(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096677
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】マスターバッチ、及び、熱可塑性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
C08J3/22 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220673
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023000101
(32)【優先日】2023-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲谷 文祐
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA18
4F070AA22
4F070AB11
4F070AC04
4F070AC14
4F070AC16
4F070AC40
4F070AE02
4F070AE03
4F070AE04
4F070AE12
4F070DA55
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB04
4F070FB06
4F070FC05
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂用添加剤を含むマスターバッチであって、各種非オレフィン系熱可塑性樹脂に配合でき、該添加剤の使用目的を良好に達成できるマスターバッチの提供。
【解決手段】樹脂用添加剤(A)、及び第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)を含有する、マスターバッチ。前記第一重合体(b1)は、当該第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含み、前記第一重合体(b1)の重量平均分子量は、15,000~120,000である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂用添加剤(A)、及び
第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)を含有し、
前記第一重合体(b1)は、当該第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含み、
前記第一重合体(b1)の重量平均分子量は、15,000~120,000である、マスターバッチ。
【請求項2】
前記流動性改良剤(B)が、前記第一重合体(b1)を覆う第二重合体(b2)をさらに含む、請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
前記第二重合体(b2)が、当該第二重合体(b2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~50重量%を構成単量体として含む、請求項2に記載のマスターバッチ。
【請求項4】
前記流動性改良剤(B)中、前記第一重合体(b1)の含有量は60~90重量%、前記第二重合体(b2)の含有量は10~40重量%である、請求項2又は3に記載のマスターバッチ。
【請求項5】
前記マスターバッチ中の前記流動性改良剤(B)の含有割合は、10~95重量%である、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
【請求項6】
前記樹脂用添加剤(A)が、着色剤、充填剤、滑剤、及び、発泡剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
【請求項7】
ペレット状である、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のマスターバッチを、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合する工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記非オレフィン系熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂、AS系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、及びポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
樹脂用添加剤(A)、及び
第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)、及び、
非オレフィン系熱可塑性樹脂を混合する工程を含み、
前記第一重合体(b1)は、当該第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含み、
前記第一重合体(b1)の重量平均分子量は、15,000~120,000である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチ、及び、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂成形品を製造するに際しては、顔料等の着色剤や、充填剤、滑剤、発泡剤(化学発泡剤、マイクロカプセル等)等を添加し、必要な特性を付与したコンパウンドを設計し、これを成形することにより、付加価値の高い成形品を提供している。
【0003】
近年は環境に配慮して、リサイクル材料の使用が推奨又は義務付けされる場合がある。リサイクル材料は様々な成形品の粉砕物であり、雑色であることが多く、リサイクル時には均一の色調にして使用されることが多い。
【0004】
熱可塑性樹脂に着色剤を直接混合しても、添加剤の均一な分散が困難な場合が多い。そこで、熱可塑性樹脂への着色剤の分散性を高めるため、マトリックスの熱可塑性樹脂と同じ種類の樹脂の低分子量品に高濃度の着色剤を練り込んだマスターバッチを使用することが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1では、ポリオレフィン系樹脂と、着色剤等のポリオレフィン系樹脂用添加剤とを含むマスターバッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各種コンパウンドは専用設計であり、多数のグレード及び色調に応じて多数の品種を在庫しなければならず、コストが発生する。
【0008】
着色剤を含むマスターバッチを使用する場合、ABSやポリスチレン等の流動性の高い樹脂に対しては、黒色等の着色力の高い顔料を用いると均一に着色できるが、白色等の淡い色調を用いると均一な着色が難しい。また、PVCなどの高粘度の樹脂に対しては、着色力の強い顔料を用いても均一な着色が困難である。そのため、均一な着色を達成するために、2度練りなど煩雑な操作が必要になる場合があった。
【0009】
充填剤や滑剤、発泡剤等を配合する場合はコンパウンド時に添加しなければならず、その配合量を変更することが難しい。
【0010】
また、発泡剤を含むコンパウンドでは、発泡剤の分解温度以下でコンパウンドしなければならない制約があり、コンパウンド化が容易ではない。
発泡剤のマスターバッチも市販されているが、キャリアレジンとしてオレフィン系樹脂を使用しているものが多く、相溶性の問題から、該マスターバッチを非オレフィン系熱可塑性樹脂には適用しがたい。
【0011】
本発明は、上記現状に鑑み、熱可塑性樹脂用添加剤を含むマスターバッチであって、各種非オレフィン系熱可塑性樹脂に配合でき、該添加剤の使用目的を良好に達成できるマスターバッチを提供することを目的とする。
【0012】
また本発明は、熱可塑性樹脂用添加剤と非オレフィン系熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、該添加剤を均一に分散させ、該添加剤の使用目的を良好に達成できる製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が鋭意研究を行った結果、非オレフィン系熱可塑性樹脂に対する分散性に優れている特定構成の流動性改良剤と、樹脂用添加剤とを含むマスターバッチを使用して作製した熱可塑性樹脂組成物、または、前記流動性改良剤と樹脂使用添加剤を使用して作製した熱可塑性樹脂組成物においては、該添加剤が均一に分散され、該添加剤の使用目的を高レベルで達成可能であることを見出し、本発明に至った。
【0014】
即ち本発明は、樹脂用添加剤(A)、及び
第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)を含有し、
前記第一重合体(b1)は、当該第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含み、
前記第一重合体(b1)の重量平均分子量は、15,000~120,000である、マスターバッチに関する。
【0015】
また本発明は、前記マスターバッチを、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合する工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法にも関する。
【0016】
さらに本発明は、樹脂用添加剤(A)、及び
第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)、及び、
非オレフィン系熱可塑性樹脂を混合する工程を含み、
前記第一重合体(b1)は、当該第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含み、
前記第一重合体(b1)の重量平均分子量は、15,000~120,000である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱可塑性樹脂用添加剤を含むマスターバッチであって、各種非オレフィン系熱可塑性樹脂に配合でき、該添加剤の使用目的を良好に達成できるマスターバッチを提供することができる。
【0018】
本発明の好適な態様によると、AS系樹脂、PVC等の非オレフィン系熱可塑性樹脂に対して、前記マスターバッチを混合することにより、前記添加剤の使用目的を達成しながら、表面性が良好な熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。
添加剤が着色剤である場合には、2度練りなど煩雑な操作を実施しなくても、均一に着色され、かつ表面性が良好な熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。
添加剤が発泡剤である場合には、均一に発泡しつつ、かつ表面性が良好な発泡成形体を得ることができる。また、前記マスターバッチの添加量を調節することで、必要な発泡倍率を容易に調整することができる。
【0019】
本発明の好適な態様によると、前記マスターバッチはペレット状のものであるため、飛散しにくく、作業環境が改善され、他の成形品へのコンタミを防止することができる。
【0020】
また、本発明によると、熱可塑性樹脂用添加剤と非オレフィン系熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、該添加剤を均一に分散させ、該添加剤の使用目的を良好に達成できる製造方法を提供することができる。
【0021】
本発明の一態様によると、AS系樹脂、PVC等の非オレフィン系熱可塑性樹脂に対して、前記添加剤と前記流動性改良剤を混合することにより、前記添加剤の使用目的を達成しながら、表面性が良好な熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。
添加剤が着色剤である場合には、2度練りなど煩雑な操作を実施しなくても、均一に着色され、かつ表面性が良好な熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。
添加剤が発泡剤である場合には、均一に発泡しつつ、かつ表面性が良好な発泡成形体を得ることができる。また、発泡剤の添加量を調節することで、必要な発泡倍率を容易に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
本開示に係るマスターバッチは、少なくとも、樹脂用添加剤(A)、及び、第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)を含有する。当該マスターバッチは、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合し、成形して成形体を得るために使用することができる。
【0023】
<樹脂用添加剤(A)>
樹脂用添加剤(A)は、一般的な熱可塑性樹脂組成物に配合され得る添加剤であればよく、特に限定されない。そのような添加剤としては、着色剤、充填剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、難燃剤、強化材、導電性付与剤、加水分解抑制剤、増粘剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、離型剤、相溶化剤、熱安定剤等が挙げられる。本開示に係るマスターバッチは、これら添加剤のうち1種類のみを含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0024】
中でも、本開示に係るマスターバッチの使用による効果を顕著に達成できる観点から、樹脂用添加剤(A)は、着色剤、充填剤、滑剤、及び発泡剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
前記着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよいが、例えば、カーボンブラック、群青、弁柄、亜鉛華、酸化チタン、鉄黒、クロムイエロー、カドミウムイエローなどの無機系や、アゾ系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系、アントラキノン系、フタロシアニン系、アニリンブラック系等の有機系等が挙げられる。着色剤としては1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記充填剤としては特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、カオリン、ガラスフレーク、板状アルミナ、合成ハイドロタルサイト、ワラストナイト、中空ガラスバルーン、炭素繊維、アラミド繊維、ウィスカー等が挙げられる。充填剤としては1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記滑剤としては特に限定されないが、例えば、天然ワックス、合成ワックス、酸化または非酸化のポリオレフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン、高分子量パラフィンワックス等のワックス類;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、ポリメチルシロキサン等のシリコーンオイル等が挙げられる。滑剤としては1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
前記発泡剤としては、化学発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルを使用することができる。前記マスターバッチは、両者のうちいずれか一方を含有してもよいし、双方を含有してもよい。該発泡剤は、加熱下で、熱可塑性樹脂を発泡させるために使用される。
【0029】
前記化学発泡剤とは、加熱により分解しガスを発生して熱可塑性樹脂を発泡させる添加剤を指す。化学発泡剤としては、無機系化学発泡剤および有機系化学発泡剤のいずれであってもよく、両者を併用してもよい。
【0030】
無機系化学発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩が挙げられる。
有機系化学発泡剤としては、例えば、アゾ化合物(例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロジニトリル、アゾジアミノベンゼン、アゾへキサヒドロべンゾニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート等)、ニトロソ化合物(例えば、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルテレフタルアミド、t-ブチルアミノニトリル等)、ヒドラジド化合物[例えば、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等]、ヒドラゾン化合物(例えばp-トルエンスルホニルアセトンヒドラゾン等)等が挙げられる。
中でも、炭酸塩、アゾ化合物、ヒドラジド化合物が好ましく、重炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ヒドラジド化合物がより好ましい。これらは、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
前熱膨張性マイクロカプセルとは、液状の低沸点化合物をポリマーのシェルで包んだカプセル状の発泡剤のことを指す。加熱によって気化した低沸点化合物の圧力によって、カプセルが膨張し、これによって熱可塑性樹脂を発泡させる。熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えば、特開2011-16884号公報に記載されているものを好適に用いることができる。具体的には、熱膨張性マイクロカプセルは、コアシェル構造を有し、コアは沸点が10℃以上330℃以下である化合物の1種以上で構成され、シェルはコアを内包しており、熱可塑性ポリマーで構成されているものであってよい。
【0032】
前記コアは、沸点が10℃以上330℃以上である化合物から選択した1種以上で構成されることが好ましい。コアを構成する化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。炭化水素類としては、特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、及び、これらの炭化水素の構造異性体等が挙げられる。コアを構成する化合物は、好ましくは、沸点が10℃以上330℃以下の炭化水素類であり、より好ましくは沸点が30℃以上280℃以下の炭化水素類であり、さらに好ましくは沸点が30℃以上200℃以下の炭化水素類である。沸点が10℃以上の化合物を用いることで、熱膨張性マイクロカプセルのマスターバッチ化が容易となる。また、沸点が330℃以下の化合物を用いることで、重合時に分散性が良好になり、熱膨張性マイクロカプセルを製造することが容易となる。
【0033】
熱膨張性マイクロカプセルのシェルを構成する熱可塑性ポリマーの単量体成分としては、例えば、ニトリル系単量体、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体、ジエン系単量体、カルボキシル基を有するビニル系単量体、並びにメチロール基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選択される1種以上の反応性官能基を有する単量体からなる群より選択される1種以上の単量体を用いることができる。
【0034】
前記ニトリル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。
【0035】
前記(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。本願において、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートであってもよく、アクリレートであってもよい。
【0036】
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、p-ニトロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0037】
前記ジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0038】
前記カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、及びその無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられる。
【0039】
前記メチロール基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選択される1種以上の反応性官能基を有する単量体(以下において、単に「反応性官能基を有する単量体」とも記す。)としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシスチレン、ブロックイソシアネート等が挙げられる。ブロックイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート化合物(ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等)のフェノール、アルコール、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、オキシム、ジメチルピラゾール、メチルエチルケトンオキシム、カプロラクタム等によるブロックイソシアネート等が挙げられる。本願において、「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミドであってもよく、アクリルアミドであってもよい。
【0040】
中でも、前記シェルを構成する熱可塑性ポリマーの単量体成分は、ニトリル系単量体、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体、及びカルボキシル基を有するビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0041】
また、前記シェルを構成する熱可塑性ポリマーを製造する際には、連鎖移動剤を適宜使用してもよい。
連鎖移動剤としては、通常のラジカル重合で使用されるものであれば良く、特に限定されない。具体的には、メルカプタン系化合物を用いることができる。メルカプタン系化合物としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタン、α-メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸2-エチルヘキシル等が好適に使用できる。
【0042】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、膨張する前の平均粒子径が0.5μm以上50μm以下であることが好ましく、0.7μm以上50μm以下がより好ましく、1.0μm以上45μm以下がさらに好ましく、1.0μm以上40μm以下がよりさらに好ましく、1.0μm以上35μm以下が特に好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの膨張後の最大粒子径は、膨張する前の平均粒子径からおよそ3倍以上5倍以下の範囲であってよい。これにより、発泡成形体の強度を良好なものとすることができる。熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径は、粒度分布測定装置、具体的には島津製作所製の粒度分布測定装置SALD-3000Jで測定することができる。
【0043】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、最大膨張温度(最大発泡温度とも称される。)が180℃以上300℃以下であることが好ましく、190℃以上290℃以下がより好ましく、200℃以上280℃以下がさらに好ましく、210℃以上270℃以下が特に好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの最大膨張温度は、特許第5484673号に記載されている測定方法で測定することができる。熱膨張性マイクロカプセルの最大膨張温度が上述した範囲内にあると、低密度かつ強度が高い発泡成形体が得られやすい。
【0044】
本開示に係るマスターバッチ中の樹脂用添加剤(A)の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができるが、該マスターバッチの使用によって該添加剤の使用目的を有意に達成する観点から、マスターバッチ中、合計で5~80重量%であることが好ましい。下限は10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。上限は70重量%以下であることが好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましい。
【0045】
<流動性改良剤(B)>
本開示に係るマスターバッチは、流動性改良剤(B)を含有する。該流動性改良剤(B)は、少なくとも第一重合体(b1)を含むものである。好適な態様に係る流動性改良剤(B)は、製造時の造粒性に優れていることから、第一重合体(b1)に加えて、第二重合体(b2)を含むことが好ましい。
【0046】
〔第一重合体(b1)〕
第一重合体(b1)は、当該第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含む。芳香族ビニル系化合物の含有率は55~70重量%であることが好ましく、シアン化ビニル系化合物の含有率は7~20重量%であることが好ましく、共重合可能なその他のビニル系化合物の含有率は10~38重量%であることが好ましい。第一重合体(b1)が芳香族ビニル系化合物およびシアン化ビニル系化合物を前記割合で含むことにより、非オレフィン系熱可塑性樹脂との相溶性が良好になり、樹脂用添加剤(A)を非オレフィン系熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。
【0047】
芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
シアン化ビニル系化合物としては、アクリロニトリル、メタアクリルニトリル等が挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
前記共重合可能なその他のビニル系化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1~20の直鎖アルキル(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート等の炭素数3~20の分枝鎖アルキル(メタ)アクリレート;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等の炭素数3~20の環状アルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、メチルフェニル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-(p-メチルフェニル)マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のα,β-不飽和ジカルボン酸のイミド化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等のアミノ基含有不飽和化合物;3-ヒドロキシ-1-プロペン、4-ヒドロキシ-1-ブテン、シス-4-ヒドロキシ-2-ブテン、トランス-4-ヒドロキシ-2-ブテン、3-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロペン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレン等の水酸基含有不飽和化合物;ビニルオキサゾリン等のオキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
第一重合体(b1)の重量平均分子量は15,000~120,000である。第一重合体(b1)の重量平均分子量が120,000以下であることにより、低温においても流動性が高く、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混ざりやすく、樹脂用添加剤(A)を非オレフィン系熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。より好ましくは100,000以下であり、さらに好ましくは80,000以下であり、特に好ましくは60,000以下である。また、第一重合体(b1)の重量平均分子量が低すぎると、溶融開始温度が低くなりハンドリング性が悪くなるという観点から、20,000以上が好ましく、25,000以上がより好ましく、30,000以上がさらに好ましい。
【0051】
〔第二重合体(b2)〕
第二重合体(b2)は任意の成分であり、含有しなくてもよい。しかし、流動性改良剤(B)が第二重合体(b2)を含む場合、第二重合体(b2)は、第一重合体(b1)の外側に存在しており、第一重合体(b1)を覆うように存在していることが好ましい。第一重合体(b1)と第二重合体(b2)は互いに化学結合していないことが好ましい。
【0052】
流動性改良剤(B)が第二重合体(b2)を含む場合、第二重合体(b2)は、第二重合体(b2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~50重量%を構成単量体として含むことが好ましい。第二重合体(b2)のアルキルメタクリレートの割合が比較的高いことにより、後述するように第二重合体(b2)のTg(ガラス転移温度)を高くすることができ、流動性改良剤(B)の造粒性を向上させることができる。
【0053】
第二重合体(b2)は、第二重合体(b2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート60~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~40重量%を構成単量体として含むことがより好ましく、アルキルメタクリレート70~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~30重量%を構成単量体として含むことがさらに好ましい。その他のビニル系化合物としては、上述の第一重合体(b1)において例示した化合物を用いることができる。
【0054】
アルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクデシルメタクリレート等の炭素数1~20の直鎖アルキルメタクリレート;イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソウンデシルメタクリレート、イソドデシルメタクリレート、イソトリデシルメタクリレート、イソテトラデシルメタクリレート、イソペンタデシルメタクリレート、イソヘキサデシルメタクリレート、イソヘプタデシルメタクリレート、イソオクタデシルメタクリレート等の炭素数3~20の分枝鎖アルキルメタクリレート;シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート等の炭素数3~20の環状アルキルメタクリレート等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
アルキルメタクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは1~14、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~10、さらにより好ましくは1~8、特に好ましくは1~6である。前記のうち、直鎖アルキルメタクリレートがより好ましく、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0056】
第一重合体(b1)の外側に第二重合体(b2)が存在し、その第二重合体(b2)のTgが30~110℃であることによって、流動性改良剤(B)の造粒性を向上させることができる。第二重合体(b2)のTgは、60~100℃であることが好ましく、35~80℃であることがより好ましい。Tgは、「ポリマーハンドブック第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社1998年発行に記載のホモポリマーのTgから各モノマーのTgを算出したものでもよく、示差熱分析または示差走査熱量分析により算出したものであってもよい。
【0057】
第二重合体(b2)の重量平均分子量は、特に限定されないが、20,000~300,000が好ましく、20,000~150,000がより好ましい。
【0058】
流動性改良剤(B)が第二重合体(b2)を含む場合、流動性改良剤(B)の造粒性と、非オレフィン系熱可塑性樹脂に対する相溶性のバランスの観点から、流動性改良剤(B)は、第一重合体(b1)と第二重合体(b2)の合計を100重量%とし、第一重合体(b1)を60~90重量%、第二重合体(b2)を10~40重量%含むことが好ましく、第一重合体(b1)を65~85重量%、第二重合体(b2)を15~35重量%含むことがより好ましく、第一重合体(b1)を70~80重量%、第二重合体(b2)を20~30重量%含むことが更に好ましい。
【0059】
〔流動性改良剤(B)の製造方法〕
流動性改良剤(B)は、例えば、回収の容易性、重合物の低臭気性、ハンドリング性、耐ブロッキング性および経済性等の観点から、乳化重合法、懸濁重合法等の水を媒体とした重合法によって得ることができる。このうち、非オレフィン系熱可塑性樹脂への分散性の観点から乳化重合法がより好ましい。さらに、粒子構造体を得ることができる乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、滴下懸濁重合法は、二以上の重合体構造を得るのに特に好ましい重合法である。
【0060】
乳化重合法に用いる乳化剤としては、従来公知のものを使用でき、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホコハク酸ジエステル塩などのアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩等のカチオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン性乳化剤等が挙げられる。なかでも、耐衝撃性又は耐熱性が改善されたり、非オレフィン系熱可塑性樹脂の分解が抑制され、湿熱条件下での耐衝撃性の低下や高温下での色調変化が抑制され得ることから、前記乳化剤としては、リン酸系乳化剤またはスルホン酸系乳化剤が好ましく、スルホン酸系乳化剤が特に好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、重合の助触媒としてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、硫酸第一鉄等、ラテックスの粘度調整剤として硫酸ナトリウム等、pH調整剤として水酸化ナトリウム等を用いてもよい。
【0061】
第一重合体(b1)又は第二重合体(b2)の重量平均分子量は、これらに含まれるモノマー比を変更することにより、調節することが可能である。また、これらの重量平均分子量は、ラジカル開始剤および必要に応じて使用される連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間等を変更することにより、調節することも可能である。
【0062】
乳化重合法に用いるラジカル開始剤としては、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシラウレイト等の有機ハイドロパーオキサイド類;前記有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化剤と、亜硫酸塩、亜硫酸水素、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤との組み合わせによるレドックス系の開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2-カルバモイルアザイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物等を使用することができる。なかでも、ラジカル開始剤は、有機ハイドロパーオキサイド類であることが好ましく、t-ブチルハイドロパーオキサイドであることがより好ましい。
【0063】
ラジカル開始剤の使用量(好ましくは第一重合体(b1)の重合時のラジカル開始剤の使用量)は、使用されるモノマー100重量部に対して、例えば0.01~5.0重量部であってよく、好ましくは0.1~3.5重量部であり、より好ましくは0.5~3.0重量部である。ラジカル開始剤量が多いと、重量平均分子量が低下する傾向があり、ラジカル開始剤量が少ないと、重量平均分子量が上昇する傾向がある。
【0064】
乳化重合法に用いる連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;テトラエチルチウラムスルフィド、四塩化炭素、臭化エチレン、ペンタンフェニルエタン等の炭化水素塩類;テルペン類、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2-エチルヘキシルチオグリコール、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。なかでも、連鎖移動剤は、メルカプタン類であることが好ましく、t-ドデシルメルカプタンであることがより好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
連鎖移動剤の使用量(好ましくは第一重合体(b1)の重合時の連鎖移動剤の使用量)は、モノマー100重量部に対し、通常0~3重量部であってよい。連鎖移動剤を使用する場合、連鎖移動剤の使用量は、例えば0.01~3重量部であってよく、好ましくは0.1~3重量部であり、より好ましくは0.5~2.5重量部である。
【0066】
重合時間は、使用するモノマー、乳化剤、ラジカル開始剤、必要に応じて使用される連鎖移動剤やそれらの量に応じて変更され得るが、例えば1時間~50時間であってよく、好ましくは5時間~24時間である。
【0067】
重合温度は、使用するモノマー、乳化剤、ラジカル開始剤、必要に応じて使用される連鎖移動剤やそれらの量に応じて調節され得るが、例えば10℃~90℃であってよく、好ましくは40℃~80℃である。
【0068】
ラテックス中の流動性改良剤(B)の体積平均粒子径は、例えば0.030μm以上0.500μm以下であってよい。体積平均粒子径は、粒度分析計(日機装株式会社製、Nanotracwave)により算出することができる。
【0069】
次に、得られた流動性改良剤(B)を含むラテックスを例えば凝固法により粉末化してもよい。流動性改良剤(B)を粉末化する場合、前記乳化重合法で得られたラテックスを塩凝固、酸凝固等の凝固法で処理する方法、ラテックスを噴霧乾燥によって粉体を得る方法等を用いることができる。
塩凝固、酸凝固等の凝固法では、ラテックスを、無機塩類(好ましくは2価の無機塩類、より好ましくは塩化カルシウム)、酸類などの凝固剤に接触させればよい。凝固した後に、更に熱処理、脱水、洗浄、乾燥工程等を行って、流動性改良剤(B)を調製してもよい。
【0070】
本開示に係るマスターバッチ中の流動性改良剤(B)の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができるが、該流動性改良剤(B)の使用による効果を達成しやすい観点から、10~95重量%であることが好ましい。下限は20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましい。上限は90重量%以下であることが好ましく、85重量%以下がより好ましい。
【0071】
<加工助剤(C)>
本実施形態に係るマスターバッチは、第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)に加えて、第三重合体(c1)を含む加工助剤(C)をさらに含有してもよい。第三重合体(c1)は、第一重合体(b1)よりも高分子量の重合体である。加工助剤(C)を併用することによって、溶融時の流動性、耐衝撃性、及び耐熱性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0072】
加工助剤(C)は、少なくとも第三重合体(c1)を含む。好適な態様に係る加工助剤(C)は、製造時の造粒性に優れていることから、第三重合体(c1)に加えて、第四重合体(c2)を含むことが好ましい。
【0073】
第三重合体(c1)は、ビニル系化合物及び/(メタ)アクリレート系単量体の重合体であればよく、そのモノマー組成は特に限定されないが、具体的には以下のような態様を例示することができる。
ある態様によると、第三重合体(c1)は、第三重合体(c1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含むものであってよい。当該モノマー組成は第一重合体(b1)と同様であるので、記載を省略する。
【0074】
別の態様によると、第三重合体(c1)は、第三重合体(c1)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~99重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物1~50重量%を構成単量体として含むものであってよい。当該モノマー組成は第二重合体(b2)と同様であるので、記載を省略する。
【0075】
第三重合体(c1)の重量平均分子量は第一重合体(b1)よりも大きい値であり、150,000~7,000,000であることが好ましい。より好ましくは200,000~4,000,000であり、さらに好ましくは250,000~1,500,000である。
【0076】
加工助剤(C)が第四重合体(c2)を含む場合、第四重合体(c2)は、第三重合体(c1)を覆うように存在しており、第四重合体(c2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~50重量%を構成単量体として含むことが好ましい。第四重合体(c2)のモノマー組成及び重量平均分子量は第二重合体(b2)と同様であるので、記載を省略する。
【0077】
加工助剤(C)が第四重合体(c2)を含む場合、熱可塑性樹脂組成物の溶融時の流動性、耐衝撃性、及び耐熱性のバランスの観点から、加工助剤(C)は、第三重合体(c1)と第四重合体(c2)の合計を100重量%とし、第三重合体(c1)を60~90重量%、第四重合体(c2)を10~40重量%含むことが好ましく、第三重合体(c1)を65~85重量%、第四重合体(c2)を15~35重量%含むことがより好ましく、第三重合体(c1)を70~85重量%、第四重合体(c2)を15~30重量%含むことが更に好ましい。
【0078】
加工助剤(C)は、流動性改良剤(B)と同様の手法によって製造することができる。また、加工助剤(C)の市販品として、例えば、カネエース(登録商標)PA-20(株式会社カネカ製)、カネエース(登録商標)PA-40(株式会社カネカ製)、カネエース(登録商標)PA-60(株式会社カネカ製)、カネエース(登録商標)PA-80(株式会社カネカ製)、PA-310(株式会社カネカ製)、Blendex864(Galata Chemicals)等が挙げられる。
【0079】
本実施形態に係るマスターバッチ中の加工助剤(C)の配合量は、特に限定されず、適宜設定することができるが、該流動性改良剤(B)の使用による効果を阻害することなく該加工助剤(C)の使用による効果を達成できる観点から、1~30重量%であることが好ましい。上限は20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下がより好ましい。但し、加工助剤(C)は使用しなくてもよい。
【0080】
本開示に係るマスターバッチは、非オレフィン系熱可塑性樹脂を含有してもよい。マスターバッチに含まれる非オレフィン系熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、マトリックスの非オレフィン系熱可塑性樹脂と同じ種類のものであることが好ましい。
【0081】
最終の熱可塑性樹脂組成物中における樹脂用添加剤(A)の均一な分散性を高める観点から、前記マスターバッチ中の非オレフィン系熱可塑性樹脂の含有量は、0~30重量%程度であることが好ましい。上限は20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。
【0082】
<マスターバッチの製造方法>
本開示に係るマスターバッチは、樹脂用添加剤(A)、流動性改良剤(B)、任意の加工助剤(C)、及び任意の他成分を、押出機等を用いて、均一に混錬することで製造できる。流動性改良剤(B)を使用するため比較的低温で均一に混錬することができる。樹脂用添加剤(A)として発泡剤を使用する場合においても、該発泡剤の分解温度又は膨張温度よりも低い温度で均一に混錬することができる。結果、発泡剤を分解又は膨張させることなく、発泡剤を含有するマスターバッチを製造することができる。
【0083】
マスターバッチを製造する際の最高温度は、特に限定されないが、例えば、70~160℃程度であってよく、80~140℃が好ましい。樹脂用添加剤(A)として発泡剤を使用する場合、マスターバッチを製造する際の最高温度は、該発泡剤の分解温度又は膨張温度よりも低い温度であることが好ましい。
【0084】
マスターバッチの製造に使用できる押出機としては特に限定されず、コニカル押出機や、単軸押出機、二軸パラレル押出機等を使用することができる。一般的に樹脂の混練に使用されるバンバリーミキサー、加圧ニーダー、コ・ニーダ等も使用することができる。また、他の添加剤を混合する際には、スーパーミキサーや、リボンブレンダー等の、粉体と液状物を混合できる機器を使用してもよい。
【0085】
マスターバッチは押出機から押出した後、ペレット化することができる。また、3本ロール、2本ロールにてシートを作製した後、シートペレタイザーにてペレット化してもよい。
【0086】
<成形体の製造方法>
第一の態様によると、本開示に係るマスターバッチを非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合し、得られた樹脂組成物を成形することにより成形体を製造することができる。また、樹脂用添加剤(A)として発泡剤を使用する場合、発泡剤を含有するマスターバッチを非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合し、該発泡剤の分解温度又は膨張温度以上の温度で発泡成形することにより、発泡成形体を製造することができる。
【0087】
本開示に係るマスターバッチは流動性改良剤(B)を含むものであるため、流動性が高く、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混ざりやすいため、樹脂用添加剤(A)を非オレフィン系熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。
【0088】
また、非オレフィン系熱可塑性樹脂がリサイクルされた粉砕品であっても、本開示に係るマスターバッチを使用することで、混合時の分級の発生が抑制され、樹脂用添加剤(A)を該非オレフィン系熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。そのため、リサイクルされた粉砕品から、樹脂用添加剤(A)の使用目的を達成しながら、表面性が良好な成形体を好適に製造することができる。
【0089】
本開示に係るマスターバッチと混合可能な非オレフィン系熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、AS系樹脂(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂等)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(メタクリル酸メチル-スチレン))、ポリエステル(PET、PET-G)、ポリ乳酸、ポリスチレン等が挙げられる。
【0090】
成形体を製造する時の本開示に係るマスターバッチの使用量は、最終の熱可塑性樹脂組成物中の樹脂用添加剤(A)の目的配合量、及び、マスターバッチ中の樹脂用添加剤(A)の濃度を考慮して適宜設定することができるが、例えば、前記非オレフィン系熱可塑性樹脂100重量部に対して、1~30重量部程度であってよく、2~20重量部が好ましく、3~15重量部がより好ましい。
【0091】
第二の態様によると、前記マスターバッチを使用せず、前述した樹脂用添加剤(A)と流動性改良剤(B)と非オレフィン系熱可塑性樹脂とを混合し、得られた樹脂組成物を成形することにより成形体を製造できる。また、樹脂用添加剤(A)として発泡剤を使用する場合、発泡剤と流動性改良剤(B)と非オレフィン系熱可塑性樹脂とを混合し、該発泡剤の分解温度又は膨張温度以上の温度で発泡成形することにより、発泡成形体を製造することができる。
【0092】
樹脂用添加剤(A)と流動性改良剤(B)と非オレフィン系熱可塑性樹脂を混合する際、その混合手順は特に限定されない。流動性改良剤(B)と非オレフィン系熱可塑性樹脂を混合してから樹脂用添加剤(A)を混合してもよいし、樹脂用添加剤(A)と流動性改良剤(B)を混合してから非オレフィン系熱可塑性樹脂を混合してもよいし、樹脂用添加剤(A)と非オレフィン系熱可塑性樹脂を混合してから流動性改良剤(B)を混合してもよい。また、樹脂用添加剤(A)と流動性改良剤(B)と非オレフィン系熱可塑性樹脂とを一段階で混合してもよい。
【0093】
流動性改良剤(B)は流動性が高く、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混ざりやすいため、樹脂用添加剤(A)を流動性改良剤(B)と共に非オレフィン系熱可塑性樹脂に混合することで、樹脂用添加剤(A)を非オレフィン系熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。また、流動性改良剤(B)を使用するため比較的低温で均一に混錬することができる。
【0094】
また、非オレフィン系熱可塑性樹脂がリサイクルされた粉砕品であっても、本開示に係る流動性改良剤(B)を使用することで、混合時の分級の発生が抑制され、樹脂用添加剤(A)を該非オレフィン系熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。そのため、リサイクルされた粉砕品から、樹脂用添加剤(A)の使用目的を達成しながら、表面性が良好な成形体を好適に製造することができる。
【0095】
第二の態様で使用可能な非オレフィン系熱可塑性樹脂としては、第一の態様に関して列挙したものが挙げられる。
【0096】
第二の態様において、樹脂用添加剤(A)の添加量は、最終の熱可塑性樹脂組成物中の樹脂用添加剤(A)の目的配合量に応じて適宜設定できるが、例えば、前記非オレフィン系熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1~30重量部程度であってよく、0.2~20重量部が好ましく、0.3~15重量部がより好ましい。
【0097】
第二の態様において、流動性改良剤(B)の添加量は、流動性改良剤(B)の添加による効果を考慮して適宜設定できるが、例えば、前記非オレフィン系熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1~30重量部程度であってよく、0.2~20重量部が好ましく、0.3~15重量部がより好ましい。
【0098】
第一の態様及び第二の態様において、成形体を製造する手法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば、押出成形、射出成形、カレンダ一成形、流延成形、プレス成形、注型などの任意の成形方法によって、種々の形状や構造の成形体に成形することができる。成形加工と同時に発泡を行わせる場合は、成形加工の少なくともある段階で発泡剤の分解温度又は膨張温度以上の温度に加熱すればよい。発泡剤の種類によってその分解温度又は膨張温度は異なるが、発泡剤は一般に150~250℃の範囲で分解又は膨張するので、発泡体を製造するには150~250℃又はそれ以上の温度に加熱すればよい。
【0099】
成形に使用出来る成型機としては、2軸コニカル押出機、二軸パラレル押出機、単軸押出機等の一般的な成型機を使用できる。発泡成形方法も特に限定されず、フリー法、セルカ法、パーシャルセルカ法を使用することができる。射出成型も使用することができる。
【0100】
また、未発泡のシート、フィルム、板、管、積層体、その他の成形品を一旦製造した後に、それを加熱して発泡させることもできる。この場合は、発泡性熱可塑性樹脂組成物を該組成物の成形加工が可能な温度であって且つ発泡剤が分解又は膨張しない温度で成形加工して未発泡の成形品を製造し、次いで、該未発泡の成形品を発泡剤の分解温度又は膨張温度以上に加熱して発泡させることにより発泡成形体を得ることができる。
【0101】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
樹脂用添加剤(A)、及び
第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)を含有し、
前記第一重合体(b1)は、当該第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含み、
前記第一重合体(b1)の重量平均分子量は、15,000~120,000である、マスターバッチ。
[項目2]
前記流動性改良剤(B)が、前記第一重合体(b1)を覆う第二重合体(b2)をさらに含む、項目1に記載のマスターバッチ。
[項目3]
前記第二重合体(b2)が、当該第二重合体(b2)全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート50~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~50重量%を構成単量体として含む、項目2に記載のマスターバッチ。
[項目4]
前記流動性改良剤(B)中、前記第一重合体(b1)の含有量は60~90重量%、前記第二重合体(b2)の含有量は10~40重量%である、項目2又は3に記載のマスターバッチ。
[項目5]
前記マスターバッチ中の前記流動性改良剤(B)の含有割合は、10~95重量%である、項目1~4のいずれかに記載のマスターバッチ。
[項目6]
前記樹脂用添加剤(A)が、着色剤、充填剤、滑剤、及び、発泡剤からなる群より選択される少なくとも1種である、項目1~5のいずれかに記載のマスターバッチ。
[項目7]
ペレット状である、項目1~6のいずれかに記載のマスターバッチ。
[項目8]
項目1~7のいずれかに記載のマスターバッチを、非オレフィン系熱可塑性樹脂と混合する工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[項目9]
前記非オレフィン系熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂、AS系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、及びポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種である、項目8に記載の製造方法。
[項目10]
樹脂用添加剤(A)、及び
第一重合体(b1)を含む流動性改良剤(B)、及び、
非オレフィン系熱可塑性樹脂を混合する工程を含み、
前記第一重合体(b1)は、当該第一重合体(b1)全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~70重量%と、シアン化ビニル系化合物5~20重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~45重量%を構成単量体として含み、
前記第一重合体(b1)の重量平均分子量は、15,000~120,000である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【実施例0102】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
〔測定方法〕
製造例では以下の手法に従って物性等を測定した。
【0104】
<重合体の重量平均分子量>
測定対象である重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分に対して、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)を使用することにより、重量平均分子量を求めた(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系、注入量:1mL)。
【0105】
<製造例1>
あらかじめ水に溶解したジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.0部(重量部、以下同様)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0050部および硫酸第一鉄0.0025部を攪拌機付き反応器に入れ、さらに水を加えて水の全量を200部とした。
【0106】
反応器内を窒素置換して空間部および水中の酸素を除去した。その後、撹拌するとともに、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.4部を撹拌機付き反応器に入れ、内容物を75℃まで昇温した後に、アクリロニトリル12.6部、スチレン43.4部、ブチルアクリレート6.0部、メチルメタクリレート18.0部、t-ドデシルメルカプタン0.8部、t-ブチルハイドロパーオキサイド1部の混合物を200分かけて連続追加しながら重合を行った。連続追加の50分の時点と100分の時点とにそれぞれジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3部を追加した。また、連続追加の100分の時点で、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.15部を追加した。以上により第一重合体(b1)を形成した。
【0107】
重合終了後、そこに更にブチルアクリレート4部、メチルメタクリレート16部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.3部の混合物を50分かけて連続追加して重合を行った。連続追加の終了後にホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2部を追加した。
【0108】
共重合成分の追加終了後も内容物を75℃に保ったまま攪拌を1時間以上続けることにより重合を完結させた。以上により第二重合体(b2)を形成した。その後、内容物を冷却し、流動性改良剤(B-1)のラテックスを得た。
【0109】
45℃の温度条件で、濃度1重量%に希釈した塩化カルシウム水溶液5部に、得られた流動性改良剤のラテックスを加えて凝固を行った。次いで熱処理、脱水、洗浄および乾燥を行ない、重量平均分子量が40,000の第一重合体(b1)と第二重合体(b2)を含む流動性改良剤(B-1)の粉末を得た。
【0110】
<製造例2>
あらかじめ水に溶解したジオクチルコハク酸ナトリウム0.5部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0032部及び硫酸第一鉄0.0008部を攪拌機付き反応器に入れ、さらに水を加えて水の全量を200部とした。
反応器内を窒素置換して空間部および水中の酸素を除去した。その後、撹拌するとともに、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.06部を撹拌機付き反応器に入れ、内容物を60℃まで昇温した後に、メチルメタクリレート80部及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.05部の混合物を200分かけて連続追加しながら重合を行った。連続追加の50分の時点と100分の時点とにそれぞれジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3部を追加した。以上により第三重合体(c1)を形成した。
重合終了後、そこに更にメチルメタクリレート8部、ブチルアクリレート12部及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.05部の混合物を50分かけて連続追加して重合を行った。
共重合成分の追加終了後も内容物を60℃に保ったまま攪拌を1時間以上続けることにより重合を完結させた。以上により第四重合体(c2)を形成した。その後、内容物を冷却し、加工助剤(C-1)のラテックスを得た。
45℃の温度条件で、濃度1重量%に希釈した塩化カルシウム水溶液5部に、得られた加工助剤(C-1)のラテックスを加えて凝固を行った。次いで熱処理、脱水、洗浄および乾燥を行ない、重量平均分子量が750,000の第三重合体(c1)と第四重合体(c2)を含む、加工助剤(C-1)の粉末を得た。
【0111】
<製造例3>
製造例2と同様の製法で、第三重合体(c1)を形成するためにメチルメタクリレート70部、ブチルアクリレート10部、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.0002部の混合物を300分かけて連続追加しながら重合を行った。その後の連続追加は製造例2と同様に行い、加工助剤(C-2)のラテックスを得、製造例2と同様の粉体製法で重量平均分子量が6,000,000の第三重合体(c1)と第四重合体(c2)を含む、加工助剤(C-2)の粉末を得た。
【0112】
<実施例1~14及び比較例1~3>
表1に示した配合に従って、カワタ製スーパーミキサーにて各添加剤を混合後、東洋精機ラボプラスト 2軸コニカル押出機を用いて、C1/90℃、C2/120℃、C3/130℃、D/130℃に設定し、30rpmにて、樹脂温度140℃前後で、リングブレーカー、及び3mm径のダイスを使用して押出ペレット化を行った。
但し、実施例11、及び、比較例1~3に関しては、設定温度を、C1/150℃、C2/160℃、C3/170℃、D/180℃に変更し、樹脂温度を180℃前後として、押出ペレット化を行った。但し、比較例3では、押出ペレット化の過程で発泡が進行しペレット化ができなかった。
以上のようにして、実施例1~14及び比較例1~2では、ペレット状のマスターバッチを得た。
【0113】
流動性改良剤(B):製造例1で得た流動性改良剤(B-1)
加工助剤(C):製造例2で得た加工助剤(C-1)
ABS樹脂:テクノABS 150
PVC樹脂:カネビニール S-1007
PVC用安定剤:堺化学社製 複合Ca-Zn H-7592
発泡剤:
・ADCA(アゾジカルボンアミド)+重曹:永和化成社製FE-512
・熱膨張性マイクロカプセル:クレハ社製H880
・重曹:永和化成社製SC-P
顔料:
・酸化チタン:CR90
・カーボン
可塑剤:jプラス社製DINP(フタル酸エステル系可塑剤)
充填剤:
・タルク:富士タルク社製
・炭酸カルシウム
滑剤:
・ステアリン酸マグネシウム
・PEWAX:エミリー社製AC-629A
・エステル系WAX:リケンビタミン社製SL-02
強化剤:
・アクリルコアシェルラバー:FM-40
【0114】
(ペレット化評価)
上記の条件にてペレットが得られたものを〇と評価し、得られなかったものを×と評価した。
【0115】
(成形評価)
ベース樹脂として以下を使用した。
・ABS樹脂:テクノUMB社 テクノABS150(事前に80℃、3時間乾燥したものを使用)
・硬質PVCコンパウンド:昭和化成社 硬質Ca-Zn配合コンパウンド 850A
・樹脂窓枠粉砕品:PVC複合サッシ部材由来
・発泡用ABS:ABS樹脂(テクノUMB社 テクノABS150)100重量部に対し、製造例3で得た加工助剤(C-2)3重量部を添加し、25mm二軸二軸押出機にて、C1-C7・220℃、H,D/240℃、300rpmの条件で予備混練したコンパウンド
・発泡用PVC:PVC(カネカS-1007)100重量部に対し、製造例3で得た加工助剤(C-2)5重量部、複合Ca-Zn安定剤3.5重量部、エステル系WAX0.3重量部、PEWAX0.2重量部を添加し、スーパーミキサーにて120℃まで昇温混合した後、東洋精機ラボプラスト 2軸コニカル押出機を用いて、リングブレーカー、及び3mm径のダイスを使用して、C1/150℃、C2/160℃、C3/170℃、D/170℃に設定し、30rpmにて、樹脂温度175℃前後にてペレット化したコンパウンド
【0116】
各ベース樹脂100重量部に対し、各マスターバッチ5重量部を添加し、50mm単軸押出機を用いて、ブレーカープレート、メッシュ#40、#80各1枚、1×35mmの平板ダイスを使用して、以下の条件で成形品を得た。
・実施例1~11及び比較例1~2:C1/160℃、C2/170℃、C3/160℃、D/185℃、スクリュー回転数15rpm。
・実施例12~14:C1/180℃、C2/170℃、C3/160℃、D/155℃、スクリュー回転数15rpm。
得られた成形品の機能性付与と表面性を確認した。機能性付与は、マスターバッチ化した各添加剤が均一に分散しているか否かに基づいて評価した。
【0117】
着色を目的とした顔料マスターバッチ(実施例1、2、5、6、10、11)では、顔料が均一に分散しなければマーブル状に色調の濃淡が発生し、均一な色調を有する表面性を得ることができない。濃淡がなく均一な状態は○、不均一であれば×とする。
【0118】
曲げ弾性率、線膨張係数の向上を目的としてタルク等の充填剤マスターバッチ(実施例3、4)は、成形品の表面に充填剤の分散不良の有無と成形品の表面の均一性を目視で確認した。充填剤の凝集物がなく表面が均一な物を○、凝集物が確認される、表面がザラザラしている物を×とする。
【0119】
押出成形、射出成型時に金属との離型性を付与し、成形性を向上させる滑剤マスターバッチ(実施例7~9)では、離型性が付与され成形性が向上し、表面性も良好なものを○、成形性の向上が確認されない、成形品の表面性が悪いものを×とする。
【0120】
発泡成形品(実施例12~14)は、発泡性について、発泡剤の添加量に見合った発泡倍率が得られるものを○、セルの破泡が発生し十分な発泡倍率が得られないものを×とする。表面性について、表面に発泡セルの破泡が確認されず、滑らかな状態の物を○、表面に多くの破泡が確認され、表面がザラザラしているものを×とする。
各評価結果を表1に示した。
【0121】
【0122】
表1から以下のことが分かる。実施例1~14では、各マスターバッチを様々な非オレフィン系熱可塑性樹脂に配合して成形品を製造することができ、着色、充填剤添加、滑性付与、発泡剤添加について、目的とした機能性を良好に付与することができた。実施例11では、一般的なABS系樹脂に流動性改良剤(B)を併用することで、分散性が向上し、均一な分散性、着色性が確認された。
【0123】
一方、比較例1では、ABS系樹脂をキャリアレジンとして白色顔料を含むマスターバッチを作製したが、これを使用して製造したABS樹脂成型品では、分散性不足によって着色がマーブル状になり、均一な分散性、着色性を達成できなかった。
比較例2では、PVC樹脂をキャリアレジンとして黒色顔料を含むマスターバッチを作製したが、これを使用して製造したPVC樹脂成型品では、分散性不足によって着色がマーブル状になり、均一な分散性、着色性を達成できなかった。
比較例3では、ABS系樹脂をキャリアレジンとして重曹を含むマスターバッチの作製を試みたが、ペレット化ができなかった。