(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096636
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】加飾シート及び加飾ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240709BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20240709BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240709BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240709BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240709BHJP
G02F 1/15 20190101ALN20240709BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G02F1/1334
G02F1/13 505
G02F1/1347
B32B7/023
G02F1/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000278
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】代工 康宏
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2K101
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H088EA32
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H088MA01
2H189AA04
2H189AA22
2H189BA04
2H189HA16
2H189JA03
2H189LA01
2H189MA15
2K101AA22
2K101EJ11
2K101EK02
4F100AK01A
4F100AR00A
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100GB41
4F100HB00A
4F100HB00B
4F100HB00C
4F100HB31
4F100JA11A
4F100JL10B
4F100JL10C
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100JN08A
4F100YY00B
4F100YY00C
5G435AA00
5G435BB12
5G435HH02
5G435KK02
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】ディスプレイに表示された情報の視認性を向上させることができる加飾シート及びそれを用いた加飾ディスプレイを提供する。
【解決手段】加飾シートは、光制御層と、2つの印刷層とを備える。光制御層は、絵柄が形成され、入射光を透過させる透過性と入射光を反射する反射性とを切り替えるように制御される。2つの印刷層は、光制御層の両面にそれぞれ設置され、入射光を透過させる透過性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絵柄が形成され、入射光を透過させる透過性と入射光を反射する反射性とを切り替えるように制御される光制御層と、
前記光制御層の両面にそれぞれ設置された、入射光を透過させる透過性を有する2つの印刷層と、
を具備する加飾シート。
【請求項2】
前記2つの印刷層のそれぞれの色は、互いに補色の関係にある、
請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記光制御層は、高分子ネットワーク液晶層又は高分子分散液晶層であり、
前記絵柄は、高分子ネットワークによって形成される又は高分子の分散によって形成されている、
請求項1に記載の加飾シート。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の加飾シートと、
前記加飾シートの背面に設置されたディスプレイと、
を具備する加飾ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾シート及び加飾ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の内装等における意匠性を損なわずに機能性を付加するために自動車等の内装に加飾ディスプレイを使用することが提案されている。加飾ディスプレイは、絵柄が印刷された加飾シートの背面にディスプレイを設置することで構成されている。加飾ディスプレイでは、通常は加飾シートに印刷された絵柄が認識され、必要な際には加飾シートの背面のディスプレイに表示された情報が加飾シート越しに認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加飾ディスプレイでは、例えば外光下において加飾シートの絵柄とディスプレイに表示された情報とが重なってしまってディスプレイに表示された情報が見えづらくなることがある。
【0005】
本開示は、ディスプレイに表示された情報の視認性を向上させることができる加飾シート及びそれを用いた加飾ディスプレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の加飾シートは、光制御層と、2つの印刷層とを備える。光制御層は、絵柄が形成され、入射光を透過させる透過性と入射光を反射する反射性とを切り替えるように制御される。2つの印刷層は、光制御層の両面にそれぞれ設置され、入射光を透過させる透過性を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ディスプレイに表示された情報の視認性を向上させることができる加飾シート及びそれを用いた加飾ディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る加飾ディスプレイの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、加飾シートの構成を示す模式図である。
【
図5A】
図5Aは、光制御層に電圧が印加されていないときの動作を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、光制御層に電圧が印加されたときの動作を示す図である。
【
図6】
図6は、絵柄の形成方法についての概念図である。
【
図7】
図7は、加飾ディスプレイの動作を示すフローチャートである。
【
図8A】
図8Aは、光制御層への印加電圧とディスプレイの表示がともにオフであるときの加飾ディスプレイの動作を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、光制御層への印加電圧とディスプレイの表示がともにオフであるときの加飾ディスプレイの表示を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、光制御層への印加電圧とディスプレイの表示がともにオンであるときの加飾ディスプレイの動作を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、光制御層への印加電圧とディスプレイの表示がともにオンであるときの加飾ディスプレイの表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。ただし、図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
図1は、実施形態に係る加飾ディスプレイの構成を示す斜視図である。
図1に示すように、加飾ディスプレイ1は、加飾シート2とディスプレイ11とを有する。ディスプレイ11は、加飾シート2の背面に設置され、各種の情報を表示する。ディスプレイ11は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ等の任意のディスプレイであり得る。また、ディスプレイ11は、加飾ディスプレイ1において情報を表示できるサイズの画面を有していればよい。すなわち、ディスプレイ11の画面サイズは、必ずしも加飾シート2の最も面積の広い面である主面のサイズと一致している必要はない。
図1では、ディスプレイ11の画面サイズが加飾シート2の主面のサイズよりも小さい例が示されている。また、
図1では、加飾シート2とディスプレイ11との間に空間が設けられている。一方で、ディスプレイ11は、加飾シート2に接するように設置されていてもよい。
【0011】
以下、実施形態に係る加飾シートについて説明する。
図2は、加飾シート2の構成を示す模式図である。加飾シート2は、基材層3と、印刷層21と、印刷層22とを有する。加飾シート2には、絵柄が形成されている。加飾ディスプレイ1を見るユーザは、通常時は加飾シート2に形成された絵柄を視認し得る。
【0012】
印刷層21は基材層3の1つの主面に設置される。印刷層22は、基材層3のもう1つの主面に設置される。すなわち、基材層3は、印刷層21と印刷層22とによって挟まれている。ここで、
図2では、基材層3と、印刷層21と、印刷層22の主面のサイズが異なっていて、基材層3と印刷層22が外部に露出しているように図示されている。実際には、基材層3と、印刷層21と、印刷層22の主面のサイズは同じである。
【0013】
図3は、基材層3の構成を示す断面図である。基材層3は、電極基板31と、電極基板32と、光制御層4とを有し、光制御素子として動作し得る。
図3に示すように、光制御層4は、電極基板31と電極基板32との間に形成され、電極基板31と電極基板32との間に発生した電圧が印加されるように構成されている。
【0014】
電極基板31は、透明基板311に透明電極312が形成されることで構成されている。同様に、電極基板32は、透明基板321に透明電極322が形成されることで構成されている。透明基板311、321は、ガラス及びプラスチックフィルム等の任意の透明性の高い基材によって構成された基板である。透明電極312、322は、酸化インジウム錫(ITO)電極等の任意の透明電極である。
【0015】
図4Aは、電極基板31の構成を示す上面図である。
図4Bは、電極基板32の構成を示す上面図である。
【0016】
図4Aに示すように、透明電極312は、透明基板311の光制御層4と対向する主面に形成される。透明電極312は、スパッタリング法及び蒸着法等による堆積膜、インクジェット方式等による印刷膜として透明基板311の上に所望の形状で形成される。同様に、
図4Bに示すように、透明電極322は、透明基板321の光制御層4と対向する主面に、光制御層4を挟んで透明電極312と対向するように形成される。透明電極322は、スパッタリング法及び蒸着法等による堆積膜、インクジェット方式等による印刷膜として透明基板321の上に透明電極311と同じ形状で形成される。
【0017】
透明電極312からは、図示しない加飾ディスプレイ1の制御装置への導電接続を確保するための配線が透明基板311の外部に向けて引き出されている。同様に、透明電極322からは、図示しない加飾ディスプレイ1の制御装置への導電接続を確保するための配線が透明基板321の外部に向けて引き出されている。加飾ディスプレイ1の制御装置は、例えばプロセッサとメモリとを含むコンピュータであり得る。加飾ディスプレイ1の制御装置は、加飾ディスプレイ1と一体的に設けられていてもよいし、一体的に設けられていなくてもよい。例えば、加飾ディスプレイ1が自動車の内装に用いられる場合には、加飾ディスプレイ1の制御装置は、自動車の制御装置と一体で設けられていてよい。この場合、加飾ディスプレイ1の制御装置は、自動車のボタン及びスイッチ等の操作に基づいて加飾ディスプレイ1を制御するように構成されてよい。また、加飾ディスプレイ1の制御装置が加飾ディスプレイ1と一体的に設けられる場合、加飾ディスプレイ1の制御装置は、例えばディスプレイ11の内部に設けられてよい。この場合、加飾ディスプレイ1の制御装置は、加飾ディスプレイ1に設けられたボタン及びスイッチの操作、又はリモートコントローラ等を用いた遠隔からの操作に基づいて加飾ディスプレイ1を制御するように構成されてよい。
【0018】
ここで、
図4A及び
図4Bの例では、透明電極312と透明電極322とで配線の引き出し方向が異なっている。透明電極312と透明電極322とで配線の引き出し方向が同一方向であってもよい。
【0019】
また、透明電極312と透明電極322の形状は、
図4A及び
図4Bで示した矩形状の他に、円形状、多角形状等の各種の絵柄等の任意の形状を取り得る。一方で、透明電極312と透明電極312のサイズは、少なくともディスプレイ11における情報の表示領域以上のサイズを有していることが望ましい。
【0020】
光制御層4は、入射光を透過させる透過性と入射光を反射する反射性とを任意に切り替えるように制御できる層である。例えば、光制御層4として、高分子ネットワーク(PN)液晶が用いられ得る。PN液晶は、高分子材料からなる3次元網目構造を有する高分子ネットワーク中に連続相を有する液晶材料を満たした複合体からなる。高分子材料としては光硬化樹脂が用いられ得る。PN液晶は、例えば液晶材料、光重合型の高分子前駆体(モノマー)及び重合開始剤の混合液に紫外線を照射することで光重合相分離を誘起させ、液晶分子が分散した3次元網目状の高分子ネットワークを形成することによって構成される。
【0021】
図5A及び
図5Bは、光制御層4の動作を示す図である。
図5Aは、光制御層4に電圧が印加されていないときの動作を示す。
図5Bは、光制御層4に電圧が印加されたときの動作を示す。
【0022】
光制御層4に電圧が印加されていないとき、高分子ネットワーク中に分散したそれぞれの液晶分子は、ランダムに配列している。この場合、
図5Aに示すように、光制御層4への入射光は、光制御層4の光入射面及び光出射面において散乱する。このとき、光制御層4は、白濁した状態として観察者であるユーザによって視認される。
【0023】
一方、光制御層4に電圧が印加されたとき、高分子ネットワーク中に分散したそれぞれの液晶分子は、電極基板31と電極基板32の間に形成される電界の方向に沿って配列する。この場合、
図5Bに示すように、光制御層4への入射光は、光制御層4を透過する。このとき、光制御層4は、透明な状態として観察者であるユーザによって視認される。
【0024】
このようにして、光制御層4に印加する電圧のオン/オフが切り替えられることにより、光制御層4は、透過性と反射性とを任意に切り替えることができる層として動作し得る。なお、光制御層4に印加する電圧のオン/オフの切り替えの制御は、図示しない加飾ディスプレイ1の制御装置によって行われる。
【0025】
ここで、光制御層4はPN液晶層として説明しているが、光制御層4は透過性と反射性とを任意に切り替えることができる層であればPN液晶層以外であってもよい。例えば、光制御層4として高分子分散(PD)液晶が用いられてもよい。この他、光制御層4としてエレクトロクロミック層が用いられてもよい。エレクトロクロミック層は、金属イオンを溶解させた電解液に電荷を注入することで、酸化還元反応により電解液中の金属イオンが析出したり溶解したりする現象を利用した光制御層である。
【0026】
次に、基材層3における絵柄の形成方法について説明する。実施形態においては、光制御層4の重合を制御することによって基材層3に所望の絵柄が形成される。以下、
図6を参照して具体的に説明する。
図6は、絵柄の形成方法についての概念図である。
【0027】
絵柄の形成は、例えば電極基板31と電極基板32との間に光制御層4を形成するための液晶材料、モノマー及び重合開始剤の混合液が充填された状態で行われる。絵柄の形成に際しては、
図6に示すように、基材層3の上にマスク51が設置される。ここで、
図6では、基材層3から離れた位置にマスク51が設置されるように示されているが、マスク51は基材層3に接するように設置されてもよい。
【0028】
マスク51は、透明部と不透明部とを有する。透明部は、重合に用いられる波長帯の光を透過させる部分である。一方、不透明部は、重合に用いられる波長帯の光を反射又は吸収することによって透過させない部分である。重合に用いられる波長帯の光は、例えば紫外線光である。
【0029】
マスク51には、透明部と不透明部の組み合わせによって絵柄に応じた所望のパターンが形成されている。例えば、基材層3に木目調の絵柄が形成される場合には、マスク51には、透明部と不透明部とによって木目状のパターンが形成されている。
【0030】
基材層3の上にマスク51が設置された後、マスク51の上面から紫外線照射装置52によって紫外線光が照射される。マスク51の透明部に照射された紫外線光は、透明部を通過して基材層3に到達する。一方、マスク51の不透明部に照射された紫外線光は、不透明部を透過できずに基材層3に到達しない。この結果、光制御層4における透明部と対応する部分では重合が起こり、不透明部と対応する部分では重合が起こらない。したがって、基材層3の光制御層4には、マスク51のパターンに応じた高分子ネットワークが形成される。光制御層4に電圧が印加されていないときには、高分子ネットワークが形成されている部分とされていない部分とで白濁の濃度差が生じる。この白濁の濃度差により、基材層3には所望の絵柄が形成され得る。
【0031】
ここで、マスク51に形成されるパターンは、透明部と不透明部とによる2値のパターンに限るものではない。透明部又は不透明部における光の透過度が適切に調整されることによって3値以上の多値のパターンも形成され得る。
【0032】
次に、印刷層21及び印刷層22について説明する。実施形態における基材層3は、光重合によって形成される高分子ネットワークによって絵柄を形成している。この場合、基材層3に形成される絵柄は、無彩色である。印刷層21及び印刷層22は、絵柄を着色するために設置される。
【0033】
実施形態において印刷層21と印刷層22とは、例えば光透過性を有する一様な色の印刷層である。実施形態において、印刷層21の色と印刷層22の色とは補色の関係にあることが望ましい。補色の関係にある色とは、例えば、L*a*b*表色系であればa*b*平面において互いに点対称の関係にある色である。なお、印刷層21と印刷層22の色は必ずしもL*a*b*表色系で決められる必要はない。印刷層21と印刷層22の色は、XYZ表色系、L*u*v*表色系といった他の表色系によって決められてもよい。
【0034】
ここで、印刷層21と印刷層22とは必ずしも一様な色を有していなくてもよい。例えば、ディスプレイ11の画面を構成する画素毎又はディスプレイ11の画面の領域毎に印刷層21及び印刷層22の色が決められてもよい。この場合であっても印刷層21と印刷層22との同一箇所の色は、互いに補色の関係を有していることが望ましい。
【0035】
以下、実施形態における加飾ディスプレイ1の動作を説明する。
図7は、加飾ディスプレイ1の動作を示すフローチャートである。
図7の動作は、加飾ディスプレイ1の制御装置によって制御される。
【0036】
ステップS1において、加飾ディスプレイ1の制御装置は、加飾ディスプレイ1に情報を表示するか否かを判定する。例えば、ユーザによる操作によって情報を表示することが指示された場合、情報を表示する時間の条件が満たされた場合、情報を表示する場所の条件が満たされた場合といった各種の条件が満たされた場合には、情報を表示すると判定されてよい。ステップS1において、加飾ディスプレイ1に情報を表示しないと判定されたときには、処理はステップS2に移行する。ステップS1において、加飾ディスプレイ1に情報を表示すると判定されたときには、処理はステップS4に移行する。
【0037】
ステップS2において、加飾ディスプレイ1の制御装置は、光制御素子としての基材層3の光制御層4への印加電圧をオフにする。ステップS3において、加飾ディスプレイ1の制御装置は、ディスプレイ11の表示をオフにする。その後、処理はステップS6に移行する。
【0038】
図8Aは、光制御層4への印加電圧とディスプレイ11の表示がともにオフであるときの加飾ディスプレイ1の動作を示す図である。前述したように、光制御層4への電圧の印加がない場合、高分子ネットワーク中に分散したそれぞれの液晶分子は、ランダムに配列している。この結果、外光等の光制御層4への入射光は、光制御層4の光入射面において散乱する。この光制御層4の光入射面からの散乱光は、光制御層4の上層に設置された印刷層22を通過した後、観察者であるユーザOの目まで到達する。
【0039】
このため、ユーザOは、
図8Bで示すように、加飾ディスプレイ1の全面において絵柄を認識し得る。ここで、散乱光は印刷層22を通過しているので、ユーザは、印刷層22の色で着色された状態の絵柄IM1を認識し得る。
【0040】
ステップS4において、加飾ディスプレイ1の制御装置は、光制御素子としての基材層3の光制御層4への印加電圧をオンにする。ステップS5において、加飾ディスプレイ1の制御装置は、ディスプレイ11の表示をオンにする。その後、処理はステップS6に移行する。
【0041】
図9Aは、光制御層4への印加電圧とディスプレイ11の表示がともにオンであるときの加飾ディスプレイ1の動作を示す図である。前述したように、光制御層4への電圧の印加がある場合、基材層3における透明電極312と透明電極322との対向部分における液晶分子は、電界の方向に沿って配列する。この結果、透明電極312と透明電極322との対向部分は透明になり、透明電極312と透明電極322の対向部分に到達する表示光は、光制御層4を透過して観察者であるユーザOの目まで到達する。
【0042】
このため、ユーザOは、
図9Bで示すように、加飾ディスプレイ1の透明電極312と透明電極322との対向部分の領域において情報の映像IM2を認識し、その他の部分において印刷層22の色で着色された状態の絵柄IM1を認識し得る。ここで、透明電極312と透明電極322との対向部分は透明になっているので、ディスプレイ11に表示された情報が絵柄と重なることはない。これによって、ユーザは、ディスプレイ11に表示された情報を鮮明な状態として認識し得る。
【0043】
また、光制御層4への印加電圧がオンであるときにユーザOの目まで到達するディスプレイ11からの表示光は、印刷層21と印刷層22の双方を通過するため、印刷層21の色と印刷層22の色の双方で着色されることになる。しかしながら、印刷層21の色と印刷層22の色は補色の関係にあるので、ディスプレイ11からの表示光は着色されていないのと同様の状態でユーザの目に到達する。したがって、ディスプレイ11の情報は、印刷層21及び22の色の影響を受けない。これによっても、ユーザは、ディスプレイ11に表示された情報を鮮明な状態として認識し得る。
【0044】
ステップS6において、加飾ディスプレイ1の制御装置は、処理を継続するか否かを判定する。例えば、加飾ディスプレイ1の電源がオンされている間は、処理を継続すると判定される。ステップS6において、処理を継続すると判定されたときには、処理はステップS1に戻る。ステップS6において、処理を継続しないと判定されたときには、
図7の処理は終了する。
図7の処理が終了した後は、加飾ディスプレイ1の電源が再びオンされるまで、加飾ディスプレイ1の表面には絵柄が表示され続けることになる。
【0045】
以上説明したように実施形態によれば、透過性と反射性とを任意に切り替えることができる光制御層の両面に印刷層が設置された加飾シートが加飾ディスプレイに用いられる。透過性と反射性とを任意に切り替えることができることにより、加飾シートの背面に配置されるディスプレイの表示は、加飾シートの絵柄と重ならない。これにより、絵柄とディスプレイに表示された情報の視認性が向上する。
【0046】
さらに、光制御層の両面に設置される印刷層の色は、互いに補色の関係にある。このため、ディスプレイの表示は、絵柄の色に影響されない。これによっても、ディスプレイに表示された情報の視認性が向上する。ここで、ディスプレイに表示された情報の視認性の低下はあるものの、ディスプレイに表示された情報が着色されてもよいのであれば、印刷層の色は補色の関係にある必要はない。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0048】
1 加飾ディスプレイ、2 加飾シート、3 基材層、4 光制御層、11 ディスプレイ、21 印刷層、22 印刷層、31 電極基板、32 電極基板、51 マスク、52 紫外線照射装置、311 透明基板、312 透明電極、321 透明基板、322 透明電極。