IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コマザワ技研の特許一覧

<>
  • 特開-電動グリッパ 図1
  • 特開-電動グリッパ 図2
  • 特開-電動グリッパ 図3
  • 特開-電動グリッパ 図4
  • 特開-電動グリッパ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096617
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電動グリッパ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000234
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】516179926
【氏名又は名称】株式会社コマザワ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100136881
【弁理士】
【氏名又は名称】佐尾山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】澤田 謙
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU08
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】防塵性を確保しながらハンド基台をガタつくことなく移動させることが可能な電動グリッパを提供する。
【解決手段】電動グリッパ(100,500)は、駆動源(103)と、駆動源(103)の動力を伝達する伝達部(211,221)と、伝達部(211,221)とワークを把持するためのフィンガ(241)が固定されたハンド基台(231)とを連結する少なくとも2本以上のシャフト(225)と、シャフト(225)の長手方向に沿った直線移動を保持する直動案内部(229)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源の動力を伝達する伝達部と、
前記伝達部とワークを把持するためのフィンガが固定されたハンド基台とを連結する少なくとも2本以上のシャフトと、
前記シャフトの長手方向に沿った直線移動を保持する直動案内部と、
を備える、ことを特徴とする電動グリッパ。
【請求項2】
前記伝達部は、前記駆動源の回転運動を直線運動に変換するカム構造である
ことを特徴とする請求項1に記載の電動グリッパ。
【請求項3】
前記直動案内部は、前記シャフトと組み合わされて使用され、無限循環する複数の剛球と、当該複数の剛球を保持する保持器と、当該保持器の両側端部に設けられたシールと、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電動グリッパ。
【請求項4】
前記電動グリッパにおいては、前記伝達部および前記直動案内部を収容するグリッパカバーを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の電動グリッパ。
【請求項5】
前記伝達部は、少なくともカムおよび前記2本のシャフトと連結されたグリッパ基部を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の電動グリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動グリッパに関し、特に、製品の自動組立、部品の自動加工、部品搬送、検査工程等において、ワークを把持して搬送、位置決めや測長、加工等を行うモータ駆動による電動グリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動グリッパは、ワークを把持するための複数の爪部を有する把持部と、かかる複数の爪部を駆動する駆動部とを備えている。電動グリッパにおいて、把持部のガイドは外部に剥き出しの状態であるため、ワークの把持動作時および搬送動作時にガイドの転動面や摺動部分からグリース等の潤滑剤や摩耗粉等がワークに付着することが懸念されている。
【0003】
このような事態を考慮し、電動グリッパのガイドを覆う蛇腹状のブーツカバーを取り付けるという対策が施されている。このブーツカバーは、外部からの粉塵に対してガイドを保護する役割を担っている。
【0004】
これとは異なり、フィンガ14の第1環状溝114に第1ダストシール部材116が装着され、第2環状溝118に第2ダストシール部材120が装着されたチャック装置10が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このチャック装置10では、第1ダストシール部材116および第2ダストシール部材120によって異物流通阻止部材112を形成しているので、異物の流入および流出を阻止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-120532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この特許文献1のチャック装置10では、ピストン26の上下方向における往復運動を3つのフィンガ14の水平方向における開閉運動に変換しているが、フィンガ14が円柱状に形成されており、チャックボディ18とフィンガ14との接触面の精度が低いと、フィンガ14が周方向に回転してしまってガタつくという問題があった。
【0008】
実際上、フィンガ14の先端にはワーク等を把持する爪部が取り付けられ、2つのフィンガ14の中心位置でワークを把持するため、この爪部が長い場合、フィンガ14が回転してしまうと、2つのフィンガ14の中心位置でワークを把持することが難しくなり、ワークを落下させてしまう恐れが生じる。
【0009】
また、このチャック装置10は、係合部80によって押圧されたフィンガ14がピストンロッド28の半径方向外方に沿って移動するが、フィンガ14のカム溝14の底面86と係合部80とが摺動摩擦する構造であるため、摩擦抵抗にばらつきがあり、フィンガ14の推力が安定しない。そのため、電動グリッパに要求される把持力を精度良く制御することが難しいという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、防塵性を確保しながらハンド基台をガタつくことなく移動させると共に把持力の制御性を向上することが可能な電動グリッパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の電動グリッパは、駆動源と、前記駆動源の動力を伝達する伝達部と、前記伝達部とワークを把持するためのフィンガが固定されたハンド基部とを連結する少なくとも2本以上のシャフトと、前記シャフトの長手方向に沿った直線移動を保持する直動案内部と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
電動グリッパにおいて、前記伝達部は、前記駆動源の回転運動を直線運動に変換するカム構造であることが好ましい。
【0013】
電動グリッパにおいて、前記直動案内部は、前記シャフトと組み合わされて使用され、無限循環する複数の剛球と、当該複数の剛球を保持する保持器と、当該保持器の両側端部に設けられたシールと、を有することが好ましい。
【0014】
電動グリッパにおいては、前記伝達部および前記直動案内部を収容するグリッパカバーを有することが好ましい。
【0015】
電動グリッパにおいて、前記伝達部は、少なくともカムおよび前記2本のシャフトと連結されたグリッパ基部を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防塵性を確保しながらハンド基台をガタつくことなく移動させると共に把持力の制御性を向上することが可能な電動グリッパを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る電動グリッパを右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す斜視図、および、電動グリッパを左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る電動グリッパを右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す分解斜視図、および、電動グリッパを左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す分解斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る電動グリッパを一部切断した場合に右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す斜視図、および、電動グリッパを一部切断した場合に左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す斜視図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る電動グリッパのモータカバーおよびグリッパカバーを取り外した状態において、右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す分解斜視図、および、左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す分解斜視図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係る電動グリッパを右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す斜視図、および、電動グリッパを左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号が括弧を付して記載されている。
【0019】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態にかかる電動グリッパ(100,500)は、駆動源(103)と、駆動源(103)の動力を伝達する伝達部(211,221)と、伝達部(211,221)とワークを把持するためのフィンガ(241)が固定されたハンド基台(231)とを連結する少なくとも2本以上のシャフト(225)と、シャフト(225)の長手方向に沿った直線移動を保持する直動案内部(229)と、を備える。
【0020】
〔2〕電動グリッパ(100,500)において、伝達部(211,221)は、駆動源(103)の回転運動を直線運動に変換するカム構造である。
【0021】
〔3〕電動グリッパ(100,500)において、直動案内部(229)は、シャフト(225)と組み合わされて使用され、無限循環する複数の剛球と、当該複数の剛球を保持する保持器と、当該保持器の両側端部に設けられたシールと、を有する。
【0022】
〔4〕電動グリッパ(100,500)は、伝達部(211,221)および直動案内部(229)を収容するグリッパカバー(202)を有する。
【0023】
〔5〕電動グリッパ(100,500)において、伝達部(211,221)は、少なくともカム(211)および2本のシャフト(225)と連結されたグリッパ基部(221)を含む。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0025】
<把持装置の全体構成>
まず、本発明の実施の形態に係る電動グリッパ100の全体構成を図1乃至図5に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動グリッパを右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す斜視図、および、電動グリッパを左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す斜視図である。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電動グリッパを右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す分解斜視図、および、電動グリッパを左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す分解斜視図である。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電動グリッパを一部切断した場合に右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す斜視図、および、電動グリッパを一部切断した場合に左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す斜視図である。
【0028】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る電動グリッパのモータカバーおよびグリッパカバーを取り外した状態において、右斜め上方から視たときの全体構成(A)を示す分解斜視図、および、左斜め下方から視たときの全体構成(B)を示す分解斜視図である。
【0029】
以下、説明の便宜上、図中矢印ab方向を上下方向とし、矢印a方向を上側(上方)、矢印b方向を下側(下方)と定義する。また、矢印ab方向(上下方向)と垂直な矢印cd方向を短手方向または奥行方向と定義し、矢印c方向を手前側(左方)、矢印d方向を奥側(右方)と定義する。さらに、矢印ab方向(上下方向)および矢印cd方向(水平方向)の双方と垂直な矢印ef方向を長手方向または水平方向とし、矢印e方向を右側、矢印f方向を左側と定義する。なお、これらの方向は重力方向とは関係なく、電動グリッパ100が取り付けられるロボット装置の向きに応じて変化するものであり、説明を容易にするために便宜上用いられるものである。
【0030】
図1乃至図4に示すように、電動グリッパ100は、駆動源としてのモータ101と、当該モータ101に取り付けられたグリッパ201と、を備えている。電動グリッパ100は、2本のフィンガ(爪部)241によって図示しないワークを把持することが可能である。
【0031】
図1に示すように、モータ101は、位置およびトルク制御可能なエンコーダ付きのステッピングモータ103(以下、これを単に「ステッピングモータ」という。)と、ステッピングモータ103を全体的に覆うモータカバー102とを有している。すなわち、モータ101は、モータカバー102によってステッピングモータ103を内部に収容した状態で保持している。
【0032】
駆動源としてのステッピングモータ103においては、当該ステッピングモータ103の下端面から所定の長さだけ突出したモータ出力軸103a(図2)を有している。
【0033】
図2に示すように、モータ101のモータカバー102は、ステッピングモータ103の外径よりも僅かに大きな内径を有する円筒状体102aと、その円筒状体102aの上下方向(矢印ab方向)における上方開口を閉塞する円盤状の蓋体102bとを有している。
【0034】
モータカバー102は、図2および図3に示すように、円筒状体102aと蓋体102bとが4本の六角穴付きボルト102cによって固定されることにより形成され、その内側の収容空間にステッピングモータ103を収容している。
【0035】
グリッパ201は、図4に示すように、カム211、グリッパ基部221等を内側空間に収容した状態で保持するグリッパカバー202(図2および図3)を有している。
【0036】
また、グリッパ201は、図1に示すように、2本のシャフト225の端部をグリッパカバー202の外側へ向かって突出した状態で保持している。シャフト225の端部には、ハンド基台231を介してフィンガ241が固定されている。すなわち、グリッパ201は、2本(1対)のシャフト225を介してグリッパカバー202の外側においてハンド基台231、および、フィンガ241を保持している。
【0037】
図2に示すように、グリッパカバー202は、モータカバー102の円筒状体102aと同一の内径および外径を有する有底の円筒状体202aと、その円筒状体202aの外周面からシャフト225の長手方向(矢印ef方向)に沿って互いに背向するように突出した突出部202bとを有している。
【0038】
図2に示すように、グリッパカバー202の円筒状体202aは、その内部空間にカム211、および、2つのグリッパ基部221を収容している。一方、グリッパカバー202の突出部202bは、水平方向(矢印ef方向)に沿って延びる2つの貫通孔からなる円筒状空間202sを有している。
【0039】
2つの円筒状空間202sは、2本(1対)のシャフト225に装着される2つの直動案内部229をそれぞれ収容して保持することが可能な空間である。グリッパカバー202の突出部202bは、2つの直動案内部229を保持した状態において、2本(1対)のシャフト225の端部をその突出部202bの外部に飛び出した状態で保持する。
【0040】
突出部202bの外部に飛び出した2本(1対)のシャフト225の端部には、ハンド基台231が固定されている。ハンド基台231は、金属等の部材からなり、幾何学的精度を維持するべく全体的に直方体形状を有している。
【0041】
シャフト225は、所定の長さを有し、その断面形状が円柱状または円筒状の棒状部材である。シャフト225は円形状の金属製であり、十分な剛性および精度(真円度、真直度、同芯度)を実現できる必要がある。また、2本のシャフト225の直径は互いに同一である。
【0042】
ハンド基台231は、シャフト225の長手方向(矢印ef方向)に沿って2本の貫通孔231hを有し、直動案内部229が装着された2本のシャフト225を挿通した状態でボルト231nにより当該2本のシャフト225と一体に固定されている。また、ハンド基台231の下端面には、フィンガ241が一体に取り付けられている。
【0043】
フィンガ241は、ワークを把持することが可能で寸法等の精度を維持可能な金属等の部材からなり、側面視L字状に形成されている。2つ(1対)のフィンガ241は、その先端の爪部が互いに対向した状態でハンド基台231にねじ等によって取り付けられている。すなわち、フィンガ241は、ワーク等の把持対象物を把持する把持部として機能する部分である。
【0044】
グリッパカバー202に収容されたカム211は、フィンガ241に対する所望の位置精度を必要とするため金属等からなり、平面視において上下方向(矢印ab方向)に所定の厚さを有する略円盤形状を有し、ステッピングモータ103のモータ出力軸103aと連結部212を介して一体に固定されている。すなわちカム211は、ステッピングモータ103のモータ出力軸103aと共に一体となって回転する。
【0045】
カム211は、2つのグリッパ基部221に面した下端面に対し、2個の弧状溝からなる2本のカム溝211a、211b(図2(B))を有している。2本のカム溝211a、211bは、全て同じ曲率および同じ溝長に形成されたアルキメデスの渦巻き曲線からなる。
【0046】
ここで、カム溝211a、211bは、アルキメデスの螺旋でカム曲線が形成されているため、カム211の中心に対してカム溝211aとカム溝211bとが点対象となるように配置されている。
【0047】
このカム211のカム溝211a、211bには、一方のグリッパ基部221および他方のグリッパ基部221において上下方向(矢印ab方向)にそれぞれ延びるカムピン223(図2(A)および図4(A))が係合される。カムピン223の上端部には図示しないボールベアリングが取り付けられており、そのボールベアリングがカム溝211a、211bの中に入っており、カム溝211a、211bの壁面と接触し、カム211の回転運動を直線運動に変換している。
【0048】
カム溝211a、211bは、カム211の回転を、1対のグリッパ基部221に伝達する際、上下方向(矢印ab方向)とは直交する水平方向(矢印ef方向)の直線運動に変換し、1対のグリッパ基部221を水平方向(矢印ef方向)に移動させる。
【0049】
なお、カム溝211a、211bは、1対のグリッパ基部221のカムピン223が係合可能な深さを有する有底溝であり、カム211を貫通していない。但し、これに限るものではなく、カム溝211a、211bがカム211を貫通していても良い。
【0050】
1対のグリッパ基部221は、金属からなり、全体的に直方体形状を有している。グリッパ基部221の上端面の中央には上述したカムピン223が圧入および接着により一体に固定するための貫通孔221hが形成されている。カムピン223は、貫通孔221hに対して所定の深さだけ入り込んだ状態で固定される。なお、カムピン223は、貫通孔221hに対して圧入および接着されるのではなく、螺合によって固定されてもよい。
【0051】
グリッパ基部221は、貫通孔221hが設けられている上端面とは直交する側端面にシャフト225の長手方向に沿った2つの貫通孔221qを有している。2つの貫通孔221qは、当該グリッパ基部221の長手方向と平行な水平方向(矢印cd方向)に互いに所定の間隔を開けて形成されており、2本のシャフト225が挿入される孔である。
【0052】
グリッパ基部221における2つの貫通孔221qには、2本のシャフト225の一方の端部が挿入され、そのシャフト225の端部に対して六角穴付きボルト227が螺合されている。これにより、グリッパ基部221は、シャフト225がグリッパ基部221から脱落することのない状態で一体化される。
【0053】
シャフト225には、他方の端部から直動案内部229が装着されると共に、直動案内部229は、上述した突出部202bの円筒状空間202sに収容されて保持される。
【0054】
すなわち、グリッパカバー202の円筒状体202aにカム211およびグリッパ基部221が収容されると共に、グリッパ基部221と一体化された2本のシャフト225、直動案内部229が突出部202bの円筒状空間202sを介して保持される。
【0055】
2本のシャフト225、および、直動案内部229を保持した突出部202bには、その側端面に長方形状のカバープレート233が取り付けられている。カバープレート233には、2本のシャフト225が長手方向(矢印ef方向)に沿って挿通可能に保持する貫通孔が形成されており、シャフト225の移動を妨げることがない。
【0056】
シャフト225に装着される直動案内部229は、シャフト225を当該シャフト225の長手方向に対し、転がり抵抗の極めて少ない状態で移動自在に保持している。
【0057】
直動案内部229は、シャフト225と組み合わされて使用され、無限循環する複数の剛球と、当該複数の剛球を保持する保持器と、当該保持器の両側端部に設けられたシールと、を有する、いわゆるリニアブッシュである。
【0058】
この直動案内部229には、図示しないシールが設けられているため、シャフト225が移動する際にグリッパカバー202の内部に対する異物の流入、および、グリッパカバー202の内部からグリース等が外部へ流出することを防止している。
【0059】
以上の構成において、電動グリッパ100は、ステッピングモータ103のモータ出力軸103の回転と共にカム211が回転すると、そのカム211の回転に応じて2つのグリッパ基部221がシャフト225と一体となって長手方向(矢印ef方向)へ移動する。
【0060】
つまり電動グリッパ100のカム211、および、グリッパ基部221は、カム211の回転運動をグリッパ基部221の直線運動に変換してハンド基台231を駆動するカム構造からなる伝達部を構成している。
【0061】
このとき、カム211の回転に応じて2つのグリッパ基部221が互いに近づくことにより、ハンド基台231と一体化されたフィンガ241が互いに近づくことになり、ワーク等の把持対象物を挟んで掴むことができる。
【0062】
一方、カム211の回転に応じて2つのグリッパ基部221が互いに離反することにより、ハンド基台231と一体化されたフィンガ241が互いに離れることになり、ワーク等の把持対象物を離すことができる。
【0063】
この電動グリッパ100では、グリッパ基部221に対して2本のシャフト225を介してハンド基台231を取り付けている。このため、カム211の回転運動を直線運動に変換する際、1本のシャフトだけでハンド基台231が取り付けられている場合に比べて、2本のシャフト225の存在によってハンド基台231がシャフト225の周方向に回転してガタつくことを未然に防止することができる。これにより電動グリッパ100は、フィンガ241によるワークに対する把持力および把持位置の制御性を向上し得、かくしてエンコーダからのフィードバック信号のばらつきについても抑制し、ワークの大きさの判定精度を向上することができる。
【0064】
1本のシャフトだけでハンド基台231の回転を防止するためには、例えば、シャフトの断面形状を円以外の楕円形や角形状にしても可能であるが、この場合、シャフトの断面形状に合わせたシールを用意しなければならなくなる。
【0065】
しかしながら電動グリッパ100では、断面の外形が円形状のシャフト225を用いているだけの簡易な構成であるため、特別な形状のシールを用意する必要はなく、一般的な直動案内部229を介して防塵性を確保することができる。
【0066】
かくして電動グリッパ100は、シャフト225を2本用いるという簡単な構成により、ハンド基台231の周方向へのガタつきを防止すると共に防塵性についても同時に両立することができる。
【0067】
<他の実施の形態>
なお、上述した実施の形態においては、カム211に係合されるグリッパ基部221とハンド基台231とを2本のシャフト225によって連結するようにした場合について述べた。しかしながら、本発明はこれに限らず、少なくとも2本以上であれば、3本以上のシャフトによってグリッパ基部221とハンド基台231とを連結するようにしてもよい。この場合、カム機構の剛性を向上させることができる。
【0068】
また、上述した実施の形態においては、2本のシャフト225の直径を同一とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、一方のシャフト225の直径と他方のシャフト225の直径を同一とするのではなく、一方のシャフト225を太くして他方のシャフト225を細くしてもよい。
【0069】
あるいは、3本のシャフト225を用いて、中央のシャフト225を太く、その両側に配置する2本のシャフト225を中央のシャフト225よりも細くするようにしてもよい。この場合、ハンド基台231の回転を防止すると共にカム機構の剛性を向上することができる。
【0070】
さらに、上述した実施の形態においては、2本のフィンガ241を有するタイプの電動グリッパ100に適用するものであったが、本発明はこれに限らず、図1との対応部分に同一符号を付した図5に示すように、3本のハンド基台231およびフィンガを有するタイプの電動グリッパ500に適用するようにしてもよい。この場合、カム211は、フィンガの本数に応じたカム溝を有することになる。要は、ハンド基台231の本数は限定されない。
【0071】
本発明の実施の形態においては、電動グリッパ100に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的仕様態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0072】
100,500……電動グリッパ、101…モータ、102…モータカバー、102a…円筒状体、102b…蓋体、103…ステッピングモータ、103a…モータ出力軸、201…グリッパ、202…グリッパカバー、202a…円筒状体、202b…突出部、202s…円筒状空間、211…カム、211a,211b…カム溝、221…グリッパ基部、223…カムピン、225…シャフト、229…直動案内部、231…ハンド基台、241…フィンガ、233…カバープレート。
図1
図2
図3
図4
図5