(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096640
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、フィルム及び物品
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240709BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240709BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/48
C08G18/67
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000288
(22)【出願日】2023-01-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】早崎 直哉
(72)【発明者】
【氏名】西村 卓真
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 成相
【テーマコード(参考)】
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC50
4J034DG03
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4J127BF161
4J127BF16X
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4J127CC091
4J127CC251
4J127CC291
4J127EA12
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】伸び特性に優れ、かつ、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性のすべてに優れる硬化塗膜を形成することが可能な硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)を含み、ウレタン(メタ)アクリレート(X)は少なくとも、イソシアネートに由来する構造単位と、3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールに由来する構造単位と、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位とを含み、アクリルアミド誘導体(Y)は分子量が300以下であり、かつ、アクリロイル基中の酸素原子以外に少なくとも1個の酸素原子を含む化合物であり、ウレタン(メタ)アクリレート(X)と、アクリルアミド誘導体(Y)との質量比X/Yが1/10~7.5/10である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)は少なくとも、
イソシアネートに由来する構造単位と、
3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールに由来する構造単位と、
少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位と、
を含み、
前記アクリルアミド誘導体(Y)は分子量が300以下であり、かつ、アクリロイル基中の酸素原子以外に少なくとも1個の酸素原子を含む化合物であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)と、前記アクリルアミド誘導体(Y)との質量比X/Yが1/10~7.5/10である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリルアミド誘導体(Y)は、分子中に環状部位を有する、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状部位は、酸素原子を有する、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記イソシアネートが芳香族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する、硬化塗膜。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化塗膜を有する、フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルムを有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、フィルム及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂を含む硬化性組成物は、例えば、光照射等によって硬化させることで、硬化塗膜を形成することができる。斯かる硬化塗膜は、例えば、PETフィルム等に形成することができ、フィルムの物性を向上させることができる。とりわけ、ポリウレタン樹脂を含む硬化性組成物から形成される硬化塗膜は、ポリウレタン樹脂を含むことから、機械的性質、耐溶剤性、耐水性等に優れ、幅広い分野での使用が可能となる。
【0003】
特許文献1には、ポリカプロラクトン系ポリオールと、ポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートと、1以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物が開示されている。斯かる硬化型樹脂組成物は、硬化後の樹脂の高温での耐クラック性及び伸縮性等の機械特性に優れる材料(フィルム等)を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えば、各種フィルム分野においては、成形性(フィルムの伸びの性能)のみならず、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性の各性能がすべて良好であるフィルム材料が強く望まれている。この観点から、それらの各性能をバランス良く満たすフィルムを形成するために好適に使用することができる硬化性樹脂組成物の提供が急務となっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、伸び特性に優れ、かつ、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性のすべてに優れる硬化塗膜を形成することが可能な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて得られるフィルム並びに物品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のウレタン(メタ)アクリレート及び特定のアクリルアミド誘導体を使用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
ウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)は少なくとも、
イソシアネートに由来する構造単位と、
3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールに由来する構造単位と、
少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位と、
を含み、
前記アクリルアミド誘導体(Y)は分子量が300以下であり、かつ、アクリロイル基中の酸素原子以外に少なくとも1個の酸素原子を含む化合物であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)と、前記アクリルアミド誘導体(Y)との質量比X/Yが1/10~7.5/10である、硬化性樹脂組成物。
項2
前記アクリルアミド誘導体(Y)は、分子中に環状部位を有する、項1に記載の硬化性樹脂組成物。
項3
前記環状部位は、酸素原子を有する、項2に記載の硬化性樹脂組成物。
項4
前記イソシアネートが芳香族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
項5
項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する、硬化塗膜。
項6
項5に記載の硬化塗膜を有する、フィルム。
項7
項6に記載のフィルムを有する、物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物は、伸び特性に優れ、かつ、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性のすべてに優れる硬化塗膜を形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)を含む。前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)は少なくとも、イソシアネートに由来する構造単位と、3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールに由来する構造単位と、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位とを含む。前記アクリルアミド誘導体(Y)は分子量が300以下であり、かつ、アクリロイル基中の酸素原子以外に少なくとも1個の酸素原子を含む化合物である。また、本発明の硬化性樹脂組成物において、前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)と、前記アクリルアミド誘導体(Y)との質量比X/Yは、1/10~7.5/10である。
【0012】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、伸び特性に優れ、かつ、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性のすべてに優れる硬化塗膜を形成することができる。斯かる硬化塗膜は種々のフィルムに形成することができ、これにより、フィルム自体の伸び特性(成形性)、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性を向上させることが可能となる。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、フィルム等のコーティング剤等に好適に使用することができる。
【0014】
<ウレタン(メタ)アクリレート(X)>
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート(X)は、前述のように、少なくとも、イソシアネートに由来する構造単位と、3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールに由来する構造単位と、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位とを含む。言い換えれば、ウレタン(メタ)アクリレート(X)は、イソシアネートと、3官能かつ1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールと、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルとを含む原料を反応させて得られる化合物又はポリマーである。
【0015】
(イソシアネート)
イソシアネートに由来する構造単位を形成するためのイソシアネートの種類は特に限定されず、例えば、2個以上のイソシアネート基を有する公知のポリイソシアネートを広く挙げることができる。
【0016】
イソシアネートは、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族イソシアネート、芳香脂肪族イソシアネート等のイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0017】
中でも、イソシアネートは、芳香族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この場合、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜は、伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性のすべてが向上しやすい。
【0018】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0019】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と表記することができる)、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「H12MDI」と表記することができる)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0020】
脂環族ポリイソシアネートとしては、前記H12MDI等のように、脂環式の環状構造を2個以上有することが好ましく、2個有することがさらに好ましい。これらの場合、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れる硬化塗膜を形成しやすい。
【0021】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0022】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0023】
また、イソシアネートとして、有機ポリイソシアネートの変性体を挙げることもできる。有機ポリイソシアネートの変性体としては、特に限定されず、例えば、カルボジイミド体、アロファネート体、ビューレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等を挙げることができる。
【0024】
イソシアネートは、2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物であることが好ましく、2個のイソシアネート基を有する芳香族イソシアネート及び2個のイソシアネート基を有する脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。中でも、イソシアネートは、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましく、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0025】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)に含まれるイソシアネートに由来する構造単位は、1種又は2種以上とすることができる。
【0026】
イソシアネートの数平均分子量は、例えば、100以上400以下とすることができ、120以上300以下がより好ましく、150以上280以下がさらに好ましい。
【0027】
イソシアネートに由来する構造単位を形成するためのイソシアネートは公知の製造方法で得ることができ、あるいは、市販品から入手することも可能である。
【0028】
(ポリエーテルポリオール)
3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールに由来する構造単位を形成するためのポリエーテルポリオールは、3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有する限りは、その種類は特に限定されない。ここでいう「3官能ポリエーテルポリオール」とは、例えば、イソシアネートとの反応性を示す官能基が3個あることを意味し、とりわけ、水酸基を3個有するポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0029】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、3個のヒドロキシ基を有する化合物に、アルキレンオキサイドを付加重合させた化合物を挙げることができる。
【0030】
3個のヒドロキシ基を持つ化合物は、各種のポリオールまたはポリフェノールを挙げることができ、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール等が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0031】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は250以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、350以上であることがさらに好ましく、400以上であることが特に好ましく、また、1100以下であることが好ましく、1050以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。ここでいう「ポリエーテルポリオールの数平均分子量」とは、水酸基価および官能基数から算出される分子量を意味する。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)に含まれるポリエーテルポリオールに由来する構造単位は、1種又は2種以上とすることができる。
【0033】
ポリエーテルポリオールは、公知の製造方法で得ることができ、また、市販品等から入手することも可能である。ポリエーテルポリオールの市販品としては、例えば、旭硝子社の「エクセノール」、「プレミノール」、第一工業製薬社の「DKポリオール」、「ハイフレックス」、三洋化成社の「サンニックス」、ADEKA社の「アデカポリエーテル」等を挙げることができる。
【0034】
((メタ)アクリルエステル)
少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位を形成するための(メタ)アクリルエステルは、少なくとも1個の水酸基を有する限り、その種類は特に限定されない。例えば、少なくとも1個の水酸基を有する公知の(メタ)アクリルエステルを広く挙げることができる。
【0035】
少なくとも1個の水酸基を有する公知の(メタ)アクリルエステルにおいて、水酸基の数は特に限定されず、例えば、5個以下とすることができ、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下、特に好ましくは1個である。
【0036】
少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。この場合、ヒドロキシアルキル基のアルキル鎖の炭素数は特に限定的ではなく、好ましくは2~6、より好ましくは2~5、さらに好ましくは2~4である。
【0037】
少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルの具体例として、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
(ウレタン(メタ)アクリレート(X))
ウレタン(メタ)アクリレート(X)は、上述したイソシアネートに由来する構造単位と、3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールに由来する構造単位と、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位のみからなるものであってもよい。あるいは、本発明の効果が阻害されない限りは、他の構造単位を含むこともできる。当該他の構造単位がウレタン(メタ)アクリレート(X)に含まれる場合、その含有割合は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(X)に対して40質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)において、イソシアネートに由来する構造単位の含有割合は特に限定されない。本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜の伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性が向上しやすい点で、イソシアネートに由来する構造単位の含有割合は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の全量に対し、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、また、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)において、3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールに由来する構造単位の含有割合は特に限定されない。本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜の伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性が向上しやすい点で、前記ポリエーテルポリオールに由来する構造単位の含有割合は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の全量に対し、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、また、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)において、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位の含有割合は特に限定されない。本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜の伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性が向上しやすい点で、前記(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位の含有割合は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の全量に対し、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、また、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)の数平均分子量は特に限定されない。本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜の伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性が向上しやすい点で、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の数平均分子量は、1000~20000の範囲とすることができる。
【0043】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)の数平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPC装置により行い、ポリスチレン換算値として求められる。具体的な測定条件は、下記のとおりである。
カラム:東ソー社製のポリスチレンゲルカラム(TSKgel G4000HXL+TS
Kgel G3000HXL+TSKgel G2000HXL+TSKgel G10
00HXL2本をこの順で直列に接続)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率検出器(島津製作所社製のRID-6A)
流速:1ml/分
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)を1種又は2種以上を含むことができる。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造方法は特に限定されず、例えば、公知のウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造する方法を広く採用することができる。具体的には、イソシアネートと、3官能、かつ、1200以下の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールとを、溶媒中で反応させてウレタンプレポリマー溶液を調製する。次いで、得られたウレタンプレポリマー溶液と少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルとを反応させることで、ウレタン(メタ)アクリレート(X)を得ることができる。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)を製造する方法において、イソシアネートと、ポリエーテルポリオールと、1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルの使用割合は特に限定されず、目的のウレタン(メタ)アクリレート(X)中の構造単位の割合に応じて適宜決定することができる。なお、ウレタン(メタ)アクリレート(X)中の各構造単位の含有割合は、それら構造単位に対応する原料(モノマー)の使用割合に一致するものと見なすことができる。
【0047】
上述のウレタンプレポリマー溶液を調製する方法は特に限定されず、例えば、50~100℃でイソシアネートと、ポリエーテルポリオールとを溶媒中で混合することで、ウレタンプレポリマー溶液を得ることができる。溶媒の種類も特に限定されず、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒等、ウレタンプレポリマー溶液を調製するために使用され得る種々の有機溶媒を使用することができ、例えば、メチルエチルケトン等を挙げることができる。
【0048】
得られたウレタンプレポリマー溶液の遊離イソシアネート含有量も特に限定されず、例えば、固形分換算で30質量%以下、好ましくは20質量%以下とすることができる。
【0049】
ウレタンプレポリマー溶液と、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルとの反応方法も特に限定されない。例えば、ウレタンプレポリマー溶液と、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルとを、60~80℃で混合することで、両者を反応させることができる。この反応では、必要に応じて、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、その他、ジブチルチンジラウレート等のスズ系触媒を添加することもできる。
【0050】
ウレタンプレポリマー溶液と、少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリルエステルとの反応で得られるウレタン(メタ)アクリレート(X)の溶液は、残存イソシアネートが0.1質量%以下であることが好ましい。
【0051】
<アクリルアミド誘導体(Y)>
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるアクリルアミド誘導体(Y)は、分子量が300以下であり、かつ、アクリロイル基中の酸素原子以外に少なくとも1個の酸素原子を含む化合物である。アクリルアミド誘導体(Y)とは、アクリルアミド又はメタクリルアミドの窒素原子に水素以外の置換基を有する化合物であることを意味する。従って、アクリルアミド誘導体(Y)は、アクリルアミドの誘導体であってもよいし、メタクリルアミドの誘導体であってもよい。
【0052】
アクリルアミド誘導体(Y)は、分子量が300以下であり、かつ、アクリロイル基中の酸素原子以外に少なくとも1個の酸素原子を含む化合物である限り、その種類は特に限定されない。
【0053】
アクリルアミド誘導体(Y)は、分子量が250以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、また、100以上であることが好ましい。アクリルアミド誘導体(Y)の分子量とはモル質量に基づくものである。
【0054】
アクリルアミド誘導体(Y)において、アクリロイル基中の酸素原子以外に少なくとも1個の酸素原子は、エーテル結合、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基等に基づくものであってもよい。好ましくは、エーテル結合、水酸基に基づくものであり、より好ましくはエーテル結合に基づくものである。
【0055】
アクリルアミド誘導体(Y)において、アクリロイル基中の酸素原子以外の酸素原子の個数は、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下、特に好ましくは1個である。
【0056】
アクリルアミド誘導体(Y)は、分子中の窒素原子に結合した置換基が酸素原子を有する置換基であることが好ましい。この場合の置換基としては、エーテル結合を有する基、水酸基を有するアルキル基等を挙げることができ、いずれの基も炭素数は10以下とすることができ、好ましくは8以下、より好ましく6以下、さらに好ましくは5以下である。
【0057】
アクリルアミド誘導体(Y)の具体例としては、アクリロイルモルフォリンが挙げられる他、窒素原子にヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。窒素原子にヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドにおいて、ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等を挙げることができる。窒素原子にヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドにおいて、窒素原子には2個のヒドロキシアルキル基が結合していてもよいし、1個であってもよい。窒素原子にヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドにおいて、ヒドロキシアルキル基の数が1個である場合は、窒素原子には、例えば、水素とヒドロキシアルキル基が結合する。窒素原子に2個のヒドロキシアルキル基が結合している場合、互いのヒドロキシアルキル基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
アクリルアミド誘導体(Y)は、分子中に環状部位を有することが好ましく、この場合において、前記環状部位は、酸素原子を有することがさらに好ましい。これにより、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜の伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性が特に向上しやすい。
【0059】
酸素原子を有する環状部位を備えたアクリルアミド誘導体(Y)において、環状部位はアクリルアミド誘導体(Y)が有する窒素原子を含むように形成され、かつ、環状部位の中にエーテル結合を有していることが好ましい。斯かる環状部位の炭素数は、例えば、2~10、好ましくは3~8である。酸素原子を有する環状部位を備えたアクリルアミド誘導体(Y)としては、具体的には、前記アクリロイルモルフォリンを挙げることができる。アクリルアミド誘導体(Y)はアクリロイルモルフォリンを含むことが特に好ましい。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物は、アクリルアミド誘導体(Y)を1種又は2種以上を含むことができる。
【0061】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)を含むものであり、とりわけ、前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)と、前記アクリルアミド誘導体(Y)との質量比X/Yは、1/10~7.5/10である。質量比X/Yにおいて、Xとは、硬化性樹脂組成物中に含まれる前記ウレタン(メタ)アクリレート(X)の質量を意味し、Yとは、硬化性樹脂組成物中に含まれる前記アクリルアミド誘導体(Y)の質量を意味する。
【0062】
質量比X/Yは、1/10~7.5/10(すなわち、1/10以上、7.5/10以下)であることで、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜の伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性が特に向上しやすい。質量比X/Yが1/10未満になると、伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性をバランスよく保つことができず、とりわけ、耐溶剤性及び耐ブロッキング性が低下する。また、質量比X/Yが7.5/10を超過すると、伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性をバランスよく保つことができず、とりわけ、伸び特性が悪化し、成形性の低下を引き起こす。
【0063】
質量比X/Yは、1/9以上であることが好ましく、1/8以上であることがより好ましく、1/7以上であることがさらに好ましく、また、7/10以下であることが好ましく、6/10以下であることがより好ましく、5/10以下であることがさらに好ましく、4/10以下であることがよりさらに好ましく、3/10以下であることが特に好ましい。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)以外の他の成分を含むことができる。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる他の成分としては、溶媒、重合開始剤、モノマー、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、分散剤等が挙げられる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒は特に限定されず、塗工性を付与するために使用され得る公知の有機溶媒を広く使用することができる。例えば、溶媒としては、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等の塩素系炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸ビニル等のエステル化合物;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびt-ブタノール等のアルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のホルムアミド;2-ピロリドン、N-メチルピロリドン等のピロリドン;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒の量は特に限定されず、目的とする塗膜の種類に応じて、適宜設定することができる。例えば、本発明の硬化性樹脂組成物のウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)の総濃度が1~100質量%となるように溶媒の量を調整することができる。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤の種類は特限定されず、例えば、公知の重合開始剤を広く使用することができる。重合開始剤は、熱分解重合開始剤及び光重合開始剤のいずれであってもよく、製膜しやすい点で、重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。
【0069】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アントラセン、α-クロロメチルナフタレン等の芳香族化合物、ジフェニルスルフィド、チオカーバメイト等のイオウ化合物を挙げることができる。可視光以外の紫外線などの活性エネルギー線による重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)―ブタノン-1,4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,4,6,-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤の含有量は特に制限されず、ウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)の総量100質量部に対して1~10質量部とすることができる。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いることで、硬化塗膜を形成することができ、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を適宜の方法で硬化させることで、硬化塗膜を形成することができる。
【0072】
硬化塗膜を形成する一態様として、重合開始剤及び溶媒を含む本発明の硬化性樹脂組成物を基材上に塗布して皮膜を形成し、斯かる塗膜を硬化させることで硬化塗膜を形成する方法が挙げられる。
【0073】
基材は特に限定されず、例えば、各種フィルムを挙げることができる。フィルムの種類も特に限定されず、各種樹脂フィルムを広く挙げることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、アクリルフィルム等である。
【0074】
硬化性樹脂組成物を基材上に塗布する方法も特に限定されず、公知の塗布方法を広く採用することができる。例えば、公知の塗工装置を用いて塗布することができ、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0075】
基材上に形成された皮膜を硬化させる方法も特に限定されず、例えば、皮膜に活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。活性エネルギー線は、紫外線が好ましく、その他、電子線、γ線、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が挙げられる。活性エネルギー線を照射する方法及び条件も制限はなく、公知と同様とすることができる。
【0076】
上記硬化によって、皮膜中のウレタン(メタ)アクリレート(X)及びアクリルアミド誘導体(Y)の反応、例えば、重合反応が進行し、これによって塗膜の硬化が促進して硬化塗膜が形成される。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の厚みも特に限定されず、目的の用途に応じて適宜の範囲に設定することができる。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化塗膜は、伸び特性、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性に優れるものであり、各種基材に適用することで、それらの特性を基材に付与することができる。本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化塗膜は、各種基材に形成することができ、例えば、フィルムに好ましく適用することができる。
【0079】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化塗膜が形成されたフィルムは、優れた成形性を有し、また、耐溶剤性、耐傷つき性に優れる。また、当該フィルムは耐ブロッキング性に優れるので、例えば、ロール等の巻回体とした場合もフィルム同士のブロッキングが抑制されやすい。従って、当該フィルムは各種物品に適用することができる。
【0080】
物品としては、例えば、自動車、家電製品、携帯電話、OA機器や、自動車の部品等に使用される亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等の金属基材などが挙げられる。
【0081】
本開示に包含される発明を特定するにあたり、本開示の各実施形態で説明した各構成(性質、構造、機能等)は、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各構成のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0082】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0083】
(原料)
下記に示す原料から適宜の原料を選択して、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0084】
<イソシアネート>
・イソシアネート1:2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートの混合物(TDI、三井化学社「コスモネートT-80」)
・イソシアネート2:4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI、エボニック社「VESTANAT H12MDI」)
・イソシアネート3:イソホロンジイソシアネート(IPDI、エボニック社「VESTANAT IPDI」)
【0085】
<ポリエーテルポリオール>
・ポリエーテルポリオール1:旭硝子社「エクセノール430」(3官能で、数平均分子量は420である)
・ポリエーテルポリオール2:旭硝子社「エクセノール1030」(3官能で、数平均分子量は1000である)
・ポリエーテルポリオール3:旭硝子社「エクセノール1030」(2官能で、数平均分子量は400である。
・ポリエーテルポリオール4:旭硝子社「エクセノール450ED」(4官能で、数平均分子量は500である)
・ポリエーテルポリオール5:旭硝子社「エクセノール903」(3官能で、数平均分子量は1500である)
【0086】
<水酸基を有する(メタ)アクリルエステル>
・(メタ)アクリルエステル1:ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)
・(メタ)アクリルエステル2:ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
【0087】
<アクリルアミド誘導体>
・アクリルアミド誘導体1:アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ社「ACMO(登録商標)」)
・アクリルアミド誘導体2::ヒドロキシエチルアクリルアミド
・アクリルアミド誘導体3:N,N-ジエチルアクリルアミド
・アクリルアミド誘導体4:N,N-ジメチルアクリルアミド
【0088】
(実施例1)
表1の配合表の実施例1に示す原料を選択して、硬化性樹脂組成物を調製した。具体的には、メチルエチルケトン50質量部中に、29.2質量部のポリエーテルポリオール1と、38.3質量部のイソシアネート1を加え、70~75℃で60分間反応させた。この反応により、遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は14.4質量%であるウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液に、32.5質量部の(メタ)アクリルエステル1を加えた後、70~75℃にて遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)が0.1質量%未満となるまで反応を行い、数平均分子量(Mn)が2500であるウレタン(メタ)アクリレート(X)の溶液を得た。このウレタン(メタ)アクリレート(X)の溶液に、アクリルアミド誘導体1を質量比X/Yの比が1/6となるように加えることで、硬化性樹脂組成物を得た。なお、質量比X/Yにおいて、Xは、ウレタン(メタ)アクリレートの質量であって、製造に使用したイソシアネート、ポリエーテルポリオール及び水酸基を有する(メタ)アクリルエステルの総質量を意味し、Yはアクリルアミド誘導体の質量を意味する。
【0089】
(実施例2~19)
表1の配合表の実施例2~19に示す原料をそれぞれ選択してウレタンプレポリマー溶液を製造し、また、X/Yの比を表1の配合表のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、ウレタン(メタ)アクリレート及びアクリルアミド誘導体を含む硬化性樹脂組成物を得た。
【0090】
(比較例1~7)
表2の配合表の比較例1~7に示す原料をそれぞれ選択してウレタンプレポリマー溶液を製造し、また、X/Yの比を表2の配合表のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、ウレタン(メタ)アクリレート及びアクリルアミド誘導体を含む硬化性樹脂組成物を得た。
【0091】
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を用いて形成される硬化塗膜の耐溶剤性、伸び特性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性を下記手順で評価した。
【0092】
<耐溶剤性>
硬化性樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレート及びアクリルアミド誘導体の総量100質量部あたり、3質量部の重合開始剤(Irgacure184)を添加して均一に混合した後、ポリエチレンテレフタレート基材(東レ株式会社製PET、型番:#100 T60)上に膜厚が約20μmになるように塗布して皮膜を形成させた。斯かる皮膜に紫外線照射し、硬化塗膜を形成した。紫外線照射条件は、窒素雰囲気下(酸素濃度0.3%)、ランプを高圧水銀灯80W/cm、積算照度250mJ/cm2、ラインスピード5m/min、電力2kWとした。得られた硬化塗膜の表面に、酢酸エチル及びトルエンの混合溶媒(質量比1:1)をしみ込ませたフェルトを用いて、500g荷重でラビング試験を10回行った。この後、硬化塗膜の状態を目視で観察し、下記判定基準により耐溶剤性を評価した。
[判定基準]
〇:硬化塗膜面に変化が見られず、耐溶剤性は極めて優れていた。
△:硬化塗膜面に浸食が確認される程度で、耐溶剤性は良好であった。
×:硬化塗膜が剥離し、耐溶剤性が悪かった。
【0093】
<伸び特性>
硬化性樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレート及びアクリルアミド誘導体の総量100質量部あたり、3質量部の重合開始剤(Irgacure184)を添加して均一に混合した後、離型紙上に膜厚が約100μmになるように塗布して皮膜を形成させた。斯かる皮膜に紫外線照射し、硬化塗膜を形成した。紫外線照射条件は、窒素雰囲気(酸素濃度0.3%)下、ランプを高圧水銀灯80W/cm、積算照度600mJ/cm2、ラインスピード5m/min、電力2kWとした。得られた硬化塗膜を幅1cm、長さ5cmの短冊状に切り取って作成した試験片を、150℃雰囲気化で30分以上静置させた後、JIS-C-2151に準拠して、速度:50mm/minで引張試験を行って、伸び(%)を計測し、下記判定基準により伸び特性を評価した。
[判定基準]
〇:70%以上の伸びを有し、伸び特性は極めて優れていた。
△:30%以上70%未満の伸びを有し、伸び特性が良好であった。
×:30%未満の伸びに留まり、伸び特性が悪かった。
【0094】
<耐傷つき性>
硬化性樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレート及びアクリルアミド誘導体の総量100質量部あたり、3質量部の重合開始剤(Irgacure184)を添加して均一に混合した後、ポリエチレンテレフタレート基材(東レ株式会社製PET、型番:#100 T60)上に膜厚が約20μmになるように塗布して皮膜を形成させた。斯かる皮膜に紫外線照射し、硬化塗膜を形成した。紫外線照射条件は、窒素雰囲気(酸素濃度0.3%)下、ランプを高圧水銀灯80W/cm、積算照度250mJ/cm2、ラインスピード5m/min、電力2kWとした。得られた硬化塗膜表面を23℃の環境下で、500g荷重の真鍮ワイヤーブラシ(藤原産業株式会社製No.9)で計5往復摺動させ、硬化フィルム上の傷のつき具合を目視にて観察し、下記判定基準で耐傷つき性を評価した。
[判定基準]
〇:10秒以内で傷が復元し、耐傷つき性に極めて優れていた。
△:10秒超過、10分以内に傷が復元し、耐傷つき性は良好であった。
×:1時間経過しても傷が復元せず、耐傷つき性が悪かった。
【0095】
<耐ブロッキング性>
硬化性樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレート及びアクリルアミド誘導体の総量100質量部あたり、3質量部の重合開始剤(Irgacure184)を添加して均一に混合した後、ポリエチレンテレフタレート基材(東レ株式会社製PET、型番:#100 T60)上に膜厚が約20μmになるように塗布して皮膜を形成させた。斯かる皮膜に紫外線照射し、硬化塗膜Aを形成した。紫外線照射条件は、窒素雰囲気(酸素濃度0.3%)下、ランプを高圧水銀灯80W/cm、積算照度250mJ/cm2、ラインスピード5m/min、電力2kWとした。また、硬化塗膜Aの作製と同じ条件で、硬化塗膜Bを作製した。次いで、硬化塗膜A及び硬化塗膜Bどうしを500g荷重で互いに貼り合わせた積層体を作製した。この積層体の硬化塗膜A及び硬化塗膜Bを剥離させた際に硬化塗膜A及び硬化塗膜Bの貼り合わせ面を目視にて観察し、下記判定基準により、耐ブロッキング性を評価した。
[判定基準]
〇:貼り合わせ面どうしが接着せず、耐ブロッキング性が極めて優れていた。
△:貼り合わせ面の50%以上の面積が互いに接着しているだけで、耐ブロッキング性は良好であった。
×:貼り合わせ面のすべて接着しており、耐ブロッキング性が悪かった。
【0096】
【0097】
【0098】
表1は、各実施例で調製した硬化性樹脂組成物の配合条件、得られたウレタン(メタ)
アクリレートの数平均分子量(Mn)、質量比X/Yも値及び硬化性樹脂組成物を用いて得られた硬化塗膜の評価結果を示している。また、表2は、各実施例で調製した硬化性樹脂組成物の配合条件及び硬化性樹脂組成物を用いて得られた硬化塗膜の評価結果を示している。なお、表1及び表2中、空欄は、その原料を使用していないことを意味する。
【0099】
表1及び表2の結果から、実施例で得られた硬化性樹脂組成物は、伸び特性に優れ、かつ、耐溶剤性、耐傷つき性及び耐ブロッキング性のすべてに優れる硬化塗膜を形成できることがわかった。