IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エンプラスの特許一覧

特開2024-96634通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材
<>
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図1
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図2
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図3
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図4
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図5
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図6
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図7
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図8
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図9
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図10
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図11
  • 特開-通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096634
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/02 20060101AFI20240709BHJP
   H01Q 15/10 20060101ALI20240709BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01Q15/02
H01Q15/10
G02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000274
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 心平
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 孝吉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼鳥 洋
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA01
5J020AA02
5J020BB01
5J020BC06
(57)【要約】
【課題】一次放射器に対して電磁束制御部材が位置ずれした場合であっても結合損失の低下を抑制できる通信モジュールを提供すること。
【解決手段】通信モジュールは、一次放射器と、電磁束制御部材と、を有する。電磁束制御部材は、一次放射器から送信された電磁束を入射させるための入射面と、入射面で入射した電磁束を外部に出射させるための出射面と、を含み、入射面および出射面は、出射される電磁束が、一次放射器から出射される電磁束の出射角度と、電磁束制御部材の誘電率と、任意に設定される電磁束制御部材の焦点距離とに基づいて、一次放射器から送信された電磁束をコリメートするために最適化された基準レンズの焦点位置から送信され、基準レンズに入射後に出射される電磁束よりも拡がるように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁束を送信するための一次放射器と、前記一次放射器から送信された電磁束の進行方向を制御するための電磁束制御部材と、を有する、通信モジュールであって、
前記電磁束制御部材は、
前記一次放射器から送信された電磁束を入射させるための入射面と、
前記入射面で入射した電磁束を外部に出射させるための出射面と、を含み、
前記入射面および前記出射面は、前記出射面から出射される電磁束が、前記一次放射器から出射される電磁束の出射角度と、前記電磁束制御部材の誘電率と、任意に設定される前記電磁束制御部材の焦点距離とに基づいて、前記一次放射器から送信された電磁束をコリメートするために最適化された基準レンズの焦点位置から送信され、前記基準レンズに入射後に出射される電磁束よりも拡がるように構成されている、
通信モジュール。
【請求項2】
前記基準レンズは、
前記入射面に対応し、電磁束を入射させるための基準入射面と、
前記出射面に対応し、前記基準入射面で入射した電磁束を外部に出射させるための基準出射面と、を含む、
請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項3】
前記基準入射面の頂点曲率半径の絶対値と、前記基準出射面の頂点曲率半径の絶対値とを比較して、前記基準入射面の頂点曲率半径の絶対値が大きい場合において、
前記入射面の頂点曲率半径は、前記基準入射面の頂点曲率半径と同一であり、
凸面である前記出射面の頂点曲率半径の絶対値は、前記基準出射面の頂点曲率半径の絶対値よりも大きい、
請求項2に記載の通信モジュール。
【請求項4】
前記基準入射面の頂点曲率半径の絶対値と、前記基準出射面の頂点曲率半径の絶対値とを比較して、前記基準出射面の頂点曲率半径の絶対値が大きい場合において、
前記出射面の頂点曲率半径は、前記基準出射面の頂点曲率半径と同一であり、
凹面である前記入射面の頂点曲率半径の絶対値は、前記基準入射面の頂点曲率半径の絶対値よりも小さい、
請求項2に記載の通信モジュール。
【請求項5】
前記一次放射器と、前記一次放射器から送信された電磁束を受信するための受信部との間隔を5mとし、
前記一次放射器と、受信器を有する前記受信部とは、同じ構成のモジュールであり、
前記一次放射器を前記基準レンズの焦点位置よりも前記電磁束制御部材の近くに配置したとき、
前記一次放射器から送信され前記受信部で受信した電磁束の結合損失は、0~-61dBの範囲内である、
請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項6】
前記一次放射器と、前記一次放射器から送信された電磁束を受信するための受信部とを一定距離離間させ、
前記一次放射器と、受信器を有する前記受信部とは、同じ構成のモジュールを使用し、
前記一次放射器を前記基準レンズの焦点位置よりも前記電磁束制御部材の近くに配置したとき、
前記一次放射器から送信され前記受信部で受信した電磁束の結合損失は、0~-61dBの範囲内である、
請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項7】
前記電磁束は、ミリ波、準ミリ波、またはテラヘルツ波である、請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項8】
前記入射面または前記出射面には、電磁束の反射を抑制するための整合層が配置されている、請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項9】
前記整合層は、複数の凸部である、請求項8に記載の通信モジュール。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の通信モジュールに用いられる、電磁束制御部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、より多くの情報を高効率で長距離に伝送するための手段として、誘電体で形成されたレンズアンテナを用いることが知られている。レンズアンテナは、球面波を平面波に変換するなど、電磁波の進行方向を制御する機能を有しており、近年、準ミリ波、ミリ波、およびテラヘルツ波などの波長が短い電波にも使用され始めている。近年では、5G、6G規格のミリ波、テラヘルツ波を用いた通信が研究されており、高利得アンテナとしてレンズアンテナが注目されている。
【0003】
従来、レンズアンテナは、ホーンアンテナと組み合わせて使われている。レンズアンテナは、ホーンアンテナから焦点距離を離して配置されたときに最も効果を発揮するように最適化されている。ここで、レンズアンテナの球面、非球面または自由曲面における曲率は、一定の計算アルゴリズムによって最適化されることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
非特許文献1には、レンズアンテナの焦点距離と、レンズアンテナを構成する誘電体の誘電率と、ホーンアンテナから送信される電磁波の角度とに基づいて入射面または出射面を最適化する方法が記載されている。
【0005】
また、このようなレンズアンテナの固定方法として、ホーンアンテナのフランジに直接固定される方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、レンズアンテナの別の固定方法として、固定治具を用いてホーンアンテナから一定の距離を保って、ホーンアンテナと誘電体レンズアンテナの中心が一致するように固定する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9―321533号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Farizah Ansarudin, et al., “Multi Beam Dielectric Lens Antenna for 5G Base Station”, Sensors, Volume 20, Issue 20, 5849.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1および特許文献1に記載のレンズアンテナは、使用する波長の10~20倍程度の大きさを有するため、レンズアンテナと、ホーンアンテナとの位置合わせは容易であった。
【0009】
しかしながら、近年、使用される波長が短くなり、それに伴いレンズアンテナおよびホーンアンテナのサイズが小さくなり、高い位置合わせ精度も要求されるようになってきた。このため、非特許文献1および特許文献1に記載の方法では、レンズアンテナおよびホーンアンテナを精度良く位置決めできず、結合損失が低下してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、一次放射器に対して電磁束制御部材が位置ずれした場合であっても結合損失の低下を抑制できる通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材に関する。
[1]電磁束を送信するための一次放射器と、前記一次放射器から送信された電磁束の進行方向を制御するための電磁束制御部材と、を有する、通信モジュールであって、前記電磁束制御部材は、前記一次放射器から送信された電磁束を入射させるための入射面と、前記入射面で入射した電磁束を外部に出射させるための出射面と、を含み、前記入射面および前記出射面は、前記出射面から出射される電磁束が、前記一次放射器から出射される電磁束の出射角度と、前記電磁束制御部材の誘電率と、任意に設定される前記電磁束制御部材の焦点距離とに基づいて、前記一次放射器から送信された電磁束をコリメートするために最適化された基準レンズの焦点位置から送信され、前記基準レンズに入射後に出射される電磁束よりも拡がるように構成されている、通信モジュール。
[2]前記基準レンズは、前記入射面に対応し、電磁束を入射させるための基準入射面と、前記出射面に対応し、前記基準入射面で入射した電磁束を外部に出射させるための基準出射面と、を含む、[1]に記載の通信モジュール。
[3]前記基準入射面の頂点曲率半径の絶対値と、前記基準出射面の頂点曲率半径の絶対値とを比較して、前記基準入射面の頂点曲率半径の絶対値が大きい場合において、前記入射面の頂点曲率半径は、前記基準入射面の頂点曲率半径と同一であり、凸面である前記出射面の頂点曲率半径の絶対値は、前記基準出射面の頂点曲率半径の絶対値よりも大きい、[1]または[2]に記載の通信モジュール。
[4]前記基準入射面の頂点曲率半径の絶対値と、前記基準出射面の頂点曲率半径の絶対値とを比較して、前記基準出射面の頂点曲率半径の絶対値が大きい場合において、前記出射面の頂点曲率半径は、前記基準出射面の頂点曲率半径と同一であり、凹面である前記入射面の頂点曲率半径の絶対値は、前記基準入射面の頂点曲率半径の絶対値よりも小さい、[1]または[2]に記載の通信モジュール。
[5]前記一次放射器と、前記一次放射器から送信された電磁束を受信するための受信部との間隔を5mとし、前記一次放射器と、前記受信部を有する受信器とは、同じ構成のモジュールであり、前記一次放射器を前記基準レンズの焦点位置よりも前記電磁束制御部材の近くに配置したとき、前記一次放射器から送信され前記受信部で受信した電磁束の結合損失は、0~-61dBの範囲内である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の通信モジュール。
[6]前記一次放射器と、前記一次放射器から送信された電磁束を受信するための受信部とを一定距離離間させ、前記一次放射器と、前記受信部を有する受信器とは、同じ構成のモジュールを使用し、前記一次放射器を前記基準レンズの焦点位置よりも前記電磁束制御部材の近くに配置したとき、前記一次放射器から送信され前記受信部で受信した電磁束の結合損失は、0~-61dBの範囲内である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の通信モジュール。
[7]前記電磁束は、ミリ波、準ミリ波、またはテラヘルツ波である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の通信モジュール。
[8]前記入射面または前記出射面には、電磁束の反射を抑制するための整合層が配置されている、[1]~[7]のいずれか一項に記載の通信モジュール。
[9]前記整合層は、複数の凸部である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の通信モジュール。
[10][1]~[9]のいずれか一項に記載の通信モジュールに用いられる、電磁束制御部材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一次放射器に対して電磁束制御部材が位置ずれした場合であっても結合損失の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態1の通信モジュールの構成を示す図である。
図2図2A~Cは、実施の形態1におけるホーンアンテナの構成を示す図である。
図3図3A~Cは、実施の形態1の電磁束制御部材の構成を示す図である。
図4図4A、Bは、基準レンズと、実施の形態1の電磁束制御部材との光路図である。
図5図5A、Bは、基準レンズと、実施の形態1の変形例1の電磁束制御部材との光路図である。
図6図6は、実施の形態2の通信モジュールの構成を示す図である。
図7図7A~Cは、実施の形態2の電磁束制御部材の構成を示す図である。
図8図8A、Bは、一次放射器および受信部の間の距離と、電磁束の結合損失との関係を説明するための図である。
図9図9A、Bは、一次放射器のずれ量と、電磁束の結合損失との関係を説明するための図である。
図10図10A、Bは、結合損失に対する電磁束制御部材の影響を説明するための図である。
図11図11A、Bは、結合損失に対する電磁束制御部材の位置ずれの影響を説明するための図である。
図12図12A、Bは、結合損失に対する出射面の曲率半径の影響のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[実施の形態1]
(通信モジュールの構成)
図1は、実施の形態1の通信モジュール100の構成を示す模式図である。図2A~Cは、ホーンアンテナの構成を示す図である。図2Aは、ホーンアンテナの平面図であり、図2Bは、右側面図であり、図2Cは、正面図である。
【0016】
図1および図2A~Cに示されるように、通信モジュール100は、一次放射器110と、電磁束制御部材120とを有する。通信モジュール100は、送信モジュールとして使用されてもよいし、受信モジュールとして使用されてもよいし、送信モジューおよび受信モジュールとして使用してもよい。本実施の形態では、送信モジュールおよび受信モジュールとして使用できる。すなわち、本実施の形態では、送信モジュールとしての通信モジュール100は、一次放射器110と、電磁束制御部材120とを有する。一方、受信モジュールとしての通信モジュール100は、電磁束制御部材120と、受信部130とを有する。一次放射器110と、受信部130とは、同じ構成のモジュールが好ましい。一次放射器110は、電波源111と、第1アンテナ112とを有する。よって、受信部130は、受信器131と、第2アンテナ132とを有する。
【0017】
電波源111は、所定の波長の電磁束を送信する。電波源111の種類は、上記の機能を発揮できれば特に限定されず、公知の電波源を使用できる。電波源111から送信される電磁束の種類は、ミリ波、準ミリ波、またはラヘルツ波であることが好ましい。本実施の形態の電磁束制御部材120に使用される電磁波の波長は、特に限定されないが、例えば1~10mmの範囲内である。
【0018】
第1アンテナ112は、電波源111から送信された電磁束を所定の拡がりを有する状態で、電磁束制御部材120に向けて制御する。第1アンテナ112は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。第1アンテナ112の種類の例には、ホーンアンテナ、パッチアンテナが含まれる。本実施の形態では、第1アンテナ112は、ホーンアンテナである(図2A~C参照)。例えば、ホーンアンテナの上開口部の大きさは縦2.5mm×横1.8mmであり、下開口部の大きさは縦0.9mm×横0.4mmであり、長さは6mmである。上開口部および下開口部の形状は、いずれも矩形である。また、本実施の形態では、ホーンアンテナの下開口部から1mm上方に電波源111が配置されている。
【0019】
受信器131は、電波源111から送信される電磁束を受信する。受信器131の種類は、上記の機能を発揮できれば特に限定されず、公知のものを使用できる。
【0020】
第2アンテナ132は、電波源111から送信された電磁束を受信器131に向けて集めるように制御する。第2アンテナ132は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。第2アンテナ132の種類の例には、ホーンアンテナ、パッチアンテナが含まれる。本実施の形態では、第2アンテナ132は、ホーンアンテナである(図2A~C参照)。例えば、ホーンアンテナの上開口部の大きさは縦2.5mm×横1.8mmであり、下開口部の大きさは縦0.9mm×横0.4mmであり、長さは6mmである。上開口部および下開口部の形状は、いずれも矩形である。また、本実施の形態では、ホーンアンテナの下開口部から1mm上開口部側に受信器131が配置されている。
【0021】
一次放射器110に含まれる第1アンテナ112と、受信部130に含まれる第1アンテナ112とは、同じ形状でもよいし、異なる形状でもよい。上述したように、本実施の形態では、一次放射器110に含まれる第1アンテナ112と、受信部130に含まれる第2アンテナ132とは、同じ形状である。
【0022】
(電磁束制御部材の構成)
図3Aは、電磁束制御部材120の平面図であり、図3Bは、正面図であり、図3Cは、図3Aに示されるA-A線の断面図である。
【0023】
ここでは、送信モジュールに含まれる電磁束制御部材120について説明する。電磁束制御部材120は、一次放射器110から送信された電磁束(電磁波)の進行方向を制御する。具体的には、電磁束制御部材120は、一次放射器110から送信された電磁束を拡がって進行するように制御する。図3A~Cに示されるように、電磁束制御部材120は、入射面121と、出射面122とを有している。なお、本実施の形態では、電磁束制御部材120は、側方に配置された側面123をさらに有する。
【0024】
電磁束制御部材120の材料は、本発明の効果を発揮できるものであれば特に限定されず、制御対象の電磁束を透過させうる材料から適宜選択される。電磁束制御部材120の材料の例には、セラミックス、樹脂、ガラスが含まれる。樹脂の例には、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリフェニレンエーテルが含まれる。セラミックスの例には、CaTiO、SrTiO、BaTiO、ZnOが含まれる。また、電磁束制御部材120の材料の例には、上述したセラミックの粉末を含んだ上述の樹脂が含まれる。
【0025】
本実施の形態では、電磁束制御部材120は、表裏方向に延在する中心軸CAを回転軸とした回転対称(円対称)である。また、本実施の形態では、電磁束制御部材120の高さ(厚み)は5mmであり、平面視したときの直径は10mmである。また、中心軸CAは、入射面121の中心軸CAでもあり、出射面122の中心軸CAでもあり、側面123の中心軸CAでもある。
【0026】
入射面121は、電磁束を電磁束制御部材120の内部に入射させ、かつ電磁束を所定の方向に進行させる。入射面121の形状は、上記の機能を発揮できれば特に限定されず、出射面122の形状などに応じて適宜設定される。入射面121は、平面でもよいし、凹面でもよい。入射面121は、電磁束制御部材120の中心軸CAと交わるように配置されている。本実施の形態では、入射面121の形状は、中心軸CAを回転軸とした回転対称(円対称)であり、かつ平面である。なお、入射面121の詳細な設定方法については、後述する。
【0027】
出射面122は、入射面121で入射した電磁波を電磁束制御部材120の外部に出射させ、かつ電磁束を所定の方向に進行させる。出射面122の形状は、上記の機能を発揮できれば特に限定されず、入射面121の形状などに応じて適宜設定される。本実施の形態では、出射面122は、中心軸CAと交わるように配置されている。本実施の形態では、出射面122の形状は、中心軸CAを回転軸とした回転対称(円対称)であり、かつ凸面である。なお、出射面122の詳細な設定方法については、後述する。
【0028】
すなわち、本実施の形態では、出射面122が凸面であり、かつ入射面121が平面の態様と、出射面122が凸面であり、かつ入射面121が凹面の態様(図5B参照)とが考えられる。
【0029】
側面123は、入射面121と、出射面122との間に配置されている。側面123の一端は入射面123の外縁と接続し、他端は出射面122の外縁と接続されている。本実施の形態において、側面123は、円柱の側面の形状である。電磁束制御部材120が側面123を有さない場合には、入射面123の外縁と、出射面122の外縁とは直接接続する。
【0030】
なお、受信モジュールに含まれる電磁束制御部材120は、送信モジュールに含まれる電磁束制御部材120から送信された電磁束(電磁波)の進行方向を制御する。受信モジュールに含まれる電磁束制御部材120は、送信モジュールに含まれる電磁束制御部材120における入射面121が出射面として機能し、出射面122が入射面として機能する。その他の構成は、送信モジュールに含まれる電磁束制御部材120と同様である。
【0031】
ここで、入射面121および出射面122の詳細な設定方法について説明する。本実施の形態の電磁束制御部材120における入射面121または出射面122は、基準レンズ520に基づいて設定される。そこで、まず、基準レンズ520について説明する。
【0032】
図4Aは、基準レンズ520における電磁束の光路図である。図4Aに示されるように、基準レンズ520は、一次放射器110から送信された電磁束をコリメートするのに最適化されたレンズである。基準レンズ520は、電磁束制御部材120の入射面121に対応し、電磁束を入射させるための基準入射面521と、電磁束制御部材120の出射面122に対応し、基準入射面521で入射した電磁束を外部に出射させるための基準出射面522とを含む。なお、本実施の形態では、基準入射面521は平面であり、基準出射面522は、凸面である。一次放射器110から送信された電磁束は、基準入射面521で基準レンズ520の内部に入射し、基準出射面522で基準レンズ520の外部に出射される。このとき、基準出射面522から出射される電磁束は、平行である。基準レンズ520は、上述の非特許文献1(Farizah Ansarudin, et al., “Multi Beam Dielectric Lens Antenna for 5G Base Station”, Sensors, Volume 20, Issue 20, 5849)に基づいて、一次放射器110から送信される電磁束の出射角度と、電磁束制御部材120の誘電率と、任意に設定される電磁束制御部材120の焦点距離とに基づいて、電波源111から送信された電磁束をコリメートするために最適化されている。ここで、本実施の形態において、焦点位置とは、基準出射面522からコリメート光を入射させ、基準入射面521から出射させた場合の焦点の位置を意味する。
【0033】
図4Bは、本実施の形態の電磁束制御部材120における電磁束の光路図である。本実施の形態の電磁束制御部材120は、基準レンズ520の焦点位置から送信され、基準レンズ520に入射後に出射される平行な電磁束よりも拡がるように構成されている。本実施の形態では、電磁束制御部材120の入射面121および/または出射面122の形状が、基準レンズ520の基準入射面521または基準出射面522とわずかに異なる。電磁束制御部材120の入射面121または出射面122は、以下の条件を満たすように設定されることが好ましい。
【0034】
まず、基準入射面521の頂点曲率半径の絶対値と、基準出射面522の頂点曲率半径の絶対値とを比較する。ここで、頂点曲率半径とは、基準入射面521、基準出射面522、入射面121または出射面122の頂点における曲率半径を意味する。なお、入射面121が平面における頂点とは入射面121の中心を意味し、平面の曲率半径は無限大とする。す基準入射面521の頂点曲率半径の絶対値が、基準出射面522の頂点曲率半径の絶対値よりも大きい場合には、入射面121の頂点曲率半径は、基準入射面521の頂点曲率半径と同一である。すなわち、本実施の形態では、出射面122の形状が基準出射面522とわずかに異なる。
【0035】
本実施の形態では、基準レンズ520の基準入射面521は平面であり、基準出射面522は凸面である。すなわち、本実施の形態では、基準入射面521の頂点曲率半径の絶対値(無限大)は、基準出射面522の頂点曲率半径の絶対値よりも大きい。この場合には、凸面である出射面122の頂点曲率半径の絶対値は、基準出射面522の頂点曲率半径の絶対値よりも大きいことが好ましい。言い換えると、出射面122の頂点における曲率の絶対値は、基準出射面522の頂点における曲率の絶対値よりも小さいことが好ましい。
【0036】
なお、本実施の形態では、頂点における曲率半径の絶対値を使用したが、任意の点同士の曲率半径の絶対値を比較してもよいし、所定の領域における曲率半径の絶対値を比較してもよい。
【0037】
(変形例)
次に、本実施の形態における変形例の送信モジュールについて説明する。なお、変形例の送信モジュールは、電磁束制御部材220の構成のみが実施の形態1の通信モジュール100と異なる。そこで、電磁束制御部材220の構成のみについて説明し、本実施の形態1と同様の構成については、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
図5Aは、基準レンズ620における電磁束の光路図であり、図5Bは、変形例における電磁束の光路図である。
【0039】
図5A、Bに示されるように、本変形例における電磁束制御部材220は、入射面221と、出射面222と、を有する。本変形例では、入射面221は凹面であり、かつ出射面222は凸面である。
【0040】
変形例における基準レンズ620は、基準入射面621と、基準出射面622とを含む。なお、変形例では、基準入射面621は凹面であり、基準出射面622は凸面である。変形例においても、基準レンズ620の基準出射面622から出射される電磁束は、平行である。
【0041】
変形例において、基準出射面622の頂点曲率半径の絶対値が、基準入射面621の頂点曲率半径の絶対値よりも大きい場合には、出射面222の頂点曲率半径は、基準出射面622の頂点曲率半径と同一である。すなわち、この場合、入射面221の形状が基準入射面621とわずかに異なる。具体的には、凹面である入射面221の頂点曲率半径の絶対値は、基準入射面621の頂点曲率半径の絶対値よりも大きいことが好ましい。言い換えると、入射面221の頂点における曲率の絶対値は、基準入射面621の頂点における曲率の絶対値よりも小さいことが好ましい。
【0042】
(効果)
本実施の形態に係る通信モジュール100によれば、電磁束制御部材120、220から出射される電磁束が拡がるように制御されるため、一次放射器110に対して電磁束制御部材120、220が位置ずれした場合であっても結合損失の低下を抑制できる。
【0043】
[実施の形態2]
(通信モジュールの構成)
次に、実施の形態2に係る送信モジュール400について説明する。本実施の形態に係る通信モジュール400は、電磁束制御部材420の構成が実施の形態1に係る通信モジュール100と異なる。そこで、本実施の形態では、電磁束制御部材420を主として説明する。また、実施の形態1の通信モジュール100と同じ構成については、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図6は、実施の形態2に係る通信モジュール400の構成を示す図である。図7A~Cは、実施の形態2に係る電磁束制御部材420の構成を示す図である。
【0045】
図6に示されるように、通信モジュール400は、一次放射器110と、電磁束制御部材420とを有する。本実施の形態では、送信モジュールとしての通信モジュール100は、一次放射器110と、電磁束制御部材420とを有する。一方、受信モジュールとしての通信モジュール100は、電磁束制御部材420と、受信部130とを有する。
【0046】
図7A~Cに示されるように、電磁束制御部材420は、入射面421と、出射面422とを有している。入射面421または出射面422には、整合層424が配置されている。なお、本実施の形態は、入射面421および出射面422に整合層424が配置されている。
【0047】
整合層424を除く入射面421は、平面でもよいし、凹面でもよい。本実施の形態では、整合層424を除く入射面421は、平面である。また、整合層424を除く出射面422は、凸面である。
【0048】
整合層424は、電磁束の反射を抑制する。整合層424の構成は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。整合層424は、電磁束を反射するための反射膜でもよいし、複数の凸部425でもよい。本実施の形態では、入射面421および出射面422には、整合層424として複数の凸部425が配置されている。すなわち、入射面421には平面上に複数の凸部425が配置されており、出射面422には凸曲面上に複数の凸部425が配置されている。
【0049】
凸部425が設けられている部分は、空気と、凸部425を構成する樹脂などの材料と、が混在している層となる。これにより、当該層は、空気の屈折率と当該材料の屈折率との間の屈折率をもつ層として機能する。そのため凸部425によって、入射面421に入射する電磁束、および、出射面422から出射する電磁束が急激な屈折率の変化によって反射することが抑制される。
【0050】
凸部425の形状は、上記機能を発揮できれば特に制限されない。凸部425の形状は、電磁束制御部材420の表面(入射面421または出射面422)から離れても大きさが変わらない形状(例えば、柱体)であってもよいし、大きさが変化する形状(例えば、錐体または錐台)であってもよい。しかし、屈折率の変化を緩やかにするという観点からは、凸部425は電磁束制御部材420の表面から離れるにつれて、細くなる形状を有することが好ましい。
【0051】
凸部425の形状の例には、角柱、円柱、角錐、円錐、角錐台、円錐台等が含まれる。これらの内で、屈折率の変化を緩やかにするという観点からは、角錐、円錐、角錐台、円錐台が好ましい。
【0052】
凸部425の大きさは、反射を防止したい電磁波の波長に合わせて適宜選択されればよい。例えば、周波数300GHz帯の場合、平面視したときの凸部425の最大の長さは、200~500μm程度であり、凸部425の高さは200~500μm程度であればよい。また、たとえば周波数100GHz帯の場合、平面視したときの凸部425の最大の長さは、600~1500μm程度であり、凸部425の高さは600~1500μm程度であればよい。また、凸部425の大きさは、電磁波の波長の半分以下であり、加工限界以上であることが好ましい。
【0053】
また、凸部425は、離型性をよくするという観点から、2つの面の角度が90°以下の辺を有さない形状であることが好ましい。この観点から、凸部は、面取りされている角柱形状、面取りされている角錐台形状、面取りされている角錐形状などが好ましい。面取りは、凸部425の上面および/または付け根にあることが好ましい。面取りの例には、C面取り、R面取りが含まれる。
【0054】
なお、本実施の形態では、凸部425は、8つの辺がR面取りされた四角柱である。
【0055】
(効果)
本実施の形態に係る通信モジュール400は、実施の形態1の通信モジュールと同様の効果を有する。また、本実施の形態に係る通信モジュール400は、整合層424を有するため、より電磁束の反射を防止できる。
【0056】
[シミュレーション]
次に、通信モジュールにおける結合損失について調べた。
【0057】
一次放射器110と、一次放射器110から送信された電磁束を受信するための受信部130との間隔を5mとし、一次放射器110と、受信器131を有する受信部130とは、同じ構成のモジュールであり、一次放射器110を基準レンズの焦点位置よりも電磁束制御部材120の近くに配置したとき、一次放射器110から送信され受信部130で受信した電磁束の結合損失は、0~-61dBの範囲内が好ましい。また、一次放射器110と、一次放射器110から送信された電磁束を受信するための受信部130とを一定距離離間させ、一次放射器110と、受信器131を有する受信部130とは、同じ構成のモジュールを使用し、一次放射器110を基準レンズ520の焦点位置よりも電磁束制御部材120の近くに配置したとき、一次放射器110から送信され受信部130で受信した電磁束の結合損失は、0~-61dBの範囲内が好ましい。
【0058】
一次放射器110および受信部130の間の距離が異なる場合の結合損失について調べた。電波源111から送信される電磁束の周波数は、270GHzとした。一次放射器110の第1アンテナ112および受信部130の第2アンテナ132として、270GHz用のホーンアンテナを使用した。一次放射器110および受信部130の間の距離は、300、500、1000、2000、5000、8000、10000mmとした。なお、本シミュレーションでは、電磁束制御部材を使用していない。
【0059】
図8A、Bは、一次放射器110および受信部130の間の距離と、電磁束の結合損失との関係を説明するための図である。図8Aは、本シミュレーションの装置構成を示す図であり、図8Bは、シミュレーション結果を示すグラフである。図8Bの横軸は一次放射器110および受信部130の間の距離L1(mm)を示しており、縦軸は結合損失(dB)を示している。図8A、Bに示されるように、一次放射器110および受信部130の間の距離L1が長くなるほど、結合損失が大きくなることがわかる。
【0060】
次に、一次放射器110が平面方向(図9AのY方向)に位置ずれしたときの結合損失に与える影響について調べた。電波源111から送信される電磁束の周波数は、270GHzとした。第1アンテナ112および第2アンテナ132として、270GHz用のホーンアンテナを使用した。一次放射器110のずれ量は、1.0、5.0、10、50、100、500mmとした。一次放射器110および受信部130の間の距離は、5000mmとした。なお、本シミュレーションでは、電磁束制御部材を使用していない。
【0061】
図9A、Bは、一次放射器110のずれ量と、電磁束の結合損失との関係を説明するための図である。図9Aは、本シミュレーションの装置構成を示す図であり、図9Bは、シミュレーション結果を示すグラフである。図9Bの横軸は一次放射器110のずれ量L2(mm)を示しており、縦軸は結合損失(dB)を示している。図9A、Bに示されるように、一次放射器110の位置ずれが大きくなるほど、結合損失が大きくなることがわかる。
【0062】
次に、結合損失に対する電磁束制御部材120、420の影響について調べた。電波源111から送信される電磁束の周波数は、270GHzとした。第1アンテナ112および第2アンテナ132として、270GHz用のホーンアンテナを使用した。一次放射器110および受信部130の間の距離は、5000mmとした。電磁束制御部材として、整合層424を有していない電磁束制御部材120(実施の形態1)、入射面421および出射面422に整合層424を有する電磁束制御部材420(実施の形態2)、出射面422にのみ整合層424を有する電磁束制御部材420(実施の形態2)を使用した。なお、電磁束制御部材120、420は、送信側のみに配置した。
【0063】
基準レンズ520の基準出射面522における頂点の曲率半径は、-0.790240706(m)であり、基準出射面521は、平面である。曲率は-1.25940766(m―1)であり、コーニック定数は-1.5217366である。なお、基準レンズ520は、上述の非特許文献1に基づいて設定した。
【0064】
図10A、Bは、結合損失に対する電磁束制御部材の影響を説明するための図である。図10Aは、シミュレーションに使用した装置構成を説明するための図であり、図10Bシミュレーション結果を示すグラフである。図10Bの縦軸は、結合損失(dB)を示している。なお、本シミュレーションでは、一次放射器110と、電磁束制御部材120、420と、受信部130とは、同軸上に配置されており、電磁束制御部材120、420の焦点位置に一時放射器110の上側開口部が位置するように配置されている。
【0065】
図10A、Bに示されるように、電磁束制御部材120を配置することで結合損失の低下を抑制した。また、出射面422に整合層424を配置することで、結合損失の低下をさらに抑制し、出射面422および入射面421に整合層424を配置することで、結合損失の低下は、さらに抑制された。
【0066】
次に、結合損失に対する基準レンズ520、電磁束制御部材120、420の位置ずれの影響について調べた。電波源111から送信される電磁束の周波数は、270GHzとした。第1アンテナ112および第2アンテナ132として、270GHz用のホーンアンテナを使用した。一次放射器110および受信部130の間の距離は、5000mmとした。電磁束制御部材として、基準レンズ520、整合層424を有していない電磁束制御部材120(実施の形態1)、入射面421および出射面422に整合層424を有する電磁束制御部材420(実施の形態2)を使用した。なお、本シミュレーションでは、一次放射器110と、電磁束制御部材120、420と、受信部130とは、同軸上に配置されており、電磁束制御部材120、420の焦点位置に一時放射器110の上側開口部が位置するように配置されている。なお、基準レンズ520は、上述の非特許文献1に基づいて設定した。
【0067】
図11A、Bは、結合損失に対する基準レンズ520、電磁束制御部材120、420の位置ずれの影響を説明するための図である。図11Aは、シミュレーションに使用した装置構成を説明するための図である。図11Bシミュレーション結果を示すグラフである。図11Bの横軸は基準レンズ520、電磁束制御部材120、420のずれ量L3(mm)を示しており、縦軸は結合損失(dB)を示している。図11Bの黒丸シンボルの実線は基準レンズ520の結果を示しており、白抜きシンボルの実線は整合層424を有していない電磁束制御部材120(実施の形態1)の結果を示しており、白抜きシンボルの破線は、入射面421および出射面422に整合層424を有する電磁束制御部材420(実施の形態2)の結果を示している。
【0068】
図11A、Bに示されるように、実施の形態1に係る電磁束制御部材120(白抜きシンボルの実線)は、基準レンズ520(黒丸シンボルの実線)と比較して、位置ずれした場合であっても結合損失の低下を抑制できることがわかった。また、実施の形態2に係る電磁束制御部材420(白抜きシンボルの破線)は、基準レンズ520および電磁束制御部材120と比較して、位置ずれした場合であっても結合損失の低下をさらに抑制した。
【0069】
次に、結合損失に対する出射面122、422の曲率半径の影響について調べた。電波源111から送信される電磁束の周波数は、270GHzとした。第1アンテナ112および第2アンテナ132として、270GHz用のホーンアンテナを使用した。一次放射器110および受信部130の間の距離は、5000mmとした。電磁束制御部材として、入射面121が平面であって、出射面122の頂点曲率半径が-11mまたは-12mであって、入射面121および出射面122に整合層を有しない電磁束制御部材120(実施の形態1)、入射面421および出射面422に整合層424を有する電磁束制御部材420(実施の形態2)を使用した。
【0070】
図12A、Bは、シミュレーション結果を示すグラフである。図12A、Bの横軸は電磁束制御部材120、420のずれ量L3(mm)を示しており、縦軸は結合損失(dB)を示している。図12A、Bの実線は、曲率半径が-11の電磁束制御部材120の結果を示しており、点線は、曲率半径が-12の電磁束制御部材420の結果を示している。
【0071】
図12A、Bに示されるように、整合層424を有する電磁束制御部材420は、整合層424を有さない電磁束制御部材120と比較して、一次放射器110に対して電磁束制御部材が位置ずれした場合であっても結合損失の低下を抑制した。また、曲率半径が-12の電磁束制御部材420は、曲率半径が-11の電磁束制御部材120と比較して、一次放射器110に対して電磁束制御部材が位置ずれした場合であっても結合損失の低下を抑制した。すなわち、曲率半径が大きいほど、一次放射器110に対して電磁束制御部材が位置ずれした場合であっても結合損失の低下を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の通信モジュールおよびそれに用いられる電磁束制御部材は、例えば、無線通信や光学分野において有用である。
【符号の説明】
【0073】
100、400 通信モジュール
110 一次放射器
111 電波源
112 第1アンテナ
120、220、420 電磁束制御部材
121、221、421 入射面
122、222、422 出射面
123 側面
130 受信部
131 受信器
132 第2アンテナ
424 整合層
425 凸部
520、620 基準レンズ
521、621 基準入射面
522、622 基準出射面
CA 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12