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特開2024-96644推定装置、エネルギー貯蔵装置及び推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096644
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】推定装置、エネルギー貯蔵装置及び推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240709BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240709BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240709BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240709BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 170
H02J3/32
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000294
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航大
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 俊光
(72)【発明者】
【氏名】松永 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆利
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅之
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE03
5G066AE09
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
5G066JB10
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】簡易的で迅速に、かつ高精度な推定を可能とする推定装置及び推定プログラムを提供する。また、エネルギー貯蔵装置を提供する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、推定装置は、検討対象地域の再生可能エネルギー発電装置に関する発電時系列データである第1の発電時系列データと、前記検討対象地域の電力需要時系列データである第1の電力需要時系列データとを入力として受け付ける入力部を備える。さらに前記推定装置は、前記第1の発電時系列データと前記第1の電力需要時系列データとに基づいて、第1の残余電力を算出する残余電力算出部を備える。さらに前記推定装置は、前記第1の残余電力の特徴量である第1の特徴量を抽出する特徴量抽出部を備える。さらに前記推定装置は、前記第1の特徴量に基づいて、エネルギー貯蔵装置における構成機器容量又は導入コストの推定値を算出する推定値算出部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検討対象地域の再生可能エネルギー発電装置に関する発電時系列データである第1の発電時系列データと、前記検討対象地域の電力需要時系列データである第1の電力需要時系列データとを入力として受け付ける入力部と、
前記第1の発電時系列データと前記第1の電力需要時系列データとに基づいて、第1の残余電力を算出する残余電力算出部と、
前記第1の残余電力の特徴量である第1の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記第1の特徴量に基づいて、エネルギー貯蔵装置における構成機器容量又は導入コストの推定値を算出する推定値算出部と、
を備える推定装置。
【請求項2】
前記推定値算出部は、前記第1の特徴量に基づいて、前記エネルギー貯蔵装置における構成機器容量及び導入コストの推定値を算出する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記エネルギー貯蔵装置における構成機器の容量推定式を算出する容量推定式算出部をさらに備え、
前記入力部は、検討済み地域の再生可能エネルギー発電装置に関する発電時系列データである第2の発電時系列データと、前記検討済み地域の電力需要時系列データである第2の電力需要時系列データと、前記検討済みのエネルギー貯蔵装置の構成機器容量とを入力としてさらに受け付け、
前記残余電力算出部は、前記第2の発電時系列データと前記第2の電力需要時系列データとに基づいて、第2の残余電力をさらに算出し、
前記特徴量抽出部は、前記第2の残余電力の特徴量である第2の特徴量をさらに抽出し、
前記容量推定式算出部は、前記構成機器容量と、前記第2の特徴量に基づいて、前記容量推定式を算出し、
前記推定値算出部は、前記容量推定式に基づいて、前記構成機器容量の推定値を算出する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記エネルギー貯蔵装置における構成機器の導入コスト推定式を算出するコスト推定式算出部をさらに備え、
前記入力部は、検討済み地域の再生可能エネルギー発電装置に関する発電時系列データである第2の発電時系列データと、前記検討済み地域の電力需要時系列データである第2の電力需要時系列データと、前記検討済みのエネルギー貯蔵装置の導入コストデータとを入力としてさらに受け付け、
前記残余電力算出部は、前記第2の発電時系列データと前記第2の電力需要時系列データとに基づいて、第2の残余電力をさらに算出し、
前記特徴量抽出部は、前記第2の残余電力の特徴量である第2の特徴量をさらに抽出し、
前記コスト推定式算出部は、前記導入コストデータと、前記第2の特徴量とに基づいて、前記導入コスト推定式を算出し、
前記推定値算出部は、前記導入コスト推定式に基づいて、前記導入コストの推定値を算出する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵装置における構成機器の容量推定式を算出する容量推定式算出部と、
前記エネルギー貯蔵装置における構成機器の導入コスト推定式を算出するコスト推定式算出部とをさらに備え、
前記入力部は、検討済み地域の再生可能エネルギー発電装置に関する発電時系列データである第2の発電時系列データと、前記検討済み地域の電力需要時系列データである第2の電力需要時系列データと、前記検討済みのエネルギー貯蔵装置の構成機器容量と、前記検討済みのエネルギー貯蔵装置の導入コストデータとを入力としてさらに受け付け、
前記残余電力算出部は、前記第2の発電時系列データと前記第2の電力需要時系列データとに基づいて、第2の残余電力をさらに算出し、
前記特徴量抽出部は、前記第2の残余電力の特徴量である第2の特徴量をさらに抽出し、
前記容量推定式算出部は、前記構成機器容量と、前記第2の特徴量に基づいて、前記容量推定式を算出し、
前記コスト推定式算出部は、前記導入コストデータと、前記第2の特徴量とに基づいて、前記導入コスト推定式を算出し、
前記推定値算出部は、前記容量推定式に基づいて、前記構成機器容量の推定値を算出し、前記導入コスト推定式に基づいて、前記導入コストの推定値を算出する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項6】
前記構成機器容量又は導入コストの推定値を出力する出力部をさらに備える、請求項1に記載の推定装置。
【請求項7】
工事に関する費用を積算する積算部をさらに備え、
前記積算部は、工事単価データと、前記構成機器容量の推定値とに基づいて、工事に関する費用を積算する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項8】
前記積算部は、保守運用労務単価データと、前記構成機器容量の推定値とに基づいて、保守運用に関する費用をさらに積算する、請求項7に記載の推定装置。
【請求項9】
前記積算部は、前記工事に関する費用と、前記保守運用に関する費用と、前記第1の電力需要時系列データとに基づいて、電力価格を算出する、請求項8に記載の推定装置。
【請求項10】
前記工事に関する費用の値を出力する出力部をさらに備える、請求項7に記載の推定装置。
【請求項11】
余剰電力に基づいて水素を貯蔵する水素貯蔵装置と、前記余剰電力に基づいて充電する蓄電池とを備えるエネルギー貯蔵装置であって、
検討対象地域の月別平均残余電力の年間推移変動幅をx1、最小残余電力をx2、年間残余電力量をx3としたとき、
前記水素貯蔵装置の容量yは、
y1=280x1-32x2+0.02x3+1500以下、y1=250x1-28x2+0.04x3以上であり、
前記蓄電池の容量yは、
y2=7x1-4.5x2+0.003x3+1500以下、y2=5x1-3.8x2+0.004x3+500以上である、
エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
入力部が、検討対象地域の再生可能エネルギー発電装置に関する発電時系列データである第1の発電時系列データと、前記検討対象地域の電力需要時系列データである第1の電力需要時系列データとを入力として受け付け、
残余電力算出部が、前記第1の発電時系列データと前記第1の電力需要時系列データとに基づいて、第1の残余電力を算出し、
特徴量抽出部が、前記第1の残余電力の特徴量である第1の特徴量を抽出し、
推定値算出部が、前記第1の特徴量に基づいて、エネルギー貯蔵装置における構成機器容量又は導入コストの推定値を算出する、
ことを含む推定方法をコンピュータに実行させる推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、推定装置、エネルギー貯蔵装置及び推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの導入拡大により、変動電力を平滑化して電力の安定供給を可能とするエネルギー貯蔵装置の開発が進められている。
【0003】
また、従来、このようなエネルギー貯蔵装置の構成機器容量及び導入コストは、運転シミュレーションにより算出されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2017-38741号公報
【特許文献2】特願2017-103186号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】平成31年電気学会全国大会予稿集 講演番号7-061
【非特許文献2】令和3年電気学会全国大会予稿集 講演番号7-035
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した運転シミュレーションによる構成機容量及び導入コストの算出は、一度のシミュレーションに膨大なデータ量が必要となり、長時間を要してしまう。
【0007】
一方、簡易的に構成機器容量及び導入コストを求めるために、すでに導入したエネルギー貯蔵装置と導入予定のエネルギー貯蔵装置とのスケール比により、概算値を算出する方法がある。この方法によって算出した概算値は、運転シミュレーションによって算出した真値と比較して、大きな差分が発生してしまう。
【0008】
そこで、本発明の実施形態は、簡易的で迅速に、かつ高精度な推定を可能とする推定装置及び推定プログラムを提供する。また、本発明の実施形態は、低コストで高効率なエネルギー貯蔵装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施形態によれば、推定装置は、検討対象地域の再生可能エネルギー発電装置に関する発電時系列データである第1の発電時系列データと、前記検討対象地域の電力需要時系列データである第1の電力需要時系列データとを入力として受け付ける入力部を備える。さらに前記推定装置は、前記第1の発電時系列データと前記第1の電力需要時系列データとに基づいて、第1の残余電力を算出する残余電力算出部を備える。さらに前記推定装置は、前記第1の残余電力の特徴量である第1の特徴量を抽出する特徴量抽出部を備える。さらに前記推定装置は、前記第1の特徴量に基づいて、エネルギー貯蔵装置における構成機器容量又は導入コストの推定値を算出する推定値算出部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における推定対象のエネルギー貯蔵装置のブロック図である。
図2】第1実施形態における推定装置のシステムブロック図である。
図3】第1実施形態における出力データの例である。
図4】第1実施形態における推定装置の動作結果の例である。
図5】第1実施形態における推定装置のフローチャート(S1~S6)である。
図6】第1実施形態における推定装置のフローチャート(S7~S12)である。
図7】第2実施形態における推定装置のシステムブロック図である。
図8】第3実施形態における推定装置のシステムブロック図である。
図9】第4実施形態における推定装置のシステムブロック図である。
図10】第4実施形態における推定装置のフローチャート(S7~S11)である。
図11】第4実施形態における推定装置のフローチャート(S21~S23)である。
図12】第5実施形態のエネルギー貯蔵装置における水素貯蔵装置の容量推定式と特徴量との関係図の例である。
図13】第5実施形態のエネルギー貯蔵装置における蓄電池の容量推定式と特徴量との関係図の例である。
図14】第6実施形態における推定装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における推定対象のエネルギー貯蔵装置のブロック図である。
【0013】
本実施形態におけるエネルギー貯蔵装置20は、装置を構成する機器として、蓄電池21、燃料電池装置22、水素製造装置23、水素貯蔵装置24及び制御装置25を備える。以下、エネルギー貯蔵装置20を構成する機器のことを構成機器と呼ぶ。エネルギー貯蔵装置20は、再生可能エネルギー発電装置100が発電した供給電力と電力需要家200の需要電力の差分、つまり、余剰電力の値又は不足電力の値に基づいて、水素を製造し又は水素を用いた発電を行う装置である。再生可能エネルギー発電装置100は、例えば、太陽光発電装置や風力発電装置といった、任意の再生可能エネルギー発電装置100である。以下では、太陽光発電装置の例を挙げて説明する。
【0014】
電力系統204において、余剰電力が発生した場合、エネルギー貯蔵装置20は、制御装置25の制御に基づいて余剰電力により蓄電池21を充電する。蓄電池21が満充電状態に近づき充電できない場合、水素製造装置23は、制御装置25の制御に基づいて水素を製造し、水素貯蔵装置24に貯蔵する。また、電力系統204において、不足電力が発生した場合、エネルギー貯蔵装置20は、制御装置25の制御に基づいて蓄電池21を放電し不足電力を補う。蓄電池21が空状態に近づき放電できない場合、燃料電池装置22は、制御装置25の制御に基づいて水素貯蔵装置24に貯蔵された水素を用いて発電を行う。
【0015】
図2は、第1実施形態における推定装置のシステムブロック図である。
【0016】
本実施形態における推定装置1は、残余電力の特徴量に基づいて、エネルギー貯蔵装置における構成機器の容量である構成機器容量及びエネルギー貯蔵装置20の導入に必要なコストである導入コストを算出する。
【0017】
推定装置1は、入力部2、残余電力算出部3、特徴量抽出部4、推定式算出部5、推定値算出部6、出力部7及び記憶部8を備える。
【0018】
入力部2は、第1の発電時系列データ入力部31、第1の電力需要時系列データ入力部32、第2の発電時系列データ入力部33、第2の電力需要時系列データ入力部34、構成機器容量データ入力部35及び導入コストデータ入力部36を備える。また、残余電力算出部3は、第1の残余電力算出部37及び第2の残余電力算出部38を備える。また、特徴量抽出部4は、第1の特徴量抽出部39と及び第2の特徴量抽出部40を備える。また、推定式算出部5は、容量推定式算出部41及びコスト推定式算出部42を備える。また、推定値算出部6は、構成機器容量推定部43及び導入コスト推定部44を備える。また、推定装置1には、入力装置9と出力装置10とが接続される。
【0019】
推定装置1は、例えば、PC(Personal Computer)に推定装置1用プログラムをインストールすることで実現することができる。上記のPC内のCPU(Central Processing Unit)が推定装置1のプログラムを実行することにより、推定装置1のための入力部2、残余電力算出部3、特徴量抽出部4、推定式算出部5、推定値算出部6、出力部7及び記憶部8の機能が実現される。以下、これらの機能ブロックについて説明する。
【0020】
入力部2は、ユーザから、例えばマウスやキーボードといった入力装置9を通じて、第1の発電時系列データと、第1の電力需要時系列データとを入力として受け付ける。また、入力部2は、第2の発電時系列データと、第2の電力需要時系列データとを入力として受け付ける。また、入力部2は、検討済みのエネルギー貯蔵装置20における各構成機器容量データと導入コストデータとを入力として受け付ける。これらのデータは、上述した各機能ブロック31~36で入力が受け付けられる。例えば、ユーザは、テキストボックス等に値を入力することで実現できる。以下、これらの入力データについて説明する。
【0021】
入力部2は、検討対象地域の再生可能エネルギー発電装置100に関する発電時系列データである第1の発電時系列データと、検討対象地域の電力需要時系列データである第1の電力需要時系列データとを入力として受け付ける。検討対象地域とは、再生可能エネルギー発電装置100の導入を検討している地域を指す。ここで、検討対象地域は、この再生可能エネルギー発電装置100によって発電される電力が消費される地域を含む。第1の発電時系列データは、平均日照時間に基づいた太陽光発電装置の予想の発電時系列データ(kW)を用いることが考えられる。第1の電力需要時系列データは、例えば、検討対象地域における予想の電力需要時系列データ(kW)を用いることが考えられる。これらの時系列データは、例えば、Y軸を電力(kW)とし、X軸を時刻(日時分)として、各時刻の電力を表す折れ線グラフとして表される。
【0022】
また、入力部2は、検討済み地域の再生可能エネルギー発電装置100に関する発電時系列データである第2の発電時系列データと、検討済み地域における電力需要時系列データである第2の電力需要時系列データとを入力として受け付ける。検討済み地域とは、再生可能エネルギー発電装置100をすでに導入し、又は導入の検討を行った地域を指す。ここで、検討済み地域は、この再生可能エネルギー発電装置100によって発電される電力が消費される地域を含む。第2の発電時系列データは、例えば、過去に太陽光発電装置を導入した、又は導入の検討を行った別の地点における発電電力の時系列データを用いることが考えられる。第2の発電時系列データは、日射量等の立地条件について、検討対象地域と近い条件の再生可能エネルギー発電装置100に関する発電時系列データであると望ましい。第2の電力需要時系列データは、例えば、検討済み地域における需要電力の時系列データを用いることが考えられる。また、これらのデータは、運転シミュレーションによって検討を行ったデータを用いてもよい。また、これらのデータは、1つの地点についてのデータだけではなく、複数の地点におけるデータを用いることが望ましい。
【0023】
また、入力部2は、検討済みのエネルギー貯蔵装置20における各構成機器容量データの入力を受け付ける。検討済みのエネルギー貯蔵装置20とは、すでに他の地点で導入し、又は導入の検討を行ったエネルギー貯蔵装置20のことを指す。検討済みのエネルギー貯蔵装置20における各構成機器容量データは、例えば、図1に示すような蓄電池21、燃料電池装置22、水素製造装置23、水素貯蔵装置24及び制御装置25といったエネルギー貯蔵装置20を構成する構成機器の容量のデータを指す。この例では、蓄電池21の容量は、例えば、kWhといった単位で表される蓄電容量を指し、水素貯蔵装置24の容量は、例えば、Nm3で表される貯蔵容量を指す。容量の単位は、この例に限定されず、各構成機器の性能を表すために必要な単位を入力することとしてよい。
【0024】
また、入力部2は、ユーザから、入力装置9を通じて、検討済みのエネルギー貯蔵装置20における導入コストデータの入力を受け付ける。導入コストデータは、例えば、検討済みのエネルギー貯蔵装置20全体の導入に要する費用(円)の他、各構成機器の導入に要する個別の費用(円)を用いることが考えられる。
【0025】
入力部2が入力を受け付けるデータは、マウスやキーボードといったユーザの手入力の他、例えば、CSV(Comma Separated Value)ファイル等の設定ファイルを取り込んで、入力として受け付けることが考えられる。
【0026】
残余電力算出部3は、第1の残余電力算出部37及び第2の残余電力算出部38を備える。第1の残余電力算出部37は、第1の発電時系列データと第1の電力需要時系列データとの差分を計算し、検討対象地域における残余電力である第1の残余電力(kW)の時系列データを算出する。同様に、第2の残余電力算出部38は、第2の発電時系列データと第2の電力需要時系列データとの差分を計算し、過去に太陽光発電装置を導入し、又は導入を検討した別の地点における残余電力である第2の残余電力(kW)の時系列データを算出する。残余電力とは、電力需要と再生可能エネルギー発電電力の差分を指す。例えば、電力需要が40kWであり、その時間における再生可能エネルギー発電電力が20kWである場合、残余電力は、20kWとなる。例えば、電力需要が20kWであり、再生可能エネルギー発電電力が40kWである場合、残余電力は、-20kWとなる。
【0027】
特徴量抽出部4は、第1の特徴量抽出部39及び第2の特徴量抽出部40を備える。特徴量抽出部4は、第1の残余電力及び第2の残余電力に基づいて、それぞれの残余電力に関する特徴量である第1の特徴量及び第2の特徴量を抽出する。また、第1の特徴量及び第2の特徴量は、それぞれ、第1の特徴量抽出部39及び第2の特徴量抽出部40により抽出される。特徴量は、例えば、最大残余電力や最小残余電力、年間残余電力量推移の変動幅などの残余電力に関する特徴量といったスカラー量でもよい。また、特徴量は、再生可能エネルギー発電装置100における最大発電量や最大電力需要量等の発電量又は電力需要量に関するスカラー量でもよい。また、特徴量は、スカラー量の他、ベクトル量であってもよい。
【0028】
以下では、月別平均残余電力の年間推移変動幅、最小残余電力及び年間残余電力量を第1の特徴量及び第2の特徴量として抽出する例を説明する。ここで、月別平均残余電力の年間推移変動幅とは、各月の平均残余電力を求め、年間推移を示したときの最大値と最小値の幅のことを指す。この例の他、特徴量は、例えば、日別平均残余電力の年間推移変動幅、日別平均残余電力の日間推移変動幅、最大残余電力及び最大電力需要を用いることが考えられる。
【0029】
推定式算出部5は、第2の特徴量抽出部40で得られた第2の特徴量に基づいて、容量推定式及び導入コスト推定式を算出する。推定式は、例えば、第2の特徴量を説明変数として、機械学習を用いた回帰分析により算出することが考えられる。推定式算出部5は、不要な変数を減らすことができるラッソ回帰と、各変数の重みを調整して過学習を回避するリッジ回帰を行い、第2の特徴量抽出部40が抽出した各特徴量に対する係数を決定し、推定式を算出することが考えられる。算出された推定式は、第2の特徴量抽出部40で得られた第2の特徴量を変数とする関数となる。推定式算出部5が推定式を算出する方法は、回帰分析等の数値分析方法でもよいし、その他の方法を用いてもよい。
【0030】
容量推定式算出部41は、エネルギー貯蔵装置20の各構成機器における容量の推定式を算出する。容量推定式算出部41は、入力部2が入力を受け付けた検討済みのエネルギー貯蔵装置20の構成機器容量と、第2の特徴量抽出部40から得られた第2の特徴量より、構成機器容量の推定に用いる推定式を算出する。以下では、水素貯蔵装置容量yの推定式(1)と、蓄電池容量yの推定式(2)の例を示す。ここで、xは、月別平均残余電力の年間推移変動幅を指し、xは、最小残余電力を指し、xは、年間残余電力量を指す。この例では、これらの特徴量を説明変数として、機械学習を用いた回帰分析により、推定式を算出した。このように、推定式は、各構成機器について算出される。
y1=265.68x1-29.786x2+0.03x3+826.06 (1)
y2=6.0965x1-4.1512x2+0.0033x3+852.08 (2)
【0031】
コスト推定式算出部42は、エネルギー貯蔵装置20における導入コスト推定式を算出する。コスト推定式算出部42は、入力部2が入力を受け付けた導入コストデータと、第2の特徴量抽出部40から得られた第2の特徴量より、導入コストyの推定式を算出する。以下では、導入コストの推定式(3)の例を示す。この例では、x~xの特徴量を説明変数として、機械学習を用いた回帰分析により、推定式を算出した。
y3=0.0429x1-0.0046x2+5.2766×10-6x3+2.8543 (3)
【0032】
記憶部8は、例えば、推定装置1のHDD(Hard Disc Drive)といった補助記憶装置上に構築される。記憶部8は、推定式算出部5により算出された各推定式を格納する推定式データベース(不図示)を備える。本実施形態では、(1)~(3)を推定式データベースに格納する。推定装置1は、これらの推定式を記憶部8に格納しておくことにより、算出した推定式を別の検討対象地域における推定の際に活用することができる。また、推定装置1は、各推定値の算出にあたり、事前に推定式を算出し、記憶部8に格納してもよい。
【0033】
推定値算出部6は、推定式算出部5により算出された各推定式に基づいて、エネルギー貯蔵装置20における各構成機器の容量及びエネルギー貯蔵装置20における導入コストの推定値を算出する。推定値算出部6は、各推定式について、記憶部8から読み出してもよく、推定式算出部5から入力を受け付けてもよい。
【0034】
具体的には、水素貯蔵装置容量yを算出する場合、構成機器容量推定部43は、第1の特徴量抽出部39により抽出した第1の特徴量(x~x)を式(1)に代入することで算出することができる。また、蓄電池容量y2を算出する場合、同様に、構成機器容量推定部43は、第1の特徴量(x~x)を式(2)に代入することで算出することができる。
【0035】
また、導入コストyを算出する場合、導入コスト推定部44は、同様に第1の特徴量(x~x)を式(3)に代入することで算出することができる。
【0036】
出力部7は、推定値算出部6により算出された各推定値について、出力装置10に出力するためのデータを作成する。出力部7は、出力データについて、例えば、表形式で表し、ブラウザ上でユーザが確認できるよう作成してもよい。
【0037】
上記では、入力部2、残余電力算出部3、特徴量抽出部4、推定式算出部5及び推定値算出部6について、機能ブロックの各構成要素を説明したが、各構成要素は、例えば、推定式導出部12及び推定値演算部13といった2つの機能ブロックとして分類されてもよい。具体的には、第2の発電時系列データ入力部33、第2の電力需要時系列データ入力部34、構成機器容量データ入力部35、導入コストデータ入力部36、第2の残余電力算出部38、第2の特徴量抽出部40、容量推定式算出部41及びコスト推定式算出部42は、推定式導出部12の構成要素として実装されてもよい。第1の発電時系列データ入力部31、第1の電力需要時系列データ入力部32、第1の残余電力算出部37、第1の特徴量抽出部39、構成機器容量推定部43及び導入コスト推定部44は、推定値演算部13の構成要素として実装されてもよい。
【0038】
図3は、第1実施形態における出力データの例である。
【0039】
図3は、各構成機器容量及び導入コストの推定値の例を示している。構成機器は、蓄電池21及び水素貯蔵装置24についての容量の例を示しており、その他の構成要素は省略している。また、この例では、従来のスケール比によって算出した概算値と本実施形態における推定装置1によって算出した推定値とを比較する表を示している。
【0040】
図4は、第1実施形態における推定装置の動作結果の例である。
【0041】
推定装置1によって、65地点の検討済みの再生可能エネルギー発電装置100に関する第2の発電時系列データと、それら地域における第2の電力需要時系列データとを用いて、推定式を算出した。その後、推定装置1によって、図1に示す構成のエネルギー貯蔵装置20に対して、推定装置1による推定値を算出したところ、図4に示す結果を得た。図4に示す通り、本実施形態の推定装置1によれば、従来のスケール比による算出方法に比べて、真値に対する相対誤差が低くなっていることが分かる。
【0042】
図5、6は、第1実施形態における推定装置のフローチャートである。
【0043】
まず、図5のフローについて説明する。ステップS1では、入力部2は、ユーザから第2の発電時系列データ及び第2の電力需要時系列データの入力を受け付ける。ステップS2では、入力部2は、ユーザから検討済みのエネルギー貯蔵装置20における各構成機器容量データ及び導入コストデータを入力として受け付ける。ステップS1及びS2で入力を受け付けるデータは、ユーザによる手入力の他、例えばSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)といった監視制御システムや、設備台帳システムといった外部のシステムから自動で収集してもよい。また、これらのデータは、例えばCSV(Comma Separated Value)ファイル等の設定ファイルを取り込んで、入力として受け付けてもよい。
【0044】
ステップS3では、第2の残余電力算出部38は、第2の発電時系列データと第2の電力需要時系列データとに基づいて、第2の残余電力の時系列データを算出する。ステップS4では、第2の特徴量抽出部40は、第2の特徴量を抽出する。
【0045】
ステップS5では、容量推定式算出部41は、入力部2が入力を受け付けた各構成機器容量データと、第2の特徴量より、各構成機器容量の推定式を算出する。ステップS6では、コスト推定式算出部42は、入力部2が入力を受け付けた導入コストデータと、第2の特徴量より、導入コストの推定式を算出する。
【0046】
次に、図6のフローについて説明する。図6のフローは、図5のフローの続きとなっており、図5のフローチャート及び図6のフローチャートは、結合子で連続している。
【0047】
ステップS7では、入力部2は、第1の発電時系列データ及び第1の電力需要時系列データの入力を受け付ける。ステップS8では、第1の残余電力算出部37は、第1の発電時系列データと第1の電力需要時系列データとに基づいて、第1の残余電力の時系列データを算出する。
【0048】
ステップS9では、第1の特徴量抽出部39は、第1の特徴量を抽出する。ステップS10では、構成機器容量推定部43は、容量推定式算出部41が算出した推定式に、第1の特徴量を代入し、各構成機器の容量の推定値を算出する。
【0049】
ステップS11では、導入コスト推定部44は、コスト推定式算出部42が算出したエネルギー貯蔵装置20の導入コストの推定式に、第1の特徴量を代入し、エネルギー貯蔵装置20の導入コストの推定値を算出する。ステップS12では、出力部7は、各推定値を出力装置10に出力するためのデータを作成し、出力装置10に表示する。
【0050】
本実施形態によれば、第1の残余電力に基づいて、エネルギー貯蔵装置20における各構成機器容量及び導入コストの推定値について、簡易的で迅速に、かつ高精度に推定することができる。
【0051】
また、推定装置1は、各推定式をあらかじめ算出し、記憶部8に格納しておいてもよい。推定装置1は、検討対象地域における第1の発電時系列データ等の入力を受け付けた後、記憶部8から各推定式を読み出すことにより、さらに迅速に推定値を算出することができる。また、1度算出した推定式は、2箇所目以降の検討対象地域において活用することで、迅速に推定値を算出することができる。これにより、従来の運転シミュレーションを通じてエネルギー貯蔵装置20における各構成機器の容量や導入コストの推定値を算出する方法よりも、推定装置1は、簡易的でかつ迅速に各推定値を算出することができる。
【0052】
また、推定装置1は、スケール比によりエネルギー貯蔵装置20における各構成機器容量や導入コストの推定値を算出するよりも、高精度に算出することができる。
【0053】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態における推定装置のシステムブロック図である。
【0054】
本実施形態における推定装置1は、図1の推定装置1と比較して、コスト推定式算出部42及び導入コスト推定部44を含まない構成となっている。
【0055】
本実施形態によれば、推定装置1は、算出する推定値を各構成機器の容量のみに絞ることができ、より迅速に、かつ高精度に推定値を得ることができる。
【0056】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態における推定装置のシステムブロック図である。
【0057】
本実施形態における推定装置1は、図1の推定装置1と比較して、容量推定式算出部41及び構成機器容量推定部43を含まない構成となっている。
【0058】
本実施形態によれば、推定装置1は、算出する推定値を導入コストのみに絞ることができ、より迅速に、かつ高精度に推定値を得ることができる。
【0059】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態における推定装置のシステムブロック図である。
【0060】
本実施形態における推定装置1は、図1の推定装置1と比較して、工事に関する費用を積算する積算部11をさらに備える。
【0061】
また、本実施形態における記憶部8は、構成機器の単位容量あたりの機器価格や構成機器の単位容量あたりの設置工事価格といった工事単価データを格納する工事費用データベース(不図示)を備える。これら単価データは、上述したデータに限定されず、ユーザが作成した単価データ、市場価格の調査会社が作成する単価データ又は官公庁が発行する労務単価データ等、工事に関する費用を積算する種々の単価データを用いることができる。
【0062】
本実施形態では、工事に関する費用の積算にあたり、構成機器の機器費用と、構成機器の設置工事費用とを算出する例を説明する。
【0063】
積算部11は、記憶部8から工事単価データを読み出す。積算部11は、構成機器容量推定部43から得られた構成機器容量の推定値と、構成機器の単位容量あたりの機器価格とを乗算することにより、構成機器の機器費用を算出することができる。また、積算部11は、構成機器容量の推定値と、構成機器の単位容量あたりの設置工事価格とを乗算することにより、構成機器の設置工事費用を算出することができる。それぞれの費用の総和をとる(積算する)と、エネルギー貯蔵装置20における工事に関する費用の全体費用が算出できる。
【0064】
また、積算部11は、工事に関する費用の全体費用を算出するにあたり、共通仮設費や一般管理費といった、所定の計算方法に基づく費用を算出する機能を有していてもよい。
【0065】
また、積算部11は、保守運用に関する費用を積算してもよい。例えば、工事費用データベースは、保守運用労務単価データとして、あらかじめ、構成機器の単位容量あたりの保守運用費用を格納する。積算部11は、構成機器容量の推定値と、構成機器の単位容量あたりの保守運用費用とを乗算することにより、構成機器の保守運用費用を算出することができる。工事に関する費用に加えて、保守運用費用をさらに積算することで全体費用を算出してもよい。
【0066】
また、積算部11は、構成機器の設置条件を提示してもよい。例えば、工事費用データベースは、あらかじめ、構成機器の単位容量あたりの設置面積を格納する。積算部11は、構成機器容量推定部43から得られた構成機器容量の推定値と、構成機器の単位容量あたりの設置面積とを乗算することにより、構成機器の設置面積を算出することができる。
【0067】
また、積算部11は、電力価格を算出してもよい。例えば、入力部2に入力された第1の電力需要時系列データを用いることで、単位電力あたりの電力価格を算出することができる。積算部11は、第1の電力需要時系列データのグラフがX軸及びY軸となす面積を求めることで、ある期間の電力需要量を算出し、さらに、全体費用からこの電力需要量を除算することで単位電力量あたりの電力価格を算出することができる。
【0068】
出力部7は、積算部11により算出された、工事に関する費用の値を出力装置10に出力する。出力部7はこれらのデータについて、例えば、各項目の積算データとして出力装置10に出力することが考えられる。
【0069】
図10及び11は、第4実施形態における推定装置のフローチャートである。
【0070】
ステップS1~S6までのフローは、図5と同様であり、図10のステップS7~S11までのフローは、図6のステップS7~S11と同様であるため、説明を省略する。また、図11のフローは、図10のフローの続きとなっており、図11のフローチャート及び図10のフローチャートは、結合子で連続している。
【0071】
図11のステップS21では、積算部11は、記憶部8から、工事単価データを読み出す。ステップS22では、積算部11は、ステップS10で得られた推定値と、工事単価データを乗算することにより、構成機器の機器費用及び設置工事費用を算出する。
【0072】
ステップS23では、出力部7は、構成機器の機器費用及び設置工事費用を出力装置10に出力する。
【0073】
本実施形態によれば、推定装置1は、構成機器容量の推定値等に基づいて、構成機器の機器費用、設置工事費用及び保守運用費用を算出することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、構成機器容量の推定値等に基づいて、構成機器の設置条件を算出することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、構成機器容量の推定値等に基づいて、単位電力あたりの電力価格を算出することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、推定装置1は、長時間の運転シミュレーションを必要とせず、高精度な推定値を用いて設置工事費用等を算出するため、迅速で高精度な推定が可能となる。また、装置導入前の検討時間とコストを削減することもできる。
【0077】
(第5実施形態)
図12は、第5実施形態のエネルギー貯蔵装置における水素貯蔵装置の容量推定式と特徴量との関係図の例である。
【0078】
第1実施形態と同様に、本実施形態における推定式は、第1の特徴量として、月別平均残余電力の年間推移変動幅xと、最小残余電力xと、年間残余電力量xとを用いている。図12は、水素貯蔵装置24の容量推定式と特徴量xとの関係図を示している。図1の構成を備えるエネルギー貯蔵装置20について、水素貯蔵装置24の容量の推定値は、式(4)と(5)との間で囲まれる範囲で表される。式(4)は、水素貯蔵装置24の容量における推定値の上限yを表し、式(5)は、下限yを表す。つまり、式(4)と式(5)との間の範囲で表される容量帯により、低コストで高効率なエネルギー貯蔵装置20を構成する水素貯蔵装置24の容量が実現される。本実施形態では、容量推定式算出部41は、これらの特徴量を説明変数として、機械学習を用いた回帰分析により、推定式を算出した。以下に、式(4)及び(5)を示す。
y4=280x1-32x2+0.02x3+1500 (4)
y5=250x1-28x2+0.04x3 (5)
【0079】
また、比較例として、第1実施形態で容量推定式算出部41が算出した水素貯蔵装置24の容量推定式を示す。また、比較例として、種々の容量推定式により、構成機器容量推定部43が算出した水素貯蔵装置24の容量推定値を黒丸で示す。なお、最小残余電力x及び年間残余電力量xと、水素貯蔵装置24の容量推定式との関係図は省略する。
【0080】
図13は、第5実施形態のエネルギー貯蔵装置における蓄電池の容量推定式と特徴量との関係図の例である。
【0081】
第1実施形態と同様に、本実施形態における推定式は、第1の特徴量として、月別平均残余電力の年間推移変動幅xと、最小残余電力xと、年間残余電力量xとを用いている。図13は、蓄電池21の容量推定式と特徴量xとの関係図を示している。図1の構成を備えるエネルギー貯蔵装置20について、蓄電池21の容量の推定値は、式(6)と(7)との間で囲まれる範囲で表される。式(6)は、蓄電池21の容量における推定値の上限yを表し、式(7)は、加減yを表す。つまり、式(6)と式(7)との間の範囲で表される容量帯により、低コストで高効率なエネルギー貯蔵装置20を構成する蓄電池21の容量が実現される。本実施形態では、容量推定式算出部41は、これらの特徴量を説明変数として、機械学習を用いた回帰分析により、推定式を算出した。以下に、式(6)及び(7)を示す。
y6=7x1-4.5x2+0.003x3+1500 (6)
y7=5x1-3.8x2+0.004x3+500 (7)
【0082】
また、比較例として、第1実施形態で容量推定式算出部41が算出した蓄電池21の容量推定式を示す。また、比較例として、種々の容量推定式により、構成機器容量推定部43が算出した蓄電池21の容量推定値を黒丸で示す。なお、最小残余電力x及び年間残余電力量xと、蓄電池21との容量推定式との関係図は省略する。
【0083】
本実施形態によれば、ユーザは、式(5)及び(6)より表される容量帯を有する水素貯蔵装置24と、式(6)及び(7)より表される容量帯を有する蓄電池21を組み合わせてエネルギー貯蔵装置20として導入することで、低コストで高効率なエネルギー貯蔵装置20の容量を表すことができる。また、ユーザは、損失を最小にすることでエネルギーを高効率に運用できるエネルギー貯蔵装置20を構築することができる。
【0084】
(第6実施形態)
図14は、第6実施形態における推定装置のハードウェア構成図である。
【0085】
図14の推定装置1は、CPU等のプロセッサ52と、RAM等の主記憶装置53と、HDD等の補助記憶装置54と、LAN(Local Area Network)ボード等のネットワークインタフェース55と、メモリスロットやメモリポート等のデバイスインタフェース56と、これらの機器を互いに接続するバス57とを備えている。推定装置1は例えば、PC(Personal Computer)等のコンピュータであり、キーボードやマウス等の入力装置9や、LCD(Liquid Crystal Display)モニタ等の出力装置10を備えている。
【0086】
本実施形態においては、第1~第5実施形態のうち、いずれかにおける推定装置1の情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが、補助記憶装置54内にインストールされている。推定装置1は、このプログラムを主記憶装置53に展開して、プロセッサ52により実行する。これにより、図3、7又は10に示す各ブロックの機能を推定装置1内で実現し、第1~第5実施形態で説明した容量の推定等が可能となる。なお、この情報処理により生成されたデータは、主記憶装置53に一時的に保持されるか、補助記憶装置54内に格納され保存される。
【0087】
このプログラムは例えば、このプログラムを記録した外部装置58をデバイスインタフェース56に装着し、このプログラムを外部装置58から補助記憶装置54に格納することでインストール可能である。外部装置58の例は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体や、このような記録媒体を内蔵する記録装置である。記録媒体の例はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD-R(Compact Disk Recordable)、フレキシブルディスク、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、DVD-R (Digital Versatile Disk Recordable)であり、記録装置の例はHDDである。また、このプログラムは例えば、このプログラムをネットワークインタフェース55を介してダウンロードすることでインストール可能である。
【0088】
本実施形態によれば、第1~第5実施形態のうち、いずれかにおける推定装置1の機能をソフトウェアにより実現することが可能となる。
【0089】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な推定装置1は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した推定装置1の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0090】
1:推定装置、2:入力部、3:残余電力算出部、4:特徴量抽出部、
5:推定式算出部、6:推定値算出部、7:出力部、8:記憶部、
9:入力装置、10:出力装置、11:積算部、
12:推定式導出部、13:推定値演算部、
20:エネルギー貯蔵装置、21:蓄電池、22:燃料電池装置、
23:水素製造装置、24:水素貯蔵装置、25:制御装置、
31:第1の発電時系列データ入力部、32:第1の電力需要時系列データ入力部、
33:第2の発電時系列データ入力部、34:第2の電力需要時系列データ入力部、
35:構成機器容量データ入力部、36:導入コストデータ入力部、
37:第1の残余電力算出部、38:第2の残余電力算出部、
39:第1の特徴量抽出部、40:第2の特徴量抽出部、
41:容量推定式算出部、42:コスト推定式算出部、43:構成機器容量推定部、
44:導入コスト推定部、
52:プロセッサ、53:主記憶装置、54:補助記憶装置、
55:ネットワークインタフェース、56:デバイスインタフェース、
57:バス、58:外部装置、
100:再生可能エネルギー発電装置、200:電力需要家、
204:電力系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14