(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096650
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】パネル、フロントパネル
(51)【国際特許分類】
B32B 3/10 20060101AFI20240709BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20240709BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20240709BHJP
E04F 13/074 20060101ALI20240709BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B3/10
H04R1/00 310F
H04R7/04
E04F13/074
E04F13/08 B
E04F13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000304
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】金藤 晶彦
(72)【発明者】
【氏名】須賀 和宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 藤男
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
5D016
【Fターム(参考)】
2E110AA32
2E110AA57
2E110AB03
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4F100AR00B
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(57)【要約】
【課題】基板の表面の凹凸に起因して加飾シートに凹凸が形成されることを抑制する。
【解決手段】パネル10は、フロントパネル20と、エキサイター13と、を備える。フロントパネル20は、第1面21と、第1面21に対向する第2面22と、を含む。エキサイター13は、フロントパネル20の第2面22に設けられている。フロントパネル20は、第1面21から第2面22に向かって、加飾シート30と、平坦化シート60と、空隙51を有する基板50と、をこの順で有する。空隙51の少なくとも一部は、第1面21に近い基板50の表面に凹凸を形成する。第1面21に近い平坦化シート60の表面は、平坦である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面に対向する第2面と、を含むフロントパネルと、
前記フロントパネルの前記第2面に設けられたエキサイターと、を備え、
前記フロントパネルは、前記第1面から前記第2面に向かって、加飾シートと、平坦化シートと、空隙を有する基板と、をこの順で有し、
前記空隙の少なくとも一部は、前記第1面に近い前記基板の表面に凹凸を形成し、
前記第1面に近い前記平坦化シートの表面は、平坦である、パネル。
【請求項2】
前記フロントパネルの前記第1面におけるJIS Z8741:1997の20度鏡面光沢度の平均が18%以下である、請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記フロントパネルの前記第1面は、凹凸を含む、請求項1に記載のパネル。
【請求項4】
前記加飾シートは、前記基板の周縁部を覆う、請求項1に記載のパネル。
【請求項5】
施工面にビスで固定されている、請求項1に記載のパネル。
【請求項6】
施工面に設けられた開口に重なるように配置されている、請求項1に記載のパネル。
【請求項7】
第1面と、前記第1面に対向する第2面と、を含むフロントパネルであって、
前記第1面から前記第2面に向かって、加飾シートと、平坦化シートと、空隙を有する基板と、をこの順で有し、
前記空隙の少なくとも一部は、前記第1面に近い前記基板の表面に凹凸を形成し、
前記第1面に近い前記平坦化シートの表面は、平坦である、フロントパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フロントパネル及びフロントパネルを有するパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗、オフィス、公共施設のような多数の人が利用する空間や、住宅の居間や個室等の室内空間には、音響装置が設置されることがある。音響装置は、BGM(Back Ground Music)等の音楽や川の流れの音等の自然音の再生に用いることができる。空間に音響装置を適切に配置することにより、空間に立体的な音を提供できる。これにより、聴覚的に優れた空間演出を達成できる。
【0003】
音響装置を設置することにより、音響装置の存在が視認され、空間の美的外観が損なわれることがある。音響装置が、視覚的な空間演出を阻害することがある。音響装置によって空間の美的外観が損なわれないよう、建物の内装材等の建材を音響装置として機能させることが考えられる。例えば、建物内の壁面に取り付けられる内装材を平面スピーカ等の音響装置として機能させる。このような音響装置は、パネル状である。このような音響装置によって空間の美的外観が損なわれず、さらには音響装置が内装材として優れた美的外観を有することで、音響装置によって視覚的に優れた空間演出を達成できる。
【0004】
パネル状の音響装置として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載されたパネル状の音響装置は、フロントパネルと、エキサイターと、を有する。エキサイターが振動して振動がフロントパネルに伝わることで、音響装置は音を発する。エキサイターは、フロントパネルの背面に取り付けられている。エキサイターがフロントパネルによって隠蔽されるため、エキサイターにより空間の美的外観が損なわれにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フロントパネルは、基板と、加飾シートと、を有している。加飾シートは、基板に重ねられている。加飾シートは、意匠を表示する。加飾シートにより、パネルに優れた意匠を付与できる。エキサイターの振動によってフロントパネルを適切に振動させるため、基板は、軽量かつ靱性が高いことが望まれている。軽量かつ靱性を高くするために、基板は、ハニカム構造や発泡構造等である。このような基板は、多数の空隙を有する。
【0007】
多数の空隙を有する基板の表面には、空隙に起因する凹凸が形成されている。この凹凸により、基板に重ねられた加飾シートにも凹凸が形成されることがある。基板の凹凸に起因した凹凸が加飾シートに形成されると、加飾シートがパネルに付与する意匠を劣化させる。本開示は、基板の表面の凹凸に起因して加飾シートに凹凸が形成されることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]乃至[7]に関する。
[1]
第1面と、前記第1面に対向する第2面と、を含むフロントパネルと、
前記フロントパネルの前記第2面に設けられたエキサイターと、を備え、
前記フロントパネルは、前記第1面から前記第2面に向かって、加飾シートと、平坦化シートと、空隙を有する基板と、をこの順で有し、
前記空隙の少なくとも一部は、前記第1面に近い前記基板の表面に凹凸を形成し、
前記第1面に近い前記平坦化シートの表面は、平坦である、パネル。
[2]
前記フロントパネルの前記第1面におけるJIS Z8741:1997の20度鏡面光沢度の平均が18%以下である、[1]に記載のパネル。
[3]
前記フロントパネルの前記第1面は、凹凸を含む、[1]または[2]に記載のパネル。
[4]
前記加飾シートは、前記基板の周縁部を覆う、[1]乃至[3]のいずれかに記載のパネル。
[5]
施工面にビスで固定されている、[1]乃至[4]のいずれかに記載のパネル。
[6]
施工面に設けられた開口に重なるように配置されている、[1]乃至[5]のいずれかに記載のパネル。
[7]
第1面と、前記第1面に対向する第2面と、を含むフロントパネルであって、
前記第1面から前記第2面に向かって、加飾シートと、平坦化シートと、空隙を有する基板と、をこの順で有し、
前記空隙の少なくとも一部は、前記第1面に近い前記基板の表面に凹凸を形成し、
前記第1面に近い前記平坦化シートの表面は、平坦である、フロントパネル。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、基板の凹凸に起因して加飾シートに凹凸が形成されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示のパネルが施工面に設けられた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、パネルが設けられる施工面を示す正面図である。
【
図3】
図3は、パネルを背面から示す斜視図である。
【
図4】
図4は、施工面に設けられたパネルの一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、施工面に設けられたパネルの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付された図面における縮尺及び縦横の寸法比等は、図示と理解のしやすさのため、実物のそれらから変更され誇張されている。
【0012】
本明細書において用いられる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語ならびに長さや角度の値等は、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0013】
図1には、施工面1に設置された本開示の一実施の形態に係る複数のパネル10が示されている。
図1に示された例では、施工面1は、建物の内壁面であり、パネル10は、建物の内装材である。
図1に示された例に限らず、施工面1は、天井面、床面等の任意の面であってもよいし、建物の外壁面であってもよい。施工面1は、建具や家具、家電等の面であってもよいし、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等の移動体の内面または外面であってもよい。施工面1は、例えば、コンクリート、石膏ボード、木材、金属、樹脂の面である。
【0014】
図1に示されている例では、複数のパネル10は、正面視において矩形である。複数のパネル10は、二次元配列されている。複数のパネル10は、施工面1の全体に設けられてもよいし、一部のみに設けられてもよい。パネル10の設置位置や向き、用途は、
図1に示された例に限定されない。複数のパネル10の形状や大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0015】
隣り合うパネル10の間の目地5には、目地材6が設けられている。目地材6は、目地5が外部から視認されることを抑制する。目地5の幅、言い換えると隣り合うパネル10の間の長さは、例えば5mm以上20mm以下である。
【0016】
パネル10は、施工面1に意匠を付与し、且つ音響装置として機能する。パネル10は、平面スピーカとして機能する。平面スピーカとは、平面状に音波を発生させる音響装置である。平面状の音波により、パネル10から遠方までほぼ均一に音波を到達させることができる。パネル10が設けられた空間にほぼ均一に音を提供できる。
【0017】
パネル10は、板状である。パネル10の一方の主面である前面には意匠が表示され、他方の主面である背面は施工面1と対面する。パネル10の前面は、例えば各辺の長さが500mm以上10000mm以下であってもよいし、500mm以上2000mm以下であってもよい。パネル10の厚み、言い換えると前面と背面との間の長さは、例えば、10mm以上100mm以下であってもよいし、30mm以上100mm以下であってもよい。
【0018】
図2には、パネル10が設置される施工面1が示されている。
図2では、パネル10及び目地材6が省略されている。
図2に示されているように、パネル10が設置される施工面1には、開口3が設けられている。開口3は、例えば各辺の長さが50mm以上150mm以下の矩形である。パネル10は、施工面1に設けられた開口3に重なるように配置される。パネル10により、開口3は外部から観察されにくい。
【0019】
図3には、パネル10の一例の背面からの斜視図が示されている。
図3に示されているように、パネル10は、フレーム11と、エキサイター13と、端子台15と、取り付け具17と、フロントパネル20と、を有している。
【0020】
フロントパネル20は、第1面21と、第2面22と、を含んでいる。第2面22は、第1面21に対向する。第1面21及び第2面22は、フロントパネル20の主面である。フロントパネル20の第1面21は、パネル10の前面をなす。フロントパネル20の第2面22は、施工面1に対面する。フレーム11、エキサイター13及び端子台15は、フロントパネル20の第2面22に設けられている。取り付け具17は、フレーム11に固定されている。エキサイター13と端子台15とは、電気的に接続されている。フレーム11、エキサイター13及び端子台15は、フロントパネル20に隠蔽されて、外部からの観察されることが抑制されている。フレーム11、エキサイター13及び端子台15によって、パネル10の外観は損なわれにくい。
【0021】
パネル10は、例えば、フロントパネル20の第2面22にフレーム11、エキサイター13及び端子台15を接合する図示しない接合層をさらに有していてもよい。
【0022】
フレーム11は、フロントパネル20を第2面22から支持する。フレーム11は、パネル10の強度を向上させる。フレーム11は、枠状である。フレーム11は、フロントパネル20の周縁に沿って、フロントパネル20の第2面22に設けられている。フレーム11は、フロントパネル20の外形と略同一の形状である。フレーム11の幅は、例えば10mm以上50mm以下である。フレーム11の厚さは、例えば5mm以上40mm以下である。フレーム11の材料は、例えばアルミニウムである。フレーム11は、例えばアルミニウムを曲げ加工することで、または押出加工することで形成されたフレーム材を接合することによって作製できる。
【0023】
エキサイター13は、振動をフロントパネル20に伝えて、フロントパネル20を振動させる。エキサイター13は、振動を適切にフロントパネル20に伝えるよう、フロントパネル20の第2面22に接して設けられていることが好ましい。エキサイター13によってフロントパネル20を振動させることで、パネル10は平面スピーカとして機能する。エキサイター13は、図示しない磁気回路及びボイスコイルを内蔵し、外部から入力される音声信号に基づいて、磁気回路及びボイスコイルが前後方向に相対的に移動することで振動する。前後方向とは、パネル10の厚み方向のことを意味する。
【0024】
エキサイター13は、フロントパネル20に適切に振動を伝えるよう、フロントパネル20の第2面22の中心付近に配置されていることが好ましい。複数のエキサイター13が、フロントパネル20の第2面22に配置されていてもよい。
【0025】
端子台15は、エキサイター13と接続している。端子台15は、図示しない外部の電源や制御装置、ネットワークに接続している。端子台15は、施工面1に設けられた開口3を介して、図示しない外部の電源や制御装置、ネットワークに接続していてもよい。端子台15を介して、エキサイター13に電源やネットワークからの音源の情報を提供できる。端子台15を介して、エキサイター13は制御装置によって制御され得る。
【0026】
取り付け具17は、パネル10を施工面1に取り付け可能にする。取り付け部17は、種々の形状であり得る。
図3に示されている例では、取り付け具17は、L字状に折り曲げられた板である。取り付け具17には、孔18が設けられている。取り付け具17は、例えば金属からなる。
【0027】
図4は、
図3に示されたパネル10の一例が施工面1に取り付けられた状態を示す断面図である。
図4に示されている例では、L字状の取り付け具17の一方の面が、パネル10のフレーム11に取り付けられている。L字状の取り付け具17の他方の面が、施工面1に取り付けられる。
図4に示されているように、取り付け具17の孔18に、ビス7が挿入されている。ビス7は、孔18を介して、施工面1及びパネル10にねじ留めされている。取り付け具17によって、パネル10が施工面1にビス7で固定される。
図4に示されている例では、ビス7は、フロントパネル20の第2面22に対面する位置に配置される。このため、ビス7は、外部から観察されにくい。
【0028】
図5は、パネル10の他の例が施工面1に取り付けられた状態を示す断面図である。
図5に示されている例では、取り付け具17は、平坦である。取り付け具17は、パネル10のフレーム11及び施工面1に取り付けられている。
図5に示されているように、取り付け具17の孔18に、ビス7が挿入されている。ビス7は、孔18を介して施工面1及びパネル10にねじ留めされている。取り付け具17によって、パネル10が施工面1にビス7で固定される。
図5に示されている例では、ビス7は、目地5において施工面1にねじ留めされている。ビス7がねじ留めされた目地5は、目地材6によって覆われる。これにより、ビス7は外部から観察されにくい。
【0029】
図示された例に限らず、パネル10は、ビス以外のもので、施工面1に固定されてもよい。
【0030】
フロントパネル20は、フレーム11、エキサイター13及び端子台15を外部から観察されにくくし、且つエキサイター13の振動が伝わることで撓んで平面スピーカの振動板として機能する。フロントパネル20は、第1面21に意匠を表示する。フロントパネル20は、板状である。フロントパネル20の厚みは、例えば3mm以上10mm以下である。図示されている例では、フロントパネル20は、矩形であるが、任意の形状であってもよい。
【0031】
図6は、フロントパネル20の分解断面図である。
図6に示されているように、フロントパネル20は、第1面21から第2面22に向かって、加飾シート30と、平坦化シート60と、基板50と、をこの順で有している。言い換えると、平坦化シート60は、加飾シート30と基板50との間に配置されている。加飾シート30は、基板50の周縁部55を覆っている。フロントパネル20は、例えば、平坦化シート60と基板50とを接合する図示しない接合層をさらに有していてもよい。
【0032】
加飾シート30は、フロントパネル20の第1面21をなす。加飾シート30は、フロントパネル20の第1面21に意匠を表示する。加飾シート30が表示する意匠は、絵柄及び/又は凹凸を含む。絵柄及び/又は凹凸により、加飾シート30は、フロントパネル20の第1面21に優れた意匠を表示できる。意匠の凹凸とは、例えばエンボスや盛り上げ印刷によって設けられた、意匠を表示することが意図された凹凸のことを意味し、後述する基板の表面の空隙によって形成される凹凸とは区別される。盛り上げ印刷は、例えば2.5D印刷によって形成できる。加飾シート30が絵柄を含むことで、フロントパネル20の第1面21は、絵柄を含む。加飾シート30が凹凸を含むことで、フロントパネル20の第1面21は、凹凸を含む。加飾シート30が表示する意匠は、JIS Z8741:1997の20度鏡面光沢度の平均が18%以下である。これにより、フロントパネル20の第1面21のJIS Z8741:1997の20度鏡面光沢度の平均は、18%以下となる。
【0033】
鏡面光沢度は、JIS Z 8741:1997に準拠し、BYK-Gardner社製のmicro-TRI-gloss Cat.No.4563を用いて測定する。20°鏡面光沢度は、JIS Z 8741:1997に記載の方法5に準拠して、入射角を20°として測定された値である。入射角は、入射面の法線方向と入射光の光路との間の角度であって、90°以下の値をとる。
【0034】
鏡面光沢度は、フロントパネル20の第1面21の1cm角の正方形の区域について、測定される。10箇所の区域での第1面21の鏡面光沢度を測定し、10箇所の平均値として、鏡面光沢度の平均を特定する。鏡面光沢度を測定する10箇所は、第1面21の幅方向及び長さ方向に沿って十字状またはL字状に並ぶ。前述のように方向を特定した理由は、JIS Z8741:1997の20度鏡面光沢度の測定光が、平行光線のためである。測定光は、フロントパネル20の第1面21の長さ方向に対して平行である。
【0035】
図7には、加飾シート30の一例の断面図が示されている。
図7に示されているように、加飾シート30は、基材31と、加飾層33と、を含んでいる。図示されている例に限らず、加飾シート30は、表面保護層やプライマー層等をさらに含んでいてもよい。
【0036】
基材31は、加飾層33を支持する。基材31の形状及び寸法は、特に制限されない。基材31の厚みは、特に制限されないが、一般的には、製造加工適性、機械的強度、使用取扱性、及び経済性の観点から、10μm以上10cm以下である。基材31の厚みは、20μm以上300μm以下であってもよいし、1mm以上2cm以下であってもよい。
【0037】
基材31の材料は、例えば、樹脂、金属、非金属無機材料、繊維質材料及び木質系材料である。基材31は単層でもよい。基材31は、上記材料からなる層を複数積ねることで形成されていてもよい。基材が複数の層を重ねた積層体である場合、互いに異なる材料の複数の層を積ねることで、各層の材料が有する諸性能を互いに補完してもよい。基材31が積層体である場合は、積層体の各構成層の層間に、接着剤層等の接着力を強化するための層があってもよい。
【0038】
基材31に用いられる樹脂は、例えば、各種の合成樹脂又は天然ゴム等の天然樹脂である。合成樹脂は、例えば、オレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂及びアクリル樹脂等の硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する。熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等である。熱硬化性樹脂組成物には、これら熱硬化性樹脂に加えて、必要に応じて硬化剤及び硬化触媒等が添加されてもよい。
【0040】
熱硬化性樹脂組成物は、例えば、主剤をポリオール系樹脂、硬化剤をイソシアネート系化合物とした2液硬化の組成物である。ポリオール系樹脂は、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール等である。
【0041】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、例えば、電子線硬化性樹脂組成物及び紫外線硬化性樹脂組成物である。
【0042】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む。電離放射線硬化性官能基は、電離放射線の照射によって架橋硬化する基である。電離放射線硬化性官能基は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基である。電離放射線硬化性官能基は、例えば、エポキシ基または及びオキセタニル基であってもよい。
【0043】
本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味する。電離放射線は、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)である。電離放射線は、例えば、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線であってもよい。
【0044】
電離放射線硬化性化合物は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマー(「重合性プレポリマー」と呼称されることもある)の中から適宜選択されてもよい。
【0045】
電離放射線硬化性化合物は、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物でもよい。電離放射線硬化性化合物は、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物でもよい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物は、モノマー及びオリゴマーのいずれでもよい。
【0046】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーは、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等である。3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等である。多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等である。
【0047】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
【0048】
好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
【0049】
上記電離放射線硬化性樹脂は、1種を単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
【0050】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含んでもよい。光重合開始剤は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上でもよい。光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができる。光重合促進剤は、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上でもよい。
【0051】
基材31に用いられる金属は、例えば、アルミニウム又はジュラルミン等のアルミニウムを含む合金、鉄又は炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄を含む合金、銅又は真鍮、青銅等の銅を含む合金、金、銀、クロム、ニッケル、コバルト、錫、チタニウム等である。基材31は、これらの金属がめっきされためっき層を含んでいてもよい。
【0052】
基材31に用いられる非金属無機材料は、例えば、セメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、石膏、珪酸カルシウム、木片セメント等の非セラミック系窯業系材料、陶磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミック系窯業系材料、石灰岩、大理石、花崗岩、安山岩等の天然石等である。
【0053】
基材31に用いられる繊維質材料は、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、和紙、チタン紙、リンター紙、硫酸紙、パラフィン紙、パーチメント紙、グラシン紙、壁紙用裏打紙、板紙及び石膏ボード用原紙等の紙;絹、木綿、麻、ポリエステル樹脂繊維、アクリル樹脂繊維、硝子繊維、炭素繊維等の繊維からなる織布又は不織布;である。紙は、紙基材の繊維間強度を上げたり、紙基材の毛羽立ちを防止したりするために、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加されていてもよい。樹脂を添加した紙は、例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙等である。繊維質材料層に樹脂層を重ねた基材は、例えば、壁紙用裏打紙の表面に、塩化ビニル樹脂層、オレフィン樹脂層、アクリル樹脂層等の樹脂層を重ねた壁紙原反等である。
【0054】
基材31は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。基材の材料が樹脂である場合、添加剤は、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の無機充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。添加剤の含有量は、加工特性等を阻害しない範囲であれば特に制限されず、要求特性等に応じて適宜設定され得る。
【0055】
基材31は、加飾層33との密着性の向上のため、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施されてもよい。酸化法は、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等である。凹凸化法は、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等である。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択される。コロナ放電処理法は、表面処理の効果及び操作性等の面において優れる。
【0056】
加飾層33は、加飾シート30が表示する意匠を形成する。加飾層33は、例えば、木材板表面の年輪や導管溝等の木目模様;大理石、花崗岩等の石板表面の石目模様;布帛表面の布目模様;皮革表面の皮シボ模様;目地溝を含むタイル貼り模様;目地溝を含む煉瓦積模様;砂目模様;梨地模様;互いに平行な方向に伸びる凹條部及び凸條部を複数配列させてなる模様(いわゆる「万線状凹凸模様」又は「光線彫模様」);幾何学模様、文字、図形、水玉及び花柄等の抽象柄模様;等の意匠を形成してもよい。
【0057】
図7に示されているように、加飾層33は、絵柄層35と、バインダー37と、粒子38と、盛り上げ部39と、を含んでいる。
【0058】
絵柄層35は、加飾層33が形成する意匠の絵柄を形成する。絵柄層35は、基材31に印刷されたインキや金属薄膜によって形成されている。
【0059】
インキは、特に制限されない。インキは、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料;等である。インキの厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下でもよく、1μm以上10μm以下でもよく、2μm以上5μm以下でもよい。
【0060】
金属薄膜は、例えば、金、銀、銅、錫、鉄、ニッケル、クロム、コバルト等の金属元素単体の薄膜;前記金属元素の二種以上を含む合金の薄膜;等であってもよい。合金は、例えば、真鍮、青銅、ステンレス鋼等であってもよい。金属薄膜の膜厚は、例えば、0.1μm以上1μm以下である。
【0061】
バインダー37は、粒子38を保持している。バインダー37は、盛り上げ部39を覆っている。盛り上げ部39が設けられていない部分において、バインダー37は、絵柄層35と接触している。盛り上げ部39は、バインダー37に埋め込まれている。盛り上げ部39が設けられている部分におけるバインダー37の厚さの平均は、例えば、0.5μm以上10mm以下であってもよいし、20μm以上3mm以下であってもよい。
【0062】
バインダー37は、例えば、熱可塑性樹脂組成物の硬化物である。バインダー37は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物であってもよい。バインダー37に用いられる熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ナイロン、ポリスチレン及びABS樹脂等である。バインダー37に用いられる熱硬化性樹脂は、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂である。熱硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加されてもよい。
【0063】
粒子38は、加飾層33が形成する意匠の凹凸を形成する。凹凸により、フロントパネル20の第1面21に触感を付与でき、且つ加飾層33で反射した光を散乱させて、絵柄の美感を向上させることができる。粒子38の平均粒径は、例えば、3μm以上12μm以下であってもよいし、4μm以上9μm以下であってもよい。粒子38の平均粒径は、盛り上げ部39が設けられている部分におけるバインダー37の厚さの平均より大きくなっている。粒子38は、盛り上げ部39が設けられている部分において、バインダー37から突出できる。粒子38の平均粒径が大きすぎないため、粒子38がバインダー37から脱落することを抑制できる。
【0064】
粒子38の平均粒径は、以下の方法で特定される。加飾シート30を透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって拡大して、個々の粒子38を観察する。観察された粒子38から、個々の粒子38の粒径を測定する。粒子38が短軸径と長軸径とを有する場合、それらの平均をその粒子38の粒径とする。粒子38が凝集している場合、粒子38の粒径は、凝集した部分における内接円の直径とする。100個の粒子38の粒径を測定し、その平均を粒子38の平均粒径とする。
【0065】
粒子38の含有量は、100質量部のバインダー37に対して、例えば、15質量部以上30質量部以下であってもよいし、20質量部以上23質量部以下であってもよい。
【0066】
粒子38は、例えば、樹脂粒子及び無機粒子である。粒子38に用いられる樹脂粒子は、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等の樹脂の一種以上を含んでもよい。粒子38に用いられる無機粒子は、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等の無機物の一種以上を含んでもよい。
【0067】
盛り上げ部39は、加飾層33を盛り上げて、粒子38による凹凸を形成しやすくする。加飾層33は、複数の盛り上げ部39を含んでいてもよい。盛り上げ部39は、加飾層33の一部にのみ設けられていてもよい。盛り上げ部39が設けられている部分と設けられていない部分との間に、意匠や触感の違いを生じさせることができる。
【0068】
盛り上げ部39は、基材31上に配置されている。盛り上げ部39は、例えば、基材31に樹脂組成物を印刷することで形成できる。加飾シート30の全面積に対する盛り上げ部39が設けられた面積の割合は、5%以上90%以下でもよく、10%以上80%以下でもよく、15%以上70%以下でもよい。
【0069】
盛り上げ部39が設けられている面積の割合は、次のようにして測定され得る。1m×1mの大きさの加飾シート30に対して、任意の箇所から30cm×30cmの試験片を3片切り出す。試験片の各々について画像解析を行い、盛り上げ部39が設けられている面積の割合を算出する。3片の試験片での面積の割合の測定値の平均値として、加飾シート30の全面積に対する盛り上げ部39が設けられた面積の割合が特定される。加飾シート30の大きさが1m×1m未満である場合、上記1m×1mの大きさに対する試験片の大きさ30cm×30cmとする場合における化粧シートに対する試験片の面積割合と同じ面積割合を有するように、試験片の大きさを決定する。
【0070】
上述した例に限らず、加飾シート30が表示する意匠が含む凹凸は、加飾シート30をエンボス加工することによって形成されてもよい。
【0071】
基板50は、加飾シート30を支持し、エキサイター13による振動をフロントパネル20の全体に伝える。基板50は、板状である。基板50の厚みは、例えば1mm以上10mm以下である。
【0072】
基板50は、エキサイター13による振動を適切に伝えるよう、密度が低く且つ高い靱性を有する。密度が低いことで、基板50が軽量になる。エキサイター13の振動で破壊されないよう、基板50は柔らかいことが好ましい。
【0073】
基板50は、密度が低くなるよう、ハニカム構造や発泡構造等であり、多数の空隙51を有する。
図8には、基板50の一例の斜視図が示されている。
図8に示されている例では、基板50は、ハニカム構造である。基板50は、六角形状の空隙51を有している。空隙51の少なくとも一部は、フロントパネル20の第1面21に近い基板50の表面に凹凸53を形成している。空隙51が窪みとなるため、基板50の表面が凹凸53となっている。
【0074】
基板50がエキサイター13からの振動を適切に伝えることで、フロントパネル20の全体を均一に振動させることができる。これにより、平面波による音波を形成できる。
【0075】
基板50の材料は、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレン、ポリエステル、スチレン、カーボン繊維(CFRP)、MDF、アラミド、ポリプロピレン等の樹脂、木材、金属、硝子や陶磁器等のセラミック、石膏である。基板50は、例えばアルミの複合板であってもよい。
【0076】
平坦化シート60は、加飾シート30と基板50との間に位置している。平坦化シート60は、フロントパネル20の第1面21に近い基板50の表面の全体を覆う。平坦化シート60は、基板50の表面の凹凸53を平坦化する。第1面21に近い平坦化シート60の表面は、平坦である。第2面22に近い平坦化シート60の表面は、基板50の表面の凹凸53の一部を埋めるような凹凸となっていてもよい。平坦化シート60により、基板50の表面の凹凸53の影響をほとんど受けずに、加飾シート30が第1面21に所望の意匠を表示できる。
【0077】
平坦であるとは、JIS B0621:1984に規定されている平面度が、平坦化シート60自体の厚みを除いて、0.2mm以下であることを意味する。平面度は、ゴニオメーターによって測定できる。
【0078】
平坦化シート60は、薄膜状である。平坦化シート60は、軽量且つ高い靱性を有する。これにより、平坦化シート60は、エキサイター13から伝えられた基板50の振動を妨げにくい。パネル10が発する音が平坦化シート60によって劣化することが、抑制される。
【0079】
平坦化シート60の厚みは、例えば50μm以上500μm以下である。平坦化シート60の厚みが十分に薄いため、平坦化シート60は、エキサイター13から伝えられた基板50の振動を妨げにくい。平坦化シート60の厚みが十分に厚いため、平坦化シート60は、基板50の表面の凹凸53を平坦化できる。
【0080】
平坦化シート60の材料は、例えば、二軸延伸ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンナフタレート、ガラスエポキシ樹脂である。ガラスエポキシ樹脂は、軽量で変形しにくいので、平坦化シート60の材料として特に好ましい。
【0081】
パネル10の作用について説明する。
【0082】
外部の制御装置から端子台15を介してエキサイター13を制御して、所望の振動をさせる。エキサイター13の振動は、フロントパネル20に伝わる。フロントパネル20は、平面スピーカの振動板として機能する。フロントパネル20が振動することで、パネル10が平面スピーカとして機能する。パネル10から平面状に音波が発生する。パネル10が設けられた空間にほぼ均一に音を提供できる。パネル10が設けられた空間において、聴覚的に優れた空間演出を達成できる。
【0083】
フロントパネル20は、フレーム11、エキサイター13及び端子台15を隠蔽している。フレーム11、エキサイター13及び端子台15によって、パネル10の外観は損なわれにくい。フロントパネル20の第1面21をなす加飾シート30は、絵柄及び/又は凹凸を含む意匠を表示する。加飾シート30が表示する意匠により、パネル10が設けられた空間において、視覚的に優れた空間演出を達成できる。
【0084】
従来のパネルにおいて、多数の空隙を有する基板の表面には、空隙による凹凸が形成されている。基板に加飾シートが重ねられると、加飾シートにも基板の空隙に起因した凹凸が形成される。基板の凹凸に起因して加飾シートに凹凸が形成されると、加飾シートが表示する意匠が劣化する。この結果、パネル10が設けられた空間において、視覚的に優れた空間演出を達成することが困難である。
【0085】
本実施の形態のパネル10において、フロントパネル20は、第1面21から第2面22に向かって、加飾シート30と、平坦化シート60と、基板50と、をこの順で有している。言い換えると、加飾シート30と基板50との間に、平坦化シート60が設けられている。第1面21に近い平坦化シート60の表面は、平坦である。平坦化シート60によれば、基板50の表面に形成された空隙51による凹凸が、平坦化シート60によって平坦化できる。加飾シート30に基板50の空隙による凹凸に起因した凹凸がほとんど形成されない。基板50の表面の凹凸に起因して加飾シート30に凹凸が形成されることを抑制できる。加飾シート30が表示する意匠の劣化を抑制できる。
【0086】
平坦化シート60は、エキサイター13から伝えられた基板50の振動を妨げにくい。平坦化シート60を設けたことによって、フロントパネル20が平面スピーカの振動板としての機能が劣化することが抑制される。フロントパネル20が平坦化シート60を有する本実施の形態のパネル10では、基板50の表面の凹凸によって加飾シート30が表示する意匠が損なわれにくく、且つ、フロントパネル20の平面スピーカの振動板としての機能の劣化を抑制できる。
【0087】
加飾シート30が表示する意匠が凹凸を含むことで、フロントパネル20の第1面21は、凹凸を含んでいる。この場合、基板50の空隙51による凹凸に起因した凹凸が加飾シート30にほとんど形成されないことで、加飾シート30が表示することを意図された意匠を、フロントパネル20の第1面21に適切に表示できる。
【0088】
フロントパネル20の第1面21におけるJIS Z8741:1997の20度鏡面光沢度の平均が18%以下である。加飾シート30に基板50の空隙51による凹凸に起因した凹凸がほとんど形成されないため、フロントパネル20の第1面21における鏡面光沢度を低くできる。
【0089】
加飾シート30は、基板50の周縁部55を覆っている。フロントパネル20を第1面21の法線方向に対して傾いた方向から観察しても、基板50が観察されにくくなっている。パネル10において、フロントパネル20は、観察される方向によれずに優れた意匠を表示できる。パネル10が設けられた空間において、視覚的に優れた空間演出を達成できる。
【0090】
フロントパネル20が音を発生させるために振動した後、振動が継続すると、意図されない音の原因となり得る。本実施の形態では、パネル10は、施工面1にビス7で固定されている。フロントパネル20が音を発生させるために振動した後のフロントパネル20の振動を抑制できる。施工面1は十分に大きいため、振動が伝わっても意図されない音を発生させにくい。これにより、パネル10の振動による意図されない音、いわゆるビビリ音の発生を抑制できる。
【0091】
フロントパネル20が音を発生させるために振動すると、フロントパネル20の第1面21からだけでなく、第2面22からも音が発生する。第2面22から発生した音が施工面1で反射する等により第1面21の方向に向かうと、意図されない音の原因になり得る。本実施の形態では、パネル10は、施工面1に設けられた開口3に重なるように配置されている。第2面22から発生した音を開口3から外部に逃がすことができる。第2面22から発生した音が第1面21の方向に向かうことが抑制される。
【0092】
本実施の形態のパネル10は、フロントパネル20と、エキサイター13と、を備える。フロントパネル20は、第1面21と、第1面21に対向する第2面22と、を含む。エキサイター13は、フロントパネル20の第2面22に設けられている。フロントパネル20は、第1面21から第2面22に向かって、加飾シート30と、平坦化シート60と、空隙51を有する基板50と、をこの順で有する。空隙51の少なくとも一部は、第1面21に近い基板50の表面に凹凸を形成する。第1面21に近い平坦化シート60の表面は、平坦である。本実施の形態のパネル10によれば、平坦化シート60によれば、基板50の表面に形成された空隙による凹凸が、平坦化シート60によって平坦化できる。加飾シート30に基板50の空隙による凹凸に起因した凹凸がほとんど形成されない。基板50の表面の凹凸53に起因して加飾シート30に凹凸が形成されることを抑制できる。
【0093】
本開示の態様は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 施工面
3 開口
5 目地
6 目地材
7 ビス
10 パネル
11 フレーム
13 エキサイター
15 端子台
17 取り付け具
18 孔
20 フロントパネル
21 第1面
22 第2面
30 加飾シート
31 基材
33 加飾層
35 絵柄層
37 バインダー
38 粒子
39 盛り上げ部
50 基板
51 空隙
53 凹凸
55 周縁部
60 平坦化シート