場合、検知部35及び制御部36は、IC27に設けられている。このように、検知部35及び制御部36は、1つのIC27から構成されている。
【0019】
検知部35は、第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の2つのスイッチング素子9の入出力を監視することにより、2つのスイッチング素子9の異常を検知する。具体的には、検知部35は、配線28を介して第1スイッチング素子10の入力を監視するとともに、配線29を介して第1スイッチング素子10の出力を監視する。検知部35は、第1スイッチング素子10の入出力を比較し、そして、これらが異なる場合には、第1スイッチング素子10に異常が発生したと認識する。
【0020】
検知部35は、配線30を介して第2スイッチング素子11の入力を監視するとともに、配線31を介して第2スイッチング素子11の出力を監視する。検知部35は、第2スイッチング素子11の入出力を比較し、そして、これらが異なる場合には、第2スイッチング素子11に異常が発生したと認識する。
【0021】
制御部36は、2つのスイッチング素子9のどちらかに異常が検知された場合に、異常が検知されていない正常スイッチング素子37(
図3、
図4に図示)を常にオフとすることにより、アクチュエータ7を駆動させないようにする。このように、制御部36は、例えば、第1スイッチング素子10に異常が検知された場合、第2スイッチング素子11を常にオフにする動作を実行する。制御部36は、例えば、第2スイッチング素子11に異常が検知された場合、第1スイッチング素子10を常にオフにする動作を実行する。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
(正常時の動作)
図2に示すように、例えば、ドア2の施解錠を切り替える場合、スイッチ6がオンに操作される。スイッチング制御部8は、スイッチ6のオンを検知すると、第1スイッチング素子10をオンに切り替えるための駆動信号Saを出力することにより、第1スイッチング素子10をオン状態に切り替える。また、ECU3は、スイッチ6のオンを検知すると、第2スイッチング素子11をオンに切り替えるための駆動信号Sbを出力することにより、第2スイッチング素子11をオン状態に切り替える。
【0023】
第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の両方がオンすると、電源16からアクチュエータ7に電流Iが流れ、ドアラッチ13が動作する。このため、ドア2の施解錠が切り替えられる。このように、本例の場合、第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の両方がオンしないと、アクチュエータ7が作動しない。このため、仮に第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の一方が故障した場合に、アクチュエータ7に電流Iを流さなくすることが可能となる。このように、駆動回路5を2重系としたので、ユーザの意図しない駆動回路5の動作が回避される。
【0024】
なお、ECU3及びスイッチング制御部8は、スイッチ6のオンを検知してから一定時間の間のみ、スイッチング素子9(第1スイッチング素子10、第2スイッチング素子11)をオンする。このため、スイッチング素子9は、オン切り替わりから一定時間経過後、オフに戻される。これにより、アクチュエータ7の動作が停止される。
【0025】
(第1スイッチング素子10に異常が発生した場合)
図3のステータス「2」に図示するように、異常検出装置26は、検知部35において、第1スイッチング素子10の入力として「オン」を検知し、第1スイッチング素子10の出力として「オフ」を検出した場合、第1スイッチング素子10の異常を認識する。この場合の第1スイッチング素子10の異常は、例えば、常に出力がオフとなった「オフ故障」である。
【0026】
制御部36は、検知部35で第1スイッチング素子10の異常が検知されると、第2スイッチング素子11を常にオフの状態にする。第2スイッチング素子11を常にオフにする方法としては、例えば、スイッチング状態をオンに切り替えるのに必要な信号を伝送する信号線(ここでは、制御線32)をGNDに落とす方法がある。こうすれば、仮にECU3から第2スイッチング素子11に駆動信号Sbが出力されたとしても、この駆動信号Sbが第2スイッチング素子11に至らないため、第2スイッチング素子11が無駄にオンされずに済む。
【0027】
以上のように、第1スイッチング素子10が異常のときは、第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の両方ともオンしないため、アクチュエータ7が作動しない。このため、ユーザがスイッチ6を操作しても、ドア2の施解錠が切り替わらない。よって、スイッチ6を何度操作してもドアロックが切り替わらない一連の過程によって、駆動回路5の異常を、直ちにユーザに認知させることが可能となる。
【0028】
図3のステータス「3」に図示するように、異常検出装置26は、検知部35において、第1スイッチング素子10の入力として「オフ」を検知し、第1スイッチング素子10の出力として「オン」を検出した場合、第1スイッチング素子10の異常を認識する。この場合の第1スイッチング素子10の異常は、例えば、常に出力がオンとなった「オン故障」である。第1スイッチング素子10が「オン故障」となったとき、仮に第2スイッチング素子11も「オン故障」してしまうと、アクチュエータ7に意図せず電流Iが流れてドアラッチ13が動作してしまうため、この異常状態を直ぐにユーザに認知させる必要がある。
【0029】
制御部36は、検知部35で第1スイッチング素子10の異常が検知されると、「オフ故障」のときと同様に、第2スイッチング素子11を常にオフの状態にする。第2スイッチング素子11を常にオフにする方法は、「オフ故障」時と同様である。よって、ユーザがスイッチ6を操作したとき、アクチュエータ7が作動しない。よって、ユーザに対しては、スイッチ6を操作してもドア2の施解錠が切り替わらないことをもって、駆動回路5の異常を直ちに認知させることが可能となる。
【0030】
なお、
図3のステータス「1」に図示するように、第1スイッチング素子10の入出力がともに「オン」の場合、第1スイッチング素子10は正常である。従って、このとき、異常検出装置26は動作を実施しない。また、
図3のステータス「4」に図示するように、第1スイッチング素子10の入出力がともに「オフ」の場合、第1スイッチング素子10は正常である。従って、このときも、異常検出装置26は動作を実施しない。
【0031】
(第2スイッチング素子11に異常が発生した場合)
図4のステータス「2」に図示するように、異常検出装置26は、検知部35において、第2スイッチング素子11の入力として「オン」を検知し、第2スイッチング素子11の出力として「オフ」を検出した場合、第2スイッチング素子11の異常を認識する。この場合の第2スイッチング素子11の異常は、例えば、常に出力がオフとなった「オフ故障」である。
【0032】
制御部36は、検知部35で第2スイッチング素子11の異常が検知されると、第1スイッチング素子10を常にオフの状態にする。第1スイッチング素子10を常にオフにする方法としては、例えば、スイッチング状態をオンに切り替えるのに必要な信号を伝送する信号線(ここでは、スイッチ配線14)をGNDに落とす方法がある。
【0033】
また、
図5に示すように、第1スイッチング素子10を常にオフにする他の方法としては、例えば、論理回路38を用いた方法が挙げられる。論理回路38は、例えば、AND回路であって、1つの入力がスイッチング制御部8の制御回路39に接続されるとともに、もう1つの入力がIC27に接続されている。制御回路39は、スイッチング制御部8(タイマ回路15)の動作を制御する。
【0034】
本例の場合、制御回路39は、スイッチ6のスイッチ信号Sswに基づき、Hi信号又はLo信号を論理回路38に出力する。具体的には、制御回路39は、スイッチ6がオンのとき、Hi信号を論理回路38に出力し、一方、スイッチ6がオフのとき、Lo信号を論理回路38に出力する。IC27の制御部36は、第1スイッチング素子10のオンを許可するとき、許可命令(具体的には、Hi信号)を論理回路38に出力する。
【0035】
論理回路38は、スイッチ6がオンのときに出力されるHi信号を制御回路39から入力するとともに、Hi信号の許可命令を制御部36から入力すると、スイッチング状態をオンに切り替える駆動信号Saを第1スイッチング素子10に出力する。すなわち、論理回路38は、スイッチ6のオンに基づく信号(ここでは、スイッチ信号Ssw)を入力するとともに、スイッチング素子9のオンを許可する許可命令を制御部36から入力するとき、駆動信号Saを第1スイッチング素子10に出力する。これにより、第1スイッチング素子10がオン状態に切り替えられる。
【0036】
ここで、制御部36は、第2スイッチング素子11に異常が検知された場合、許可命令の反転信号である非許可命令(具体的には、Lo信号)を論理回路38に出力する。このとき、論理回路38は、2つの入力のうちの一方がLo信号となるため、駆動信号Saが出力されない状態となる。これにより、仮にスイッチ6がオンされても、論理回路38からは駆動信号Saが出力されない。このようにして、第1スイッチング素子10を常にオフとすることも可能である。
【0037】
以上のように、第2スイッチング素子11が異常のときは、第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の両方ともオンしないため、アクチュエータ7が作動しない。このため、ユーザがスイッチ6を操作しても、ドア2の施解錠が切り替わらない。よって、スイッチ6を何度操作してもドアロックが切り替わらない一連の過程によって、駆動回路5の異常を、直ちにユーザに認知させることが可能となる。
【0038】
図4のステータス「3」に図示するように、異常検出装置26は、検知部35において、第2スイッチング素子11の入力として「オフ」を検知し、第2スイッチング素子11の出力として「オン」を検出した場合、第2スイッチング素子11の異常を認識する。この場合の第2スイッチング素子11の異常は、例えば、常に出力がオンとなった「オン故障」である。第2スイッチング素子11が「オン故障」となったとき、仮に第1スイッチング素子10も「オン故障」してしまうと、アクチュエータ7に意図せず電流Iが流れてドアラッチ13が作動してしまうため、この異常状態を直ぐにユーザに認知させる必要がある。
【0039】
制御部36は、検知部35で第2スイッチング素子11の異常が検知されると、「オフ故障」のときと同様に、第1スイッチング素子10を常にオフの状態にする。第1スイッチング素子10を常にオフにする方法は、「オフ故障」時と同様である。よって、ユーザがスイッチ6を操作したとき、アクチュエータ7が作動しない。よって、ユーザに対しては、スイッチ6を操作してもドア2の施解錠が切り替わらないことをもって、駆動回路5の異常を直ちに認知させることが可能となる。
【0040】
なお、論理回路38を使用して正常スイッチング素子37を常にオフにする方法は、第1スイッチング素子10に異常が発生して第2スイッチング素子11を常にオフする場合に使用してもよい。この場合、論理回路38は、IC27に設けられる。そして、論理回路38は、スイッチ6のオンに基づく信号(ここでは、駆動信号Sb)を入力するとともに、スイッチング素子9のオンを許可する許可命令を制御部36から入力するとき、スイッチング状態をオンに切り替える駆動信号Sbを第2スイッチング素子11に出力する。このように、正常時であれば、第2スイッチング素子11のオン状態への切り替えが許可される。
【0041】
一方、第1スイッチング素子10に異常が発生した場合、制御部36から論理回路38にLo信号の非許可命令が入力されるため、ECU3から論理回路38がHi信号の駆動信号Sbを入力しても、論理回路38から出力される信号はLoレベルとなる。これにより、第2スイッチング素子11を常にオフ状態にすることが可能となる。
【0042】
また、
図4のステータス「1」に図示するように、第2スイッチング素子11の入出力がともに「オン」の場合、第2スイッチング素子11は正常である。従って、このとき、異常検出装置26は動作を実施しない。また、
図4のステータス「4」に図示するように、第2スイッチング素子11の入出力がともに「オフ」の場合、第2スイッチング素子11は正常である。従って、このときも、異常検出装置26は動作を実施しない。
【0043】
(実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)異常検出装置26は、ユーザ操作されるスイッチ6が操作された場合に、直列接続された第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の両方をオンすることにより、アクチュエータ7を駆動させる2重系の駆動回路5に使用される。異常検出装置26は、検知部35及び制御部36を備える。検知部35は、第1スイッチング素子10及び第2スイッチング素子11の2つのスイッチング素子9の入出力を監視することにより、2つのスイッチング素子9の異常を検知する。制御部36は、2つのスイッチング素子9のどちらかに異常が検知された場合に、異常が検知されていない正常スイッチング素子37を常にオフとすることにより、アクチュエータ7を駆動させないようにする。
【0044】
本構成によれば、2重系のスイッチング素子9の一方に異常が検知された場合には、他方の正常スイッチング素子37を常にオフ状態とする。このため、ユーザがスイッチ6を操作しても、アクチュエータ7には電流Iが流れないため、アクチュエータ7が動作しない。これにより、例えばユーザが何度もスイッチ操作を行っても、アクチュエータ7が動作しないことをもって、スイッチング素子9に異常が発生したことをユーザに直ちに通知可能となる。よって、アクチュエータ7への通電のオンオフを切り替えるスイッチング素子9の異常を直ちにユーザに気付かせることができる。
【0045】
(1-2)検知部35及び制御部36は、1つのIC27から構成されている。この構成によれば、検知部35及び制御部36を有する個別のIC27を基板(図示略)に実装することで機能追加が可能となるため、基板に既存の他の回路群に大きな変更を加える必要がない。また、基板に既存の回路群と、検知部35及び制御部36を有するIC27とが、各々独立した回路構成となるため、仮に既存の他の回路群に異常が発生しても、検知及び制御を継続することもできる。
【0046】
(1-3)制御部36は、スイッチング状態をオンに切り替える駆動信号Sa、Sbを伝送するための信号線(スイッチ配線14や制御線32)をGNDに落とすことにより、正常スイッチング素子37を常にオフにする。この構成によれば、駆動信号Sa、Sbを伝送する信号線を単にGNDに落とすという簡素な処理により、正常スイッチング素子37を常にオフの状態に移行することができる。
【0047】
(1-4)異常検出装置26は、スイッチ6のスイッチ信号Sswに基づき、第1スイッチング素子10の駆動を制御するスイッチング制御部8を備える。この構成によれば、スイッチ6の操作に基づいて動作する個別のスイッチング制御部8によって、第1スイッチング素子10のオンオフを切り替えることができる。
【0048】
(1-5)異常検出装置26は、スイッチング素子9のオンオフを切り替える論理回路38を備える。論理回路38は、スイッチ6のオンに基づく信号を入力するとともに、スイッチング素子9のオンを許可する許可命令を制御部36から入力するとき、スイッチング状態をオンに切り替える駆動信号Sa(又は、駆動信号Sb)をスイッチング素子9に出力する。制御部36は、スイッチング素子9に異常が検知された場合、許可命令の反転信号である非許可命令を論理回路38に出力することにより、論理回路38から正常スイッチング素子37に駆動信号Sa(又は、駆動信号Sb)が出力されないようにして、正常スイッチング素子37を常にオフにする。この構成によれば、論理回路38を用いた簡素な構成によって、正常スイッチング素子37を常にオフの状態にする処理を実行できる。
【0049】
(1-6)スイッチング制御部8は、スイッチ6が操作された場合に、一定時間、第1スイッチング素子10をオンするタイマ回路15である。この構成によれば、第1スイッチング素子10のオンに時間制限を設けるので、アクチュエータ7に不要な電流Iを流したままにせずに済む。
【0050】
(1-7)アクチュエータ7は、ドア2を施錠するために設けられたドアラッチ13の施解錠を切り替えるときの駆動源である。この構成によれば、ユーザの意図しないドア2の施錠や解錠を生じ難くすることが可能となるので、ドア2の不正操作に対するセキュリティ性をよくすることができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態の異常検出装置26の構成を変更した実施例である。よって、第1実施形態と同一部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0052】
(異常検出装置26)
図6に示すように、スイッチング制御部8には、第1スイッチング素子10の入出力と、第2スイッチング素子11の入出力と、が入力されている。具体的には、スイッチング制御部8は、配線42によって第1スイッチング素子10の入力に接続されるとともに、配線43によって第1スイッチング素子10の出力に接続されている。スイッチング制御部8は、配線44によって第2スイッチング素子11の入力に接続されるとともに、配線45によって第2スイッチング素子11の出力に接続されている。なお、本例の場合、配線42は、第1スイッチング素子10をオンするためにスイッチング制御部8から出力される駆動信号Saの経路でもある。
【0053】
検知部35は、スイッチング制御部8に設けられている。検知部35は、例えば、素子によって構成されたハードウェア回路、プログラムを組むことによって構成されたソフトウェア回路、のいずれから構成されてもよい。検知部35は、例えば、タイマ回路15のICとして一体に形成されることが好ましい。
【0054】
制御部36は、単独の回路から構成されている。具体的には、制御部36は、スイッチング制御部8及びスイッチング素子9に対し、独立した回路として設けられている。制御部36は、スイッチング制御部8に接続されるとともに、駆動信号Sbの経路となる制御線32に接続されている。制御部36は、検知部35の検知結果に基づき、正常スイッチング素子37を常にオフにする動作を実行する。
【0055】
次に、本実施形態の作用について説明する。
(第1スイッチング素子10に異常が発生した場合)
図7に示すように、検知部35は、例えば、第1スイッチング素子10の異常(オフ故障やオン故障)を検知した場合、その旨を伝える異常有り通知St1を、制御部36に出力する。この異常有り通知St1は、第1スイッチング素子10に異常が発生したことの通知である。制御部36は、検知部35から異常有り通知St1を入力すると、第2スイッチング素子11を常にオフにする。第2スイッチング素子11を常にオフにする方法は、第1実施形態と同様の方法が使用される。これにより、スイッチ6がオンされてECU3から駆動信号Sbが出力されても、駆動信号Sbが第2スイッチング素子11に至らないので、第2スイッチング素子11が常にオフに維持される。
【0056】
(第2スイッチング素子11に異常が発生した場合)
図8に示すように、検知部35は、例えば、第2スイッチング素子11の異常(オフ故障やオン故障)を検知した場合、その旨を伝える異常有り通知St2を、制御部36に出力する。この異常有り通知St2は、第2スイッチング素子11に異常が発生したことの通知である。制御部36は、検知部35から異常有り通知St2を入力すると、第1スイッチング素子10を常にオフにする。第2スイッチング素子11を常にオフにする方法は、第1実施形態と同様の方法が使用される。これにより、スイッチ6がオンされても、スイッチング制御部8から駆動信号Saが出力されなくなるので、第1スイッチング素子10が常にオフに維持される。
【0057】
(実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(2-1)検知部35は、スイッチング制御部8に設けられている。制御部36は、単独の回路から構成されている。この構成によれば、スイッチング制御部8を利用して検知部35を設けるため、新たに設ける回路としては、制御部36のみで済む。よって、新たに設ける回路を少なく抑えることができる。
【0058】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・各実施形態において、スイッチ6は、基板上のスイッチ接点でもよい。
・各実施形態において、タイマ回路15は、時定数回路から構成されてもよい。
・各実施形態において、スイッチング制御部8は、タイマ回路15に限定されず、第1スイッチング素子10のオンオフを切り替えることが可能な回路であればよい。
【0060】
・各実施形態において、第1スイッチング素子10のオンオフは、スイッチング制御部8によって切り替えられることに限定されず、例えば、ECU3などの別の回路によって切り替えられてもよい。
【0061】
・各実施形態において、異常検出装置26は、例えば、スイッチング素子9のオン故障のみ監視する装置でもよい。
・各実施形態において、駆動回路5及び異常検出装置26は、車両用に限定されず、他の機器やシステムに使用されてもよい。
【0062】
・各実施形態において、検知部35及び制御部36は、[1]コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサによって構成されてもよいし、[2]そのようなプロセッサと、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード、又は指令を格納している。メモリ(コンピュータ可読媒体)は、汎用、又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。或いは、上記プロセッサを含むコンピュータに代えて、各種処理の全てを実行する1つ以上の専用のハードウェア回路によって構成された処理回路が用いられてもよい。
【0063】
・各実施形態において、検知部35及び制御部36は、独立したプロセッサから構成されてもよいし、機能の一部分が共用のプロセッサから構築されてもよい。このように、検知部35及び制御部36は、独立した機能ブロックに限らず、1つの機能ブロックから構成されてもよいし、一部分が共用された機能ブロックから構成されてもよい。
【0064】
・各実施形態において、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0065】
2…ドア、5…駆動回路(ドア駆動回路)、6…スイッチ、7…アクチュエータ、8…スイッチング制御部、9…スイッチング素子、10…第1スイッチング素子、11…第2スイッチング素子、13…ドアラッチ、15…タイマ回路、26…異常検出装置、27…IC、35…検知部、36…制御部、37…正常スイッチング素子、38…論理回路、Sa…駆動信号、Sb…駆動信号、Ssw…スイッチ信号。