IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社モルテンの特許一覧

<>
  • 特開-歩行補助車 図1
  • 特開-歩行補助車 図2
  • 特開-歩行補助車 図3
  • 特開-歩行補助車 図4
  • 特開-歩行補助車 図5
  • 特開-歩行補助車 図6
  • 特開-歩行補助車 図7
  • 特開-歩行補助車 図8
  • 特開-歩行補助車 図9
  • 特開-歩行補助車 図10
  • 特開-歩行補助車 図11
  • 特開-歩行補助車 図12
  • 特開-歩行補助車 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096653
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】歩行補助車
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000327
(22)【出願日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 博
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD08
4C046DD27
4C046DD29
4C046DD33
4C046DD47
(57)【要約】
【課題】 使用者が歩行補助車を持ち上げて移動する場合に、重心バランスを崩さずに移動できる歩行補助車を提供する。
【解決手段】 前後左右の少なくとも4個の車輪59,60と、車輪59,60の支持脚と、支持脚を支持する基体部41と、基体部41から上方に向けて立設されたハンドル支持フレームと、ハンドル支持フレームに固定されたハンドルフレーム64と、ハンドルフレーム64に設けられた一対のグリップ部65とを有した歩行補助車51であって、グリップ部65の前後方向の長さ範囲Dが、歩行補助車51の前後方向の重心位置を含んでいることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後左右の少なくとも4個の車輪と、前記車輪の支持脚と、前記支持脚を支持する基体部と、前記基体部から上方に向けて立設されたハンドル支持フレームと、前記ハンドル支持フレームに固定されたハンドルフレームと、前記ハンドルフレームに設けられた一対の把持部とを有した歩行補助車であって、
前記把持部の前後方向の長さ範囲が、前記歩行補助車の前後方向の重心位置を含んでいることを特徴とする歩行補助車。
【請求項2】
前記把持部の前後方向の中心位置と前記歩行補助車の前後方向の重心位置とが一致することを特徴とする請求項1に記載の歩行補助車。
【請求項3】
最も前側の前記支持脚の前記基体部における前後方向位置と、前記ハンドル支持フレームの前記基体部における前後方向位置とが一致することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歩行補助車。
【請求項4】
最も前側の前記支持脚の前記基体部における前後方向位置と、最も後側の前記支持脚の前記基体部における前後方向位置との中間位置に、前記ハンドル支持フレームの前記基体部における前後方向位置が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歩行補助車。
【請求項5】
最も前側の前記車輪が自在輪であり、前記自在輪はロック装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の歩行補助車。
【請求項6】
前記基体部は立ち上がり補助用の手腕支え部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の歩行補助車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の歩行を補助する歩行補助車に関し、特に使用者の生活空間内において使用する場合に好適な歩行補助車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行に不安のある人は、杖、歩行器、手すりなどを生活空間に設けて歩行の補助を行っていた。
また、室内等の生活空間内において歩行補助車を使用して、家の部屋間を移動することが行われている。歩行に不安のある人のために、部屋や廊下等の段差をなくした住宅や各種工事も提供されているが、全ての人にそのような段差をなくした居住区間が確保できるとは限らない。
【0003】
一般に、歩行に不安のある人は、床やベッドからの立ち上がりにも転倒しないかと不安を感じる場合が多く、立ち上がりを補助する手すり等を部屋の不安に思う箇所に設けることが行われている。
室内などの生活空間にある段差を乗り越えるために、使用者が自らが歩行補助車持ち上げて段差を乗り越えるように操作することも多いのが現状である。
一般に室内で使用される歩行補助車においても、下記特許文献1に例示されるようにハンドルフレームの左右グリップ部の下方にそれぞれブレーキレバーを設ける構成が多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-137193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように歩行に不安のある人が自分の住宅などの生活空間において、歩行補助車を使用する課題としては以下のような課題がある。
(A)室内等の段差を乗り越えるために、使用者が歩行補助車を持ち上げて移動する場合、従来の歩行補助車ではハンドルの位置から見た歩行補助車の重心バランスが不安定であることから、使用者が操作しにくいともに、その後の歩行補助車の歩行においても不安定になる傾向があった。
【0006】
(B)床やベッドからの立ち上がりに室内用の歩行補助車を利用する場合、歩行補助車を動かないように固定する必要がある。しかし、従来の歩行補助車では、左右グリップ部の下方にあるブレーキレバーを固定操作するか、個々の歩行補助車が有する左右の車輪ロック装置をオンに操作する必要があり、操作が複雑で使用者が固定しづらいのが現状であった。
【0007】
本発明は、上記各課題を解決するためになされたものである。
本発明の目的は、使用者が歩行補助車を持ち上げて移動する場合に、重心バランスを崩さずに移動できる歩行補助車を提供することにある。
本発明の他の観点からの目的は、使用者が生活空間において歩行補助車を使用する場合に、立ち上がりを考慮した車輪の固定や歩行補助車の安定性を向上させた歩行補助車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る歩行補助車は、前後左右の少なくとも4個の車輪と、前記車輪の支持脚と、前記支持脚を支持する基体部と、前記基体部から上方に向けて立設されたハンドル支持フレームと、前記ハンドル支持フレームに固定されたハンドルフレームと、前記ハンドルフレームに設けられた一対の把持部とを有した歩行補助車であって、
前記把持部の前後方向の長さ範囲が、前記歩行補助車の前後方向の重心位置を含んでいることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様は、前記第1態様に記載の歩行補助車であって、前記把持部の前後方向の中心位置と前記歩行補助車の前後方向の重心位置とが一致することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3態様は、前記第1態様又は前記第2態様に記載の歩行補助車であって、
最も前側の前記支持脚の前記基体部における前後方向位置と、前記ハンドル支持フレームの前記基体部における前後方向位置とが一致することを特徴とする。
本発明の第4態様は、前記第1態様又は前記第2態様に記載の歩行補助車であって、
最も前側の前記支持脚の前記基体部における前後方向位置と、最も後側の前記支持脚の前記基体部における前後方向位置との中間位置に、前記ハンドル支持フレームの前記基体部における前後方向位置が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5態様は、前記第1態様に記載の歩行補助車であって、最も前側の前記車輪が自在輪であり、前記自在輪はロック装置を備えていることを特徴とする。
本発明の第6態様は、前記第1態様に記載の歩行補助車であって、前記基体部は立ち上がり補助用の手腕支え部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明であれば、使用者が歩行補助車を持ち上げて移動する場合に、重心バランスを崩さずに移動できる歩行補助車を提供できる。
本発明であれば、使用者が生活空間において歩行補助車を使用する場合に、立ち上がりを考慮した車輪の固定や歩行補助車の安定性を向上させた歩行補助車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る生活空間用歩行補助車の斜視図である。
図2】本実施形態に係る生活空間用歩行補助車の正面図である。
図3】本実施形態に係る生活空間用歩行補助車の右側面図である。
図4】本実施形態に係る生活空間用歩行補助車の平面図である。
図5】本実施形態に係る生活空間用歩行補助車において、ブレーキケースを備えたハンドルフレーム周辺を示した斜視図である。
図6】(a)はブレーキケースの平面図、(b)はブレーキ解除状態のブレーキケース内の様子を下方から見た横断面図、(c)はブレーキがロック状態の様子を下方から見た横断面図である。
図7】(a)は左側の車輪ブレーキ装置において解除状態の様子を説明するための斜視図、(b)はその解除状態の車輪ブレーキ装置の要部縦断面図である。
図8】(a)は左側の車輪ブレーキ装置においてロック状態の様子を説明するための斜視図、(b)はそのロック状態の車輪ブレーキ装置の要部縦断面図である。
図9】(a)は左側の車輪側ブレーキ装置において解除状態の様子を説明するための斜視図、(b)はその要部拡大図である。
図10】(a)は左側の車輪側ブレーキ装置においてロック状態の様子を説明するための斜視図、(b)はその要部拡大図である。
図11】車輪側ブレーキ装置の構成を生活空間用歩行補助車の内側から見た斜視図である。
図12】本実施形態において、手腕支え部の別の構成例を説明するための斜視図である。
図13】本実施形態において、生活空間用歩行補助車のハンドルから見た重心バランスを考慮した他の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る一実施形態である歩行補助車について説明する。
この実施形態では、歩行補助車の一例として生活空間用歩行補助車を例にとって説明する。本発明は、部屋の間における段差などを有する使用者の室内生活空間において、好適に適用できる歩行補助車である。
【0015】
まず、最初に生活空間用歩行補助車(以下、歩行補助車と略称することもある)の具体的構成について説明する。
<生活空間用歩行補助車の構成>
本実施形態で説明する生活空間用歩行補助車51は、室内などの生活空間において、室内等を移動する場合に歩行を補助するとともに、床面やベッドなどからの立ち上がり動作において、使用者の支えになる歩行補助車51を提供するという目的を有して構成されたものである。
【0016】
本明細書における生活空間用歩行補助車51の記述において、図1に示すように、歩行補助車の進む方向を前方向、後退する方向を後方向とする前後方向(図1においてX方向で示す)と称し、前後方向と直交する方向を横方向、左右方向(図1においてY方向で示す)と称し、前後方向と横方向の両方に直交する方向を上下方向、高さ方向(図1においてZ方向で示す)と称する。また、左右の向きは歩行補助車を押して前方に移動する使用者から見た向きを基準にしている。
【0017】
図1図4に示すように、生活空間用歩行補助車51は手腕支え部52と、手腕支え部52に立設された一対の支柱67と、一対の支柱67の上端部に固定されたハンドルフレーム64と、手腕支え部52の下面後方寄りで左右端部位置からそれぞれ斜め後下方に延びる一対の後脚55と、手腕支え部52の下面前方寄りで左右端部位置からそれぞれ斜め前下方に延びる一対の前脚56とを有している。
【0018】
後脚55の先端域には車輪ブレーキ装置22(図1参照)と後輪59とが固定されている。車輪ブレーキ装置22はブレーキケース6から引き出されるブレーキのケーブル10,16内のワイヤー12,18によって駆動される。
図3に示すように、前脚56は、手腕支え部52の下面から延びる直線部57と、その直線部57を繋いで前方斜め下方に延びる傾斜部58を有している。傾斜部58の先端域には前輪60が設けられている。前輪60はそれぞれ左右一対の車輪で構成され、前後左右に移動できる自在輪が採用されている。
【0019】
左右一対の支柱67(ハンドル支持フレーム)が手腕支え部52の水平部53から立設される場合に前脚56の直線部57を上方に延長するように構成されている。つまり、支柱67の軸中心と前脚56の直線部57の軸中心はほぼ一致するように構成してある。このように構成することで、上方からの荷重を前脚56,後脚55に振り分けて安定して支えることができる。
【0020】
手腕支え部52は、支持脚である前脚56,後脚55を支持する基体部41として機能している。また、基体部41は、上方に向けて立設された支柱67(ハンドル支持フレーム)を支持する基体としての機能がある。支柱67の上端にはハンドルフレーム64が固定されている。具体的には、図1から図5に示すように、ハンドルフレーム64の左右両端部に設けられたそれぞれのグリップ部65(把持部の一例)の前後方向の長さ範囲をDとした場合に、その長さ範囲D内に歩行補助車51の前後方向の重心位置を含んでいるようにグリップ部65が設けられている。
【0021】
なお、グリップ部65の前後方向の中心位置と歩行補助車51の前後方向の重心位置とが一致するように構成することが好ましい。本明細書において「重心位置が一致する」とは、各歩行補助車51の構成において、使用者が一対のグリップ部65を持って歩行補助車51を例えば吊り下げるように地面から持ち上げたときに、手で握っている持ち上げている箇所から見て、歩行補助車51の前方重量と後方重量に大きな違いがなく、歩行補助車51が大きく傾かず、ほぼ平行になるように重心バランスが向上するように設定することを言う。このような構成であれば、段差等を乗り越えた後でも歩行補助車51がほぼ平行になり、使用者は安定して動き出すことが可能になる。
また、歩行補助車51が大きく傾かないので、歩行補助車51を持ち上げる高さも低くくて足りることになり、利用者の持ち上げの負担を減らすことができる利点がある。
【0022】
支柱67の立設の角度は鉛直方向(手腕支え部52の水平部53に対して90゜の角度)であることが好ましい。この構成であると、手腕支え部52を掴んだ利用者が体の体勢を崩すことなく、ハンドルフレーム64を掴むことができる。
【0023】
図3に示すように、鉛直線に対する後脚55の傾き角度はθであり、鉛直線に対する前脚56の傾き角度はΦであり、Φはθよりも大きく設定されている。
【0024】
手腕支え部52は、使用者が室内において手や腕でつかまって立ち上がりやすい高さ位置に設定してある。そのために、手腕支え部52までの前脚56,前輪60,後脚55,後輪59の高さを設定してある。具体的には、手腕支え部52の床からの高さは、例えば、700mmから860mmぐらいの高さ範囲に設定される。但し、この数値範囲は一例に過ぎず、この範囲に限定されるものではない。
【0025】
図3に示すように、手腕支え部52は、手や腕を乗せられる支持面としての水平部53と、水平部53の左右端部両側において上方に立ち上がる立ち上げ部54を有している。
図1及び図4に示すように、水平部53は平面視において前方に凸な略三日月形又は凸形の略双曲線形になっている。つまり水平部53は、前側から後側に向けて横幅が徐々に広がるように傾いた形状に構成されている。
また、手腕支え部52の後方の周縁部52b(図1参照)は前方の周縁部52a(図1参照)に比べて緩やかな曲率の略双曲線形に形成されている。
【0026】
立ち上げ部54は手腕支え部52の略三日月形の左右外周縁に沿って上方に立設された支持壁である。立ち上げ部54は前方立ち上がり高さが大きく、後方立ち上がり高さが小さくなっているので、側面視において略直角三角形のような形状に形成してある。
立ち上げ部54には、後脚55の上端部、前脚56の上端部及び支柱67の下端部を内部に埋め込み固定した構成になっている。
【0027】
具体的には、後脚55の上端部は立ち上げ部54の下面後端位置に埋め込まれ、前脚56の上端部は立ち上げ部54の下面前端位置に埋め込まれ、支柱67の下端部は立ち上げ部54の上面前端位置に埋め込まれている。
【0028】
図5に示すように、支柱67は外パイプ61と内パイプ62とから構成され、外パイプ61には内パイプ62が挿入されて伸縮パイプ式の支柱67を構成する。
内パイプ62は鉛直上方に向かって延びており、内パイプ62の先端はハンドルフレーム64に接続されている。
また、ハンドルフレーム64の左右両側の端部側位置にはグリップ部65が設けられている。グリップ部65は、手腕支え部52の略三日月形の左右先端側に沿って設けられている。このように構成することで、ハンドルフレーム64に体重がかかった場合でも安定性を良くできる。
【0029】
図4の平面図に示すように、ハンドルフレーム64は前方に凸形の略双曲線形の形状を有しており、ハンドルフレーム64の前側の周縁部64aと水平部53の前側の周縁部52aはその曲線においてほぼ一致するように構成されている。
【0030】
ハンドルフレーム64の前側の先端部の位置は、前輪60の車軸と後輪59の車軸の前後方向の略中間位置に配設されている。ハンドルフレーム64は、前方側が高く、後方側が低いように上下方向に少し傾いて内パイプ62に接続されている。
【0031】
外パイプ61は手腕支え部52の水平部53から所定高さ位置に設定され、前記直線部57と合わせて、内パイプ62の伸縮する上下高さを確保するようにしてある。
【0032】
また、図1及び図4図5を参照すれば分かるように、ブレーキ装置の操作レバー3の操作方向が、生活空間用歩行補助車51の左右方向に設定されている。また、生活空間用歩行補助車51のハンドルフレーム64の左右中央部域に操作レバー3の突出部3Tがハンドルフレーム64の周縁から突きだすように設けられている。
なお、本歩行補助車51の特徴として、軽量コンパクトを基本として、歩行車の重心、ハンドル、操作する人が近くに寄りやすい構成を採用することで、片手、手のひらなどの軽い力で移動可能にして、なおかつ旋回性も向上させる点がある。
【0033】
また、本実施形態に係る生活空間用歩行補助車51は、立ち上がり補助などの手腕支え部52を備え、操作レバー3は手腕支え部52よりも上方位置に設けられたハンドルフレーム64に設けられている。
腕支え部52は腕置きプレート70としても認識できるものである。また、図12に示すように、オプション構成として、手腕支え部52を腕置きプレート70で構成することもできる。腕置きプレート70は、ハンドルフレーム64の形状に沿って簡単に取り付けられる構成となっている。この構成の場合は、ハンドルフレーム64又はグリップ部65を握る構成だけでなく、腕を腕置きプレート70に乗せて楽な姿勢で歩行、休憩できる構成となる。
【0034】
腕置きプレート70は図12に示すように、ハンドルフレーム64の前方側の曲率に対応した前方側周壁係合部71と、プレート下部側係合部72とを有している。
腕置きプレート70をハンドルフレーム64に取付けても、ブレーキ操作は可能であり、腕乗せによる荷重位置も、ハンドルを把持した場合と変わらないため、重心位置も大きく変化せず、安定性も維持できる。
【0035】
<生活空間内における使用者が感じる各種障害への工夫>
以下、生活空間内において使用者が感じる段差等の各種障害があることにおいて改良した構成について説明する。
室内において使用者が感じる各種障害の大きなものとして段差がある。使用者が歩行補助車を持って段差を乗り越えようとすると、使用者が握っているのはハンドルフレーム64のグリップ部65であるから、従来の歩行補助車の構成では、歩行補助車の前後方向の重心から、かなり後ろの方になっている。
【0036】
前記したように、このような構成ではグリップ部65を掴んで歩行補助車51を持ち上げた時に、グリップ部65の手の位置を基準とした歩行補助車51の前後方向の重心バランスが前後方向において均一でなく、歩行補助車51が傾いた状態になってしまい、不安定な状態で段差を乗り越えなければならない課題があった。
【0037】
この課題を解決するために、図1図4に示す本実施形態に基づいて説明すれば、支柱67の上端部は、グリップ部65のほぼ中央位置に固定され、最も前側の支持脚の基体部41における前後方向位置と、ハンドル支持フレームである支柱67の基体部41における前後方向位置とが一致するように構成されている。そして、最も前側の支持脚は、直線部57と傾斜部58を有するように構成されている。
図3に示すように、後脚55の手腕支え部52への固定位置Eは手腕支え部52の後側部であり、直線部57の手腕支え部52への固定位置Fは手腕支え部52の先側部であり、支柱67の中心軸と直線部57の中心軸は上記バランスを崩さない程度に一致させている。
【0038】
後輪59は前後方向において固定位置Eより後方側位置にあり、前輪60は前後方向において固定位置Fより前方側位置にある構成において、後輪59と前輪60の間の長さを短くコンパクトに構成しても、前記した51の重心バランスを大きく崩すことなく、使用者の立ち上がり補助や段差の乗り越えなどを行うことができる。
【0039】
図13は上記課題解決の観点からの他の実施形態を説明するための図である。
この実施形態は、最も前側の支持脚の基体部41における前後方向位置と、最も後側の支持脚の基体部41における前後方向位置との中間位置に、ハンドル支持フレームである支柱67の基体部41における前後方向位置を設けた構成を特徴としている。
【0040】
この構成では、図3に示す構成と同様に、後輪59は前後方向において固定位置Eより後方側位置にあり、前輪60は前後方向において固定位置Gより前方側位置にある。また、後脚55の手腕支え部52への固定位置Eは手腕支え部52の後側部であり、前脚56の手腕支え部52への固定位置Gは手腕支え部52の先側部にある。さらに、固定位置Eと固定位置Gの中間位置、好ましくはほぼ中央位置に基体部41への支柱67の固定位置を設けている。
この構成であっても、歩行補助車51の安定性を向上させることができる。
【0041】
<ブレーキ装置>
本実施形態は、歩行補助車の左右の車輪に設けられる左側車輪ブレーキ装置22と、右側車輪ブレーキ装置22(図示せず)と、左側車輪ブレーキ装置22と前記右側車輪ブレーキ装置22のブレーキのロック又は解除の操作をワイヤーの引き出し長さの差によって行う左ワイヤー18と右ワイヤー12と、支軸5回りに揺動操作されるブレーキ用の操作レバー3とを有している。
【0042】
また、ブレーキ装置はハンドルフレーム64の左右方向中央部域に設けられたブレーキケース6を有している。
ブレーキケース6と左右の車輪ブレーキ装置22は、左ワイヤー18と右ワイヤー12で接続されている。その左ワイヤー18と右ワイヤー12は、操作レバー3においてその長手方向において位置の異なる2点にそれぞれ固定されている。
【0043】
そして、移動ピンなどの移動係合具27を有する車輪ブレーキ装置22が左右車輪にそれぞれ設けられており、移動係合具27が車輪側係合具32と係合して、ブレーキのロック又は解除の動作を左右の車輪において、同時に一緒に行うように構成している。
【0044】
以下、その具体的な一構成を説明する。
<手元操作部>
手元操作部1(図6参照)は、生活空間用歩行補助車51の所定箇所の所定方向に向けて立設された支軸5と、その支軸5回りに揺動する操作レバー3と、後述する車輪ブレーキ装置22を駆動する一対のワイヤー12,18と、操作レバー3の異なる2点で前記一対のワイヤー12,18を固定する固定部13,19と、一対のワイヤー12,18を覆うとともに一対のワイヤー12,18を引き出す方向に移動可能にする外層手段としての一対のケーブル10,16と、一対のケーブル10,16を生活空間用歩行補助車51の所定箇所に固定する固定手段としての一対の端子11,17とを有している。
【0045】
本実施形態では、手元操作部1はハンドルフレーム64の左右方向の中央部域にフレーム支持部2によって固定されたブレーキケース6を有している。
ブレーキケース6内には上下方向に支軸5が立設され、支軸5には操作レバー3が左右方向に揺動自在に支持されている。
図6(a)はブレーキケースの平面図、(b)はブレーキ解除状態のブレーキケース内の様子を下方から見た横断面図、(c)はブレーキがロック状態の様子を下方から見た横断面図である。図6(b)(c)は下方から見た図であるから、実際の上から見た状態と左右が逆になっている。
【0046】
図6(b)(c)に示すように、操作レバー3の基端側には円盤部4が設けられている。なお、操作レバー3が延びる長手方向において支軸5よりも基端側に右ワイヤー12が固定される右固定部13が設けられている。支軸5よりも先端側には左ワイヤー18が固定される左固定部19が設けられている。
【0047】
また、右ワイヤー12を覆う右ケーブル10は右端子11によってブレーキケース6の右側面の後方側寄り位置に固定され、右ケーブル10の内部を通る右ワイヤー12がワイヤーの延びる線方向に、操作レバー3の回動操作によってその位置が移動できるように構成してある。
【0048】
また、左ワイヤー18を覆う左ケーブル16は左端子17によってブレーキケース6の左側面の前方側寄り位置に固定され、左ケーブル16の内部を通る左ワイヤー18がワイヤーの延びる線方向に、操作レバー3の回動操作によってその位置が移動できるように構成してある。
ブレーキケース6は前方側に左右方向に延びるスリット形の開口部9を有し、操作レバー3の右側当接面と左側当接面の間で左右に揺動できる。
【0049】
図6(b)の状態では、操作レバー3が右端に移動した状態をブレーキの解除位置と設定した場合が示してある。この構成であると右固定部13と右端子11の間のワイヤーが引き出される長さが大きくなる。また、左固定部19と左端子17の間の距離においても、ワイヤーが引き出される長さが大きくなる。
【0050】
つまり、操作レバー3が図6(b)に示すように、支軸5に対して右固定部13が前側(基端側)にあり、支軸5に対して左固定部19が後側(先端側)にある構成では、操作レバー3が右端に揺動された場合は、右ワイヤー12、左ワイヤー18は共に、手元操作部1側に引き出されるワイヤーの長さが大きくなるので、左右の車輪ブレーキ装置22を駆動するワイヤーの動きを同じにできる。
このワイヤーの引き出しが長くなる状態を、左右の車輪ブレーキ装置22において、ブレーキの操作において、解除又はロック状態とするかは、選択事項である。なお、ワイヤーが手元操作部1側に引き出される場合をブレーキの解除状態とする構成が簡単なので、本実施形態では、図6(b)に示すように操作レバー3が右側に操作された場合を、左右の車輪ブレーキ装置22のブレーキを解除する構成として設定している。
【0051】
また、図6(c)の状態でも、同様に下方から見た図であるから、実際の左右が逆になっている。図6(c)の状態では、操作レバー3が左端に移動した時では、右固定部13と右端子11の間の距離は、図6(b)に示す場合と比べると、右ワイヤー12が引き出された長さが小さくなるようになっている。同様に、左固定部19と左端子17の間においても、左ワイヤー18が引き出された長さが小さくなる。
【0052】
つまり、操作レバー3が左端に揺動された場合は、右ワイヤー12、左ワイヤー18において、左右の車輪ブレーキ装置22における左右のワイヤーが手元操作部1側に引き出されるワイヤーの長さが小さくなるので、左右の車輪ブレーキ装置22において共にロックの動きとして設定できる。
【0053】
なお、ブレーキケース6の前方側周縁6s(図6(a)参照)はハンドルフレーム64の形状に沿った形状に構成してある。具体的には、本実施形態ではハンドルフレーム64の中央部の形状は前方に凸の略双曲線形状に形成されているので、その曲線に近い形状にブレーキケース6の前方側周縁6sは形成されている。この構成であると、ハンドルフレーム64に沿って手を沿って移動させると、操作レバー3の突出部3Tに当たるので、操作レバー3の位置を把握しやすく、操作しやくなる。
【0054】
また、操作レバー3の簡単な揺動操作によって、生活空間用歩行補助車51の動きを固定できるので、歩行補助車を手腕支え部52につかまってベッドや床から立ち上がるときに利用者にも分かりやすい簡単な操作で、立ち上がり補助具として利用できる。
さらに、手腕支え部52からほぼ鉛直方向に延びる支柱67にハンドルフレーム64が固定されているので、手腕支え部52につかまった状態から、腕や手を移動させることなく、簡単に操作レバー3を操作しやすい。この構成によって、生活空間用歩行補助車51のブレーキロック状態になっていない状態で、使用者が、手腕支え部52を掴んで立ち上がる不都合を改善することができる。
【0055】
また、前記したように、ハンドルフレーム64の前方側の形状と、手腕支え部52の前方側の形状はほぼ同じ形状に形成されているので、手腕支え部52につかまってベッドや床から立ち上がるときに、手腕支え部52を掴んだ後に、利用者の体勢や重心が変化せずに、ハンドルフレーム64を操作できる。これに対して、手腕支え部52の前後方向の位置と離れた前後方向の位置において、ハンドルフレーム64がある場合は、手腕支え部52からハンドルフレーム64に手を伸ばすときに、利用者の体勢や重心が変化してしまう可能性がある。
この効果は、前記したθとΦの角度の違いによる安定性を増した構成であると、さらにその効果が高まる。
【0056】
<車輪ブレーキ装置>
ブレーキ操作において車輪をロック又は解除する機構は、大別して、生活空間用歩行補助車51の後脚55又は/及び前脚56の先端部域に設けられる車輪ブレーキ装置22と、車輪内壁37に設けられる車輪側係合具32と、を有している。
車輪ブレーキ装置22はワイヤー12,18の上下動によって長孔26などの案内手段によって上下動する移動係合具27を有している。なお、図7図10において、符号30は、後輪59の回転中心を示す軸である。
【0057】
図10に示すように、移動係合具27が左ワイヤー18の操作によって下降し、車輪側被係合手段としての案内壁34に嵌まり込むことによって、車輪がロック状態になるように構成されている。また、図9に示すように、移動係合具27が左ワイヤー18の操作によって上昇し、案内壁34との嵌まり込みが解除されることによって、ブレーキのロック状態が解除されるように構成されている。
【0058】
以下、具体的な構成について説明する。
図7及び図8に示すように、車輪ブレーキ装置22は、例えば後脚55の下端部に後脚筒部21を接続し、車輪ブレーキ装置22は後脚筒部21の下部に一体的に構成してある。
車輪ブレーキ装置22は、左右両側の一対の支持壁38と、一対の支持壁38を前方側位置において繋ぐ繋ぎ壁39とを有している。また、支持壁38の長手方向に延びる一対の長孔26と、その長孔26に嵌まる移動ピンのような移動係合具27と、移動係合具27によって車輪ブレーキ装置22内で前記長手方向にスライドするスライド部28を有している。
【0059】
左ケーブル16は後脚55の内部を通って車輪ブレーキ装置22内に入り、車輪ブレーキ装置22の下側の下左端子24によって固定してある。
下側の下左端子24は、車輪ブレーキ装置22の上方側に設けられた上壁23に固定されている。
下左端子24から左ワイヤー18が引き出され、スライド部28の下方側に固定された下左固定部29に接続してある。
【0060】
下左端子24と下左固定部29の間には、圧縮スプリング25などの弾性手段20が設けられ、スライド部28を下方向にロック方向に付勢する圧縮スプリング25などの弾性手段20を設けている。
図9図11に示すように、移動係合具27は後輪59側の長孔26から車輪内壁37(図7参照)に向けて突出しており、左ワイヤー18の引き上げ操作によって、図9のように上方に移動し、左ワイヤー18の下降操作によって、図10のように下方に移動する。
【0061】
後輪59の車輪内壁37には車輪側係合具32が設けられている。
車輪側係合具32は、歩行補助車の車輪側の車輪回りに所定角度で周方向に放射形に延びる案内壁34と、曲面形の案内先端部33とを有し、隣り合う案内壁34間に係合空間35を有している。
案内壁34の数は、図9図10では8個が示されているが、適宜、移動係合具27が35内に挿入できる角度であれば、角度を増減して案内壁34の数を変化させることができる。
【0062】
本実施形態では、案内先端部33は、移動係合具27を抵抗なく係合空間35に導くために軸方向から見て先端部が円形に形成してある。
また、移動係合具27も抵抗なく案内壁34間に挿入できるように円柱形に構成してある。
図9図10では、案内壁34の左右方向の高さは、全体形状が分かりやすいように低く描いているが、実際は、車輪内壁37を車軸の左右外側に向けて凹ませて形成するとともに、移動係合具27が支持壁38の間の係合空間35に嵌まって、後輪59をロックできるだけの十分な突出する長さを有するように構成してある。
【0063】
操作レバー3を図6(b)に示すように解除側に操作すると、右ワイヤー12,左ワイヤー18は、図7及び図9に示すように、共に矢印のように上方に移動するので、車輪ブレーキ装置22側の左ワイヤー18も上方に引っ張られ、移動係合具27は上方に移動して、移動係合具27は案内壁34よりも上方に位置する。この状態では後輪59は自由に回転できるので、ブレーキは解除状態になる。
【0064】
一方、操作レバー3を図6(c)に示すようにロック側に操作すると、図8及び図10に示すように、右ワイヤー12、左ワイヤー18は矢印のように下方に押し出され、移動係合具27は下方に移動して、移動係合具27は案内壁34の間の係合空間35に収容される状態になり、ブレーキはロックされた状態になる。
なお、右ワイヤー12,左ワイヤー18を内蔵する右ケーブル10,左ケーブル16を後脚55又は前脚56の内部を通すことによって、生活空間用歩行補助車51の下側位置において、ケーブルが露出しない構成にでき、ケーブルに物が引っかかる等の不都合を防止できる。
【0065】
次に、本実施形態の重心バランスの向上の利点について説明する。
前輪60として、360゜回転できる自在輪を採用した場合に、その自在輪の回転方向を直進方向のみに固定できる機構を有している歩行補助車がある。このような歩行補助車を、歩行が不安定でふらつくような利用者が使用した場合、不安に思って自在輪を固定して直進のみで使用する場合がある。
このような場合、段差だけでなく、歩行補助車の方向を変えるには歩行補助車自体を持ち上げて、方向を変えることが頻繁に行われている。段差を超えるだけでなく、このような場合にも、本実施形態の構成であれば、重心バランスが良いので、歩行補助車を持ち上げやすくなる利点がある。
また、ハンドルフレーム64のグリップ部65を持った歩行補助車全体の重心バランスが良いので、従来は、自在輪を固定して直進のみで使用していた使用者であっても、自在輪を固定せず、不安なくそのまま使用して、前輪60が自在輪である利点を享受できる可能性を高めることができる。
【0066】
<変形例>
本発明は、一方向及び他方向の操作レバー3の回動操作によって、左右両輪を一度にロック又はロック解除の操作が行える点を特徴としているので、手元操作部1の設ける位置は、ハンドルフレーム64の左右方向中央部域に限らず、ハンドルフレーム64の端部や、手腕支え部52などの生活空間用歩行補助車51の他の箇所にも設けることが可能である。
また、ブレーキ操作において車輪をロック又は解除する機構は、本実施形態に示した車輪ブレーキ装置22と車輪側係合具32の構成に限定されず、一対のワイヤーで操作される車輪側のブレーキ機構であれば採用が可能である。
【0067】
さらに、前記したように一対のワイヤーの引き上げによってロック状態を解除し、一対のワイヤーの下降によってロック状態とする構成のみならず、必要によって、一対のワイヤーの下降によってロック状態を解除し、一対のワイヤーの引き上げによってロック状態とする構成も採用できる。
【0068】
なお、前記実施形態では、一つの操作レバー3によって左右の前輪60を一度に固定できるロック装置の構成を例示した。しかし、段差等を乗り越える場合の重心バランスを向上させるための発明においては、左右の前輪60を一度に固定できる構成は下位概念の発明である。したがって、重心バランスを向上させるための発明においては、個々に左右の前輪60を固定する構成を除外するものではない。
【0069】
以上、実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の構成には限定されない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて判断されるべきであり、その範囲内であれば、多様な変形や構成の追加、又は改良が行えることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
22:車輪ブレーキ装置
41:基体部
51:生活空間用歩行補助車(歩行補助車の一例)
52:手腕支え部(基体部41の一例)
55:後脚
56:前脚
59:後輪
60:前輪
64:ハンドルフレーム
65:グリップ部(把持部)
67:支柱(ハンドル支持フレーム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13