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特開2024-96624液滴吐出装置、記録方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096624
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】液滴吐出装置、記録方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240709BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/205
B41J2/01 123
B41J2/01 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000251
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 秀之
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC71
2C056EC73
2C056ED05
2C056FA13
2C056FD01
2C056HA42
2C056HA44
2C057AH15
2C057AN05
2C057CA05
(57)【要約】
【課題】高濃度の画像を形成する場合でもヘッドモジュールの重複領域の画質劣化を防止できる液滴吐出装置、記録方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】液滴吐出装置100は、隣接する2つのヘッドモジュール151がその第1方向Cの端部に当該端部同士が重なり合う重複領域abを有するように配列されるラインヘッド150を有し、注目画素Dを形成する2つのヘッドモジュール151の一方のノズル開口部152から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が、階調値に応じた閾値以上となった場合に、振り分け比率に基づいて、注目画素Dを形成するヘッドモジュール151を一方から他方に切り替える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って列状に配列された複数のノズル開口部を有するヘッドモジュールが複数前記第1方向に沿って配列されるラインヘッドであって、隣接する2つのヘッドモジュールの前記第1方向の端部に当該端部同士が重なり合う重複領域を有するように配列されるラインヘッドを有し、前記ノズル開口部から記録媒体に液滴を吐出する記録部と、
前記記録媒体及び前記ラインヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させて、前記2つのヘッドモジュールの前記重複領域に相対応する前記ノズル開口部を、前記記録媒体の同一箇所に移動可能とする移動部と、
前記重複領域に相対応するノズル開口部のうち、いずれの前記ノズル開口部から液滴を吐出させるかを振り分け比率に基づいて制御する記録制御部と、を備える液滴吐出装置であって、
前記重複領域内の少なくとも注目画素を含む所定領域の階調値を検出する検出部を備え、
前記記録制御部は、前記注目画素を形成する前記2つのヘッドモジュールの一方のヘッドモジュールのノズル開口部から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が、前記階調値に応じた閾値以上となった場合に、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替える液滴吐出装置。
【請求項2】
前記記録制御部は、前記階調値の値が大きくなるにつれて前記閾値を小さくする請求項1記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
第1方向に沿って列状に配列された複数のノズル開口部を有するヘッドモジュールが複数前記第1方向に沿って配列されるラインヘッドであって、隣接する2つのヘッドモジュールの前記第1方向の端部に当該端部同士が重なり合う重複領域を有するように配列されるラインヘッドを有し、前記ノズル開口部から記録媒体に液滴を吐出する記録部と、
前記記録媒体及び前記ラインヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させて、前記2つのヘッドモジュールの前記重複領域に相対応する前記ノズル開口部を、前記記録媒体の同一箇所に移動可能とする移動部と、
前記重複領域に相対応するノズル開口部のうち、いずれの前記ノズル開口部から液滴を吐出させるかを振り分け比率に基づいて制御する記録制御部と、を備える液滴吐出装置であって、
前記記録制御部は、前記重複領域内の注目画素を形成する前記2つのヘッドモジュールの一方のヘッドモジュールのノズル開口部から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が第1の閾値以上となった場合は、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替え、
前記非吐出の連続回数が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上であって前記第1の閾値未満となり、かつ、前記注目画素の直前に形成される画素である直前画素が前記2つのヘッドモジュールのうち前記第2方向下流側のヘッドモジュールにより形成され、かつ、前記直前画素よりも前記注目画素に近い距離に形成される画素である近傍画素が、前記第2方向上流側のヘッドモジュールにより形成される場合は、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記第2方向下流側から前記第2方向上流側に切り替える液滴吐出装置。
【請求項4】
前記記録制御部は、前記2つのヘッドモジュールのそれぞれが形成した前記注目画素の数をそれぞれ計測することで選択比率を算出し、
前記振り分け比率と前記選択比率との差分量に基づいて、前記注目画素を形成する前記ヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替える請求項1から3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記記録制御部は、前記差分量の絶対値が所定値以上である場合、前記閾値を下方修正する請求項1又は2を引用する請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記記録媒体への着弾後に相変化により増粘するインクを吐出する請求項1から3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記記録媒体に前記インクを相変化させる前処理剤が塗布されている請求項6記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
第1方向に沿って列状に配列された複数のノズル開口部を有するヘッドモジュールが複数前記第1方向に沿って配列されるラインヘッドであって、隣接する2つのヘッドモジュールの前記第1方向の端部に当該端部同士が重なり合う重複領域を有するように配列されるラインヘッドを有する液滴吐出装置による記録方法であって、
前記ノズル開口部から記録媒体に液滴を吐出する記録ステップと、
前記記録媒体及び前記ラインヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させて、前記2つのヘッドモジュールの前記重複領域に相対応する前記ノズル開口部を、前記記録媒体の同一箇所に移動可能とする移動ステップと、
前記重複領域に相対応するノズル開口部のうち、いずれの前記ノズル開口部から液滴を吐出させるかを振り分け比率に基づいて制御する記録制御ステップと、
前記重複領域内の少なくとも注目画素を含む所定領域の階調値を検出する検出ステップと、を備え、
前記記録制御ステップは、前記注目画素を形成する前記2つのヘッドモジュールの一方のヘッドモジュールのノズル開口部から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が、前記階調値に応じた閾値以上となった場合に、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替える記録方法。
【請求項9】
第1方向に沿って列状に配列された複数のノズル開口部を有するヘッドモジュールが複数前記第1方向に沿って配列されるラインヘッドであって、隣接する2つのヘッドモジュールの前記第1方向の端部に当該端部同士が重なり合う重複領域を有するように配列されるラインヘッドを有する液滴吐出装置のコンピューターを、
前記ノズル開口部から記録媒体に液滴を吐出する記録部、
前記記録媒体及び前記ラインヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させて、前記2つのヘッドモジュールの前記重複領域に相対応する前記ノズル開口部を、前記記録媒体の同一箇所に移動可能とする移動部、
前記重複領域に相対応するノズル開口部のうち、いずれの前記ノズル開口部から液滴を吐出させるかを振り分け比率に基づいて制御する記録制御部、
前記重複領域内の少なくとも注目画素を含む所定領域の階調値を検出する検出部、として機能させ、
前記記録制御部に、前記注目画素を形成する前記2つのヘッドモジュールの一方のヘッドモジュールのノズル開口部から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が、前記階調値に応じた閾値以上となった場合に、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替えさせるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置、記録方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の記録面に液滴を吐出して画像を記録する液滴吐出装置が知られている。当該液滴吐出装置においては、画像データに基づいて液滴吐出ヘッドのノズルから適切なタイミングで液滴を吐出する。
【0003】
ところで、液滴吐出装置としては、複数の液滴吐出ヘッドからなるヘッドモジュールが重複領域を有するように千鳥状に配列された、いわゆるシングルパス形式のものがある。
このような液滴吐出装置においては、重複領域で異なるヘッドモジュールから吐出されて、着弾する時間に差がある液滴同士が繋がることがある。すると、ドットの形状が重複領域と非重複領域とで異なり、反射光による光沢差が生まれ、画質が劣化する。
【0004】
そこで、重複領域において、液滴の吐出を行わない非吐出が所定回数以上連続した際に、液滴を吐出するヘッドモジュールを切り替える液滴吐出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該構成によれば、異なるヘッドモジュールから吐出されたドット同士が繋がりにくくなり、画質劣化を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-131434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高濃度の画像を形成する場合は、非吐出の発生頻度が低減する。そのため、液滴を吐出するヘッドモジュールの切り替え頻度が低減して、一方のヘッドモジュールによる液滴吐出が連続する。結果、光沢差や縦スジの発生など、依然として画質劣化に係る課題を有していた。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。その目的は、高濃度の画像を形成する場合でもヘッドモジュールの重複領域の画質劣化を防止できる液滴吐出装置、記録方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、液滴吐出装置であって、
第1方向に沿って列状に配列された複数のノズル開口部を有するヘッドモジュールが複数前記第1方向に沿って配列されるラインヘッドであって、隣接する2つのヘッドモジュールの前記第1方向の端部に当該端部同士が重なり合う重複領域を有するように配列されるラインヘッドを有し、前記ノズル開口部から記録媒体に液滴を吐出する記録部と、
前記記録媒体及び前記ラインヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させて、前記2つのヘッドモジュールの前記重複領域に相対応する前記ノズル開口部を、前記記録媒体の同一箇所に移動可能とする移動部と、
前記重複領域に相対応するノズル開口部のうち、いずれの前記ノズル開口部から液滴を吐出させるかを振り分け比率に基づいて制御する記録制御部と、を備え、
前記重複領域内の少なくとも注目画素を含む所定領域の階調値を検出する検出部を備え、
前記記録制御部は、前記注目画素を形成する前記2つのヘッドモジュールの一方のヘッドモジュールのノズル開口部から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が、前記階調値に応じた閾値以上となった場合に、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替える。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の液滴吐出装置であって、
前記記録制御部は、前記階調値の値が大きくなるにつれて前記閾値を小さくする。
【0010】
請求項3記載の発明は、液滴吐出装置であって、
第1方向に沿って列状に配列された複数のノズル開口部を有するヘッドモジュールが複数前記第1方向に沿って配列されるラインヘッドであって、隣接する2つのヘッドモジュールの前記第1方向の端部に当該端部同士が重なり合う重複領域を有するように配列されるラインヘッドを有し、前記ノズル開口部から記録媒体に液滴を吐出する記録部と、
前記記録媒体及び前記ラインヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させて、前記2つのヘッドモジュールの前記重複領域に相対応する前記ノズル開口部を、前記記録媒体の同一箇所に移動可能とする移動部と、
前記重複領域に相対応するノズル開口部のうち、いずれの前記ノズル開口部から液滴を吐出させるかを振り分け比率に基づいて制御する記録制御部と、を備える液滴吐出装置であって、
前記記録制御部は、前記重複領域内の注目画素を形成する前記2つのヘッドモジュールの一方のヘッドモジュールのノズル開口部から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が第1の閾値以上となった場合は、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替え、
前記非吐出の連続回数が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上であって前記第1の閾値未満となり、かつ、前記注目画素の直前に形成される画素である直前画素が前記2つのヘッドモジュールのうち前記第2方向下流側のヘッドモジュールにより形成され、かつ、前記直前画素よりも前記注目画素に近い距離に形成される画素である近傍画素が、前記第2方向上流側のヘッドモジュールにより形成される場合は、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記第2方向下流側から前記第2方向上流側に切り替える。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置であって、
前記記録制御部は、前記2つのヘッドモジュールのそれぞれが形成した前記注目画素の数をそれぞれ計測することで選択比率を算出し、
前記振り分け比率と前記選択比率との差分量に基づいて、前記注目画素を形成する前記ヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替える。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1又は2を引用する請求項4に記載の液滴吐出装置であって、
前記記録制御部は、前記差分量の絶対値が所定値以上である場合、前記閾値を下方修正する。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置であって、
前記記録媒体への着弾後に相変化により増粘するインクを吐出する。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の液滴吐出装置であって、
前記記録媒体に前記インクを相変化させる前処理剤が塗布されている。
【0015】
請求項8記載の発明は、
第1方向に沿って列状に配列された複数のノズル開口部を有するヘッドモジュールが複数前記第1方向に沿って配列されるラインヘッドであって、隣接する2つのヘッドモジュールの前記第1方向の端部に当該端部同士が重なり合う重複領域を有するように配列されるラインヘッドを有する液滴吐出装置による記録方法であって、
前記ノズル開口部から記録媒体に液滴を吐出する記録ステップと、
前記記録媒体及び前記ラインヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させて、前記2つのヘッドモジュールの前記重複領域に相対応する前記ノズル開口部を、前記記録媒体の同一箇所に移動可能とする移動ステップと、
前記重複領域に相対応するノズル開口部のうち、いずれの前記ノズル開口部から液滴を吐出させるかを振り分け比率に基づいて制御する記録制御ステップと、
前記重複領域内の少なくとも注目画素を含む所定領域の階調値を検出する検出ステップと、を備え、
前記記録制御ステップは、前記注目画素を形成する前記2つのヘッドモジュールの一方のヘッドモジュールのノズル開口部から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が、前記階調値に応じた閾値以上となった場合に、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替える。
【0016】
請求項9記載の発明は、プログラムであって、
第1方向に沿って列状に配列された複数のノズル開口部を有するヘッドモジュールが複数前記第1方向に沿って配列されるラインヘッドであって、隣接する2つのヘッドモジュールの前記第1方向の端部に当該端部同士が重なり合う重複領域を有するように配列されるラインヘッドを有する液滴吐出装置のコンピューターを、
前記ノズル開口部から記録媒体に液滴を吐出する記録部、
前記記録媒体及び前記ラインヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させて、前記2つのヘッドモジュールの前記重複領域に相対応する前記ノズル開口部を、前記記録媒体の同一箇所に移動可能とする移動部、
前記重複領域に相対応するノズル開口部のうち、いずれの前記ノズル開口部から液滴を吐出させるかを振り分け比率に基づいて制御する記録制御部、
前記重複領域内の少なくとも注目画素を含む所定領域の階調値を検出する検出部、として機能させ、
前記記録制御部に、前記注目画素を形成する前記2つのヘッドモジュールの一方のヘッドモジュールのノズル開口部から液滴を吐出しない非吐出の連続回数が、前記階調値に応じた閾値以上となった場合に、前記振り分け比率に基づいて、前記注目画素を形成するヘッドモジュールを前記一方から他方に切り替えさせる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、重複領域に高濃度の画像を形成する場合であっても画質劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】液滴吐出装置の模式図である。
図2】液滴吐出装置のラインヘッドの模式図である。
図3】液滴吐出装置のブロック図である。
図4】液滴吐出装置における画像記録処理のフローチャートである。
図5A】濃度の低い画像の、各ヘッドモジュールによって形成されたドットを示す模式図である。
図5B】濃度が中程度の画像の、各ヘッドモジュールによって形成されたドットを示す模式図である。
図5C】濃度の高い画像の、各ヘッドモジュールによって形成されたドットを示す模式図である。
図6】第1実施形態に係る液滴吐出装置の振り分け処理のフローチャートである。
図7】マトリクス処理がされた画像の模式図である。
図8】ラインヘッドの要部と振り分け比率の関係を示すグラフである。
図9】注目画素の階調値と閾値の関係を示すグラフである。
図10A】白画素連続数が2であるマトリクス処理がされた画像の模式図である。
図10B】白画素連続数が0である場合のマトリクス処理がされた画像の模式図である。
図11】振り分け処理によりいずれかのヘッドモジュールへの振り分けがされたドットデータの模式図である。
図12】変形例に係る液滴吐出装置の振り分け処理のフローチャートである。
図13】第2実施形態に係る液滴吐出装置の振り分け処理のフローチャートである。
図14】第2実施形態に係る液滴吐出装置において、振り分け処理が行われるドットデータの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る液滴吐出装置について、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は図示例に限定されない。また、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0020】
[第1実施形態]
[液滴吐出装置の全体構成]
図1は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100を示す模式図である。
インクジェット記録装置100は、本実施形態に係る液滴吐出装置である。
【0021】
(移動部)
インクジェット記録装置100は、図1に示すように、無端ベルト状の搬送ベルト1を有する。搬送ベルト1は、ローラ81、82間に張架されている。インクジェット記録装置100において、当該搬送ベルト1は、記録媒体Pを搬送する移動部を構成する。
【0022】
(記録部)
また、インクジェット記録装置100は、記録部を構成するインクジェットヘッド2を備える。インクジェットヘッド2は、画像データに基づいてインク7を吐出し、記録媒体Pの表面にインク画像を形成する。
【0023】
{インクジェットヘッド}
インクジェットヘッド2は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインク7をそれぞれ吐出するインクジェットヘッド2Y、2M、2C、2Kを備える。なお、インクジェットヘッド2の数及び色数は何ら限定されない。
【0024】
搬送ベルト1は、矢印Aで示す方向に、ローラ81、82及びテンションローラ3間を送り操作される。搬送ベルト1は、外表面に載置された記録媒体Pを、矢印に示す搬送方向(第2方向)Bに、インクジェットヘッド2に対して相対的に移動操作する。
【0025】
また、搬送ベルト1の内表面には、インクジェットヘッド2に対向する位置に、吸着板8が配置されている。吸着板8は、記録媒体P及び搬送ベルト1を吸着して密着させる。記録媒体Pは、搬送ベルト1に密着され、かつ、吸着板8に支持されることで、平面性を維持した状態でインクジェットヘッド2に対して移動操作される。
なお、吸着板8は、記録媒体Pの平面性を維持する必要が無ければ設けなくともよい。
【0026】
また、本実施形態においては、搬送ベルト1を送り操作することで記録媒体Pがインクジェットヘッド2に対して相対的に移動するものとするが、移動部の構成はこれに限られない。移動部は、インクジェットヘッド2を移動操作させることで、記録媒体Pに対して相対的に移動する構成としてもよい。
【0027】
インクジェット記録装置100では、画像データに基づいてインクジェットヘッド2からインク7を吐出して、記録媒体Pの表面に複数のドットからなるインク画像を形成する。インクジェットヘッド2は、オンデマンド方式やコンティニュアス方式など従来公知の方式を用いることができる。また吐出方式としては、例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等の電気-機械変換方式が挙げられる。あるいは、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型の等の電気-熱変換方式や、スパークジェット型等の静電吸引方式などが挙げられる。
【0028】
{インク}
インクジェット記録装置100で使用するインク7は、液媒体に顔料を分散したものである。なお、液媒体としては水性媒体及び油性媒体のいずれも用いることができる。インク7には、必要により界面活性剤や分散剤などの従来公知の添加剤が混合されていてもよい。
【0029】
また、インク7としては、相変化型インクや、UV(紫外線)硬化性のインクも好ましく用いられる。相変化型インクは、記録媒体Pへの着弾後に、記録媒体Pの温度に応じて相変化を生じて、増粘するインクである。さらに、記録媒体Pに前処理剤を塗布しておき、当該前処理剤との反応により相変化を生ずる2液反応型インクも用いることができる。
【0030】
インク7の顔料としては、色材の他、色材を内包したマイクロカプセルなどであってもよい。顔料の粒径は、例えば、50nm~200nmの範囲が好ましい。インク7中における顔料の含有量は、例えば、0.1質量%~15質量%の範囲が好ましく、0.5質量%~12質量%の範囲がより好ましい。
【0031】
(ヘッドモジュール)
図2は、第1実施形態のインクジェット記録装置100のラインヘッドの要部を示す模式図である。
【0032】
インクジェットヘッド2Y~2Kは、それぞれがラインヘッド150である。図2に示すように、各ラインヘッド150は、短尺のヘッドモジュール151が、搬送方向Bと交差する幅方向C(第1方向)に複数配列されて構成されている。各ヘッドモジュール151は、記録媒体Pと対向する面に、幅方向Cに沿って配列された複数のノズル開口部152を有している。また、各ヘッドモジュール151は、幅方向Cの端部同士が重なり合う重複領域abを有するように配列されている。
なお、ヘッドモジュール151の個数は、何ら限定されない。また、ノズル開口部152も搬送方向Bに複数列配置されてもよい。
【0033】
各ヘッドモジュール151は、少なくとも記録媒体Pの幅方向Cの全幅に亘るに必要な個数が、記録媒体Pの全幅に亘って配列されている。そして、各ヘッドモジュール151は、各ノズル開口部152から記録媒体Pに向けてインク7を吐出する。
【0034】
なお、以下においては、図2に示すように、隣接する2つのヘッドモジュール151のうち、搬送方向Bの上流側のものを第1ヘッドモジュール151A、下流側のものを第2ヘッドモジュール151Bとする。また、第1ヘッドモジュール151Aの重複領域abを除く領域を非重複領域a、第2ヘッドモジュール151Bの重複領域abを除く領域を非重複領域bとする。
【0035】
本実施形態において、隣接する2つのヘッドモジュール151は、重複領域abにそれぞれ相対応する複数のノズル開口部152を有する。
また、記録媒体Pとラインヘッド150とは、移動部により、搬送方向Bに相対移動する。そして、移動部は、重複領域abにおいて隣接するヘッドモジュール151の相対応するノズル開口部152が、記録媒体Pの同一箇所上を通過するように、記録媒体Pを相対移動させる。
【0036】
(記録制御部)
図3は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100のブロック図である。
【0037】
インクジェット記録装置100において、ラスタライズ処理部110、ハーフトーン処理部120及び振り分け処理部130は、全体制御部101によって制御される。そして、全体制御部101と、その制御下のラスタライズ処理部110、ハーフトーン処理部120及び振り分け処理部130は、記録動作を制御する記録制御部として機能する。
【0038】
全体制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備える。全体制御部101は、所定のプログラムを実行することにより、振り分け処理部130による振り分け対象のドットデータを含む所定領域の階調値を検出する検出部として機能する。
なお、以下においては、振り分け処理部130による振り分け対象のドットデータを注目画素D(図7等参照)とする。
【0039】
また、全体制御部101には、インクジェット記録プログラム及びその他の情報が記憶されたROM(Read Only Memory)等を備える記憶部105が接続されている。インクジェット記録装置100の記録動作は、CPUがROMに記憶された当該プログラムやデータを読み出してRAMに記憶させ、当該プログラムを実行して実施される。
【0040】
全体制御部101は、画像データが入力されると、ラスタライズ処理部110においてビットマップデータに変換して、ハーフトーン処理部120に送る。
ハーフトーン処理部120は、当該ビットマップデータからドットデータを生成し、振り分け処理部130に送る。
振り分け処理部130は、注目画素Dをいずれかのヘッドモジュール151に振り分けることで、いずれかのヘッドモジュール151により注目画素Dを形成するかを決定する。
【0041】
振り分け処理部130で振り分けられた注目画素Dは、第1ヘッドモジュール151A、第2ヘッドモジュール151Bの各々に対応する駆動部140A、駆動部140Bのいずれかに送られる。そして、駆動部140A、140Bは、当該ドットデータに基づいて、対応するいずれかのヘッドモジュール151のノズル開口部152から液滴を吐出させる。
上記一連の処理は、各ラインヘッド150から吐出する各色のインクについてそれぞれ行う。
【0042】
すなわち、全体制御部101は、画像データに基づくドットデータに応じて、複数のヘッドモジュール151によるインク吐出動作を制御する。
特に、重複領域abにおいては、隣接する2つのヘッドモジュール151の相対応するノズル開口部152のいずれかに注目画素Dを形成させるかを制御することで、相補的なインク吐出動作ができる。
【0043】
(記録動作)
図4は、インクジェット記録装置100による記録動作の流れを示すフローチャートである。
上記したように、全体制御部101がインクジェット記録プログラムをスタートすると、初めにラスタライズ処理部110によりラスタライズ処理を実行する(ステップS101)。ラスタライズ処理の実行後、全体制御部101は、ハーフトーン処理部120によりハーフトーン処理を実行する(ステップS102)。ハーフトーン処理の実行後、全体制御部101は、振り分け処理部130により注目画素Dの振り分け処理を実行する(ステップS103)。振り分け処理の実行後、全体制御部101は、駆動部140Aないし140Bにより、各ラインヘッド150からインクを吐出して画像を記録する(ステップS104)。
【0044】
図5Aから図5Cは、重複領域abにおいて、振り分け処理部130によって各ヘッドモジュール151に振り分けられたドットを示す平面図である。
図5Aは、重複領域abに濃度の低い画像が形成される場合を示す。図5Bは、重複領域abに濃度が中程度の画像が形成される場合を示す。また、図5Cは、重複領域abに濃度の高い画像が形成される場合を示す。
【0045】
重複領域abにおいて、インクジェット記録装置100は、隣接するノズル開口部152のいずれかから、相補的にインク吐出を行う。
具体的には、第1ヘッドモジュール151Aは、主に図中左側部分に吐出し、第2ヘッドモジュール151Bは、主に図中右側部分に吐出する。このような相補的なインク吐出により、画像データに応じた画像が形成される。また、図5Aから図5Cに示すように、濃度の高い画像ほど、形成するドットの数が増えるため、インクの吐出されていない非吐出の連続数が少なくなる。
【0046】
なお、図5Aから図5Cにおいては、説明の便宜上、2つのヘッドモジュール151が形成したドットを異なる濃度で表記して区別している。しかしながら、実際には、同一のラインヘッド150を構成している各ヘッドモジュール151は、同一色のドットを形成する。
【0047】
{振り分け処理}
図6は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100による、ステップS103における注目画素Dの振り分け処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
全体制御部101は、初めにHeight=0、Width=0、Flag=0と設定する(ステップS201)。
【0048】
ここで、Heightは、画像データの搬送方向Bの座標である。すなわち、Height=0は、搬送方向Bにおける、画像データの開始端の座標である。
また、Widthは、画像データの幅方向Cの座標である。すなわち、Width=0は、幅方向Cにおける、画像データの開始端の座標である。
また、Flagは、重複領域abにおいて、液滴を吐出するヘッドモジュール151を指定する符号である。本実施形態においては、Flag=0は第1ヘッドモジュール151Aを示し、Flag≠0、例えばFlag=1は、第2ヘッドモジュール151Bを示す。
【0049】
全体制御部101は、搬送方向Bの座標Heightと、画像データの搬送方向Bにおける終点の座標であるheとの大小関係を比較する(ステップS202)。
【0050】
Height≧heである場合(ステップS202;No)、搬送方向Bにつき、画像データの終点に到達している。そのため、全体制御部101は、振り分け処理を終了する。そして、ステップS104に遷移して、画像記録処理を実行する。
【0051】
Height<heである場合(ステップS202;Yes)、全体制御部101は、幅方向Cの座標Widthと、画像データの幅方向Cにおける終点の座標であるweとの大小関係を比較する(ステップS203)。
【0052】
Width≧weである場合(ステップS203;No)、幅方向Cにつき、画像データの終点に到達している。そのため、全体制御部101は、搬送方向Bにつき1画素分先であって、かつ、幅方向Cにつき開始端のドットデータの振り分け処理を行うために、Width=0、Height=Height+1とする(ステップS204)。そして、ステップS202に遷移する。
【0053】
Width<weである場合(ステップS203;Yes)、全体制御部101は、注目画素Dが重複領域abのドットであるか、すなわち、振り分け対象のドットデータであるか判定を行う。
具体的には、初めに全体制御部101は、幅方向Cの座標Widthと、座標w1との大小関係を比較する(ステップS205)。ここで、座標w1は、第1ヘッドモジュール151Aの非重複領域aから重複領域abに入る箇所の座標である。そのため、w1は1つのラインヘッド150につき、複数存在してよい。
【0054】
Width<w1である場合(ステップS205;No)、注目画素Dは、非重複領域aのドットである。そのため、全体制御部101は、後述するステップS214に遷移して、Flag=0とする。
【0055】
Width≧w1である場合(ステップS205;Yes)、全体制御部101は、幅方向Cの座標Widthと、座標w2との大小関係を比較する(ステップS206)。ここで、座標w2は、重複領域abから第2ヘッドモジュール151Bの非重複領域bに入る箇所の座標である。そのため、w2は1つのラインヘッド150につき、複数存在してよい。
【0056】
Width≧w2である場合(ステップS206;No)、注目画素Dは、非重複領域bのドットである。そのため、全体制御部101は、後述するステップS215に遷移して、Flag=1とする。
【0057】
Width<w2である場合(ステップS206;Yes)、注目画素Dは、重複領域abのドットである。そのため、全体制御部101は、注目画素Dをいずれかのヘッドモジュール151に振り分けるかを判定する。
【0058】
初めに、全体制御部101は、注目画素Dを含む所定領域の階調値を検出する(ステップS207)。具体的には、例えば図7に示すように、全体制御部101は、注目画素Dを中心とした5×5のマトリクスでハーフトーン処理後の画像を探索する。そして、当該データの総和を25で除算して100を乗算した値を階調値とする。
【0059】
なお、ここではハーフトーン処理により、白画素(非吐出)=0、小液滴=1、大液滴=2と3値化されているものとする。また、小液滴と大液滴の面積比は1:2とする。
そのため、例えば全面が小液滴で埋め尽くされた場合、階調値100%のべた画像となる。また、例えば図7の場合、階調値は1÷25×100=4より4%となる。
【0060】
また、注目画素Dを含む所定領域の階調値は、ハーフトーン処理後の画像から検出する構成に限られない。注目画素Dを含む所定領域の階調値は、例えば、ハーフトーン処理部120への入力画像から検出する構成としてもよい。
【0061】
次に、全体制御部101は、重複領域abの注目画素Dを、第1ヘッドモジュール151Aと第2ヘッドモジュール151Bにそれぞれ振り分ける比率である、振り分け比率を参照する(ステップS208)。
【0062】
振り分け比率は、図8に示すように、重複領域ab中の座標Widthに応じて予め定められている。また、各ヘッドモジュール151の振り分け比率は、非重複領域a又はbに近い側から遠い側に向かうにつれて、100%から徐々に低下して0%となる。また、各ヘッドモジュール151の振り分け比率は、いずれの座標Widthにおいても、その和が100%となる。
【0063】
なお、以下においては、第1ヘッドモジュール151Aの振り分け比率をSELINA%、第2ヘッドモジュール151Bの振り分け比率をSELINB%とする。
【0064】
次に、全体制御部101は、一連の画像形成動作において、現在の注目画素Dまでに、一方のヘッドモジュール151にどれだけのドットデータが振り分けられたかの割合である、選択比率を算出する(ステップS209)。
【0065】
ここで、第1ヘッドモジュール151Aの選択比率をSELOUTAとする。選択比率SELOUTAは、第1ヘッドモジュール151Aに振り分けられた画素数をSUMA、第2ヘッドモジュール151Bに振り分けられた画素数をSUMBとすると、SELOUTA(%)=SUMA÷(SUMA+SUMB)×100により算出できる。
なお、このとき、白画素はSUMA又はSUMBに含めても含めなくてもよい。
【0066】
次に、全体制御部101は、ステップS207で検出した注目画素Dを含む所定領域の階調値に基づいて、非吐出区間の閾値を決定する(ステップS210)。
【0067】
例えば図9の実線部に示すように、注目画素Dを含む所定領域の階調値が0~D1%の場合、閾値をTH3とする。また、注目画素Dを含む所定領域の階調値がD1~D2%の場合、閾値をTH2とする。また、注目画素Dを含む所定領域の階調値がD2~100%の場合、閾値をTH1とする。
【0068】
ここで、閾値TH1~TH3の大小関係は、図9に示すように、TH3>TH2>TH1である。すなわち、階調値が大きくなるにつれて、閾値を段階的に小さくする。
【0069】
後述するように、閾値が小さいほどヘッドモジュール151の切り替え頻度は高くなる。すなわち、本実施形態に係るインクジェット記録装置100においては、注目画素Dを含む所定領域の階調値が大きいほど、ヘッドモジュール151の切り替え頻度を高くする。
当該構成とすることで、階調値が大きい場合、すなわち、画像の濃度が高く、非吐出の連続回数が少なくなる場合であっても、ヘッドモジュール151の切り替え頻度が低減するのを抑制できる。
なお、閾値の区分はTH1~TH3の3つに限られず、これより多くても少なくても構わない。また、階調値が大きくなるにつれて、閾値が直線的に小さくなるようにしてもよい。
【0070】
次に、全体制御部101は、注目画素Dの直前の非吐出の連続数(非吐出区間)を検出する(ステップS211)。
【0071】
具体的には、注目画素Dが小液滴又は大液滴である場合、全体制御部101は、注目画素Dの直前の小液滴又は大液滴のドットデータを検出する。そして、全体制御部101は、注目画素Dと、注目画素Dの直前の小液滴又は大液滴のドットデータとの間の、連続した白画素(非吐出)の数から、非吐出の連続数を検出する。
なお、以下においては注目画素Dの直前に振り分けられた小液滴又は大液滴のドットデータを直前画素L(図10等参照)とする。
【0072】
例えば、図10Aにおいては、注目画素Dから1画素前と2画素前が非吐出である。しかしながら、3画素前においては、小液滴のドットデータである直前画素Lがあるため、非吐出の連続数は2となる。
【0073】
また、図10Bに示すように、注目画素Dが非吐出である場合、非吐出の連続数は0となる。これは、注目画素Dが非吐出である場合、液滴吐出動作は当然行わなく、ヘッドモジュール151を切り替える必要が無いからである。
【0074】
なお、ステップS207からステップS211については、特にその順序を問わない。ただし、階調値から閾値を決定するステップS210は、注目画素Dを含む所定領域の階調値を算出するステップS207の後に行う必要があるのは勿論である。
【0075】
次に、全体制御部101は、ステップS210で決定した閾値と、ステップS211で検出した非吐出の連続数との大小関係を比較する(ステップS212)。
【0076】
非吐出の連続数<閾値である場合(ステップS212;No)、全体制御部101は、ヘッドモジュール151を切り替えない。そのため、FlagはそのままにステップS216に遷移する。
【0077】
非吐出の連続数≧閾値である場合(ステップS212;Yes)、全体制御部101は、第1ヘッドモジュール151Aの振り分け比率SELINAと選択比率SELOUTAとの差分量(SELINA-SELOUTA)が正であるか判定する(ステップS213)。
【0078】
第1ヘッドモジュール151Aの差分量が正である場合(ステップS213;Yes)、注目画素Dを第1ヘッドモジュール151Aに振り分ける。そこで、全体制御部101は、Flag=0とする(ステップS214)。
【0079】
また、第1ヘッドモジュール151Aの差分量が負である場合(ステップS213;No)、注目画素Dを第2ヘッドモジュール151Bに振り分ける。そこで、全体制御部101は、Flag=1とする(ステップS215)。
【0080】
ステップS214ないしステップS215によるFlagの値の設定後、全体制御部101は、Flag=0であるか否かを判定する(ステップS216)。
【0081】
Flag=0の場合(ステップS216;Yes)、全体制御部101は、注目画素Dを第1ヘッドモジュール151Aに振り分ける(ステップS217)。そして、幅方向Cにつき、次のドットデータの振り分け処理をするために、Width=Width+1として(ステップS219)、ステップS202に遷移する。
【0082】
同様に、Flag≠0の場合(ステップS216;No)、全体制御部101は、注目画素Dを第2ヘッドモジュール151Bに振り分ける(ステップS218)。そして、幅方向Cにつき、次のドットデータの振り分け処理をするために、Width=Width+1として(ステップS219)、ステップS202に遷移する。
【0083】
図11を元に、ドットデータの振り分けの一例を示す。
なお、本例においては、閾値は3であり、振り分け比率と選択比率の差分は常に正負が入れ替わるものとする。すなわち、全体制御部101は、非吐出の連続数が3以上となった場合に、ドットデータを振り分けるヘッドモジュール151を切り替えるものとする。
【0084】
図11において、全体制御部101は、初めに図中上方のドットデータを第1ヘッドモジュール151Aに振り分ける。
次に、非吐出が連続するが、その数は2である。そのため、全体制御部101は、ヘッドモジュール151の切り替えは行わず、次のドットデータも第1ヘッドモジュール151Aに振り分ける。
次の非吐出の連続数は3である。そのため、全体制御部101は、次のドットデータを第2ヘッドモジュール151Bに振り分ける。
また、更に次の非吐出の連続数は5である。そのため、全体制御部101は、次のドットデータを第1ヘッドモジュール151Aに振り分ける。
【0085】
[第1実施形態の効果]
以上に示すように、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100は、2つのヘッドモジュール151の一方のヘッドモジュール151のノズル開口部152から液滴を吐出しない非吐出の連続数が、階調値に応じた閾値以上であるか判定する。そして、非吐出の連続数が閾値以上となった場合は、振り分け比率に基づいて、注目画素Dを形成するヘッドモジュール151を一方から他方に切り替える。
当該構成によれば、注目画素Dを含む所定領域の階調値に応じて、ヘッドモジュール151の切り替え頻度が変化する。そのため高濃度の画像を形成する場合でも、一方のヘッドモジュール151からのインク吐出が続いて、画質が劣化してしまうのを抑制できる。
【0086】
また、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100は、階調値の値が大きくなるにつれて閾値を小さくする。
当該構成によれば、形成する画像の濃度が高い場合であっても、ヘッドモジュール151の切り替え頻度を高められる。結果、一方のヘッドモジュール151からのインク吐出が続いて、画質が劣化してしまうのを抑制できる。
【0087】
また、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100は、振り分け比率と選択比率との比較結果に基づいて、注目画素Dを形成するヘッドモジュール151を一方から他方に切り替える。
当該構成によれば、選択比率を振り分け比率に近付けることができる。結果、より画質劣化を防止することができる。
【0088】
[変形例]
なお、上記においては、全体制御部101は、ステップS210で決定した閾値をそのまま用いるものとしたが、これに限られない。
図12に、変形例に係る振り分け処理を示す。変形例に係る振り分け処理は、全体制御部101が、ステップS210の後に、ステップS220及びステップS221を含む点が相違する。
【0089】
ステップS210で閾値を決定した後、全体制御部101は、第1ヘッドモジュール151Aにおける振り分け比率と選択比率の差分量が所定の範囲外であるか(すなわち、差分量の絶対値が所定値以上であるか)を判定する(ステップS220)。
【0090】
差分量が所定の範囲内である場合(ステップS220;No)、全体制御部101は、ステップS210で決定した閾値をそのまま用いる。そのため、全体制御部101は、ステップS211に遷移する。
【0091】
差分量が所定の範囲外である場合(ステップS220;Yes)、全体制御部101は、ステップS210で決定した閾値よりも低い閾値に修正する(ステップS221)。
【0092】
具体的には、例えば図9に示すように、差分量が所定の範囲内である場合は実線部の閾値を採用し、差分量が所定の範囲外である場合は点線部の閾値を採用する。
閾値の修正後、全体制御部101は、ステップS211に遷移する。
【0093】
[変形例の効果]
当該構成によれば、全体制御部101は、振り分け比率と選択比率との乖離が大きい場合に閾値を低く修正して、ヘッドモジュール151の切り替え頻度を高くする。そのため、設定された振り分け比率通りにヘッドモジュール151が切り替えられていない場合に、より早く選択比率を振り分け比率に近付けることができる。
【0094】
なお、上記においては差分量が所定の範囲外である場合の閾値の修正量が一律である場合を例示したが、これに限られない。例えば、振り分け比率と選択比率との乖離がより大きくなるにつれて、より閾値を小さくするように修正する構成としてもよい。
【0095】
また、上記においては、ステップS209において第1ヘッドモジュール151Aの選択比率SELOUTAを算出し、ステップS213において第1ヘッドモジュール151Aの差分を取得するとしたが、これに限られない。
すなわち、ステップS209において第2ヘッドモジュール151Bの選択比率SELOUTBを算出し、ステップS213において第2ヘッドモジュール151Bの差分を取得してもよい。当該構成において、全体制御部101は、第2ヘッドモジュール151Bの差分が正の場合は、ドットデータを第2ヘッドモジュール151Bに振り分ける。また、全体制御部101は、第2ヘッドモジュール151Bの差分が負の場合は、ドットデータを第1ヘッドモジュール151Aに振り分ける。
【0096】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るインクジェット記録装置100による振り分け処理について、図13に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の説明において、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100と同様の構成については、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0097】
第2実施形態に係るインクジェット記録装置100においては、第1実施形態と異なり、注目画素Dを含む所定領域の階調値を振り分け処理に用いない。そして、予め設定された第1の閾値並びに第2の閾値を振り分け処理に用いる。
そのため、注目画素Dを含む所定領域の階調値を検出するステップS207、当該階調値から閾値を決定するステップS210、当該閾値と非吐出の連続数を比較するステップS212は行わない。他方で、ステップS201からステップS206、ステップS208及びステップS209、ステップS211並びにステップS213からステップS219は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0098】
ステップS211で注目画素Dの直前の非吐出の連続数を検出した全体制御部101は、当該非吐出の連続数と、第1の閾値との大小関係を比較する(ステップS222)。
【0099】
非吐出の連続数≧第1の閾値である場合(ステップS222;Yes)、全体制御部101は、第1実施形態と同様に、ステップS213に遷移する。すなわち、第1ヘッドモジュール151Aの差分が正か負かにより、注目画素Dをいずれかのヘッドモジュール151に振り分けるかを決定する。
【0100】
非吐出の連続数<第1の閾値である場合(ステップS222;No)、全体制御部101は、第1の閾値よりも小さい第2の閾値との大小関係を比較する(ステップS223)。
【0101】
非吐出の連続数<第2の閾値である場合(ステップS223;No)、ステップS216に遷移する。すなわち、全体制御部101は、注目画素Dを振り分けるヘッドモジュール151を切り替えない。
【0102】
非吐出の連続数≧第2の閾値である場合(ステップS223;Yes)、全体制御部101は、直前画素Lが、第2ヘッドモジュール151Bに振り分けられているか判定する(ステップS224)。
【0103】
直前画素Lが第1ヘッドモジュール151Aに振り分けられている場合(ステップS224;No)、ステップS216に遷移する。すなわち、全体制御部101は、注目画素Dを振り分けるヘッドモジュール151を切り替えない。
【0104】
直前画素Lが第2ヘッドモジュール151Bに振り分けられている場合(ステップS224;Yes)、全体制御部101は、直前画素Lよりも注目画素Dに近い距離に、第1ヘッドモジュール151Aに振り分けられた小液滴ないし大液滴のドットデータが有るか判定する(ステップS225)。
【0105】
直前画素Lよりも注目画素Dに近い距離に、第1ヘッドモジュール151Aに振り分けられた小液滴ないし大液滴のドットデータが無い場合(ステップS225;No)、ステップS216に遷移する。すなわち、全体制御部101は、注目画素Dを振り分けるヘッドモジュール151を切り替えない。
【0106】
例えば図14に示すように、直前画素Lよりも注目画素Dに近い距離に、第1ヘッドモジュール151Aに振り分けられた小液滴ないし大液滴のドットデータがある場合(ステップS225;Yes)、ステップS213に遷移する。そして、第1ヘッドモジュール151Aの差分量に基づいて、注目画素Dをいずれかのヘッドモジュール151に振り分けるかを判定する。
なお、以下においては直前画素Lよりも注目画素Dに近い距離のドットデータを、図14に示すように近傍画素Nとする。
【0107】
従来発明においては、直前画素Lまでの非吐出の連続数が第1の閾値未満かつ第2の閾値以上である場合、注目画素Dを振り分けるヘッドモジュール151を直前画素Lから切り替えないようにしていた。これは、直前画素までの非吐出の連続数が第2の閾値以上であると、直前画素Lと注目画素Dとが互いに干渉し合うと認識されていたからである。
【0108】
しかしながら、上記したように、近傍画素Nが上流側の第1ヘッドモジュール151Aに振り分けられたドットデータである場合、下流側の第2ヘッドモジュール151Bに振り分けられた直前画素Lよりも先に形成される。また、注目画素Dとの距離は、直前画素Lよりも近傍画素Nの方が近い。
そのため、注目画素Dへの干渉度は、直前画素Lよりも近傍画素Nの方が大きい。
【0109】
したがって、注目画素Dを、直前画素Lを振り分けた第2ヘッドモジュール151Bではなく、第1ヘッドモジュール151Aに振り分けても、画質に与える影響は少ない。そのため、上記条件を満たす場合も、注目画素Dをいずれかのヘッドモジュール151に振り分けるかを、差分量に基づいて判定することで、選択比率を振り分け比率に近付けるのが好ましい。
【0110】
[第2実施形態の発明の効果]
以上に示すように、第2実施形態に係るインクジェット記録装置100においては、非吐出の連続数が第1の閾値以上である場合のみならず、第1の閾値未満かつ第2の閾値以上であり、かつ、直前画素Lが第2ヘッドモジュール151Bに振り分けられ、近傍画素Nが第1ヘッドモジュール151Aに振り分けられている場合も、振り分け比率と選択比率の差分に基づいて、いずれかのヘッドモジュール151に注目画素Dを振り分けるかを決定する。
当該構成によれば、より振り分け比率に近い選択比率で注目画素Dが振り分けられるようになり、画質の低減を抑制できるようになる。
【0111】
なお、第2実施形態においては、注目画素Dを含む所定領域の階調値を振り分け処理に用いないと上記したが、これに限られない。すなわち、第2実施形態においては、全体制御部101が検出した注目画素Dを含む所定領域の階調値に応じて、第1の閾値と第2の閾値を設定してもよい。
【0112】
[その他の構成]
液滴吐出装置をインクジェット記録装置100と上記したが、本発明に係る液滴吐出装置から吐出される液体はインクに限られない。
【0113】
ただし、記録媒体Pへの着弾後に相変化するインクを吐出するインクジェット記録装置100、特に、当該相変化をさせる前処理剤が塗布された記録媒体Pを用いる場合においては、特に本発明を適用するのが好ましい。
相変化インクからなり、着弾時間が異なるドット同士が繋がると、特に上記したような画質差が生まれやすくなるからである。
【0114】
また、上記においては、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用できる。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0115】
100 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
101 全体制御部(記録制御部、検出部)
150 ラインヘッド
151 ヘッドモジュール
151A 第1ヘッドモジュール
151B 第2ヘッドモジュール
152 ノズル開口部
ab 重複領域
B 搬送方向(第2方向)
C 幅方向(第1方向)
D 注目画素
L 直前画素
N 近傍画素
P 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14